特許第6366142号(P6366142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366142
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】視力測定方法および視力測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/032 20060101AFI20180723BHJP
   A61B 3/08 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A61B3/02 C
   A61B3/08
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-127516(P2015-127516)
(22)【出願日】2015年6月25日
(65)【公開番号】特開2017-6524(P2017-6524A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊達 宗和
(72)【発明者】
【氏名】高田 英明
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 克
(72)【発明者】
【氏名】小嶌 健仁
【審査官】 後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−94224(JP,A)
【文献】 米国特許第7290878(US,B1)
【文献】 栗林英範他,DFD(Depth-fused 3-D)表示の奥行き知覚に与えるぼけの効果,映像情報メディア学会誌,2006年,Vol.60, No.3,第431-438頁
【文献】 上本啓太他,立体映像のボヤケの程度に関する定量的測定,電子情報通信学会技術研究報告,日本,2012年11月 7日,Vol.112, No.283,第43-47頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視標を表示する表示手段と、被験者が操作を行う操作手段とを備え、二重輪郭像知覚の視力を測定する視力測定装置が行う視力測定方法であって、
前記視標の初期画面を前記表示手段に表示する初期画面表示ステップと、
前記被験者による前記視標を変化させるための操作に応じて、前記表示手段に表示される視標の一部の大きさを変化させて表示する視標表示ステップと、
前記被験者により停止する操作が行われた場合に、現時点の視標の状態を視力として出力する視力出力ステップと
を有する視力測定方法。
【請求項2】
前記視標表示ステップでは、前記視標が左右眼で異なるように表示する請求項1に記載の視力測定方法。
【請求項3】
前記視標表示ステップでは、前記視標のうち少なくとも片眼の視標が二段階で輝度が変化する輪郭を有し、該二段階の輪郭の輝度分布を前記被験者の操作により変化させる請求項1または2に記載の視力測定方法。
【請求項4】
前記視標表示ステップでは、前記視標として、片眼に一段階で輝度が変化する視標を表示する請求項1から3のいずれか1項に記載の視力測定方法。
【請求項5】
前記視力出力ステップでは、基準となる視標の奥行に、前記被験者による前記操作手段の操作によって変化させた前記視標の奥行が一致した際に停止の操作を行わせる請求項1から4のいずれか1項に記載の視力測定方法。
【請求項6】
前記表示手段に3Dディスプレイを用いる請求項1から5のいずれか1項に記載の視力測定方法。
【請求項7】
二重輪郭像知覚の視力を測定する視力測定装置であって、
視標を表示する表示手段と、
被験者が操作を行う操作手段と、
前記視標の初期画面を前記表示手段に表示する初期画面表示手段と、
前記被験者による前記視標を変化させるための操作に応じて、前記表示手段に表示される視標の一部の大きさを変化させて表示する視標表示手段と、
前記被験者により停止する操作が行われた場合に、現時点の視標の状態を視力として出力する視力出力手段と
を備える視力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の視力のうち二重輪郭像知覚の視力を測定する視力測定方法および視力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の視力の計測方法としては、非特許文献1にあるようにランドルト環を用いた視力測定方法が一般的に行われている。この方法は円環の空隙の弁別能力を評価することができるものである。
【0003】
しかしながら、人間の視覚の知覚機構は多様であり、ランドルト環を用いた視力測定方法は一つの知覚手段の弁別力を計測しているにすぎない。
【0004】
一方、非特許文献2にあるように、人間は二重輪郭像の知覚において、空間周波数にローパスフィルタをかけた網膜情報をもとに輪郭位置の知覚を行い、そのローパスフィルタの特性はランドルト環で測定される視力とは必ずしも一致しないことが知られている。
【0005】
このような二重輪郭に対する視力を簡易かつ正確に測定することは、人間に対する親和性の高い映像の提示技術の開発や、医学的な視機能評価において指針となると期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本眼科医会「園児のための視力検査マニュアル」[online]、[平成27年4月30日検索]、インターネット<http://www.gankaikai.or.jp/info/post_14.html>
