(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の含フッ素コーティング剤は、フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された片末端に加水分解性基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(A)と、フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された両末端に加水分解性基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(B)とを含み、(A)成分と(B)成分との混合質量比が20:80〜60:40であり、好ましくは25:75〜55:45であり、特に好ましくは30:70〜50:50である組成物である。この範囲内であれば、硬化被膜のヘーズ値を低く抑えると共に、摩耗耐久性に優れるものとすることができる。
なお、(B)成分は、両末端に加水分解性基を持つ部分以外に関しては、(A)成分のシランと同様の構造を持つものであることが好ましい。
【0016】
(A)成分
(A)成分は、フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された片末端に加水分解性基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物である。該シランとしては、下記式(1)
−C
gF
2gO− (1)
(式中、gは単位毎に独立に1〜6の整数である。)
で表される繰り返し単位を10〜200個含むフルオロオキシアルキレン基を有し、かつ、片末端に下記式(2)
【化7】
(式中、R
1は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3である。)
で表される加水分解性基を有するものであることが好ましい。
【0017】
上記式(1)で表される繰り返し単位として、例えば、下記の構造が挙げられる。フルオロオキシアルキレン基は、下記に示す構造の1種単独で構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。また、これらの単位はランダムに結合されていてよい。
−CF
2O−
−CF
2CF
2O−
−CF
2CF
2CF
2O−
−CF(CF
3)CF
2O−
−CF
2CF
2CF
2CF
2O−
−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O−
−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O−
−C(CF
3)
2O−
【0018】
上記式(2)で表される基において、Xは互いに異なっていてもよい加水分解性基である。該加水分解性基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1〜10のアシロキシ基、炭素数2〜10のアルケニルオキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。アルコキシアルコキシ基としては、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などが挙げられる。アシロキシ基としては、アセトキシ基などが挙げられる。アルケニルオキシ基としては、イソプロペノキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、クロル原子、ブロモ原子、ヨード原子などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル原子が好適である。
【0019】
上記式(2)で表される基において、R
1は炭素数1〜6、特に炭素数1〜4の、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、又はフェニル基であり、中でもメチル基が好適である。
aは2又は3であり、反応性、基材に対する密着性の観点から3が好ましい。
【0020】
上記フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された片末端に加水分解性基を有するシランとしては、下記一般式(3)、(4)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【化8】
[上記式(3)において、R
1、X、aは上記の通りであり、Rfは−C
gF
2gO−(gは上記の通り)で表される繰り返し単位を10〜200個有する2価の(ポリ)フルオロオキシアルキレン基であり、Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が−CF
3基、−CF
2H基もしくは−CFH
2基である1価のフッ素含有基である。Qは単結合、又は酸素原子、窒素原子もしくはケイ素原子を有してもよい、非置換もしくは置換の、炭素数2〜12の2価の有機基であり、Zはシルアルキレン構造もしくはシルフェニレン構造を有していてもよい2〜8価のオルガノシロキサン残基、又は2価のオルガノシルアルキレン残基もしくはオルガノシルフェニレン残基である。eは0又は1、bは1〜7の整数、αは0又は1、cは1〜3の整数であるが、eが0のとき、bは1、αは0、cは1であり、eが1のとき、bは1〜7の整数、αは0又は1で、αが0のときcは1であり、αが1のときcは1〜3の整数である。Wは−C
jH
2j−R
5(3-c)Si−又は−C
jH
2j−R
