(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0014】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
[実施形態の概要]
第1に、実施形態に係る送信装置は、入力ビット列に対して所定符号化率で誤り訂正符号化処理を適用する誤り訂正符号化部と、IQ平面において定義される理想的なシンボル座標を用いて、奇数ビットを表すシンボルを前記IQ平面にマッピングするマッピング部とを備える。前記理想的なシンボル座標は、所定符号化率に応じて最適化される。
【0016】
第2に、実施形態に係る受信装置は、IQ平面において定義される理想的なシンボル座標を用いて、前記IQ平面にマッピングされたシンボルを奇数ビットにデマッピングするデマッピング部を備える。前記理想的なシンボル座標は、送信装置で適用される誤り訂正符号化処理で用いる所定符号化率に応じて最適化される。
【0017】
実施形態では、理想的なシンボル座標は、所定符号化率に応じて最適化される。言い換えると、理想的なシンボル座標は、所定符号化率によって定まる所要キャリアノイズ比に応じて最適化される。従って、奇数ビットを表すシンボルをIQ平面にマッピングするケースにおいて、受信特性を改善することができる。
【0018】
また、偶数ビットを表すシンボルのマッピングのみを利用できる伝送システムでは、例えば、マッピングとして16QAM及び64QAMを利用可能である場合に、16QAMから64QAMにマッピングを変更すると、シンボルの間隔は、I軸及びQ軸方向で約1/2となり、エラーフリーが得られるC/N比、いわゆる所要C/N比が約6dB劣化する。これに対して、実施形態では、マッピングとして、奇数ビットを表すシンボルのマッピングを導入しているため、32QAMを利用することができる。従って、16QAMと64QAMとの間の中間的な伝送特性を利用することができ、幅広いキャリアノイズ比(C/N比)に対応できる柔軟な伝送システムを実現することができる。
【0019】
[第1実施形態]
(デジタル放送システム)
以下において、第1実施形態に係るデジタル放送システムについて説明する。
図1は、第1実施形態に係る送信装置10を示すブロック図であり、
図2は、第1実施形態に係る受信装置20を示すブロック図である。デジタル放送システムは、送信装置10及び受信装置20を備える。
【0020】
実施形態において、デジタル放送システムは、次世代地上放送方式に対応するデジタル放送システムである。例えば、デジタル放送システムでは、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)技術が適用される。デジタル放送システムでは、送信装置10から受信装置20に対して、複数の階層に属する階層化データ(例えば、1セグメント、13セグメント)が送信される。
【0021】
図1に示すように、送信装置10は、インターフェース部11と、誤り訂正符号化部12と、インターリーブ部13と、マッピング部14と、直交変調部15とを備える。送信装置10は、例えば、放送局等に設けられる。
【0022】
インターフェース部11は、映像・音声などの入力データを受け付ける。入力データは、所定フォーマットを有するTS(Transport Stream)などである。
【0023】
誤り訂正符号化部12は、入力データを構成する入力ビット列に対して所定符号化率で誤り訂正符号化処理を適用する。具体的には、誤り訂正符号化部12は、所定ビット数のデータに誤り訂正符号を付与して、所定長の誤り訂正ブロックを生成する。複数の誤り訂正ブロックによってデータフレームが構成される。
【0024】
インターリーブ部13は、データフレームを構成するビット列の並び換え処理(インターリーブ処理)を行う。インターリーブ処理は、時間軸及び周波数軸上などにおいて所定法則に従ってビット列を並べ替える処理である。
【0025】
マッピング部14は、IQ平面において定義される理想的なシンボル座標を用いて、インターリーブ処理が施されたビット列(すなわち、誤り訂正符号化処理が適用されたビット列)をIQ平面にマッピングする処理(キャリア変調処理)を行う。第1実施形態では、IQ平面にマッピングされる1シンボルは、奇数ビットを表している。言い換えると、キャリア変調処理は、例えば、32QAM(1シンボル当たり5ビット)、128QAM(1シンボル当たり7ビット)、512QAM(1シンボル当たり9ビット)などである。
