(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸溶液は、ギ酸(formic acid)、酢酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、酪酸(butyric acid)、アジピン酸(adipic acid)、乳酸(lactic acid)、クエン酸(citric acid)、フマル酸(fumaric acid)、リンゴ酸(malic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、コハク酸(succinic acid)、塩酸(hydrochloric acid)、硝酸(nitric acid)、リン酸(phosphoric acid)、硫酸(sulfuric acid)、およびホウ酸(boric acid)からなる群より選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の偏光子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、偏光板の一部領域の偏光が除去された偏光子およびその製造方法であって、従来のように物理的に穴をあけることなく偏光の除去が可能であるとともに、偏光の除去された領域が高耐熱特性を有する偏光子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、ヨウ素および二色性染料のうちの少なくとも1つ以上が染着したポリビニルアルコール系偏光子を用意するステップと、前記偏光子の一部領域に脱色溶液を局地的に接触させて偏光解消領域を形成するステップと、少なくとも前記偏光解消領域を酸溶液を用いて酸処理するステップとを含む偏光子の製造方法を提供する。
【0011】
この時、前記脱色溶液は、水酸化ナトリウム(NaOH)、硫酸化ナトリウム(NaSH)、アジド化ナトリウム(NaN
3)、水酸化カリウム(KOH)、硫酸化カリウム(KSH)、およびチオ硫酸カリウム(KS
2O
3)からなる群より選択された1種以上の脱色剤を含むことが好ましい。
【0012】
前記脱色溶液は、脱色剤を1重量%〜30重量%の含有量で含むことが好ましく、pHが11〜14であることが好ましい。
【0013】
一方、前記酸溶液は、ギ酸(formic acid)、酢酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、酪酸(butyric acid)、アジピン酸(adipic acid)、乳酸(lactic acid)、クエン酸(citric acid)、フマル酸(fumaric acid)、リンゴ酸(malic acid)、塩酸(hydrochloric acid)、硝酸(nitric acid)、リン酸(phosphoric acid)、硫酸(sulfuric acid)、およびホウ酸(boric acid)からなる群より選択された1種以上を含むことが好ましい。
【0014】
この時、前記酸溶液は、pHが1〜5であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、ヨウ素および二色性染料のうちの少なくとも1つ以上が染着したポリビニルアルコール系偏光子において、
前記偏光子は、局地的に400nm〜800nmの波長帯域における単体透過度が80%以上かつ偏光度が20%以下の偏光解消領域と、単体透過度が45%以下かつ偏光度が99%以上の偏光領域とを含み、
前記偏光解消領域と前記偏光領域との境界の幅は5μm以上500μm以下であり、
前記偏光解消領域と前記偏光領域との境界の単体透過度が45%超過80%未満である偏光子を提供する。
【0016】
また、本発明は、ヨウ素および二色性染料のうちの少なくとも1つ以上が染着したポリビニルアルコール系偏光子において、前記偏光子は、局地的に400nm〜800nmの波長帯域における単体透過度が80%以上かつ偏光度が20%以下の偏光解消領域および偏光領域を含み、100℃で100時間放置した場合、前記偏光解消領域の単体透過度の変化率が5%以下である偏光子を提供する。
【0017】
また、前記偏光領域の単体透過度が40%〜45%であり、偏光度が99%以上であることが好ましい。
【0018】
この時、偏光解消領域は、ヨウ素および二色性染料のうちの少なくとも1つ以上の含有量が0.1重量%〜0.5重量%であり、前記偏光領域は、ヨウ素および二色性染料のうちの少なくとも1つ以上の含有量が1重量%〜4重量%であることが好ましい。
【0019】
他の実施形態によれば、本発明は、前記偏光子の少なくとも一面上に偏光子保護フィルムがさらに備えられた偏光板を提供する。
【0020】
また、本発明は、表示パネルと、前記表示パネルの片面または両面に付着している偏光板とを含む画像表示装置において、前記偏光板は、局地的に400nm〜800nmの波長帯域における単体透過度が80%以上かつ偏光度が20%以下の偏光解消領域を有し、100℃で100時間放置した場合、前記偏光解消領域の単体透過度の変化率が5%以下である画像表示装置を提供する。
【0021】