【非特許文献2】M. Date, H. Takada, Y. Gotoh, S. Suyama, "Depth Reproducibility for Inclined View in DFD (Depth Fused 3-D) Display," Proceedings of IDW/AD'05, 3D 4-6L, pp. 1793-1794, Takamatsu, Japan, Dec. 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献2に記載されているように、二重輪郭知覚時のローパスフィルタの特性パラメータの測定には、異なる視標について、数十回もの奥行知覚測定を行う必要があり被験者の負担が大きく、測定時間も長くなるという問題がある。また、左右眼でローパスフィルタの特性に違いがあった時に左右眼の特性を個別に評価することが困難であるという問題もある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、人間の視力のうち二重輪郭像知覚の視力を測定する際に、測定回数を低減し、被験者の負担軽減と測定時間の短縮を実現することができる視力測定方法および視力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、視標を表示する表示手段と、被験者が操作を行う操作手段とを備え、二重輪郭像知覚の視力を測定する視力測定装置が行う視力測定方法であって、前記視標の初期画面を前記表示手段に表示する初期画面表示ステップと、前記被験者による前記視標を変化させるための操作に応じて、前記表示手段に表示される視標の一部の大きさを変化させて表示する視標表示ステップと、前記被験者により停止する操作が行われた場合に、現時点の視標の状態を視力として出力する視力出力ステップとを有する視力測定方法である。
【0010】
本発明の一態様は、前記視力測定方法であって、前記視標表示ステップでは、前記視標が左右眼で異なるように表示する。
【0011】
本発明の一態様は、前記視力測定方法であって、前記視標表示ステップでは、前記視標のうち少なくとも片眼の視標が二段階で輝度が変化する輪郭を有し、該二段階の輪郭の輝度分布を前記被験者の操作により変化させる。
【0012】
本発明の一態様は、前記視力測定方法であって、前記視標表示ステップでは、前記視標として、片眼に一段階で輝度が変化する視標を表示する。
【0013】
本発明の一態様は、前記視力測定方法であって、前記視力出力ステップでは、基準となる視標の奥行に、前記被験者による前記操作手段の操作によって変化させた前記視標の奥行が一致した際に停止の操作を行わせる。
【0014】
本発明の一態様は、前記視力測定方法であって、前記表示手段に3Dディスプレイを用いる。
【0015】
本発明の一態様は、二重輪郭像知覚の視力を測定する視力測定装置であって、視標を表示する表示手段と、被験者が操作を行う操作手段と、前記視標の初期画面を前記表示手段に表示する初期画面表示手段と、前記被験者による前記視標を変化させるための操作に応じて、前記表示手段に表示される視標の一部の大きさを変化させて表示する視標表示手段と、前記被験者により停止する操作が行われた場合に、現時点の視標の状態を視力として出力する視力出力手段とを備える視力測定装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、人間の視力のうち二重輪郭像知覚の視力を測定する際に、測定回数を低減し、被験者の負担軽減と測定時間の短縮を実現することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
図2】表示部3に表示される視標の一例を示す説明図である。
図3】被験者が操作する視標の一例を示す説明図である。
図4】視標の輝度分布を示す説明図である。
図5】基準となる視標の奥行位置の説明図である。
図6図1に示す視力測定装置が視力を測定する動作を示すフローチャートである。
図7】被験者が操作する視標(図2に示す中心の視標)の他の例を示す図である。
図8図7に示す視標の輝度分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による視力測定装置を説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号Pは、パーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)である。符号1は、視力測定装置の処理動作を統括して制御する制御部である。符号2は、被験者が操作を行う操作部であり、例えば、ジョイスティック等で構成する。操作部2は、制御部1が少なくとも3つの状態(視標のパラメータを大きくする、視標のパラメータを小さくする、視標の変化を停止する)を識別可能なように操作することができる。
【0019】
符号3は、3Dディスプレイから構成する表示部である。表示部3に用いる3Dディスプレイとしては偏光メガネ式の3DディスプレイであるRDT233WX−3D(三菱電機製)を用い、トップ&ボトム形式の映像を入力して使用する。符号4は、視力測定を行う際の初期画面(初期視標画面)の画像データを生成する初期画面生成部である。符号5は、操作部2の操作に応じて、表示部3に表示されている視標画像の加工を行う画像加工部である。