【0026】
マッピング部14は、誤り訂正符号化処理で用いる所定符号化率に応じて最適化される理想的なシンボルを用いる。言い換えると、マッピング部14は、所定符号化率によって定まる所要キャリアノイズ比(C/N比)に応じて最適化される理想的なシンボルを用いる。以下において、理想的なシンボルの最適化の観点では、所定符号化率とキャリアノイズ比(C/N比)は同義であると考えてもよい。詳細については後述するが、理想的なシンボル座標は、均等に配置される格子の交点ではなくて、不均一に配置されることが好ましい。
【0027】
直交変調部15は、マッピング部14から出力されるシンボルに基づいて、キャリア変調を行う。OFDM伝送を行う伝送システムの場合、直交変調部15は、所定数のサブキャリア(周波数軸)及び所定数のシンボル数(時間軸)によって定義されるOFDMフレーム(伝送フレーム)を生成する。直交変調部15は、OFDMフレームを構成する各シンボルの直交変調を行って無線信号Txを生成する。直交変調部15は、1つのアンテナ又は複数のアンテナを用いて、無線信号Txを受信装置20に送信する。
【0028】
ここで、OFDMフレーム(伝送フレーム)は、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号、AC(Auxiliary Channel)信号等の制御信号を含む。例えば、TMCC信号は、複数の階層のそれぞれの伝送パラメータ(変調方式、セグメント数、符号化率等)を示す信号、OFDMフレーム(伝送フレーム)の同期をとるための同期信号を含む。
【0029】
図2に示すように、受信装置20は、直交復調部21と、デマッピング部22と、デインターリーブ部23と、誤り訂正部24と、インターフェース部25とを備える。受信装置20は、例えば、家庭内に固定的に設置される受像器、ユーザが持ち運び可能な移動端末に設けられる。
【0030】
直交復調部21は、1つのアンテナ又は複数のアンテナを用いて、無線信号Rxを受信する。直交復調部21は、無線信号Rxの直交復調を行って、受信シンボルを取得する。OFDM伝送を行う伝送システムの場合、直交復調部21は、所定数のサブキャリア(周波数軸)及び所定数のシンボル数(時間軸)によって定義されるOFDMフレーム(伝送フレーム)を取得する。OFDMフレーム(伝送フレーム)の同期は、上述したTMCC信号によって行われる。
【0031】
デマッピング部22は、IQ平面において定義される理想的なシンボル座標を用いて、IQ平面にマッピングされたシンボルをビット列に対応する尤度比にデマッピングする処理(キャリア復調処理)を行う。第1実施形態では、上述したように、IQ平面にマッピングされる1シンボルは、奇数ビットを表している。言い換えると、キャリア復調処理は、例えば、32QAM(1シンボル当たり5ビット)、128QAM(1シンボル当たり7ビット)、512QAM(1シンボル当たり9ビット)などである。
【0032】
デマッピング部22は、誤り訂正符号化処理で用いる所定符号化率に応じて最適化される理想的なシンボル座標を用いる。言い換えると、デマッピング部22は、所定符号化率によって定まる所要キャリアノイズ比(C/N比)に応じて最適化される理想的なシンボルを用いる。詳細については後述するが、理想的なシンボル座標は、上述したように、均等に配置される格子の交点ではなくて、不均一に配置されることが好ましい。
【0033】
デインターリーブ部23は、デマッピング部22から出力されるビット列に対応する尤度比などの並び換え処理(デインターリーブ処理)を行う。デインターリーブ処理は、時間軸及び周波数軸上などにおいて所定法則に従ってビット列を並べ替える処理である。
【0034】
誤り訂正部24は、デインターリーブ部23から出力されるビット列に対応する尤度比などから誤り訂正ブロックを抽出する。誤り訂正部24は、誤り訂正ブロックの誤り訂正を行う。
【0035】
インターフェース部25は、誤り訂正部24によって誤り訂正が施されたビット列に基づいて、映像・音声などの出力データを出力する。出力データは、所定フォーマットを有するTS(Transport Stream)などである。
【0036】
(BICMキャパシティの算出)
