(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。また、
図2は、ウェハ上に形成される円弧状の有効結像領域と光軸との位置関係を示す図である。
図1において、反射結像光学系6の光軸AX方向すなわち感光性基板であるウェハ7の露光面(転写面)の法線方向に沿ってZ軸を、ウェハ7の露光面内において
図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハ7の露光面内において
図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。なお、第1方向および所定の方向は、例えば、Y軸に平行な方向(Y軸方向)である。
【0013】
図1において、露光光を供給するための光源1は、たとえばレーザプラズマX線源を備えている。光源1として、放電プラズマ光源や他のX線源を用いることができる。光源1から射出された光は、必要に応じて配置された波長選択フィルタ(不図示)を介して、照明光学系ILに入射する。波長選択フィルタは、光源1が供給する光から、所定波長(例えば13.4nm)のEUV光だけを選択的に透過させ、他の波長光の透過を遮る特性を有する。
【0014】
波長選択フィルタを経たEUV光は、一対のフライアイ光学系(フライアイミラー)2aおよび2bからなるオプティカルインテグレータ2へ導かれる。なお、波長選択フィルタに代えて、発生したEUV光を反射または集光するミラーの反射面に、所定波長のEUV光のみを反射する多層膜を形成しても良い。この場合、波長選択フィルタが必要ないため、光源1を小型化できる。また、波長選択フィルタにおけるEUV光の光量損失を防止することができる。
【0015】
第1フライアイ光学系2aは並列配置された複数の第1反射光学要素を有し、第2フライアイ光学系2bは第1フライアイ光学系2aの複数の第1反射光学要素に対応するように並列配置された複数の第2反射光学要素を有する。具体的に、第1フライアイ光学系2aは例えば円弧状の外形を有する多数の凹面鏡要素を縦横に且つ稠密に配列することにより構成され、第2フライアイ光学系2bは例えば矩形状の外形を有する多数の凹面鏡要素を縦横に且つ稠密に配列することにより構成されている。フライアイ光学系2aおよび2bの詳細な構成および作用については、たとえば米国特許出願公開第2002/0093636A1号明細書を援用して用いることができる。
【0016】
こうして、第2フライアイ光学系2bの反射面の近傍には、所定の形状を有する実質的な面光源が形成される。この実質的な面光源は、一対のフライアイ光学系2aおよび2bを備えた照明光学系ILの射出瞳位置に形成される。照明光学系ILの射出瞳位置(すなわち第2フライアイ光学系2bの反射面の近傍位置)は、逆瞳タイプの反射結像光学系(投影光学系)6の入射瞳の位置と一致している。
【0017】
実質的な面光源からの光、すなわちオプティカルインテグレータ2から射出された光は、斜入射ミラーとして機能するフラットミラー3に入射する。フラットミラー3により反射された光は、反射結像光学系6の第1反射鏡M1と第2反射鏡M2との間を通過した後、反射型のマスク4にほぼ平行に且つ近接して配置された視野絞り(不図示)の円弧状の開口部(光透過部)を介して、マスク4上に円弧状の照明領域(被照射領域)を形成する。
【0018】
このように、オプティカルインテグレータ2(2a,2b)、およびフラットミラー3は、光源1からの光により所定のパターンが設けられたマスク4をケーラー照明するための照明光学系ILを構成している。また、第2フライアイ光学系2bとマスク4との間の光路中には、パワーを有する反射鏡が配置されていない。反射鏡のパワーとは、当該反射鏡の焦点距離の逆数である。なお、第2フライアイ光学系2bとマスク4との間の光路中にパワーを有する反射鏡を配置しても良い。
【0019】
マスク4は、そのパターン面がXY平面に沿って延びるように、Y方向に沿って移動可能なマスクステージ5によって保持されている。マスクステージ5の移動は、図示を省略したレーザー干渉計やエンコーダにより計測される。マスク4上には、例えばY軸に関して対称な円弧状の照明領域が形成される。照明されたマスク4からの光は、反射結像光学系6を介して、感光性基板であるウェハ7上にマスク4のパターン像を形成する。
【0020】
すなわち、ウェハ7上には、
図2に示すように、Y軸に関して対称な円弧状の有効結像領域(静止露光領域)ERが形成される。
