【文献】
肖星星,Cu2Se基化合物的制備及熱電性能,万方数据 知識服務平台(インターネット)[online],2011年 8月24日,(Abstract),[retrieved on 2017.10.19],URL,http://d.wanfangdata.com.cn/Thesis/Y1879983
【文献】
TAKAHASHI T. et al.,Ionic Conductivity and Coulometric Titration of Copper Selenide,JOURNAL OF SOLID STATE CHEMISTRY,1975年,Vol.16,pp.35-39
【文献】
DANILKIN S.A. et al.,Crystal structure and lattice dynamics of superionic copper selenide Cu2-δSe,Journal of Alloys and Compounds,2003年,Vol.361,pp.57-61
【文献】
HU Yunxiang et al.,Deposition of copper selenide thin films and nanoparticles,Journal of Crystal Growth,2006年,Vol.297,pp.61-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0029】
したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0030】
図1は、本発明の一実施例による熱電材料の製造方法を概略的に示したフローチャートである。
【0031】
図1に示したように、本発明による熱電材料の製造方法は、混合物の形成段階(S110)及び合成物の形成段階(S120)を含み得る。
【0032】
前記混合物の形成段階(S110)は、原料としてCuとSeとを混合して混合物を形成する段階である。
【0033】
特に、前記S110段階は、以下の化学式1の化学式量に合わせてCu及びSeを秤量し、これを混合することで混合物を形成する段階である。
<化学式1>
Cu
xSe
【0034】
前記化学式1において、xは正の有理数である。
【0035】
望ましくは、前記化学式1のxは、2<x≦2.6である。
【0036】
より望ましくは、前記化学式1において、x≦2.2の条件を満たし得る。特に、前記化学式1において、x<2.2であり得る。
【0037】
また望ましくは、前記化学式1において、x≦2.15の条件を満たし得る。
【0038】
特に、前記化学式1において、x≦2.1の条件を満たすように構成し得る。
【0039】
また、望ましくは、前記化学式1において、2.01≦xの条件を満たし得る。特に、前記化学式1において、2.01<xであり得る。
【0040】
さらに望ましくは、前記化学式1において、2.025≦xの条件を満たし得る。このような条件で、本発明によって製造された熱電材料の熱電変換性能がさらに向上できる。
【0041】
特に、前記化学式1において、2.04<xの条件を満たし得る。
【0042】
望ましくは、前記化学式1において、2.05≦xの条件を満たし得る。
【0043】
より望ましくは、前記化学式1において、2.075≦xの条件を満たし得る。
【0044】
望ましくは、前記S110段階は、粉末形態のCuとSeとを混合し得る。この場合、CuとSeとの混合がより容易に行われ、Cu
xSeの合成がより容易に行われ得る。
【0045】
なお、前記混合物の形成段階(S110)で、CuとSeとの混合は、モルタル(mortar)を用いたハンドミル(hand mill)、ボールミル(ball mill)、遊星ボールミル(planetary ball mill)などの方式で行われ得るが、本発明がこのような混合方式によって制限されることではない。
【0046】
前記合成物の形成段階(S120)は、前記S110段階で形成された混合物を熱処理することで、Cu
xSe(2<x≦2.6)で表れる物質を合成する段階である。例えば、前記S120段階は、CuとSeとの混合物をファーニス(furnace)に投入して所定温度で所定時間加熱することで、Cu
xSe化合物が合成され得る。
【0047】
望ましくは、前記S120段階は、固相反応(Solid State Reaction,SSR)方式で行われる。このような固相反応方式による合成の場合、合成に用いられる原材料、即ち、混合物が合成過程で液相に変わらず、固相で反応が起きる。
【0048】