5(3-c)C−(式中、jは0〜10の整数であり、cは上記の通りであり、R
5は炭素数1〜12のアルキル基である。但し、Wが−C
jH
2j−R
5(3-c)Si−で、Q又はZのWと連結する末端がケイ素原子の場合、jは1〜10の整数である。)で示される(c+1)価の基である。fは1〜10の整数である。]
【化9】
[上記式(4)において、R
1、X、a、Rf、A及びQは上記の通りであり、Q’は炭素原子、又は炭素数2〜12の3価炭化水素基であり、Bは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシル基、又はハロゲン原子である。mは1〜10の整数、kは0又は1、nは1〜3の整数であるが、Q’が炭素原子のとき、kは0、nは2、mは1であり、Q’が3価炭化水素基のとき、kは0又は1で、kが0のときnは1、mは2〜10の整数であり、kが1のときnは1〜3の整数、mは1〜10の整数である。また、Bが水素原子のとき、mは2〜10の整数である。Yはフェニレン基、又は(n+1)価の、R
8(3-n)Si又はR
6(3-n)C〔式中、nは上記の通りであり、R
8は炭素数1〜12のアルキル基であり、R
6は炭素数1〜12のアルキル基、ヒドロキシル基又はR
73SiO−(式中、R
7は互いに独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。)である。〕である。f’は0〜10の整数である。]
【0021】
上記式(3)及び(4)において、R
1、X及びaは、上記式(2)で説明した通りである。
【0022】
上記式(3)及び(4)において、Rfは−C
gF
2gO−(gは上記の通り)で表される繰り返し単位を10〜200個有する2価の(ポリ)フルオロオキシアルキレン基であり、Rfとしては、−(CF
2)
d−(OCF
2)
p(OCF
2CF
2)
q(OCF
2CF
2CF
2)
r(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
s(OCF(CF
3)CF
2)
t−O−(CF
2)
d−であることが好ましい。
上記式中、dは互いに独立に0〜5の整数、好ましくは0〜2の整数であり、p、q、r、s及びtは互いに独立に0〜200の整数であり、好ましくはpは5〜100の整数であり、qは5〜100の整数であり、rは0〜100の整数であり、sは0〜50の整数であり、tは0〜100の整数である。p+q+r+s+tは10〜200の整数であり、好ましくは20〜100の整数である。括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。
【0023】
Rfとしては、例えば、下記構造のものが挙げられる。
【化10】
(式中、d’は上記dと同じであり、p’、q’、r’、s’、t’はそれぞれ1以上の整数であり、その上限は上記p、q、r、s、tの上限と同じである。)
【0024】
上記式(3)及び(4)において、Aはフッ素原子、水素原子、又は末端が−CF
3基、−CF
2H基もしくは−CFH
2基である1価のフッ素含有基である。
Aとしては、例えば、
−CF
3
−CF
2CF
3
−CF
2CF
2CF
3
−CF
2H
−CH
2F
が挙げられる。
【0025】
上記式(3)及び(4)において、Qは単結合、又は酸素原子、窒素原子もしくはケイ素原子を有してもよい、非置換もしくは置換の、炭素数2〜12の2価の有機基である。該2価の有機基は、Rf基とZ基との連結基、Rf基とW基との連結基、Rf基と−C
fH
2f−基との連結基、又はRf基とQ’基との連結基となる。
【0026】
ここで、2価の有機基としては、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、及びジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジフェニルシリレン基等のジオルガノシリレン基、並びに−Si[OH][(CH
2)
wSi(CH
3)
3]−(wは2〜4の整数)で示される基からなる群より選ばれる1種又は2種以上の構造を含有してもよい、非置換又は置換の、炭素数2〜12、好ましくは炭素数2〜8の2価炭化水素基が挙げられる。
【0027】
2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基が挙げられる。これらは2種以上の組み合わせであってよく、アルキレン基及びアリーレン基の組み合わせでもよい。更に、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をフッ素原子等のハロゲン原子で置換したものであってもよい。
【0028】
Qとしては、非置換又は置換の炭素数2〜4のアルキレン基、又はフェニレン基が好ましい。更には、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、ジメチルシリレン基等のジオルガノシリレン基、−Si[OH][(CH
2)
wSi(CH
3)
3]−(wは2〜4の整数)で示される基からなる群より選ばれる1種又は2種以上の構造を有し、非置換又は置換の炭素数1〜4のアルキレン基及び/又はフェニレン基を有する構造のものが好ましい。
【0029】
このようなQとしては、例えば、下記の基が挙げられる。
【化11】
【0030】
【化12】
(式中、uは0〜4の整数であり、vは0〜4の整数であり、wは2〜4の整数であり、Meはメチル基である。)
【0031】
