【実施例】
【0022】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、道路に敷設された磁気マーカ10を検出するための磁気マーカ検出方法及び磁気マーカ検出システム1に関する例である。この内容について、
図1〜
図9を用いて説明する。
【0023】
磁気マーカ検出システム1は、
図1〜
図3のごとく、道路(走行路)に敷設された磁気マーカ10を検出するための車両側のシステムであり、磁気センサCn(nは1〜15の整数)を含むセンサユニット(マーカ検出手段)11と、センサユニット11を制御する検出ユニット12と、の組み合わせにより構成されている。以下、磁気マーカ10を概説した後、磁気マーカ検出システム1を構成するセンサユニット11、検出ユニット12を説明する。
【0024】
磁気マーカ10は、車両5が走行する車線100の中央に沿うように路面100Sに敷設される道路マーカである。この磁気マーカ10は、直径20mm、高さ28mmの柱状をなし、路面100Sに設けた孔への収容が可能である。磁気マーカ10をなす磁石は、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させたフェライトプラスチックマグネットであり、最大エネルギー積(BHmax)=6.4kJ/m
3という特性を備えている。この磁気マーカ10は、路面100Sに穿設された孔に収容された状態で敷設される。
【0025】
本例の磁気マーカ10の仕様の一部を表1に示す。
【表1】
この磁気マーカ10は、磁気センサCnの取付け高さとして想定する範囲100〜250mmの上限の250mm高さにおいて、8μT(8×10
−6T)の磁束密度の磁気を作用できる。
【0026】
次に、磁気マーカ検出システム1を構成するセンサユニット11及び検出ユニット12について説明する。
センサユニット11は、
図1及び
図2のごとく、車両5の底面に当たる車体フロア50に取り付けられるユニットである。磁気マーカ検出システム1では、車両5の前後方向における離隔した2箇所にセンサユニット11が配置されている。なお、以下の説明では、車両の前後方向における前側のセンサユニット11と後ろ側のセンサユニット11との間隔をセンサスパンSとする。
【0027】
前側のセンサユニット11は、フロントバンパーの内側付近に取り付けられ、後ろ側のセンサユニット11は、リアバンパーの内側付近に取り付けられている。本例の車両5の場合、路面100Sを基準とした取付け高さがいずれも200mmとなっている。
各センサユニット11は、
図2及び
図3のごとく、車幅方向に沿って一直線上に配列された15個の磁気センサCnと、図示しないCPU等を内蔵した検出処理回路110と、を備えている。
【0028】
検出処理回路110(
図3)は、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理(検出処理)などの各種の演算処理を実行する演算回路である。この検出処理回路110は、各種の演算を実行するCPU(central processing unit)のほか、ROM(read only memory)やRAM(random access memory)などのメモリ素子等の素子を利用して構成されている。
【0029】
検出処理回路110は、各磁気センサCnが出力するセンサ信号を取得してマーカ検出処理等を実行する。検出処理回路110が演算した磁気マーカ10の検出結果は、全て検出ユニット12に入力される。なお、前側及び後ろ側のセンサユニット11は、いずれも3kHz周期でマーカ検出処理を実行可能である。
【0030】
ここで、磁気センサCnの構成を説明しておく。本例では、磁気センサCnとして、MI素子21と駆動回路とが一体化された1チップのMIセンサを採用している(
図4参照。)。MI素子21は、CoFeSiB系合金製のほぼ零磁歪であるアモルファスワイヤ211と、このアモルファスワイヤ211の周囲に巻回されたピックアップコイル213と、を含む素子である。磁気センサCnは、アモルファスワイヤ211にパルス電流を印加したときにピックアップコイル213に発生する電圧を計測することで、アモルファスワイヤ211に作用する磁気を検出する。MI素子21は、感磁体であるアモルファスワイヤ211の軸方向に検出感度を有している。本例のセンサユニット11の各磁気センサCnでは、鉛直方向に沿ってアモルファスワイヤ211が配設されている。