また、前記画像表示装置において、前記偏光解消領域にカメラモジュールが位置してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、ポリビニルアルコール系偏光子の一部領域に脱色溶液を接触させて、当該領域の偏光を解消させることにより、穴や破れといった損傷なく完全透明に近い偏光解消領域を形成できるようにした。このような方法で製造された本発明の偏光子を用いる場合、カメラなどの部品上に偏光板が装着されても、輝度の低下による問題が発生しない。
【0023】
また、従来の物理的方法により穿孔を形成する場合とは異なり、カメラレンズが外部に露出しないため、レンズの損傷および汚染の問題が発生せず、偏光板内部の粘着剤が穿孔部位に漏出および変色による視認性が低下する問題も予防することができる。
【0024】
さらに、本発明の製造方法は、前記偏光解消領域を形成させた後、酸溶液を用いた洗浄ステップにより、高温で長い時間放置する場合でも、偏光解消領域の透過度が維持される優れた耐熱性を有する偏光子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0027】
本発明者らは、ヨウ素および二色性染料のうちの少なくとも1つ以上が染着したポリビニルアルコール系偏光子の一部領域に脱色溶液を選択的に接触させた後、酸溶液を用いて脱色剤を洗浄する場合、高温で長時間放置しても、局地的に偏光が解消された領域の透過度が再び低下しない高耐熱特性があることを見出して、本発明を完成した。
【0028】
本発明に係る偏光子の製造方法は、i)ヨウ素および二色性染料のうちの少なくとも1つ以上が染着したポリビニルアルコール系偏光子を用意するステップと、ii)前記偏光子の一部領域に脱色溶液を局地的に接触させて偏光解消領域を形成するステップと、iii)少なくとも前記偏光解消領域を酸溶液を用いて酸処理するステップとを含むことを特徴とする。
【0029】
以下、本発明の製造方法の各ステップをより具体的に説明する。
【0030】
まず、i)ヨウ素および二色性染料のうちの少なくとも1つ以上が染着したポリビニルアルコール系偏光子を用意するステップは、当該技術分野でよく知られているポリビニルアルコール系偏光子の製造方法により行われるか、または市販のポリビニルアルコール系偏光子を購入する方法により行われてもよい。例えば、これに限定されるものではないが、前記ポリビニルアルコール系偏光子を用意するステップは、ポリビニルアルコール系(Polyvinyl alcohol)ポリマーフィルムをヨウ素および/または二色性染料で染着する染着ステップと、前記ポリビニルアルコール系フィルムと染料を架橋させる架橋ステップと、前記ポリビニルアルコール系フィルムを延伸する延伸ステップとにより行われてもよい。
【0031】
まず、前記染着ステップは、ヨウ素分子および/または二色性染料をポリビニルアルコール系フィルムに染着させるためのもので、ヨウ素分子および/または二色性染料分子は、偏光子の延伸方向に振動する光は吸収し、垂直方向に振動する光は通過させることにより、特定の振動方向を有する偏光が得られるようにすることができる。この時、前記染着は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素溶液および/または二色性染料を含む溶液の入った処理浴に含浸させることにより行われてもよい。
【0032】
この時、前記染着ステップの溶液に使用される溶媒は水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。一方、ヨウ素および/または二色性染料は、溶媒100重量部に対して、0.06重量部〜0.25重量部で使用できる。なぜなら、前記ヨウ素などの二色性物質が前記範囲内の場合、延伸後に製造された偏光子の透過度が40%〜47%の範囲を満足できるからである。
【0033】
一方、二色性物質としてヨウ素を用いる場合には、染着効率の改善のために、ヨウ化化合物などの補助剤を追加的に含有することが好ましく、前記補助剤は、溶媒100重量部に対して、0.3重量部〜2.5重量部の割合で使用できる。この時、前記ヨウ化化合物などの補助剤を添加する理由は、ヨウ素の場合、水に対する溶解度が低いことから、水に対するヨウ素の溶解度を高めるためである。一方、前記ヨウ素とヨウ化化合物との配合割合は、重量基準で1:5〜1:10程度が好ましい。
【0034】
この時、本発明で追加可能なヨウ化化合物の具体例としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズ、ヨウ化チタン、またはこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0035】
一方、処理浴の温度としては、25℃〜40℃程度に維持されることが好ましい。処理浴の温度が25℃未満の低い場合には、染着効率が低下することがあり、40℃を超える高すぎる温度では、ヨウ素の昇華が多く起こり、ヨウ素の使用量が増加することがある。
【0036】
この時、ポリビニルアルコール系フィルムを処理浴に浸漬する時間は、30秒〜120秒程度であることが好ましい。浸漬時間が30秒未満の場合、ポリビニルアルコール系フィルムに染着が均一に行われないことがあり、120秒を超える場合には、染着が飽和(saturation)してそれ以上浸漬する必要がないからである。
【0037】