上記式(3)において、Zはシルアルキレン構造もしくはシルフェニレン構造を有していてもよい2〜8価のオルガノシロキサン残基、又は2価のオルガノシルアルキレン残基もしくはオルガノシルフェニレン残基である。2〜8価のオルガノシロキサン残基としては、ケイ素原子数2〜13個、好ましくはケイ素原子数2〜5個の、シルアルキレン構造又はシルフェニレン構造を有してよい、鎖状又は環状のオルガノポリシロキサン残基であることが好ましい。ここで、シルアルキレン構造は、Si−(CH
2)
h−Siで表すことができ、前記式においてhは2〜6の整数であることが好ましく、更に好ましくは2〜4の整数である。
【0032】
該オルガノポリシロキサン残基において、ケイ素原子に結合した1価炭化水素基としては、炭素数1〜8、特に炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基が挙げられる。
【0033】
Zとしては、下記に示すものが挙げられる。
【化13】
【0036】
【化16】
(式中、hは2〜6の整数、好ましくは2〜4の整数であり、Meはメチル基である。)
【0037】
上記式(3)において、eは0又は1であり、bは1〜7の整数であり、αは0又は1であり、cは1〜3の整数であるが、eが0のとき、bは1であり、αは0であり、及びcは1である。また、eが1のとき、bは1〜7の整数であり、αは0又は1で、αが0のときcは1であり、αが1のときcは1〜3の整数である。
また、fは1〜10の整数であり、好ましくは2〜6の整数である。
【0038】
上記式(3)において、Wは−C
jH
2j−R
5(3-c)Si−又は−C
jH
2j−R
5(3-c)C−で示される(c+1)価の基であり、前記式中、jは0〜10の整数、好ましくは2〜6の整数であり、cは上記の通りであり、R
5は炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。但し、Wが−C
jH
2j−R
5(3-c)Si−で、Q又はZのWと連結する末端がケイ素原子の場合、jは1〜10の整数である。
ここで、R
5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基である。
【0039】
Wとしては、例えば、下記に示す2〜4価の基が挙げられる。
【化17】
(式中、jは上記の通りであり、Meはメチル基である。)
【0040】
Wとして、特には、下記構造で示される基が好ましい。
【化18】
【0041】
上記式(3)で表される化合物として、下記に示すものが挙げられる。
【化19】
(式中、p1、q1はp1/q1=0.9、p1+q1≒45を満たす数である。)
【化20】
【化21】
【0042】
上記式(3)で表される化合物として、下記に示す化合物も好適である。
【化22】
【化23】
(式中、p1、q1はp1/q1=1.1、p1+q1≒45を満たす数である。)
【化24】
(式中、p1、q1はp1/q1=1.1、p1+q1≒45を満たす数である。)
【化25】
(式中、p1、q1はp1/q1=0.9、p1+q1≒45を満たす数である。)
【化26】
(式中、p1、q1はp1/q1=1.1、p1+q1≒45を満たす数である。)
【0043】
上記式(4)において、Q’は、炭素原子、又は炭素数2〜12の3価炭化水素基である。Q’の3価炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基の炭素原子に結合している水素原子の1つを除去した、3価の構造である。更に、炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をフッ素原子等のハロゲン原子で置換した構造であってもよい。
Q’としては、特に炭素原子又は炭素数2〜8の3価炭化水素基が好ましく、更には炭素原子又は下記構造の基が好ましい。
【化27】
【0044】
上記式(4)において、Bは水素原子、炭素数1〜4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ヒドロキシル基、又はクロル原子、ブロモ原子、ヨード原子等のハロゲン原子である。Bとして、好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシル基である。
【0045】
上記式(4)において、mは1〜10の整数であり、kは0又は1であり、nは1〜3の整数、好ましくは2又は3であるが、Q’が炭素原子のとき、kは0であり、nは2であり、及びmは1である。Q’が3価炭化水素基のとき、kは0又は1である。この場合、kが0のとき、nは1であり、及びmは2〜10の整数であり、好ましくはmは2〜5の整数であり、特に好ましくはmは2である。また、kが1のとき、nは1〜3の整数であり、及びmは1〜10の整数であり、好ましくはmは1〜5の整数であり、特に好ましくはmは1又は2である。
また、Bが水素原子のとき、mは2〜10の整数である。
上記式(4)において、f’は0〜10の整数、好ましくは2〜6の整数である。
【0046】
上記式(4)において、Yはフェニレン基、又は(n+1)価の、R
8(3-n)Si又はR
6(3-n)Cであり、前記式中、nは上記の通りであり、R
8は炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、R
6は炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、ヒドロキシル基、又はR
73SiO−であり、R
7は互いに独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0047】
ここで、R
6、R
8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、ブチル基である。
