特許第6365301号(P6365301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6365301共重合体、光学異方体及び高分子配向フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365301
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】共重合体、光学異方体及び高分子配向フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20180723BHJP
   C08G 64/12 20060101ALI20180723BHJP
   C08G 63/685 20060101ALI20180723BHJP
   C08G 63/688 20060101ALI20180723BHJP
   C08G 65/34 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G02B5/30
   C08G64/12
   C08G63/685
   C08G63/688
   C08G65/34
【請求項の数】4
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2014-540830(P2014-540830)
(86)(22)【出願日】2013年10月4日
(86)【国際出願番号】JP2013077119
(87)【国際公開番号】WO2014057884
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-225148(P2012-225148)
(32)【優先日】2012年10月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第93/022361(WO,A1)
【文献】 特開平06−234840(JP,A)
【文献】 特開平06−263862(JP,A)
【文献】 特開平11−263832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00 − 64/42
G02B 5/30
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に、下記式(I)
【化1】
〔式中、Yは、化学的な単結合、−C(=O)−、又は、−O−C(=O)−を表す。
は、置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。
は、
炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基、
炭素数2〜30の芳香族複素環基、
芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、総炭素数3〜30のアルキル基、
芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、総炭素数4〜30のアルケニル基、又は、
芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、総炭素数4〜30のアルキニル基を表す。
は、
水素原子、
置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基
炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基、
炭素数2〜30の芳香族複素環基、
芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、総炭素数4〜30のアルケニル基、又は、
芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、総炭素数4〜30のアルキニル基を表す。
前記A及びAが有する芳香環は、置換基を有していてもよい。
また、前記AとAは一緒になって、環を形成していてもよい。
は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。〕で示される繰り返し単位(I)と、
下記式(II)
【化2】
{〔式中、Yは、化学的な単結合、−C(=O)−、又は、−O−C(=O)−を表す。
は、置換基を有していてもよいナフタレンジイル基、又は、下記式(III)で示される基を表す。
【化3】
〔式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜6の炭化水素基を表し、Tは、下記(T−1)〜(T−3)
【化4】
(式中、R、R10はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。)で表されるいずれかの基を表す。〕}
で示される繰り返し単位(II)を有し、
前記繰り返し単位(I)の存在割合が、全繰り返し単位に対して5〜90モル%であり、
前記繰り返し単位(II)の存在割合が、全繰り返し単位に対して95〜10モル%である共重合体であって、
塩化メチレンを溶媒とする、濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]が0.3〜2.0dl/gである共重合体の一種若しくは二種以上、又は、前記共重合体の一種若しくは二種以上と、他の高分子との混合物からなる光学異方体。
【請求項2】
前記共重合体が、前記繰り返し単位(I)中、Aが、三価の、ベンゼン環基又はナフタレン環基である共重合体である請求項1に記載の光学異方体。
【請求項3】
フィルム状物である請求項1又は2に記載の光学異方体。
【請求項4】
請求項3に記載のフィルム状の光学異方体を延伸してなる高分子配向フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い波長域において一様の偏光変換が可能で、かつ薄膜化が可能な光学フィルムを得ることができる共重合体及び光学異方体、並びに、フィルム状の光学異方体を延伸して得られる高分子配向フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)は、偏光板や位相差板等の光学フィルムを用いることにより高精細な表示が可能であることから、優れた表示デバイスとして広く使用されている。
【0003】
位相差板には、直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板や直線偏光の偏光振動面を90度変換する1/2波長板等がある。これらの位相差板は、ある特定の単色光に対しては正確に光線波長の1/4λあるいは1/2λの位相差に変換可能なものである。
しかしながら、従来の位相差板には、位相差板を通過して出力される偏光が有色の偏光に変換されてしまうという問題があった。これは、位相差板を構成する材料が位相差について波長分散性を有し、可視光域の光線が混在する合成波である白色光に対して各波長ごとの偏光状態に分布が生じることから、全ての波長領域において正確な1/4λあるいは1/2λの位相差に調整することが不可能であることに起因する。
このような問題を解決するため、広い波長域の光に対して均一な位相差を与え得る広帯域位相差板、いわゆる逆波長分散性を有する位相差板が種々検討されている(例えば、特許文献1〜6)。
一方、モバイルパソコン、携帯電話等携帯型の情報端末の高機能化及び普及に伴い、フラットパネル表示装置の厚みを極力薄く抑えることが求められてきている。その結果、構成部材である位相差板の薄層化も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−68816号公報
【特許文献2】特開平10−90521号公報
【特許文献3】特開平11−52131号公報
【特許文献4】特開2000−284126号公報(US20020159005A1)
【特許文献5】特開2001−4837号公報
【特許文献6】国際公開第2000/026705号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、広い波長域において一様の偏光変換が可能かつ薄膜化が可能な光学フィルムを得ることができる共重合体及び光学異方体、並びに、フィルム状の光学異方体を延伸して得られる高分子配向フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、分子内に、下記式(I)で示される繰り返し単位(I)と、下記式(II)で示される繰り返し単位(II)を有し、前記繰り返し単位(I)と繰り返し単位(II)の存在割合が特定の範囲にあり、かつ、塩化メチレンを溶媒とする、濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]が特定の範囲にある共重合体を用いることにより、広い波長域において一様の偏光変換が可能かつ薄膜化が可能な光学異方体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして本発明によれば、下記(1)、(2)の共重合体、(3)、(4)の光学異方体、及び、(5)の高分子配向フィルムが提供される。
