特許第6367117号(P6367117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367117芳香族アミン誘導体およびこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367117
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】芳香族アミン誘導体およびこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/91 20060101AFI20180723BHJP
   C07D 333/76 20060101ALI20180723BHJP
   C07D 409/12 20060101ALI20180723BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   C07D307/91CSP
   C07D333/76
   C07D409/12
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
【請求項の数】7
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2014-533087(P2014-533087)
(86)(22)【出願日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2013073183
(87)【国際公開番号】WO2014034793
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2016年1月12日
【審判番号】不服2017-14913(P2017-14913/J1)
【審判請求日】2017年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-190598(P2012-190598)
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】加藤 朋希
(72)【発明者】
【氏名】佐土 貴康
(72)【発明者】
【氏名】藤山 高広
【合議体】
【審判長】 佐藤 健史
【審判官】 冨永 保
【審判官】 守安 智
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/091428(WO,A2)
【文献】 国際公開第2012/039534(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/061805(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D307/91,C07D333/76,C07D409/12,C09K11/06,H01L51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される芳香族アミン誘導体。
【化1】

(式中、HArは、下記式(2)〜(5)から選ばれる基を表す。
【化2】
(式(2)〜(5)において、nは、0〜4の整数であり、Rはそれぞれ独立して置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の環原子数3〜50の複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50のアリールオキシ基、又はシアノ基を表し、Rが複数存在する場合、該複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
〜Lは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して単結合、下記式(6)で表される基、又は式(7)で表される基を表す。
【化3】

Arは、下記式(8)〜(11)から選ばれる基を表す。ただし、Arはカルバゾール骨格及び置換もしくは無置換のアミノ基を含まない。
【化4】

(式(8)〜(11)において、nは、0〜4の整数であり、Rはそれぞれ独立して置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の環原子数3〜50の複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50のアリールオキシ基、又はシアノ基を表し、Rが複数存在する場合、該複数のRは同一でも異なっていてもよい。))
【請求項2】
下記式(12)で表される請求項1に記載の芳香族アミン誘導体。
【化5】

(式中、HAr、Ar、L、及びLは、それぞれ前記式(1)において定義したとおり。)
【請求項3】
が、単結合、又は下記式(13)又は式(14)で表される基である請求項1又は2に記載の芳香族アミン誘導体。
【化6】
【請求項4】
が、単結合である請求項1〜3のいずれか1項に記載の芳香族アミン誘導体。
【請求項5】
が、下記式(6)で表される請求項1〜4のいずれか1項に記載の芳香族アミン誘導体。
【化6】
【請求項6】
陽極、陰極、及び該陽極と陰極の間に1層以上の有機薄膜層を有し、該1層以上の有機薄膜層が発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該有機薄膜層の少なくとも1層が請求項1〜のいずれか1項に記載の芳香族アミン誘導体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記有機薄膜層が正孔注入層または正孔輸送層を有し、該正孔注入層または正孔輸送層が前記芳香族アミン誘導体を含有する請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族アミン誘導体およびこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。例えば、トリフェニレン骨格及びジベンゾフラン骨格とジベンゾチオフェン骨格の一方又は双方を有する芳香族アミン誘導体およびこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は陽極、陰極、及び陽極と陰極に挟まれた1層以上の有機薄膜層から構成されている。両電極間に電圧が印加されると、陰極側から電子、陽極側から正孔が発光領域に注入され、注入された電子と正孔は発光領域において再結合して励起状態を生成し、励起状態が基底状態に戻る際に光を放出する。従って、電子又は正孔を効率よく発光領域に輸送し、電子と正孔との再結合を容易にする化合物の開発は高効率有機EL素子を得る上で重要である。
【0003】
