(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366452
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】加工部品に対して工具を位置決めするための装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20180723BHJP
G01B 21/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
G01B11/00 A
G01B21/00 E
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-204529(P2014-204529)
(22)【出願日】2014年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-75487(P2015-75487A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2017年7月5日
(31)【優先権主張番号】10 2013 220 214.8
(32)【優先日】2013年10月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100153947
【弁理士】
【氏名又は名称】家成 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ホルツアップフェル
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ドレシャー
(72)【発明者】
【氏名】ケイティ・ドッズ−エデン
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・ミュッシュ
【審査官】
池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−078687(JP,A)
【文献】
特開2005−338075(JP,A)
【文献】
特開2001−217190(JP,A)
【文献】
独国特許発明第102012205380(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00− 7/34
G01B11/00−11/30
G01B21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工部品に対して工具を位置決めするための装置であって、
加工部品(4)を収容し、該加工部品の加工時に2つの主移動方向(X,Y)に移動する移動可能なステージ(2)と、
工具(3)の周囲に固定配置され、前記主移動方向(X,Y)の平面に延在する1つ以上の平坦な測定基準器(5)と、
前記ステージ(2)の少なくとも3つのコーナに取り付けられた前記測定基準器(5)に対する前記ステージ(2)の位置を検出し、前記ステージ(2)の位置を6つの自由度(X,Y,Z,rX,rY,rZ)で測定可能である走査ヘッド(1,1′)と
を備え、
独立した3つの空間方向(X,Y,Z)に3D位置検出を行うために、全部で少なくとも3つの測定軸を備える1つ以上の前記走査ヘッド(1,1′)が少なくとも1つのコーナに設けられている装置において、
3D位置検出のための測定軸の感度ベクトル(v1,v2,v3,v4)が、XZ平面に対して平行ではなく、YZ平面に対しても平行ではないことを特徴とする、加工部品に対して工具を位置決めするための装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
3D位置検出のための前記測定軸の前記感度ベクトル(v1,v2,v3,v4)と、XZ平面もしくはYZ平面とが少なくとも1°の角度をなす装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置において、
3D位置検出のための第1および第2測定軸の第1及び第2感度ベクトル(v1,v2)がXY平面に対して鏡面対称的である装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
XY平面に対して鏡面対称的な第1および第2感度ベクトル(v1,v2)のXY平面に対する投影が、XY平面でX方向に対して45,135,225または315度だけ回動された同一の2つのベクトルをもたらす装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の装置において、
