(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二の潜像画像において、前記所定の範囲の濃度が等しくなるように、形状、大きさ及び/又は深さの異なる前記濃度緩和要素が配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の特殊潜像画像形成体。
前記第二の潜像画像は、複数配置された前記第2の要素及び前記濃度緩和要素の大きさ及び/又は深さにより光の透過率を異ならせて階調を有したことを特徴とする請求項1又は2記載の特殊潜像画像形成体。
【背景技術】
【0002】
銀行券、旅券、有価証券等の貴重印刷物は、その性質上偽造や複製がされにくいことが要求される。この対策として貴重印刷物上に微細画線を印刷したものや、紙層の厚薄によるすき入れを施したもの等が公知である。
【0003】
特許文献1には、連続階調を有する透かし模様が開示されている。厚みが段階的に変化した模様型を、公知の抄紙機におけるすき入れ網上に配置したのち、すき入れ紙を形成することで、連続的に厚みが変化した透かし模様を形成することが可能となる。作製したすき入れ紙を透過光下で観察した場合には、連続階調を有する透かし模様が視認される。
【0004】
また、本出願人が先に出願した特許文献2には、反射光下で傾けて観察することで潜像画像が視認でき、その視認の有無によって真偽判別を行う技術として、部分的に角度を異にすることによって図柄を表した各種万線模様又はレリーフ模様のいずれか少なくとも一つの模様をエンボスによって形成された凹凸形状を有する素材に、一定の間隔を持つ各種万線画線又は網点画線のいずれか少なくとも一つを前述の凹凸形状の図柄以外の部分を構成する部分に対して平行又は傾斜を持たせて印刷した潜像模様形成体を開示している。
【0005】
ただし、特許文献1に開示されたすき入れ紙は、抄紙機を用いて作製していることから、容易に作製しづらく偽造防止効果は極めて高いが、透かし模様は、紙の厚みにより形成されていることから、基本的には透過光下で視認できるものだが、実際のところ反射光下においても、その存在は認識されてしまうという課題があった。
【0006】
また、特許文献2に開示された偽造防止用潜像模様形成体は、印刷又は基材の形状によって形成した凹凸形状を有する素材上に印刷画線を形成し、反射光下で傾けて観察した場合に凹凸形状から成る潜像画像が視認できる技術であるが、貴重印刷物として流通する過程において、凸形状部や印刷画線の摩耗によって潜像視認性が低下してしまうという課題があった。
【0007】
そこで、本出願人は、前述した課題の解決を目的とし、限られた観察条件下のみで潜像画像が視認できるものではなく、反射光下で傾けて観察した場合及び透過光下で観察した場合に潜像画像が視認でき、さらに、透過光下と反射光下との観察では視認できる潜像画像が異なることで、真偽判別と偽造防止効果に優れた特殊潜像画像形成体を出願した(特許文献3参照)。
【0008】
ここで、先行文献の特許文献3に記載の技術について、
図20を用いて具体的に説明する。
図20(a)は、引用文献3記載の特殊潜像模様形成体(1)を示す平面図である。特殊潜像模様形成体(1)は、基材(2)上の少なくとも一部に、潜像部(4)とその潜像部(4)の背景に配置された背景部(5)から成る潜像画像形成領域(3)を備えている。この潜像画像形成領域(3)は、凸形状の第1の要素(6)が第1の方向(S1)に万線状に配置され、一部において位相が異なることで、潜像部(4)と背景部(5)に区分けされている。この第1の要素(6)と平行して基材(2)及び第1の要素(6)とは異なる色の第3の要素(7)が、第1の要素(6)に少なくとも重なるように万線状に形成されている。
【0009】
第1の要素(6)の位相が異なっている箇所を境に、第3の要素(7)が第1の要素(6)と重なる斜面が異なることで、観察角度を斜め方向とすると、この第1の要素(6)と第3の要素(7)によって形成された第一の潜像画像(8)が形成され、確認することが可能となる。なお、
図20における第一の潜像画像(8)は、
図20(c)に示す「NIPPON」である。
【0010】
また、隣り合う凸形状の第1の要素(6)同士の間、所謂凹部に該当するところに、基材(2)よりも光の透過率の高い第2の要素(9)が複数形成され、その複数の第2の要素(9)によって、第二の潜像画像(10)が形成されており、透過光下において、この第二の潜像画像(10)を確認することが可能となっている。なお、
