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特許6366908リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366908
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20180723BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20180723BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20180723BHJP
   C01B 25/45 20060101ALN20180723BHJP
【FI】
   H01M4/58
   H01M10/0566
   H01M10/052
   !C01B25/45 Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-146488(P2013-146488)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-32961(P2014-32961A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2016年7月7日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0085310
(32)【優先日】2012年8月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】金 志 賢
(72)【発明者】
【氏名】劉 容 贊
(72)【発明者】
【氏名】朴 ハンオル
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−155021(JP,A)
【文献】 特開2005−135723(JP,A)
【文献】 特表2005−514304(JP,A)
【文献】 特開2011−076820(JP,A)
【文献】 特開2012−229147(JP,A)
【文献】 特開2006−155941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される鉄リチウム化合物を含み、
前記鉄リチウム化合物は、オリビン構造相と、Li、Fe、P、O元素のみを含む少なくとも1の他の相とを含み、該鉄リチウム化合物中のFeは、Fe2+およびFe3+の組み合わせを含み、Fe2+をFeの総量に対して65〜86モル%で含み、且つ該鉄リチウム化合物中のFe/Liのモル比が0.92〜1.00である
リチウム二次電池用正極活物質。
[化学式1]
LiFePO
(前記化学式1中、0.8≦x≦1.2、0.9≦y≦1.1であり、xとyが同時に1であることはない。)
【請求項2】
Feは、前記鉄リチウム化合物総量に対して30〜40重量%で含まれる、請求項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
Fe化合物、リチウム塩およびリン酸塩を、Fe:リチウム:リンのモル比0.8〜1.2:0.9〜1.1:0.8〜1.2、但し1:1:1または1:1.05:1であることはない、で混合して混合物を得る段階;および
前記混合物を還元雰囲気下で650〜850℃で熱処理する段階
を含む、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記Fe化合物は、FeSO、FeCO、FeO、FeC、FePO、Fe(POまたはこれらの組み合わせを含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記リチウム塩は、LiCO、LiPO、LiClまたはこれらの組み合わせを含む、請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記リン酸塩は、LiPO、(NHHPO、NHPO、HPOまたはこれらの組み合わせを含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記Fe化合物、前記リチウム塩および前記リン酸塩は、Fe:リチウム:リンのモル比0.8〜1.05:1.0〜1.1:0.9〜1.1、但し1:1:1または1:1.05:1であることはない、で混合される、請求項3〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記還元雰囲気は、N、Hまたはこれらの組み合わせの雰囲気を含む、請求項3〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理は、650〜800℃で行われる、請求項3〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極。
【請求項11】
請求項1または2に記載の正極活物質を含む正極;
負極;および
電解液
を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯用小型電子機器の電源として脚光を浴びているリチウム二次電池は、有機電解液を使用することによって、既存のアルカリ水溶液を使用した電池より2倍以上の高い放電電圧を示し、その結果、高いエネルギー密度を示す電池である。
【0003】
このようなリチウム二次電池は、リチウムをインターカレーション(intercalation)およびデインターカレーション(deintercalation)することができる正極活物質を含む正極、およびリチウムをインターカレーションおよびデインターカレーションすることができる負極活物質を含む負極を含む電池セルに電解液を注入して使用される。
【0004】
前記正極活物質としては、LiCoOが広く使用されているが、コバルト(Co)の希少性により製造費用の増加および安定的供給の問題と、人体に対する毒性および環境汚染の問題が台頭している。
【0005】
これによって、経済的であり、安定性があり、高容量の正極活物質としてオリビン構造を有するリン酸鉄リチウム化合物の開発が進められている。
しかし、前記リン酸鉄リチウム化合物は、伝導度およびリチウムイオンの拡散速度が低く、高い充放電速度では容量が減少することによって、電流密度が高い応用分野では使用の制約を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一の目的は、導電性に優れて、高容量および高率充放電特性に優れた正極活物質を提供することである。
