特許第6367048号(P6367048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許6367048-レーザー加工装置 図000002
  • 特許6367048-レーザー加工装置 図000003
  • 特許6367048-レーザー加工装置 図000004
  • 特許6367048-レーザー加工装置 図000005
  • 特許6367048-レーザー加工装置 図000006
  • 特許6367048-レーザー加工装置 図000007
  • 特許6367048-レーザー加工装置 図000008
  • 特許6367048-レーザー加工装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367048
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20180723BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20180723BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B23K26/00 M
   B23K26/082
   H01L21/78 B
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-173838(P2014-173838)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-47547(P2016-47547A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】能丸 圭司
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−226590(JP,A)
【文献】 特表2014−528852(JP,A)
【文献】 特開2008−46079(JP,A)
【文献】 特開2006−305608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、を具備するレーザー加工装置であって、
該レーザー光線照射手段は、パルスレーザー光線を発振するパルスレーザー光線発振手段と、該パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光して該被加工物保持手段に保持された被加工物に照射する集光器と、該パルスレーザー光線発振手段と該集光器との間に配設され該パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線をスキャンして該集光器に導くスキャニングミラーとから構成されており、
該被加工物保持手段に保持された被加工物の加工深さを検出する加工深さ検出手段を具備し、
該加工深さ検出手段は、該スキャニングミラーに向けて所定の波長帯域を有する検査光を発する検査光源と、該検査光源と該スキャニングミラーとの間に配設され検査光の波長に対応して分光し検査光の拡がり角を波長毎に僅かに変更する色収差レンズと、該検査光源と該色収差レンズとの間に配設され該検査光源から発せられ該スキャニングミラーおよび該集光器を介して該被加工物保持手段に保持された被加工物に照射された検査光の反射光を反射光検出経路に分岐するビームスプリッターと、該反射光検出経路に配設され反射光の波長帯域の中で被加工物と焦点が一致した波長の検査光の反射光を通過させる波長選別手段と、該波長選別手段を通過した検査光の反射光の波長を検出する波長検出手段と、該波長検出手段によって検出された波長に基づいて該被加工物保持手段に保持された被加工物の加工深さを求める制御手段と、から構成されている、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物にレーザー加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
近時においては、IC、LSI等の半導体チップの処理能力を向上するために、シリコン等の基板の表面にSiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)が積層された機能層によって半導体デバイスを形成せしめた形態の半導体ウエーハが実用化されている。
【0004】
このような半導体ウエーハのストリートに沿った分割は、通常、ダイサーと呼ばれている切削装置によって行われている。この切削装置は、被加工物である半導体ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された半導体ウエーハを切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる移動手段とを具備している。切削手段は、高速回転せしめられる回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードを含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって固定して形成されている。
【0005】
しかるに、上述したLow−k膜は、切削ブレードによって切削することが困難である。即ち、Low−k膜は雲母のように非常に脆いことから、切削ブレードにより分割予定ラインに沿って切削すると、Low−k膜が剥離し、この剥離が回路にまで達しデバイスに致命的な損傷を与えるという問題がある。
【0006】
また、分割予定ライン上の機能層にデバイスの機能をテストするためのテスト エレメント グループ(TEG)と称するテスト用の金属膜が配設されている半導体ウエーハにおいては、切削ブレードによって切削するとバリが生じてデバイスの品質を低下させるとともに、切削ブレードのドレッシングを頻繁に実施する必要があり生産性が低下するという問題がある。
【0007】