通常、有機EL素子を高温環境下で駆動又は保管すると、発光色の変化、発光効率の低下、駆動電圧の上昇、発光寿命の短時間化等の問題が生じる。この様な問題を防ぐために、正孔輸送材料として、特許文献1はN−カルバゾリル基が9,9−ジフェニルフルオレン骨格に直接結合した構造を有する芳香族アミン誘導体、特許文献2は3−カルバゾリル基が9,9−ジメチルフルオレン骨格に直接結合した構造を有する芳香族アミン誘導体、特許文献3はN−カルバゾリルフェニル基が窒素原子を介して9,9−ジフェニルフルオレン骨格に結合した構造を有する芳香族アミン誘導体、特許文献4は3−カルバゾリル基が窒素原子を介して9,9−ジフェニルフルオレン骨格に結合した構造の芳香族アミン誘導体を開示している。特許文献5には、フルオレン骨格、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格から選ばれる骨格を有する芳香族アミン誘導体が記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1〜5に開示された芳香族アミン誘導体は、駆動電圧の低下、低電圧駆動時の効率及び長寿命化に関して改善が十分であるとはいえず、さらなる改善が求められていた。
【0005】
特許文献6はトリフェニレン骨格とジベンゾフラン骨格(又はジベンゾチオフェン骨格)を有する芳香族アミン化合物を記載している。このような芳香族アミン化合物の例示化合物の大半は、カルバゾール骨格又は末端ジアリールアミノ基を有することが必須である。特許文献6はさらに下記化合物を記載している。
【0006】
【化1】
【0007】
上記化合物は1−ジベンゾチオフェニル基又は1−ジベンゾフラニル基を有する。これらの基は効率、寿命の改善効果が低いので、1−ジベンゾチオフェニル基又は1−ジベンゾフラニル基を有する上記アミン化合物は効率及び寿命が不十分である。
【0008】
従って、低電圧駆動しても高効率であり、かつ、長寿命である有機EL素子を実現することができる有機EL素子用材料、特に正孔輸送材料の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第07/148660号パンフレット
【特許文献2】国際公開第08/062636号パンフレット
【特許文献3】米国特許公開2007−0215889号公報
【特許文献4】特開2005−290000号公報
【特許文献5】国際公開第2011/021520号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2012/039534号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、低電圧駆動が可能で長寿命かつ高効率の有機EL素子を実現することができる有機EL素子用材料、例えば、正孔輸送材料を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、トリフェニレン骨格を有し、2−もしくは4−ジベンゾフラニル基及び2−もしくは4−ジベンゾチオフェニル基の一方又は双方が直接又はリンカーを介して窒素原子に結合している構造を有する化合物は正孔注入性及び正孔輸送性が良好であり、低電圧駆動が可能で長寿命かつ高効率の有機EL素子を実現することを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は下記式(1)で表される芳香族アミン誘導体を提供する。
【0013】
【化2】
(式中、HAr1は、下記式(2)〜(5)から選ばれる基を表す。
【0014】
【化3】
【0015】
式(2)〜(5)において、nは、0〜4の整数であり、Rはそれぞれ独立して置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の環原子数3〜50の複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50のアリールオキシ基、又はシアノ基を表し、Rが複数存在する場合、該複数のRは同一でも異なっていてもよい。
【0016】
1〜L3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して単結合、下記式(6)で表される基、又は式(7)で表される基を表す。
【0017】
【化4】
【0018】
Ar2は、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の環原子数3〜50の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアリールオキシ基、又は下記式(8)〜(11)から選ばれる基を表す。ただし、Ar2はカルバゾール骨格及び置換もしくは無置換のアミノ基を含まない。
【0019】
【化5】
【0020】
式(8)〜(11)において、nは、0〜4の整数であり、Rはそれぞれ独立して置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の環原子数3〜50の複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50のアリールオキシ基、又はシアノ基を表し、Rが複数存在する場合、該複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
【0021】
さらに、本発明は陽極、陰極、及び該陽極と陰極の間に1層以上の有機薄膜層を有し、該1層以上の有機薄膜層が発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該有機薄膜層の少なくとも1層が上記式(1)で表される芳香族アミン誘導体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の芳香族アミン誘導体を用いることにより、低電圧駆動が可能な長寿命、高効率有機EL素子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数a〜bのX基」という表現における「炭素数a〜b」は、X基が無置換である場合の炭素数を表すものであり、X基が置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。
【0024】
また、「水素原子」とは、中性子数が異なる同位体、すなわち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)及び三重水素(tritium)を包含する。
【0025】
