特許第6367061号(P6367061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367061化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367061
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/61 20060101AFI20180723BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180723BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   C07C211/61CSP
   H05B33/14 B
   C09K11/06 620
   C09K11/06 635
   C09K11/06 650
   C09K11/06 645
   C09K11/06 640
   C09K11/06 660
【請求項の数】6
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2014-188051(P2014-188051)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-60702(P2016-60702A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】羽山 友治
(72)【発明者】
【氏名】河村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】水木 由美子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕勝
(72)【発明者】
【氏名】羽毛田 匡
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 毅
(72)【発明者】
【氏名】森本 喬之
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 芳香環上に官能基をもつテトラベンゾフルオレン誘導体の合成とその蛍光特性,基礎有機化学討論会要旨集,2010年 9月 2日,Vol.21st,p.260
【文献】 p-ニトロフェニル基をもつテトラベンゾフルオレン誘導体の特異な蛍光特性,基礎有機化学討論会要旨集,2011年 9月 7日,Vol.22nd,p.601
【文献】 4-ピリジル基をもつテトラベンゾフルオレン誘導体の蛍光特性,日本化学会第92春季年会(2012)講演予稿集IV,2012年 3月 9日,V92,N4,1593
【文献】 パラ位に電子吸引性基をもつ3,14-ジアリールテトラベンゾフルオレン誘導体の特異な蛍光特性,日本化学会第94春季年会(2014)講演予稿集IV,2014年 3月12日,V94,N4,p.1192
【文献】 Chem. Asian J.,2013年,8,392-399
【文献】 Tetrahedron,2012年,68,1688-1694
【文献】 Chemical Physics Letters,2013年,590,87-91
【文献】 テトラベンゾフルオレン誘導体の蛍光特性と結晶構造,第21回基礎有機化学討論会(第40回構造有機化学討論会・第60回有機反応化学討論会)要旨集,2010年 9月 2日,V21,p.142-143
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 211/61
C09K 11/06
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(3−1)で表される、化合物。
【化1】

〔前記一般式(3−1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基を有するモノ置換、ジ置換、又はトリ置換のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜18のアリール基を有するモノ置換、ジ置換、又はトリ置換のアリールシリル基である
11〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20のヘテロアリール基、又はシアノ基である。
及びLは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜24のアリーレン基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数3〜18のヘテロアリーレン基である。及びLは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜20のヘテロアリール基である。
【請求項2】
、Lが、単結合、又は下記一般式(i)〜(iii)のいずれかで表される基である、請求項1に記載の化合物。
【化2】

〔式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜13のヘテロアリール基、又はシアノ基であり、Rを複数有する場合、該複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよい。aは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、bは、それぞれ独立に、0〜3の整数である。*及び**は、結合位置を示す。〕
【請求項3】
記「置換もしくは無置換」という記載における置換基が、炭素数1〜のアルキル基、環形成炭素数3〜のシクロアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、アミノ基、炭素数1〜のアルキル基及び環形成炭素数6〜18のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基、炭素数1〜のアルキル基を有するアルコキシ基、環形成原子数5〜13のヘテロアリール基、ハロゲン原子、並びにシアノ基からなる群より選ばれる、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物からなる、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項5】
陰極、陽極、及び該陰極と該陽極の間に一層以上の有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記一層以上の有機薄膜層が発光層を含み、前記一層以上の有機薄膜層の少なくとも1層が請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物を含む層である、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
陽極と陰極との間に発光層を含む有機薄膜層を備え、発光層に注入された正孔と電子との再結合によって生じる励起子(エキシトン)エネルギーから発光を得る有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と記載することもある)が知られている。
【0003】
有機EL素子は、自発光型素子としての利点を活かし、高発光効率、高画質、低消費電力さらには薄型のデザイン性に優れた発光素子として期待されている。発光層を、ホストにドーパントとして発光材料をドーピングしたホスト/ドーパント発光層にすることが知られている。
ホスト/ドーパント発光層では、ホストに注入された電荷から効率よく励起子を生成することができる。そして、生成された励起子のエネルギーをドーパントに移動させ、ドーパントから高効率の発光を得ることができる。
【0004】
近年では有機EL素子の性能向上を果たすべく、ホスト/ドーパントシステムに関してもさらなる研究が行われており、好適なホスト材料及びその他の有機EL素子用材料の探索が続いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2012−247497号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0181520号明細書
【特許文献3】韓国特許第10−2012−0116884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、発光効率が高い有機EL素子を実現する化合物を提供することである。また、他の目的は、当該化合物からなる有機EL素子用材料、当該化合物を用いた有機EL素子、及び当該有機EL素子を搭載した電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表されるテトラベンゾフルオレン骨格を主骨格とする特定構造の化合物が上記課題を解決し得ることを見出した。
下記一般式(1)においては、R17とR18の位置が近接していることから、立体障害性が高いため、化合物の平面性が低い構造となる。
【0008】
すなわち、本発明の一態様によれば、下記[1]〜[4]が提供される。
[1]下記一般式(1)で表される化合物。
【0009】
【化1】
【0010】