図2を参照すると、光軸AXを中心とした半径Y0を有する円形状の領域(イメージサークル)IF内において、このイメージサークルIFに接するようにX方向の長さがLXでY方向の長さがLYの円弧状の有効結像領域ERが形成される。円弧状の有効結像領域ERは光軸AXを中心とする輪帯状の領域の一部であり、長さLYは円弧状の有効結像領域ERの中心と光軸とを結ぶ方向に沿った有効結像領域ERの幅寸法である。
【0021】
ウェハ7は、その露光面がXY平面に沿って延びるように、X方向およびY方向に沿って二次元的に移動可能なウェハステージ8によって保持されている。ウェハステージ8の移動は、マスクステージ5と同様に、図示を省略したレーザー干渉計やエンコーダにより計測される。こうして、マスクステージ5およびウェハステージ8をY方向に沿って移動させながら、すなわち反射結像光学系6に対してマスク4およびウェハ7をY方向に沿って相対移動させながらスキャン露光(走査露光)を行うことにより、ウェハ7の1つの露光領域にマスク4のパターンが転写される。
【0022】
反射結像光学系6の投影倍率(転写倍率)が1/8である場合、ウェハステージ8の移動速度をマスクステージ5の移動速度の1/8に設定して同期走査を行う。また、ウェハステージ8をX方向およびY方向に沿って二次元的に移動させながら走査露光を繰り返すことにより、ウェハ7の各露光領域にマスク4のパターンが逐次転写される。なお、反射結像光学系6の投影倍率は、1/6や1/4等でも良い。例えば、反射結像光学系6の投影倍率が1/6である場合、ウェハステージ8の移動速度をマスクステージ5の移動速度の1/6に設定し、反射結像光学系6の投影倍率が1/4である場合、ウェハステージ8の移動速度をマスクステージ5の移動速度の1/4に設定する。
【0023】
本実施形態において、各実施例にかかる反射結像光学系6は、
図3および
図4に示すように、直線状に延びる単一の光軸AXに沿って、マスク4のパターン面(以下、「マスク面」ともいう)と光学的に共役な位置にパターンの中間像を形成する第1反射光学系G1と、マスク4のパターンの最終縮小像(中間像の像)をウェハ7の転写面(以下、「ウェハ面」ともいう)上に形成する第2反射光学系G2とを備えている。すなわち、マスク4のパターン面上の照明領域と光学的に共役な位置が、第1反射光学系G1と第2反射光学系G2との間の光路中に形成される。なお、反射結像光学系6は、第1反射光学系G1のみで構成してもよいし、第3反射光学系や第4反射光学系等の複数の光学系を用いて構成してもよい。
【0024】
第1反射光学系G1は、光の入射順に(マスク4からウェハ7に向かって反射される順に)、凹面状の反射面を有する第1反射鏡M1と、凸面状の反射面を有する第2反射鏡M2と、凹面状または凸面状の反射面を有する第3反射鏡M3と、凹面状の反射面を有する第4反射鏡M4と、凸面状の反射面を有する第5反射鏡M5と、凹面状の反射面を有する第6反射鏡M6とにより構成されている。第2反射光学系G2は、光の入射順に、凸面状の反射面を有する第7反射鏡M7と、凹面状の反射面を有する第8反射鏡M8とにより構成されている。なお、各反射鏡M1〜M8の反射面は、凹面状、凸面状、平面状、その他の曲面状を有する反射面で構成しても良い。
【0025】
各実施例において、第4反射鏡M4の反射面の位置またはその近傍の位置に、開口絞りAS(不図示)が設けられている。開口絞りASは、露光光の光束を制限することにより、反射結像光学系6の開口数を設定する。例えば、開口絞りASは、開口部の大きさを調整可能な可変開口絞りや、大きさや形状等の異なる複数の開口部を備え、所望の開口部に切り替え可能な絞り切替部材により構成されていても良い。
【0026】
各実施例では、マスク4のパターン面(第1面)において光軸AXから−Y方向側に離れた照明領域からの光が、第1反射鏡M1の反射面、第2反射鏡M2の反射面、第3反射鏡M3の反射面、第4反射鏡M4の反射面、第5反射鏡M5の反射面、および第6反射鏡M6の反射面で順次反射された後、マスクパターンの中間像を形成する。第1反射光学系G1を介して形成された中間像からの光は、第7反射鏡M7の反射面および第8反射鏡M8の反射面で順次反射された後、ウェハ7の表面(第2面)において光軸AXから−Y方向側に離れた有効結像領域ERにマスクパターンの縮小像を形成する。
【0027】