一方、架橋ステップは、ヨウ素および/または二色性染料がポリビニルアルコール高分子マトリックスに吸着されるようにするためのもので、ポリビニルアルコール系フィルムをホウ酸水溶液などの入った架橋浴に浸漬させて行う浸漬法が一般的に使用されるが、これに限定されるものではなく、ポリビニルアルコール系フィルムに架橋剤を含む溶液を塗布または噴射する塗布法または噴霧法により行われてもよい。
【0038】
この時、前記架橋浴の溶液に使用される溶媒は水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてよく、前記架橋剤は、溶媒100重量部に対して、0.5重量部〜5.0重量部で添加されてもよい。この時、前記架橋剤が0.5重量部未満で含有される場合、ポリビニルアルコール系フィルム内で架橋が不足し、水中でポリビニルアルコール系フィルムの強度が低下することがあり、5.0重量部を超える場合、過度の架橋が形成され、ポリビニルアルコール系フィルムの延伸性を低下させることがある。また、前記架橋剤の具体例としては、ホウ酸、ホウ砂などのホウ素化合物、グリオキサル、グルタルアルデヒドなどが挙げられ、これらを単独または組み合わせて使用することができる。
【0039】
一方、前記架橋浴の温度は、架橋剤の量と延伸比に応じて変化し、これに限定するものではないが、一般的に45℃〜60℃であることが好ましい。一般的に、架橋剤の量が増加すると、ポリビニルアルコール系フィルムの鎖の流動性(mobility)を向上させるために、高い温度条件に架橋浴の温度を調整し、架橋剤の量が少なければ、相対的に低い温度条件に架橋浴の温度を調整する。しかし、本発明は、5倍以上の延伸が行われる過程であることから、ポリビニルアルコール系フィルムの延伸性向上のために、架橋浴の温度を45℃以上に維持しなければならない。一方、架橋浴にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬させる時間は、30秒〜120秒程度であることが好ましい。その理由は、浸漬時間が30秒未満の場合、ポリビニルアルコール系フィルムに架橋が均一に行われないことがあり、120秒を超える場合には、架橋が飽和(saturation)してそれ以上浸漬する必要がないからである。
【0040】
一方、延伸ステップにおいて、延伸とは、ポリビニルアルコール系フィルムの高分子鎖を一定の方向に配向させるためのもので、延伸方法は、湿式延伸法と乾式延伸法に区分することができ、乾式延伸法はさらに、ロール間(inter−roll)延伸方法、加熱ロール(heating roll)延伸方法、圧縮延伸方法、テンター(tenter)延伸方法などに、湿式延伸方法は、テンター延伸方法、ロール間延伸方法などに区分される。
【0041】
この時、延伸ステップは、前記ポリビニルアルコール系フィルムを4倍〜10倍の延伸比で延伸することが好ましい。なぜなら、ポリビニルアルコール系フィルムに偏光性能を付与するためには、ポリビニルアルコール系フィルムの高分子鎖を配向させなければならないが、4倍未満の延伸比では、鎖の配向が十分に行われないことがあり、10倍超過の延伸比では、ポリビニルアルコール系フィルムの鎖が切断され得るからである。
【0042】
この時、前記延伸は、45℃〜60℃の延伸温度で延伸することが好ましい。前記延伸温度は、架橋剤の含有量に応じて変化可能であるが、45℃未満の温度では、ポリビニルアルコール系フィルムの鎖の流動性が低下して延伸効率が低減され得、60℃を超える場合、ポリビニルアルコール系フィルムが軟化して強度が弱くなり得るからである。一方、前記延伸ステップは、前記染着ステップまたは架橋ステップと同時にまたは別途に進行してもよい。
【0043】
一方、延伸ステップは、前記染着ステップまたは架橋ステップと同時にまたは別途に進行できる。延伸ステップが染着ステップと同時に進行する場合、前記染着ステップはヨウ素溶液内で行われることが好ましく、架橋ステップと同時に進行する場合であれば、ホウ酸水溶液内で行われることが好ましい。
【0044】
次に、本発明は、前記のような方法によりポリビニルアルコール系偏光子が用意されると、ii)前記偏光子の一部領域に脱色溶液を局地的に接触させて偏光解消領域を形成するステップを行う。
【0045】
この時、一方、前記脱色溶液は、必須としてヨウ素および/または二色性染料を脱色させられる脱色剤および溶媒を含む。前記脱色剤は、偏光子に染着したヨウ素および/または二色性染料を脱色させられるものであれば特に制限されないが、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、硫酸化ナトリウム(NaSH)、アジド化ナトリウム(NaN
3)、水酸化カリウム(KOH)、硫酸化カリウム(KSH)、およびチオ硫酸カリウム(KS
2O
3)からなる群より選択された1種以上を含むことが好ましい。
【0046】
前記溶媒としては、蒸留水などのような水を使用することが好ましい。また、前記溶媒は、追加的にアルコール類溶媒を混合して使用することができる。これに限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコールなどを混合して使用してもよい。
【0047】