〔前記一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基を有するモノ置換、ジ置換、又はトリ置換のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアリール基を有するモノ置換、ジ置換、又はトリ置換のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリールオキシ基、アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基を有するモノ置換又はジ置換アルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基を有するモノ置換又はジ置換アリールアミノ基、ニトロ基、又はシアノ基であり、R1及びR2は、互いに結合して環を形成していてもよい。
11〜R24は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基である。
X1及びRX2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基であるが、RX1及びRX2の少なくとも一方は、脱離し、当該基と結合していた炭素原子が*と結合する。
nは1又は2である。
Lは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリーレン基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリーレン基である。nが2である場合、2つのLは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Raは、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のフルオロアルキル基、シアノ基、アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基を有するモノ置換又はジ置換アルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基を有するモノ置換又はジ置換アリールアミノ基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリール基を有するモノ置換又はジ置換ヘテロアリールアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜50のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基を有する置換アリールエチニル基、又は、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリール基を有する置換へテロアリールエチニル基である。〕
【0011】
[2]上記[1]に記載の化合物からなる、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
[3]陰極、陽極、及び該陰極と該陽極の間に一層以上の有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記一層以上の有機薄膜層が発光層を含み、前記一層以上の有機薄膜層の少なくとも1層が上記[1]に記載の化合物を含む層である、有機エレクトロルミネッセンス素子。
[4]上記[3]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した、電子機器。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発光効率が高い有機EL素子を実現する化合物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一態様に係る有機EL素子の概略構成を示す図である。
図2】実施例1で用いた化合物(1)の3次元構造式を示す図である。
図3】実施例1で用いた化合物(1)の3次元構造式を示す別の図である。
図4】比較例1で用いた化合物(BD1)の3次元構造式を示す図である。
図5】比較例1で用いた化合物(BD1)の3次元構造式を示す別の図である。
図6】参考例1で用いた化合物(X)の3次元構造式を示す図である。
図7】参考例1で用いた化合物(X)の3次元構造式を示す別の図である。
図8】参考例2で用いた化合物(Y)の3次元構造式を示す図である。
図9】参考例2で用いた化合物(Y)の3次元構造式を示す別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数XX〜YYのZZ基」という表現における「炭素数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表すものであり、置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。ここで、「YY」は「XX」よりも大きく、「XX」と「YY」はそれぞれ1以上の整数を意味する。
また、本明細書において、「置換もしくは無置換の原子数XX〜YYのZZ基」という表現における「原子数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表すものであり、置換されている場合の置換基の原子数は含めない。ここで、「YY」は「XX」よりも大きく、「XX」と「YY」はそれぞれ1以上の整数を意味する。
【0015】
本明細書において、環形成炭素数とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジニル基は環形成炭素数5であり、フラニル基は環形成炭素数4である。また、ベンゼン環やナフタレン環に置換基として例えばアルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、環形成炭素数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の炭素数は環形成炭素数の数に含めない。
【0016】
また、本明細書において、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば単環、縮合環、環集合)の化合物(例えば単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば環を構成する原子の結合手を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ピリジン環の環形成原子数は6であり、キナゾリン環の環形成原子数は10であり、フラン環の環形成原子数は5である。ピリジン環やキナゾリン環の炭素原子にそれぞれ結合している水素原子や置換基を構成する原子については、環形成原子数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の原子数は環形成原子数の数に含めない。
【0017】
また、本明細書において、「水素原子」とは、中性子数が異なる同位体、すなわち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)及び三重水素(tritium)を包含する。
本明細書中において、「ヘテロアリール基」及び「ヘテロアリーレン基」は、環形成原子として、少なくとも1つのヘテロ原子を含む基であり、該へテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子及びセレン原子から選ばれる1種以上であることが好ましく、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選ばれる1種以上であることがより好ましい。
【0018】
本明細書中において、「置換もしくは無置換のカルバゾリル基」は、下記のカルバゾリル基、
【化2】
及び上記の基に対して、さらに任意の置換基を有する置換カルバゾリル基を表す。
なお、当該置換カルバゾリル基は、任意の置換基同士が互いに結合して縮環してもよく、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子及びセレン原子等のヘテロ原子を含んでもよく、また、結合位置は1位〜9位のいずれであってもよい。このような置換カルバゾリル基の具体例として、例えば、下記に示す基が挙げられる。
【0019】
【化3】
【0020】
本明細書において、「置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基」及び「置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基」は、下記のジベンゾフラニル基及びジベンゾチオフェニル基、
【化4】
及び上記の基に対して、さらに任意の置換基を有する置換ジベンゾフラニル基及び置換ジベンゾチオフェニル基を表す。
なお、当該置換ジベンゾフラニル基及び置換ジベンゾチオフェニル基は、任意の置換基同士が互いに結合して縮環してもよく、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子及びセレン原子等のヘテロ原子を含んでもよく、また、結合位置は1位〜8位のいずれであってもよい。
このような置換ジベンゾフラニル基及び置換ジベンゾチオフェニル基の具体例として、例えば、下記に示す基が挙げられる。
【0021】
【化5】
[上記式中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Yは酸素原子、硫黄原子、NH、NRa(Raはアルキル基又はアリール基である。)、CH2、又は、CRb2(Rbはアルキル基又はアリール基である。)を表す。]
【0022】