図20における第二の潜像画像(10)は、
図20(d)に示す「桜の花」である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0024】
図1 は、本発明における特殊潜像画像形成体(1)(以下、「形成体」という。)の一例を示す平面図である。形成体(1)は、基材(2)上の少なくとも一部に本発明における潜像画像が形成された潜像画像形成領域(3)(以下、「形成領域」という。)を有している。なお、
図1に示すように、形成領域(3)以外の領域には、料額、文字、他の模様等の必要な情報が公知の印刷方式(例えば、オフセット印刷、凹版印刷等)により施しても良い。
【0025】
本発明における基材(2)は、上質紙、コート紙、アート紙等の紙葉類を用いることができる。ただし、本発明の特徴点である二つの潜像画像を同じ領域内に形成するために凸形状が必要であることから、基材(2)の厚みは20μm〜1000μmが良く、好ましくは50μm〜300μmが良い。また、フィルム、プラスチック、それらの複合素材等を用いることもできる。
【0026】
図2(a)は、本発明の形成体(1)の形成領域(3)の平面図である。形成領域(3)は、反射光下において基材(2)に対して垂直方向から観察すると、後述する第3の模様(11)のみが視認できるため、図面上では、第3の模様(11)となる万線模様が図示されているが、実際には、
図2(b)の第1の模様(12)及び第2の模様(13)と、
図2(c)に示す第3の模様(11)が組み合わされて形成されている。
【0027】
本発明の形成体(1)を観察した際の状態を
図3に示す。
図3(a)から(c)までの上段の図については、
図2(a)のX−X’断面を示す図であり、下段の図については、各観察条件下における視認画像を示す図である。形成領域(3)を基材(2)に対して真上から観察したとき(以下、「第1の観察点(L1)」という。)には、
図3(a)に示すように、基材(2)と異なる色で成る第3の模様(11)が可視画像として視認できる。また第1の模様(12)を構成している凸形状の第1の画線(6)と平行に、基材(2)に対して、斜めから観察したとき(以下、「第2の観察点(L2)」という。) には、
図3(b)に示すように第一の潜像画像(8)である「NIPPON」が視認できる。さらに、基材(2)を透過光下で観察したとき(以下、「第3の観察点(L3)」という。」には、
図3(c)に示すように第二の潜像画像(10)である「桜の花」が観察できる
【0028】
次に、形成領域(3)に形成されている第1の模様(12)、第2の模様(13)及び第3の模様(11)について説明する。
【0029】
(第1の模様)
第1の模様(12)について説明する。第1の模様(12)は、
図4(a)に示すように、第1の要素(6)が第1のピッチ(P1)で万線状に配置されて成る。なお、本発明において、「万線状」とは、第1の要素(6)が第1の方向(S1)に複数配列されていることであり、また、「第1の方向」とは、基材(2)に第1の要素(6)が配置される方向のことである。後述する第3の要素(7)についても、同様である。
【0030】
第1の要素(6)は、
図4(a)のY−Y’線の断面図である
図4(b)に示すように、凸形状の画線から成る。なお、第1の要素(6)は、
図4(b)に示すような台形状の断面形状に限らず、
図6(a)に示す三角形状及び
図6(b)に示す半円形としても良い。
【0031】
凸形状の第1の要素(6)の形成方法としては、エンボス加工や、盛り上がりを有する印刷画線を得られる公知の印刷方法(例えば、凹版印刷、スクリーン印刷)がある。また、凸形状を形成するために他を除去して凸形状を残すことでも第1の要素(6)を形成することが可能である。例えば、抄紙工程におけるすき入れや基材(2)の一部をレーザ加工によって除去することでも形成することができる。
【0032】
第1の要素(6)の構成は、
図4及び
図5に示す形状に限定されるものではなく、第1の観察点(L1)から観察したときに、凸形状の表面の全面が観察でき、第2の観察点(L 2 )から観察したときに、凸形状の場合、手前側となる表面が観察でき、奥側となる表面が観察できない形状であれば良い。なお、第2の観察点(L2)から観察したときの凸形状の表面の見え方については後述する。
【0033】
第1の要素(6)は、