第3測定軸の第3感度ベクトル(v3)がXY平面に位置し、XY平面に対して鏡面対称的な前記感度ベクトル(v1,v2)とは無関係に線形である装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、
第3感度ベクトル(v3)が、XY平面に対して鏡面対称的な感度ベクトル(v1,v2)に対して垂直方向に向いている装置。
【請求項7】
請求項3または4に記載の装置において、
それぞれ第1および第2測定軸の第1もしくは第2感度ベクトル(v1,v2)のZ方向を中心として90度だけ回動することにより得られる第3および第4感度ベクトル(v3,v4)を備える第3および第4測定軸が、3D位置検出のために設けられている装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、
第1および第2測定軸が第1走査ヘッド(1)に組み込まれており、第3および第4測定軸が第2走査ヘッド(1′)に組み込まれている装置。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の装置において、
3D位置検出のための全ての測定軸が単一の走査ヘッド(1)に組み込まれている装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の装置において、
前記ステージ(2)の前記少なくとも3つのコーナに、3D位置検出のための測定軸が設けられている装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分にしたがって加工部品に対して工具を位置決めするための装置に関する。この装置によって、相互に移動可能な2つの物体の相対位置を高精度に測定し、これにより極めて正確な位置決めが可能となる。
【背景技術】
【0002】
特に、マイクロメータを遥かに下回るパターンサイズを備える集積回路の製造分野では、半導体基板(ウェーハまたはこの出願の範囲では加工部品とも呼ばれる)を露光装置の工具、例えばレンズの下方に極めて正確に位置決めすることが不可欠であり、露光装置により、ウェーハにあらかじめ塗布された感光性レジストに微小パターンが転写される。
【0003】
このために、例えば米国特許第7483120号明細書により、露光装置のレンズに対して相対的に位置決め可能な可動ステージにウェーハを載置することが既知である。レンズの周囲にはXY平面に4つの格子プレートが測定基準器として配置されており、できるだけ堅固にレンズに結合されている。レンズの光軸は格子プレートの平面に対して鉛直方向に位置し、Z‐方向を定義する。ステージおよびウェーハは格子プレートもしくは測定基準器に対して平行に位置する。ステージのコーナには、光によって格子プレートを走査する位置測定装置の走査ヘッドが配置されている。ステージが格子プレートに対して移動された場合に走査ヘッドは周期信号を形成し、これらの信号から、周期を数え、個々の周期の微小分割(補間)により、位置変化についての高精度な値が得られる。例えば、参照マークの検出により絶対的な位置を決定した場合、位置変化の測定は、絶対位置の測定と同じ意味をもつ。なぜなら、絶対位置は、参照位置を起点とした位置変化から計算することができるからである。
【0004】
「ステージのコーナ」という概念は、ここでは、所定のステージサイズのステージにおいて互いにできるだけ遠く隔たった、互いに異なる周縁部を意味する。このような「コーナ」に走査ヘッドを配置することは、さまざまな理由から好ましい。走査ヘッドは、(ステージの中央に配置された)工具によって占められた領域の外部にのみ配置してよい。走査ヘッドが互いにできるだけ大きい間隔をおいて配置されていることにより、コーナにおいて測定された線形移動から回動を正確に計算することが可能である。さらに、ステージの個々のコーナまたは周縁部は工具の領域に到達する場合があり、したがって、この領域に配置された走査ヘッドは格子プレートを走査することはできない。常に高精度の位置測定を行うためには、常に走査ヘッドが互いにできるだけ遠く隔たったステージの領域から走査することができるようにすることは有意義である。このために、走査ヘッドを複数のコーナ領域にまとめ、これらの走査ヘッドのうち2つ以上の走査ヘッドが工具の領域に到達できないようにすることが有利な場合もある。
【0005】