具体的に、第1実施例にかかる反射結像光学系6の結像倍率の大きさは1/8であり、第2実施例にかかる反射結像光学系6の結像倍率の大きさは1/6である。したがって、第1実施例では有効結像領域ERにマスクパターンの1/8倍の縮小像が形成され、第2実施例では有効結像領域ERにマスクパターンの1/6倍の縮小像が形成される。
【0028】
各実施例において、反射結像光学系6を構成する8つの反射鏡M1〜M8は、反射面の曲率中心が直線状の光軸AX上に位置するように設置されている。また、反射鏡M1〜M8は、光軸AXに関して回転対称な面に沿って形成された非球面状の反射面を有する。反射面が非球面である場合、反射面の曲率中心として、近軸曲率中心を用いることができる。回転対称軸と非球面との交点付近では非球面を球面と見なすことができ、この球面における曲率中心を近軸曲率中心(頂点曲率中心)と呼ぶ。なお、反射結像光学系6は、7〜12枚等の反射鏡で構成しても良い。
【0029】
各実施例の反射結像光学系6は、ウェハ側(像側)にほぼテレセントリックな光学系である。換言すれば、各実施例において、反射結像光学系6の像面上の各位置に達する主光線は像面に対してほぼ垂直である。この構成により、反射結像光学系6の焦点深度内でウェハに凹凸があっても良好な結像が可能になっている。各実施例にかかる反射結像光学系6は、マスク4を挟んで反射結像光学系6の反対側に所定距離だけ離れた位置に入射瞳を有する逆瞳タイプの反射結像光学系である。
【0030】
本実施形態では、照明光学系ILのフラットミラー3により反射された光が、第1反射鏡M1と第2反射鏡M2との間を通過した後、マスク4上に光軸AXから−Y方向側に離れた円弧状の照明領域を形成する。すなわち、第1反射鏡M1および第2反射鏡M2は、照明光学系ILからの光の光路を挟むように配置されている。また、第1反射鏡M1の反射領域および第2反射鏡M2の反射領域は、光軸AXよりも−Y方向側に位置する。ここで、「反射領域」は、当該反射鏡に入射する光によって、反射鏡の反射面に形成される光の照射領域を意味することができる。また、反射鏡に入射する光によって当該反射鏡の反射面に形成される光の照射領域が照明条件等によって変わる場合には、最大となる照射領域を「反射領域」とみなすことができる。また、反射鏡に入射する光によって当該反射鏡の反射面に形成される光の照射領域が複数存在する場合には、当該反射面上の複数の照射領域を含む領域であって且つその面積が最小となる領域を「反射領域」とみなしても良い。具体的に、各実施例では、第1反射鏡M1〜第3反射鏡M3が光軸AXよりも−Y方向側に位置され、第1反射鏡M1の反射領域は第2反射鏡M2の反射領域よりも光軸AXから離れて形成されている。
【0031】
こうして、本実施形態では、照明光学系ILのフラットミラー3へ入射する光の光路と反射結像光学系6の光軸AXとがなす角度を小さく抑えることができる。その結果、EUV露光装置のフットプリント(設置面積)の走査方向に沿った寸法を小さく抑えることができ、ひいては装置の製造や設置などに関するコストを低減することができる。なお、フラットミラー3への入射光の光路が光軸AXとなす角度を小さく抑え、ひいては装置のフットプリントを小さく抑えるには、フラットミラー3の反射面を延長した面とマスク4のパターン面が位置する平面とがなす角度のうち鋭角となる方の角度を60度以上に設定することが好ましい。
【0032】
照明光学系ILからの光の光路を挟むように第1反射鏡M1および第2反射鏡M2を配置する本実施形態の構成は、反射結像光学系6の結像倍率の大きさを通常の1/4よりも小さい値、例えば1/8または1/6に設定することにより容易になる。これは、反射結像光学系6の像側開口数を所要の大きさに確保しつつ結像倍率の大きさを小さくすると、第1反射鏡M1および第2反射鏡M2に入射する光束の断面が小さくなり、第1反射鏡M1と第2反射鏡M2との間隔を大きく確保することができるからである。
【0033】
本実施形態の構成では、フラットミラー3への光線の入射角度を従来技術よりも大きくできるので、フラットミラー3での反射率を従来技術のものよりも大きく確保でき、ひいてはフラットミラー3での光量損失を小さく抑えることができる。また、フラットミラー3への光線の入射角度が従来技術のものよりも大きくなるので、
図5に示すように、マスク4上の照明領域におけるY方向の照度ムラを小さく抑えることができる。
【0034】
図5(a)は、フラットミラーの反射率の入射角度特性を示す図である。