以下において、第1実施形態に係るBICM(Bit−Interleaved Coded Modulation)キャパシティの算出について説明する。ここでは、マッピング処理を行うビット数m=5、マッピングシンボル数N=32の場合について説明する。N=2
mである。BICMキャパシティを算出するAWGN伝送路のC/N比はAdBである。
【0037】
第1に、理想的なシンボル座標を(In,Qn)で表す。nは、1≦n≦Nの条件を満たす整数である。シンボル座標の平均電力Pは、以下の式のように、P=1に正規化される。
【0039】
第2に、ランダムなビット列(23次PN符号など)を生成して、生成されたビット列からmビットを取り出して、取り出されたmビットのマッピングを行う。
【0040】
ここでは、mビットとシンボル座標(In,Qn)は、以下に示す通りである。但し、実施形態は、これに限定されるものではない。
【0041】
mビットが00000の場合→(I1,Q1)
mビットが00001の場合→(I2,Q2)
・・・
mビットが11111の場合→(I32,Q32)
【0042】
第3に、理想的なシンボル座標を(Ik,Qk)で表す。kは、後述する繰り返し回数であり、1≦k≦Kの条件を満たす整数である。
【0043】
第4に、理想的なシンボル座標(Ik,Qk)を“z”で表す。zは、複素数であり、zの平均電力P=1である。
【0044】
第5に、C/N比(AdB)のAWGN伝送路で発生する雑音信号を“u”で表す。uは、複素数であり、uの平均電力Puは、Pu=10^(−A/10)で表される。uのI成分及びuのQ成分は、それぞれ、平均=0及び分散=Pu/2のガウス分布を有する。
【0045】
第6に、C/N比(AdB)のAWGN伝送路を信号が通過した場合に、受信信号yをy=z+uの式に従って生成する。yは、複素数である。
【0046】
第7に、受信信号yについて、BICMキャパシティC^を算出する。
【0048】
上述したBICMキャパシティの算出をK回に亘って繰り返して、BICMキャパシティC^の平均値Cを算出する。繰り返し回数(サンプル数)Kは、マッピングシンボル数Nよりも十分に大きな値である(N<<K)。
【0049】
このようにして算出された平均値Cは、C/N比(AdB)のAWGN伝送路におけるシンボル位置(In,Qn)のBICMキャパシティである。
【0050】
(シンボル座標の最適化)
以下において、第1実施形態に係るシンボル座標の最適化について説明する。ここでは、マッピング処理を行うビット数m=5、マッピングシンボル数N=32の場合について説明する。N=2
mである。BICMキャパシティを算出するAWGN伝送路のC/N比はAdBである。
【0051】
また、上位2ビットは、I/Q平面上の象限を特定するために使用される。例えば、上位2ビットは、以下のように、I/Q平面上の象限と対応付けられる。
【0052】
00⇒第1象限(I+,Q+)
01⇒第4象限(I+,Q−)
10⇒第2象限(I−,Q+)
11⇒第3象限(I−,Q−)
【0053】
mビットのうち、残りの下位ビット(m−2)ビットは、I軸成分の振幅及びQ軸成分の振幅を規定する。例えば、残りの下位ビット(m−2)ビットは、以下のように、I軸成分の振幅及びQ軸成分の振幅と対応付けられる。
【0054】
000⇒(1,1)
001⇒(3,1)
010⇒(3,5)
011⇒(5,1)
100⇒(1,3)
101⇒(3,3)
110⇒(1,5)
111⇒(5,3)
【0055】
このようなシンボル座標が格子の交点に均等に配置される場合には、シンボル座標とビット列との対応関係は、
図3に示す通りである。
【0056】
実際には、各シンボル座標の平均電力が1となるように正規化される。従って、I軸成分の振幅及びQ軸成分の振幅に規格化係数(1/√20)を乗算した値が実際のI軸成分の振幅及びQ軸成分の振幅となる。
【0057】
ここで、上述した下位3ビットによって表現される8通りの(I,Q)の値を(I1,Q1),(I2,Q2),…(I8,Q8)で表す。これらの振幅値を1次元ベクトルvとして、以下のように定義する。vは、2
(m−2)×2次元ベクトルであり、m=5である場合には、vは、16次元ベクトルである。
【0058】
v=(I1,Q1,I2,Q2,…,I8,Q8)
【0059】