また、「置換基」、又は「置換もしくは無置換」との記載における置換基としては、炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基;環形成炭素数3〜50(好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8、更に好ましくは5又は6)のシクロアルキル基;環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基;環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基を有する炭素数7〜51(好ましくは7〜30、より好ましくは7〜20)のアラルキル基;アミノ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基を有するアルコキシ基;環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基を有するアリールオキシ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基;環形成原子数5〜50(好ましくは5〜24、より好ましくは5〜13)のヘテロアリール基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のハロアルキル基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);シアノ基;ニトロ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するスルホニル基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基;アルキルスルホニルオキシ基;アリールスルホニルオキシ基;アルキルカルボニルオキシ基;アリールカルボニルオキシ基;ホウ素含有基;亜鉛含有基;スズ含有基;ケイ素含有基;マグネシウム含有基;リチウム含有基;ヒドロキシ基;アルキル置換又はアリール置換カルボニル基;カルボキシル基;ビニル基;(メタ)アクリロイル基;エポキシ基;並びにオキセタニル基からなる群より選ばれる基であることが好ましい。
これらの置換基は、さらに上述の任意の置換基により置換されていてもよい。また、これらの置換基は、複数の置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。
また、「置換もしくは無置換」との記載における「無置換」とは、これらの置換基で置換されておらず、水素原子が結合していることを意味する。
【0023】
上記置換基の中でも、より好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜50(好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8、更に好ましくは5又は6)のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50(好ましくは5〜24、より好ましくは5〜13)のヘテロアリール基、ハロゲン原子、シアノ基である。
【0024】
本明細書中、好ましいとする規定は任意に選択することができ、また、好ましいとする規定の組み合わせはより好ましいと言える。
【0025】
〔化合物〕
本発明の一態様において、下記一般式(1)で表される化合物が提供される。当該化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として有用である。
【0026】
【化6】
【0027】
<一般式(1)中のR1及びR2、R11〜R24、RX1及びRX2について>
前記一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基を有するモノ置換、ジ置換、又はトリ置換のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアリール基を有するモノ置換、ジ置換、又はトリ置換のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリールオキシ基、アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基を有するモノ置換又はジ置換アルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基を有するモノ置換又はジ置換アリールアミノ基、ニトロ基、又はシアノ基であり、R1及びR2は、互いに結合して環を形成していてもよい。
なお、これらの基が有してもよい置換基としては、上述のとおりである。
【0028】
1及びR2として選択し得るアルキル基の炭素数は、1〜50であり、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜8である。
該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、テトラコサニル基、テトラコンタニル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、及びオクタデシル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。前記各基は、異性体基が存在する場合には、異性体基を含む。
【0029】
1及びR2として選択し得るシクロアルキル基の炭素数は、3〜50であり、好ましくは3〜25、より好ましくは3〜18、さらに好ましくは5〜8である。
該シクロアルキル基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられ、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。前記各基は、異性体基が存在する場合には、異性体基を含む。
【0030】
1及びR2として選択し得るアリール基の環形成炭素数は、6〜50であり、好ましくは6〜18、より好ましくは6〜13、さらに好ましくは6〜12、特に好ましくは6〜10である。なお、該アリール基は、非縮合アリール基、縮合アリール基、及びこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
該アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クアテルフェニリル基、キンクフェニリル基、ナフチル基(1−ナフチル基、2−ナフチル基)、アセナフチレニル基、アントリル基、ベンゾアントリル基、アセアントリル基、フェナントリル基、ベンゾフェナントリル基、フェナレニル基、フルオレニル基(9,9−ジメチルフルオレニル基、9,9−ジフェニルフルオレニル基、9,9’−スピロビフルオレニル基を含む。)、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、ピセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾクリセニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、テトラセニル基、ペリレニル基、コロニル基、ジベンゾアントリル基、ナフチルフェニル基、s−インダニル基、as−インダニル基、トリフェニレニル基、ベンゾトリフェニレニル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。前記各基は、異性体基が存在する場合には、異性体基を含む。
【0031】
1及びR2として選択し得るヘテロアリール基の環形成原子数は、3〜50であり、好ましくは5〜20、より好ましくは5〜14、更に好ましくは5〜10である。
該ヘテロアリール基は、少なくとも1個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個の同一又は異なるヘテロ原子を含む。
該へテロアリール基としては、例えば、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ビビリジニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチオフェニル基、インドリジニル基、キノリジニル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、インダゾリル基、ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ビスカルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、アザトリフェニレニル基、ジアザトリフェニレニル基、キサンテニル基、アザカルバゾリル基、アザジベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基、ベンゾフラノベンゾチオフェニル基、ベンゾチエノベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラノナフチル基、ジベンゾチエノナフチル基、ジナフトチエノチオフェニル基、及びジナフト[2',3':2,3:2',3':6,7]カルバゾリル基が挙げられる。
【0032】