【0020】
視距離は、表示部3の画素が知覚されることを避けるため3mと通常の視長距離よりも長くしたが、これに限るものではない。また、表示部3に用いる3Dディスプレイも、シャッター式や裸眼式等表示方式であってもよい。
【0021】
次に、図2を参照して、表示部3に表示される視標について説明する。図2は、表示部3に表示される視標の一例を示す説明図である。図2においては、左眼画像と右眼画像を並べて示している。左眼画像には、3つの視標が表示される。3つの視標のうち、両端の視標は、基準となる視標である。また、両端の視標に挟まれている視標は、被験者が操作を行うことにより変化する視標である。
【0022】
また、右眼画像にも左眼画像同様に、3つの視標が表示される。3つの視標のうち、両端の視標は、基準となる視標である。また、両端の視標に挟まれている視標は、被験者が操作を行うことにより変化する視標である。
【0023】
左眼画像、右眼画像共に、視標の形状は正方形または正方形に近い長方形とする。また、画面には、背景が黒で、視標が白で表示される例を示したが、特にこれに限るものではない。
【0024】
次に、図3を参照して、図2に示す被験者が操作する視標について説明する。図3は、被験者が操作する視標の一例を示す説明図である。この例では白の四角形(正方形に近い長方形)を視標として使用した。左眼画像の四角形の左右両端に細いエッジ状の中間輝度の領域(左端の濃いグレイと右端の薄いグレイで表示されている領域)を設けた。
【0025】
また、右眼の提示視標は左眼の提示視標の鏡像とした。右眼画像では、右端が濃いグレイであり、左端が薄いグレイとなる。また、図3は、被験者が操作する視標部分を拡大した図であり、図3に示す指標それぞれの左右には、図2に示すように基準となる視標が配置されることになる。
【0026】
次に、図4を参照して、図3に示す指標の輝度分布について説明する。図4は、視標の輝度分布を示す説明図である。図4に示すグラフの縦軸は表示部3に表示される画面における輝度、横軸は、画素の座標である。したがって、図4に示すグラフは、水平方向の断面の輝度分布を示している。図4に示すように左右両端に中間輝度の領域が存在する。輝度の関係は、
−L=(L−L)+(L−L
を満たす。
【0027】
例えば、256階調のディスプレイを用いるのであれば、L、L、L、Lは、画素値として0、85、170、255を用いればよい。なお、以下の説明を簡単にするために下記のように輝度比βを定義する。
β=(L−L)/(L−L
自明であるが、
(1−β)=(L−L)/(L−L
となる。
【0028】
また、水平方向の画素座標は、中間輝度の領域の幅を一定値(de)とするため、
L1−XL0=XL3−XL2=XR1−XR0=XR3−XR2=de
とした。
【0029】
また、中央部(輝度が最も高い部分)の幅も左右眼で等しくdとなるように
L2−XL1=XR2−XR1=d
とした。
【0030】
このような幅にすることで、無用な視野闘争(2つの目でそれぞれ異なる視覚図形を見た場合、どちらか一方の図形が知覚され、時間が過ぎるとともに知覚が切り替わる現象)を防ぐことができる。
【0031】
本視標は、輝度比の相対比がβと1−βであるような画像を2枚、間隙を開けて積層したときの見え方に相当するので、視覚的に極度の違和感は生じない。
【0032】
本実施形態では、被験者が操作部2を操作することによりd+deを一定とし、deを変化(大きくするまたは小さくする)させたが、輝度も同時に変化させてもよい。また、画像全体の幅や高さを同時に変えるようにしてもよい。
【0033】
次に、図5を参照して、視標の奥行位置について説明する。図5は、基準となる視標の奥行位置の説明図である。被験者が操作する視標の輝度比をβとし、β=0の時に両眼視差により知覚する位置をz、β=1の時に両眼視差により知覚する位置をzとしたとき、
−(z−z)×(1−β)/2
となる奥行位置に基準となる視標を配置した。
【0034】
被験者が操作する視標はdeが大きい場合はz、zの二つの奥行分離して知覚され、deが小さい場合は、z−(z−z)×(1−β)/2の位置に知覚される。したがって、被験者の操作によりdeを連続的に変化させると、両者の遷移の途中に基準視標と被験者が調整した視標が同一奥行位置となるdeを測定し、このdeの値を測定すべき視力とすることで、二重輪郭を分離して知覚する弁別限界を測定することができる。
【0035】
特にβ>0.5の場合は奥側の画像が見えにくいので測定結果が安定し、特にβ=0.7〜0.8程度が最も安定する。また、奥行zをディスプレイの表面にすると被験者にとって奥行位置を無理なく知覚できるので測定が安定する。
【0036】
本手法で被験者を用いて測定したところ、両眼の二重輪郭知覚における弁別力を評価できた。基準視標の奥行は、左右眼の視標の水平位置を変えることにより、図形の両眼視差が所望量になるようにして行った。位置の変化量の1画素未満の部分については、基準となる視標の左右端にグレースケール状の領域を設けて微調整した。
【0037】
次に、図6を参照して、図1に示す視力測定装置が視力を測定する動作を説明する。図6は、図1に示す視力測定装置が視力を測定する動作を示すフローチャートである。
【0038】