【0031】
駆動回路は、アモルファスワイヤ211にパルス電流を供給するパルス回路23と、ピックアップコイル213で生じた電圧を所定タイミングでサンプリングして出力する信号処理回路25と、を含む電子回路である。パルス回路23は、パルス電流の元となるパルス信号を生成するパルス発生器231を含む回路である。信号処理回路25は、パルス信号に連動して開閉される同期検波251を介してピックアップコイル213の誘起電圧を取り出し、増幅器253により所定の増幅率で増幅する回路である。この信号処理回路25で増幅された信号がセンサ信号として外部に出力される。
【0032】
磁気センサCnは、磁束密度の測定レンジが±0.6ミリテスラであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.02マイクロテスラという高感度のセンサである。このような高感度は、アモルファスワイヤ211のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するというMI効果を利用するMI素子21により実現されている。さらに、この磁気センサCnは、3kHz周期での高速サンプリングが可能で、車両の高速走行にも対応している。本例では、センサユニット11による磁気計測の周期が3kHzに設定され、センサユニット11は、磁気計測を実施する毎にセンサ信号を検出ユニット12に入力する。
【0033】
磁気センサCnの仕様の一部を表2に示す。
【表2】
【0034】
上記のように、磁気マーカ10は、磁気センサCnの取付け高さとして想定する範囲100〜250mmにおいて8μT(8×10
−6T)以上の磁束密度の磁気を作用できる。磁束密度8μT以上の磁気を作用する磁気マーカ10であれば、磁束分解能が0.02μTの磁気センサCnを用いて確実性高く検出可能である。
【0035】
検出ユニット12は、
図1〜
図3のごとく、前側及び後ろ側のセンサユニット11を制御すると共に、各センサユニット11の検出結果を利用して最終的な検出結果を確定して出力するユニットである。この検出ユニット12には、前側及び後ろ側のセンサユニット11のほか、車速センサや車両ECU等が電気的に接続されている。検出ユニット12が出力する検出結果は、図示しない車両ECUに入力され、車線維持のための自動操舵制御や車線逸脱警報や自動運転など、車両側の各種の制御に利用される。
【0036】
検出ユニット12は、各種の演算を実行するCPUのほか、ROMやRAMなどのメモリ素子等が実装された電子基板(図示略)を備えるユニットである。検出ユニット12は、前側のセンサユニット11、後ろ側のセンサユニット11の動作を制御すると共に、各センサユニット11の検出結果を統合して最終的な検出結果を確定して出力する。
【0037】
検出ユニット12は、以下の各手段としての機能を備えている。
(a)判定手段:前側のセンサユニット11による検出結果、及び後ろ側のセンサユニット11による検出結果のうちの少なくともいずれか一方に基づいて、磁気マーカ10を検出したか否かの判定を確定させる手段。
(b)期間設定手段:前側のセンサユニット11が磁気マーカ10を検出したとき、後ろ側のセンサユニット11が同じ磁気マーカ10を検出できる時点を予測し、その検出できる時点を含む時間的な期間を検出期間(所定の期間)として設定する手段。
【0038】
次に、各センサユニット11が磁気マーカ10を検出するための(1)マーカ検出処理について説明し、続いて(2)磁気マーカ検出システム1の全体動作の流れを説明する。
(1)マーカ検出処理
前側及び後ろ側のセンサユニット11は、検出ユニット12により指定された後述する期間において、3kHzの周期でマーカ検出処理を実行する。センサユニット11は、マーカ検出処理の実行周期(p1〜p7)毎に、15個の磁気センサCnのセンサ信号が表す磁気計測値をサンプリングして車幅方向の磁気分布を得る(