図4において、画線のみで構成しているが、それに限らず、画線、複数の画素の少なくとも一つ又はそれぞれの組み合わせで構成しても良い。本発明において、「画線」とは、直線、破線、波線等のことであり、「画素」とは、所定の形状を有する文字、数字、記号、図形、マーク等のことである。
【0034】
図6に、第1の要素(6)を画線とした場合において、詳細を説明する。
図6に示す第1のピッチ(P1)は、限定されるものではないが、前述したような貴重印刷物に本発明の形成体(1)を形成し、第2の観察点(L2)から第一の潜像画像(10)を観察するような場合、第1のピッチ(P1)は、80μm〜1000μmの範囲で形成されるのが好ましい。上記範囲において、一定のピッチで規則的に第1の要素(6)が配置される。
【0035】
なお、第1のピッチ(P1)を1000μmより広くしても、第一の潜像画像(10)を視認することができるが、第一の潜像画像(10)を形成するための第1の模様(12)が大きくなり、貴重印刷物を構成するデザイン、例えば、他の印刷図柄等の制約を受けるために、好ましくない。
【0036】
また、第1のピッチ(P1)を80μmより狭くすることも可能であるが、第1 の要素(6)の加工精度の問題や、後述する第1の要素(6)と第3の要素(7)の配置で、位置合わせに高い精度を要するために好ましくない。
【0037】
第1の要素(6)における第1の方向(S1)の幅を第1の要素(6)の幅(W1)とする。第1の要素(6)の幅(W1)は、後述する潜像部(4)及び背景部(5)の区分けができ、かつ、第一の潜像画像(10)が鮮明に視認できるように、第1のピッチ(P1)に対応して形成される。
【0038】
視認性の良好な第一の潜像画像(10)を形成するためには、第1の要素(6)の幅(W1)の範囲は、第1のピッチ(P1)に対して1/5〜4/5の広さの範囲が好ましく、例えば、第1のピッチ(P1)が80μmのときの第1の要素(6)の幅(W1) は、16μm〜64μmであり、第1のピッチ(P1)が1000μmのときの第1の要素(6) の幅(W1)は、200μm〜800μmというように、第1のピッチ(P1)に対して第1の要素(6)の幅(W1)を、後述する第3の要素(7)を印刷した後の第一の潜像画像(10)の視認性を鑑みて適宜調整すれば良い。
【0039】
凸形状の第1の要素(6)の高さ(h)は、10〜100μmの範囲で形成される。
【0040】
第1の要素(6)の高さ(h)を10μmより低くしても、第一の潜像画像(10)を形成すること可能だが、第一の潜像画像(10)が視認できる範囲が狭くなってしまうために、好ましくない。また、第1の要素(6)の高さ(h)を100μmより高くすることも可能であるが、基材(2)が必要以上に厚くなり、加工効率が悪くなるという問題が生じるため、好ましくない。
【0041】
以上のように説明した第1の要素(6)から成る第1の模様(12)は、規則的に配置された第1の要素(6)の位相が部分的に異なることにより、潜像部(4)と背景部(5) に区分けされる。次に、この潜像部(4)と背景部(5)について、
図7を用いて詳細に説明する。
【0042】
図7(a)は、潜像部(4)と背景部(5)を示す平面図である。本発明において、潜像部(4)とは、規則的に配置された第1の要素(6)の位相が部分的に異なることによって構成した第1の模様(12)である。また、背景部(5)とは、潜像部(4)に対して背景となる部分である。なお、第一の潜像画像は、
図7(a)に示す「NIPPON」の文字に限定されず、数字、記号、図形、マーク等で形成されても良い。
【0043】
図7(b)は、
図7 (a)において点線で囲まれた箇所の拡大図であり、潜像部(4) を構成する第1の要素(6)を潜像要素(4A)と呼び、背景部(5)を構成する第1の要素(6)を背景要素(5A)と呼ぶ。
【0044】
なお、潜像要素(4A)は、
図7(b)に示すように、背景要素(5A)に対して第1の方向(S1)とは反対方向である上側に位相を異ならせてもよく、また、
図7(b)とは逆に、潜像要素(4A)を背景要素(5A)に対し、第1の方向(S1)と同じ方向である下側に位相を異ならせても良い。
【0045】
潜像要素(4A)及び背景要素(5A)は、
図7(b)に示すように離れていても良いし、
図8(a)又は
図8(b)に示すように、繋がっていても良い。
【0046】
(第2の模様)
次に、第2の模様(13)について説明する。
図9は、第2の模様(13)を示す平面図及び断面図である。第2の模様(13)は、
図9(a)に示すように、凸形状の複数の第1の要素(6)の各要素間に形成された、複数の第2の要素(9)から成る。