(1)分子内に、下記式(I)
【0008】
【化1】
【0009】
〔式中、Yは、化学的な単結合、−C(=O)−、又は、−O−C(=O)−を表す。
は、置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。
は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
前記A及びAが有する芳香環は置換基を有していてもよい。
また、前記AとAは一緒になって、環を形成していてもよい。
は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
〕で示される繰り返し単位(I)と、
下記式(II)
【0010】
【化2】
【0011】
{式中、Yは、化学的な単結合、−C(=O)−、又は、−O−C(=O)−を表し、Aは、置換基を有していてもよいナフタレンジイル基、又は、下記式(III)で示される基を表す。
【0012】
【化3】
【0013】
〔式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜6の炭化水素基を表し、Tは、下記(T−1)〜(T−3)
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、R、R10はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。)で表されるいずれかの基を表す。〕}で示される繰り返し単位(II)を有し、前記繰り返し単位(I)の存在割合が、全繰り返し単位に対して5〜90モル%であり、前記繰り返し単位(II)の存在割合が、全繰り返し単位に対して95〜10モル%である共重合体であって、塩化メチレンを溶媒とする、濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]が0.3〜2.0dl/gであることを特徴とする共重合体。
(2)前記繰り返し単位(I)中、Aが、三価の、ベンゼン環基又はナフタレン環基である(1)に記載の共重合体。
(3)前記(1)若しくは(2)に記載の共重合体の一種若しくは二種以上、又は、(1)若しくは(2)に記載の共重合体の一種若しくは二種以上と、他の高分子との混合物からなる光学異方体。
(4)フィルム状物である(3)に記載の光学異方体。
(5)前記(4)に記載のフィルム状の光学異方体を延伸してなる高分子配向フィルム。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、広い波長域において一様の偏光変換が可能かつ薄膜化が可能な光学フィルムを得ることができる共重合体及び光学異方体、並びに、フィルム状の光学異方体を延伸して得られる高分子配向フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、1)共重合体、2)光学異方体、及び、3)高分子配向フィルムに項分けして、詳細に説明する。
1)共重合体
本発明の共重合体は、分子内に、下記式(I)で示される繰り返し単位(I)と、下記式(II)で示される繰り返し単位(II)とを有し、前記繰り返し単位(I)の存在割合が全繰り返し単位に対して5〜90モル%であり、前記繰り返し単位(II)の存在割合が全繰り返し単位に対して95〜10モル%である共重合体であって、塩化メチレンを溶媒とする、濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]が0.3〜2.0dl/gであることを特徴とする。
【0018】
【化5】
【0019】
本発明の共重合体は、分子内に、上記式(I)で示される繰り返し単位(I)及び上記式(II)で示される繰り返し単位(II)を有する。
【0020】
〔繰り返し単位(I)〕
前記式(I)中、Yは、化学的な単結合、−C(=O)−、又は、−O−C(=O)−を表し、本発明のより優れた効果を得ることができ、かつ、入手又は製造が容易であることから、Yは、*−O−C(=O)−(*はAとの結合部位を表す。)であるのが好ましい。
【0021】
は置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。三価の芳香族基としては、三価の炭素環式芳香族基であっても、三価の複素環式芳香族基であってもよい。本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、三価の炭素環式芳香族基が好ましく、三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がより好ましく、下記式に示す三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がさらに好ましい。
なお、下記式においては、結合状態をより明確にすべく、置換基Y及びOを便宜上記載している(Yは前記と同じ意味を表す。以下にて同じ。)。また、下記式中、[−]は芳香環の結合手を示す(以下にて同じである。)。
【0022】
【化6】
【0023】
これらの中でも、Aとしては、下記に示す式(A11)〜(A25)で表される基がより好ましく、式(A11)、(A13)、(A15)、(A19)、(A23)で表される基がさらに好ましく、式(A11)、(A23)で表される基が特に好ましい。
【0024】
【化7】
【0025】
の三価の芳香族基は、任意の位置に置換基を有していてもよいが、置換基を有さないものが好ましい。
の、三価の芳香族基が有する置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロアルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の、置換基を有していてもよいアリール基;−C(=O)−R16;−C(=O)−OR16;−SO16;等が挙げられる。
ここで、R16は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;又は、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜14のアリール基;を表す。
【0026】
は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
本発明において、「芳香環」は、Huckel則に従う広義の芳香族性を有する環状構造、すなわち、π電子を(4n+2)個有する環状共役構造、及びチオフェン、フラン、ベンゾチアゾール等に代表される、硫黄、酸素、窒素等のヘテロ原子の孤立電子対がπ電子系に関与して芳香族性を示すものを意味する。
【0027】
の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基は、芳香環を複数個有するものであってもよく、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を有するものであってもよい。
【0028】
前記芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。前記芳香族複素環としては、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の単環の芳香族複素環;ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、フタラジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環等の縮合環の芳香族複素環;等が挙げられる。
【0029】
が有する芳香環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、前記Aの、三価の芳香族基が有する置換基として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0030】
また、Aが有する芳香環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は単環であっても、縮合多環であってもよい。
なお、Aの炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するAにて同じである。)。
【0031】