また、R
7のアルキル基としては、上記R
6、R
8と同様のものが例示でき、アリール基としては、フェニル基、トリル基等が例示でき、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が例示できる。R
7としては、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0048】
(n+1)価の、R
8(3-n)Si又はR
6(3-n)Cとしては、例えば、下記に示す2〜4価の基が挙げられる。
【化28】
(式中、Meはメチル基である。)
【0049】
なお、YがR
8(3-n)Si−であるとき、Q’は炭素数2〜12の3価炭化水素基、特には下記構造で示される基であることが好ましい。
【化29】
【0050】
Yとして、特には、フェニレン基、又は下記構造で示される基が好ましい。
【化30】
(式中、Meはメチル基である。)
【0051】
上記式(4)で表される化合物として、下記に示すものが挙げられる。
【化31】
(式中、p1、q1はp1/q1=0.9、p1+q1≒45を満たす数である。)
【化32】
(式中、p1、q1はp1/q1=1.1、p1+q1≒45を満たす数である。)
【化33】
(式中、p1、q1はp1/q1=1.1、p1+q1≒45を満たす数である。)
【化34】
(式中、p1、q1はp1/q1=1.1、p1+q1≒45を満たす数である。)
【化35】
(式中、p1、q1はp1/q1=1.1、p1+q1≒45を満たす数である。)
【化36】
【0052】
上記式(4)で表される化合物としては、nが2又は3であるものがより好ましい。
【0053】
本発明の含フッ素コーティング剤には、(A)成分として、上記フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された片末端に加水分解性基を有するシランの末端加水分解性基を、予め公知の方法により部分的に加水分解し、縮合させて得られる部分加水分解縮合物を含んでいてもよい。
【0054】
なお、(A)成分の重量平均分子量は、1,000〜20,000であることが好ましく、2,000〜10,000であることがより好ましい。重量平均分子量が小さすぎるとフルオロポリエーテル基の撥水撥油性や摩耗耐久性を発揮できない場合があり、大きすぎると基材との密着性が悪くなる場合がある。なお、本発明において、重量平均分子量は、AK−225(旭硝子製)を展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の標準ポリスチレン換算値として測定できる(以下、同じ)。
【0055】
(B)成分
(B)成分は、フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された両末端に加水分解性基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物である。該シランとしては、上述した下記式(1)
−C
gF
2gO− (1)
(式中、gは上記と同じである。)
で表される繰り返し単位を10〜200個含むフルオロオキシアルキレン基を有し、かつ、両末端に上述した下記式(2)
【化37】
(式中、R
1、X、aは上記と同じである。)
で表される加水分解性基を有するものであることが好ましい。
【0056】
上記フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された両末端に加水分解性基を有するシランとしては、下記一般式(5)、(6)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【化38】
[上記式(5)において、R
1、X、a、Rf、Q、Z、e、b、α、c、W及びfは上記の通りである。]
【化39】
[上記式(6)において、R
1、X、a、Rf、Q、Q’、B、m、k、n、Y及びf’は上記の通りである。]
【0057】
上記式(5)及び(6)において、R
1、X、a、Rf、Q、Z、e、b、α、c、W、f、Q’、B、m、k、n、Y及びf’は、上記式(2)〜(4)で説明した通りであり、上記で例示したものと同様のものを例示することができ、またそれぞれ(A)成分と同一でも異なっていてもよい。
【0058】
上記式(5)で表される化合物として、下記に示すものが挙げられる。
【化40】
(式中、Rf
2は下記式
【化41】
で示される基である。p2、q2はp2/q2=0.9、p2+q2≒45を満たす数である。)
【化42】
(式中、Rf
2は上記と同じであり、p2、q2はp2/q2=0.9、p2+q2=23を満たす数である。)
【化43】
(式中、Rf
2は上記と同じであり、p2、q2はp2/q2=0.9、p2+q2=45を満たす数である。)
【化44】
(式中、Rf
2は上記と同じであり、p2、q2はp2/q2=0.9、p2+q2=60を満たす数である。)
【化45】
(式中、p2、q2はp2/q2=1.1、p2+q2≒23を満たす数である。)
【化46】
(式中、p2、q2はp2/q2=1.1、p2+q2≒45を満たす数である。)
【化47】
(式中、p2、q2はp2/q2=1.1、p2+q2≒60を満たす数である。)
【化48】
【0059】
上記式(5)で表される化合物として、下記に示す化合物も好適である。
【化49】
(式中、p2、q2はp2/q2=1.1、p2+q2≒45を満たす数である。)
【化50】
(式中、p2、q2はp2/q2=1.1、p2+q2≒23を満たす数である。)
【化51】
(式中、Rf
2は上記と同じであり、p2、q2はp2/q2=0.9、p2+q2≒45を満たす数である。)