例えば、前記S120段階は、200℃〜650℃の温度範囲で1時間〜24時間行われ得る。このような温度は、Cuの融点よりも低い温度範囲であるため、かかる温度範囲で加熱される場合、Cuは溶けない状態でCu
xSeが合成される。特に、前記S120段階は、500℃の温度条件下で15時間行われ得る。
【0049】
前記S120段階で、Cu
xSe合成のためにCuとSeとの混合物は、超硬モールドに入れられペレット(pellet)形態とされ、このようなペレット形態の混合物は溶融シリカチューブ(fused silica tube)の中に入れられて真空封止され得る。そして、このように真空封止された第1混合物は、ファーニスに投入されて熱処理され得る。
【0050】
望ましくは、本発明による熱電材料の製造方法は、合成物の形成段階(S120)の後、前記合成物を加圧焼結する段階(S130)をさらに含み得る。
【0051】
ここで、前記S130段階は、ホットプレス(Hot Press;HP)方式や放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering;SPS)方式で行われることが望ましい。本発明による熱電材料の場合、このような加圧焼結方式で焼結されるとき、高い焼結密度と熱電性能の向上効果を容易に得ることができる。
【0052】
例えば、前記加圧焼結段階は、30MPa〜200MPaの圧力条件下で行われ得る。また、前記加圧焼結段階は、300℃〜800℃の温度条件下で行われ得る。そして、前記加圧焼結段階は、前記圧力及び温度条件下で1分〜12時間行われ得る。
【0053】
また、前記S130段階は、真空状態、または水素を一部含んでいるか、水素を含まないAr、He、N
2などの気体を流しながら行われ得る。
【0054】
本発明の一面による熱電材料の製造方法によって製造された熱電材料は、組成面で前記化学式1のように表すことができる。
【0055】
ここで、前記化学式1で示される熱電材料には、2次相が一部含まれ得、その量は熱処理条件によって変わり得る。
【0056】
また、本発明の一面による熱電材料の製造方法によって製造された熱電材料は、Cu及びSeを含むCu−SeマトリクスとCu含有粒子とを含み得る。ここで、Cu含有粒子とは、少なくともCuを含む粒子をいい、Cuのみで構成された粒子は勿論、Cu以外に他の元素を一つ以上さらに含む粒子もこれに含まれるといえる。
【0057】
望ましくは、前記Cu含有粒子は、単一のCu組成のみで構成されたCu粒子、及びCuとOとが結合されたCu
2O粒子のうち少なくとも一つを含み得る。
【0058】
特に、本発明の一面による熱電材料の製造方法によって製造された熱電材料は、Cu含有粒子としてインドット(Induced Nano DOT,INDOT)を含むことができる。ここで、インドットとは、熱電材料の形成過程中に自発的に生成されるナノメートル(nm)サイズ(例えば、直径1nm〜100nm)の粒子を意味する。即ち、本発明において、インドットは、熱電材料の形成過程中、外部から人為的に熱電材料内へ投入されたものではなく、熱電材料の内部で自ら形成された粒子といえる。
【0059】
さらに、本発明において、このようなナノドット、即ち、インドットは、半導体の結晶粒界(grain boundary)に存在できる。そして、このようなインドットは、本発明による熱電材料の製造方法のうち、特に、焼結過程(S130)で結晶粒界(結晶界面)に生成され得る。即ち、本発明の一面による熱電材料の製造方法の場合、加圧焼結過程中に、Cu及びSeを備えるマトリクスの結晶界面にCu含有粒子が自発的に生成され得る。また、かかるCu含有粒子は、このような意味で半導体の結晶粒界に自発的に誘導されるナノドット(induced nano−dot on grain boundary)であって、インドットと定義できる。本発明のこのような面によれば、Cu−Seマトリクス及びインドットを含む熱電材料が製造されるといえる。本発明のこのような面によれば、Cu含有粒子を熱電材料の内部、特に、結晶界面に投入するための高度の努力を払わなくても良いため、熱電性能を向上させるためのCu含有粒子の形成が容易になされる。
【0060】
本発明による熱電材料の製造方法は、混合物の形成段階の化学式に基づいて判断するとき、従来のCu−Se系熱電材料の製造方法に比べてCuが相対的に多く含まれるといえる。この際、Cuのうち少なくとも一部は、Seとマトリクスを構成せず単一元素として単独で、または他の元素、例えば、酸素と結合した形態で存在でき、このように単独または他の元素との結合形態で存在するCuが、ナノドットのような形態で含まれ得る。これについては、実験結果を参照してより具体的に説明する。
【0061】
