【実施例】
【0052】
以下に本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。しかし本発明は、以下の実施例に記載された内容に限定されるものではない。
【0053】
本発明の実施例に用いた、放熱部材を構成する成分材料は次のとおりである。
<水性ポリウレタン樹脂ディスパージョン液>
・ポリエステル−ポリウレタン樹脂ディスパージョン液:
PESU1:住化バイエルウレタン(株)(商品名)バイヒドロールUH2342(1−メチル−2−ピロリドン5重量%含有)
PESU2:住化バイエルウレタン(株)(商品名)バイヒドロールUH650
・ポリカーボネート−ポリウレタン樹脂ディスパージョン液:
PCU1:住化バイエルウレタン(株)(商品名)バイヒドロールUH2606
・ポリエステル−ポリカーボネート−ポリウレタン樹脂ディスパージョン液:
PECU1:住化バイエルウレタン(株)(商品名)バイヒドロールUHXP2648
PECU2:住化バイエルウレタン(株)(商品名)バイヒドロールUHXP2648/1
(バイヒドロールは登録商標)
【0054】
実施例に用いた水性ポリウレタン樹脂ディスパージョン液のカタログ値を示す。
【表1】
【表2】
【0055】
実施例に用いた水性ポリウレタン樹脂ディスパージョン液の測定値を示す。
【表3】
<比較樹脂または樹脂ディスパージョン液>
・アクリル樹脂(水性):和信ペイント(株)(商品名)水溶性つやだしニス
・アクリル樹脂(熱硬化性):東亜合成(株)(商品名)アロニックスM−305
・アルキド(ポリエステル)樹脂(油性):和信ペイント(株)(商品名)クリヤーラッカー
・エポキシ樹脂(光硬化性):(株)ダイセル(商品名)セロキサイド2021P
<フィラー>
・合成コーディエライト:丸ス釉薬合資会社(商品名)SS−200(平均粒径7.5μm)SS−1000(平均粒径1.7μm)SS−5000(平均粒径0.6μm)
・窒化ホウ素:電気化学工業(株)デンカボロンナイトライド(商品名)SGP
・二酸化ケイ素(シリカ):富士シリシア(株)(商品名)サイリシア
・酸化アルミニウム(アルミナ):昭和電工(株)(商品名)AL−47H
・酸化チタン:石原産業(株)(商品名)タイペークCR−50
・炭化珪素:Sigma−Aldrich Japan(商品名)Silicon carbide
・黒鉛:日本黒鉛工業(株)(商品名)鱗状黒鉛粉末 F#2
・チタンブラック:三菱マテリアル(株)製、13M−C
(アロニックス、セロキサイド、デンカボロンナイトライド、タイペークは登録商標)
<カチオン発生剤>
・CPI−210S:サンアプロ(株)
【0056】
<粒度分布の測定法>
各粒子の平均粒径(メジアン径)は、堀場製作所製レーザー回折散乱式粒度分布測定装置LA−950V2を用いて測定した。すなわち、フランホーファー回折理論およびミーの散乱理論による解析を利用して、湿式法にて測定を行い、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量(体積基準)となる径をメジアン径とした。測定は湿式法、純水中に測定試料少量(耳かき一杯程度)を加えた後、超音波洗浄機中で3分間処理し、試料が分散した溶液を用いた。測定時のスラリーの濃度は、レーザーの透過率が80%になるように調整した。
【0057】
<試料作製>
自転・公転ミキサー((株)シンキー製あわとり錬太郎 ARE250)を使用して、水性ポリウレタン樹脂ディスパージョン液およびフィラーの粉末を回転数2000rpmで10分間撹拌した後に、回転数2200rpmで10分間脱泡することにより、以下の試料を調製した。
【0058】
≪実施例1≫
PESU1、および平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)を、それぞれ100重量部、15重量部を秤量して、ポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合し、実施例1の試料とした。
≪実施例2≫
PESU2、および平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)を、それぞれ100重量部、21.4重量部を秤量して、ポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合し、実施例2の試料とした。
≪実施例3〜5≫