【0047】
前述のとおり、本発明の形成体(1)は、基材(2)に対して斜め方向となる第2の観察点(L2)から視認可能な第一の潜像画像(8)に加え、新たに基材(2)に対して透過光下となる第3の観察点(L1)から視認可能な第二の潜像画像(10)が付与されている。前述した第1の要素(6)及び第2の要素(9)は、断面形状を一部異ならせることで、基材(2)との光の透過率が変化する。よって、一部断面形状が異なる第1の要素(6)及び/又は第2の要素(9)を複数配置することで、透過光下で視認可能となるすかし模様の第二の潜像画像(10)を形成体(1)に付与することが可能となる。
【0048】
まず、第2の要素(9)について説明する。なお、一部断面形状が異なる第1の要素(6)については、後述する。
図9(a)に示すように、基材(2)上に、「桜の花」の模様の第二の潜像画像(10)が形成されている。第2の要素(7)は、複数の第1の要素(5)間に配置されている。
【0049】
図9(b)は、
図9(a)におけるB−B’断面図である。基材(2)の一部である底部(9b)は、すべて断面形状が同一形状であるが、第2の要素(9)は、第二の潜像画像(10)の形状に対応し、断面形状が変化する。
【0050】
図9(b)に示すように、第2の要素(9)と底部(9b)は、深さが異なる。なお、本発明においては、底部(9b)の幅(W2)及び深さ(h1)を基準とし、第2の要素(9)の深さ(h2)は、基準となる底部(9b)の基準位置(M)からの深さとして以下説明する。
【0051】
第2の要素(9)を底部(9b)より深くすることで、第2の要素(9)と底部(9b)の光の透過率が異なり、透過光下で観察した際に、底部(9b)より深い第2の要素(9)が、底部(9b)と比べて明るく(白く)視認される。よって、複数の第2の要素(9)を第二の潜像画像(10)の形状に合わせて適宜形成することで、前述した透過光下で視認可能な第二の潜像画像(10)が形成される。
【0052】
なお、
図9(b)においては、第二の潜像画像(10)を形成する第2の要素(9)の深さ(h2)は一定である。第2の要素(9)の深さ(h2)及び幅(W2)を一定とした場合には、透過光下で視認可能な第二の潜像画像(10)は、階調を有しないベタのすかし模様として視認される。第二の潜像画像(10)を形成する第2の要素(9)の深さ(h2)及び幅(W2)を変化させた場合には、透過光下で視認可能な第二の潜像画像(10)は、階調を有するすかし模様として視認されるが、それについては後述する。
【0053】
第2の要素(9)の深さ(h2)は、30μm〜70μmとする。30μm以下とした場合は、底部(9b)との光の透過率があまり変わらず、透過光下において第二の潜像画像(10)が不鮮明に視認されることから好ましくない。
【0054】
第2の要素(9)の深さ(h2)を70μm以上とした場合は、第1の要素(6)上に印刷画線である第3の要素(7)を印刷しづらくなり、好ましくない。さらには、第2の要素(9)が薄くなることで形成体(1)の耐久性が低下し、好ましくない。
【0055】
前述した
図9(b)においては、第2の要素(9)及び底部(9b)は、幅(W2)が一定だが、深さを変えることで、基材(2)との光の透過率を異ならせて、第二の潜像画像(10)を形成していた。しかしながら、基材(2)と第2の要素(9)の光の透過率を変化させることが可能な構成であれば、
図9(b)に示した断面形状に限らず、他の断面形状とすることも可能である。
【0056】
図10 は、第二の潜像画像(10)を形成する第2の要素(9)の他の断面形状を示す断面図である。
図10(a)、
図10(b)、
図10(c)及び
図10(d)は、前述した
図9(b)の断面図と同様に基材(2)を第1の方向(S1)に対して平行に切断した断面図である。前述した第2の要素(9)の深さを底部(9b)より深くする断面形状に限らず、各種形状とすることが可能である。
【0057】
図10(a)、
図10(b)、
図10(c)及び
図10(d)に示すように、第2の要素(9)の幅(W2)を、底部(9b)と比べて狭く又は広くしたり、また、第2の要素(9)の深さ(h2)を底部(9b)と比べて深く又は浅くしたりすることで、第2の要素(9)と底部(9b)の光の透過率を変化させることが可能である。いずれの形状においても、底部(9b)と比べ、光の透過率が高い場合には、底部(9b)より明るく視認され、反対に光の透過率が低い場合には、底部(9b)より暗く視認される。