【0060】
更に、上記式(6)で表される化合物として、下記に示すものが挙げられる。
【化52】
(式中、Rf
2は上記と同じであり、p2、q2はp2/q2=0.9、p2+q2≒45を満たす数である。)
【化53】
(式中、Rf
2は上記と同じであり、p2、q2はp2/q2=1.1、p2+q2≒45を満たす数である。)
【化54】
(式中、Rf
2は上記と同じであり、p2、q2はp2/q2=1.1、p2+q2≒45を満たす数である。)
【化55】
(式中、Rf
2は上記と同じであり、p2、q2はp2/q2=1.1、p2+q2≒45を満たす数である。)
【化56】
(式中、Rf
2は上記と同じであり、p2、q2はp2/q2=1.1、p2+q2≒45を満たす数である。)
【化57】
(式中、Rf
2は上記と同じであり、p2、q2はp2/q2=1.1、p2+q2≒45を満たす数である。)
【化58】
(式中、p2、q2はp2/q2=1.1、p2+q2≒45を満たす数である。)
【0061】
上記式(6)で表される化合物としては、nが2又は3であるものがより好ましい。
【0062】
本発明の含フッ素コーティング剤には、(B)成分として、上記フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された両末端に加水分解性基を有するシランの末端加水分解性基を、予め公知の方法により部分的に加水分解し、縮合させて得られる部分加水分解縮合物を含んでいてもよい。
【0063】
なお、(B)成分の重量平均分子量は、1,000〜20,000であることが好ましく、2,000〜10,000であることがより好ましい。重量平均分子量が小さすぎるとフルオロポリエーテル基の撥水撥油性や摩耗耐久性を発揮できない場合があり、大きすぎると基材との密着性が悪くなる場合がある。
【0064】
(ポリ)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー
本発明の含フッ素コーティング剤には、更に下記一般式(7)
A-Rf−A (7)
(式中、Rf及びAは上記の通りである。)
で表される、いずれの末端にも加水分解性基を有さない(ポリ)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー(以下、無官能性ポリマーと称す)を本発明の特徴を損なわない範囲で含有してもよい。
【0065】
上記式(7)において、Rf及びAは上記で説明した通りであり、上記で例示したRf及びAと同様のものを例示することができ、Rfは上述した(A)、(B)成分中のRfと同一でも異なっていてもよく、またAは上述した(A)成分中のAと同一でも異なっていてもよい。
【0066】
式(7)で表される無官能性ポリマーとしては、下記のものが挙げられる。
【化59】
(式中、p3、q3、r3、t3は、上記フルオロポリエーテル基含有ポリマーの重量平均分子量が1,000〜50,000となる数である。なお、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。)
【0067】
無官能性ポリマーの重量平均分子量は、フルオロポリエーテル鎖の長さと、非フッ素部分との組み合わせによって異なるが、上記(A)、(B)成分である官能性ポリマーの重量平均分子量の0.25〜4倍が好ましい。無官能性ポリマーの重量平均分子量と上記(A)、(B)成分の重量平均分子量との差が上記範囲内であれば(A)、(B)成分と互いに相溶し易いため好ましい。
【0068】
無官能性ポリマーは市販品であってよい。例えば、FOMBLIN(Solvay Solexis社製)、DEMNUM(ダイキン工業社製)、KRYTOX(DuPont社製)という商品名で販売されているものが入手容易性から好ましい。
【0069】
より詳細には下記に示す商品が挙げられる。
FOMBLIN Y(Solvay Solexis社製商品名、下記式(8)で示される化合物、FOMBLIN Y25(重量平均分子量:3,200)、FOMBLIN Y45(重量平均分子量:4,100))
【化60】
(式中、p3、t3は上記重量平均分子量を満足する数である。なお、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。)
【0070】
FOMBLIN Z(Solvay Solexis社製商品名、下記式(9)で示される化合物、FOMBLIN Z03(重量平均分子量:4,000)、FOMBLIN Z15(重量平均分子量:8,000)、FOMBLIN Z25(重量平均分子量:9,500))
【化61】
(式中、p3、q3は上記重量平均分子量を満足する数である。なお、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。)
【0071】
DEMNUM(ダイキン工業社製商品名、下記式(10)で示される化合物、DEMNUM S20(重量平均分子量:2,700)、DEMNUM S65(重量平均分子量:4,500)、DEMNUM S100(重量平均分子量:5,600))
【化62】
(式中、r3は上記重量平均分子量を満足する数である。)
【0072】
KRYTOX(DuPont社製商品名、下記式(11)で示される化合物、KRYTOX 143AB(重量平均分子量:3,500)、KRYTOX 143AX(重量平均分子量:4,700)、KRYTOX 143AC(重量平均分子量:5,500)、KRYTOX 143AD(重量平均分子量:7,000))
【化63】
(式中、t3は上記重量平均分子量を満足する数である。)
【0073】
無官能性ポリマーの量は(A)成分、(B)成分の合計100質量部に対し0.001〜10質量部が好ましく、0.05〜2質量部がより好ましい。