図2は、本発明の幾つかの実施例によって製造された熱電材料のXRD分析結果を示したグラフであり、
図3は、
図2のA部分を拡大して示したグラフである。
【0062】
より具体的に、
図2及び
図3は、本発明の実施例であって、Cu
xSe(x=2.025,2.05,2.075,2.1)熱電材料(下記の実施例2〜実施例5と同様の方法で製造)のXRDパターンに対する分析グラフである(x軸の単位は、degreeである)。特に、
図2は、区分の便宜のために、各実施例のXRDパターン分析グラフを上下方向に所定間隔ずらして示している。また、
図3は、比較の便宜のために、各実施例のグラフが互いに重なるように示されている。さらに、
図3は、Cuが単一組成で存在するときに現れるCuピークがBで示されている。
【0063】
図2及び
図3を参照すれば、Cu
xSeにおいて、銅の相対的含量であるxが2.025から、2.05、2.075、2.1へ増加するほど、Cuピークの高さが次第に高くなることを確認することができる。したがって、このようなXRD分析結果によれば、xが2を超過して次第に増加するほど、超過して含まれたCuは、SeとCu
xSeのようなマトリクスを構成せず、単独で存在できることが分かる。
【0064】
なお、このようにSeとマトリクスを構成せず存在するCuは、ナノドットの形態で存在できる。そして、このようなCu含有ナノドットは、熱電材料の内部、例えば、Cu−Seマトリクス内で互いに凝集(aggregation)した形態、或いはCu−Seマトリクスの結晶粒界に存在できる。
【0065】
図4〜
図8は、本発明の一実施例による熱電材料のSEM/EDS分析結果を示した図である。
【0066】
より具体的に、
図4は、本発明の一実施例によって製造されたCu
2.075Seの一部分に対するSEM撮影写真であり、
図5及び
図6は、本発明の他の実施例によって製造されたCu
2.1Seの互いに異なる部分に対するSEM撮影写真である。また、
図7は、
図3におけるC1部分のEDS分析結果を示したグラフであり、
図8は、
図3におけるC2部分のEDS分析結果を示したグラフである。
【0067】
先ず、
図4〜
図6の写真を参照すれば、約数マイクロメートル〜数十マイクロメートルの大きさを有する複数の結晶粒と、このような結晶粒よりも大きさが小さいナノメートルサイズの複数のナノドット(nano−dot)が存在することが分かる。この際、ナノドットは、ほとんどが図面に示したように複数の結晶粒を備えるマトリクスの結晶粒界に沿って形成され、少なくとも一部はC2で示された部分のように互いに凝集した形態で存在することが分かる。特に、
図5及び
図6のSEM写真を見れば、ナノドットがCu−Seマトリクス結晶粒界に沿って多く分布していることが明らかに示されている。
【0068】
次に、ナノドットが観察されない
図4のC1部分、即ち、グレーンの内部を分析した
図7の結果を参照すれば、CuピークとSeピークが主に形成されたことが分かる。このことから、
図4のC1部分では、CuがSeとマトリクスを構成することが分かる。即ち、
図4に示したグレーンは、Cu及びSeを主成分とするCu−Seグレーンといえる。また、定量分析によってこのようなCu−SeマトリクスはCu
xSeであって、xは2、または2に近い値を有する形態で存在することが分かる。
【0069】
一方、ナノドットが固まっているように観測された
図4のC2部分を分析した
図8の結果を参照すれば、Cuピークが支配的に高く形成されたことが分かる。これは、ナノドットがCu−Seマトリクスではなく、Cuとして存在することを示すといえる。Seピークが少し観察されたことは、分析装備の分解能の限界または分析法の限界などでナノドットの周辺またはその下部に位置したCu−Seマトリクスに存在するSeが測定されたことと見られる。
【0070】
したがって、このような結果に基づき、
図4のC2部分に凝集している粒子は、Cuを含むナノドットであることを確認することができる。したがって、本発明の一面によって製造された熱電材料は、Cu及びSeで構成されたCu−Seマトリクスとともに、Cu粒子、特に、Cu含有インドットを含むといえる。特に、このようなCu含有インドットの少なくとも一部は、熱電材料において互いに凝集した形態で存在し得る。ここで、このようなCu含有インドットは、Cu単独で構成された形態でも存在し得るが、
図8でOピークが若干観察されたように、Oと結合してCu
2OのようなCu酸化物の形態で存在することもある。
【0071】
このように、本発明の一面によって製造された熱電材料は、Cu含有ナノドット、特に、インドット及びCu−Seマトリクスを含むことができる。ここで、Cu−Seマトリクスは、Cu