図5参照。)。この車幅方向の磁気分布のうちのピーク値は、同図のごとく、磁気マーカ10を通過するときに最大となる(
図5中のp4の周期)。
【0039】
磁気マーカ10が敷設された車線100に沿って車両5が走行する際には、上記の車幅方向の磁気分布のピーク値が、
図6のように磁気マーカ10を通過する毎に大きくなる。マーカ検出処理では、このピーク値に関する閾値判断が実行され、所定の閾値以上であったときに磁気マーカ10を検出したと判断される。
【0040】
なお、センサユニット11は磁気マーカ10を検出した際には、いずれの磁気センサCnの磁気計測値がピーク値であったかを特定する。そして、センサユニット11の中央に対する特定した磁気センサの車幅方向の位置ずれ量を、磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量として検出する。なお、車幅方向の磁気分布を曲線近似し、ピーク値の位置を15個の磁気センサの間隔よりも細かい精度で特定すれば、横ずれ量の精度を一層向上できる。
【0041】
(2)磁気マーカ検出システム1の全体動作
磁気マーカ検出システム1の全体動作について、主に検出ユニット12を主体として、
図7のフロー図を用いて説明する。
検出ユニット12は、前側のセンサユニット11に上記のマーカ検出処理を実行させ(S101、第1の検出ステップ)、磁気マーカ10を検出するまで繰り返し実行させる(S102:NO)。検出ユニット12は、前側のセンサユニット11から磁気マーカ10を検出した旨の入力を受けたとき(S102:YES)、後ろ側のセンサユニット11にマーカ検出処理を実行させる時間的な期間である検出期間を設定する(S103、期間設定ステップ)。
【0042】
具体的には、検出ユニット12は、
図8のごとく、まず、車速センサで計測した車速(車両の速度)V(m/秒)により上記のセンサスパンS(m)を除算した所要時間δtaを、前側のセンサユニット11による磁気マーカ10の検出の時点である時刻t1に加算する。このように時刻t1に所要時間δtaを加算すれば、後ろ側のセンサユニット11が磁気マーカ10を検出できる時点の時刻t2を予測できる。そして、検出ユニット12は、基準距離である1(m)を車速V(m/秒)で除算した区間時間δtbを時刻t2から差し引いた時刻(t2−δtb)を始期とし、区間時間δtbを時刻t2に加算した時刻(t2+δtb)を終期とした時間的な区間を検出期間として設定する。なお、基準距離については、センサユニット11の検出範囲等を考慮して適宜変更可能である。
【0043】
検出ユニット12は、
図8の検出期間内において、後ろ側のセンサユニット11にマーカ検出処理を繰り返し実行させる(S104:NO→S114、第2の検出ステップ)。このマーカ検出処理の内容については、ステップS101の前側のセンサユニット11によるマーカ検出処理と同様である。検出ユニット12は、検出期間が終了すると(S104:YES)、後ろ側のセンサユニット11が磁気マーカ10を検出できたか否かに応じて(S105)、磁気マーカ10を検出したか否かの判定を確定して出力する(S106、S116)。
【0044】
検出ユニット12は、前側のセンサユニット11による磁気マーカ10の検出に続いて(S102:YES)、上記の検出期間(
図8)において、後ろ側のセンサユニット11でも磁気マーカ10を検出できたとき(S105:YES)、磁気マーカ10を検出した旨を確定して車両ECUなどに出力する(S106)。なお、後ろ側のセンサユニット11が磁気マーカ10を検出したとき、検出期間の終了を待たずに上記のステップS106に移行しても良い。
【0045】
一方、前側のセンサユニット11で磁気マーカ10を検出できたが(S102:YES)、上記の検出期間(
図8)において、後ろ側のセンサユニット11で磁気マーカ10を検出できなかった場合には(S105:NO)、検出ユニット12は、最終的な判定として、磁気マーカ10を検出しなかった旨を確定して出力する(S116)。
【0046】