の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、芳香族炭化水素環基;芳香族複素環基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、総炭素数3〜30のアルキル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、総炭素数4〜30のアルケニル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、総炭素数4〜30のアルキニル基;等が挙げられる。
なお、前記総炭素数3〜30のアルキル基、総炭素数4〜30のアルケニル基、及び、総炭素数4〜30のアルキニル基の「総炭素数」は、芳香環の炭素原子、及び、アルキル基部分、アルケニル基部分又はアルキニル基部分の炭素原子を含み、置換基の炭素原子を含まない、有機基全体の総炭素数を意味する。
【0032】
の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基の具体例を以下に示す。但し、本発明においては、Aは以下に示すものに限定されるものではない。
(1)芳香族炭化水素環基
【0033】
【化8】
【0034】
【化9】
【0035】
(2)芳香族複素環基
【0036】
【化10】
【0037】
【化11】
【0038】
上記式中、Eは、NR17、酸素原子又は硫黄原子を表す。ここで、R17は、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0039】
【化12】
【0040】
上記式中、X、Y、Zは、それぞれ独立して、NR18、酸素原子、硫黄原子、−SO−、又は、−SO−を表す(ただし、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−が、それぞれ隣接する場合を除く。)。R18は、前記R17と同様の、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0041】
(3)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、総炭素数3〜30のアルキル基
【0042】
【化13】
【0043】
(4)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、総炭素数4〜30のアルケニル基
【0044】
【化14】
【0045】
(4)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、総炭素数4〜30のアルキニル基
【0046】
【化15】
【0047】
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
【0048】
の、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0049】
の、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基の置換基としては、前記Aの、三価の芳香族基が有する置換基(炭素数1〜6のアルキル基を除く)として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0050】
の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、前記Aで例示したのと同様のものが挙げられる。
が有する芳香環は、任意の位置に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、前記Aの、三価の芳香族基が有する置換基として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0051】
これらの中でも、前記A、Aとしては、下記のものが好ましく、
【0052】
【化16】
【0053】
(式中、X、Yは前記と同じ意味を表す。)
下記に示す基がさらに好ましく、
【0054】
【化17】
【0055】
(式中、X、Yは前記と同じ意味を表す。)
下記に示す基が特に好ましい。
【0056】
【化18】
【0057】
(式中、Xは前記と同じ意味を表す。)
これらの基は任意の位置に、前記Aの、三価の芳香族基が有する置換基として列記したものと同様の置換基を有していてもよい。
【0058】
また、AとAは一緒になって、環を形成していてもよい。かかる環としては、単環であっても縮合環であってもよい。AとAが一緒になって形成する環としては、置換基を有していてもよい炭素数4〜30の不飽和複素環、炭素数6〜30の不飽和炭素環が好ましい。
【0059】
前記炭素数4〜30の不飽和複素環、炭素数6〜30の不飽和炭素環としては、特に制約はなく、芳香族性を有していても有していなくてもよい。例えば、下記に示す環が挙げられる。なお、下記に示す環は、式(I)中の
【0060】
【化19】
【0061】
として表される部分を示すものである。
【0062】
【化20】
【0063】
【化21】
【0064】
【化22】
【0065】
(式中、X、Y、Zは、前記と同じ意味を表す。)
また、これらの環は置換基を有していてもよい。
かかる置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、−C(=O)−R19、−C(=O)−OR19、−SO19等が挙げられる。ここで、R19は、前記R16と同様の、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基を表す。
【0066】
とAに含まれるπ電子の総数は、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、4以上24以下であるのが好ましく、6以上18以下であるのがより好ましい。
【0067】
とAの好ましい組み合わせとしては、Aが炭素数4〜30の芳香族基で、Aが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基である組み合わせ、及び、AとAが一緒になって不飽和複素環又は不飽和炭素環を形成しているものが挙げられる。
【0068】
とAのより好ましい組み合わせとしては、Aが下記構造を有する基のいずれかであり、Aが、水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基である組み合わせである。
【0069】
【化23】
【0070】
【化24】
【0071】
(式中、X、Yは、前記と同じ意味を表す。)
とAの特に好ましい組み合わせとしては、Aが下記構造を有する基のいずれかであり、Aが、水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基である組合せである。
【0072】
【化25】
【0073】
(式中、Xは、前記と同じ意味を表す。)
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、前記Aで例示したのと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、Qは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子及びメチル基がより好ましい。
【0074】
本発明の共重合体において、繰り返し単位(I)の存在割合は、全繰り返し単位に対して5〜90モル%であり、10〜80モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましい。
このような範囲で、繰り返し単位(I)を含有する共重合体は、薄膜化が容易である。
【0075】
(繰り返し単位(II))
本発明の共重合体は、分子内に、前記繰り返し単位(I)に加えて、前記式(II)で表される繰り返し単位を有する。
分子内に、前記繰り返し単位(I)に加えて、前記式(II)で表される繰り返し単位を有することで、得られるフィルムの位相差を変化させることが可能となり、それによって厚みを調整することも可能である。
【0076】
式(II)中、Yは、化学的な単結合、−C(=O)−、又は、−O−C(=O)−を表し、本発明のより優れた効果を得ることができ、かつ、入手容易であることから、Yは、*−O−C(=O)−(*はAとの結合部位を表す。)であるのが好ましい。
【0077】
は、置換基を有していてもよいナフタレンジイル基、又は、前記式(III)で表される基を表す。
の置換基を有していてもよいナフタレンジイル基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0078】
【化26】
【0079】