本発明の他の目的は、前記正極活物質の製造方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記正極活物質を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、下記の化学式1で表される鉄リチウム化合物を含み、前記鉄リチウム化合物は、オリビン構造相と少なくとも1の他の相とを含む、リチウム二次電池用正極活物質である。
[化学式1]
LiFePO
(前記化学式1中、0.8≦x≦1.2、0.9≦y≦1.1であり、xとyが同時に1であることはない。)
本発明の一実施形態において、該鉄リチウム化合物中のLiに対するFeのモル比は、0.80〜1.00である。また、該鉄リチウム化合物中のLiに対するFeのモル比は、0.90〜1.00であり、0.9〜0.99であってもよい。Feは、Fe2+、Fe3+またはこれらの組み合わせを含むことができる。
Fe2+は、Feの総量に対して58〜100モル%で含まれてよく、具体的には58〜90モル%で含まれてよい。
Feは、前記鉄リチウム化合物総量に対して30〜40重量%で含まれてよい。
本発明の他の一実施形態は、Fe化合物、リチウム塩およびリン酸塩をFe:リチウム:リンのモル比0.8〜1.2:0.9〜1.1:0.8〜1.2、但し1:1:1または1:1.05:1であることはない、で混合して混合物を得る段階;および前記混合物を還元雰囲気下で650〜850℃で熱処理する段階を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
前記Fe化合物は、FeSO、FeCO、FeO、FeC、FePO、Fe(POまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
前記リチウム塩は、LiCO、LiPO、LiClまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
前記リン酸塩は、LiPO、(NHHPO、NHPO、HPOまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
前記Fe化合物、前記リチウム塩および前記リン酸塩は、Fe:リチウム:リンのモル比0.8〜1.05:1.0〜1.1:0.9〜1.1で混合されてもよく、Fe、リチウムおよびリンのモル比が1:1:1または1:1.05:1であることはない。
前記還元雰囲気は、N、Hまたはこれらの組み合わせの雰囲気を含むことができる。
前記熱処理は、650〜800℃で行われてよい。
本発明のさらに他の一実施形態は、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
本発明のさらに他の一実施形態は、前記正極活物質を含む正極;負極;および電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
その他本発明の実施形態の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導電性に優れた正極活物質が提供されることによって、高容量および高率充放電特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態によるリチウム二次電池を示す概略図である。
図2】実施例1による正極活物質のSEM写真である。
図3】実施例2による正極活物質のSEM写真である。
図4】実施例3による正極活物質のSEM写真である。
図5】実施例4による正極活物質のSEM写真である。
図6】比較例1による正極活物質のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、本発明はこれによって制限されず、特許請求の範囲の範疇により定義される。
本発明の一実施形態による正極活物質は、下記の化学式1で表される鉄リチウム化合物を含む。
[化学式1]
LiFePO
(前記化学式1中、0.8≦x≦1.2、0.9≦y≦1.1であり、xとyが同時に1であることはない。)
【0011】
本発明の一実施形態において、前記化学式1中、0.93≦x≦1.07、0.93≦y≦1.07であり、xとyが同時に1であることはない。
前記化学式1で表される鉄リチウム化合物は、その組成から、オリビン構造相と、オリビン構造相以外の相を少なくとも1つ含む。
【0012】
従来のリン酸鉄リチウムは、容量が大きく、安定性に優れて、良好な寿命特性を有するリチウム二次電池を実現することができるが、導電性が低く、リチウムイオンの拡散速度が小さいことから、高い充放電速度では容量が減少する問題があるため、電流密度が高い応用分野では使用の限界がある。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、LiおよびFeのモル比、Fe2+およびFe3+のモル比などを調節した、鉄リチウム化合物を正極活物質として使用する。このような鉄リチウム化合物は、導電性が向上して、前記リン酸鉄リチウム酸化物を正極活物質として使用する場合、初期充放電容量が高く、高率充放電特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0014】
具体的に説明すると、Liに対するFeのモル比は、0.80〜1.00であってもよく、具体的には0.90〜1.00であってもよい。より具体的には、0.90〜0.99であってもよい。また、本発明の一実施形態において、Liに対するFeのモル比は、0.92〜1.00であってもよい。Liに対するFeのモル比が前記範囲内である場合、鉄リチウム化合物の導電性が改善されて、初期充放電容量が高く、高率充放電特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0015】
本発明の鉄リチウム化合物は、具体的にはFe2+、Fe3+またはこれらの組み合わせを含むことができる。Fe2+は、前記鉄リチウム化合物中のFeの総量に対して58〜100モル%で含まれてもよく、具体的には58〜90モル%で含まれてもよい。また、Fe2+は、Fe総量に対して65〜85モル%で含まれてもよい。Fe2+が前記範囲内で含まれる場合、鉄リチウム化合物に導電性を付与して高容量および高率充放電特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0016】