更に、“置換もしくは無置換”というときの任意の置換基は、炭素数1〜50(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアルキル基;環炭素数3〜50(好ましくは3〜6、より好ましくは5又は6)のシクロアルキル基;環炭素数6〜50(好ましくは6〜24、より好ましくは6〜12)のアリール基;環炭素数6〜50(好ましくは6〜24、より好ましくは6〜12)のアリール基を有する炭素数1〜50(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアラルキル基;アミノ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアルキル基を有するモノ−又はジアルキルアミノ基;環炭素数6〜50(好ましくは6〜24、より好ましくは6〜12)のアリール基を有するモノ−又はジアリールアミノ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアルキル基を有するアルコキシ基;環炭素数6〜50(好ましくは6〜24、より好ましくは6〜12)のアリール基を有するアリールオキシ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアルキル基及び環炭素数6〜50(好ましくは6〜24、より好ましくは6〜12)のアリール基から選ばれる基を有するモノ−、ジ−又はトリ置換シリル基;環原子数5〜50(好ましくは5〜24、より好ましくは5〜12)でありヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子)を1〜5個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個)含むヘテロアリール基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);シアノ基;ニトロ基からなる群より選ばれる。
【0026】
本発明の芳香族アミン誘導体はトリフェニレン骨格を有し、下記式(1)で表される。
【0027】
【化6】
【0028】
トリフェニレン骨格は平面性に優れるので、本発明の芳香族アミン誘導体は、薄膜中でその分子同士が密着して配列し、薄膜の配向性が良好である。その結果、駆動電圧を低下させることができる。また、トリフェニレン骨格はガラス転移点(Tg)を高くするので、本発明の芳香族アミン誘導体はTgが高く安定であり、有機EL素子の寿命が長くなる。
【0029】
式(1)において、HAr1は、下記式(2)〜(5)から選ばれる基を表す。
【0030】
【化7】
【0031】
HAr1が式(2)又は(3)で表される基であると長寿命化が期待され、式(4)又は(5)で表される基であると高効率化が期待される。
【0032】
式(2)〜(5)において、nは0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数、特に好ましくは0である。n=0は置換基Rが存在しないことを意味する。
【0033】
Rはそれぞれ独立して置換もしくは無置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18のアリール基、置換もしくは無置換の環原子数3〜50、好ましくは3〜24、より好ましくは3〜18の複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のフルオロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18のアリールオキシ基、又はシアノ基を表す。Rが複数存在する場合、該複数のRは同一でも異なっていてもよい。
【0034】
前記炭素数1〜20アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基(異性体を含む)、ヘキシル基(異性体を含む)、ヘプチル基(異性体を含む)、オクチル基(異性体を含む)、ノニル基(異性体を含む)、デシル基(異性体を含む)、ウンデシル基(異性体を含む)、及びドデシル基(異性体を含む)等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、及びペンチル基(異性体を含む)が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、及びt−ブチル基がより好ましく、メチル基及びt−ブチル基が特に好ましい。
【0035】
前記環炭素数6〜50のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチルフェニル基、ビフェニルイル基、ターフェニルイル基、ビフェニレニル基、ナフチル基、フェニルナフチル基、アセナフチレニル基、アントリル基、ベンゾアントリル基、アセアントリル基、フェナントリル基、ベンゾフェナントリル基、フェナレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、7−フェニル−9,9−ジメチルフルオレニル基、ペンタセニル基、ピセニル基、ペンタフェニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾクリセニル基、s−インダセニル基、as−インダセニル基、フルオランテニル基、及びペリレニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチルフェニル基、ビフェニルイル基、ターフェニルイル基、ナフチル基、9,9−ジメチルフルオレニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニルイル基、ナフチル基、9,9−ジメチルフルオレニル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0036】
前記環原子数3〜50の複素環基は少なくとも1個、好ましくは1〜2個のヘテロ原子、例えば、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子、を含む。該複素環基としては、例えば、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリジニル基、キノリジニル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズチアゾリル基、インダゾリル基、ベンズイソキサゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、及びキサンテニル基などが挙げられ、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基が好ましく、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基がより好ましい。
【0037】
前記ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子であり、フッ素原子が特に好ましい。
【0038】
前記炭素数1〜20のフルオロアルキル基としては、例えば、上記の炭素数1〜20のアルキル基の少なくとも1個の水素原子、好ましくは1〜7個の水素原子をフッ素原子で置換して得られる基が挙げられ、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、トリフルオロメチル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0039】