上記問題を解消するために、半導体ウエーハに形成された分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射することによりLow−k膜からなる積層体にレーザー加工溝を形成して機能層を分断し、この機能層を分断したレーザー加工溝に切削ブレードを位置付けて切削ブレードと半導体ウエーハを相対移動することにより、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断するウエーハの分割方法が下記特許文献1に開示されている。
【0008】
しかるに、分割予定ライン上の機能層にデバイスの機能をテストするためのテスト エレメント グループ(TEG)と称するテスト用の金属膜が配設されている半導体ウエーハにおいては、分割予定ラインに沿って均一の深さのレーザー加工溝を形成することができないという問題がある。この問題を解消するために、テスト用の金属膜が配設されている領域を検出して座標を作成して記憶し、記憶された座標に基づいてレーザー光線の出力を調整しながら分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射する技術が下記特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−64231号公報
【特許文献2】特開2005−118832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
而して、上記特許文献2に開示された技術のようにテスト用の金属膜が配設されている領域を検出して座標を作成するには相当の時間を要し生産性が悪いという問題があるとともに、座標に基づいてレーザー光線の出力をタイミングよく制御することが必ずしも容易ではない。
【0011】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、レーザー光線の出力を制御することなく均一な深さのレーザー加工溝を形成することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、を具備するレーザー加工装置であって、
該レーザー光線照射手段は、パルスレーザー光線を発振するパルスレーザー光線発振手段と、該パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光して該被加工物保持手段に保持された被加工物に照射する集光器と、該パルスレーザー光線発振手段と該集光器との間に配設され該パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線をスキャンして該集光器に導くスキャニングミラーとから構成されており、
該被加工物保持手段に保持された被加工物の加工深さを検出する加工深さ検出手段を具備し、
該加工深さ検出手段は、該スキャニングミラーに向けて所定の波長帯域を有する検査光を発する検査光源と、該検査光源と該スキャニングミラーとの間に配設され検査光の波長に対応して分光し検査光の拡がり角を波長毎に僅かに変更する色収差レンズと、該検査光源と該色収差レンズとの間に配設され該検査光源から発せられ該スキャニングミラーおよび該集光器を介して該被加工物保持手段に保持された被加工物に照射された検査光の反射光を反射光検出経路に分岐するビームスプリッターと、該反射光検出経路に配設され反射光の波長帯域の中で被加工物と焦点が一致した波長の検査光の反射光を通過させる波長選別手段と、該波長選別手段を通過した検査光の反射光の波長を検出する波長検出手段と、該波長検出手段によって検出された波長に基づいて該被加工物保持手段に保持された被加工物の加工深さを求める制御手段と、から構成されている、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるレーザー加工装置は上述したように構成され、レーザー光線照射手段を作動して被加工物保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射しつつ加工深さ検出手段によって加工されるレーザー加工溝の深さを検出し、レーザー加工溝が所定の厚みに達したら被加工物へのレーザー光線の照射を停止するので、被加工物に異種の材料が存在していても、レーザー光線の出力を制御することなく均一な深さのレーザー加工溝を形成することができる。従って、異種の材料が存在する領域を検出して座標を作成する必要がないので生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段および加工深さ検出手段のブロック構成図。
図3図2に示す加工深さ検出手段の検査光の各波長の集光点を示す説明図。
図4図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
図5】検査光の波長(nm)と加工深さ(μm)との関係を表す制御マップ。
図6】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図および要部拡大断面図。
図7図6に示す半導体ウエーハを環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着した状態を示す斜視図。
図8図1に示すレーザー加工装置によって実施するレーザー加工溝形成工程および送り工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、基台2上に配設されたレーザー光線照射手段としてのレーザー光線照射ユニット4とを具備している。