1及びR2として選択し得る置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基を有するモノ置換、ジ置換、又はトリ置換のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアリール基を有するモノ置換、ジ置換、又はトリ置換のアリールシリル基としては、R1及びR2で説明したアルキル基、アリール基で置換されたシリル基が挙げられ、例えば、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、モノアルキルジアリールシリル基、ジアルキルモノアリールシリル基が挙げられ、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、トリオクチルシリル基、トリイソブチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルイソプロイルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ジメチルブチルシリル基、ジメチルターシャリーブチルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、フェニルジメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジフェニルターシャリーブチル基、トリフェニルシリル基等が挙げられ、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基がさらに好ましい。
【0033】
1及びR2として選択し得る炭素数1〜50のアルコキシ基としては、−OR’で表される基であって、R’は、上述の炭素数1〜50のアルキル基を表す。
具体的な該アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0034】
1及びR2として選択し得る環形成炭素数6〜50のアリールオキシ基としては、−OR’’で表される基であって、R’’は、上述の炭素数6〜50のアリール基を表す。
具体的な該アリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、p−ターフェニル−4−イルオキシ基、p−トリルオキシ基等が挙げられる。
【0035】
1及びR2として選択し得る置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基を有するモノ置換又はジ置換アルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基を有するモノ置換又はジ置換アリールアミノ基としては、R1及びR2で説明したアルキル基、アリール基で置換されたアミノ基が挙げられ、例えば、フェニルアミノ基、トリルアミノ基、ナフチルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ナフチルフェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基等が挙げられる。
【0036】
前記一般式(1)において、R11〜R24は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、該置換基としては、上述したものが挙げられる。
11〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリール基、又はシアノ基であると好ましい。
前記一般式(1)において、RX1及びRX2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基であるが、RX1及びRX2の少なくとも一方は、脱離し、当該基と結合していた炭素原子が*と結合する。該置換基としては、上述したものが挙げられ、R1及びR2で説明した基が好ましく挙げられる。
【0037】
<一般式(1)中の−L−Raについて>
前記一般式(1)において、Lは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリーレン基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリーレン基である。nが2である場合、2つのLは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
なお、当該アリーレン及びヘテロアリーレン基が有してもよい置換基としては、上述のとおりである。
【0038】
本発明の一態様として、Lが表すアリーレン基の環形成炭素数は6〜50であり、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、さらに好ましくは6〜12、特に好ましくは6〜10である。
【0039】
本発明の一態様においては、Lが、単結合、又は下記一般式(i)〜(iii)のいずれかで表される基であると好ましい。
【化7】
【0040】
上記式(i)〜(iii)中、RXは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、RXを複数有する場合、該複数のRXは、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRXから選ばれる2つが、互いに結合して、環構造を形成してもよい。当該置換基としては、上述のものが挙げられる。なお、RXは、上記式(i)〜(iii)中のそれぞれのベンゼン環の置換基を表し、各ベンゼン環の炭素原子と結合する。
aは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0〜1の整数、更に好ましくは0である。
bは、それぞれ独立に、0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0〜1の整数、更に好ましくは0である。
*及び**は、結合位置を示す。つまり、*及び**の一方が、前記一般式(1)中のRX1及び/又はRX2と結合していた炭素原子との結合位置を示し、他方がRaとの結合位置を示す。
【0041】
なお、上記式(i)又は(ii)中の複数のRXから選ばれる2つが、互いに結合して環構造を形成する場合の基として、下記式で表される基が挙げられる。これらの基も、上記式(i)又は(ii)で表される基に含まれる。
【0042】
【化8】
(上記式中、*及び**は結合位置を示す。また、上記式中の結合位置以外の炭素原子は、上述の置換基と結合していてもよい。)
【0043】
Lが表すアリーレン基の具体例としては、下記式で表される基が挙げられる。
【化9】
(上記式中、*及び**は結合位置を示す。また、上記式中の結合位置以外の炭素原子は、上述の置換基と結合していてもよい。)
【0044】
また、前記一般式(1)において、Lが表すヘテロアリーレン基の環形成原子数は3〜50であり、好ましくは3〜18、より好ましくは3〜13、特に好ましくは3〜10である。
このようなヘテロアリーレン基としては、例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾピリジン、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、インドール、イソインドール及びカルバゾール等の含窒素複素環化合物の残基;フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、オキサゾール、オキサジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾナフトフラン及びジナフトフラン等の含酸素複素環化合物の残基;チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアゾール、チアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾナフトチオフェン及びジナフトチオフェン等の含硫黄複素環化合物の残基などが挙げられる。
【0045】
前記一般式(1)において、Raは、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のフルオロアルキル基、シアノ基、アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基を有するモノ置換又はジ置換アルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基を有するモノ置換又はジ置換アリールアミノ基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリール基を有するモノ置換又はジ置換ヘテロアリールアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜50のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基を有する置換アリールエチニル基、又は、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリール基を有する置換へテロアリールエチニル基である。
【0046】
Raとして選択し得るフルオロアルキル基の炭素数は、1〜50であり、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜8である。
該フルオロアルキル基としては、前記R1及びR2で説明したアルキル基の例の水素原子をフッ素原子で置換された基が挙げられ、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、等が挙げられる。
Raとして選択し得る置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基を有するモノ置換又はジ置換アルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基を有するモノ置換又はジ置換アリールアミノ基としては、前記R1及びR2で説明したものと同様の例が挙げられる。