一方、前記脱色溶液内の脱色剤の含有量(濃度)は、脱色過程での接触時間に応じて変化可能であるが、好ましくは、脱色溶液の全体重量に対して、1重量%〜30重量%程度、より好ましくは5重量%〜15重量%程度で含むことが好ましい。脱色剤の含有量が1重量%未満の場合、脱色が行われなかったり、数十分以上の時間がかかって脱色が進み、実質的に適用が難しく、30重量%超過の場合、脱色剤の偏光子への拡散が容易になされず、脱色効率の増加量がわずかで経済性に劣る。
【0048】
また、前記脱色溶液は、pHが11〜14程度であってよく、13〜14程度であることがより好ましい。本発明の脱色剤は強塩基化合物であって、ポリビニルアルコールの間に架橋結合を形成しているホウ酸を破壊する程度の強塩基性を呈していなければならず、pHが前記範囲を満足する場合に脱色が起こりやすい。例えば、ヨウ素を分解(脱色)して透明にする(iodine clock reaction)溶液としてチオ硫酸ナトリウム(pH7)は、一般的なヨウ素化合物水溶液では脱色を起こすことができるが、実際の偏光子(PVA)では、長時間接触しても(10時間)脱色が起こらない。すなわち、これは、ヨウ素を分解する前に、強塩基でホウ酸の架橋結合を破壊しなければならないことを表す。
【0049】
一方、本発明において、前記脱色溶液を接触させて偏光を解消するステップは、印刷装置などを用いて行われてもよいし、この時、前記印刷装置は、これに制限されるものではないが、ディスペンサまたはインクジェットを用いて所望の局地的部位あるいは所望の形状のパターンに脱色剤を塗布する非接触式印刷法、あるいはグラビアプリンティングのような接触方式の印刷法により行われてもよい。
【0050】
より具体的には、連続工程実施の容易性を考慮する時、インクジェットマーキング法またはグラビア印刷法などによって印刷を行う装置であることが好ましい。この時、前記インクジェットマーキング法は、インクジェットノズルを介して被印刷対象物(PVA偏光子)にインク液滴を滴下させる方式で行われる印刷法をいい、グラビア印刷法は、印刷しようとする形状が陰刻された印刷ロールにインクを充填し、ドクターブレードなどによって前記陰刻部以外の領域のインクを除去することで陰刻部にのみインクを残した後、前記陰刻部に充填されたインクを転写ロールを用いて被印刷対象物(PVA偏光子)に転写する方式で行われる印刷法をいう。
【0051】
一方、前記脱色溶液は、粘度が1cP〜2000cP程度、好ましくは5cP〜2000cP程度であってよい。脱色溶液の粘度が前記数値範囲を満足する場合、印刷工程が円滑に行われ、連続工程ラインにおいて、偏光部材の移動によって印刷された脱色溶液に拡散したり流れ落ちるのを防止することができ、これによって所望の領域に所望の形状で脱色領域を形成できるからである。一方、前記脱色溶液の粘度は、使用される印刷装置、偏光子の表面特性などに応じて適切に変更可能である。例えば、グラビア印刷法を用いる場合、脱色溶液の粘度は1cP〜2000cP程度、好ましくは5cP〜200cP程度であってよく、インクジェット印刷法を用いる場合、脱色溶液の粘度は1cP〜55cP程度、好ましくは5cP〜20cP程度であってよい。
【0052】
一方、脱色溶液の粘度が前記範囲を満足するために、増粘剤を追加的に添加する方法を利用することが好ましい。したがって、前記増粘剤は、脱色溶液の粘度を向上させて、溶液の拡散を抑制し、所望の大きさおよび位置に偏光解消領域を形成できるように補助する。速やかに移動する偏光子に粘度の高い溶液を塗布すると、塗布時に生じる液体と偏光子の相対速度の差が減少し、所望しない部位に溶液が拡散するのを防止し、塗布後洗浄前まで脱色が行われる時間の間に塗布された溶液の流動が減少し、所望の位置または大きさの偏光解消領域を形成することができる。
【0053】
前記増粘剤は、反応性が低く、溶液の粘度を高められるものであれば制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセトアセテート系樹脂、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール系樹脂、ブテンジオールビニルアルコール系、ポリアクリルアミド系およびポリエチレングリコール系からなる群より選択された1種以上を含むことがより好ましい。
【0054】
一方、前記増粘剤は、前記脱色溶液の全体重量に対して、0.5重量%〜30重量%程度、好ましくは2.5重量%〜15重量%程度で含まれてもよい。増粘剤の含有量が前記範囲を超える場合、粘度が高すぎて洗浄が効果的に行われず、増粘剤の含有量が低すぎる場合、粘度が低くて液体の拡散および流動によって所望の形状、大きさの脱色領域を実現しにくい。
【0055】
また、前記偏光解消領域は、多様な形状を有することができ、これに限定されるものではなく、なおかつ、偏光解消領域は、全体偏光板上のどの位置に形成されても構わない。ただし、例えば、前記偏光解消領域がカメラモジュール上に形成される場合、面積が0.01cm
2〜5cm
2程度であることが好ましい。
【0056】
一方、以下、本発明の前記偏光解消ステップにより偏光が解消されるメカニズムを具体的に説明する。ヨウ素および/または二色性染料が染着したポリビニルアルコールの複合体は、波長帯が400nm〜800nmのような可視光線範囲の光を吸収できることが知られている。この時、脱色溶液を前記偏光子に接触させると、前記偏光子に存在する可視光線波長帯の光を吸収するヨウ素あるいは二色性染料が分解され、偏光子を脱色させて透過度を高めかつ偏光度を低下させる。例えば、前記偏光解消領域は、400nm〜800nmの波長帯域における単体透過度が80%以上であってよく、偏光度は20%以下であってよい。
