特許第6366134号(P6366134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366134
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】電磁波送受信機器用カバー
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/42 20060101AFI20180723BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180723BHJP
   C09D 5/29 20060101ALI20180723BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20180723BHJP
   C09D 165/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H01Q1/42
   B32B27/00 A
   C09D5/29
   C08J7/04 Z
   C09D165/00
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-150008(P2014-150008)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-25585(P2016-25585A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲澤 大助
(72)【発明者】
【氏名】星野 勝義
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−214790(JP,A)
【文献】 特開平07−090060(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/021405(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0118243(US,A1)
【文献】 特開2010−143980(JP,A)
【文献】 特開平06−049246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/42
B32B 27/00
B32B 37/02
C08G 61/12
C08J 7/04
C09D 5/29
C09D 165/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非金属基材と、
下記一般式(1)で表されるポリチオフェンを含有する塗工液を前記非金属基材上に塗工して形成された塗膜とを有することを特徴とする電磁波送受信機器用カバー。
【化1】
(式中のRは水素原子、アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表し、Rはアルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表す。また、nは3〜100の整数を表す。)
【請求項2】
前記電磁波送受信機器用カバーの電界及び磁界の透過率が、各々、少なくとも700MHzもしくは900MHzのいずれか一方において、90%以上である請求項1記載の電磁波送受信機器用カバー。
【請求項3】
前記非金属基材が、プラスチック基材である請求項1又は2記載の電磁波送受信機器用カバー。
【請求項4】
前記塗工液が、前記ポリチオフェンに対して陰イオンがドーピングされたものである請求項1〜3のいずれか1項記載の電磁波送受信機器用カバー。
【請求項5】
前記塗工液が、前記ポリチオフェンを0.05〜15質量%含有するものである請求項1〜4のいずれか1項記載の電磁波送受信機器用カバー。
【請求項6】
前記塗膜上に、更にトップコート層を有する請求項1〜5のいずれか1項記載の電磁波送受信機器用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を用いて粒状感のない均一なメタリック調の外観が得られた電磁波送受信機器用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車体や、アルミホイール、バンパー等の自動車部品、スマートフォン、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の電化製品等の外観には高い意匠性が求められ、鏡面のようなメタリック調光沢を表面に付与する技術が求められている。
【0003】
このようなメタリック調光沢を付与する際、例えば自動車においては所謂衝突防止システム等と呼称される、距離測定用のレーダー装置を自動車の各部、例えばラジエータグリル、バンパー、バックパネル等に設けることがある。このようなレーダー装置は、電磁波を対象物に照射し、対象物からの反射波を受信して距離を測定するため、レーダー装置と対象物との間に電磁波を遮蔽・減衰する素材(例えば金属等)があると、その機能を十分に発揮できなくなる。したがって、レーダー装置の前面に位置するラジエータグリル、バンパー、バックパネル等、レーダー装置のカバー部に相当する自動車の外装用部品には電磁波透過性が必要とされる。
【0004】
また、スマートフォン、携帯電話、パーソナルコンピュータ、通信機能を有する携帯用ゲーム等の電化製品についても同様の事が言え、通信用電波の送受信部を覆う部品の塗装には、電磁波透過性のある塗装を施す必要がある。
【0005】
従来、メタリック調光沢を対象物表面に付与するには、アルミニウム等の金属粉を用いた顔料や、雲母に酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物をコートした顔料(所謂パール顔料)を含む塗料や、金属によるめっき処理又は蒸着処理が多用されてきた。しかし、これらの方法で形成されたメタリック塗膜はいずれも導体である金属を含み、電磁波を減衰及び遮蔽する性質があるため、上述のような電磁波透過性が求められる用途への適用は極めて困難であった。
【0006】
また、上述のような金属ではなく有機材料を用いてメタリック光沢を得る技術が検討されており、例えば、特許文献1において、重量平均分子量の分布ピークが200以上30000以下の範囲内にあるチオフェン重合体を含む金属光沢を有する膜が報告されている。
【0007】
しかし、特許文献1は、この膜が電気伝導性を有するものであると記載しているため、この膜が電磁波を減衰及び遮蔽する性質を有することを示唆している。また、一般にポリチオフェン等の導電性ポリマーには電磁波遮蔽特性があると考えられている。
【0008】
これらの問題を回避する手段として、例えば特許文献2においては、オキサゾリン基を含有する樹脂と金もしくは銀ナノ粒子を混合した光輝性を有する電磁波透過性塗膜が報告されている。
【0009】
しかし、この方法では色調を発現する成分の大部分を、鉱物資源的に貴重かつ高価な金又は銀が占めるため、生産コストが従来のメタリック調光沢発現手段に比べて極めて高くなる。また、調製時に限外濾過を行ってナノ粒子粒径を一定以下に抑えないと電磁波透過性が急速に低下するため、生産性が悪く、かつ塗料の保存性に劣る。
【0010】
また、特許文献3においては、アクリル、ポリカーボネート等のプラスチックフィルム上にシリコンと金属との合金を物理的に蒸着し、更に蒸着面にプラスチックフィルムを熱ラミネートした電波透過性加飾フィルムが報告されている。
【0011】
しかし、この方法では大掛かりな設備が必要で、真空又は減圧した容器中に基材を設置する必要があり、大型の基材に適用しにくいという点で工夫の余地がある。またスパッタ等の物理的蒸着法で金属層を形成する方法は、厳格な膜厚制御が必要であるため、生産性が低下するという点で改善の余地がある。
【0012】
また、特許文献4においては、アルミニウムからなる扁平状の光輝材(以下、アルミニウム顔料と称する。)と扁平状の非導電性顔料とを含む塗料を調製し、塗膜中における光輝材の重なり枚数と光輝材同士の間隔とが所定の関係を満たすことで電磁波透過性を発現させる塗料が報告されている。
【0013】