このような1つのコーナに、異なる測定方向のための複数の走査ヘッドが互いに隣接している場合、格子プレートのために必要なサイズが減じられる。理想的には、単一の走査ヘッドに複数の測定装置を組み込んでもよい。これについてはさらに以下に例を挙げて説明する。
【0006】
本出願の範囲では、ステージの寸法に比べて走査ヘッドの間隔が小さい場合には異なる測定方向のための2つの走査ヘッドは「ステージの同じコーナ」に位置する。2つの走査ヘッドが、ステージの寸法と比較可能な間隔を有している場合には、2つの走査ヘッドは異なるコーナもしくは周縁部に位置している。走査ヘッドの間隔がステージの寸法の1/10よりも大きい場合には2つの走査ヘッドはいずれにせよステージの異なるコーナに位置する。円形のステージの場合には、寸法はステージの直径により得られ、長方形または正方形のステージの場合には、ステージの対角線により得られる。
【0007】
XY平面においてステージを位置決めするためには、この平面におけるステージの自由度を把握する必要がある。これは、X−もしくはY−方向の線形移動、およびZ軸を中心とした回動rZであり、共に同一平面の自由度ともいえる。なぜならこれら3つの自由度は全てXY平面に位置するからである。これら3つの自由度X、Y,rZを把握するためには、例えば、ステージの2つのコーナでX方向の移動を測定し、別の1つのコーナでY方向の移動をすれば十分である。そうすれば回動rZは、簡単に計算することができる。しかしながら、ウェーハの露光の過程でステージが移動された場合に単一のコーナが、格子プレートをもはや走査することができないレンズ付近の領域となる場合があるので、ステージのそれぞれのコーナが1つの走査ヘッドを備えることが望ましい。さらに米国特許第7483120号明細書には、少なくともいずれか1つのコーナにおいて、X‐方向の移動だけではなく、Y‐方向の移動も測定することが有利であることが開示されている。重複した測定値は平均値をとることによる測定精度を向上させるか、または、例えばステージの熱膨張や振動を考慮するために用いることができる。
【0008】
さらに、米国特許第7483120号明細書は、コーナにおいて、それぞれ格子プレートに対する間隔の測定を行うことができること、すなわち、Z‐方向におけるステージコーナの位置測定について言及している。これらの測定により、ステージの残りの3つの自由度、すなわち、Z‐方向の線形移動およびX‐もしくはY‐軸を中心とした回動rXおよびrYを検出することもできる。これにより、工具の作用場所(工具中心)にできるだけ近いコーナ領域で3つの空間方向全てにおいて測定値を常に提供することができる。コーナにおけるこのような3D‐位置検出により、加工部品に対する加工工具の位置決め精度が高められる。
【0009】
このような用途に適した光学式位置測定装置が出願人の欧州特許出願公開第1762828号明細書により既知である。この光学式位置測定装置は、測定基準器(ここではいずれか1つの格子プレート)と、ステージのコーナに配置され、測定基準器を走査する走査ヘッドとを含む。
【0010】
この場合、走査ヘッドは、さらにステージの横方向(すなわち、例えばX)の移動方向に沿った位置測定と鉛直方向(Z)に沿った位置測定とを同時に行うことが可能となるように形成されている。したがって、走査ヘッドは2つの測定軸を備える。横方向および鉛直方向の移動方向に位置測定を行うために、第1および第2走査光路(それぞれの測定軸に対して1つの走査光路)が形成されており、これらの走査光路では、干渉する鏡面対称的ではない2つの部分光線束から、互いに干渉し合い、光検出器において周期信号を生成する一群の位相シフト信号が出口側で生成可能である。
【0011】
ここで述べた形式の高精度の位置測定装置では、走査ヘッドで生成された周期信号に対して、振幅、ずれ、位相状態に関して補正を行うことが不可欠である。なぜなら、このようにしてはじめて信号周期内で極めて精密な位置測定が可能となるからである。補正は測定モードで連続的に行われるので、オンライン‐補正とも呼ばれる。
【0012】
したがって、欧州特許出願公開第1762828号明細書の位置測定装置では、単に横方向の移動方向に移動が生じた場合にも、鉛直方向の移動方向に移動が生じていないにもかかわらず全ての光検出器において周期信号が生じる。
【0013】