の置換基を有していてもよいナフタレンジイル基の置換基としては、前記Aの、三価の芳香族基が有する置換基として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0080】
前記式(III)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す。
〜Rのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、プロペニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2〜6のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6のシクロアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;等が挙げられる。
【0081】
また、炭素数1〜6の炭化水素基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。
かかる置換基としては、炭素数1〜6の炭化水素基が炭素数1〜6のアルキル基や炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基の場合には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1唐のアルコキシ基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;等が挙げられる。
また、炭素数3〜6のシクロアルキル基やアリール基の場合には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、プロペニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2〜6のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6のシクロアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;ニトロ基;等が挙げられる。
【0082】
式(III)中、Tは、下記(T−1)〜(T−3)のいずれかの基を表す。
【0083】
【化27】
【0084】
上記式(T−1)中、R、R10はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。
【0085】
、R10の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
炭素数1〜6のハロアルキル基としては、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
また、炭素数6〜20のアリール基の置換基とては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;等が挙げられる。
【0086】
これらの中でも、R、R10としてはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる一種が好ましい。
【0087】
本発明の共重合体において、前記式(III)で表される基は、(i)下記式(IIIa)
【0088】
【化28】
【0089】
(式中、T、R、Rは前記と同じ意味を表す。)
で表される基であることが好ましく、
(ii)前記式(IIIa)で表される基であって、式(IIIa)中、Tが前記と同じ意味を表し、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、
(iii)前記式(IIIa)で表される基であって、式(IIIa)中、Tが前記と同じ意味を表し、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
【0090】
本発明の共重合体(A)は、上述のように、分子内に、繰り返し単位(I)と繰り返し単位(II)とを特定の割合で含有する高分子であるが、繰り返し単位(I)と繰り返し単位(II)の構造的相違により、以下の9種類が存在する。
(i)共重合体(A1)
前記繰り返し単位(I)において、Yが−O−C(=O)−であり、前記繰り返し単位(II)において、Yが−O−C(=O)−である共重合体
(ii)共重合体(A2)
前記繰り返し単位(I)において、Yが−O−C(=O)−であり、前記繰り返し単位(II)において、Yが−C(=O)−である共重合体
(iii)共重合体(A3)
前記繰り返し単位(I)において、Yが−C(=O)−であり、前記繰り返し単位(II)において、Yが−O−C(=O)−である共重合体
(iv)共重合体(A4)
前記繰り返し単位(I)において、Yが−C(=O)−であり、前記繰り返し単位(II)において、Yが−C(=O)−である共重合体
(v)共重合体(A5)
前記繰り返し単位(I)において、Yが−O−C(=O)−であり、前記繰り返し単位(II)において、Yが化学的な単結合である共重合体
(vi)共重合体(A6)
前記繰り返し単位(I)において、Yが化学的な単結合であり、前記繰り返し単位(II)において、Yが−O−C(=O)−である共重合体
(vii)共重合体(A7)
前記繰り返し単位(I)において、Yが−C(=O)−であり、前記繰り返し単位(II)において、Yが化学的な単結合である共重合体
(viii)共重合体(A8)
前記繰り返し単位(I)において、Yが化学的な単結合であり、前記繰り返し単位(II)において、Yが−C(=O)−である共重合体
(ix)共重合体(A9)
前記繰り返し単位(I)において、Yが化学的な単結合であり、前記繰り返し単位(II)において、Yが化学的な単結合である共重合体
【0091】
これらの中でも、入手容易性等の観点から、前記繰り返し単位(I)において、Yが−O−C(=O)−であり、前記繰り返し単位(II)において、Yが−O−C(=O)−である共重合体(A1)が好ましい。
【0092】
本発明の共重合体においては、前記繰り返し単位(II)の存在割合は、全繰り返し単位に対して95〜10モル%であり、90〜20モル%が好ましく、80〜30モル%がより好ましい。
前記繰り返し単位(I)と繰り返し単位(II)の存在割合がこの範囲にあることで、得られるフィルムの位相差を変化させることが可能となり、それによって厚みを調整することも可能である。
また、本発明の共重合体において、前記繰り返し単位(I)と繰り返し単位(II)の存在割合をこの範囲内において適宜なものとすることで、所望の波長分散性を有する光学異方体を得ることができる。
【0093】
〔共重合体(A)の製造方法〕
本発明の共重合体(A)の内、好ましく用いることができる(A1)は、例えば、以下に示す方法により製造することができる。
(1)製造方法1
【0094】
【化29】
【0095】
共重合体(A1)は、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(3a)で表されるヒドラゾン化合物(ヒドラゾン化合物(3a))、及び、式(4a)で表されるジオール化合物(ジオール化合物(4a))と、ホスゲン類又は炭酸エステル類とを反応させることにより製造することができる。
【0096】
<ヒドラゾン化合物(3a)>
上記反応に用いるヒドラゾン化合物(3a)は、例えば、次のようにして製造することが出来る。
【0097】
【化30】
【0098】
(上記式中、A、A、A、Qは、前記と同じ意味を表す。)
すなわち、適当な溶媒中、式(5a)で表されるカルボニル化合物(カルボニル化合物(5a))と、式(6)で表されるヒドラジン化合物(ヒドラジン化合物(6))とを反応させることにより、ヒドラゾン化合物(3a)を得ることができる。
【0099】
上記反応に用いるカルボニル化合物(5a)の多くは公知の化合物であり、公知の方法により製造し、入手することが出来る。また、カルボニル化合物(5a)として市販されているものを、所望により精製して用いることもできる。
上記反応に用いるヒドラゾン化合物(6)は、次のようにして製造することができる。
【0100】
【化31】
【0101】
(式中、A、Aは、前記と同じ意味を表す。Lは、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等の脱離基を表す。)
すなわち、式(8a)で表される化合物とヒドラジン(7)を、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、又はアルコール系溶媒とエーテル系溶媒との混合溶媒等の、適当な溶媒中、(化合物(8a):ヒドラジン(7))のモル比で、1:1〜1:20、好ましくは1:2〜1:10で反応させて、対応するヒドラジン化合物(9)を得ることができ、さらに、ヒドラジン化合物(9)と式(8b)で表される化合物を反応させることで、ヒドラジン化合物(6)を得ることができる。