しかし、この方法ではスプレー、スピンコートなど一般に塗装に多用される設備の塗装条件に応じてアルミニウム顔料同士の間隔が変動しやすく、安定した電磁波透過性を得ることが難しいという点で改善の余地がある。アルミニウム顔料同士の間隔を一定距離に制御するためには、塗装膜厚及び乾燥条件に制限が生じ、十分な金属光沢膜を得るには10μm以上が必要とされる。また、この方法は顔料分散工程を必要とする。更に根本的かつ重要な課題として、以下の点が挙げられる。すなわち、アルミニウム等の金属顔料はその比重の大きさから塗料中で沈降していくため、使用時には定期的に攪拌する必要がある。この攪拌力によってアルミニウム顔料は破砕されやすく、破砕された微粒子が凝集して不規則な形状の凝集粒子を形成し、これが電磁波透過性を低下させる。このため、特許文献4が謳うような均一なアルミニウム顔料間の間隔を保つ塗膜を工業的に実現するのは極めて困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2014/021405号
【特許文献2】特許第5163715号公報
【特許文献3】特許第5346632号公報
【特許文献4】特許第5237713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、粒状感のない均一なメタリック調光沢と高い電磁波透過性を有し、かつ生産性に優れた電磁波送受信機器用カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、チオフェン環に特定の置換基を有するポリチオフェンを、金属光沢を発現する着色材料として含有する塗工液を用いることで、粒状感のない均一なメタリック調光沢とともに高い電磁波透過性を有する塗膜が得られ、そして、該塗工液を非金属基材上に塗工することで、粒状感のない均一なメタリック調光沢と高い電磁波透過性を有する電磁波送受信機器用カバーが生産性良く得られることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明は、非金属基材と、下記一般式(1)で表されるポリチオフェンを含有する塗工液を前記非金属基材上に塗工して形成された塗膜とを有することを特徴とする電磁波送受信機器用カバーを提供するものである。
【化1】
(式中のRは水素原子、アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表し、Rはアルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表す。また、nは3〜100の整数を表す。)
【発明の効果】
【0018】
本発明の電磁波送受信機器用カバーは、塗工液を非金属基材上に塗工して形成された塗膜を有しており、該塗工液は、上記のポリチオフェンを含有することから、メタリック顔料を用いなくともメタリック調光沢を発現することができる。また、上記のポリチオフェンは、後述する陰イオンのドーパントにより、有機溶剤もしくは水に溶解させることが可能になるため、メタリック顔料のように粒状感のあるメタリック調光沢ではなく、金属メッキのような均一なメタリック調光沢を得ることができる。さらに、そのため、該塗工液の調製には顔料分散工程が必要でなく、粒径制御技術及び分散設備が不要である。また、本発明における塗膜は、電界及び磁界両者に対して優れた透過性を示し、かつ非金属基材上に形成されることから、本発明の電磁波送受信機器用カバーは、粒状感のない均一なメタリック調光沢のみならず、高い電磁波透過性を発現することができる。さらに、本発明に用いるポリチオフェンはメタリック顔料のように凝集することもないことから、得られたメタリック調光沢が経時的に低下することはなく、安定的な電磁波透過性を得ることができる。また、本発明に用いる塗工液は、有機化合物である上記のポリチオフェンを用いているため、塗料、グラビアインキ、インクジェットインク等に用いた場合、塗料等に含まれる他の成分との比重差がメタリック顔料より少なく、沈降することがないことから、保存安定性に優れており、使用時に攪拌する必要が無く、電磁波透過性を損ねることもない。また、本発明に用いるポリチオフェンは、それ自身が電磁波透過性を示すため、本発明に用いる塗工液の塗工方法には制限がなく、本発明の電磁波送受信機器用カバーの製造に大掛かりな設備は不要である。さらに、本発明における塗膜は、膜厚が例えば1μm程度であっても高い隠蔽性が得られることから、本発明の電磁波送受信機器用カバーは、多層印刷や高隠蔽性の高価な顔料(例えば、アルミニウムからなる顔料)を必要としない。
【0019】
上記のような特長を有していることから、本発明の電磁波送受信機器用カバーは、ラジエータグリル、バンパー、バックパネル等の自動車の外装用部品;ダッシュボード、インストルメント・パネル、ドアトリム等の自動車の内装用部品;冷蔵庫、テレビ、電子レンジ、エアコン等の家電製品の筐体及びそのリモコン;携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン等の情報端末の筐体等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る電磁波送受信機器用カバーの断面の概略図である。
図2】本発明の好適な実施形態に係る電磁波送受信機器用カバーの断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に本発明に係る実施形態の電磁波送受信機器用カバーの断面の概略を示す。
図1に示すように、本発明の電磁波送受信機器用カバーは、非金属基材10と、下記一般式(1)で表されるポリチオフェン(以下、「置換ポリチオフェン(1)」と略記する。)を含有する塗工液を非金属基材10上に塗工して形成された塗膜11とを有するものである。
【化2】
(式中のRは水素原子、アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表し、Rはアルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表す。また、nは3〜100の整数を表す。)
【0022】
ただし、置換ポリチオフェン(1)の各繰り返し単位において、RとRの互いの位置関係は特に限定されず、全ての繰り返し単位においてRとRの互いの位置関係が同じであってもよいし、適宜選択される少なくとも一つの繰り返し単位において上記一般式(1)で示したRとRの位置が逆になっていてもよい。
【0023】
一般的に、ポリチオフェンには導電性があり、電磁波遮蔽特性があると考えられていたが、置換ポリチオフェン(1)は、そのような従来の技術常識に反して、電磁波透過性を示す。これは置換ポリチオフェン(1)の分子量が比較的小さいためであり、繰り返し単位数nの範囲は3〜100であり、3〜40の範囲であることが好ましい。
【0024】
本発明の電磁波送受信機器用カバーの電界及び磁界の透過率(すなわち、非金属基材10上に塗膜11を形成した後の塗膜11及び非金属基材10を含む本発明の電磁波送受信機器用カバー全体としての電界及び磁界の透過率)は特に限定されないが、各々、少なくとも700MHzもしくは900MHzのいずれか一方において、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。90%以上とすることによって、上述した各用途において本発明の電磁波送受信機器用カバーの電磁波透過性を良好なものとすることができ、また、置換ポリチオフェン(1)によってそのような特性を発揮することができる。上限についても特に限定されないが、同様の観点から、限りなく100%に近いことが好ましい。
【0025】
塗膜11の厚さは特に限定されないが、電磁波透過性、塗膜外観等を考慮して、0.5〜30μmの範囲が好ましく、1〜10μmの範囲がより好ましい。
【0026】
前記置換ポリチオフェン(1)は、下記一般式(2)で表される置換チオフェン化合物(以下、「置換チオフェン化合物(2)」と略記する。)の3分子以上が互いに結合して重合したものである。
【化3】
(式中のRは水素原子、アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表し、Rはアルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基を表す。)