Feは、前記鉄リチウム化合物総量に対して30〜40重量%で含まれてもよく、具体的には31〜39重量%で含まれてもよい。Feが前記範囲内で含まれる場合、鉄リチウム化合物の導電性が改善されて、初期充放電容量が高く、高率充放電特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0017】
前記鉄リチウム化合物は、Fe化合物、リチウム塩およびリン酸塩を混合して混合物を得た後、前記混合物を熱処理して製造され得る。
【0018】
前記Fe化合物の例としては、FeSO、FeCO、FeO、FeC、FePO、Fe(POなどが挙げられ、これを単独でまたは二つ以上を混合して使用することができる。
【0019】
前記リチウム塩の例としては、LiCO、LiPO、LiClなどが挙げられ、これを単独でまたは二つ以上を混合して使用することができる。
【0020】
前記リン酸塩の例としては、LiPO、(NHHPO、NHPO、HPOなどが挙げられ、これを単独でまたは二つ以上を混合して使用することができる。
【0021】
本発明の一実施形態による鉄リチウム化合物は、前記Fe化合物、前記リチウム塩および前記リン酸塩の混合モル比、前記熱処理条件などを調節することによって、得ることができる。
【0022】
具体的に説明すると、前記混合物は、前記Fe化合物、前記リチウム塩および前記リン酸塩をFe:リチウム:リンのモル比0.8〜1.2:0.9〜1.1:0.8〜1.2、但し1:1:1または1:1.05:1であることはない、で混合して得ることができ、具体的には0.8〜1.05:1.0〜1.1:0.9〜1.1のモル比で混合して得ることができる。前記Fe化合物、前記リチウム塩および前記リン酸塩が前記範囲内のモル比で混合される場合、鉄リチウム化合物に導電性を付与して初期充放電容量が高く、高率充放電特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0023】
前記混合物の熱処理は、還元雰囲気下で行われ得、具体的にはNまたはH雰囲気下で行われ得る。前記雰囲気下で熱処理を行う場合、鉄リチウム化合物の導電性が改善されて、初期充放電容量が高く、高率充放電特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0024】
前記混合物の熱処理は、650〜850℃の温度範囲で行われ得、具体的には650〜800℃で行われ得る。前記温度範囲で熱処理を行う場合、鉄リチウム化合物の導電性が改善されて、初期充放電容量が高く、高率充放電特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0025】
以下、前記正極活物質を含むリチウム二次電池について図1を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池を示す概略図である。図1を参照すると、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池100は、正極114、正極114と対向する負極112、正極114と負極112との間に配置されているセパレータ113、そして正極114、負極112およびセパレータ113を含浸する電解液(図示せず)を含む電極組立体と、前記電極組立体を収容している電池容器120、および前記電池容器120を密封する密封部材140を含む。
【0026】
前記正極114は、集電体、および前記集電体に形成される正極活物質層を含む。前記正極活物質層は、正極活物質、バインダーおよび選択的に導電剤を含む。
【0027】
前記集電体としては、アルミニウム(Al)を使用することができるが、これに限定されない。
【0028】
前記正極活物質としては、前述した鉄リチウム化合物を使用する。具体的には、FeおよびLiを含み、相互のモル比が調節された鉄リチウム化合物を正極活物質として使用する場合、導電性が向上して、初期充放電容量が高く、高率充放電特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0029】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を集電体に良好に付着させる役割を果たし、具体的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリル化スチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0030】
前記導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子導電性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを使用することができ、また、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上を混合して使用することができる。
【0031】
前記負極112は、負極集電体、および前記負極集電体上に形成されている負極活物質層を含む。
前記負極集電体は、銅箔を使用することができる。
前記負極活物質層は、負極活物質、バインダーおよび選択的に導電剤を含む。
前記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質、遷移金属酸化物またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0032】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質としては、炭素物質であって、リチウムイオン二次電池で一般に使用される炭素系負極活物質は如何なるものでも使用することができ、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用することができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0033】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属との合金を使用することができる。
【0034】