【0102】
ヒドラジン(7)としては、通常1水和物のものを用いる。ヒドラジン(1)は、市販品をそのまま使用することができる。
反応は、−10℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。各反応の反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数時間である。
【0103】
また、ヒドラジン化合物(6)は、次のように、従来公知の方法を用いて、ジアゾニウム塩(10)を還元することによっても製造することができる(特開2005−336103号公報、新実験化学講座 1978年 丸善株式会社発行 14巻、実験化学講座 1992年 丸善株式会社発行 20巻、等参照)。
【0104】
【化32】
【0105】
式中、A、Aは、前記と同じ意味を表す。Zは、ジアゾニウムに対する対イオンである陰イオンを示す。Zとしては、例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン等の無機陰イオン;ポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン等の有機陰イオン;等が挙げられる。
反応に用いる溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0106】
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、ヒドラジン化合物(6)1gに対し、通常1〜100mlである。
【0107】
カルボニル化合物(5a)とヒドラジン化合物(6)との使用割合は、〔カルボニル化合物(5a):ヒドラジン化合物(6)〕のモル比で、通常1:2〜2:1、好ましくは1:1.5〜1.5:1である。
【0108】
また、反応は、(±)−10−カンファースルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸;これら有機酸の塩;塩酸、硫酸等の無機酸;等の酸触媒を添加して行うこともできる。酸触媒を添加することで反応時間が短縮され、収率が向上する場合がある。酸触媒の添加量は、カルボニル化合物(5a)1モルに対して、通常0.001〜1モルである。
また、酸触媒はそのまま添加してもよいし、適当な溶媒に溶解させた溶液として添加してもよい。
【0109】
反応は、−10℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数十時間、好ましくは30分から10時間である。
【0110】
上記反応に用いるジオール化合物(4a)の多くは公知の化合物であり、公知の方法により製造し、入手することが出来る。また、ジオール化合物(4a)として市販されているものを、所望により精製して用いることもできる。
【0111】
<ジオール化合物(4a)>
ジオール化合物(4a)の具体例を以下に示す。但し、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)イソブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(2−tert−アミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジシクロヘキシルビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらビスフェノール化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
これらの中でも、ジオール化合物(4a)としては、下記のいずれかが好ましい。
【0112】
【化33】
【0113】
<ヒドラゾン化合物(3a)とジオール化合物(4a)との反応>
上記反応において、ヒドラゾン化合物(3a)とジオール化合物(4a)の使用量は、ヒドラゾン化合物(3a)とジオール化合物(4a)のモル比で、[ヒドラゾン化合物(3a)];〔ジオール化合物(4a)〕=5:95〜90:10である。
【0114】
用いるホスゲン類としては、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、クロロホルメート等が挙げられる。また、炭酸エステル類としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル等が挙げられる。ホスゲンを用いる場合には、過剰量のホスゲンガスを反応液に吹き込む方法が好ましい。ホスゲンガスを吹き込むときの温度は、0〜50℃である。
【0115】
ホスゲン類、炭酸エステル類の使用量は、ヒドラゾン化合物(3a)とジオール化合物(4a)の合計モル数に対して、2倍モル以上であればよいが、好ましくは2〜10倍モル、より好ましくは2〜5倍モルである。
【0116】
上記反応に用いる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、収率よく目的物を得ることが出来ること等の理由から、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましい。
【0117】
塩基の使用量は、ヒドラゾン化合物(3a)とジオール化合物(4a)の合計モル数に対して、2倍モル以上であればよいが、好ましくは2〜10倍モル、より好ましくは2〜5倍モルである。
【0118】
用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば、特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の飽和炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン等の脂環式炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;水;等が挙げられる。
これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。また、互いに混ざり合わない2種の溶媒(例えば、ハロゲン化炭化水素類と水との混合溶媒)を用いてもよい。
溶媒の使用量は、反応規模にも依存するが、ヒドラゾン化合物(3a)1gに対し、通常、0.1〜100mlである。また、ハロゲン化炭化水素類と水との混合溶媒を用いる場合には、ヒドラゾン化合物(3a)1gに対し、通常、ハロゲン化炭化水素類及び水ともに、0.1〜100mlである。
【0119】
上記反応においては、重合度を調節するために、反応液に分子量調節剤を添加してもよい。
用いる分子量調節剤としては、重合度調節には、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等のフェノール類等の一官能基化合物が挙げられる。
また、重縮合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン又は第四級アンモニウム塩等の触媒を添加して反応を行ってもよい。
さらに、所望に応じ、亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイド等の酸化防止剤を少量添加してもよい。
【0120】
この反応は、例えば、次のようにして実施することが好ましい。
(i)先ず、ジオール化合物(4a)と塩基との混合溶液を調製し、そこへ、ホスゲン類または炭酸エステル類を添加し、全容を攪拌することにより、重合度が2〜10程度であり、分子末端にクロロホルメート基を有するオリゴマーの溶液を得る。
(ii)別に、ヒドラゾン化合物(3a)と塩基との混合溶液を調製する。
(iii)次いで、このものと、前記オリゴマー溶液とを混合することにより、目的とする共重合体(A1)を含む反応液を得る。この際に、重合度を調節するために、反応液に分子量調節剤を添加してもよい。
(iv)得られた反応液から、常法により、目的とする共重合体(A1)を単離することが出来る。
このような2段階法によれば、反応の制御が容易であり、精度の高い分子量コントロールを行なうことができる。
【0121】
反応は、いずれの場合も、通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲の温度で行なわれる。反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度が好ましい。
反応時間は、反応温度等によって左右されるが、通常0.5分間から10時間、好ましくは1分間から2時間である。
【0122】
(2)製造方法2