まず、測定を開始すると、制御部1は、初期画面生成部4に対して、初期画面の生成を指示する。これを受けて、初期画面生成部4は、図2に示す初期画面を生成する(ステップS1)。初期画面生成部4は、生成した初期画面を制御部1へ出力する。
【0039】
次に、制御部1は、初期画面生成部4から出力された初期画面を表示部3に表示する(ステップS2)。被験者は、偏光メガネを通してこの初期画面を視認し、視力測定を行うための操作を操作部2から行う。
【0040】
次に、制御部1は、操作部2の操作状態を読み取る(ステップS3)。ここで、読み取られる状態とは、視標の幅(de)を大きくする、視標の幅(de)を小さくする、停止するのいずれかである。被験者は、被験者が操作する視標(図2に示す中心の視標)が基準となる視標と同じ位置に見えるように、操作部2を操作して、視標の幅(de)を大きくしたり、小さくしたりする。
【0041】
次に、制御部1は、読み取った状態の判定を行い(ステップS4)、読み取った状態に応じて、視標の大きさを変化させる。読み取った状態が「大きくする」であった場合、制御部1は、画像加工部5に対して、視標を大きくした画像を生成するように指示する。これを受けて、画像加工部5は、現状の視標に対して、中間輝度の領域の幅(de)を大きくした画像を生成して制御部1に対して出力する。
【0042】
次に、制御部1は、画像加工部5から出力された画像を表示部3に表示する(ステップS5)。これによって、表示部3には、中間輝度の領域の幅(de)を大きくした画像が表示されることになる。
【0043】
一方、読み取った状態が「小さくする」であった場合、制御部1は、画像加工部5に対して、視標を小さくした画像を生成するように指示する。これを受けて、画像加工部5は、現状の視標に対して、中間輝度の領域の幅(de)を小さくした画像を生成して制御部1に対して出力する。
【0044】
次に、制御部1は、画像加工部5から出力された画像を表示部3に表示する(ステップS6)。これによって、表示部3には、中間輝度の領域の幅(de)を小さくした画像が表示されることになる。
【0045】
このステップS3からS6の処理を繰り返すことにより、視標の中間輝度の領域の幅(de)が大きくなったり、小さくなったりする。
【0046】
そして、被験者は、被験者が操作する視標(図2に示す中心の視標)が基準となる視標と同じ位置に見える位置において、操作部2を操作して停止する操作を行う。制御部1は、ステップS4の判定の結果、「停止」する操作であった場合、現在のde(中間輝度の領域の幅)の値を視力として、表示部3に出力する(ステップS7)。
【0047】
このように、被験者が、操作部2を操作しながら視力の測定を行うことにより、1回の測定で人間の視力のうち二重輪郭像知覚の視力を測定することが可能となり、被験者の負担を軽減することができるとともに、測定時間を大幅に短縮することができるようになる。
【0048】
次に、図7を参照して、被験者が操作する視標の他の例を説明する。図7は、被験者が操作する視標(図2に示す中心の視標)の他の例を示す図である。図7に示したように、左眼には二重輪郭のない画像を表示する。このような視標の場合、右眼の視力のみを選択的に測定できる。図形の幅は、右眼の画像が、左眼の画像を若干左右方法にずらして重ねあわせたものとなるように生成する。もちろん、右眼に二重輪郭のない画像を提示すれば左眼の視力を測定することができる。
【0049】
図8は、図7に示す視標の輝度分布を示す説明図である。左眼の図形の輝度分布が一重輪郭となっている。また、幅は右眼図形のd+deに相当する幅となっている。左眼の画像の水平位置により、被験者が調節する視標の奥行位置を設定できる。被験者の操作によって、右眼の視標の輝度分布を図3図4の場合と同様に変化させた。
【0050】
この方法を実施することにより、左右眼の特性を個別に評価することができる。本手法では、奥行位置で被験者に回答させたが、輪郭の1重、二重を直接答えさせるようにしてもよい。
【0051】
以上説明したように、本実施形態による視力測定方法では、固定された多数の視標ではなく、被験者の操作により視標を変化させることにより、測定回数を低減し、被験者の負担軽減と測定時間の短縮を実現することができる。また、左右眼に異なる視標を表示することにより、奥行位置として視力を測定することができる。また、二重輪郭像を表示することにより、輪郭知覚に対する視力を測定することができる。また、片眼に一重輪郭像を表示することにより、他方の眼の視力を選択的に測定することができる。また、被験者に知覚奥行を回答させることにより、精度高く測定することができる。さらに、3Dディスプレイを使用することにより、簡便かつ、高画質で左右眼に異なる視標を表示することができる。
【0052】
前述した実施形態における視力測定装置の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0053】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
人間の視力のうち二重輪郭像知覚の視力を測定する際に、測定回数を低減し、被験者の負担と測定時間の短縮を実現することが不可欠な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・制御部、2・・・操作部、3・・・表示部、4・・・初期画面生成部、5・・・画像加工部、P・・・パソコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8