【0058】
なお、
図10においては、幅(W2)及び深さ(h2)をいずれも変化させることで、第2の要素(9)を形成しているが、幅(W2)及び深さ(h2)のどちらか一方のみを変化させた場合でも、光の透過率の変化があることから、第二の潜像画像(10)を形成することは可能である。
【0059】
さらには、一つの第2の要素(9)内において、幅及び深さを異ならせることも可能である。
図11(a)は、幅が異なる一つの第2の要素(9)の平面図であり、
図11(b)及び
図11(c)は、
図11(a)におけるC−C’断面図及びD−D’断面図である。
図11(b)及び
図11(c)に示すように、一つの第2の要素(9)内において、幅を変化させることで、C−C’断面位置における第2の要素(9)と、D−D’断面位置における第2の要素(9)との光の透過率を変化させることも可能である。
【0060】
図12(a)は、深さが異なる一つの第2の要素(9)の平面図である。
図12(b)は、
図12(a)におけるE−E’断面図であり、底部(9b)の断面形状を示す図である。
図12(b)に示すように、底部(9b)は第2の要素(9)の幅方向と垂直する長さ方向であるX方向(X1)に対して深さが一定である。
【0061】
図12(c)、
図12(d)及び
図12(e)は、
図12(a)におけるF−F’断面図である。
図12(c)、
図12(d)及び
図12(e)に示すように、第2の要素(9) は、X方向(X1)に深さを多段又は緩やかに変化させることで、底部(9b)との光の透過率を変化させて形成することも可能である。
【0062】
次に、一部断面形状が異なる第1の要素(6)について説明する。
図13は、一部断面形状が異なる第1の要素(6)を示す平面図及び断面図である。
図13(a)は、例として三つの第1の要素(6)が第1の方向(S1)に配置している。第1の要素(6)は、第1aの要素(6a)及び/又は第1bの要素(6b)から成る。
【0063】
図13(b)、
図13(c)及び
図13(d)は、
図13(a)におけるG−G’断面図である。複数の第1の要素(6)において、第1bの要素(6b)は、すべて断面形状が同一形状である。一方、第1aの要素(6a)は、第二の潜像画像(10)に対応し、断面形状が変化する。以下、本実施の形態において、第1の要素(6)は、断面形状が異なる第1aの要素(6a)を有していない場合には、第1bの素(6b)のみから形成されているものとして説明する。
【0064】
図13(b)に示すように、第1aの要素(6a)と第1bの要素(6b)は、幅( W1)が異なる。なお、本発明においては、第1bの要素(6b)の幅(W1)及び高さ(h1)を基準とし、第1aの要素(6a)の高さ(h1)は、基準となる第1bの要素(6b)の基準位置(M)からの高さとして以下説明する。
【0065】
図13(b)、
図13(c)及び
図13(d)に示すように、第1aの要素(6a)の高さ(h1)を、第1bの要素(6b)の高さ(h1)と異ならせたり、第1aの要素(6a)の幅(W1)を、第1bの要素(6b)の幅(W2)と異ならせたりすることで、第1aの要素(6a)と第1bの要素(6b)の光の透過率が異なり、透過光下で観察した際に、第1bの要素(6b)より光の透過率が高い場合には、第1aの要素(6a)は、第1bの要素(6b)と比べて明るく(白く)視認される。
【0066】
反対に、第1bの要素(6b)より光の透過率が低い場合には、第1aの要素(6a)は、第1bの要素(6b)と比べて暗く(黒く)視認される。よって、複数の第1aの要素(6a)を第二の潜像画像(10)の形状に合わせて適宜形成することで、前述した透過光下で視認可能な第二の潜像画像(10)が形成される。
【0067】
さらに、他の断面形状としては、一つの第1の要素(6)内において、高さ(h1)を変化させることで、第1aの要素(6a)を形成することも可能である。
図14は、第1aの要素(6a)の他の断面形状を示す平面図及び断面図である。
図14(a)は、第1bの要素(6b)の平面図であり、
図14(b)は、
図14(a)のH−H’断面図である。
図14(b)に示す第1bの要素(6b)は、X方向(X1)に対して高さが一定である。
【0068】
図14(c)、
図14(d)、
図14(e)及び
図14(f)は、
図14(a)におけるI−I’断面図である。
図14(c)、
図14(d)、
図14(e)及び