このことは、欧州特許出願公開第1762828号明細書によれば、走査ヘッドの測定軸の2つの感度ベクトルが正確に横方向もしくは鉛直方向を指すのでではなく、これらの方向に対して所定の角度で配置されていることにより達成される。この場合、測定軸の感度ベクトルは、それぞれの測定軸の位置信号が、進んだ単位長さにつき最速で増大した移動方向を示す。したがって、感度ベクトルは、測定軸の特徴を表す。得られた2つの周期信号の相殺により、所望の測定方向(横方向または鉛直方向)の実際の移動が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7483120号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1762828号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、加工部品に対して工具を位置決めするための装置において、相対位置をさらに正確に検出し、調節することのできる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、本発明にしたがって、請求項1に記載の特徴を有する装置により解決される。
【0017】
本発明による光学式位置測定装置の好ましい実施形態が、従属請求項に記載の手段により得られる。
【0018】
加工部品を収容し、加工部品の加工時に2つの主移動方向に移動する移動可能なステージと、工具の周囲に固定配置され、主移動方向の平面に延在する1つ以上の平坦な測定基準器と、ステージの少なくとも3つのコーナに取り付けられた測定基準器に対するステージの位置を検出し、ステージの位置を6つの自由度で測定可能である走査ヘッドとを備える装置が記載されている。少なくとも1つのコーナには、独立した3つの空間方向に3D‐位置検出を行うための全部で少なくとも3つの測定軸を備える1つ以上の走査ヘッドが設けられている。3D‐位置検出のためのこれらの少なくとも3つの測定軸の感度ベクトルは、XZ平面に対して平行ではなく、YZ平面に対しても平行ではない。
【0019】
このようにして、ステージが主移動方向(X,Y)に移動された場合に全ての測定軸が周期信号を供給する。したがって、これらの信号は、X‐またはY‐方向にステージが移動された場合にそれぞれ補正可能である。
【0020】
上記本発明によれば、ステージの1つのコーナでは、3つの独立した空間方向に位置測定値を検出することが可能である。機械作動時にいずれか1つの測定軸におけるオンライン‐補正の欠如により測定精度が損なわれることはない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】極座標系の感度ベクトルの向きを示す図である。
【
図2】従来技術による2つの測定方向のための走査ヘッドを示す図である。
【
図3】3つの測定方向のための走査ヘッドを第1実施例として示す図である。
【
図4】全部で4つの測定方向のためにコーナに配置された2つの走査ヘッドを第2実施例として示す図である。
【
図5】第2実施例の4つの走査方向をカバーする走査ヘッドを第3実施例として示す図である。
【
図6】加工部品に対して工具を位置決めするための装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明による光学式位置測定装置の具体的な実施例を説明する前に、欧州特許出願公開第1762828号明細書により既知の位置測定装置の概念を簡潔に説明する。この位置測定装置は、冒頭で述べたように、2つの移動方向に沿った位置変化を検出するために適している。適宜な走査ヘッドには2つの走査光路が互いに傾斜して、もしくは非対称的に形成されている。この場合、光源から供給される光線束は、シングルモード‐ファイバとして形成された光ファイバを介して走査システムに供給され、光ファイバからの分離後にコリメーション光学系によってコリメートされる。その後、コリメートされた光線束は分割格子に到達し、分割格子において、2つの測定軸のために2つの走査光路に分割される。これら2つの測定軸は、以下では位置測定装置のA‐軸およびB‐軸と呼ばれる。横方向の移動方向Xおよび鉛直方向の移動方向Zに沿った実際に重要な位置情報は、次の方程式1aおよび1b:
X=(A+B)/2 (方程式1a)
Z=(A−B)/2・SPz/SPx) (方程式1b)
にしたがって位置信号A、Bの加算および減算により得られる。この場合、SPzはZ方向の信号周期を表し、SPxはX方向の信号周期を表す。
【0023】
これらの方程式には、単にX方向に移動した場合に位置測定装置のA‐軸およびB‐軸がいずれも周期信号を供給し、これらの信号の合計から実際のX方向に移動が得られ、これらの信号の差からZ方向の実際の移動が得られることが反映されている。
【0024】