xSeの化学式で表され、ここで、xは、正の有理数である。特に、xは2周辺の値、例えば、1.8〜2.2の値を有し得る。さらに、xは、2以下の値、例えば、1.8〜2.0の値を有し得る。例えば、本発明による熱電材料は、Cu
2Seマトリクス及びCu含有ナノドットを含み得る。
【0072】
ここで、Cu含有ナノドットは、Cu−Seマトリクス結晶界面間に存在し得る。例えば、本発明によって製造された熱電材料は、Cu
2Seマトリクスと共に、このようなマトリクスの結晶界面間に単一組成の銅粒子を含むことができる。勿論、Cu含有ナノドットの一部は、Cu−Seマトリクスの結晶の内部に存在することができる。
【0073】
一方、本発明によれば、Cu及びSeを含むCu−Se系熱電材料であって、従来のCu−Se系熱電材料に比べ、熱伝導度が低く、かつZT値の高い熱電材料を製造することができる。
【0074】
特に、本発明によって製造された熱電材料は、Cu−Seマトリクス及びCu含有粒子を含む。このようなCu含有粒子は、フォノン散乱(phonon scattering)を起こして熱拡散度を低下させることができる。
【0075】
このような本発明によって製造された熱電材料は、100℃〜600℃の温度範囲で熱拡散度が0.5mm
2/s以下であり得る。
【0076】
また、本発明によって製造された熱電材料は、100℃〜600℃の温度範囲全区間にわたってZT値が0.3以上であり得る。
【0077】
特に、本発明によって製造された熱電材料は、100℃の温度条件でのZT値が0.3以上であり得る。望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、100℃の温度条件でのZT値が0.4以上であり得る。
【0078】
また、本発明によって製造された熱電材料は、200℃の温度条件でのZT値が0.4以上であり得る。望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、200℃の温度条件でのZT値が0.5以上であり得る。より望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、200℃の温度条件でのZT値が0.6超過であり得る。
【0079】
また、本発明によって製造された熱電材料は、300℃の温度条件でのZT値が0.6以上であり得る。望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、300℃の温度条件でのZT値が0.75以上であり得る。より望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、300℃の温度条件でのZT値が0.8超過であり得る。さらに望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、300℃の温度条件でのZT値が0.9超過であり得る。
【0080】
また、本発明によって製造された熱電材料は、400℃の温度条件でのZT値が0.7以上であり得る。望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、400℃の温度条件でのZT値が0.8以上であり得る。より望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、400℃の温度条件でのZT値が1.0以上であり得る。
【0081】
また、本発明によって製造された熱電材料は、500℃の温度条件でのZT値が0.6以上であり得る。望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、500℃の温度条件でのZT値が0.7以上であり得る。より望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、500℃の温度条件でのZT値が1.1以上であり得る。さらに望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、500℃の温度条件でのZT値が1.3以上であり得る。
【0082】
また、本発明によって製造された熱電材料は、600℃の温度条件でのZT値が0.6以上であり得る。望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、600℃の温度条件でのZT値が0.8以上であり得る。より望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、600℃の温度条件でのZT値打が1.4以上であり得る。さらに望ましくは、本発明によって製造された熱電材料は、600℃の温度条件でのZT値が1.8以上であり得る。