【0057】
本明細書の「単体透過度」は、偏光板の吸収軸の透過度と透過軸の透過度との平均値で表される。また、本明細書の「単体透過度」および「偏光度」は、JASCO社のV−7100モデルを用いて測定された値である。
【0058】
例えば、ヨウ素が染着したポリビニルアルコール系偏光子の一部領域に脱色剤の水酸化カリウム(KOH)を含む水溶液を接触させる場合、下記化学式1および化学式2のように、一連の過程でヨウ素が分解される。一方、ヨウ素が染着したポリビニルアルコール系偏光子の製造時、ホウ酸架橋過程を経た場合、化学式3に記載のように、水酸化カリウムはホウ酸を直接分解して、ポリビニルアルコールとホウ酸の水素結合による架橋効果を除去する。
【0060】
すなわち、可視光線領域の光を吸収するI
5-(620nm)、I
3-(340nm)、I
2(460nm)のようなヨウ素およびヨウ素イオン錯体を分解して、I
-(300nm以下)または塩を生成し、可視光線領域の光を大部分透過する。これによって、偏光子の可視光線領域である400〜800nm程度の領域で偏光機能が解消されることにより、全般的に透過度が高くなって、偏光子は透明になる。つまり、偏光板において、偏光を作るために、可視光線を吸収する配列されたヨウ素複合体を、可視光線を吸収しない単分子形態に分解して、偏光機能を解消することができる。
【0061】
前記のように偏光解消ステップが完了すると、iii)少なくとも前記偏光解消領域を酸溶液を用いて前記偏光子を酸処理する。前記酸処理するステップにおいて、残留する脱色溶液が適切に酸処理されない場合、残留する脱色溶液が偏光子上で拡散または残留して、所望しない大きさおよび形状に偏光解消領域が形成されることがあり、微細な大きさの偏光解消領域の形成が困難であり得る。
【0062】
前記酸処理するステップは、ディスペンサまたはインクジェットを用いて所望の局地的部位あるいは所望の形状のパターンに酸溶液を塗布する非接触式印刷法、あるいはグラビアプリンティングのような接触方式の印刷法により行われてもよい。また、前記酸処理するステップは、酸溶液を含む処理浴を用いて前記偏光子を浸漬する方法により行われてもよい。
【0063】
より具体的には、本発明の偏光子の製造方法は、脱色溶液を用いて局地的な偏光解消領域を形成した後、酸溶液で偏光子を酸処理することにより、上記で説明したように、脱色剤によって形成されたヨウ素化合物および塩などが洗い流され、偏光解消領域のヨウ素およびヨウ素イオン錯体の含有量が最小化される。したがって、偏光解消領域の残留ヨウ素およびヨウ素イオン錯体の光の吸収が減少し、より透明にする効果をもたらす。
【0064】
この時、前記洗浄は、前記のような酸溶液のほか、溶媒およびアルコールなどを用いて偏光子を洗浄してもよいが、これによっては一部少量の脱色剤が洗浄されずに残存することがある。この場合、形成された偏光解消領域は、偏光子は高温で長い時間放置する場合、偏光が解消された領域の透過度が次第に低下することがある。
【0065】
具体的には、前記脱色剤は、主に塩基性の物質が使用されるが、このような塩基性の脱色剤が少量残留すると、高温で長時間放置する場合、ポリビニルアルコールと反応して、下記化学式4のように、ポリビニルアルコールの変形を起こす。特に、ポリビニルアルコール系フィルムに二重結合を生成しながら黄色がかった(yellowish)色を呈し、透過度を低下させることがある。
【0067】
反面、本発明のように、偏光解消領域を形成した後、酸を用いて洗浄する場合、塩基性の残留した脱色剤が単に洗い流されるだけでなく、脱色剤が酸溶液と中和反応して除去される。したがって、洗浄後残っている脱色剤は、洗浄過程で共に残存する酸による中和反応で塩基性を完全に失って、高温で長時間放置されても、それ以上ポリビニルアルコール系フィルムとの反応による変性の問題を引き起こさない。
【0068】
この時、前記酸溶液は、溶液上でH
+イオンを発する物質であれば特に制限されず、有機酸または無機酸でも構わない。例えば、これに限定されるものではないが、ギ酸(formic acid)、酢酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、酪酸(butyric acid)、アジピン酸(adipic acid)、乳酸(lactic acid)、クエン酸(citric acid)、フマル酸(fumaric acid)、リンゴ酸(malic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、コハク酸(succinic acid)、塩酸(hydrochloric acid)、硝酸(nitric acid)、リン酸(phosphoric acid)、硫酸(sulfuric acid)、およびホウ酸(boric acid)からなる群より選択された1種以上を含むことが好ましい。また、前記酸溶液は、架橋反応可能な架橋剤が含まれた溶液であってもよい。
【0069】
また、前記酸溶液は、pHが1〜5程度であり、1.2〜4.5程度であることが好ましい。酸溶液のpHが前記範囲を満足する場合、塩基性の残留した脱色剤と十分な中和反応が起こることができて、洗浄効果に優れている。
【0070】