以上のように構成された磁気マーカ検出システム1によれば、例えば、前側のセンサユニット11が磁気マーカ10を誤検出した場合であっても、直ちに誤検出に至ることがない。前側のセンサユニット11による磁気マーカ10の検出は、後ろ側のセンサユニット11によるマーカ検出処理の契機となるだけだからである。
【0047】
この磁気マーカ検出システム1では、前側のセンサユニット11が磁気マーカ10を検出した時点を基準とする検出期間(所定の期間)内に、後ろ側のセンサユニット11が磁気マーカ10を検出したことが、磁気マーカ10を検出した旨の判定を確定するための条件となっている。この条件が満たされたとき、磁気マーカ10を検出した旨の判定が確定する。後ろ側のセンサユニット11によるマーカ検出処理は、前側のセンサユニット11で磁気マーカ10が検出された場合のみ実行されるため、誤検出の可能性が少なくなっている。
【0048】
このように磁気マーカ検出システム1は、複数のセンサユニット11を利用して時間的なタイミングを僅かにずらしてマーカ検出処理を実行する。そして、複数のセンサユニット11が同じ磁気マーカ10を検出できたときに、磁気マーカ10を検出した旨の判定を確定させる。この磁気マーカ検出システム1では、複数のセンサユニット11がそれぞれマーカ検出処理を実行することで、検出確実性が向上している。
【0049】
本例では、前側及び後ろ側のセンサユニット11がマーカ検出処理を実行する構成を例示したが、各磁気センサCnのセンサ信号を全て検出ユニット12に取り込み、全ての処理を検出ユニット12で実行する構成を採用することも良い。磁気マーカ検出システム1の動作中では、前側及び後ろ側のセンサユニット11のうちのいずれか一方が択一的にマーカ検出処理を実行している。検出期間では、後ろ側のセンサユニット11がマーカ検出処理を実行する一方、それ以外のシステム動作中の期間では、前側のセンサユニット11がマーカ検出処理を実行する。磁気マーカ検出システム1はセンサユニット11を2つ備える一方、2つのセンサユニット11のマーカ検出処理が同時に実行されることがない。それ故、各磁気センサCnのセンサ信号を全て検出ユニット12に取り込み、全ての処理を検出ユニット12で実行する構成を容易に採用できる。このような構成を採用すれば、ハードウェアの規模を抑制できコストを抑制できる。
【0050】
磁気マーカ検出システム1では、後ろ側のセンサユニット11がマーカ検出処理を実行する検出期間(
図8)の長さが車速に応じて変動する。この検出期間の長さは、車速が高いほど短く、車速が低いほど長くなっている。このような構成を採用すれば、検出期間のうち、後ろ側のセンサユニット11の検出範囲に磁気マーカ10が位置しない時間の割合を抑制することで、誤検出の発生を未然に抑制できる。
【0051】
なお、前側及び後ろ側のセンサユニット11について、マーカ検出処理を常時実行することも良い。この場合、前側のセンサユニット11が磁気マーカ10を検出したとき、
図8の検出期間と同様に所定の期間を設定し、この所定の期間における後ろ側のセンサユニット11の検出結果を利用して最終的な検出結果を確定させると良い。前側のセンサユニット11が磁気マーカ10を検出した後、所定の期間内に後ろ側のセンサユニット11が磁気マーカ10を検出したとき、磁気マーカ10を検出した旨の判定を確定させると良い。
【0052】
なお、検出か否かの閾値(
図6参照。)を、前側のセンサユニット11と後ろ側のセンサユニット11とで異ならせることも良い。例えば、前側のセンサユニット11の閾値を緩く設定する一方、後ろ側のセンサユニット11の閾値を厳しく設定することも良い。この場合には、前側のセンサユニット11による磁気マーカ10の検出漏れを抑制できると共に、後ろ側のセンサユニット11による磁気マーカの検出確実性を確保できる。
【0053】
前側のセンサユニット11が磁気マーカ10を検出したときの第1の横ずれ量、及び後ろ側のセンサユニット11が磁気マーカ10を検出したときの第2の横ずれ量を、検出ユニット12に入力することも良い。検出ユニット12は、2つの横ずれ量の差分である変動量を、磁気マーカ10を検出したか否かを確定的に判定するための指標値の一つとすると良い。例えば、センサスパンS(