【0074】
また、該含フッ素コーティング剤には、必要に応じて、本発明を損なわない範囲で他の添加剤を配合することができる。具体的には、加水分解縮合触媒、例えば、有機錫化合物(ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫等)、有機チタン化合物(テトラn−ブチルチタネート等)、有機酸(フッ素系カルボン酸、酢酸、メタンスルホン酸等)、無機酸(塩酸、硫酸等)などが挙げられる。これらの中では、特にフッ素系カルボン酸、酢酸、テトラn−ブチルチタネート、ジラウリン酸ジブチル錫が望ましい。添加量は触媒量であるが、通常、上記(A)成分、(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜5質量部、特に0.1〜1質量部である。
【0075】
該含フッ素コーティング剤は、適当な溶剤に溶解させてから塗工することが好ましい。このような溶剤としては、フッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤(ペンタフルオロブタン、デカフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサンなど)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶剤(m−キシレンヘキサフルオライド、ベンゾトリフルオライド、1,3−トリフルオロメチルベンゼンなど)、フッ素変性エーテル系溶剤(メチルパーフルオロプロピルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)など)、フッ素変性アルキルアミン系溶剤(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミンなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど)、エステル系溶剤(酢酸エチルなど)、アルコール系溶剤(イソプロピルアルコールなど)を例示することができる。これらの中では、溶解性、濡れ性などの点で、フッ素変性された溶剤が望ましく、特にはエチルパーフルオロブチルエーテルや、デカフルオロペンタン、ペンタフルオロブタン、パーフルオロヘキサンがより好ましい。上記溶剤は1種を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0076】
溶剤に溶解させる(A)、(B)成分の最適濃度は、処理方法により異なるが、含フッ素コーティング剤中(A)、(B)成分の含有量が0.01〜50質量%、特に0.03〜20質量%となる量であることが好ましい。
【0077】
本発明の含フッ素コーティング剤は、ウェット塗工法(刷毛塗り、ディッピング、スプレー、インクジェット)、蒸着法など公知の方法で基材に施与することができるが、特にウェット塗工法で塗工する際により効果的である。
【0078】
また、含フッ素コーティング剤の硬化条件は、塗工方法によって異なるが、室温(20℃)〜200℃、特に25℃〜150℃の範囲で、30分〜24時間、特に30分〜1時間とすることが望ましい。硬化湿度としては、加湿下で行うことが反応を促進する上で望ましい。
硬化被膜の膜厚は、基材の種類により適宜選定されるが、通常0.1〜100nm、特に3〜30nmである。
【0079】
上記含フッ素コーティング剤で処理される基材は、特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英、サファイヤなど各種材質のものであってよく、これらに撥水撥油性、耐薬品性、離型性、摩耗耐久性、防汚性を付与することができる。基板の表面がハードコート処理や反射防止処理されていてもよい。密着性が悪い場合には、プライマー層として、SiO
2層や、加水分解性基やSiH基を有するシランカップリング剤層を設ける、あるいは真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、アルカリ処理又は酸処理する等の公知の方法によって密着性を向上させることができる。
【0080】
本発明の含フッ素コーティング剤は、加水分解性基を有することから、基材にSiO
2層をプライマー層として設け、その上に該含フッ素コーティング剤を塗工することが好ましい。なお、ガラス基板等の加水分解性基が基材と直接密着できるような場合には、SiO
2層を設ける必要はない。この場合の塗工方法は、スプレー塗工、インクジェット塗工、Dip塗工が好適である。
【0081】
本発明の含フッ素コーティング剤で処理される物品としては、カーナビゲーション、カーオーディオ、タブレットPC、スマートフォン、ウェラブル端末、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、ゲーム機器、各種操作パネル、電子公告等に使用される液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイや、眼鏡レンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、サングラス、胃カメラ等の医療用器機、複写機、保護フイルム、反射防止フイルム等の光学物品が挙げられる。本発明の含フッ素コーティング剤は、前記物品に指紋及び皮脂が付着するのを防止し、更に傷つき防止性を付与することができるため、特にタッチパネルディスプレイ、反射防止処理された物品、強化ガラスの撥水撥油層として有用である。
【0082】