Raとして選択し得る置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリール基を有するモノ置換又はジ置換ヘテロアリールアミノ基としては、前記R1及びR2で説明したヘテロアリール基で置換されたアミノ基が挙げられる。
【0047】
Raとして選択し得るアリール基の環形成炭素数は、10〜50であり、好ましくは10〜18、より好ましくは10〜13、さらに好ましくは10〜12である。なお、該アリール基は、非縮合アリール基、縮合アリール基、及びこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
該アリール基としては、例えば、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クアテルフェニリル基、キンクフェニリル基、ナフチル基(1−ナフチル基、2−ナフチル基)、アセナフチレニル基、アントリル基、ベンゾアントリル基、アセアントリル基、フェナントリル基、ベンゾフェナントリル基、フェナレニル基、フルオレニル基(9,9−ジメチルフルオレニル基、9,9−ジフェニルフルオレニル基、9,9’−スピロビフルオレニル基を含む。)、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、ピセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾクリセニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、テトラセニル基、ペリレニル基、コロニル基、ジベンゾアントリル基、ナフチルフェニル基、トリフェニレニル基、ベンゾトリフェニレニル基等が挙げられる。前記各基は、異性体基が存在する場合には、異性体基を含む。
【0048】
Raとして選択し得るヘテロアリール基の環形成原子数は、3〜50であり、好ましくは5〜20、より好ましくは5〜14、更に好ましくは5〜10である。
該ヘテロアリール基は、少なくとも1個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個の同一又は異なるヘテロ原子を含む。
該へテロアリール基としては、前記R1及びR2で説明したヘテロアリール基と同様の例が挙げられる。
Raとして選択し得る置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基を有する置換アリールエチニル基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリール基を有する置換へテロアリールエチニル基としては、前記R1及びR2で説明したアリール基、ヘテロアリール基で置換されたエチニル基が挙げられ、例えば、フェニルエチニル基、ナフチルエチニル基、ビリジルエチニル基等が挙げられる。
【0049】
(本発明の一態様の化合物)
前記一般式(1)で表される一態様の化合物は、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0050】
【化10】
【0051】
前記一般式(2)中、R1、R2、R11〜R24、L、及びRaは、前記一般式(1)に関する記載と同じである。RX1は、水素原子又は置換基である。当該置換基としては、上述のものが挙げられる。
【0052】
また、一般式(2)で表される一態様の化合物は、下記一般式(2−1)で表される化合物が好ましい。
【0053】
【化11】
【0054】
前記一般式(2−1)中、R1、R2、L、及びRaは、前記一般式(1)に関する記載と同じである。
【0055】
前記一般式(1)で表される一態様の化合物は、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0056】
【化12】
【0057】
前記一般式(3)中、R1、R2、及びR11〜R24は、前記一般式(1)に関する記載と同じである。L1及びL2は、前記一般式(1)中のLと同じ規定であり、Ra1及びRa2は、前記一般式(1)中のRaと同じ規定である。
また、前記一般式(3)において、R1とR2、R11とR24、R12とR23、R13とR22、R14とR21、R15とR20、R16とR19、R17とR18、L1とL2、並びに、Ra1とRa2が、互いに同一の基であると好ましい。すなわち、対称性を有する構造であると好ましい。
前記の対称性を有する構造の化合物は、合成や反応後の精製が容易である。そのため、高純度な化合物を得ることができ、結果として素子性能の向上が期待できると推測される。
【0058】
また、一般式(3)で表される一態様の化合物は、下記一般式(3−1)〜(3−5)で表される化合物が好ましい。
【0059】
【化13】
前記一般式(3−1)中、R1、R2、及びR11〜R24は、前記一般式(1)に関する記載と同じである。L1及びL2は、前記一般式(3)に関する記載と同じである。Ar1〜Ar4は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数3〜50のヘテロアリール基である。
Ar1〜Ar4として選択し得るアリール基、ヘテロアリール基としては、前記一般式(1)のR1及びR2で説明したアリール基、ヘテロアリール基と同様の例が挙げられる。
【0060】
【化14】
【0061】
前記一般式(3−2)中、R1、R2、及びR11〜R24は、前記一般式(1)に関する記載と同じである。L1及びL2は、前記一般式(3)に関する記載と同じである。ArX1及びArX2は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜50のアリール基である。
ArX1及びArX2として選択し得るアリール基としては、前記一般式(1)のRaで説明したアリール基と同様の例が挙げられる。
【0062】
【化15】
【0063】
前記一般式(3−3)中、R1、R2、及びR11〜R24は、前記一般式(1)に関する記載と同じである。L1及びL2は、前記一般式(3)に関する記載と同じである。HAr1及びHAr2は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜50のヘテロアリール基である。
HAr1及びHAr2として選択し得るヘテロアリール基としては、前記一般式(1)のR1及びR2で説明したヘテロアリール基と同様の例が挙げられる。
【0064】
【化16】
【0065】
前記一般式(3−4)中、R1、R2、及びR11〜R24は、前記一般式(1)に関する記載と同じである。L1及びL2は、前記一般式(3)に関する記載と同じである。ArX3は、置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜50のアリール基であり、HAr3は、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜50のヘテロアリール基である。
ArX3として選択し得るアリール基としては、前記一般式(1)のRaで説明したアリール基と同様の例が挙げられる。
HAr3として選択し得るヘテロアリール基としては、前記一般式(1)のR1及びR2で説明したヘテロアリール基と同様の例が挙げられる。
【0066】
【化17】
前記一般式(3−5)中、R1及びR2は、前記一般式(1)に関する記載と同じである。L1、L2、Ra1、及びRa2は、前記一般式(3)に関する記載と同じ規定である。
【0067】
以下に本発明の一態様の化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0068】
【化18】
【0069】
【化19】
【0070】
【化20】
【0071】
【化21】
【0072】
【化22】
【0073】
【化23】
【0074】
【化24】
【0075】
【化25】
【0076】
【化26】
【0077】
【化27】
【0078】
【化28】
【0079】
【化29】
【0080】
【化30】
【0081】
【化31】
【0082】
【化32】
【0083】
【化33】
【0084】
【化34】
【0085】
【化35】
【0086】
【化36】
【0087】
【化37】
【0088】
【化38】
【0089】
【化39】
【0090】
【化40】
【0091】
〔有機EL素子用材料〕
本発明の一態様の有機EL素子用材料は、上述の前記一般式(1)で表される化合物からなるものであり、前記一般式(2)、(2−1)、(3)及び(3−1)〜(3−4)から選ばれる化合物からなるものであることが好ましい。
本発明の一態様の有機EL素子用材料は、有機EL素子における材料として有用であり、例えば、有機EL素子の陽極と陰極との間に配置された一層以上の有機薄膜層の材料として有用である。
【0092】
〔有機EL素子〕
次に、本発明の一態様の有機EL素子について説明する。
本発明の一態様の有機EL素子は、陽極、陰極、及び該陰極と該陽極の間に一層以上の有機薄膜層を有する。この一層以上の有機薄膜層は発光層を含み、また、この一層以上の有機薄膜層の少なくとも1層が前記一般式(1)で表される化合物を含む層である。
前記一般式(1)で表される化合物が含まれる有機薄膜層の例としては、陽極と発光層との間に設けられる陽極側有機薄膜層(正孔輸送層、正孔注入層等)、発光層、陰極と発光層との間に設けられる陰極側有機薄膜層(電子輸送層、電子注入層等)、スペース層、障壁層等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記一般式(1)で表される化合物は、上記いずれの層に含まれていてもよく、例えば、蛍光発光ユニットの発光層におけるホスト材料やドーパント材料、燐光発光ユニットの発光層におけるホスト材料、発光ユニットの正孔輸送層材料、電子輸送層材料等として用いることができる。