共重合体(A1)は、ヒドラゾン化合物(3a)及びジオール化合物(4a)と、ジフェニルカーボネート等のビスアリールカーボネートとのエステル交換法によっても製造することができる。
反応形式としては、溶融重縮合法、固相重縮合法等が挙げられる。
溶融重縮合法を行なう場合は、上記2種又は3種の単量体〔ヒドラゾン化合物(3a)及びシオール化合物(4a)〕を混合し、減圧下で高温において溶融状態で反応させる。
反応は、通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行なわれる。
【0123】
固相重縮合法を行なう場合は、上記2種又は3種の単量体を混合し、固相状態のまま、生成ポリカーボネート系重合体の融点以下の温度に加熱して重縮合を行なう。いずれの場合においても、反応の最終段階で減圧度を好ましくは1mmHg以下にして、エステル交換反応により生成した上記ビスアリールカーボネートから由来するフェノール類を系外へ留去させる。
反応時間は反応温度や減圧度等によって左右されるが、通常1〜4時間程度である。反応は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましく、また、所望に応じて前記の分子量調節剤や酸化防止剤等を添加して反応を行なってもよい。
【0124】
いずれの反応においても、反応終了後は、有機合成化学における通常の後処理操作を行い、所望により、公知の分離・精製操作を行うことにより、目的物を単離することができる。
目的とする共重合体の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等の測定、元素分析等により、同定することができる。
【0125】
本発明の共重合体は、塩化メチレンを溶媒とする、濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]が0.3〜2.0dl/g、好ましくは0.4〜1.7dl/g、より好ましくは0.55〜1.55dl/g、更に好ましくは0.6〜1.2dl/gである。
還元粘度[ηsp/c]が0.3dl/g未満では、脆くなり機械的強度を保てなくなるおそれがある。一方、還元粘度[ηsp/c]が2.0dl/gを超えると、溶液粘度が高すぎて、重合後の精製が困難になったり、成膜時にダイラインが発生したりすることがある。
還元粘度は、JIS K7367に準拠して測定することができる。
【0126】
2)光学異方体
本発明の光学異方体は、本発明の共重合体の一種又は二種以上、又は、本発明の共重合体の一種又は二種以上と、他の高分子との混合物からなるものである。
本発明の光学異方体は、本発明の共重合体を構成材料としているので、広い波長域において一様の偏光変換が可能で、光学的特性に優れる。
【0127】
本発明の光学異方体は、より具体的には、下記の(α)〜(γ)のいずれかである。
(α)本発明の共重合体の一種からなる光学異方体
(β)本発明の共重合体の二種以上の混合物からなる光学異方体
(γ)本発明の共重合体の一種又は二種以上と、他の高分子との混合物からなる光学異方体
これらの中でも、(α)又は(β)が好ましい。
【0128】
前記(β)、(γ)の光学異方体においては、光学的に透明である必要があることから相溶ブレンドまたは、各々の高分子の屈折率が略等しいことが好ましい。
また、前記(γ)の光学異方体に用いる他の高分子(本発明の共重合体を除く)としては、特に制限されないが、耐熱性に優れ、光学性能が良好で、溶液製膜ができる材料、特に熱可塑性ポリマーが好ましい。
【0129】
用いる他の高分子としては、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリスルフィン系共重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等から1種類又は2種類以上を適宜選択することができるが、なかでも、ポリカーボネートが好ましい。
【0130】
本発明の光学異方体の形状は特に制限されないが、光学用途等に用いる上では、フィルム状物が好ましい。なお、「フィルム状物」には、いわゆる「シート状物」といわれるものも含む意味である。また、本発明の光学異方体がフィルム状物の場合、長尺状であっても、短冊状であってもよい。
本発明の光学異方体がフィルム状物の場合、その厚みは、特に限定されないが、通常、1μm〜1000μmである。
【0131】
本発明の光学異方体は、高分子材料を従来公知の成形法により所望の形状の成形することにより製造することができる。
例えば、フィルム状の光学異方体は、公知の溶融押し出し法、溶液キャスト法、好ましくは溶液キャスト法により製造することができる。
【0132】
溶液キャスト法は、より具体的には、前記高分子材料を適当な溶媒に溶解させて、塗工液を調製し、この塗工液を適当な基板上に塗工して得られた塗膜を乾燥後、所望により加熱することにより、フィルム状の光学異方体を得ることができる。
【0133】
塗工液の調製に用いる溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤;等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いが容易な点から、溶媒の沸点が60〜200℃のものが好ましい。これらの溶剤は単独でも用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
また、塗工液中には、後述する高分子配向フィルムを製造する際における延伸性を向上させる目的で、公知の可塑剤であるジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル、トリブチルフォスフェート等のリン酸エステル、脂肪族二塩基エステル、グリセリン誘導体、グリコール誘導体等が含有してもよい。さらに、フェニルサリチル酸、2−ヒドロキシベンゾフェノン、トリフェニルフォスフェート等の紫外線吸収剤や、色味を変えるためのブルーイング剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0135】
添加剤等の添加量は、前記高分子材料に対して10重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
【0136】
溶液キャスト法に用いる基板としては、有機、無機を問わず、公知慣用の材質のものを使用することができる。例えば、有機材料としてはポリシクロオレフィン〔例えば、ゼオネックス、ゼオノア(登録商標;日本ゼオン社製)、アートン(登録商標;JSR社製)、及びアペル(登録商標;三井化学社製)〕、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン等が挙げられ、無機材料としてはシリコン、ガラス、方解石等が挙げられ、中でも有機材料が好ましい。
基板としては、有機材料が好ましく、この有機材料をフィルムとした樹脂フィルムが更に好ましい。
また、用いる基板は、単層のものであっても、積層体であってもよく、長尺状のものであっても、短冊状のものであってもよい。
【0137】
前記塗工液を基板に塗工する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等が挙げられる。
【0138】
前記塗工液を基板上に塗工して得られた塗膜を乾燥する温度は、通常、50〜200℃である。また、所望により加熱(アニール)することにより、本発明のフィルム状の光学異方体の寸法安定性を向上させることができる。加熱温度は、特に限定されないが、通常、200〜250℃程度である。
【0139】
本発明の光学異方体は、位相差板、液晶表示素子用配向膜、偏光板、視野角拡大板、カラーフィルター、ローパスフィルター、光偏光プリズム、各種光フィルター等として有用である。
【0140】
3)高分子配向フィルム
本発明の高分子配向フィルムは、本発明のフィルム状の光学異方体(未延伸フィルム)を延伸により配向させたフィルムである。
延伸とは、高分子フィルムを、フィルムを構成する高分子材料のガラス移転温度(Tg)以上、融点以下の温度で、一軸又は二軸方向に引き伸ばし、鎖状高分子を延伸した方向に配向させる処理をいう。
高分子フィルム(フィルム状の光学異方体)に延伸処理を施すことにより、フィルム内の分子を引き伸ばされた方向に配向させ、フィルムの、配向方向の強度、硬性、耐衝撃強度を増加させることができる。
【0141】
本発明のフィルム状の光学異方体(未延伸フィルム)の延伸方法としては、特に限定されず、公知の延伸方法を使用することができる。なかでも、縦一軸延伸が好ましい。
【0142】
また、延伸時には、上述のフィルム製膜時に用いた有機溶剤をフィルム中に残留させ延伸してもよい。この有機溶剤の量としてはポリマー固形分対比1〜20重量%であることが好ましい。
【0143】