【0017】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に加工送り方向(X軸方向)と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361の上面である保持面上に被加工物である例えば円形状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、半導体ウエーハ等の被加工物を保護テープを介して支持する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0018】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0019】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための割り出し送り手段38を具備している。割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0020】
上記レーザー光線照射ユニット4は、上記基台2上に配設された支持部材41と、該支持部材41によって支持され実質上水平に延出するケーシング42と、該ケーシング42に配設されたレーザー光線照射手段5と、ケーシング42の前端部に配設されレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段6を具備している。なお、撮像手段6は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0021】
上記レーザー光線照射手段5について、図2を参照して説明する。
レーザー光線照射手段5は、パルスレーザー光線発振手段51と、該パルスレーザー光線発振手段51から発振されたパルスレーザー光線を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する集光器52と、パルスレーザー光線発振手段51と集光器52との間に配設されパルスレーザー光線発振手段51から発振されたレーザー光線をスキャンして集光器52に導くスキャニングミラー53とから構成されている。パルスレーザー光線発振手段51は、パルスレーザー光線発振器511と、これに付設された繰り返し周波数設定手段512とから構成されている。なお、パルスレーザー光線発振手段51のパルスレーザー光線発振器511は、図示の実施形態においては波長が355nmのパルスレーザー光線LBを発振する。上記集光器52は、上記パルスレーザー光線発振手段51から発振されたパルスレーザー光線LBを集光するfθレンズ521を具備している。なお、集光器52は、図示しない集光点位置調整手段によってチャックテーブル36の保持面に対して垂直な集光点位置調整方向(図1において矢印Zで示すZ軸方向)に移動せしめられるようになっている。
【0022】
上記スキャニングミラー53は、図示の実施形態においてはポリゴンミラーからなっており、スキャンモータ530によって図2において矢印53aで示す方向に回転することにより、パルスレーザー光線発振手段51から発振されたパルスレーザー光線LBをLB1からLBnの範囲でX軸方向に沿ってfθレンズ521に導く。なお、スキャニングミラー53としてはガルバノミラーを用いてもよい。また、上記fθレンズ521によって集光されるパルスレーザー光線LB1からLBnの範囲は、図示の実施形態においては誇張して描いているが例えば2mmに設定されている。
【0023】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射手段5は、パルスレーザー光線発振手段51とスキャニングミラー53との間に配設され、パルスレーザー光線発振手段51から発振されたパルスレーザー光線LBの光軸を偏向する光軸変更手段54を備えている。この光軸変更手段54は、図示の実施形態においては音響光学素子(AOD)からなり、所定周波数のRF(radio frequency)が印加された場合に、図2において破線で示すようにパルスレーザー光線LBの光軸をレーザー光線吸収手段55に向けて変更する。
以上のように構成されたレーザー光線照射手段5のパルスレーザー光線発振手段51とスキャニングミラー53のスキャンモータ530および光軸変更手段54は、後述する制御手段によって制御される。
【0024】
図2を参照して説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36に保持された被加工物Wの加工深さを検出する加工深さ検出手段7を具備している。加工深さ検出手段7は、上記レーザー光線照射手段5のスキャニングミラー53に向けて所定の波長帯域を有する検査光を発する検査光源71と、検査光源71とスキャニングミラー53との間に配設され検査光の波長に対応して分光し検査光の拡がり角を波長毎に僅かに変更する色収差レンズ72と、検査光源71と色収差レンズ72との間に配設され検査光源71から発せられスキャニングミラー53および集光器52のfθレンズ521を介してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射された検査光の反射光を反射光検出経路73に分岐するビームスプリッター74と、反射光検出経路73に配設され反射光の波長帯域の中で被加工物と焦点が一致した波長の検査光の反射光を通過させる波長選別手段75と、該波長選別手段75を通過した検査光の反射光の波長を検出する波長検出手段76を具備している。
【0025】
検査光源71は、スーパールミネッセントダイオード(SLD)やフラッシュランプ等からなり、図示の実施形態においては800〜900nmの波長帯域を有している。色収差レンズ72は、検査光源71が発した800〜900nmの波長帯域を有する検査光を波長に対応して分光して検査光の拡がり角を波長毎に僅かに変更してスキャニングミラー53に導く。従って、スキャニングミラー53で反射しfθレンズ521に導かれた800〜900nmの波長帯域を有する検査光は、図3に示すように800nmの光はP1に集光し、波長が900nmの光はP2に集光するようになっている。なお、図示の実施形態においては、波長が800nmの集光点P1と波長が900nmの集光点P2との間隔は50μmに設定されている。従って、図示の実施形態においては図5に示す検査光の波長(nm)と加工深さ(μm)との関係を表す制御マップが作成され、この制御マップが後述する制御手段のメモリに格納される。