【0083】
本発明は、熱電変換素子の製造に用いることができる。即ち、熱電変換素子は、本発明による製造方法によって製造された熱電材料を含み得る。特に、本発明によって製造された熱電材料は、従来の熱電材料、特に、Cu−Se系熱電材料に比べて広い温度範囲でZT値が効果的に向上できる。したがって、本発明によって製造された熱電材料は、従来の熱電変換材料を代替するか、従来の化合物半導体に加え、熱電変換素子に有用に用いることができる。
【0084】
さらに、本発明は、廃熱源などを用いて熱電発電する熱電発電装置にも用いることができる。即ち、熱電発電装置は、本発明によって製造された熱電材料を含むことができる。本発明によって製造された熱電材料の場合、100℃〜600℃の温度領域帯のように、広い温度範囲で高いZT値を示すため、熱電発電にさらに有用に適用可能である。
【0085】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0086】
実施例1
パウダー形態のCu及びSeを、Cu
2.01Seの化学式に合わせて秤量した後、アルミナモルタル(alumina mortar)に入れて混合した。混合した材料は、超硬モールドに入れてペレットにし、溶融シリカチューブに入れて真空封止した。その後、これをボックスファーニス(box furnace)に入れて500℃で15時間加熱した後、室温まで徐々に冷やすことでCu
2.01Se合成物を得た。
【0087】
続いて、このCu
2.01Se合成物をホットプレス用超硬モールドに充填した後、650℃の条件で、真空状態でホットプレス焼結することで実施例1の試料を得た。この際、焼結密度は、理論値に対し98%以上となるようにした。
【0088】
実施例2
パウダー形態のCu及びSeを、Cu
2.025Seの化学式に合わせて秤量した後、前記実施例1と同様の方式で混合及び合成過程を経てCu
2.025Se合成物を得た。その後、これに対し、前記実施例1と同様の方式で焼結過程を経て実施例2の試料を得た。
【0089】
実施例3
パウダー形態のCu及びSeを、Cu
2.05Seの化学式に合わせて秤量した後、前記実施例1と同様の方式で混合及び合成過程を経てCu
2.05Se合成物を得た。その後、これに対し、前記実施例1と同様の方式で焼結過程を経て実施例3の試料を得た。
【0090】
実施例4
パウダー形態のCu及びSeを、Cu
2.075Seの化学式に合わせて秤量した後、前記実施例1と同様の方式で混合及び合成過程を経てCu
2.075Se合成物を得た。その後、これに対し、前記実施例1と同様の方式で焼結過程を経て実施例4の試料を得た。
【0091】
実施例5
パウダー形態のCu及びSeを、Cu
2.1Seの化学式に合わせて秤量した後、前記実施例1と同様の方式で混合及び合成過程を経てCu
2.1Se合成物を得た。その後、これに対し、前記実施例1と同様の方式で焼結過程を経て実施例5の試料を得た。
【0092】
実施例6
パウダー形態のCu及びSeを、Cu
2.15Seの化学式に合わせて秤量した後、前記実施例1と同様の方式で混合及び合成過程を経てCu
2.15Se合成物を得た。その後、これに対し、前記実施例1と同様の方式で焼結過程を経て実施例6の試料を得た。
【0093】
実施例7
パウダー形態のCu及びSeを、Cu
2.2Seの化学式に合わせて秤量した後、前記実施例1と同様の方式で混合及び合成過程を経てCu
2.2Se合成物を得た。その後、これに対し、前記実施例1と同様の方式で焼結過程を経て実施例7の試料を得た。
【0094】
比較例1
パウダー形態のCu及びSeを、Cu
1.8Seの化学式に合わせて秤量した後、前記実施例1と同様の方式で混合及び合成過程を経てCu
1.8Se合成物を得た。そして、これに対し、前記実施例1と同様の方式で焼結過程を経て比較例1の試料を得た。
【0095】
比較例2
パウダー形態のCu及びSeを、Cu
1.9Seの化学式に合わせて秤量した後、前記実施例1と同一の方式で混合及び合成過程を経てCu
1.9Se合成物を得た。その後、これに対し、前記実施例1と同様の方式で焼結過程を経て比較例2の試料を得た。
【0096】
比較例3
パウダー形態のCu及びSeを、Cu
2.0Seの化学式に合わせて秤量した後、前記実施例1と同様の方式で混合及び合成過程を経てCu
2.0Se合成物を得た。その後、これに対し、前記実施例1と同様の方式で焼結過程を経て比較例3の試料を得た。
【0097】