図5(a)を参照すると、従来技術のように入射角度が比較的小さい範囲51の光線に対してフラットミラーを用いる場合、反射率が入射角度に依存して比較的大きく変化するため、
図5(b)に示すように照明領域におけるY方向の照度ムラが比較的大きく発生する。これに対し、本実施形態のように入射角度が比較的大きい範囲52の光線に対してフラットミラー3を用いる場合、反射率が入射角度にほとんど依存することなくほぼ一定になり、
図5(c)に示すように照明領域におけるY方向の照度ムラが小さく抑えられる。なお、フラットミラーの反射面は、単層または多層の膜で形成されており、その層数や膜厚、膜の材質等を調整することで、様々な入射角度特性を有するフラットミラーを用いることができる。
【0035】
本実施形態では、
図6に示すように、第1反射鏡M1の反射領域M1aと第2反射鏡M2の反射領域M2aとの間のY方向に沿った間隔をHとし、第1反射鏡M1の反射領域M1aのY方向に沿った断面寸法をDとするとき、次の条件式(1)を満足しても良い。
0.5<D/H<1.1 (1)
【0036】
条件式(1)の下限値を下回ると、断面寸法Dが比較的小さい位置、すなわちマスク4に比較的近い位置においてマスク4に入射する光が第1反射鏡M1と第2反射鏡M2との間を通過することになるため、第2反射鏡M2がマスク4に近づき過ぎて配置が困難になる恐れがある。あるいは、間隔Hが比較的大きくなり、ひいてはマスク4への光線の入射角および第1反射鏡M1への光線の入射角が大きくなるため、マスク4および第1反射鏡M1での反射率が低下し、ひいてはマスク4および第1反射鏡M1における光量損失により装置のスループットが低下する恐れがある。また、マスク4への光線の入射角および第1反射鏡M1への光線の入射角が大きくなるため、マスク4のパターンの凹凸によってパターンがウェハ7の露光面に精度よく結像されない恐れがある。マスク4のパターンの凹凸によってパターンがウェハ7の露光面に精度よく結像されない場合の例として、例えば、パターンの凹凸によって生じる影による結像性能の低下や、パターンの凹凸によってマスク4に入射する光が遮られることによる光量損失等を挙げることができる。
【0037】
条件式(1)の上限値を上回ると、マスク4への入射光が第1反射鏡M1および第2反射鏡M2と干渉する恐れがある。
したがって、条件式(1)を満足する場合には、マスク4と第2反射鏡M2との間に空間を確保することができ、第1反射鏡M1および第2反射鏡M2の配置を容易にすることができる利点が生じる。条件式(1)を満足する場合には、マスク4への光線の入射角および第1反射鏡M1への光線の入射角を小さくできるため、マスク4および第1反射鏡M1での反射率の低下を抑制することができ、露光装置のスループットが向上する。また、条件式(1)を満足する場合には、マスク4への光線の入射角および第1反射鏡M1への光線の入射角を小さくできるため、マスク4のパターンの凹凸による結像の劣化を抑制し、精度よくマスク4のパターンの像をウェハ7の露光面に形成することができる。マスク4への入射光が第1反射鏡M1および第2反射鏡M2と干渉してしまう影響を抑制することができる。なお、本実施形態の効果をさらに良好に発揮するために、条件式(1)の下限値を0.75に設定しても良い。また、本実施形態の効果をさらに良好に発揮するために、条件式(1)の下限値を0.9に設定しても良い。
また、断面寸法Dは、第1反射鏡M1の反射領域M1aを光軸と直交する面に投影した領域のY方向に沿った寸法としても良い。
また、断面寸法Dは、第1反射鏡M1の位置を含む光軸直交平面(
図6中水平に延びる破線で示す)においてマスク4のパターン面へ入射する光が占める領域のY方向に沿った寸法としても良い。このとき、第1反射鏡M1の位置は、第1反射鏡M1の反射領域M1aの周縁部のうち最も光軸に近い位置としても良く、第1反射鏡M1の反射領域M1aの周縁部のうち最も光軸から離れた位置としても良い。
【0038】
本実施形態の各実施例において、非球面は、光軸に垂直な方向の高さをyとし、非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)をzとし、頂点曲率半径をrとし、円錐係数をκとし、n次の非球面係数をC
nとしたとき、以下の数式(a)で表される。
【0039】
z=(y
2/r)/{1+{1−(1+κ)・y
2/r
2}
1/2}
+C
4・y
4+C
6・y
6+C
8・y
8+C
10・y
10+C
12・y
12
+C
14・y
14+C
16・y
16 (a)