図14(f)に示すように、第1aの要素(6a)は、X方向(X1)に高さを多段又は緩やかに変化させることで、第1bの要素(6b)との光の透過率を変化させて形成することも可能である。
【0069】
なお、前述した第2の要素(9)と同様に、第1aの要素(6a)においても、一つの第1の要素(6)内において第1aの要素(6a)の幅を徐々に広く、又は、狭くした形状とすることも可能である。
【0070】
さらには、図には示さないが、前述した形状を種々組み合わせることで、第1aの要素(6a)及び第2の要素(9)を構成することが可能であることはいうまでもない。また、第二の潜像画像(10)においても、前述した第1aの要素(6a)及び第2の要素(9) を組み合わせて形成することも可能である。
【0071】
このように、第2の要素(9)の大きさ/及び又は深さを連続的又は段階的に異ならせると、光の透過率が異なるため、透過光下で視認される第二の潜像画像(10)が、透過光量に差が生じて、階調のある画像として形成することができる。
【0072】
以上、透過光下において視認可能となる第二の潜像画像(10)を形成するための第2の要素(9)について説明したが、発明が解決しようとする課題にて説明したように、第1の要素(6)が、一部で位相を異ならせることにより、潜像部(4)と背景部(5)に区分けしている関係で、その第1の要素(6)間に形成された第2の要素(9)も、途中で位相が異なって配置されてしまうこととなる。したがって、第二の潜像画像(10)内の濃度の不均衡な濃度不均衡領域(14)が発生してしまう。そこで、本発明の特徴点として、第二の潜像画像(10)の濃度の不均衡を緩和するための濃度緩和要素(15)を形成する。
【0073】
図15は、濃度緩和要素(15)を説明するための図である。
図15(a)は、
図21に示した従来の形成体の一部を拡大した図である。
図15(a)に示したように、万線状に配置された第1の要素(6)の間に、基材(2)よりも光の透過率の高い第2の要素(9)がドット形状により同一ピッチ(P1)で形成されている。第1の要素(6)は、画線の一部で位相が異なることにより潜像部(4)と背景部(5)に区分けされている。第2の要素(9)は、基本的に同一ピッチ(P1)で配置されているが、第1の要素(9)の間に形成するため、必然的に、位相の異なる箇所において、ピッチ(P1)が異なってしまう領域が発生してしまう。その領域が濃度不均衡領域(14)である。
【0074】
この濃度不均衡領域(14)は、所定の範囲において、要素が占める面積率が他の領域とは異なっている。
図15(c)に、
図15(a)の所定の範囲(16a、16b)を抜粋した図を示す。所定の範囲は、比較する二つの範囲において面積は同じとなっている。その同じ面積の範囲の中において、第2の要素(9)が占める面積率は、規則的なピッチ(P1)で配置されている範囲(16a)内では、全て同じ面積率となるが、濃度不均衡領域(14)を有する範囲(16b)は、
図15(c)に示すように、隣り合う第2の要素(9)のピッチ(P2)が他のピッチ(P1)とは異なっているため、他の所定の範囲(16a)よりも面積率が低くなっている。
【0075】
そこで、この濃度の不均衡を緩和するために、所定の範囲(16b)において、第2の要素(9)が占める面積率を高くして、他の所定の範囲(16a)と同じ面積率とするために、
図15(d)に示すように、濃度緩和要素(15)を濃度不均衡領域(14)に形成する。
【0076】
この濃度緩和要素(15)は、第2の要素(9)と実質的には同じ要素ではあるが、所定の範囲(16a)と面積率を等しくするために、一つ一つの濃度緩和要素(15)の大きさ及び形状が第2の要素(9)とは異なっていても良い。
【0077】
前述のとおり、濃度緩和要素(15)は第2の要素(9)と実質的に同じであることから、第2の要素(9)と同じ形成方法により形成され、第二の潜像画像(10)を形成するため、第2の要素(9)と同じ光透過性を有し、基材(2)よりも光の透過率が高く形成されている。
【0078】
濃度緩和要素(15)を形成する箇所については、第二の潜像画像(10)を形成するために設計された第2の要素(9)において、第1の要素(6)に起因する濃度不均衡領域(14)を把握し、その領域に、他の所定の範囲(16a)と同じ要素が占める面積率となるように大きさ及び/又は形状を決定して、第2の要素(9)と同じ設計データに組み込む。
【0079】