このように得られた前記実施例1〜実施例7の試料及び比較例1〜比較例3の試料に対しては、LFA457(Netzsch社製)を用いて所定温度の間隔で熱拡散度(TD)を測定し、その結果を実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例3として、
図9に示した。
【0098】
そして、前記実施例1〜実施例7の試料及び比較例1〜比較例3の試料それぞれの他の一部に対し、ZEM−3(Ulvac−Riko,Inc製)を用いて所定温度の間隔で試料の電気伝導度及びゼーベック係数を測定し、そのうち、ゼーベック係数(S)の測定結果を、実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例3として、
図10に示した。そして、以上で測定されたそれぞれの値を使用してZT値を計算し、その結果を実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例3として、
図11に示した。
【0099】
まず、
図9の結果を参照すれば、Cu
xSeの化学式において、xが2超過である実施例1〜実施例7の熱電材料が、xが2以下である比較例1〜比較例3の熱電材料に比べ、100℃〜700℃の全体温度測定区間に亘り、熱拡散度が著しく低いことが分かる。
【0100】
特に、本発明による実施例の試料は、100℃〜600℃の温度範囲全区間に亘り、熱拡散度が0.5mm
2/s以下、望ましくは0.4mm
2/s未満であって、比較例の試料に比べて著しく低いことが分かる。
【0101】
次に、
図10の結果を参照すれば、本発明による実施例1〜実施例7の熱電材料が、比較例1〜比較例3の熱電材料に比べ、100℃〜700℃の全体温度測定区間に亘り、ゼーベック係数が非常に高いことが分かる。
【0102】
また、
図11の結果を参照して各試料に対するZT値を見れば、本発明による実施例1〜実施例7の熱電材料が比較例1〜比較例3の熱電材料に比べ、ZT値が遥かに高いことが分かる。
【0103】
特に、比較例による熱電材料の場合、大体に500℃未満の温度範囲ではZT値が非常に低く、特に、100℃〜300℃の低温区間ではZT値が0.2以下であって、非常に低い値を示している。
【0104】
これに対し、本発明の実施例による熱電材料の場合、500℃以上の高温区間では勿論、500℃未満の低温ないし中温区間でも比較例に比べて非常に高いZT値を有することが分かる。
【0105】
概略的に、実施例1〜実施例6の熱電材料は、比較例1〜比較例3の熱電材料に比べ、600℃の温度では約2倍の高いZT値の性能向上を示している。
【0106】
より具体的に見れば、比較例による熱電材料は、100℃の温度条件でZT値が大体に0.15〜0.1以下の非常に低い性能を示す一方、本発明による実施例の熱電材料は、100℃の温度条件においても0.3〜0.4以上の高い性能を示している。
【0107】
また、200℃の温度条件において、比較例による熱電材料は100℃の場合に類似に、0.15〜0.1以下の非常に低いZT値を示しているのに対し、本発明による実施例の熱電材料は0.4以上、多くは0.5〜0.7の高いZT値を示している。
【0108】
また、300℃の温度条件において、比較例による熱電材料は、ZT値が約0.1〜0.2付近に存在する一方、本発明による実施例の熱電材料は、全て0.6以上、多くは0.7または0.8以上の値を示し、大きい差を示している。
【0109】
また、400℃の温度条件において、比較例による熱電材料は、ZT値が0.1〜0.2、高くて0.35程度の値を示しているに対し、本発明による実施例の熱電材料は、全て0.7以上の値を示し、ほとんどは0.8以上、多くは1.0〜1.2の高い値を示している。
【0110】
また、500℃の温度条件において、比較例による熱電材料は、大体0.5以下の値を示す一方、本発明による実施例の熱電材料は0.6以上、多くは1.0〜1.4の非常に高いZT値を有することが分かる。
【0111】
また、600℃の温度条件において、比較例1〜比較例3の熱電材料は、大体0.4〜0.9のZT値を示す一方、本発明による実施例1〜実施例5の熱電材料は、1.4〜1.7の非常に高いZT値を有し、比較例の熱電材料とは大きい差があることが分かる。
【0112】
以上の結果をまとめれば、本発明の各実施例による熱電材料は、比較例による従来の熱電材料に比べ、100℃〜600℃の全体温度区間に亘って、熱拡散度が著しく低く、ZT値が顕著に高いことが分かる。このことから、本発明によって製造された熱電材料は、熱電変換性能に優れ、熱電変換材料として非常に有用に用いることができる。
【0113】