【0040】
[第1実施例]
図3は、本実施形態の第1実施例にかかる反射結像光学系の構成を示す図である。
図3を参照すると、第1実施例の反射結像光学系6において、マスク4からの光は、第1反射鏡M1の凹面状の反射面、第2反射鏡M2の凸面状の反射面、第3反射鏡M3の凹面状の反射面、第4反射鏡M4の凹面状の反射面、第5反射鏡M5の凸面状の反射面、および第6反射鏡M6の凹面状の反射面で順次反射された後、マスクパターンの中間像を形成する。
【0041】
第1反射光学系G1を介して形成された中間像からの光は、第7反射鏡M7の凸面状の反射面および第8反射鏡M8の凹面状の反射面で順次反射された後、ウェハ7上にマスクパターンの縮小像(二次像)を形成する。第1実施例では、反射結像光学系6の結像倍率の大きさβは1/8であり、フラットミラー3の反射面の延長面とマスク面とがなす角度のうち鋭角となる方の角度は82度である。また、第1実施例では、第4反射鏡M4の反射面の位置またはその近傍の位置に開口絞りAS(不図示)が配置されている。なお、開口絞りASは、第3反射鏡M3と第4反射鏡M4との間、第4反射鏡M4と第5反射鏡M5との間、第4反射鏡M4の反射面と共役な位置またはその近傍の位置などの場所に設けられてもよい。
【0042】
次の表(1)に、第1実施例にかかる反射結像光学系の諸元の値を掲げる。表(1)の主要諸元の欄において、λは露光光の波長を、βは結像倍率の大きさを、NAは像側(ウェハ側)開口数を、Y0はウェハ7上でのイメージサークルIFの半径(最大像高)を、LXは有効結像領域ERのX方向に沿った寸法を、LYは有効結像領域ERのY方向に沿った寸法(円弧状の有効結像領域ERの幅寸法)をそれぞれ表している。
【0043】
また、表(1)の光学部材諸元の欄において、面番号は物体面であるマスク面(マスク4のパターン面)から像面であるウェハ面(ウェハ7の転写面)への光線の進行する方向に沿ったマスク側からの反射面の順序を、rは各反射面の頂点曲率半径(中心曲率半径:mm)を、dは各反射面の軸上間隔すなわち面間隔(mm)をそれぞれ示している。なお、面間隔dは、反射される度にその符号を変えるものとする。そして、光線の入射方向にかかわらずマスク側に向かって凸面の曲率半径を正とし、凹面の曲率半径を負としている。
【0044】
また、表(1)の条件式対応値の欄において、Hは第1反射鏡M1の反射領域と第2反射鏡M2の反射領域とのY方向に沿った間隔を、Dは第1反射鏡M1の反射領域のY方向に沿った断面寸法をそれぞれ表している。また、参考値として、PDは入射瞳とマスク面との間の光軸に沿った距離(入射瞳距離)を、TTはマスク面とウェハ面との間の光軸に沿った距離(全長)を、Rはマスク面に入射する主光線の入射角度(rad)をそれぞれ表している。入射角度Rは、マスク面で反射された主光線が光軸AXから離れる方向に向かう場合に負の値をとるものとする。上述の表記は、以降の表(2)においても同様である。
【0045】
表(1)
(主要諸元)
λ=13.4nm
β=1/8
NA=0.5
Y0=41.50mm
LX=13mm
LY=1.0mm
(光学部材諸元)
面番号 r d 光学部材
(マスク面) 500.907
1 -845.540 -222.994 (第1反射鏡M1)
2 -603.806 744.907 (第2反射鏡M2)
3 -2020.053 -521.813 (第3反射鏡M3)
4 2387.067 402.377 (第4反射鏡M4)
5 626.102 -769.948 (第5反射鏡M5)
6 1091.832 1232.057 (第6反射鏡M6)
7 321.642 -249.299 (第7反射鏡M7)
8 312.976 279.299 (第8反射鏡M8)
(ウェハ面)
(非球面データ)
1面
κ=0
C
4=−1.144837×10
−10 C
6=5.754085×10
−15
C
8=−3.181161×10
−20 C
10=8.709635×10
−26
C
12=1.427421×10
−31 C
14=−1.571308×10
−36
C
16=2.986494×10
−42
2面
κ=0
C
4=3.088833×10
−9 C
6=−3.862657×10
−15
C
8=−6.508134×10
−20 C
10=1.362713×10
−24
C
12=−1.364423×10
−29 C
14=7.539638×10
−35
C
16=−1.736016×10
−40
3面
κ=0