【0026】
上記ビームスプリッター74は、検査光源71が発した800〜900nmの波長帯域を有する検査光を色収差レンズ72に向けて通過するが、チャックテーブル36に照射された検査光の反射光は反射光検出経路73に向けて分岐する。反射光検出経路73に配設された波長選別手段75は、集光レンズ751と、該集光レンズ751の下流側において集光レンズ751の焦点位置に配設されピンホール752aを備えたピンホールマスク752と、該ピンホールマスク752の下流側に配設されピンホール752aを通過した反射光を平行光に形成するコリメーションレンズ753とからなっている。このように構成された波長選別手段75は、チャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射された検査光が集光点で反射した波長の反射光がピンホールマスク752のピンホール752aを通過するようになっている。上記波長検出手段76は、回折格子761と集光レンズ762およびラインイメージセンサー763とからなっている。上記回折格子761は、コリメーションレンズ753によって平行光に形成された反射光を回折し、各波長に対応する回折信号を集光レンズ762を介してラインイメージセンサー763に送る。ラインイメージセンサー763は、回折格子761によって回折した反射光の各波長における光強度を検出し、検出信号を後述する制御手段に送る。
【0027】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図4に示す制御手段8を具備している。制御手段8はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)81と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)82と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)83と、入力インターフェース84および出力インターフェース85とを備えている。制御手段8の入力インターフェース84には、上記撮像手段6、ラインイメージセンサー763等からの検出信号が入力される。そして、制御手段8の出力インターフェース85からは、上記加工送り手段37、割り出し送り手段38、パルスレーザー光線発振手段51、スキャニングミラー53のスキャンモータ530、光軸変更手段54、加工深さ検出手段7の検査光源71等に制御信号を出力する。なお、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)83には、図5に示す検査光の波長(nm)と加工深さ(μm)との関係を表す制御マップが格納されている。
【0028】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
【0029】
図6の(a)および(b)には、被加工物としての半導体ウエーハの斜視図および要部拡大断面図が示されている。
図6の(a)および(b)に示す半導体ウエーハ10は、厚みが150μmのシリコン等の基板110の表面110aに絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された機能層120が形成されており、この機能層120に格子状に形成された複数の分割予定ライン121によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス122が形成されている。なお、図示の実施形態においては、機能層120を形成する絶縁膜は、SiO2 膜または、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)からなっており、厚みが10μmに設定されている。また、半導体ウエーハ10の分割予定ライン121にはデバイス122の機能をテストするためのテスト エレメント グループ(TEG)と呼ばれる銅(Cu)やアルミニウム(Al)からなるテスト用の金属膜123が部分的に複数配設されている。
【0030】
上述した半導体ウエーハ10を分割予定ラインに沿って加工するには、半導体ウエーハ10を環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着するウエーハ支持工程を実施する。即ち、図7に示すように環状のフレームFに装着されたポリオレフィン等の合成樹脂シートからなるダイシングテープTの表面に半導体ウエーハ10を構成する基板110の裏面110bを貼着する。従って、ダイシングテープTの表面に貼着された半導体ウエーハ10は、機能層120の表面120aが上側となる。
【0031】
上述したウエーハ支持工程を実施したならば、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に半導体ウエーハ10のダイシングテープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、ダイシングテープTを介して半導体ウエーハ10をチャックテーブル36上に吸引保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル36上にダイシングテープTを介して保持された半導体ウエーハ10は、機能層120の表面120aが上側となる。
【0032】