一方、前述のように、本発明によって製造された熱電材料は、Cu−Seマトリクスの他に、Cuを含む粒子、特にインドットをさらに含み得る。これについては、
図12及び
図13を参照して説明する。
【0114】
図12は、前記実施例4で製造された試料のSIM(Scanning Ion Microscope)イメージであり、
図13は、前記比較例3で製造された試料のSIMイメージである。
【0115】
先ず、
図12を参照すれは、Cu
2.075Seの化学式に合わせてCu及びSeを秤量し、混合、合成及び焼結することで製造された本発明の実施例4による熱電材料の場合、ナノドットが存在することが分かる。そして、このようなナノドットは、前述のように、Cuの含有されたナノドットである。特に、
図12に示したように、ナノドットは、結晶粒界に沿って主に分布し得る。
【0116】
これに対し、
図13を参照すれば、Cu
2Seの化学式に合わせてCu及びSeを秤量し、混合、合成及び焼結することで製造された従来技術によって製造されたCu−Se熱電材料には、ナノドットが存在しないことが分かる。但し、
図13においては、黒い点のように見えるものがあるが、これはポア(pore)であるだけで、ナノドットではない。
【0117】
なお、前記
図9及び
図10では実施例どうしの区分が難しいため、各実施例の容易な比較のために、
図14及び
図15を参照して説明する。
【0118】
図14及び
図15は、それぞれ
図9及び
図10の実施例のみに対し、y軸スケールを変更して示したグラフである。
【0119】
図14及び
図15を参照すれば、前記化学式1(Cu
xSe)で表される本発明によって製造された熱電材料において、xの範囲がx>2.04、より具体的にはx≧2.05であるとき、熱拡散度がさらに低くなり、ゼーベック係数がさらに高くなることが分かる。
【0120】
さらに、
図14の熱拡散度(TD)の結果を見れば、大体に化学式1のxが2.04未満の実施例1及び実施例2に比べ、xが2.04超過の実施例3〜実施例7の熱拡散度が、相対的に低いことが分かる。特に、200℃〜600℃の温度区間で、実施例5〜実施例7、特に、実施例5及び実施例6の結果が著しく低く示されている。
【0121】
また、
図16のゼーベック係数(S)の結果を見れば、大体に化学式1のxが2.04未満の実施例1及び実施例2に比べ、xが2.04超過の実施例3〜実施例7のゼーベック係数が相対的に高いことが分かる。特に、実施例5〜実施例7の場合、ゼーベック係数が他の実施例に比べて著しく高く示されている。特に、100℃〜200℃の区間、及び400℃〜600℃の区間では、実施例6及び実施例7のゼーベック係数が他の実施例に比べて非常に高く示されている。
【0122】
一方、前述のように、本発明による熱電材料の製造方法において、合成物の形成段階(S120)は、固相反応(SSR)方式で行うことが望ましい。以下、このようなSSR合成方式について、メルティング方式に比べてその効果を説明する。
【0123】
実施例8
パウダー形態のCu及びSeを、Cu
2.025Seの化学式に合わせて秤量した後、アルミナモルタルに入れて混合した。混合された材料は、超硬モールドに入れてペレットにし、溶融シリカチューブに入れて真空封止した。その後、これをボックスファーニスに入れて1100℃で12時間加熱し、昇温時間は9時間にした。それから、これを800℃で24時間さらに加熱し、減温時間は24時間にした。このような加熱後は、室温まで徐々に冷やすことでCu
2.025Se合成物を得た。
【0124】
続いて、得られたCu
2.025Se合成物をホットプレス用超硬モールドに充填した後、650℃の条件で、真空状態でホットプレス焼結することで実施例8の試料を得た。この際、焼結密度は、理論値に対し98%以上となるようにした。
【0125】
実施例9
パウダー形態のCu及びSeを、Cu
2.1Seの化学式に合わせて秤量した後、前記実施例8と同様の方式で混合及び合成過程を経てCu
2.1Se合成物を得た。続いて、これに対し、前記実施例8と同様の方式で焼結過程を経て実施例9の試料を得た。
【0126】
このような実施例8及び実施例9による試料の場合、実施例1〜実施例7とは合成方式を異にした。即ち、実施例1〜実施例7による試料の場合、原材料の少なくとも一部が溶けない状態で合成が行われるSSR方式で熱電材料を合成したが、実施例8及び実施例9による試料の場合、すべての原材料が融点以上に加熱されるメルティング方式で熱電材料を合成した。
【0127】
このように得られた実施例8及び実施例9試料に対し、XRD分析を行い、その結果を