一方、前記洗浄するステップは、酸溶液の濃度に応じて変化可能であるが、偏光子を1秒〜180秒間、好ましくは3秒〜60秒間酸溶液に浸漬させるか、脱色溶液と接触して脱色した局地的部位にディスペンサまたはインクジェットで塗布させる方法がある。
【0071】
本発明の偏光子の製造方法は、純水で洗浄するステップを必須に含まなくてもよいという利点がある。本発明の偏光子の製造方法により製造される偏光子は、純水で処理しなくても、残留する酸溶液によって脱色領域の大きさ、透過度および色相の変化に影響を及ぼさないため、純水洗浄ステップが必ずしも必要ではない。そのため、本発明の偏光子の製造方法は、純水で処理する工程を除くことによる工程効率の増加および工程費用を低減させられるという利点を有している。
【0072】
次に、本発明の偏光子の製造方法を用いて製造された偏光子に関して説明する。
【0073】
本明細書の偏光子は、上述の偏光子の製造方法により製造できる。
【0074】
本発明の一実施形態は、ヨウ素および二色性染料のうちの少なくとも1つ以上が染着したポリビニルアルコール系偏光子において、前記偏光子は、局地的に400nm〜800nmの波長帯域における単体透過度が80%以上かつ偏光度が20%以下の偏光解消領域と、単体透過度が45%以下かつ偏光度が99%以上の偏光領域とを含み、前記偏光解消領域と前記偏光領域との境界の幅は5μm以上500μm以下であり、前記偏光解消領域と前記偏光領域との境界の単体透過度が45%超過80%未満である偏光子を提供する。
【0075】
本発明の一実施形態に係る偏光子において、前記偏光解消領域と前記偏光領域との境界の幅は5μm以上200μm以下、または5μm以上100μm以下、または5μm以上50μm以下であってよい。
【0076】
前記偏光解消領域と前記偏光領域との境界は、前記偏光解消領域と前記偏光領域との間に位置する偏光子の領域を意味することができる。前記偏光解消領域と前記偏光領域との境界は、前記偏光解消領域と前記偏光領域にそれぞれ接する領域を意味することができる。また、前記偏光解消領域と前記偏光領域との境界は、前記偏光解消領域の単体透過度と前記偏光領域の単体透過度との間の値を有する領域であってよい。
【0077】
前記偏光解消領域と前記偏光領域との境界の幅は、前記偏光解消領域の単体透過度の値を有する一領域から、前記偏光領域の単体透過度の値を有する一領域までの最短距離を意味することができ、前記偏光解消領域と前記偏光領域との境界の幅が狭いほど、所望の局地的部位に効率的に偏光解消領域を形成したことを意味することができる。
【0078】
本明細書の偏光領域は、前記偏光子において、前記偏光解消領域を除いた領域であってよい。
【0079】
前記偏光子は、本発明の製造方法により製造できる。
【0080】
一方、より具体的には、前記偏光領域の単体透過度は40%〜45%であることが好ましく、42%〜45%であることがより好ましい。
【0081】
本発明の一実施形態はまた、偏光子の少なくとも一面上に偏光子保護フィルムがさらに備えられた偏光板を提供する。
【0082】
一方、本発明の一実施形態に係る偏光子は、ヨウ素および二色性染料のうちの少なくとも1つ以上が染着したポリビニルアルコール系偏光子において、前記偏光子は、局地的に400nm〜800nmの波長帯域における単体透過度が80%以上かつ偏光度が20%以下の偏光解消領域および偏光領域を含み、100℃で100時間放置した場合、前記偏光解消領域の単体透過度の変化率が5%以下であることを特徴とする。
【0083】
前記偏光子は、本発明の製造方法により製造できる。
【0084】
この時、前記偏光子の偏光解消領域は、上記で説明したように、ヨウ素および/または二色性染料が染着したポリビニルアルコール系偏光子の一部領域に脱色溶液を選択的に接触させる過程を経て形成された領域をいう。
【0085】
この時、前記製造方法により形成された偏光解消領域は、可視光線領域である400nm〜800nm程度、好ましくは450nmから750nm程度の波長帯域における単体透過度が80%以上であり、90%または92%以上であることがより好ましい。また、前記偏光解消領域は、偏光度が20%以下であり、5%以下であることがより好ましい。前記偏光解消領域の単体透過度が高くかつ偏光度が低いほど視認性が向上し、前記領域に位置することとなるカメラレンズの性能および画質をより向上させることができる。
【0086】
また、前記偏光領域は、単体透過度が40%〜45%であることが好ましく、42%〜45%であることがより好ましい。さらに、前記偏光領域は、偏光度が99%以上であることが好ましい。これは、偏光解消領域を除いた残りの領域は、本来の偏光子の機能を果たすことで、前記範囲のような優れた光学物性を示さなければならないからである。
【0087】
一方、前記偏光解消領域は、ヨウ素および二色性染料のうちの少なくとも1つ以上の含有量が0.1重量%〜0.5重量%程度であり、好ましくは0.1重量%〜0.35重量%程度である。これは、上記で説明したように、脱色剤とヨウ素との間の反応によって偏光子上に複合体の形態で存在していたヨウ素が洗い流され、ヨウ素または二色性染料の含有量が大きく減少するからである。これに対し、前記偏光領域は、ヨウ素および二色性染料のうちの少なくとも1つ以上の含有量が1重量%〜4重量%程度であり、好ましくは2重量%〜4重量%である。
【0088】