水性ポリウレタン樹脂ディスパージョン液の種類が異なる以外は、実施例1と同様に、実施例3〜5の試料とした。
≪比較例1≫
アクリル樹脂(水性)塗料、および平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)を、それぞれ100重量部、15重量部を秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合し、比較例1の試料とした。
≪比較例2≫
アクリル樹脂(熱硬化性)、および平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)を、それぞれ100重量部、42.9重量部を秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合し、比較例2の試料とした。
≪比較例3≫
アルキド樹脂塗料(油性)、および平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)を、それぞれ100重量部、15.9重量部を秤量してポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合し、比較例3の試料とした。
≪比較例4≫
エポキシ樹脂(光硬化性)、平均粒径7.5μmの合成コーディエライト(SS−200)、メチルエチルケトン(MEK)、およびCPI-210Sを、それぞれ70重量部、30重量部、30重量部、0.3重量部を秤量して、ポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合し、比較例4の試料とした。
【表4】
≪実施例6≫
PECU1、および平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)を、それぞれ100重量部、35重量部を秤量して、ポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合し、実施例6の試料とした。
≪比較例5、6≫
フィラーの種類が異なる以外は、実施例6と同様に、比較例5および6の試料とした。
≪比較例7≫
PECU1のみを試料とした。
≪比較例8≫
黒色アルマイト処理のみとした(下記[1.放熱特性の評価]では使用するアルミニウム板の片面を黒色アルマイト処理したものを用いた)。
【表5】
≪実施例7〜27≫
さらに、色味の調整や放熱効果を高めるために、第一のフィラーとして平均粒径7.5μmコーディエライト(SS−200)と第二のフィラーを添加した。水性ポリウレタン樹脂ディスパージョン液およびフィラーの添加量の割合を下記に示す。試料の作製手順は実施例6と同様である。なお実施例7、14、21において、第一のフィラーとは異なる粒径のコーディエライトを併用しており、実質第二のフィラーを含む構成ではないが、便宜的に表6において、第二のフィラー欄に粒径の異なるコーディエライトを記載した。
≪比較例9〜11≫
第一のフィラーとしてアルミナと第二のフィラーとして酸化チタンを添加した。水性ポリウレタン樹脂ディスパージョン液および追加フィラーの添加量の割合を下記に示す。試料の作製手順は実施例6と同様である。
【表6】
【0059】
[1.放熱特性の評価]
実施例および比較例について、放熱特性の評価を示す。
[1−1 放熱部材の調製]
スピンコーターを用いて、実施例および比較例の各試料を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミニウム板に塗布した。スピンコーターの回転数は、それぞれの実施例および比較例の塗膜が約30μmになるように調整した。膜厚は、Nikon社製 DIGIMICRO MFC−101Aを使用して測定した。
ホットプレートを用いて、130度で3分間加熱し、塗布した実施例および比較例の各試料を乾燥させ、アルミニウム板を有する放熱部材を形成した。
比較例2に係る放熱部材は、調製した試料を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミニウム板にスピンコートで塗布した後に190度のホットプレートで硬化させ、アルミニウム板を有する放熱部材を形成した。
比較例4に係る放熱部材は、調製した試料を40×40(mm)四方で厚み0.4mmのアルミニウム板にスピンコートで塗布した後に紫外線照射器で硬化させ、アルミニウム板を有する放熱部材を形成した。