図16に示した。また、これらとの比較のためにSSR方式で合成された実施例2及び実施例5に相応する試料に対してもXRD分析を行い、その結果を
図16に併せて示し、その一部分を拡大して
図17に示した。特に、
図16は、区分の便宜のために、各実施例に対するXRDパターン分析グラフを、互いに上下方向に所定間隔ずらして示している。そして、
図17は、各実施例のグラフが互いに重なるように示されている。さらに、
図17は、Cuが単一組成で存在するときに現れるCuピークがEで表示されている。
【0128】
図16及び17を参照すれば、SSR方式で合成された実施例2及び実施例5のCuピークの高さが、メルティング方式で合成された実施例8及び実施例9のCuピークの高さよりもはるかに高く形成されたことを確認することができる。したがって、このようなXRD分析結果によれば、本発明による熱電材料がメルティング方式で合成された場合よりもSSR方式で合成された場合が、単独で存在するCuが多いことが分かる。特に、メルティング方式の場合、銅がナノドットの形態でCu−Seマトリクスの内部や結晶粒界に存在せず、外部へ抜け出し、析出された形態で存在できる。そのため、本発明による熱電材料の場合、SSR方式で合成することが望ましい。このようなメルティング方式に対するSSR方式の長所については、
図18〜
図20を参照してより具体的に説明する。
【0129】
図18〜
図20は、前記実施例2、実施例5、実施例8及び実施例9に対し、温度による格子熱伝導度(κ
L)、パワーファクター(PF)及びZT値を測定し、その結果を比較して示したグラフである。
【0130】
まず、
図18において、格子熱伝導度は、ウィーデマン・フランツの法則 (Wiedemann−Franz Law)を用いて求め、ここで使用したローレンツ定数は1.86×10
−8である。より具体的に、格子熱伝導度は次のような数式を用いて計算可能である。
κ
L=κ
total−κ
e
【0131】
ここで、κ
Lは格子熱伝導度、κ
totalは熱伝導度、κ
eは電気伝導度による熱伝導度を示す。そして、κ
eは次のように表され得る。
κ
e=σLT
【0132】
ここで、σは電気伝導度を意味し、Lはローレンツ定数であって、1.86×10−8を示す。また、Tは、温度(K)を示す。
【0133】
図18の結果を参照すれば、SSR方式で合成された実施例2及び実施例5の場合、メルティング方式で合成された実施例8及び実施例9に比べ、格子熱伝導度が相対的に低いことが分かる。特に、同一組成の実施例2と実施例8とを比較すれば、温度による格子熱伝導度の変化パターンは類似であるが、実施例2の場合、実施例8に比べ100℃〜600℃の全体温度範囲で、格子熱伝導度が著しく低いことが分かる。また、同一組成の実施例5と実施例9とを比較しても、200℃〜600℃の温度範囲でSSR方式による実施例5の格子熱伝導度が実施例9の格子熱伝導度よりも低く、温度が高くなるほどその差はさらに大きくなることが分かる。
【0134】
続いて、
図19の結果を参照すれば、SSR方式で合成された実施例2及び実施例5の場合、メルティング方式で合成された実施例8及び実施例9に比べ、パワーファクター(PF)が相対的に高いことが分かる。特に、同一組成の実施例2と実施例8とを比較すれば、SSR方式による実施例2が、メルティング方式による実施例8よりもパワーファクターが100℃〜600℃の全体温度測定区間で高く示されている。また、他の同一組成の実施例5と実施例9とを比較しても、100℃〜600℃の全体温度測定区間で実施例5が、実施例9よりも高く示されている。
【0135】
最後に、
図20の結果を参照すれば、SSR方式で合成された実施例2及び実施例5の場合、メルティング方式で合成された実施例8及び実施例9に比べ、ZTが相対的に高いことが分かる。特に、同一組成の実施例2と実施例8とを比較すれば、SSR方式による実施例2が、メルティング方式による実施例8よりもZTが200℃〜600℃の温度測定区間で高く示されている。また、他の同一組成の実施例5及び実施例9を比較しても、100℃〜600℃の全体温度測定区間で実施例5が、実施例9よりも高く示されている。
【0136】
このような点をまとめれば、本発明による熱電材料の製造方法の場合、合成方式をSSR方式にするほうが、メルティング方式にするほうよりも熱電材料の熱電性能をより向上させることができるといえる。
【0137】
以上のように、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と以下に記載する特許請求の範囲の均等範囲内で、多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。