本発明の高分子配向フィルムは透明であることが好ましく、ヘーズ値は3%以下、全光線透過率は85%以上であることが好ましい。
【0144】
本発明の高分子配向フィルムは、位相差板、液晶表示素子用配向膜、偏光板、視野角拡大板、カラーフィルター、ローパスフィルター、光偏光プリズム、各種光フィルター等として有用である。
【実施例】
【0145】
以下、本発明を、実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0146】
得られた共重合体の、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]は、JIS K7367に準拠して測定した。
【0147】
1)モノマーの合成
(合成例1)化合物Iの合成
【0148】
【化34】
【0149】
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド56g(0.41mol)、及び、2−ヒドラジノベンゾチアゾール 69g(0.42mol)をメタノール2000mlに溶解させ、全容を1時間加熱還流した。反応終了後、反応液を20℃まで冷却し、析出した固体をろ取した。得られた固体をメタノールで洗浄し、真空乾燥機で乾燥して、淡黄色固体として、化合物Iを106g得た(収率:91.7%)。目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0150】
H−NMRスペクトルデータを下記に示す。
H−NMR(500MHz,DMSO−d,TMS,δppm):12.18(s,1H)、9.72(s,1H)、9.00(s,1H)、8.41(s,1H)、7.77(d,1H,J=7.5Hz)、7.41(d,1H,J=8.0Hz)、7.28(ddd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz,8.0Hz)、7.13−7.10(m,2H)、6.78(d,1H,J=8.5Hz)、6.73(d,1H,J=3.0Hz,8.5Hz)
【0151】
(合成例2) 化合物IIの合成
【0152】
【化35】
【0153】
ステップ1:中間体Aの合成
【0154】
【化36】
【0155】
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、2−ヒドラジノベンゾチアゾール 100g(0.61mol)をテトラヒドロフラン(THF)1000mlに溶解させ、得られた溶液を0℃に冷却した。この溶液に、ヘキサメチルジシラザンリチウム(26%THF溶液)450ml(0.73mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応液を0℃で30分間さらに撹拌した後、ヨウ化メチル46ml(0.73mol)を加え、全容を室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応液を水5リットルに投入し、酢酸エチル500mlで2回抽出した。得られた酢酸エチル層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを減圧留去して、黄色固体を得た。この黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:n−ヘキサン:酢酸エチル=70:30(体積比))により精製して、淡黄色固体として中間体Aを69.3g得た(収率:63.9%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0156】
H−NMRスペクトルデータを下記に示す。
H−NMR(500MHz、CDCl,TMS,δppm):7.61(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.55(dd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz)、7.29(ddd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz,8.0Hz)、7.08(ddd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz,7.5Hz)、4.31(s,2H)、3.45(s,3H)
【0157】
ステップ2:化合物IIの合成
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド38g(0.28mol)、及び、中間体A 49.3g(0.28mol)を1−プロパノール1000mlに溶解させ、この溶液を80℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応液を20℃まで冷却し、析出した固体をろ取した。ろ取した固体を1−プロパノールで洗浄後、真空乾燥機で乾燥させて、淡黄色固体として、化合物IIを60.0g得た(収率:72.7%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0158】
H−NMRスペクトルデータを下記に示す。
H−NMR(400MHz,DMSO−d,TMS,δppm):9.42(s,1H)、8.97(s,1H)、8.08(s,1H)、7.84(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.60(dd,1H,J=1.0Hz,8.0Hz)、7.38(ddd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz,8.0Hz)、7.19(d,1H,J=3.0Hz)、7.16(ddd,1H,J=1.0Hz,7.5Hz,8.0Hz)、6.77(d,1H,J=9.0Hz)、6.70(dd,1H,J=9.0Hz)、3.70(s,3H)
【0159】
2)ポリマーの合成
(実施例1)ポリマー(I−1)の合成
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 74gを、6%水酸化ナトリウム水溶液550mlに溶解した溶液に、塩化メチレン250mlを加えた。全容を攪拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを950ml/分の割合で15分間吹き込んだ。次いで、この反応液を静置分離し、有機層として、重合度が2〜4であり、分子末端にクロロホルメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られたオリゴマーの塩化メチレン溶液に塩化メチレンを加えて、全量を450mlとした後、先の合成例1で合成した化合物Iの30gを、8%濃度の水酸化ナトリウム水溶液150mlに溶解した溶液と混合し、これに分子量調節剤であるp−tert−ブチルフェノール 3.0gを加えた。次いで、この混合溶液を激しく攪拌しながら、触媒として7%トリエチルアミン水溶液2mlを加え、全容を28℃で1.5時間攪拌した。反応終了後、反応生成物を塩化メチレン1リットルで希釈し、次いで、水1.5リットルで2回、0.01N塩酸1リットルで1回、水1リットルで2回の順で洗浄した。得られた有機層をメタノール中に投入して、再沈殿させることにより、ポリマー(I−1)を得た。
得られたポリマー(I−1)の、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]は、0.74dl/gであった。
【0160】
(実施例2)ポリマー(I−2)の合成
実施例1において、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン74gを49.1gに、化合物I 30gを化合物I 61.4gに替えた以外は、実施例1と同様に合成を行い、ポリマー(I−2)を得た。
得られたポリマー(I−2)の、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]は、0.76dl/gであった。
【0161】
(実施例3)ポリマー(I−3)の合成
実施例1において、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 74gを、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン 87gに替えた以外は、同様に合成を行い、ポリマー(I−3)を得た。
得られたポリマー(I−3)の、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]は、0.75dl/gであった。
【0162】
(実施例4)ポリマー(I−4)