【0093】
本発明の一態様において、前記一般式(1)で表される化合物の有機薄膜層(好ましくは発光層)中の含有量は、当該有機薄膜層を構成する全成分の全モル数(100モル%)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上である。
【0094】
本発明の一態様において、有機EL素子は、蛍光又は燐光発光型の単色発光素子であっても、蛍光/燐光ハイブリッド型の白色発光素子であってもよいし、単独の発光ユニットを有するシンプル型であっても、複数の発光ユニットを有するタンデム型であってもよく、中でも、燐光発光型であることが好ましい。ここで、「発光ユニット」とは、一層以上の有機層を含み、そのうちの一層が発光層であり、注入された正孔と電子が再結合することにより発光することができる最小単位をいう。
【0095】
従って、シンプル型有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の素子構成を挙げることができる。
(1)陽極/発光ユニット/陰極
また、上記発光ユニットは、燐光発光層や蛍光発光層を複数有する積層型であってもよく、その場合、各発光層の間に、燐光発光層で生成された励起子が蛍光発光層に拡散することを防ぐ目的で、スペース層を有していてもよい。発光ユニットの代表的な層構成を以下に示す。
(a)正孔輸送層/発光層(/電子輸送層)
(b)正孔輸送層/第一燐光発光層/第二燐光発光層(/電子輸送層)
(c)正孔輸送層/燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(d)正孔輸送層/第一燐光発光層/第二燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(e)正孔輸送層/第一燐光発光層/スペース層/第二燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(f)正孔輸送層/燐光発光層/スペース層/第一蛍光発光層/第二蛍光発光層(/電子輸送層)
(g)正孔輸送層/電子障壁層/発光層(/電子輸送層)
(h)正孔輸送層/発光層/正孔障壁層(/電子輸送層)
(i)正孔輸送層/蛍光発光層/トリプレット障壁層(/電子輸送層)
【0096】
上記各燐光又は蛍光発光層は、それぞれ互いに異なる発光色を示すものとすることができる。具体的には、上記積層発光ユニット(d)において、正孔輸送層/第一燐光発光層(赤色発光)/第二燐光発光層(緑色発光)/スペース層/蛍光発光層(青色発光)/電子輸送層といった層構成等が挙げられる。
なお、各発光層と正孔輸送層あるいはスペース層との間には、適宜、電子障壁層を設けてもよい。また、各発光層と電子輸送層との間には、適宜、正孔障壁層を設けてもよい。電子障壁層や正孔障壁層を設けることで、電子又は正孔を発光層内に閉じ込めて、発光層における電荷の再結合確率を高め、発光効率を向上させることができる。
【0097】
タンデム型有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の素子構成を挙げることができる。
(2)陽極/第一発光ユニット/中間層/第二発光ユニット/陰極
ここで、上記第一発光ユニット及び第二発光ユニットとしては、例えば、それぞれ独立に上述の発光ユニットと同様のものを選択することができる。
上記中間層は、一般的に、中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、第一発光ユニットに電子を、第二発光ユニットに正孔を供給する、公知の材料構成を用いることができる。
【0098】
図1に、前記有機EL素子の一例の概略構成を示す。有機EL素子1は、基板2、陽極3、陰極4、及び該陽極3と陰極4との間に配置された発光ユニット10とを有する。発光ユニット10は、燐光ホスト材料と燐光ドーパント(燐光発光材料)を含む少なくとも1つの燐光発光層を含む発光層5を有する。発光層5と陽極3との間に正孔注入・輸送層(陽極側有機薄膜層)6等、発光層5と陰極4との間に電子注入・輸送層(陰極側有機薄膜層)7等を形成してもよい。また、発光層5の陽極3側に電子障壁層(図示せず)を、発光層5の陰極4側に正孔障壁層(図示せず)を、それぞれ設けてもよい。これにより、電子や正孔を発光層5に閉じ込めて、発光層5における励起子の生成確率をさらに高めることができる。
【0099】
なお、本発明において、蛍光ドーパント(蛍光発光材料)と組み合わされたホストを蛍光ホストと称し、燐光ドーパントと組み合わされたホストを燐光ホストと称する。蛍光ホストと燐光ホストは分子構造のみにより区分されるものではない。すなわち、燐光ホストとは、燐光ドーパントを含有する燐光発光層を形成する材料を意味し、蛍光発光層を形成する材料として利用できないことを意味しているわけではない。蛍光ホストについても同様である。
【0100】
(基板)
基板は、発光素子の支持体として用いられる。基板としては、例えば、ガラス、石英、プラスチックなどを用いることができる。また、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルからなるプラスチック基板等が挙げられる。
【0101】
(陽極)
基板上に形成される陽極には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、グラフェン等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0102】
(陰極)
陰極には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
【0103】
(発光層のゲスト材料)
発光層は、発光性の高い物質を含む層であり、種々の材料を用いることができる。
発光層のゲスト材料としては、例えば、発光性の高い物質としては、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。蛍光性化合物は一重項励起状態から発光可能な化合物であり、燐光性化合物は三重項励起状態から発光可能な化合物である。
【0104】
発光層に用いることができる青色系の蛍光発光材料として、ピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フルオレン誘導体、ジアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体等が使用できる。具体的には、N,N'−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N'−ジフェニルスチルベン−4,4'−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4'−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4'−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。
発光層に用いることができる緑色系の蛍光発光材料として、芳香族アミン誘導体等を使用できる。具体的には、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1'−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N',N'−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1'−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N',N'−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1'−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。
発光層に用いることができる赤色系の蛍光発光材料として、テトラセン誘導体、ジアミン誘導体等が使用できる。具体的には、N,N,N',N'−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N',N'−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0105】
発光層に用いることができる青色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体等の金属錯体、好ましくはイリジウム、オスミウム又は白金金属のオルトメタル化錯体が使用される。具体的には、ビス[2−(4',6'−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2']イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4',6'−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2']イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3',5'ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2']イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2−(4',6'−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2']イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)などが挙げられる。