【0027】
置換チオフェン化合物(2)において、Rは水素原子、アルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基であり、Rはアルコキシ基、アミノ基又はヒドロキシル基であるが、Rは水素原子であることが好ましく、Rはアルコキシ基であることが好ましい。また、置換ポリチオフェン(1)を合成するにあたって、その原料である置換チオフェン化合物(2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。なお、2種類の置換チオフェン化合物(2)を用いる場合、単量体の配列は特に限定されず、置換ポリチオフェン(1)は、ランダム共重合体、交互共重合体、又は、ブロック共重合のいずれであってもよい。
【0028】
置換チオフェン化合物(2)において、R、Rのいずれか、もしくは両方がアルコキシ基である場合、アルキル鎖の炭素原子数は1〜10であることが好ましく、1〜4がより好ましい。アルコキシ基を有する置換チオフェン化合物(2)の具体例としては、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−プロポキシチオフェン、3−イソプロポキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3−メトキシ−4−エトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン等が挙げられる。
【0029】
置換チオフェン化合物(2)において、R、Rのいずれか、もしくは両方がアミノ基である場合、置換チオフェン化合物(2)の具体例としては、3−アミノチオフェン、3,4−ジアミノチオフェン、3−(N−メチルアミノ)チオフェン、3−(N,N−ジメチルアミノ)チオフェン、3−(N−エチルアミノ)チオフェン、3−(N,N−ジエチルアミノ)チオフェン、3−(N,N−プロピルアミノ)チオフェン、−(N,N−ジブチルアミノ)チオフェン、3,4−ビス(N,N−ジメチルアミノ)チオフェン、3,4−ビス(N,N−ジエチルアミノ)チオフェン等が挙げられる。
【0030】
置換チオフェン化合物(2)において、Rが水素原子以外であり、R及びRの置換基の種類が異なる場合、置換チオフェン化合物(2)の具体例としては、3−アミノ−4−メチルチオフェン、3−アミノ−4−ヒドロキシチオフェン、3−メチル−4−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシ−4−アミノチオフェン、3−メトキシ−4−メチルチオフェン、3−メトキシ−4−ヒドロキシチオフェン等が挙げられる。
【0031】
置換ポリチオフェン(1)を表す一般式(1)中のnは、置換チオフェン化合物(2)を単位とする繰り返し単位数を表し、その範囲は3〜100である。また、より優れたメタリック調の塗膜11を得るためには、繰り返し単位数nは3〜40の範囲が好ましい。
【0032】
置換ポリチオフェン(1)は、置換チオフェン化合物(2)を原料として、化学重合法又は電解重合法によって製造することができる。本発明における「化学重合法」とは、溶媒存在下で置換チオフェン化合物(2)と酸化剤を投入し、液相、固相、液相と固相の界面又はその両相において重合が行われる方法をいう。また、「電解重合法」とは、溶媒存在下で置換チオフェン化合物(2)と電解質を投入し、陽極として白金、金等を用い、陰極として白金、ニッケル等を用いて、それらの電極を液中に挿入し、電解液に電圧を印加することによって電極上で重合が行われる方法をいう。
【0033】
化学重合法において用いる酸化剤と、電解重合法で用いる電解質とは、同様なものが使用でき、各種金属塩を用いることができる。前記金属塩としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、錫、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、セリウム、ネオジム等の金属のフッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、アンモニウム塩、硫酸塩、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、クロム酸塩、重クロム酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラフルオロ硼酸塩等が挙げられる。これらの中でも、過塩素酸鉄(III)、塩化鉄(III)が好ましい。
【0034】
置換ポリチオフェン(1)の製造において、化学重合法で用いた酸化剤、又は電解重合法で用いた電解質由来の陰イオンがドーパントとしてポリチオフェン骨格に導入される場合がある。このドーパントが、ポリチオフェン骨格内にあるカチオン部位と相互作用して安定化し、上記の塗工液を塗工・印刷した際に、塗膜11表面で置換ポリチオフェン(1)の分子配向が促進され、メタリック調光沢がより得られやすくなる。このように、上記の塗工液は、置換ポリチオフェン(1)に対して陰イオンがドーピングされたものであることが好ましい。
【0035】
化学重合法で用いる溶媒は、置換チオフェン化合物(2)が十分に溶解するものが好ましく、電解重合法で用いる溶媒は、置換チオフェン化合物(2)及び電解質が十分に溶解するものが好ましい。また、酸化剤については十分に溶解しない状態であっても酸化剤の表面で重合反応が進行するので、化学重合法で用いる溶媒は、酸化剤が十分に溶解する溶媒でなくてもよいが、十分に溶解するものが好ましい。化学重合法、及び電解重合法で用いる溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0036】
また、化学重合法における置換チオフェン化合物(2)と酸化剤の使用量、及び電解重合法における置換チオフェン化合物(2)と電解質の使用量は、置換ポリチオフェン(1)の分子配向がより促進され、メタリック調光沢がより得られやすくなることから、置換チオフェン化合物(2)1モルに対し、酸化剤又は電解質が0.25〜15モルの範囲が好ましく、0.5〜10モルがより好ましい。
【0037】
上記の化学重合法又は電解重合法によって得られる置換ポリチオフェン(1)は、着色した固形分として反応液中に沈殿して得られる。沈殿した置換ポリチオフェン(1)は、濾過、洗浄後、減圧乾燥等の乾燥工程を経て回収することで得られる。得られた置換ポリチオフェン(1)を塗料、グラビアインキ、インクジェットインク等の用途ごとに求められる特性(例えば、乾燥速度や環境・人体への毒性)に応じた溶媒に溶解させることにより、上記の塗工液が得られる。
【0038】
上記の塗工液は、置換ポリチオフェン(1)を0.05〜15質量%含有することが好ましい。上記の塗工液は、用途ごとに求められる特性に応じて適宜調製されるが、上記の範囲では本発明の効果が十分に得られる。
【0039】
本発明の電磁波送受信機器用カバーの用途は、電磁波送受信機器(電磁波を送信及び/又は受信可能な機器、例えば距離測定用のレーダー装置や、通信用電波の送受信装置)のカバー部に使用可能なものであれば特に限定されないが、ラジエータグリル、バンパー、バックパネル等の自動車の外装用部品;ダッシュボード、インストルメント・パネル、ドアトリム等の自動車の内装用部品;冷蔵庫、テレビ、電子レンジ、エアコン等の家電製品の筐体及びそのリモコン;携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン等の情報端末の筐体等が好適である。
【0040】
上記の塗工液の塗工方法は特に限定されないが、メタリック塗料、メタリックグラビアインキ、又は、メタリックインクジェットインクとして塗工されることが好ましい。
【0041】
上記の塗工液をメタリック塗料として用いる場合、メタリック塗料中の各成分の組成としては、例えば、置換ポリチオフェン(1)0.25〜15質量部、ビヒクル10〜50質量部、溶剤50〜90質量部、その他添加剤5質量部以下で構成されるものが挙げられる。
【0042】