図15(b)に示した濃度緩和要素(15)については、第2の要素(9)の大きさに対して小さいドット径となっているが、この大きさで所定の範囲(16)において全て同じ面積率となっている。形状については、ドットに限定されるものではないため、楕円形、多角形、文字及び有意味模様でもいい。また、濃度緩和要素(15)を複数配置する場合、全ての濃度緩和要素(15)が同じ大きさ、形状及び深さでも良いが、所定の範囲(16)の面積率を等しくて第二の潜像画像の濃度が等しくなるように、複数の濃度緩和要素(15)において、形状、大きさ及び/又は深さを個別に異ならせても良い。
【0080】
また、濃度緩和要素(15)の大きさ及び形状について
図16を用いて説明する。
図16(a)は、第1の要素(6)、第2の要素(9)及び濃度緩和要素(15)が形成された状態を示す一部拡大模式図であり、そのY−Y’における断面図が
図16(b)である。
図16(a)に示すように、第2の要素(9)及び濃度緩和要素(15)は共に円形となっており、濃度緩和要素(15)は、凸形状の第1の要素(6)の中央部に凹形状に形成されている。
【0081】
図17(a)では、濃度緩和要素(15)が楕円形を有して形成されており、
図17(b)に示すように、第1の要素(6)の一方の斜面を介して形成されている。本来の第1の要素(6)が存在しているところを点線により示唆してある。前述のとおり、濃度緩和要素(15)は、所定の範囲(16)において、第2の要素(9)が占める面積率が全て等しくなるように濃度緩和要素(15)を配置することから、面積率を整えるために第1の要素(6)内だけでは収まらない場合もある。そのような場合には、
図17(a)及び(b)のように、隣り合う第2の要素(9)と結合した楕円形の形状を有し、第1の要素(6)を超えた範囲まで形成することでも良い。
【0082】
図17(a)では、第1の要素(6)を超えた範囲まで形成するために、第2の要素(9)と結合した楕円形としたが、この形状に限定されるものではなく、長方形(ライン)でも構わない。
【0083】
さらに、第2の要素(9)の大きさ/及び又は深さを連続的又は段階的に異ならせることで、光の透過率を異ならせることができることから、階調を有した第二の潜像画像(10)が形成可能であることは前述したとおりであるが、この濃度緩和要素(15)についても同様であり、第二の潜像画像(10)を構成している一つの要素でもあるため、階調を有する第二の潜像画像(10)を形成する場合には、第2の要素(9)と併せて濃度緩和要素(15)も大きさ/及び又は深さを適宜設定すれば良い。
【0084】
(第3の模様)
最後に、第3の模様(11)について説明する。第3の模様(11)は、前述した第1の模様(12)及び第2の模様(13)とは異なる色で、
図18(a)に示すように、第3の要素(7)が第1の方向(S1)と同じ方向に、第1の要素(6)と同じ第1のピッチ(P1)で万線状に配置されて成る。第1のピッチ(P1)については、第1の要素(6)で説明したため、詳細は省略する。
【0085】
この第3の要素(7)を形成する色彩が第2の観察角度(L2)で観察される第一の潜像画像(8)の色彩に影響するため、色材は、透明以外のインキが適しており、比較的インキ膜厚の薄いオフセット印刷やインクジェット印刷等、一般的な印刷方法を用いて形成する。
【0086】
ここで、第3の要素(7)に対する画線とは、印刷物における画像を形成する最小単位である印刷網点を、所定方向に隙間無く連続して配置することにより形成した画像要素であって、例えば、直線、曲線、波線、点線や破線等の分断線等が含まれ、画線の形状は如何なるものであってもよい。また画素とは、印刷物における画像を形成する最小単位である印刷網点を複数集合させて形成した一塊の画像要素であって、例えば、円、三角形、四角形等を含む多角形、星形等の各種図形、あるいは、文字や記号等が含まれ、濃淡の変化が面積率、即ち、点の大小により表現される網点形状であり、画素の形状は、如何なるものであってもよい。なお、以下の説明では、第3の要素(7)は直線で形成されているものとして説明する。
【0087】
図18(b)の一部拡大図に示すように、第3の要素(7)の幅(W4)は、10μmより太く、ピッチ(P1)の9/10までの範囲とする必要がある。これは、第1の要素(6)上に形成させなければならないためである。
【0088】
この第3の要素(7)を、前述した第1の要素(6)上に、第1の要素(6)と平行に形成することで、本形成体(1)が完成する。
【0089】