前記炭素数1〜20のアルコキシ基は−OR10で表され、R10は上記の炭素数1〜20のアルキル基を表す。該アルコキシ基としては、t−ブトキシ基、プロポキシ基、エトキシ基、メトキシ基が好ましくエトキシ基、メトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0040】
前記炭素数1〜20フルオロアルコキシ基は−OR11で表され、R11は上記の炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表す。該フルオロアルコキシ基としては、ヘプタフルオロプロポキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、トリフルオロメトキシ基が好ましく、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、トリフルオロメトキシ基がより好ましく、トリフルオロメトキシ基が特に好ましい。
【0041】
環炭素数6〜50のアリールオキシ基は−OR12で表され、R12は上記の環炭素数6〜50のアリール基を表す。該アリールオキシ基としてはR12がターフェニル基、ビフェニル基、フェニル基が好ましく、ビフェニル基、フェニル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0042】
本発明の好ましい態様において、式(2)〜(5)のRは、置換もしくは無置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基、特に好ましくはメチル基及びt−ブチル基;置換もしくは無置換の環炭素数6〜50、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18のアリール基、特に好ましくはフェニル基;ハロゲン原子、より好ましくはフッ素原子;又はシアノ基である。また、Rは2−又は4−ジベンゾフラニル基、2−又は4−ジベンゾチオフェニル基の6位及び/又は8位に結合することが好ましい。
【0043】
【化8】
【0044】
式(1)において、L1〜L3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して単結合、下記式(6)で表される基、又は式(7)で表される基を表す。
【0045】
【化9】
【0046】
式(6)で表される基はo−フェニレン基、m−フェニレン基、及びp−フェニレン基を含み、式(7)で表される基はo−ビフェニレン基、m−ビフェニレン基、及びp−ビフェニレン基を含む。
【0047】
1〜L3はそれぞれ単結合、p−フェニレン基又はp−ビフェニレン基であることが好ましく、L1はp−フェニレン基であることが特に好ましく、L3は単結合、p−フェニレン基、又はp−ビフェニレン基であることが特に好ましい。
【0048】
式(1)において、Ar2は、置換もしくは無置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18のアリール基、置換もしくは無置換の環原子数3〜50、好ましくは3〜24、より好ましくは3〜18の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のフルオロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18 のアリールオキシ基、又は下記式(8)〜(11)から選ばれる基を表す。
【0049】
【化10】
【0050】
Ar2が表すアルキル基、アリール基、複素環基、フルオロアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルコキシ基、及びアリールオキシ基は、式(2)〜(5)のRに関して記載した各基と同様に定義される(好ましい態様も同様)。ただし、Ar2はカルバゾール骨格及び置換もしくは無置換のアミノ基を含まない。また、HAr1もカルバゾール骨格及び置換もしくは無置換のアミノ基を含まないことが好ましい。
【0051】
式(8)〜(11)のR及びnは、式(2)〜(5)に関して記載したR及びnと同様に定義され(好ましい態様も同様)、Rは2−又は4−ジベンゾフラニル基、2−又は4−ジベンゾチオフェニル基の6位及び/又は8位に結合することが好ましい。
【0052】
Ar2は、置換もしくは無置換の環炭素数6〜50、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18のアリール基又は式(8)〜(11)から選ばれる基であることが好ましい。特に、アリール基はフェニル基、ビフェニル−2−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−4−イル基、1,1’:4’,1’’−ターフェニル−4−イル基、1,1’:3’,1’’−ターフェニル−4−イル基、1,1’:2’,1’’−ターフェニル−4−イル基、1,1’:4’,1’’−ターフェニル−3−イル基、1,1’:3’,1’’−ターフェニル−3−イル基、1,1’:2’,1’’−ターフェニル−3−イル基、1,1’:4’,1’’−ターフェニル−2−イル基、1,1’:3’,1’’−ターフェニル−2−イル基、1,1’:3’,1’’−ターフェニル−2’−イル基、1,1’:3’,1’’−ターフェニル−4’−イル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、9−メチル−9−フェニルフルオレン−2−イル基、9,9−ジフェニルフルオレン−2−イル基、トリフェニレン−2−イル基、及び式(8)〜(11)から選ばれる基であることが好ましい。
【0053】
Ar2が表す各基は炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、及びt−ブチル基;環炭素数6〜50、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18のアリール基、例えば、フェニル基;ハロゲン原子、例えば、フッ素原子;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のフルオロアルキル基、例えば、トリフルオロメチル基;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルコキシ基、例えば、メトキシ基;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のフルオロアルコキシ基、例えば、トリフルオロメトキシ基;及びシアノ基から選ばれる少なくとも一の基で置換されていてもよいが、無置換であることがより好ましい。