前記ビヒクルとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、マレイン酸樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。これらのビヒクルは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。ここで、上記の塗工液は、メタリック調の塗膜を得るために、塗膜とするためにビヒクルが必要なメタリック顔料を用いず、代わりに自己成膜性を有する置換ポリチオフェン(1)を用いるため、必ずしもビヒクルは必要ではない。ビヒクルを用いない場合、メタリック塗料中の各成分の組成としては、例えば、置換ポリチオフェン(1)0.25〜10質量部、溶剤90〜99.5質量部、その他添加剤5質量部以下で構成されるものが挙げられる。
【0043】
前記溶剤としては、例えば、水;エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等のエステル溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル溶剤;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール及びそのエステル化合物;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジグリム溶剤;トリクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環式エーテル溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0044】
前記その他添加剤としては、例えば、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、防黴剤、防腐剤、ワックス等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0045】
上記の塗工液をメタリック塗料として用いる場合の塗工方法としては、例えば、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、カーテンコーター、シャワーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、アプリケーター、バーコーター等が挙げられる。上記の塗工液は、これらの塗工方法に応じた適正な粘度とするために、前記溶剤で希釈して用いることが好ましい。
【0046】
上記の塗工液をメタリック塗料として用いる場合の非金属基材10としては、プラスチック基材、ガラス基材、各種建材、ゴム基材等が挙げられるが、なかでもプラスチック基材が好ましい。
【0047】
前記プラスチック基材の素材となる樹脂としては、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等の汎用プラスチック;ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン(U−PE)、ポリフッ化ビニリデン等のエンジニアリングプラスチック;ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等のスーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。また、前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を素材としたプラスチック基材の形状は、成形されたものでもフィルム又はシート状のものでもよい。
【0048】
前記ガラス基材としては、例えば、フロート板ガラス等が挙げられる。また、前記各種建材としては、例えば、スレートボード、ケイ酸カルシウム板、スラグ石膏板、モルタル板等が挙げられる。
【0049】
前記ゴム基材の材質としては、例えば、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン・プロピレンジエンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらのゴム基材の形状は、成形されたものでもフィルム又はシート状のものでもよい。
【0050】
非金属基材10をプラスチック基材とする場合、プラスチック基材への塗膜11の密着性を向上させるため、プラスチック基材表面にプライマーを予め塗工しておいてもよい。プライマーとしては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、水性ウレタン樹脂等を用いたプライマーが挙げられる。
【0051】
図2に本発明の好適な実施形態に係る電磁波送受信機器用カバーの断面の概略を示す。
図2に示すように、塗膜11の耐久性を向上させるため、塗膜11上にトップコート層12を設けてもよい。トップコート層12の厚さは、塗膜外観、耐擦傷性、耐候性等を考慮して、5〜50μmの範囲が好ましく、10〜30μmの範囲がより好ましい。トップコート層12とする塗剤に用いる樹脂としては、例えば、石油系樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、フッ素樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、硝化綿、ビニル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。なかでもトップコート層12としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化塗膜が好適である。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、例えば、不飽和ポリエステル系、アクリル系、ビニルエーテル系、マレイミド系、エポキシ系等の各種の活性エネルギー線硬化型オリゴマー・モノマーを主成分とし、反応性希釈剤、重合開始剤、重合促進剤、有機溶剤等を、必要に応じ配合し混合してなるものが挙げられる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられるが、なかでも紫外線が好適である。
【0052】
本発明の電磁波送受信機器用カバーの一態様としては、上記の塗工液をグラビア印刷によって非金属基材10上に印刷して得られたものが挙げられる。上記の塗工液をメタリックグラビアインキとして用いる場合、メタリックグラビアインキ中の各成分の組成としては、例えば、置換ポリチオフェン(1)0.25〜10質量部、ビヒクル5〜40質量部、溶剤50〜90質量部、その他添加剤5質量部以下で構成されるものが挙げられる。
【0053】
前記ビヒクルとしては、例えば、トール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン、ライムロジン、ロジンエステル、マレイン酸樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらのビヒクルは、溶媒に溶解したものも溶媒に分散したものも用いることができる。また、これらのビヒクルは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。ここで、上記の塗工液をメタリック塗料として用いる場合と同様、必ずしもビヒクルは必要ではないため、ビヒクルを用いない場合、メタリックグラビアインキ中の各成分の組成としては、例えば、置換ポリチオフェン(1)0.25〜10質量部、溶剤90〜99.5質量部、その他添加剤3質量部以下で構成されるものが挙げられる。
【0054】
上記の塗工液をメタリックグラビアインキとして用いる場合に使用する溶剤及びその他の添加剤は、上記のメタリック塗料として用いる場合と同様のものを用いることができる。
【0055】
本発明の電磁波送受信機器用カバーのうち、グラビア印刷によるものは、上記の塗工液をメタリックグラビアインキとして用いて、非金属基材10にグラビア印刷したものである。上記の塗工液をメタリックグラビアインキとして用いる場合の非金属基材10としては、プラスチックフィルム基材が好適である。前記プラスチックフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリル共重合体フィルム;これらのフィルムに用いられる複数の樹脂を共押出したフィルム;これらのフィルムをベースとしてバリア性を付与するためにポリ塩化ビニリデン等の樹脂のコーティングをしたフィルム;シリカ、アルミナ等の無機化合物を蒸着したフィルム等が挙げられる。