比較例7に係る放熱部材は、PECU1のみをアルミニウム板に塗布した後に乾燥させたものである。比較例8に係る放熱部材は、樹脂を有さず、アルミニウム板の片面を黒色アルマイト処理したものである。
【0060】
[1−2 放熱特性の評価I]
放熱部材のアルミ面側とトランジスタ(東芝トランジスタ製 シリコンNPN 三重拡散形 2SD2012)を両面テープ(住友スリーエム(株)製 熱伝導性接着剤転写テープNo.9885)を用いて貼り合わせた。トランジスタの放熱部材を貼り合わせる面の裏面にK熱電対(理化工業(株)製ST−50)を取り付け、データロガーを用いてパソコンにてその温度を記録した。このトランジスタを取り付けた放熱部材を40℃に設定した恒温槽中央に静置し、トランジスタの温度が40℃で一定になったことを確認した後、トランジスタに直流安定化電源を用いて1.18Vを印加し、トランジスタ表面の温度変化を測定した。
【0061】
実施例1〜5および比較例1〜4の試料を用いて放熱部材を調製し、その放熱特性を評価した。評価結果を下記に示す。
【表7】
【0062】
表7の示す結果から、本発明の実施例1〜5の水性塗料を用いた放熱部材は、比較例1〜4と比較して優れた放熱性を有していることがわかる。また、実施例1〜5の水性塗料を用いた放熱試験結果から、樹脂の種類はポリカーボネート−ポリウレタン、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエステル−ポリカーボネート−ポリウレタンが特に好ましい。
【0063】
[1−3 放熱特性の評価II]
放熱部材の金属面側とセラミックヒーター(坂口電熱(株)製マイクロセラミックヒーターMS−3)を両面テープ(住友スリーエム(株)製 熱伝導性接着剤転写テープNo.9885)を用いて貼り合わせた。セラミックヒーターの放熱部材を貼り合わせる面の裏面にK熱電対(理化工業(株)製ST−50)を取り付け、データロガーを用いてパソコンにてその温度を記録した。このヒーターを取り付けた放熱部材を40℃に設定した恒温槽中央に静置し、セラミックヒーターの温度が40℃で一定になったことを確認した後、セラミックヒーターに直流安定化電源を用いて14Vを印加し、セラミックヒーター表面の温度変化を測定した。セラミックヒーターは一定の熱量を発生しているので、取り付けてある放熱部材の放熱効果が高いほど、セラミックヒーターの温度は低下する。すなわち、セラミックヒーターの温度が低くなる放熱部材ほど放熱効果が高いといえる。
【0064】
実施例6〜27および比較例5〜11の試料を用いて放熱部材を調製し、その放熱特性を評価した。評価結果を下記に示す。
【表8】
【表9】
【0065】
表8の示す結果から、本発明の水性塗料を用いた放熱部材は、優れた放熱性を有していることがわかる。表9の示す結果から、本発明の水性塗料を用いた放熱部材は、第二のフィラーを添加しても放熱性能が損なわれることはなく、特に窒化ホウ素、アルミナは熱伝導率が高いため、水性塗料から形成された膜の放熱効果をより向上させることができるため好ましい。また、酸化チタンは塗料中に均一に分散し、塗膜を白に着色できるため好ましい。チタンブラックは塗料中に均一に分散し、塗膜を黒に着色できるため好ましい。
【0066】
[2.膜物性の評価]
実施例および比較例について、膜物性の評価を示す。[2.膜物性の評価]で用いた試料は、[1.放熱特性の評価]で用いたものと同様である。
【0067】
[2−1 耐熱性の評価]
アルミカップに試料を流し込み、常温で24時間乾燥した。なお、塗膜の厚さは乾燥後に1mmとなるよう調整した。この塗膜を切り取り、示差熱熱重量同時測定装置EXSTAR TG/DTA6000シリーズ(SIIナノテクノロジー(株)社製)を用いて、塗膜の5%質量損失温度を測定した。
【表10】
【0068】
上記の結果から、本発明の水性塗料からなる塗膜は、優れた耐熱性を有することがわかる。このため、より高い温度領域での使用が可能である。また、助溶剤を含有する実施例1と、助溶剤を含有しない実施例2〜5を比較すると、助溶剤が入っていないものが好ましく、実施例2〜5と比較例1、3および4を比較すると、実施例2〜5が好ましく、実施例2のポリエステル−ポリウレタン、実施例3のポリカーボネート−ポリウレタンもしくは実施例4および5のポリエステル−ポリカーボネート−ポリウレタンが特に好ましい。また、熱硬化性アクリル塗料硬化膜(比較例2)については、耐熱性は非常に優れているが、加熱による体積収縮率が大きくクラックが入って基材から剥がれ落ちてしまうため好ましくない。