図2)に対して変動量が過大であれば、前側のセンサユニット11と後ろ側のセンサユニット11が検出した磁気マーカ10を同一のものと判定することが適当ではなく、検出結果の信頼性が低い、あるいは磁気マーカ10を未検出と判定できる。
【0054】
本例では、センサユニット11を車両の前後方向における2箇所に設けている。これに代えて、車両の前後方向における3箇所以上にセンサユニット11を設けることも良い。前後方向の位置が異なる任意の2箇所の組み合わせについて、本例の磁気マーカ検出方法を適用でき、異なる2箇所の組み合わせを複数組み合わせることも良い。例えば、前後方向における前、中央、後ろの3箇所のセンサユニットであれば、前と後ろの組み合わせ、前と中央の組み合わせ、中央と後ろの組み合わせについて、磁気マーカ検出方法を適用できる。そして、3種類の組み合わせに由来する3つの結果を組み合わせて、検出か否かの判定を確定させることもできる。例えば、3つの結果が全て検出であるときに検出と判定しても良いし、多数決で検出か否かを判定しても良い。
【0055】
センサユニット11には、地磁気のほか、例えば鉄橋や他の車両などのサイズ的に大きな磁気発生源に由来して、各磁気センサCnには一様に近い磁気的なノイズであるコモンノイズが作用している。このようなコモンノイズは、センサユニット11の各磁気センサCnに対して一様に近く作用する可能性が高い。そこで、車幅方向に配列された各磁気センサCnの磁気計測値の差分値を利用して磁気マーカ10を検出することも良い。車幅方向の磁気勾配を表すこの差分値では、各磁気センサCnに一様に近く作用するコモンノイズが効果的に抑制されている。差分値の分布波形は、
図9のように、磁気マーカ10の車幅方向の位置に対応してゼロクロスが生じ、そのゼロクロスの両側で正負が逆の互い違いのふた山の波形となる。
【0056】
センサユニット11を取り付けた車両5が磁気マーカ10を通過する際には、車両5が磁気マーカ10に接近するに従ってふた山の分布波形の振幅が次第に大きくなり、磁気マーカ10の真上で最大振幅となる(p4の周期)。その後、車両5が磁気マーカ10から遠ざかるに従ってふた山の分布波形の振幅が次第に小さくなる。上記のような差分値の分布波形を利用して磁気マーカ10を検出するには、例えば、ゼロクロスの両側の正負のふた山の振幅に関する閾値判断を適用すると良い。横ずれ量として、ゼロクロスの位置を特定すると良い。直線近似あるいは曲線近似を利用してゼロクロスの位置を精度高く特定することも有効である。
【0057】
15個の磁気センサCnを備える前側のセンサユニット11に代えて、1個の磁気センサを備えるセンサユニットを採用しても良い。この磁気センサの磁気計測値を検出ユニット12に入力し、検出ユニット12でマーカ検出処理を実行することも良い。このように前側の磁気センサは磁気マーカ10の有無の検出のみに利用し、後ろ側のセンサユニット11で磁気マーカ10の有無と横ズレ量とを検出するようにしても良い。この場合には、システム構成を簡略にでき、コストを抑制できる。なお、後ろ側の磁気センサは磁気マーカ10の有無の検出のみに利用し、前側のセンサユニット11で磁気マーカ10の有無と横ズレ量とを検出する構成であっても良い。
【0058】
前側のセンサユニット11あるいは後ろ側のセンサユニット11によるマーカ検出処理において、前側のセンサユニット11の磁気センサと後ろ側のセンサユニット11の磁気センサとの間で磁気計測値の差分を演算し、この演算値を利用して磁気マーカ10を検出することも良い。この差分演算によれば、前側の磁気センサが検出する磁気成分を後ろ側の磁気センサが検出する磁気成分から差し引いた差分の磁気成分を生成でき、上記のコモンノイズ等の抑制に効果がある。なお、差分演算に当たっては、車幅方向の位置が同じ磁気センサ同士で差分を求めることも良い。
【0059】