光線束はそれぞれの走査光路で、反射格子として形成された測定基準器(格子プレート)にまず到達し、さらに+/−1回折次数の部分光線束に分割され、走査システムの方へ回折される。そこでそれぞれの部分光線束は、回折性の屋根形プリズムによって測定基準器の方向に偏向される。測定基準器では2つの部分光線束がそれぞれ干渉し、重畳された部分光線束は、次いで焦点レンズおよび視野レンズからなる分離光学系に伝送され、その後に6つのマルチモード光ファイバを含む第2光ファイバに分離される。
【0025】
本発明をより良く理解するために、ここで感度ベクトルの概念を詳細に説明する。
【0026】
それぞれの測定軸には、規格化された感度ベクトルvを割り当てることができる。感度ベクトルは、測定軸の位置信号が、進んだ単位長さにつき最速で増大した移動方向を示す。測定軸の位置が測定基準器に対して移動ベクトル
【数1】
だけ変化した場合には、測定軸の位置信号の変化は(線形近似で)スカラー積
【数2】
によって得られる。測定軸の感度ベクトルvは以下のように2つの角度θ,φによって特徴づけることもできる。
図1も参照されたい。
【数3】
【0027】
極角θは、Z‐軸に対する角度であり、慣例により、0°〜180°の間である。θ=90°では、感度ベクトルはXY平面に位置する。方位角φは、vからXY平面へ垂直方向に投影された、X‐軸に対する角度を示す。
【0028】
図2は、上記従来技術による2つの測定方向(すなわち、走査ヘッド1に組み込まれた2つの測定軸)のための走査ヘッド1を示す。2つの測定軸AおよびBに対応した感度ベクトルv1およびv2は、
図1の表記にしたがって、θ=90°+Δθ、φ=45°、およびθ=90°−Δθ、θ=45°により得られ、この場合、Δθは、0〜90°の間の角度である。感度ベクトルv1,v2がXY平面にではなく、XY平面に対して鏡面対象的に位置していることにより、測定値の減算によりZ‐方向の位置値を決定することができる。これに対して、加算により、XY平面における軸に沿った位置値が得られる。
【0029】
3つの全ての空間方向にコーナ領域における位置を測定する(ここでは3D‐位置検出とも呼ぶ)ために、X‐、Y‐およびZ‐方向に感度ベクトルを有する3つの測定軸を設けることは容易に理解できる。しかしながら、3D‐位置検出のために感度ベクトルをこのように選択することは不都合である。一般に、測定軸の評価電子装置ではいくつかの不都合な妨害、例えば、信号振幅の変動は適応的に補正される。このような、いわゆる「オンライン‐補正」は、測定軸が、連続的に一方向に基準を超えて移動され、複数の信号周期にわたった場合にのみ正確に機能する。機械が主移動方向に沿って、例えばX‐軸に平行に移動した場合、測定軸の位置値はY‐およびZ方向に一定であり、周期信号は形成されない。したがって、オンライン‐補正は行われないので、これらの方向の測定エラーは増大する。
【0030】
ここで述べた機械は、はじめに選択された符号にしたがってXおよびYにより表示される主移動方向を備える。ウェーハの露光時に、ステージは主にX方向にのみ移動される。時折、Y方向の移動により「行飛ばし」が起こり、ステージは再びX方向に移動される。
【0031】
これらの主移動方向X、Yの移動時に検出信号の補正を行うことができるためには、関連する測定軸の感度ベクトルは機械の移動方向に対して垂直であってはならない。したがって、主移動方向がX‐、Y軸に対して平行な機械では、感度ベクトルはX‐もしくはY‐軸に対して垂直方向であってはならない。
【0032】
したがって、一般的に、(ステージのコーナに関連した)3D‐位置検出の感度ベクトルは、XZ平面にもYZ平面にも位置していてはならない。正確にいえば、感度ベクトルとXZ平面との間の角度が約1°未満であることは望ましくない。同様に、感度ベクトルとYZ平面との間の角度も少なくとも約1°であることが望ましい。したがって、
図1を参照して、特に角度範囲−1°<φ<1°、89°<φ<91°、−89°<φ<−91°、179°<φ<181°、ならびに0≦θ<1°および179°<θ≦180°はいずれも除外されている。特に、感度ベクトルはZ‐方向に対して平行であってはならない。
【0033】
高精度の位置測定のために常にオンライン‐補正を行うことができるように、3D‐位置検出のために測定軸が少なくとも3つの独立した感度ベクトルにより適切に配向されている必要がある。機械の主移動方向に沿った移動時に、全ての測定軸において周期信号が生じなければならない。このために上記の一般的な規則を具体的な実施例に基づいて詳述する。
【0034】
位置信号の相殺を簡単に行うために、2つの第1感度ベクトルを角度(φ=φ
1,θ=90°+Δθ)および(φ=φ