第1の要素(6)と第3の要素(7)との位置関係については、第1の要素(6)は、一部で位相を異ならせることにより、第1の模様(12)が潜像部(4)と背景部(5)に区分けされているため、直線として形成されている第3の要素(7)は、
図19に示すように、例えば、潜像部(4)を形成している第1の要素(6)の一方の斜面に配置されていても、背景部(5)を形成している第1の要素(6)においては、他方の斜面に配置されることとなる。これは、第1の要素(6)が1/2ピッチ(P)位相がずれているからである。
【0090】
このような第1の要素(6)と第3の要素(7)の位置関係により、基材(2)に対して垂直となる第1の観察角度(L1)では、第3の要素(7)が万線状に配列されている状態が視認でき、基材(2)を傾斜して観察すると、観察者の視点から見えることができる斜面に形成されている第3の要素(7)のみが視認でき、反対側の斜面に形成されている第3の要素(7)は、第1の要素(6)の凸形状が壁となって視認することができずに、結果的には第一の潜像画像(8)が確認できることとなる。
【0091】
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した形成体(1)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0092】
実施例1として、
図1に示した構成により形成体(1)を作製した。基材(2)は、坪量73g/m2、紙厚85μmとし、公知の長網抄紙機を用いて形成した。また、基材(2)の色は、不透明度を80%(JIS−P8149)にするため顔料及び添量を適宜加えて卵黄色とした。なお、光の透過率を測定する指標として、本実施例1では基材(2)の不透明度を用いることとした。
【0093】
凸形状の第1の要素(6)は、公知の長網抄紙機を用いて基材(2)を製造する工程において、公知のすき入れ方法により形成した。第1の要素(6)の第1の画線幅(W1)は200μm、画線同士のピッチ(P)は500μmとした。また、
図7(b)に示した潜像部(4)と背景部(5)の区分けをするための位相のずれについては、ピッチ(P)の半分の250μmとし、第一の潜像画像(8)は、
図7(a)に示す「NIPPON」の文字とした。
【0094】
第1の要素(6)同士の間に形成した第2の要素(9)については、すき入れにより他の箇所よりも光の透過率が高くなっているところであり、不透明度を測定したところ50%となっていた。
【0095】
第2の要素(9)の形状は、
図9(a)に示したような直径150μmの円形とした。また、この底部(9b)の深さ(h2)は40μmとした。この第2の要素(9)によって、
図9(a)に示した「桜の花」を形成した。なお、この第2の要素(9)については、あらかじめすき入れを形成する前に、どのような第二の潜像画像(10)とするかを決定し、すき入れにより同時に形成した。
【0096】
この第二の潜像画像(10)を第2の要素(9)と併せて設計すると、本発明の課題となっていた濃度に不均衡が生じた第二の潜像画像(10)となっていたため、第2の要素(9)が規則的に配置されている所定の範囲(16)と同じ範囲の濃度不均衡領域(14)に対して、面積率が等しくなるように濃度緩和要素(15)を配置する箇所、大きさ及び形状を決定した。
【0097】
以上のようにして公知の長網抄紙機を用いてすき入れにより第1の要素(6)及び第2の要素(9)を形成した用紙、所謂本形成体(1)の基材(2)を作成した。この基材(2)上に、オフセット印刷において、プロセスマゼンタインキ(T&K TOKA(株)製「UV Lカートン紅」)を用いて第3の要素(7)を形成した。画線同士のピッチ(P1)は、第1の要素(6)と同様のピッチ(P)の500μmとし、画線幅(W2)は150μmの直万線として、凸形状の第1の要素(6)の斜面に載るように印刷した。
【0098】
本実施例1の形成体(1)を反射光下における第1の観察角度(L1)から観察すると、マゼンタ色の万線模様である第1の模様(12)のみが視認できた。
【0099】
次に、第1の観察角度(L1)から基材(2)を斜めにした第2の観察角度(L2)へ観察角度を変更して形成体(1)を観察すると、第1の模様(12)の一部のマゼンタ色が視認できなくなったことにより、第一の潜像画像(8)の「NIPPON」の文字を確認できた。
【0100】
さらに、基材(2)を透過光下となる第3の観察角度(L3)において観察すると、濃度が均等化された第二の潜像画像(10)の「桜の花」が確認できた。