上述したようにチャックテーブル36上にダイシングテープTを介して半導体ウエーハ10を吸引保持したならば、制御手段8は加工送り手段37を作動して半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル36を撮像手段6の直下に位置付ける。このようにしてチャックテーブル36を撮像手段6の直下に位置付けたならば、制御手段8は撮像手段6を作動して半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段6および制御手段8は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されている分割予定ライン121と、分割予定ライン121に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段5を構成する集光器52との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ10に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びる分割予定ライン121に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0033】
上述したアライメント工程を実施したならば、制御手段8は加工送り手段37を作動して図8の(a)で示すようにチャックテーブル36をレーザー光線照射手段5の集光器52が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン121を集光器52の直下に位置付ける。このとき、図8の(a)で示すように半導体ウエーハ10は、分割予定ライン121の一端(図8の(a)において左端)より1mmだけ内側の位置が集光器52の直下に位置するように位置付ける。そして、制御手段8は、図示しない集光点位置調整手段を作動してパルスレーザー光線における800nmの波長の集光点が分割予定ライン121の表面位置となるように集光器52を位置付ける。
【0034】
次に、制御手段8は、パルスレーザー光線発振手段51を作動するとともにスキャンモータ530を作動してスキャニングミラー53を所定の回転速度で回転せしめる。この結果、レーザー光線照射手段5の集光器52から半導体ウエーハ10にはパルスレーザー光線がX軸方向に沿ってLB1からLBnの2mmの範囲で照射される(レーザー加工溝形成工程)。一方、制御手段8は加工深さ検出手段7を作動し、上記パルスレーザー光線LB1〜LBnの照射により加工されたレーザー加工溝の深さを検出している。加工深さ検出手段7のラインイメージセンサー763は、加工開始時においては800nmの波長の光強度が最も高い値を示しており、加工が進行するにしたがって光強度が最も高い値の波長が900nmに近づいていく。そして、加工するレーザー加工溝の深さを30μmに設定した場合には、図5に示す制御マップから制御基準となる波長は860nmに設定される。従って、ラインイメージセンサー763からの検出信号に基づいて光強度が最も高い値の波長が860nmになったとき、制御手段はレーザー加工溝の深さが30μmに達したと判断し、加工送り手段37を作動してチャックテーブル36を図8の(a)において矢印X1で示す方向に2mm移動する(送り工程)。
【0035】
上述したレーザー加工溝形成工程と送り工程とを繰り返し実施し、図8の(b)で示すように分割予定ライン121の他端(図8の(b)において右端)が集光器52の直下位置において上記レーザー加工溝形成工程を実施したならば、制御手段8は音響光学素子(AOD)からなる光軸変更手段54に所定周波数のRF(radio frequency)を印加しパルスレーザー光線LBの光軸をレーザー光線吸収手段55に向けることによりチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10へのパルスレーザー光線の照射を停止するとともに加工送り手段37の作動を停止してチャックテーブル36の移動を停止する。この結果、半導体ウエーハ10には図8の(c)に示すように機能層120の厚さより深い、即ち基板110に至る深さが30μmのレーザー加工溝130が形成され、上記金属膜123が除去されるとともに機能層120が分断される。そして、上述したレーザー加工溝形成工程および送り工程を半導体ウエーハ10に形成された全ての分割予定ライン121に沿って実施する。
【0036】
なお、上記レーザー加工溝形成工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
レーザー光線の波長 :355nm(YAGレーザー)
平均出力 :10W
繰り返し周波数 :10MHz
【0037】
以上のように、図示の実施形態におけるレーザー加工溝形成工程は、分割予定ライン121に沿ってパルスレーザー光線を照射しつつ加工深さ検出手段7によって加工されるレーザー加工溝の深さを検出し、レーザー加工溝が所定の厚みに達したら光軸変更手段54を作動してパルスレーザー光線LBの光軸をレーザー光線吸収手段55に向けることによりチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10へのパルスレーザー光線の照射を停止するので、分割予定ライン121上にテスト用の金属膜123が部分的に複数配設されている場合でも、パルスレーザー光線の出力を制御することなく均一な深さのレーザー加工溝を形成することができる。
【0038】
以上のように、分割予定ライン121に沿って形成されたレーザー加工溝130によって機能層120が分断された半導体ウエーハ10は、機能層120が分断された分割予定ライン121に沿って分割する分割工程に搬送される。
【符号の説明】
【0039】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
38:割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット
5:レーザー光線照射手段
51:パルスレーザー光線発振手段
52:集光器
521:fθレンズ
53:スキャニングミラー
6:撮像手段
7:加工深さ検出手段
71:検査光源
72:色収差レンズ
73:反射光検出経路
74:ビームスプリッター
75:波長選別手段
76:波長検出手段
8:制御手段
10:半導体ウエーハ
F:環状のフレーム
T:ダイシングテープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8