C
4=4.963271×10
−10 C
6=−5.030842×10
−16
C
8=−5.182840×10
−21 C
10=1.059625×10
−25
C
12=−1.865317×10
−30 C
14=2.229099×10
−35
C
16=−1.077214×10
−40
4面
κ=0
C
4=−1.827048×10
−9 C
6=−3.415226×10
−14
C
8=−7.848731×10
−19 C
10=−4.096783×10
−23
C
12=2.385006×10
−27 C
14=−2.702122×10
−31
C
16=8.240540×10
−36
5面
κ=0
C
4=−1.657397×10
−10 C
6=−3.847514×10
−15
C
8=1.539176×10
−21 C
10=−1.124299×10
−25
C
12=−1.652992×10
−29 C
14=7.264395×10
−34
C
16=−8.630798×10
−39
6面
κ=0
C
4=5.036087×10
−13 C
6=7.415084×10
−18
C
8=−3.171087×10
−23 C
10=1.080338×10
−28
C
12=−2.093168×10
−34 C
14=2.262700×10
−40
C
16=−1.018244×10
−46
7面
κ=0
C
4=1.730920×10
−8 C
6=9.395766×10
−13
C
8=2.795811×10
−17 C
10=9.026776×10
−22
C
12=−7.149350×10
−25 C
14=1.275899×10
−28
C
16=−1.905227×10
−32
8面
κ=0
C
4=4.947677×10
−10 C
6=6.365871×10
−15
C
8=7.433736×10
−20 C
10=6.347248×10
−25
C
12=1.849725×10
−29 C
14=−1.997201×10
−34
C
16=5.448389×10
−39
(条件式対応値)
D=59.120mm
H=80.829mm
PD=3269.1mm
TT=1395.5mm
R=−0.100
(1)D/H=0.73
【0046】
第1実施例の反射結像光学系では、円弧状の有効結像領域ER内の各点について波面収差のRMS(root mean square:自乗平均平方根あるいは平方自乗平均)の値を求めたところ、最大値(最悪値)が0.0335λ(λ:光の波長=13.4nm)であった。すなわち、第1実施例では、0.5という比較的大きな像側開口数を確保するとともに、ウェハ上において諸収差が良好に補正された13mm×1.0mmの円弧状の有効結像領域を確保することができる。また、第1実施例では、各反射鏡とその近傍を通過する光束との間に8mm以上の間隔が確保されている。
【0047】
[第2実施例]
図4は、本実施形態の第2実施例にかかる反射結像光学系の構成を示す図である。
図4を参照すると、第2実施例の反射結像光学系6では、マスク4からの光は、第1反射鏡M1の凹面状の反射面、第2反射鏡M2の凸面状の反射面、第3反射鏡M3の凸面状の反射面、第4反射鏡M4の凹面状の反射面、第5反射鏡M5の凸面状の反射面、および第6反射鏡M6の凹面状の反射面で順次反射された後、マスクパターンの中間像を形成する。
【0048】
第1反射光学系G1を介して形成された中間像からの光は、第7反射鏡M7の凸面状の反射面および第8反射鏡M8の凹面状の反射面で順次反射された後、ウェハ7上にマスクパターンの縮小像を形成する。第2実施例では、反射結像光学系6の結像倍率の大きさβは1/6であり、フラットミラー3の反射面の延長面とマスク面とがなす角度のうち鋭角となる方の角度は83度である。第2実施例においても第1実施例と同様に、第4反射鏡M4の反射面の位置またはその近傍の位置に開口絞りAS(不図示)が配置されている。次の表(2)に、第2実施例にかかる反射結像光学系の諸元の値を掲げる。
【0049】
表(2)
(主要諸元)
λ=13.4nm
β=1/6
NA=0.5
Y0=38.50mm
LX=17.4mm
LY=1.0mm
(光学部材諸元)
面番号 r d 光学部材
(マスク面) 366.0731
1 -581.254 -173.077 (第1反射鏡M1)
2 -504.217 186.217 (第2反射鏡M2)
3 2858.152 -279.214 (第3反射鏡M3)