前記リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質としては、Si、SiO(0<x<2)、Si−Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族〜16族元素、遷移金属、希土類元素またはこれらの組み合わせであり、Siではない)、Si−C複合体またはこれらの組み合わせのSi系化合物;Sn、SnO、Sn−Y(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族〜16族元素、遷移金属、希土類元素またはこれらの組み合わせであり、Snではない)またはこれらの組み合わせのSn系化合物;またはこれらの組み合わせが挙げられ、またこれらのうちの少なくとも一つとSiOを混合して使用することもできる。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Poまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0036】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また負極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たし、その代表的な例としてポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリル化スチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されない。
【0037】
前記導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子導電性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0038】
前記負極112および前記正極114は、それぞれ、活物質、導電剤およびバインダーを溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を集電体に塗布して製造する。
このような電極製造方法は、当該分野に広く知られた内容であるため、本明細書で詳細な説明は省略する。前記溶媒としては、N−メチルピロリドンなどを使用することができるが、これに限定されない。
【0039】
前記電解液は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を果たす。前記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系および非プロトン性溶媒から選択され得る。
【0040】
前記カーボネート系溶媒としては、例えばジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate、DPC)、メチルプロピルカーボネート(methylpropyl carbonate、MPC)、エチルプロピルカーボネート(ethylpropyl carbonate、EPC)、メチルエチルカーボネート(methylethyl carbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate、BC)などを使用することができる。
【0041】
特に、鎖状カーボネート化合物および環状カーボネート化合物を混合して使用する場合、誘電率を高めると同時に粘性が小さい溶媒として製造されることができて良い。この場合、環状カーボネート化合物および鎖状カーボネート化合物は、約1:1〜1:9の体積比で混合して使用することができる。
【0042】
また、前記エステル系溶媒としては、例えば、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオン酸塩、エチルプロピオン酸塩、γ−ブチロラクトン、デカノライド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。前記エーテル溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができ、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどを使用することができる。また、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができる。
【0043】
前記非水性有機溶媒は、単独または一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は、目的とする電池性能に応じて適切に調節することができる。
【0044】
前記非水性電解液は、エチレンカーボネート、ピロカーボネートなどの過充電防止剤のような添加剤をさらに含むこともできる。
【0045】
前記リチウム塩は、有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。
【0046】
前記リチウム塩の具体的な例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは、自然数であり、それぞれ1〜20である)、LiCl、LiI、LiB(C(リチウムビスオキサラトボレート(lithium bis(oxalato) borate;LiBOB)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
前記リチウム塩の濃度は、約0.1M〜約2.0M範囲内で使用することが良い。リチウム塩の濃度が前記範囲で含まれると、電解液が適切な伝導度および粘度を有するため、優れた電解液性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0048】
前記セパレータ113は、前記負極と前記正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、リチウム電池で通常使用されるものであれば全て使用可能である。つまり、電解液のイオン移動に対して低抵抗であると共に電解液含湿能力に優れたものを使用することができる。例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはこれらの組み合わせの中から選択されたものであって、不織布または織布形態でも関係ない。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなポリオレフィン系高分子セパレータが主に使用され、耐熱性または機械的強度の確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれているコーティングされたセパレータが使用されることもでき、選択的に単層または多層の構造に使用され得る。
【0049】
[実施例]