【0056】
上記の塗工液をメタリックグラビアインキとして用いて、プラスチックフィルム基材にグラビア印刷する際には、上記のメタリック塗料として用いる場合と同様に、プラスチックフィルム基材表面に、プライマーを予め塗工しておいてもよい。また、上記の塗工液をグラビア印刷することによって得られた塗膜11上に、同様にトップコート層12を設けてもよい。上記の塗工液をメタリックグラビアインキとして用いる場合、トップコート層12の厚さは、塗膜外観、耐擦傷性、耐候性等を考慮して、0.5〜20μmの範囲が好ましく、1〜10μmの範囲がより好ましい。
【0057】
本発明の電磁波送受信機器用カバーの一態様としては、上記の塗工液をインクジェット印刷によって非金属基材10上に印刷して得られたものが挙げられる。上記の塗工液をメタリックインクジェットインクとして用いる場合、メタリックインクジェットインク中の各成分の組成としては、例えば、置換ポリチオフェン(1)0.05〜7.5質量部、ビヒクル1〜10質量部、溶剤85〜98質量部、その他添加剤5質量部以下で構成されるものが挙げられる。各成分の組成がこの範囲であれば、より優れたメタリック感を有する塗膜が得られ、インクジェットプリンターのノズルヘッドからのインクの吐出安定性もより安定したものとすることができる。
【0058】
前記ビヒクルとしては、上記の塗工液をメタリックグラビアインキとして用いる場合と同様のものを用いることができる。また、上記の塗工液をメタリック塗料及びメタリックグラビアインキとして用いる場合と同様、必ずしもビヒクルは必要ではないため、ビヒクルを用いない場合、メタリックインクジェットインク中の各成分の組成としては、例えば、置換ポリチオフェン(1)0.05〜7.5質量部、溶剤90〜99.5質量部、その他添加剤5質量部以下で構成されるものが挙げられる。各成分の組成がこの範囲であれば、より優れたメタリック感を有する塗膜が得られ、インクジェット印刷機のノズルヘッドからのインクの吐出安定性もより安定したものとすることができる。
【0059】
上記の塗工液をメタリックインクジェットインクとして用いる場合に使用する溶剤としては、水の他に、インクの乾燥防止を目的とする湿潤性を有する溶剤を用いることが好ましい。この湿潤性溶剤としては、水との混和性があり、インクジェットプリンターのヘッドの目詰まり防止効果が得られるものが好ましく、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、前記湿潤性溶剤のメタリックインクジェットインク中の含有量は、3〜50質量%の範囲が好ましい。
【0060】
さらに、非金属基材10への浸透性改良や非金属基材10上でのドット径調整機能を有する溶剤を添加することが好ましい。このような溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物;プロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。これらの溶剤も同様に、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、このような溶剤のメタリックインクジェットインク中の含有量は、0.01〜10質量%の範囲が好ましい。
【0061】
上記の塗工液をメタリックインクジェットインクとして用いる場合に使用するその他の添加剤としては、表面張力等のインク特性を調整するために添加する界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0062】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0063】
前記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等を挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
【0064】
上記以外の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も用いることができる。
【0065】
上記の界面活性剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、界面活性剤の溶解安定性等が向上することから、そのHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値は、7〜20の範囲であることが好ましい。また、界面活性剤を添加する場合の添加量は、インク全量中に0.001〜2質量%の範囲が好ましく、0.001〜1.5質量%の範囲がより好ましく、0.01〜1質量%の範囲がさらに好ましい。
【0066】
また、上記の界面活性剤以外のその他の添加剤として、必要に応じて防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0067】
上記のメタリックインクジェットインクの表面張力は、インクジェットプリンターでの印刷適性がより向上することから、20〜60mN/mの範囲が好ましく、20〜45mN/mの範囲がより好ましく、20〜40mN/mの範囲がさらに好ましい。
【0068】
また、上記のメタリックインクジェットインクの粘度は、インクジェットプリンターでの吐出安定性がより向上することから、1.2〜20mPa・sの範囲が好ましく、2〜15mPa・sの範囲がより好ましい。なお、メタリックインクジェットインクの表面張力及び粘度は、配合する界面活性剤や水溶性溶媒の種類や添加量を調製することにより、上記の好ましい範囲内にすることができる。
【0069】
本発明の電磁波送受信機器用カバーのうち、インクジェット印刷によるものは、上記の塗工液をメタリックインクジェットインクとして用いて、非金属基材10にインクジェット印刷したものである。上記の塗工液をメタリックインクジェットインクとして用いる場合の非金属基材10としては、プラスチックフィルム基材もしくはプラスチック基材、ガラス基材、各種建材、ゴム基材等が好適である。前記プラスチックフィルム基材としては、例えば、上記の塗工液を上記のメタリックグラビアインキとして用いる場合と同様のものが挙げられる。また、前記プラスチック基材、前記ガラス基材、前記各種建材、及び、前記ゴム基材としては、例えば、上記の塗工液を上記のメタリック塗料として用いる場合と同様のものが挙げられる。これらの形状は、成形されたものでもフィルム又はシート状のものでもよい。
【0070】
上記の塗工液をメタリックインクジェットインクとして用いて、プラスチックフィルム基材にインクジェット印刷する際には、上記のメタリック塗料及びメタリックグラビアインキとして用いる場合と同様に、プラスチックフィルム基材表面に、プライマーを予め塗工してプライマー層を設けておいてもよい。前記プライマー層としては、2液硬化型ウレタン樹脂、水性ウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、活性エネルギー線硬化性ビニルモノマー等の塗膜又は硬化塗膜が挙げられる。また、上記の塗工液をインクジェット印刷することによって得られた塗膜11上に、同様にトップコート層12を設けてもよい。上記の塗工液をメタリックインクジェットインクとして用いる場合、トップコート層12の厚さは、塗膜外観、耐擦傷性、耐候性等を考慮して、0.5〜10μmの範囲が好ましく、1〜5μmの範囲がより好ましい。
【実施例】
【0071】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により下記の条件で測定したものである。
【0072】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:N−メチルピロリドン
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0073】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0074】