実施例1において、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン74gを、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 59g、及び、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン 22.8gに替えた以外は、実施例1と同様に合成を行い、ポリマー(I−4)を得た。
得られたポリマー(I−4)の、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]は、0.77dl/gであった。
【0163】
(実施例5)ポリマー(II−1)の合成
実施例1において、化合物I 30gを先の合成例2で合成した化合物II 31.5gに替えた以外は、実施例1と同様に合成を行い、ポリマー(II−1)を得た。
得られたポリマー(II−1)の、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]は、0.74dl/gであった。
【0164】
(実施例6)ポリマー(II−2)の合成
実施例1において、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 74gを49.1gに、化合物I 30gを化合物II 64.4gに替えた以外は、実施例1と同様に合成を行い、ポリマー(II−2)を得た。
得られたポリマー(II−1)の、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]は、0.76dl/gであった。
【0165】
(実施例7)ポリマー(II−3)の合成
実施例1において、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 74gを1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン 87gに、化合物I 30gを化合物II 31.5gに替えた以外は、実施例1と同様に合成を行い、ポリマー(II−3)を得た。
得られたポリマー(II−3)の、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]は、0.75dl/gであった。
【0166】
(参考例1)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン74gを6%水酸化ナトリウム水溶液550mlに溶解した溶液と、塩化メチレン250mlとを混合して混合液を得た。得られた混合液を攪拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを950ml/分の割合で15分間吹き込んだ。次いで、この反応液を静置分離し、有機層を分取して、重合度が2〜4であり、分子末端にクロロホルメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。
得られたオリゴマーの塩化メチレン溶液に塩化メチレンを加えて、全量を450mlとした後、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン24gを8%濃度の水酸化ナトリウム水溶液150mlに溶解した溶液と混合し、これに分子量調節剤であるp−tert−ブチルフェノール3.0gを加えた。次いで、この混合溶液を激しく攪拌しながら触媒として7%トリエチルアミン水溶液2mlを加え、全容を28℃で1.5時間攪拌した。
反応終了後、反応生成物を塩化メチレン1リットルで希釈し、次いで、水1.5リットルで2回、0.01N塩酸1リットルで1回、水1リットルで2回の順で洗浄し、有機相をメタノール中に投入し再沈殿させることにより、ポリマー(P1)を得た。
得られたポリマー(P1)の、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/c]は、0.63dl/gであった。
【0167】
(比較例1)
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、水酸化ナトリウム水溶液及びイオン交換水を仕込み、これに上記構造を有するモノマー、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 100gと、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン 352gを溶解させ、少量のハイドロサルファイトを加えた。
次に、これに塩化メチレンを加え、20℃でホスゲンを約60分かけて吹き込んだ。さらに、p−tert−ブチルフェノールを加えて乳化させた後、トリエチルアミンを加えて30℃で約3時間攪拌した。反応終了後、反応液を静置して分液し、有機層を分取した。得られた有機層から塩化メチレンを蒸発除去させて、ポリカーボネート共重合体(P2)を得た。
得られた共重合体の組成比は、モノマー仕込み量比とほぼ同様であった。
この共重合体を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度15重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、温度218℃で、延伸倍率1.9倍で幅自由一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
【0168】
3)ポリマーのブレンド
(実施例8)
実施例4で得られたポリマー(I−4)20g、参考例1で得られたポリマー(P1)20gを塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度20重量%の溶液とした。この溶液を小型攪拌機を用いて25℃にて6時間攪拌し、ブレンドポリマー(I−5)からなる溶液を得た。
【0169】
4)フィルムの作製
先のポリマーの合成で得られたポリマー(I−1)〜(I−4)及びポリマー(II−1)〜(II−3)をそれぞれ塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度20重量%の溶液をそれぞれ調製した。
次いで、これらの溶液からそれぞれのポリマーからなるキャストフィルムをそれぞれ作製した。
【0170】
ブレンドポリマー(I−5)からなる溶液についても、上記と同様にして、この溶液を用いて、ブレンドポリマーからなるキャストフィルムを作製した。
【0171】
5)延伸フィルムの作製(実施例9〜16)
フィルムの作製で得られたポリマー(I−1)〜(I−4)及びポリマー(II−1)〜(II−3)、ブレンドポリマー(I−5)からなるそれぞれの未延伸のフィルムを表1に示す温度、倍率で幅自由一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
【0172】
実施例9〜16、比較例1で用いたポリマー、ポリマーの組成比、延伸温度(℃)、延伸倍率を下記表1にまとめて示す。
表1中、ジオール化合物A〜Dは下記のものである。
・ジオール化合物A:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
・ジオール化合物B:1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン
・ジオール化合物C:9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン
・ジオール化合物D:9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン
【0173】
【表1】
【0174】
6)未延伸フィルムの熱処理
実施例2で得られたポリマー(I−2)を窒素雰囲気下にて220℃で3時間アニール処理し、未延伸の位相差フィルムを得た。
【0175】
7)位相差の測定
先の延伸フィルムの作製及び未延伸フィルムの熱処理で得られた試料につき、400nmから800nm間の位相差を、エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M2000U型)を用いて測定した。
【0176】
<波長分散の評価>
測定した位相差を用いて、以下のように算出されるα、β値から波長分散を評価した。
【0177】
【数1】
【0178】
広帯域性を示す理想的な波長分散性、即ち逆波長分散性を示す場合、αは1より小となり、βは1より大となる。重合して得られた高分子膜の膜厚(μm)、波長548.5nmにおける位相差(Re)、α、βの値を、下記表2にまとめて示す。
【0179】
【表2】
【0180】
表2から、実施例8〜16の位相差フィルムは、αが1より小で、βが1より大となる逆波長分散性を有していることがわかる。