【0069】
[2−2 塗膜密着性の評価]
厚さ0.4mmのアルミニウム板、厚さ0.4mmの銅版、厚さ1.2mmのマグネシウム板および厚さ0.2mmのステンレス板のそれぞれに試料をスピンコーターで塗装し、130℃で3分加熱乾燥した。なお、塗膜の厚さは乾燥後に30μmとなるよう調整した。密着性試験は、JIS−K5600−5−6に準じ、10×10で100マスの切り込みを付け、TQC ISO付着テープ/STANDARD(コーテック(株)社製)を用い、塗膜の剥離の有無を判定した。全く剥離しなかった場合を◎、剥離しなかったマスの数が90マス以上の場合を○、70マス以上90マス未満の場合を△、70マス未満の場合を×とした。
【0070】
実施例2〜4および比較例1〜4で作製した試料を用いて、製膜した塗膜の密着性試験を行った結果を下記に示す。
【表11】
【0071】
上記の結果から、本発明の水性塗料からなる塗膜は、いずれも優れた基材密着性を有することがわかる。また、ポリカーボネート−ポリウレタンおよびポリエステル−ポリウレタンの塗膜はいずれの基材に対しても密着性が極めて優れており特に好ましい。基材との密着性に優れているため、発熱部から効率よく熱が伝わり高い放熱性能を得ることができる。
【0072】
[2−3 耐屈曲性の評価]
実施例2〜4および比較例1〜4で作製した試料を用いて、製膜した塗膜の耐屈曲性試験を行った結果を下記に示す。厚さ0.4mmのアルミニウム板に試料をスピンコーターで塗装し、130℃で3分加熱乾燥した。なお、塗膜の厚さは乾燥後に30μmとなるよう調整した。耐屈曲性試験は、アルミニウム板を、塗膜面を外側にして90度折り曲げたとき、塗膜に亀裂ができなかったものを○、亀裂ができたものを×とした。
【表12】
【0073】
上記の結果から、本発明の水性塗料からなる塗膜は、実施例2〜4のいずれも、非常に優れた耐屈曲性を有することがわかる。このため、基材への塗装後に打ち抜きや曲げ加工なども可能となる。
【0074】
[2−4 引っかき硬度の評価]
実施例2〜4で作製した試料を用いて、製膜した塗膜の塗膜硬度の評価を行った結果を下記に示。厚さ0.4mmのアルミニウム板に試料をスピンコーターで塗装し、130℃で3分加熱乾燥した。なお、塗膜の厚さは乾燥後に30μmとなるよう調整した。引っかき硬度テストの方法は、JIS−K−5−4に準じた。
【表13】
【0075】
上記の結果から、実施例3のポリカーボネート−ポリウレタンおよび実施例4のポリエステル−ポリカーボネート−ポリウレタンは、柔軟性を持つにもかかわらず優れた引っかき硬度を有していることがわかる。このため、傷がつきにくい。また、本発明の水性塗料からなる塗膜は、一度ついた傷が緩和され傷が目立たなくなることから、外装塗料としても優れている。熱硬化性アクリル塗料硬化膜(比較例2)については、引っかき硬度は優れているが、基材との密着性が弱く基材から剥がれ落ちてしまうため好ましくない。
【0076】
各種ポリウレタン樹脂ディスパージョン液とフィラーからなる塗料を作製することで、塗膜の密着性、硬度、折り曲げ強度などの膜物性を調節することが可能である。
【0077】
[3.塗料物性の評価]
各種ポリウレタン樹脂ディスパージョン液およびフィラーからなる塗料の物性についての評価を示す。[3.塗料物性の評価]で用いた試料は、[1.放熱特性の評価]で用いたものと同様である。
【0078】
≪実施例28≫
PESU2、PECU1、および平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)を、それぞれ75重量部、25重量部、19.8重量部を秤量して、ポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合し、実施例28の試料とした。
≪実施例29〜33≫
水性ポリウレタン樹脂ディスパージョン液の種類、および水性ポリウレタン樹脂ディスパージョン液とフィラーの混合比が異なる以外は、実施例28と同様に実施例29〜33の試料とした。
【表14】
【0079】
[3−1 耐熱性の評価]
実施例28〜33の試料を用いて製膜した塗膜の耐熱性を、[2−1 耐熱性の評価]と同様の手順で評価した。
【表15】
【0080】
上記の結果から、本発明の水性塗料からなる塗膜は、高い耐熱性を有することがわかる。このため、より高い温度領域での使用が可能である。また、実施例28〜33から、ポリエステル−ポリウレタンの添加量により耐熱性の改善が可能であることがわかる。
【0081】