本発明の含フッ素コーティング剤は、上記(A)、(B)成分を特定割合で含むものであり、本発明の含フッ素コーティング剤をガラスやSiO
2処理された基板(SiO
2を予め蒸着又はスパッタした基板)などに、スプレー塗工、インクジェット塗工、スピン塗工、浸漬塗工又は真空蒸着塗工した防汚処理基板は、(A)成分のみを塗工した防汚処理物品と比較して、ヘーズの上昇が小さい。
【0083】
本発明の含フッ素コーティング剤は、該コーティング剤の硬化被膜の膜厚が20nmにおいて、JIS K7136に記載の方法で測定したヘーズ値が0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下のものである。ヘーズ値が0.5を超えると、外観上、基材表面の白濁現象が確認されてしまう。
【0084】
ここで、含フッ素コーティング剤の硬化被膜は、例えば下記の方法により得ることができる。
[硬化被膜作製方法]
(1)(A)成分及び(B)成分を、固形分濃度20質量%になるようにエチルパーフルオロブチルエーテル〔Novec 7200(3M社製)〕に溶解させたのちに、更に固形分濃度0.1質量%になるように1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン〔Solkane 365mfc(Solvay社製)〕に溶解させて含フッ素コーティング剤を調製する。
(2)(1)で調製した含フッ素コーティング剤を、調製後24時間以内にプラズマ処理(Ar:10cc、O
2:100cc、出力:250W、時間:20秒)した化学強化ガラス(コーニング社製、GorillaII)に、スプレー塗工装置(株式会社ティーアンドケー製、NST−51)でスプレー塗工する。
(3)温度80℃、湿度80%RH、1時間硬化させて硬化被膜を形成し、試験体を作製する。
【0085】
得られた硬化被膜の膜厚は、下記の方法により測定することができる。
[硬化被膜膜厚測定方法]
上記で調製した試験体を用いて、波長分散小型蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、ZSX−mini)でフッ素原子の蛍光X線量を定量し、検量線を用いてガラス板上に塗工された硬化被膜の膜厚を算出する。
【0086】
得られた膜厚20nmの硬化被膜のヘーズ値は、下記の方法により測定することができる。
[ヘーズ値測定方法]
上記で調製した試験体を、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH−5000)を用いて、JIS K7136:2000記載の測定方法に準拠してヘーズ値を求める。なお、本発明におけるヘーズ値とは、ガラス基板と硬化被膜をあわせた値を示している。
【0087】
なお、上記ヘーズ値が上述した範囲となるためには、本発明の含フッ素コーティング剤において、(A)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された片末端に加水分解性基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、(B)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された両末端に加水分解性基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物とを含み、(A)成分と(B)成分を20:80〜60:40で混合することによって達成できる。
【0088】
また、本発明の含フッ素コーティング剤は、摩耗耐久性を有するものであり、その硬化被膜の2,000回往復摩耗後の水接触角が100°以上、特に101°以上のものである。上記水接触角が100°未満であると、コーティング被膜としての撥水性が不十分であり、摩耗耐久性に優れた被膜とは言えない。
本発明における摩耗耐久性とは、含フッ素コーティング剤の硬化被膜を、摩擦測定機によりスチールウール(番手#0000)を用いて2,000往復回摩耗させ、その摩耗前後での水に対する接触角を測定することによって評価することができる。摩耗前後での接触角の変化が小さく、かつ、摩耗後の接触角が高い(即ち、水接触角が100°以上である)被膜が摩耗耐久性に優れた被膜であると言える。
【0089】
ここで、含フッ素コーティング剤の硬化被膜は、上述した硬化被膜作製方法と同様の方法によって作製することができる。
【0090】
摩耗耐久性の具体的な測定方法としては、下記に示す方法を用いることができる。
[摩耗耐久性測定方法]
・水接触角測定方法
接触角計(協和界面科学社製DropMaster)を用いて、硬化被膜の水接触角を25℃、湿度50%RHで測定する。なお、水接触角は、2μlの液滴をサンプル表面に着滴させた後、1秒後に測定する。
・硬化被膜の摩耗及び測定方法
上記硬化被膜を、スチールウール(ボンスター業務用スチールウール、番手#0000、日本スチールウール社製)を用いて、摩耗試験機(トライボギアTYPE:30S(新東科学社製))により2,000往復回摩耗させ、摩耗後の水に対する接触角を上記と同様に測定する。
接触面積:10mm×10mm
荷重:1kg
【0091】
なお、上記硬化被膜の水接触角が上述した値となるためには、本発明の含フッ素コーティング剤において、(A)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された片末端に加水分解性基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、(B)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された両末端に加水分解性基を有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物とを含み、(A)成分と(B)成分を20:80〜60:40の割合で混合した含フッ素コーティング剤とすることによって達成できる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。本実施例では、(A)成分と(B)成分とを混合したが、(A)成分を合成するための原料に、予め(B)成分を含ませた状態で(A)成分を合成させてもよい。