1,θ=90°−Δθ)に設定することが好ましい(必須ではない)。この場合φ
1およびΔθは、XZ平面に対する角度およびYZ平面に対する角度は少なくとも1°となるように、1°<φ
1≦89°、1°<Δθ≦89°の範囲で選択される。φ
1については、φ
1=45°の選択が特に簡単であるが、必須ではない。2つの第1の測定軸からの測定値の減算により、倍率に至るまで即座にZ‐位置が得られる。測定値の加算により、XY平面でφ
1方向の測定が行われる。このような2つの感度ベクトルを備える位置測定装置が、例えば欧州特許出願公開第1762828号明細書に記載されている。
【0035】
図2と同様に、
図3は走査ヘッド1を示す。この走査ヘッド1は、全部で3つの移動方向を検出することができ、したがって、3つの感度ベクトルv1,v2,v3を備える3つの測定軸を組み込んでおり、これらのそれぞれの方向について、補正の必要がある周期信号を生成する。したがって、この走査ヘッド1は3D‐位置検出のために適している。監視したい機械の主移動方向はXおよびYであり、特にZ方向の位置を検出することが望ましい。走査ヘッド1は上記定義にしたがって、周縁部もしくはステージコーナに配置されている。走査ヘッド1は、
図2により既知の感度ベクトルv1およびv2を備える測定軸に他に、第3感度ベクトルv3を備える第3測定軸を備え、この第3感度ベクトルv3についてはθ=90°、φ=90°+φ
1といえる。したがって、3つの測定軸を組み込んだ走査ヘッド1は、出願人のドイツ連邦共和国特許出願公開第102013220184.2号明細書に詳細に記載されている。
【0036】
感度ベクトルの配向のための上記周辺条件を守る別の可能性は、(
図2に対応した)従来技術による2つの走査ヘッド1,1′を
図4に示すように同じコーナに互いに隣接させてZ‐軸を中心として90°だけ回動させて配置し、全部で4つの周期信号を3D‐位置検出のために互いに相殺することである。この場合にも、主移動方向XおよびYの移動時に全ての信号が補正可能であることに留意されたい。このことは、
図2に示した感度ベクトルv1およびv2の配向に加えて、付加的な2つの感度ベクトルv3およびv4の配向が(φ=90°+φ
1,θ=90°+Δθ)および(φ=90°+φ
1,θ=90°−Δθ)に応じて選択されることにより達成される。この実施例では、4つの測定軸が3D‐位置検出のために使用され、これらの測定軸のうちそれぞれ2つの測定軸が1つの走査ヘッドに組み込まれている。
【0037】
最後の実施例として、
図5には単一の走査ヘッド1が示されており、この走査ヘッド1は、既に
図4について説明した4つの感度ベクトルv1,v2,v3,v4を、全部で4つの測定軸を備える単一の走査ヘッドに統合している。したがって、4つの測定軸を組み込んだ走査ヘッド1は、同様に出願人のドイツ連邦共和国特許出願公開第102013220184.2号明細書に記載されている。
【0038】
全ての実施例の感度ベクトルv1,v2,v3,v4は、もちろんそれぞれXY平面で90°、180°、または270°だけ回動した実施態様で使用してもよい。全ての感度ベクトルの符号を全て交換しても機能原理は変化しない。このような変更は、コーナ内における回動または反転された座標系の表現にすぎず、感度ベクトルv1,v2,v3,v4の方向選択の真の変更ではない。
【0039】
最後に、
図6にはステージ2が示されており、ステージ2のコーナには第1および第3実施例にしたがってそれぞれ1つの走査ヘッド1が配置されており、ステージのそれぞれのコーナで3D‐位置検出を行うことができる。ステージ2には、ウェーハの形態の加工部品4が配置されており、ウェーハは工具3(レンズ)によって露光される。走査ヘッド1は、工具3に堅固に結合された測定基準器5を走査する。このようにして、加工部品4の位置が工具に対して決定され、調節される。
【0040】
要約すれば、加工部品に対して工具を位置決めする本発明による装置は、感度ベクトルの配向により、工具に対して互いに無関係の3方向に移動可能なステージのコーナにおいて位置測定(ここでは3D‐位置検出と呼ぶ)を行うこと可能にし、それぞれの加工機械の主移動方向の移動時には常に補正可能な周期信号が生じる。上記露光装置の他に、例えば、マイクロスコープ、電子ビーム書込み装置またはレーザ書込み装置など、位置精度に対して要求の高い他の用途も本発明により利益を得ることができる。
【符号の説明】
【0041】
1,1′ 走査ヘッド
2 ステージ
3 工具
4 加工部品
5 測定基準器
v,v1,v2,v3,v4 感度ベクトル