[3−2 塗膜密着性の評価]
実施例28〜33の試料を用いて製膜した塗膜の密着性を、厚さ0.4mmのアルミニウム板を用いて、[2−2 塗膜密着性の評価]と同様の手順で評価した。なお全く剥離しなかった場合を◎、剥離しなかったマスの数が90マス以上の場合を○、70マス以上90マス未満の場合を△、70マス未満の場合を×とした。
【表16】
【0082】
上記の結果から、本発明の水性塗料からなる塗膜は、密着性に優れていることがわかる。また、ガラス転移点が低く密着性の良いポリカーボネート−ポリウレタンを25%以上塗料に添加すると、基材と塗膜の密着性がさらに向上し好ましい。ポリウレタン樹脂微粒子を混合することで、各ポリウレタン塗膜の特性を発現させることができる。
【0083】
[3−3 耐屈曲性の評価]
実施例28〜33の試料を用いて製膜した塗膜の耐屈曲性を、[2−3 耐屈曲性の評価]と同様の手順で評価した。
【表17】
【0084】
上記の結果から、本発明の水性塗料からなる塗膜は、実施例28〜33のいずれも、非常に優れた耐屈曲性を有することがわかる。このため、基材への塗装後に打ち抜きや曲げ加工なども可能となる。
【0085】
[3−4 引っかき硬度の評価]
実施例28〜33の試料を用いて製膜した塗膜の引っかき硬度を、[2−4 引っかき硬度の評価]と同様の手順で評価した。
【表18】
【0086】
上記の結果から、本発明の水性塗料からなる塗膜は、優れた耐屈曲性を有しているにもかかわらず、優れた引っかき硬度を有していることがわかる。このため、傷がつきにくい。また、ポリカーボネート−ポリウレタンを50%以上添加することで引っかき硬度がさらに向上し傷がつきにくくなり好ましい。また、本発明の水性塗料からなる塗膜は、一度ついた傷が緩和され傷が目立たなくなることから、外装塗料としても優れている。
【0087】
[4.塗料物性の評価]
各種ポリウレタン樹脂ディスパージョン液とフィラーからなる塗料に分散剤、消泡剤などの各種の添加剤を加えることで、塗料のハンドリングおよび保存安定性を改善することが可能である。
各種ポリウレタン樹脂ディスパージョン液、フィラー、および添加剤からなる塗料の物性についての評価を示す。[4.塗料物性の評価]に用いた試料を構成する成分材料は次のとおりである。
<分散剤>
・高分子量酸性ポリマーアルキロールアンモニウム塩溶液:ビックケミー・ジャパン(株)(商品名)ANTI−TERRA−250
・顔料親和性高分子量ブロック共重合物:ビックケミー・ジャパン(株)(商品名)DISPERBYK−190
・顔料親和性共重合物:ビックケミー・ジャパン(株)(商品名)DISPERBYK−191
・顔料親和性コポリマー:ビックケミー・ジャパン(株)(商品名)DISPERBYK−194N
・顔料親和性コポリマー:ビックケミー・ジャパン(株)(商品名)DISPERBYK−199
・顔料親和性アクリルコポリマー:ビックケミー・ジャパン(株)(商品名)DISPERBYK−2012
(ANTI−TERRA、DISPERBYKは登録商標)
<消泡剤>
・破泡性ポリマー/疎水性粒子混合物:ビックケミー・ジャパン(株)(商品名)BYK−1710
【0088】
≪実施例34≫
PECU1、平均粒径1.7μmの合成コーディエライト(SS−1000)、およびANTI−TERRA−250を、それぞれ100重量部、15重量部、1.72重量部を秤量して、ポリプロピレン製の容器に入れ、自転・公転ミキサーで混合し、実施例34の試料とした。
≪実施例35〜40≫
添加剤の種類および添加量が異なる以外は、実施例34と同様に調製し、実施例35〜40の試料とした。
【表19】
【0089】
[4−1 分散剤による効果]
フィラーの沈降を防止するための分散剤の効果について評価結果を下記に示す。分散効果の確認は、実施例34〜39および実施例4の試料30gを、50mlのガラスサンプル瓶に詰め5日間静置し、その後ガラスサンプル瓶を手で上下に振って振盪し、振盪開始直後から3分未満でフィラーが再分散したものを○、3分以上10分未満でフィラーが再分散したものを△、再分散しなかったものを×とした。
【表20】
【0090】