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記の実施例は、本発明を具体的に例示したり説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
また、ここに記載されない内容は、当該技術分野における熟練した者であれば十分に技術的に類推することができるため、その説明を省略する。
【0050】
<正極活物質の製造>
(実施例1)
FeC、LiCOおよび(NHHPOを、Fe:リチウム:リンのモル比1.02:1:1で混合して混合物を製造した。前記混合物を5%のHおよび95%のN雰囲気下で700℃で熱処理して、鉄リチウム化合物LiFe1.02POを製造した。
【0051】
(実施例2)
実施例1でFeC、LiCOおよび(NHHPOを、Fe:リチウム:リンのモル比0.93:1:1で混合して混合物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で鉄リチウム化合物LiFe0.93POを製造した。
【0052】
(実施例3)
実施例1でFeC、LiCOおよび(NHHPOを、Fe:リチウム:リンのモル比1:1:1.07で混合して混合物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で鉄リチウム化合物Li0.93Fe0.93POを製造した。
【0053】
(実施例4)
実施例1でFeC、LiCOおよび(NHHPOを、Fe:リチウム:リンのモル比1:1:0.93のモル比で混合して混合物を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で鉄リチウム化合物Li1.07Fe1.07POを製造した。
【0054】
(比較例1)
FeC、LiCOおよび(NHHPOを、Fe:リチウム:リンのモル比1:1.05:1で混合して混合物を製造した。前記混合物を5%のHおよび95%のN雰囲気下で600℃で熱処理して、リン酸鉄リチウムLiFePOを製造した。
【0055】
〔評価1:正極活物質のSEM写真の評価〕
前記実施例1〜4および比較例1でそれぞれ製造された正極活物質のSEM写真を図2〜6にそれぞれ示した。
図2図5は、それぞれ順に実施例1〜4による正極活物質のSEM写真であり、図6は、比較例1による正極活物質のSEM写真である。
図2図6を参照すると、実施例2の場合、1次粒子の大きさが最も小さいことを確認することができる。
【0056】
〔評価2:正極活物質の内部の評価〕
前記実施例1〜4および比較例1でそれぞれ製造された正極活物質内部に存在するFeおよびLiのモル比、Fe2+の含量をICP(inductively coupled plasma)分析法と滴定(titration)分析法で測定して、その結果を下記表1に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
前記表1から、実施例1〜4により製造された鉄リチウム化合物の場合、内部に存在するFe2+は、Fe総量に対して58〜100モル%の範囲内で含有されることが分かる。
また、実施例1〜4により製造された鉄リチウム化合物の場合、Liに対するFeのモル比は、0.80〜1.00の範囲内に得られることが分かる。
【0059】
〔評価3:正極活物質の導電性の評価〕
前記実施例1〜4および比較例1でそれぞれ製造された正極活物質の導電性を次のような方法で測定して、その結果を下記表2に示した。
伝導度測定設備を利用してパウダーをペレット化(pelletize)させて、それぞれ4、8、12、16および20kNの力で圧力を加えてその時の電気伝導度を測定した。
【0060】
【表2】
【0061】
前記表2から、実施例1〜4による鉄リチウム化合物の場合、比較例1によるリン酸鉄リチウムの場合と比較して、優れた導電性が現れることが分かる。
【0062】
<リチウム二次電池の製作>
前記実施例1〜4および比較例1でそれぞれ製造された正極活物質96重量%、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)2重量%およびアセチレンブラック2重量%を混合した後、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリーを製造した。次に、60μm厚さのアルミニウム箔の上に前記スラリーを塗布した後、135℃で3時間以上乾燥させた後に圧延して正極を製造した。
前記正極の対極(counter electrode)としては、金属リチウムを使用してコインタイプの半電池を製作した。この時、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合体積比が3:7である混合溶液に1.3M濃度のLiPFが溶解されたものを使用した。
【0063】
〔評価4:リチウム二次電池の充放電特性の評価〕
前記実施例1〜4および比較例1でそれぞれ製造された正極活物質を利用して製作されたそれぞれのリチウム二次電池の充放電特性を次のような方法で測定し、その結果を下記表3に示した。
2〜3.8Vで、0.1CにてCC/CVモードで充電後、0.1CにてCCモードで放電して、1サイクルを終えた。
2〜3.8Vで、0.2CにてCC/CVモードで充電後、0.2CにてCCモードで放電して、2〜3.8Vで1サイクルを終えた。
0.5CにてCC/CVモードで充電後、0.5CにてCCモードで放電して、2〜3.8Vで1サイクルを終えた。
1CにてCC/CVモードで充電後、1CにてCCモードで放電して、2〜3.8Vで1サイクルを終えた。
1CにてCC/CVモードで充電後、3.0CにてCCモードで放電して、2〜3.8Vで1サイクルを終えた。
1CにてCC/CVモードで充電後、5.0CにてCCモードで放電して、2〜3.8Vで1サイクルを終えた。
下記の容量維持率(%)は、それぞれ0.1Cでの放電容量に対する1Cでの放電容量の百分率値であり、0.1Cでの放電容量に対する5Cでの放電容量の百分率値である。
【0064】
【表3】
【0065】
前記表3から、実施例1〜4による鉄リチウム化合物を使用したリチウム二次電池の場合、比較例1によるリン酸鉄リチウムを使用したリチウム二次電池の場合と比較して、高容量を有し、高率充放電特性に優れていることが分かる。
以上で本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0066】
100…リチウム二次電池
112…負極
113…セパレータ
114…正極
120…電池容器
140…封入部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6