(1)塗工物の調製法
[グラビア印刷物]
グラビアインキ組成物を、ヘリオ175線ベタ版を用いて、印刷速度毎分40メートルの速度で2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製「E5100」、厚さ12μm;以下、「PETフィルム」と略記する。)及び2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「パイレンP2161」、厚さ20μm;以下、「OPPフィルム」と略記する。)のコロナ表面処理面にそれぞれ膜厚2μmで塗工し、80℃で乾燥させた。
【0075】
[IJインク印刷物]
インクジェットインク組成物を、最大駆動周波数7.6KHz、解像度360DPI(25.4mm当たり360ドット)のピエゾヘッドを有するインクエジェットプリンターで、PETフィルム及びOPPフィルムのコロナ表面処理面にそれぞれ膜厚1μmで印刷し、80℃で乾燥させた。
【0076】
[塗料塗工物]
塗料組成物を、エアースプレーを用いて、ポリエチレンテレフタレート板(厚さ2mm;以下、「PET板」と略記する。)及びポリカーボネート板(厚さ2mm;以下、「PC板」と略記する。)にそれぞれ膜厚5μmで塗装を行い、常温で10分静置した後、80℃で乾燥させた。
【0077】
(2)塗工物の評価法
[光沢値]
基材にPETフィルムもしくはPET板を用い、上述の方法により得られた塗工物について、光沢計(BYK Gardner製「micro−TRI−gloss」)で入射角60度、反射角60度の光沢を任意の5点で測定し、その平均値を記録した。
【0078】
[塗膜外観]
基材にPETフィルムもしくはPET板を用い、上述の方法により得られた塗工物の外観について、下記項目を以下に示す基準にて目視評価した。
(下地隠蔽性)
○:下地を完全に隠蔽している。
△:下地が僅かに透けている。
×:下地が明確に透けており、基材種類を目視で判別できる。
(塗膜の鏡面反射)
○:像の歪み・ぼやけなく鏡像の細部に至るまで認識できる。
△:像の歪み・ぼやけが多少あるが鏡像の形状は認識できる。
×:像の歪み・ぼやけが酷く鏡像が何であるか認識できない。
(塗膜粒状感)
○:メッキ表面のように粒状感が全くない。
△:非常に細かい粒状模様が見える。
×:明らかに粒状感がある。
【0079】
[電磁波透過性]
基材にPETフィルムもしくはPET板を用い、上述の方法により得られた塗工物の電磁波透過特性を、KEC法、自由空間法の2種類を用いて測定した。
【0080】
KEC法は近傍界の電界シールド効果および磁界のシールド効果測定方法で、信号発生器から送られた任意の周波数の電磁波がサンプルを透過する前後での信号強度差から電磁波透過性を評価する方法である。具体的には、周波数100MHz、500MHz、700MHz、900MHz及び1GHzにおける電界、磁界の透過率を測定した。この際、(透過信号強度)/(入射信号強度)×100=(電磁波透過率)の計算式に基づいて、電磁波透過率(%)を求めた。
【0081】
また、自由空間法はホーンアンテナや誘導体レンズを用いてシート状の試料に平面波を入射させ、試料からの反射波強度や透過波強度を測定して電磁波透過性を評価する方法である。具体的には、Wバンドに相当する周波数76GHzの電磁波を試料に入射し、入射波と透過波の強度差から透過率を測定した。この際、(透過信号強度)/(入射信号強度)×100=(電磁波透過率)の計算式に基づいて電磁波透過率(%)を求めた。
【0082】
[グラビア印刷物の密着性]
上述の方法により得られたグラビア印刷物の塗工表面にセロファンテープ(ニチバン株式会社製「セロテープ」、18mm幅)を貼り付け、貼り付けから10秒後に毎秒10mmの速度で180度方向にテープを剥がし、剥離試験を行った。試験後の塗工物表面を解像度300dpiのスキャナで電子データ化し、剥離部分面積/セロテープ面積=塗膜剥離比率(%)を算出した。この値が小さい程、インク塗膜とフィルム間の密着性が強いことを意味する。この値は各フィルムにおいて30%以下であることが好ましく、15%以下であると更に好ましい。
【0083】
[インクジェット印刷物の密着性]
上述の方法により得られたインクジェット印刷物の塗工表面にセロファンテープ(ニチバン株式会社製「セロテープ」18mm幅)を貼り付け、10秒後に毎秒10mmの速度で180度方向にセロテープをはがし、剥離試験を行った。試験後の塗工物表面を解像度300dpiのスキャナで電子データ化し、剥離部分面積/セロテープ面積=塗膜剥離比率[%]を算出した。この値が小さい程、インク塗膜とフィルム間の密着性が強いことを意味する。この値は各フィルムにおいて30%以下であることが好ましく、20%以下であると更に好ましい。
【0084】
[塗料塗工物の1次密着性]
上述の方法で得られた塗料塗工物の塗膜表面にカッターナイフで1mm角で10×10個の切れ目を入れ、セロファンテープ(ニチバン社製「セロテープ」、18mm幅)による剥離試験を行い、残存する目数を下記基準で評価した。
○:86〜100個
△:60〜85個
×:59個以下
【0085】
(3)塗工液の評価法
[沈降安定性]
各組成物をガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉め、常温で静置し、6時間静置後、24時間静置後の顔料分の沈降度合を目視で観測した。
○:24時間後も顔料沈降は観測されなかった。
△:6時間後は顔料沈降が観測されなかったが、24時間後には顔料沈降が確認された。
×:6時間後で顔料沈降が確認された。
【0086】
[保存安定性]
各組成物を、E型粘度計(東機産業株式会社製「TV−20形」)で粘度を測定した後、ガラス製サンプル瓶に入れて蓋を閉めて密封させた状態で60℃の恒温槽に放置した。30日後に恒温槽からサンプル瓶を取り出し、インクの粘度を測定した。評価は以下のように判断した。
○:粘度の変化率が10%未満。
△:粘度の変化率が10%以上20%未満。
×:粘度の変化率が20%以上、又はインクの分離が発生。
【0087】
<合成例1>
容量50mlの三角フラスコに、酸化剤として過塩素酸鉄(III)6.5g、アセトニトリル7.3gを加え、攪拌して濃度1Mの溶液を調製した。つぎに、窒素導入管、アリーン冷却管を装着した容量100mlの三口フラスコに、3−メトキシチオフェン1.0g、アセトニトリル12.8gを加え、窒素ガスを液中に導入しながらフラスコを氷浴に浸し、30分間攪拌して濃度0.5Mの溶液を調製した。このあと氷浴を外して液温を20℃まで上げた後、前述の1M−過塩素酸鉄(III)アセトニトリル溶液を三口フラスコ中に注ぎ、20℃で4時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を桐山漏斗で濾過し、更にメタノールによる残渣洗浄を行って酸化剤を除去した。洗浄後に得られた残渣を真空乾燥し、金属光沢を発現するポリチオフェン系化合物(S−1)の青紫色固体を収率80%で得た。ポリチオフェン系化合物(S−1)の重量平均分子量Mwは1,600であり、その繰り返し単位数は、約15であった。
【0088】
<合成例2>
容量50mlの三角フラスコに、酸化剤として塩化鉄(III)9.5g、アセトニトリル4.3gを加え、攪拌して濃度2Mの溶液を調製した。つぎに、窒素導入管、アリーン冷却管を装着した容量100mlの三口フラスコに、3−メトキシチオフェン1.0g、アセトニトリル12.8gを加え、窒素ガスを液中に導入しながらフラスコを氷浴に浸し、30分間攪拌して濃度0.5Mの溶液を調製した。このあと氷浴を外して液温を50℃まで上げた後、前述の2M−塩化鉄(III)アセトニトリル溶液を三口フラスコ中に注ぎ、50℃で4時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を桐山漏斗で濾過し、更にメタノールによる残渣洗浄を行って酸化剤を除去した。洗浄後に得られた残渣を真空乾燥し、金属光沢を発現するポリチオフェン系化合物(S−2)の青紫色固体を収率75%で得た。ポリチオフェン系化合物(S−2)の重量平均分子量Mwは1,400であり、その繰り返し単位数は、約13であった。
【0089】
<実施例1>