本例では、鉛直方向に感度を持つ磁気センサCnを採用したが、進行方向に感度を持つ磁気センサであっても良く、車幅方向に感度を持つ磁気センサであっても良い。さらに、例えば車幅方向と進行方向の2軸方向や、車幅方向と鉛直方向の2軸方向や、進行方向と鉛直方向の2軸方向に感度を持つ磁気センサを採用しても良く、例えば車幅方向と進行方向と鉛直方向の3軸方向に感度を持つ磁気センサを採用しても良い。複数の軸方向に感度を持つ磁気センサを利用すれば、磁気の大きさと共に磁気の作用方向を計測でき、磁気ベクトルを生成できる。磁気ベクトルの差分や、その差分の進行方向の変化率を利用して、磁気マーカ10の磁気と外乱磁気との区別を行なうことも良い。
なお、本例では、フェライトプラスチックマグネットの磁気マーカを例示したが、フェライトラバーマグネットの磁気マーカであっても良い。
【0060】
(実施例2)
本例は、実施例1の構成に基づいて、センサユニット11の制御方法を変更した磁気マーカ検出システムの例である。この内容について、
図10及び
図11のほか、
図3のブロック図を参照して説明する。
【0061】
磁気マーカ検出システム1の動作について、
図10のフロー図に沿って説明する。検出ユニット12は、前側のセンサユニット11及び後ろ側のセンサユニット11にマーカ検出処理を並列して実行させる(S201、S211)。検出ユニット12は、各センサユニット11の検出結果を取り込むと共に(S202)、前側のセンサユニット11の検出結果については、予め設定された保存期間(数秒以内)に渡る検出結果を時系列データとして図示しない記憶領域に一時保存する(S203)。
【0062】
検出ユニット12は、後ろ側のセンサユニット11により磁気マーカが検出されたとき(S204:YES)、前側のセンサユニット11の検出結果の時系列データのうち、所定の期間に対応する検出結果の履歴を参照する(S205)。参照対象の所定の期間としては、後ろ側のセンサユニット11が磁気マーカを検出した時点を基準として、前側のセンサユニット11が同じ磁気マーカを検出した可能性がある時点を演算し、この時点を含む期間を設定している。
【0063】
具体的には、
図11のごとく、検出ユニット12は、車速センサで計測した車速(車両の速度)V(m/秒)により上記のセンサスパンS(m)を除算した所要時間δtaを、後ろ側のセンサユニット11による磁気マーカの検出の時点である時刻t2から減算する。このように時刻t2から所要時間δtaを減算すれば、前側のセンサユニット11が磁気マーカを検出できた可能性がある時点の時刻t1を演算できる。そして、検出ユニット12は、基準距離である1(m)を車速V(m/秒)で除算した区間時間δtbを時刻t1から差し引いた時刻(t1−δtb)を始期とし、区間時間δtbを時刻t1に加算した時刻(t1+δtb)を終期とした時間的な区間を、上記の参照対象の所定の期間として設定する。
【0064】
検出ユニット12は、前側のセンサユニット11の検出結果の時系列データのうち、上記の所定の期間内の検出結果を参照し、磁気マーカを検出した旨の検出結果の有無を調べる。そして、磁気マーカを検出した旨の検出結果が有った場合には(S206:YES)、後ろ側のセンサユニット11が検出した磁気マーカが、前側のセンサユニット11でも検出されていたことから磁気マーカを検出した旨の判定を確定させる(S207)。
【0065】
一方、検出ユニット12は、前側のセンサユニット11の検出結果の時系列データのうち、上記の所定の期間の検出結果の中に、磁気マーカを検出した旨の結果が無かった場合には(S206:NO)、磁気マーカは未検出である旨の判定を確定させる(S217)。
【0066】
なお、前側のセンサユニット11の検出結果を一時保存する保存期間については、車両の長さである4〜5m程度の距離に上記の基準距離を加えた距離を通過するのに要する時間が含まれる期間であれば良い。当然ながら、通過に要するこの時間は車速に応じて変動するので、車速が高いほど保存期間を短縮しても良い。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0067】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して上記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。