【0093】
[実施例1
、参考例1、2、比較例1〜6]
(A)成分のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性シランとして、下記の化合物1、3を、(B)成分のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー変性シランとして、下記の化合物2、4を準備した。
[化合物1]
【化64】
(式中、p1、q1はp1/q1=0.9、p1+q1≒45であり、重量平均分子量は4,000である。)
【0094】
[化合物2]
【化65】
(式中、p2、q2はp2/q2=0.9、p2+q2≒45であり、重量平均分子量は4,000である。)
【0095】
[化合物3]
【化66】
(式中、p1、q1はp1/q1=0.9、p1+q1≒45であり、重量平均分子量は4,000である。)
【0096】
[化合物4]
【化67】
(式中、p2、q2はp2/q2=0.9、p2+q2≒45であり、重量平均分子量は4,000である。)
【0097】
含フッ素コーティング剤の調製及び硬化被膜の形成
上記化合物1〜4を表1に示す混合割合で、固形分濃度20質量%になるようにエチルパーフルオロブチルエーテル〔Novec 7200(3M社製)〕に溶解させたのちに、更に固形分濃度0.1質量%になるように1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン〔Solkane 365mfc(Solvay社製)〕に溶解させて含フッ素コーティング剤を調製した。含フッ素コーティング剤調製後、24時間以内に化学強化ガラス(コーニング社製、GorillaII)をプラズマ処理(Ar:10cc、O
2:100cc、出力:250W、時間:20秒)で洗浄し、その上にスプレー塗工装置(株式会社ティーアンドケー製、NST−51)で含フッ素コーティング剤をスプレー塗工した。その後、温度:80℃、湿度:80%RHで1時間硬化させて硬化被膜を形成し、試験体を作製した。
【0098】
【表1】
【0099】
実施例1
、参考例1、2及び比較例1〜6で得られた硬化被膜を下記の方法により評価した。いずれの試験も、25℃、湿度50%RHで実施した。実施例1
、参考例1、2の結果を表2〜4に、比較例1〜6の結果を表5〜10に、それぞれ記載した。
【0100】
[膜厚の評価]
上記にて作製した硬化被膜の膜厚は、以下の装置を用いて測定を行った。
装置名:波長分散小型蛍光X線分析装置(ZSX−mini(株式会社リガク製))
【0101】
[ヘーズの評価]
上記にて作製した試験体のヘーズをJIS K7136:2000に従い以下の装置を用いて測定した。
装置名:ヘーズメーター(NDH−5000(日本電色工業株式会社製))
【0102】
[撥水撥油性の評価]
上記にて作製した試験体を用い、接触角計DropMaster(協和界面科学社製)を用いて、硬化被膜の水(液滴:2μl)に対する接触角を測定した。なお、水接触角は、2μlの液滴をサンプル表面に着滴させた後、1秒後に測定した。
【0103】
[耐摩耗性の評価]
硬化被膜のスチールウール(ボンスター業務用スチールウール、番手#0000、日本スチールウール社製)に対する耐摩耗性を、トライボギアTYPE:30S(新東科学社製)を用いて2,000往復回摩耗後の水(液滴:2μl)に対する接触角を測定した。
接触面積:10mm×10mm
荷重:1kg
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
【表7】
【0110】
【表8】
【0111】
【表9】
【0112】
【表10】
【0113】
上記実施例1、
参考例1及び比較例1、2、5、6の硬化被膜の膜厚とヘーズの関係を
図1に、
参考例2及び比較例3、4の硬化被膜の膜厚とヘーズの関係を
図2に示す。
また、上記実施例1、
参考例1及び比較例1、2、5、6の硬化被膜中の(A)成分含有量と膜厚20nm時のヘーズの関係を
図3に、
参考例2及び比較例3、4の硬化被膜中の(A)成分含有量と膜厚20nm時のヘーズの関係を
図4に示す。
【0114】
上記表2〜10及び
図1〜4の結果より、比較例1及び3は、(B)成分を含まないため、膜厚の上昇と共にヘーズの上昇が顕著にみられた。また、比較例2及び4も、(A)成分を含まないため、膜厚の上昇と共にヘーズの上昇がみられ、また摩耗耐久性に劣るものであった。比較例5は、(A)成分と(B)成分との混合質量比が本発明の範囲よりも(A)成分量が多いため、膜厚の上昇と共にヘーズの上昇が見られ、比較例6は、(A)成分と(B)成分との混合質量比が本発明の範囲よりも(B)成分量が多いため、膜厚の上昇と共にヘーズの上昇が見られ、また摩耗耐久性に劣るものであった。一方、(A)成分と(B)成分との混合質量比が20:80〜60:40で含まれる含フッ素コーティング剤をコーティングした実施例1〜3の試験体は、ヘーズの上昇が抑えられ、更に摩耗耐久性にも優れるものであった。特に、通常の膜厚である10nm程度よりも厚い、膜厚15nm以上の厚膜に塗工した場合であっても、実施例ではヘーズの上昇が抑えられ、摩耗耐久性にも優れていることがわかった。