発光層に用いることができる緑色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体等が使用される。トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2')イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2')イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)2(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)2(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)2(acac))などが挙げられる。
発光層に用いることができる赤色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体、白金錯体、テルビウム錯体、ユーロピウム錯体等の金属錯体が使用される。具体的には、ビス[2−(2'−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3']イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)2(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2')イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。
また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)3(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0106】
(発光層のホスト材料)
発光層としては、上述した発光性の高い物質(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。
発光層のホスト材料は、発光性の高い物質を分散させるための物質であれば各種のものを用いることができ、発光性の高い物質よりも最低空分子軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占分子軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。
発光性の高い物質を分散させるための物質(ホスト材料)としては、1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、若しくは亜鉛錯体等の金属錯体、2)オキサジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、若しくはフェナントロリン誘導体等の複素環化合物、3)カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、若しくはクリセン誘導体等の縮合芳香族化合物、3)トリアリールアミン誘導体、若しくは縮合多環芳香族アミン誘導体等の芳香族アミン化合物を使用できる。より具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2',2''−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物や、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9'−ビアントリル(略称:BANT)、9,9'−(スチルベン−3,3'−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9'−(スチルベン−4,4'−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3',3''−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセンなどの縮合芳香族化合物、N,N−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPBA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、NPB(またはα−NPD)、TPD、DFLDPBi、BSPBなどの芳香族アミン化合物などを用いることができる。また、発光性の高い物質(ゲスト材料)を分散させるための物質(ホスト材料)は複数種用いることができる。
【0107】
(電子輸送層)
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層には、1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体等の金属錯体、2)イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、アジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等の複素芳香族化合物、3)高分子化合物を使用することができる。
【0108】
(電子注入層)
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層には、リチウム(Li)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。
【0109】
(正孔注入層)
正孔注入層は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物、芳香族アミン化合物、又は高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)等も使用できる。
【0110】
(正孔輸送層)
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送層には、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体等を使用する事ができる。ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0111】
本発明の一態様において、有機EL素子の各層は従来公知の真空蒸着法、スピンコーティング法等により形成することができる。例えば、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)、あるいは、層を形成する化合物の溶液を用いた、ディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法による公知の方法で形成することができる。
【0112】
各有機層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い駆動電圧が必要となり効率が悪くなる。そのため、各有機層の膜圧は、通常5nm〜10μm、好ましくは10nm〜1μmである。
【0113】
〔電子機器〕
本発明の一態様の電子機器は、上述の本発明の一態様の有機EL素子を搭載したものである。
このような電子機器としては、例えば、有機ELパネルモジュール等の表示部品、テレビ、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の表示装置、及び、照明、車両用灯具の発光装置等が挙げられる。
【実施例】
【0114】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例の記載内容になんら制限されるものではない。
なお、以下の合成反応を参照し、目的物に合わせた公知の代替反応や原料を用いることによって、本願の特許請求の範囲で規定の化合物を合成することが可能である。
【0115】
合成例1
[1]中間体(A)の合成
中間体(A)の合成スキームを以下に示す。
【0116】
【化41】
【0117】
[1−1]中間体(A1)の合成
スターラーバー、ジムロート、窒素風船付き三方コック、滴下ロートを備えた100mLの二口フラスコにマグネシウムリボン(1.0g,41.7mmol)、ヨウ素を入れ窒素置換した。次にテトラヒドロフラン[THF](20mL)に溶解させた9−ブロモフェナントレン(10.7g,41.7mmol)を滴下ロートに入れた。マグネシウムリボンが浸る程度(溶液の5分の1程度)の溶液を滴下ロートから二口フラスコへ流し、反応が始まるまで待った(色と熱で判断する)。反応が始まったら激しく沸騰しないように溶液を滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。その後、ギ酸エチル(1.5g,20.8mmol)を加えて室温で2時間撹拌した。反応終了後、2M塩酸で処理した(マグネシウムが無くなるまで)。クロロホルムで抽出、チオ硫酸ナトリウム水溶液、水、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、ジエチルエーテルで洗浄、ろ過することによって白色固体の中間体(A1)(4.7g,12.3mmol)(収率59%)を得た。
【0118】
[1−2]中間体(A2)の合成