4 1048.798 548.844 (第4反射鏡M4)
5 527.506 -622.001 (第5反射鏡M5)
6 1024.635 1376.692 (第6反射鏡M6)
7 297.840 -201.0245 (第7反射鏡M7)
8 257.429 231.024 (第8反射鏡M8)
(ウェハ面)
(非球面データ)
1面
κ=0
C
4=6.334772×10
−10 C
6=4.053272×10
−15
C
8=−7.133735×10
−20 C
10=4.505447×10
−25
C
12=5.903391×10
−30 C
14=−9.187387×10
−35
C
16=3.506429×10
−40
2面
κ=0
C
4=1.052386×10
−8 C
6=−1.895379×10
−13
C
8=7.258412×10
−18 C
10=−2.430244×10
−22
C
12=5.402014×10
−27 C
14=−6.950205×10
−32
C
16=3.953995×10
−37
3面
κ=0
C
4=8.030029×10
−9 C
6=−4.277496×10
−14
C
8=1.207719×10
−18 C
10=−1.625005×10
−22
C
12=1.515615×10
−26 C
14=−7.180262×10
−31
C
16=1.457437×10
−35
4面
κ=0
C
4=−1.883268×10
−9 C
6=−5.233724×10
−14
C
8=−1.628503×10
−18 C
10=−8.808161×10
−23
C
12=3.386588×10
−27 C
14=−6.590832×10
−31
C
16=1.746258×10
−35
5面
κ=0
C
4=−1.345956×10
−9 C
6=−3.897405×10
−17
C
8=4.264561×10
−21 C
10=−4.238677×10
−25
C
12=6.574421×10
−30 C
14=−6.369767×10
−35
C
16=3.112936×10
−40
6面
κ=0
C
4=−4.780883×10
−12 C
6=−1.808289×10
−18
C
8=−1.356320×10
−23 C
10=3.000797×10
−29
C
12=−6.505272×10
−35 C
14=6.859371×10
−41
C
16=−3.918473×10
−47
7面
κ=0
C
4=2.767278×10
−8 C
6=2.037818×10
−12
C
8=4.818580×10
−17 C
10=1.116519×10
−20
C
12=−8.332805×10
−24 C
14=2.030806×10
−27
C
16=−2.880151×10
−31
8面
κ=0
C
4=7.979056×10
−10 C
6=1.600529×10
−14
C
8=2.902626×10
−19 C
10=2.810315×10
−24
C
12=2.205571×10
−28 C
14=−4.796949×10
−33
C
16=1.422134×10
−37
(条件式対応値)
D=56.463mm
H=54.874mm
PD=2163.4mm
TT=1433.5mm
R=−0.105
(1)D/H=1.03
【0050】
第2実施例の反射結像光学系では、波面収差のRMSの最大値(最悪値)が0.0266λ(λ:光の波長=13.4nm)であった。すなわち、第2実施例においても第1実施例と同様に、0.5という比較的大きな像側開口数を確保するとともに、ウェハ上において諸収差が良好に補正された17.4mm×1.0mmの円弧状の有効結像領域を確保することができる。また、第2実施例では、第1実施例と同様に、各反射鏡とその近傍を通過する光束との間に8mm以上の間隔が確保されている。
【0051】
上述の各実施例では、波長が13.4nmのEUV光に対して、良好な結像性能および0.5という比較的大きな像側開口数を確保するとともに、ウェハ7上において諸収差が良好に補正された13mm×1.0mmまたは17.4mm×1.0mmの円弧状の有効結像領域を確保することができる。したがって、ウェハ7において、たとえば13mm×16.5mmまたは17.4mm×22.0mmの大きさを有する各露光領域に、マスク4のパターンを走査露光により0.1μm以下の高解像で転写することができる。
【0052】