以下において、16次元ベクトルの値を最適化して、BICMキャパシティを最大化することを考える。16次元ベクトルの各要素は、0以上の正の値である。ここで、評価関数は、BICMキャパシティCである。制約条件は、シンボル座標の平均電力P=1となることであり、以下の式によって表される。以下の式では、第一象限のみで平均電力を算出しているため、N/4となっている。
【0061】
ここで、評価関数であるBICMキャパシティCは、導関数を求めることができないため、勾配法を用いて評価関数の最適化を行うことが困難である。このため、直接探索法である、遺伝的アルゴリズムを用いて、最適解の探索を行う。
【0062】
例えば、遺伝的アルゴリズムとしては、単峰性正規分布交叉UNDXを用いた実数値GAによる関数最適化を用いることができる(例えば、単峰性正規分布交叉UNDXを用いた実数値GAによる関数最適化を参照)。このようなアルゴリズムは、多峰性及び非線形性の強い関数を最適化する手法として、レンズ設計問題などに適用されることが多い。但し、遺伝的アルゴリズムは、特に限定されるものではなく、他の既知の手法を用いてもよい。
【0063】
(作用及び効果)
第1実施形態では、所定符号化率に応じて最適化される。言い換えると、理想的なシンボル座標は、所定符号化率によって定まる所要キャリアノイズ比に応じて最適化される。従って、奇数ビットを表すシンボルをIQ平面にマッピングするケースにおいて、受信特性を改善することができる。
【0064】
[実施例]
以下において、実施例について説明する。上述したシンボル座標の最適化に従って、キャリアノイズ比(C/N比)に応じて、理想的なシンボル座標を最適化した結果について説明する。ここでは、マッピング処理を行うビット数m=5、マッピングシンボル数N=32の場合について、理想的なシンボル座標を算出した。具体的には、
図4〜
図14に示すように、1dB刻みでC/N比が5dB〜15dBである場合において、C/N比に応じて最適化された理想的なシンボル座標を演算した。
図4〜
図14において、
図4〜
図14において、“ビット列”は、下位3ビットを示しており、“I”及び“Q”は、I軸成分の振幅及びQ軸成分の振幅を示している。
【0065】
図4〜
図14に示すように、各シンボル座標が格子の交点に均等に配置される
図3と比べて、理想的なシンボル座標は、不均一に配置されることに留意すべきである。C/N比が大きいほど、各シンボル座標の不均一さが緩和されることに留意すべきである。
【0066】
ここで、
図15は、
図3に示すケース(最適化前)及び
図4〜
図14(最適化後)について、受信特性(BICMキャパシティ)を評価した結果を示す。
図15に示すように、キャリアノイズ比に依存せずに理想的なシンボル座標を定めるケース(
図3)と比べて、理想的なシンボル座標をキャリアノイズ比に応じて最適化することによって、受信特性(BICMキャパシティ)が改善することが確認された。
【0067】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0068】
実施形態では、奇数ビットを表すシンボルをIQ平面にマッピングするケースについて主として説明したが、実施形態は、これに限定されるものではない。奇数ビットを表すシンボルをIQ平面にマッピングするケースに加えて、偶数ビットを表すシンボルをIQ平面にマッピングするケースにおいても、理想的なシンボル座標がキャリアノイズ比に応じて最適化されてもよい。
【0069】
実施形態では特に明示していないが、上述した実施形態は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が用いられるシステムだけではなくて、MISO(Multiple Input Single Output)技術又はSISO(Single Input Single Output)技術が用いられるシステムに適用されてもよい。
【0070】
実施形態では特に触れていないが、送信装置10及び受信装置20が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD−ROMやDVD−ROM等の記録媒体であってもよい。
【0071】
或いは、送信装置10及び受信装置20が行う各処理を実行するためのプログラムを記憶するメモリ及びメモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成されるチップが提供されてもよい。