ANTI−TERRA−250はレオロジーコントロール剤であり、フィラーの沈降速度は軽減できたが、振盪によってフィラーを再分散させることはできなかった。このことから、ANTI−TERRA−250は、他の分散剤と併用することで、フィラーの沈降速度を減速させることができると考えられる。DISPERBYK−191とDISPERBYK−2012は、沈降するフィラーの量を減らすことができたが、振盪による分散に少し時間がかかった。このことから、比較的粒径の大きいフィラーまで分散が可能であることが分かった。DISPERBYK−199は、沈降するフィラーの量は添加剤無しのものとほぼ変わらなかったが、振盪により容易にフィラーが分散した。このことから、フィラーどうしの凝集を防止するのに有効であることがわかった。
一方、DISPERBYK−190は、ほぼ効果が見られず、DISPERBYK−194Nは、添加直後からポリウレタン樹脂微粒子が沈降または凝集してしまった。これは、DISPERBYK−194Nの酸価が他の分散剤と比較すると大きく、添加により分散液のpHが上昇したことに起因する。本発明の塗料に適した分散剤を選択することで、効果的にフィラーを分散させることが可能となり、放熱性能を効果的に発現させることができる。
[4−2 消泡剤による効果]
以下に記載するのは、本発明のさらなる改良された態様である。実施例4の水性塗料は、十分な放熱効果を示しているが、アルミニウム板へのさらなる密着効果を与えるために、消泡剤を添加した態様である実施例40(表19参照)を製造した。実施例40は、実施例4に比べて消泡効果が高く、密着性(塗膜の成膜性)がさらに優れる。すなわち、水性塗料中にフィラーが沈殿した場合、塗料を振盪・撹拌して再度フィラーを分散させる必要が生じた場合には消泡剤の添加が有効である。試験は以下のように行った。
実施例40および実施例4の試料30gを、50mlのガラスサンプル瓶に詰め、ガラスサンプル瓶を手で上下に振って3分間振盪し、振盪終了直後から10分間静置して、気泡の有無を確認した。また、成膜性の評価については、厚さ0.4mmのアルミニウム板に振盪後10分間静置した塗料を30μm製膜し、塗膜にムラが生じる様子を観察した。
実施例40のBYK−1710を添加した塗料では、振盪後にマクロな気泡は生じず、僅かに生じたミクロな気泡も10分後にはすべて消えることが確認できた。また、製膜時にも気泡によるムラやはじきなどは生じず、均一な膜が形成できた。
[4−3 放熱特性の評価]
実施例40の試料を用いて[4−2 消泡剤による効果]で作製した塗装済みアルミニウム板を放熱部材として用い、アルミ面側とトランジスタ(東芝トランジスタ製 シリコンNPN 三重拡散形 2SD2012)を両面テープ(住友スリーエム(株)製 熱伝導性接着剤転写テープNo.9885)を用いて貼り合わせた。トランジスタの放熱部材を貼り合わせる面の裏面にK熱電対(理化工業(株)製ST−50)を取り付け、データロガーを用いてパソコンにてその温度を記録した。このトランジスタを取り付けた放熱部材を40℃に設定した恒温槽中央に静置し、トランジスタの温度が40℃で一定になったことを確認した後、トランジスタに直流安定化電源を用いて1.18Vを印加し、トランジスタ表面の温度変化を測定した。その評価結果を下記に示す。
【表21】
表21の示す結果から、本発明の実施例40の水性塗料を用いた放熱部材は、実施例4と比較してほぼ同程度の放熱性を有していることがわかる。このことから、消泡剤は放熱特性に悪影響を及ぼさないことが分かる。むしろ、塗膜中に気泡ができたり、気泡によって塗膜にムラが生じたりすることにより、放熱特性に悪影響を及ぼす可能性があるため、消泡剤を添加することでそのようなリスクを回避することができる。
【0091】
本明細書中で引用する刊行物、特許出願および特許を含むすべての文献を、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込むのと、また、その内容のすべてをここで述べるのと同じ限度で、ここで参照して組み込む。
【0092】
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞および同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限定しない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠である、請求項に記載されていない要素を示すものとは解釈されないものとする。
【0093】
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読んだ上で、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組み合わせも本発明に包含される。