合成例1で得られたポリチオフェン系化合物(S−1)1gを、アセトニトリル70g、メチルエチルケトン29.6gから成る混合溶媒に溶解させ、更にこの溶液を攪拌しながらレオロジーコントロール剤(ビックケミー社製「BYK−410」)0.1g、消泡剤(サンノプコ株式会社製「ダッポーSN−368」)0.3gを加え、メタリックグラビアインキ組成物(A−1)を得た。これを上述の方法で塗工・印刷することにより、グラビアインキ印刷物(AP−1)を得た。
【0090】
<実施例2>
プライマー(DICグラフィックス株式会社製「ユニビアNT K1メジューム」)を希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この希釈プライマー溶液を、上述のグラビアインキの塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷し、プライマー塗膜の乾燥後に実施例1で得られたメタリックグラビアインキ組成物(A−1)を上述の方法で塗工・印刷した。これによりプライマー/グラビアインキの2層からなるグラビアインキ印刷物(AP−2)を得た。
【0091】
<実施例3>
プライマー(DICグラフィックス株式会社製「ユニビアNT K1メジューム」)を希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この希釈プライマー溶液を、上述のグラビアインキの塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷し、プライマー塗膜の乾燥後に実施例1で得られたメタリックグラビアインキ組成物(A−1)を上述の方法で塗工・印刷した。次にトップコート(DICグラフィックス株式会社製「アルティマZ OPニス」)を希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この希釈トップコート溶液を、上述のグラビアインキの塗工・印刷方法と同様の方法で、前述の(A−1)層の上に塗工・印刷し、プライマー/グラビアインキ/トップコートの3層からなるグラビアインキ印刷物(AP−3)を得た。
【0092】
<実施例4>
合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1gを水99.2gに溶解させ、更にこの溶液を攪拌しながらレオロジーコントロール剤(ビックケミー社製「BYK−420」)0.1g、消泡剤(サンノプコ株式会社製「SNデフォーマー777」)0.2g、レベリング剤(ビックケミー社製「BYK−348」)0.5gを加え、メタリックグラビアインキ組成物(A−2)を得た。これを上述の方法で塗工・印刷することにより、グラビアインキ印刷物(AP−4)を得た。
【0093】
<実施例5>
プライマー(DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー No.930」)を希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この希釈プライマー溶液を、上述のグラビアインキの塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷し、プライマー塗膜の乾燥後に実施例4で得られたメタリックグラビアインキ組成物(A−2)を塗工・印刷した。これによりプライマー/グラビアインキの2層からなるグラビアインキ印刷物(AP−5)を得た。
【0094】
<比較例1>
溶剤系裏刷りグラビアインキ(DICグラフィックス株式会社製「ユニビアLT 銀K1」)をメタリックグラビアインキ組成物(B−1)と呼称し、希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「レジューサーNo.3K」)を用いてザーンカップNo.3−15秒の粘度になるまで希釈した。この溶液を上述の方法で塗工・印刷し、グラビアインキ印刷物(BP−1)を得た。
【0095】
<比較例2>
水系裏刷りグラビアインキ(DICグラフィックス株式会社製「マリーンプラスG 銀(K3)」)をメタリックグラビアインキ組成物(B−2)と呼称し、希釈溶剤(DICグラフィックス株式会社製「水性用レジューサーNo.3」)を用いてザーンカップNo.3−18秒の粘度になるまで希釈した。この溶液を上述の方法で塗工・印刷し、グラビアインキ印刷物(BP−2)を得た。
【0096】
上記の実施例1〜5及び比較例1〜2で得られたメタリックグラビアインキ組成物及びそれらを用いた印刷物について上記の評価を行った。
【0097】
本発明における塗工液をグラビアインキとして用いた場合のグラビアインキ印刷物の構成及び各評価結果をまとめたものを表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
<実施例6>
プロピレングリコール5g、1,3−ブタンジオール3g、水89.8gの混合溶媒を調製し、ここに合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、レベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール485」)1.2gを加え、水性インクジェット記録用メタリックインク(A−6)を得た。これを上述の方法で塗工・印刷することにより、インクジェット印刷物(AP−6)を得た。
【0100】
<実施例7>
プロピレングリコール15g、1,3−ブタンジオール10g、及び水64.9gから成る混合溶媒を調製し、ここに合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、アクリル樹脂(DIC株式会社製「ボンコート WKA−565」)8.6g及びレベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール485」)0.5gを加え、水性インクジェット記録用メタリックインク(A−7)を得た。これを上述の方法で塗工・印刷することにより、インクジェット印刷物(AP−7)を得た。
【0101】
<実施例8>
プロピレングリコール15g、1,3−ブタンジオール10g、及び水63.5gから成る混合溶媒を調製し、ここに合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、ポリオレフィン樹脂(東洋紡株式会社製「ハードレン NA−3002」)10g及びレベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール485」)0.5gを加え、水性インクジェット記録用メタリックインク(A−8)を得た。これを上述の方法で塗工・印刷することにより、インクジェット印刷物(AP−8)を得た。
【0102】
<比較例3>
蒸着アルミ顔料(BASF社製「Metasheen 41−0310」、アルミ含有量10質量%の2−メトキシ―1−メチルエチルアセテート分散液)を、超音波発振器(日本精機製作所株式会社製「US−300T」)を用いて3分間超音波破砕し、平均粒子径(D50)6.0μm、平均厚さ20nmのアルミ顔料分散液を得た。この分散液20gに、プロピレングリコール15g、1,3−ブタンジオール10g、水45.9g、アクリル樹脂(DIC株式会社製「ボンコート WKA−565」)8.6g及びレベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール485」)0.5gを加え、水性インクジェット記録用メタリックインク(B−3)を得た。これを上述の方法で塗工・印刷することにより、インクジェット印刷物(BP−3)を得た。
【0103】
上記の実施例6〜8及び比較例3で得られたインクジェットインク及びそれらを用いた印刷物について、上記の評価を行った。
【0104】
本発明における塗工液をインクジェットインクとして用いた場合のインクジェット印刷物の構成及び各評価結果をまとめたものを表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
<実施例9>