なお、上述の各実施例では、13.4nmの波長を有するEUV光を例示的に用いているが、これに限定されることなく、例えば5〜40nm程度の波長を有するEUV光や、他の適当な波長の光を使用する反射結像光学系に対しても同様に本発明を適用することができる。
【0053】
また、上述の各実施例では、反射結像光学系6は、反射面の曲率中心が同一の軸上(光軸AX上)に配列される8つの反射鏡M1〜M8を備えている。しかしながら、8つの反射鏡M1〜M8のうちの少なくとも1つは、反射面の曲率中心が光軸AXから外れるように設置されていても良い。また、上述の各実施例において、すべての反射鏡M1〜M8は、光軸AXに関して無限回回転対称な面に沿って形成された反射面を有しているが、反射鏡M1〜M8のうちの少なくとも1つは、有限回(たとえば1回、2回、3回)回転対称な面に沿って形成された反射面を有していても良い。
【0054】
また、上述の各実施例では、逆瞳タイプの反射結像光学系に対して本発明を適用している。しかしながら、逆瞳タイプに限定されることなく、正瞳タイプの反射結像光学系に対しても同様に本発明を適用することができる。正瞳タイプの反射結像光学系では、その入射瞳が物体面よりも光学系側に位置している。
【0055】
上述の各実施例にしたがう反射結像光学系6では、第1反射鏡M1の反射領域および第2反射鏡M2の反射領域が、反射結像光学系6の光軸AXに対してマスクMのパターン面上の被照射領域(照明領域)と同じ側に位置され、第1反射鏡M1および第2反射鏡M2が照明光学系ILからの光の光路を挟むように配置されている。その結果、照明光学系ILのフラットミラー3へ入射する光の光路と反射結像光学系6の光軸AXとがなす角度を82〜83度に小さく抑えることができ、ひいては露光装置のフットプリントを小さく抑えることができる。
【0056】
本実施形態の露光装置では、露光光としてEUV光を使用しているので、反射結像光学系6に対して転写すべきマスクMのパターンおよびウェハWを相対移動させて、マスクMのパターンをウェハW上へ高解像度で投影露光することが可能である。その結果、大きな解像力を有する走査型の露光装置を用いて、良好な露光条件のもとで、高精度なデバイスを製造することができる。
【0057】
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行っても良い。
【0058】
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。
図7は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
図7に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。
【0059】
ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを感光性基板としてパターンの転写を行う。
【0060】
なお、上述の実施形態では、EUV光を供給するための光源としてレーザプラズマX線源を用いているが、これに限定されることなく、EUV光としてたとえばシンクロトロン放射(SOR)光を用いることもできる。
【0061】
また、上述の実施形態では、EUV光を供給するための光源を有する露光装置に本発明を適用しているが、これに限定されることなく、EUV光以外の他の波長光を供給する光源を有する露光装置に対しても本発明を適用することができる。
【0062】
また、上述の実施形態では、マスクMの代わりに、所定の電子データに基づいて所定パターンを動的に形成する可変パターン形成装置を用いることができる。このような可変パターン形成装置として、たとえば所定の電子データに基づいて駆動される複数の反射素子を含む空間光変調器を用いることができる。空間光変調器を可変パターン形成装置として用いた露光装置は、例えば米国特許公開第2007/0296936号公報や第2009/0122381号公報に開示されている。ここでは、米国特許公開第2007/0296936号公報および第2009/0122381号公報の教示を参照として援用する。
【0063】
また、上述の実施形態では、露光装置の投影光学系としての反射結像光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、一般に第1面上の所定領域の像を第2面上に形成する反射結像光学系に対しても同様に本発明を適用することができる。