この時、前記ヨウ素または二色性染料の含有量は、光X線分析装置(理学電機工業(株)製造、商品名「ZSX Primus II」)を用いて測定した。この時、前記ヨウ素および/または二色性染料の含有量は、光X線分析装置(理学電機工業(株)製造、商品名「ZSX Primus II」)を用いて測定した。本発明では、大きさが40mm×40mm、厚さが12μmの偏光子シート形態の試料を用いて、19.2mm
3体積あたりの平均重量%を測定した。
【0089】
前記偏光解消領域は、上記で説明したように、偏光子を脱色溶液と接触させるステップを経ることにより形成される。この時、前記偏光解消領域のヨウ素または二色性染料の含有量は、それ以外の領域と比較して顕著に減少し、これによって、透過度が大きく向上する。
【0090】
一方、本発明に係る偏光子は、100℃で100時間放置した場合、前記偏光解消領域の単体透過度の変化率が5%以下であることを特徴とし、前記変化率は3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。同様に、本発明に係る偏光子は、100℃で100時間放置した場合、前記偏光解消領域の交差透過度の変化率が10%以下であることを特徴とする。
【0091】
一般的に、水またはアルコールを用いて洗浄するステップを経る場合、前記条件で15%以上の単体透過度の低下を示すのと比較して、本発明の偏光子は、耐熱特性に非常に優れている。それだけでなく、前記偏光子の偏光度の変化もほとんどない。
【0092】
本発明は、前記偏光解消領域を含む偏光子の少なくとも一面上に偏光子保護フィルムがさらに備えられた偏光板を提供する。具体的には、本発明は、前記偏光解消領域を含む偏光子の片面または両面に偏光子保護フィルムを貼り合わせた偏光板を提供する。
【0093】
本発明の偏光板の場合、偏光子の一部領域でのみ偏光が解消されて、単体透過度が高くかつ偏光度が低く、従来のパンチングおよび切削などの物理的偏光除去方法とは異なり、偏光板に物理的損傷がない偏光解消領域を有することを特徴とする。
【0094】
前記保護フィルムは、偏光子を保護するために、偏光子の両側面に付着させる透明フィルムをいうもので、トリアセチルセルロース(TriAcethyl Cellulose;TAC)のようなアセテート系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテルスルホン系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、アクリル系樹脂フィルムなどを使用することができるが、これらに限定するものではない。
【0095】
この時、前記保護フィルムは、接着剤を用いて貼り合わされてもよく、接着剤としては、これに限定するものではないが、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤のような水系接着剤、ウレタン系接着剤などのような熱硬化性接着剤、エポキシ系接着剤などのような光カチオン硬化型接着剤、アクリル系接着剤などのような光ラジカル硬化型接着剤のように、当該技術分野でよく知られている接着剤を用いて行われてもよい。
【0096】
また、前記偏光板には、保護フィルムのほか、追加的な機能向上のために、光視野角補償板や輝度向上フィルムのような機能性フィルムが付加的に含まれてもよい。
【0097】
一方、前記のような本発明の偏光子を含む偏光板は、表示パネルの片面または両面に付着して画像表示装置に有用に適用可能である。前記表示パネルは、液晶パネル、プラズマパネルおよび有機発光パネルであってよく、これによって、前記画像表示装置は、液晶表示装置(LCD、liquid crystal display)、プラズマ表示装置(PDP、plasma display pannel)および有機電界発光表示装置(OLED、organic light emitting diode)であってよい。
【0098】
より具体的には、前記画像表示装置は、液晶パネルと、該液晶パネルの両面にそれぞれ備えられた偏光板とを含む液晶表示装置であってよいし、この時、前記偏光板のうちの少なくとも1つが、本発明に係る偏光子を含む偏光板であってよい。すなわち、前記偏光板は、局地的に400nm〜800nmの波長帯域における単体透過度が80%以上の偏光解消領域を有し、100℃で100時間放置した場合、前記偏光解消領域の単体透過度の変化率が5%以下のヨウ素および/または二色性染料が染着したポリビニルアルコール系偏光子を含むことを特徴とする。
【0099】
この時、前記液晶表示装置に含まれる液晶パネルの種類は特に限定されない。例えば、その種類に制限されず、TN(twisted nematic)型、STN(super twisted nematic)型、F(ferroelectic)型、またはPD(polymer dispersed)型のようなパッシブマトリクス方式のパネル;2端子型(two terminal)または3端子型(three terminal)のようなアクティブマトリクス方式のパネル;横電界型(IPS;In Plane Switching)パネルおよび垂直配向型(VA;Vertical Alignment)パネルなどの公知のパネルがすべて適用可能である。また、液晶表示装置を構成するその他の構成、例えば、上部および下部基板(ex.カラーフィルタ基板またはアレイ基板)などの種類も特に制限されず、この分野で公知の構成が制限なく採用可能である。