アクリル樹脂(DIC株式会社製「アクリディック 56−1155」)40g、芳香族系有機溶剤(東燃ゼネラル石油株式会社製「ソルベッソ100」)30g、及び酢酸ブチル30gを混合して攪拌し、プライマーを調製した。これを上述のメタリック塗料の塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷した。次に、合成例1で得られたポリチオフェン系化合物(S−1)1.5gを、アセトニトリル18g、N−メチルピロリドン80gから成る混合溶媒に溶解させ、更にこの溶液を攪拌しながらレベリング剤(ビックケミー社製「BYK−348」)0.5gを加え、メタリック塗料(A−9)を得た。これを前述のプライマー塗工層の上に、上述の方法で塗工・印刷することにより、プライマー層/メタリック塗工層の2層からなるメタリック塗装物(AP−9)を得た。
【0107】
<実施例10>
N−メチルピロリドン47.5g、アセトニトリル12.5gから成る混合溶媒を調製し、ここに合成例1で得られたポリチオフェン系化合物(S−1)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、アクリル樹脂(DIC株式会社製「アクリディック 56−1155」)40gを加え、メタリック塗料(A−10)を得た。これを上述の方法で塗工・印刷した。次に、紫外線硬化型樹脂(DIC製「ユニディック V−4025」)100gに、希釈用シンナーとして酢酸エチル/酢酸ノルマルブチル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=20/70/10を加え、溶液粘度がイワタカップで12秒になるまで希釈してトップコート溶液を調製した。これを上述のメタリック塗料の塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷し、然る後に出力80W/cmの高圧水銀ランプを用いて、照射量0.8J/cmの紫外線照射を行い、紫外線硬化によるトップコート層を含むメタリック塗装物(AP−10)を得た。
【0108】
<実施例11>
水性アクリル樹脂(DIC株式会社製「ボンコート EM−400」)80g、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル19.7g、及びレベリング剤(ビックケミー社製「BYK−348」)0.5gを混合して攪拌し、プライマーを調製した。これを上述のメタリック塗料の塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷した。次に、合成例2で得られたポリチオフェン系化合物(S−2)1.5gを水98.0gに溶解させ、更にこの溶液を攪拌しながらレベリング剤(ビックケミー社製「BYK−348」)0.5gを加え、メタリック塗料(A−11)を得た。これを前述のプライマー塗工層の上に、上述の方法で塗工・印刷することにより、プライマー層/メタリック塗工層の2層からなるメタリック塗装物(AP−11)を得た。
【0109】
<実施例12>
ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル10g、及び水48.5gから成る混合溶媒を調製し、ここに合成例1で得られたポリチオフェン系化合物(S−1)1gを溶解させた。更にこの溶液を攪拌しながら、水性アクリル樹脂(DIC株式会社製「ボンコート EM−400」)40g、及びレベリング剤(ビックケミー社製「BYK−348」)0.5gを加え、メタリック塗料(A−12)を得た。これを上述の方法で塗工・印刷した。次に、紫外線硬化型樹脂(DIC株式会社製「ユニディック WNS−232」)100gに、レベリング剤「BYK−348」(ビックケミー社製)0.5gを混合して攪拌し、トップコート溶液を調製した。これを上述のメタリック塗料の塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷し、然る後に出力80W/cmの高圧水銀ランプを用いて、照射量0.8J/cmの紫外線照射を行い、紫外線硬化によるトップコート層を含むメタリック塗装物(AP−12)を得た。
【0110】
<比較例4>
アルミ顔料(東洋アルミ株式会社製「TCR−3040」)4.67g、アルミ顔料(昭和アルミパウダー株式会社製「SAP 550N」)3.88g、アクリル樹脂(DIC株式会社製「アクリディック 56−1155」)33.6g、キシレン10g、芳香族系有機溶剤(東燃ゼネラル石油株式会社製「ソルベッソ100」)20g、及び酢酸ブチル31.7gを混合し、メタリック塗料(B−4)を得た。これを上述の方法で塗工・印刷した。次に、紫外線硬化型樹脂(DIC株式会社製「ユニディック V−4025」)100gに、希釈用シンナーとして酢酸エチル/酢酸ノルマルブチル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=20/70/10を加え、溶液粘度がイワタカップで12秒になるまで希釈してトップコート溶液を調製した。これを上述のメタリック塗料の塗工・印刷方法と同様の方法で塗工・印刷し、然る後に出力80W/cmの高圧水銀ランプを用いて、照射量0.8J/cmの紫外線照射を行い、紫外線硬化によるトップコート層を含むメタリック塗装物(BP−4)を得た。
【0111】
<比較例5>
アルミ顔料(Eckart社製「STAPA Hydrolan 2194」)5.0g、ジエチレングリコールジメチルエーテル5.0g、及び顔料分散剤(楠本化学株式会社製「Disparlon AQ−330」)0.5gを混合して混練し、アルミペーストを調製した。このアルミペースト10.0gに水性アクリル樹脂(DIC株式会社製「バーノック WD−551」)55.6g、レベリング剤(ビックケミー社製「BYK−348」)0.2g、レベリング剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール 104DPM」)0.6g、消泡剤(ビックケミー社製「BYK−011」)0.4g、及びレオロジーコントロール剤(ビックケミー社製「BYK−425」)0.3gを混合し、主剤メタリック塗料を調製した。さらにこの主剤メタリック塗料70gに水分散型ポリイソシアネート(DIC株式会社製「バーノック DNW−5500」)5.8g、水10gを加えて2液硬化型メタリック塗料(B−5)を得た。これを上述の方法で塗工・印刷し、メタリック塗装物(BP−5)を得た。ただし、本比較例では、乾燥は、塗装後、23℃で7日間行った。
【0112】
<比較例6>
アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レフィルム加工株式会社製「VM−PET 1510」、膜厚12μm)に何も塗工せずに、電磁波透過性を評価した。なお、塗料は塗工していないため、光沢値・塗膜外観等については未評価である。
【0113】
上記の実施例9〜12及び比較例4〜5で得られたメタリック塗料及びそれらの塗装物について、上記の評価を行った。
【0114】
本発明における塗工液をメタリック塗料として用いた場合のメタリック塗装物の構成及び各評価結果をまとめたものを表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
表1〜表3に示した評価結果から、本発明における塗工液は、メタリックグラビアインキ、メタリックインクジェットインク、メタリック塗料として十分使用できることが確認できた。また、これらを非金属基材上に塗工、印刷することにより、被印刷物、被塗工物に、粒状感のない均一な金属メッキと同等のメタリック調の塗膜を形成できるとともに、高い電磁波透過性を付与できることも確認できた。したがって、これらの被印刷物、被塗工物を電磁波送受信機器用カバーとして十分使用できることが確認できた。
【0117】
一方、メタリック顔料を用いた比較例1〜5の塗工液は、沈降安定性、保存安定性に劣ることが確認できた。また、比較例1〜5の塗工液を非金属基材上に塗工、印刷することにより、被印刷物、被塗工物に、メタリック調の意匠は得られるものの、粒状感のあるメタリック調光沢しか得られず、また、低い電磁波透過性しか得られなかった。比較例6については、アルミの蒸着膜を備えることから、電磁波透過性をほとんど示さなかった。
【符号の説明】
【0118】
10:非金属基材
11:塗膜
12:トップコート層
図1
図2