スターラーバー、窒素風船付き三方コック、ラバーセプタムを備えた50mLの二口フラスコに中間体(A1)(4.73g,12.3mmol)を入れ窒素置換した。ジクロロメタン(20mL)を加え、トリフルオロ酢酸[TFA](4mL)を滴下し、室温で20分間攪拌した。反応終了後、ジクロロメタンを用いてろ過することにより黄色固体の中間体(A2)(3.9g,10.6mmol)(収率86%)を得た。
【0119】
[1−3]中間体(A3)の合成
スターラーバー、窒素風船付き三方コック、ラバーセプタムを備えた50mLの二口フラスコに中間体(A2)(1.0g,2.8mmol)を入れ窒素置換した。そこに、THF(60mL)とEtOH−KOH(1.5mL)溶液を加え、30分間攪拌した。反応終了後、塩化アンモニウム水溶液で処理し、固体が析出する。ジエチルエーテルを用いてろ過することにより、褐色固体の中間体(A3)(0.8g,2.3mmol)(収率82%)を得た。
【0120】
[1−4]中間体(A4)の合成
スターラーバー、窒素風船付き三方コック、ラバーセプタムを備えた50mLの二口フラスコに中間体(A3)(0.67g,2.0 mmol)、KOH(0.4g)、KI(0.1g)を入れ窒素置換した。ジメチルスルフォキシド[DMSO](10mL)、THF(10mL)、CH3I(0.71g,5mmol)を加え終夜撹拌を行った。2M−HCl水溶液で処理し、クロロホルムで抽出、Na223水溶液、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで異性体の混合物を得た。この溶液を濃縮し、ジクロロメタンで飽和溶液をつくり、エタノールを加えることで溶出させることで、淡黄色固体として中間体(A4)(0.46g,1.17mmol)(収率58%)を得た。
【0121】
[1−5]中間体(A)の合成
50mLのナス型フラスコに撹拌子、中間体(A4)(100mg,0.25mmol)、N−ブロモスクシンイミド[NBS](226mg,1.25mmol)、ジメチルホルムアミド[DMF](10mL)を入れ、終夜撹拌した。クロロホルムで抽出を行い、分離した有機層を水および飽和食塩水で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。エバポレーターで濃縮を行い、30gのカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:トルエン(9:1))で精製し、褐色固体の中間体(A)(85.8mg,0.155mmol)(収率62%)を得た。本化合物は、以下の分析結果から同定された。
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ/ppm 2.05(s,6H,−CH3), 7.65(m,2H,6or7,10or11−H),7.75(m,2H,6or7−H, 10or11−H),7.86(dd,J=8.8,2.0Hz,2H,2,15−H),8.33(d,J=8.8Hz,2H,1,16−H),8.61(d,J=8.2Hz,2H, 8,9−H),8.76(d,J=8.3Hz,2H,5,12−H),9.03(d,J= 1.9Hz,2H,4,13−H);13C−NMR(125.8MHz,CDCl3)δ/ppm149.43,134.00,132.95,130.26,129.70,128.21,127.77,126.81,126.38,126.28,125.90,125.69,123.59,120.16,50.76,25.97;IR(KBr)νcm-1 3086w,2976w,2934w,1493s,1425m,1009w,912w,812m,758s,729m;MS(EI)m/z(rel.intensity)554 ([M(81Br81Br)]+,49),552([M(79Br81Br)]+,100),550([M(79Br79Br)]+,51);Elemental analysis(%)calcd for C3120Br2:C67.41,H 3.65;found:C67.54,H3.99
【0122】
[2]化合物(1)の合成
化合物(1)の合成スキームを以下に示す。
【0123】
【化42】
【0124】
アルゴン雰囲気下、中間体(A)(496mg,0.898mmol)、N−フェニルアニリン(319mg,1.89mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(33mg,0.036mmol)、tert−ブチルホスフィンのテトラフルオロホウ酸塩(42mg,0.144 mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(242mg,2.51mmol)にトルエン(10mL)を加え、還流温度で6時間撹拌した。反応終了後、混合物を減圧濃縮し、メタノールで洗浄した後、固体をろ別した。混合物をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルのショートカラムクロマトグラフィーに通した後、減圧濃縮した。その後、ヘキサン/ジクロロメタンの混合溶媒を用いてシリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製、続いてジクロロメタン/1,2−ジメトキシエタンから再結晶操作を行い、化合物(1)(320mg,0.439mmol)(収率49%)を得た。本化合物は、質量分析の結果、m/e=728.9であり、上記化合物(1)(Exact mass:728.32)であると同定した。
上記の合成反応を参照し、必要に応じて公知の反応や原料を利用することによって、特許請求の範囲である一般式(1)で表されるあらゆる化合物を合成することが可能である。
【0125】
実施例1[有機EL素子の製造例]
以下に、有機EL素子の製造に用いた化合物を示す。
【0126】
【化43】
【0127】
実施例1
25mm×25mm×厚さ1.1mmのITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマテック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行った後、UVオゾン洗浄を5分間行った。
洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして上記化合物(HI−1)を蒸着して膜厚60nmのHI−1膜を成膜し、正孔注入層を形成した。次に、この正孔注入層上に、正孔輸送材料として上記化合物(HT−1)を蒸着して膜厚20nmのHT−1膜を成膜し、正孔輸送層を形成した。こうして、正孔輸送領域を形成した。
さらに、このHT−1膜上に膜厚40nmで、ホスト材料として上記化合物(BH−1)と、ドーパント材料として前記化合物(1)とを19:1の質量比で共蒸着により成膜し、発光層とした。
次に、上記化合物(ET−1)を膜厚20nmで蒸着し、電子輸送層とした。その上に、弗化リチウムを膜厚1nmで蒸着し、次いでアルミニウムを膜厚80nmで蒸着した。このアルミニウム/弗化リチウムは陰極として働く。このようにして有機EL素子を作製した。
【0128】
[有機EL素子の評価]
作製した有機EL素子について、下記方法に従って測定を行い、性能を評価した。結果を表1に示す。
(1)外部量子効率(EQE)
電流密度が10mA/cm2となるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計「CS−1000」(コニカミノルタ株式会社製)で計測した。得られた上記分光放射輝度スペクトルから、ランバシアン放射を行なったと仮定し外部量子効率(単位:%)を算出した。
(2)発光ピーク波長(λp
上記の分光放射輝度スペクトルからλpを読み取った。
【0129】
比較例1,2
実施例1において、化合物(1)の代わりに下記構造の化合物(BD1)[比較例1],化合物(BD2)[比較例2]を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0130】
【化44】
【0131】
【表1】
【0132】
表1より、蛍光発光性の有機EL素子において、ドーパント材料として化合物(1)を用いると、有機EL素子の高効率での動作を実現できた。これは、テトラベンゾフルオレン骨格の平面が歪んでいるため、隣接分子との相互作用が弱くなることが原因の一つと推測される。
【0133】
次に、上記化合物(1)と化合物(BD1)の分子軌道計算で最適化された3次元構造を、それぞれ図1〜2、図3〜4に示す。また、下記化合物(X)、(Y)の3次元構造を、それぞれ、参考例1、2として、図5〜6、図7〜8に示す。
図1は、中心のテトラベンゾフルオレンの骨格に対し平行方向から見た図であり、図2は垂直方向から見た図である。同様に、図3、5,7は、中心骨格に対し平行方向から見た図であり、図4、6、8は垂直方向から見た図である。
計算手法は密度汎関数法(Density Functional Theory)で、B3LYP/6−31G*レベルでの量子科学計算を適用した。
【0134】
【化45】
【0135】
図1〜2と、図3〜8の構造式の比較より、化合物(1)においては、上記一般式(1)のR17とR18の示す水素原子の位置が近接していることから、化合物(BD1)、(X)、(Y)に比べテトラベンゾフルオレン骨格の平面が歪んでいることが確認できる。
【符号の説明】
【0136】
1 有機EL素子
2 基板
3 陽極
4 陰極
5 発光層
6 陽極側有機薄膜層
7 陰極側有機薄膜層
10 発光ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9