【0100】
一方、本発明の画像表示装置は、これに限定するものではないが、カメラモジュールなどのその他の部品を含み、前記カメラモジュールなどのその他の部品は、前記偏光解消領域に位置してもよい。可視光線領域の透過度が向上し、偏光度が解消された偏光解消領域にカメラモジュールを位置させることにより、カメラレンズ部の視認性を増大させる効果をもたらすことができる。
【0101】
以下、実施例を通じて、本発明についてより詳細に説明する。下記の実施例は本発明の理解のためのものであり、これによって本発明を限定するものではない。
【0102】
製造例1−偏光子の製造
ポリビニルアルコール系フィルム(日本合成社、M3000grade30μm)を、25℃の純水溶液で膨潤工程を15秒間経た後、0.2wt%の濃度および25℃のヨウ素溶液で60秒間染着工程を進行させた。以後、ホウ酸1wt%、45℃の溶液で30秒間洗浄工程を経た後、ホウ酸2.5wt%、52℃の溶液で6倍延伸工程を進行させた。延伸後、5wt%のKI溶液で補色工程を経た後、60℃のオーブンで5分間乾燥させることにより、厚さ12μmの偏光子を製造した。
【0103】
実施例1
前記製造例により製造された偏光子に、脱色溶液(脱色剤:KOH15%)をディスペンサを用いて3cm
2の領域に塗布して、偏光解消領域を形成した。以後、35秒経過後、酸溶液として酢酸(大井化金(株)、10重量%、pH2.4)を用いて前記偏光解消領域を酸処理して、偏光解消領域を含む偏光子を製造した。
【0104】
実施例2
酸溶液としてアジピン酸(大井化金(株)、2.4重量%、pH2.8)を用いて洗浄したことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光解消領域を含む偏光子を製造した。
【0105】
実施例3
酸溶液としてホウ酸(大洋E&C(株)、5.7重量%、pH4)を用いて洗浄したことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光解消領域を含む偏光子を製造した。
【0106】
実施例4
酸溶液として乳酸(大井化金(株)、10重量%、pH1.9)を用いて洗浄したことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光解消領域を含む偏光子を製造した。
【0107】
比較例1
前記偏光解消領域を酸溶液を用いて酸処理するステップを行わないことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光解消領域を含む偏光子を製造した。
【0108】
比較例2
酸溶液の代わりにエタノール(大井化金(株)、99%、pH5.9)を用いて洗浄したことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光解消領域を含む偏光子を製造した。
【0109】
比較例3
酸溶液の代わりにエタノール(大井化金(株)、10%、pH6.5)を用いて洗浄したことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光解消領域を含む偏光子を製造した。
【0110】
実験例1−偏光子の耐熱性評価
前記実施例1〜4および比較例1〜3により製造された偏光子を40mm×40mmの大きさに切って、この試験片を測定ホルダに固定させた後、紫外可視光線分光計(V−7100、JASCO社製造)を用いて、脱色剤を用いて偏光解消領域の初期光学物性、すなわち、初期単体透過度、初期交差透過度、および初期偏光度を測定した。前記値はそれぞれ92.44%、85.4456%、0.1249%であった。
【0111】
一方、前記初期光学物性を測定した後、各試験片を100℃のオーブンで100時間保管した後、前記のような方法で単体透過度、交差透過度、および偏光度を測定し、初期光学物性と比較して変化率を測定した。この時、前記偏光子の光学物性は550nmで測定した値で、表1に表した。
【0113】
前記表1の実施例1〜4と、比較例1および3とを比較すると、脱色剤によって偏光解消領域を形成した後、酸溶液を用いて洗浄した場合、高温で長い時間放置した場合でも、単体透過度および交差透過度とも変化がほとんどなかったが、洗浄ステップを行わないか、アルコール溶液を用いて洗浄した場合、15%以上の変化率を確認することができた。それだけでなく、前記偏光解消領域の偏光度も1%以下から10%以上に大きく上昇することを確認することができた。
【0114】
実験例2−偏光解消領域と偏光領域の幅の測定
前記実施例1により製造された偏光子の領域別単体透過度を測定して、下記
図1のグラフで示した。
【0115】
図1のグラフをみると、実施例1により製造された偏光子の単体透過度が45%超過90%未満の領域、すなわち、偏光解消領域と偏光領域の幅が50μm以下であり、これは、結果的に目的の箇所に効率的に偏光解消領域を形成したことを意味する。
【0116】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な修正および変形が可能であることは当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。