【0054】
本発明の芳香族アミン誘導体は下記式(12):
【化11】
(式中、HAr1、Ar2、L2、及びL3は、それぞれ前記式(1)で定義したとおり。)
で表されることが好ましく、また、式(1)及び(12)において、L3が単結合、又は下記式(13)又は(14):
【化12】
で表される基である化合物も好ましい。
【0055】
また、上記式(12)と上記式(2)〜(5)からHAr1として選ばれる基は、部分的にパラビフェニル構造を含んでいる。中心窒素原子に直接結合するベンゼン環のパラ位は電子密度が高く電気化学的に脆弱な箇所であるが、パラビフェニル構造により無置換では無くフェニル基で保護する形になることで化合物の安定性が向上し、材料の劣化が抑制される結果有機EL素子が長寿命化する。
【0056】
以下に式(1)で表される本発明の芳香族アミン誘導体の具体例を示すが、下記化合物に限定されるものではない。

【0057】
【化13】
【0058】
【化14】
【0059】
【化15】
【0060】
【化16】
【0061】
【化17】
【0062】
【化18】
【0063】
【化19】
【0064】
【化20】
【0065】
【化21】
【0066】
【化22】
【0067】
【化23】
【0068】
【化24】
【0069】
【化25】
【0070】
本発明の式(1)で表される芳香族アミン誘導体は有機EL素子用材料、特に正孔注入層材料又は正孔輸送層材料として有用である。本発明の芳香族アミン誘導体の製造方法は特に制限されず、当業者であれば本明細書の実施例を参照しながら、公知の合成反応を利用及び変更して容易に製造することができる。
【0071】
以下、本発明の有機EL素子構成について説明する。
本発明の有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の(1)〜(13)を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。なお、(8)の素子構成が好ましく用いられる。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/有機半導体層/発光層/陰極
(6)陽極/有機半導体層/電子障壁層/発光層/陰極
(7)陽極/有機半導体層/発光層/付着改善層/陰極
(8)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/(電子輸送層/)電子注入層/陰極
(9)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(10)陽極/無機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(11)陽極/有機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(12)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
(13)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/(電子輸送層/)電子注入層/陰極
【0072】
また、本発明の有機EL素子において、本発明の芳香族アミン誘導体は結晶化しにくく、上記のいずれの有機薄膜層に用いられてもよいが、より低電圧での駆動の観点から、正孔注入層又は正孔輸送層に含有されているのが好ましく、正孔輸送層に含有されているのがより好ましい。本発明の芳香族アミン誘導体を用いた有機EL素子は、低電圧駆動が可能であるのみならず、発光効率が高く、寿命が長い。
本発明の芳香族アミン誘導体を有機薄膜層、好ましくは正孔注入層又は正孔輸送層に含有させる量は、その有機薄膜層の全成分に対して、好ましくは30〜100モル%であり、より好ましくは50〜100モル%であり、さらに好ましくは80〜100モル%であり、特に好ましくは実質100モル%である。
以下、好ましい形態として、本発明の前記芳香族アミン誘導体を正孔輸送層に含有させた構成の有機EL素子の各層について説明する。
【0073】
基板
有機EL素子は、通常、透光性基板上に作製する。この透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、波長400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上であるものが好ましく、さらに平滑な基板を用いるのが好ましい。
このような透光性基板としては、例えば、ガラス板、合成樹脂板等が挙げられる。ガラス板としては、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等で成形された板が挙げられる。また、合成樹脂板としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂等の板が挙げられる。
【0074】
陽極
陽極は、正孔を正孔輸送層又は発光層に注入する役割を担うものであり、4eV以上(好ましくは4.5eV以上)の仕事関数を有することが効果的である。陽極材料の具体例としては、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等及びそれらの合金、ITO基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物、ポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が挙げられる。
陽極は、これらの陽極材料を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成することにより得られる。
発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率が10%より大きいことが好ましい。また陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は、材料によっても異なるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmである。
【0075】
陰極
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV未満)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム、フッ化リチウム等及びそれらの合金が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。該合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、適切な比率に選択される。陽極及び陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていてもよい。
この陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成することにより得られる。
ここで、発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、さらに、陰極の膜厚は、通常10nm〜1μm、好ましくは50nm〜200nmである。
【0076】
絶縁層
有機EL素子は、超薄膜に電界を印加するために、リークやショートによる画素欠陥が生じやすい。これを防止するために、一対の電極間に絶縁性の薄膜層からなる絶縁層を挿入してもよい。
絶縁層に用いられる材料としては、例えば、酸化アルミニウム、弗化リチウム、酸化リチウム、弗化セシウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、弗化マグネシウム、酸化カルシウム、弗化カルシウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化バナジウム等が挙げられる。なお、これらの混合物や積層物を用いてもよい。
【0077】
発光層
有機EL素子の発光層は下記(1)〜(3)の機能を併せ持つ。
(1)注入機能:電界印加時に陽極又は正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極又は電子注入層より電子を注入することができる機能。
(2)輸送機能:注入された電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能。
(3)発光機能:電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能。
発光層への正孔の注入し易さと電子の注入し易さに違いがあってもよく、また、正孔移動度と電子移動度で表される、発光層の正孔輸送能及び電子輸送能が異なっていてもよいが、どちらか一方の電荷を移動させることが好ましい。
【0078】
発光層に使用できるホスト材料又はドーピング材料は特に制限されない。例えば、ナフタレン、フェナントレン、ルブレン、アントラセン、テトラセン、ピレン、ペリレン、クリセン、デカシクレン、コロネン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、フルオレン、スピロフルオレン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(フェニルエチニル) アントラセン、1,4−ビス(9'−エチニルアントラセニル)ベンゼン等の縮合多量芳香族化合物及びそれらの誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム、ビス−(2−メチル−8−キノリノラート)−4−(フェニルフェノリナート)アルミニウム等の有機金属錯体、アリールアミン誘導体、スチリルアミン誘導体、スチルベン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、オキサゾン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ピラジン誘導体、ケイ皮酸エステル誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体等から選ばれる。これらの中でも、アリールアミン誘導体、スチリルアミン誘導が好ましく、スチリルアミン誘導がより好ましい。
【0079】
正孔注入層/正孔輸送層
正孔注入層/正孔輸送層は、発光層への正孔注入を助け、正孔を発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.7eV以下と小さい。このような正孔注入層/正孔輸送層としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば104〜106V/cmの電界印加時に、10-4cm2/V・秒以上であることが好ましい。
前記のように、本発明の芳香族アミン誘導体は、正孔注入層材料、特に正孔輸送層材料として好ましく用いられる。正孔輸送層は本発明の芳香族アミン誘導体単独で形成してもよく、他の材料との混合物で形成してもよい。本発明の芳香族アミン誘導体と混合して正孔輸送層を形成する他の材料としては、前記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において正孔輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。本発明においては、正孔輸送能を有し、正孔輸送帯域に用いることが可能な材料を正孔輸送材料と呼ぶ。
【0080】
本発明の芳香族アミン誘導体以外の正孔輸送層用の他の材料の具体例としては、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等、前記化合物の誘導体、及びポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0081】
正孔注入層用の材料としては、前記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において正孔注入材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。本発明においては、正孔注入能を有し、正孔注入帯域に用いることが可能な材料を正孔注入材料と呼ぶ。正孔注入材料に電子受容物質を添加することにより増感させることもできる。
【0082】
本発明の有機EL素子においては、正孔注入材料として、下記式(A)で表されるヘキサアザトリフェニレン化合物を用いることが好ましい。
【0083】
【化26】
【0084】
上記式(A)中、R111〜R116は、それぞれ独立にシアノ基、−CONH2、カルボキシル基、もしくは−COOR117(R117は、炭素数1〜20のアルキル基である。)を表すか、又は、R111及びR112、R113及びR114、又はR115及びR116が一緒になって−CO−O−CO−で示される基を表す。
なお、R111〜R116が同一で、シアノ基、−CONH2、カルボキシル基、又は−COOR117を表すことが好ましい。また、R111及びR112、R113及びR114、及びR115及びR116のすべてが一緒になって−CO−O−CO−で示される基を表すことが好ましい。
【0085】
本発明の有機EL素子において使用できる他の正孔注入材料としては、例えば、芳香族三級アミン誘導体及びフタロシアニン誘導体が挙げられる。
【0086】
芳香族三級アミン誘導体としては、例えば、トリフェニルアミン、トリトリルアミン、トリルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニルイル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−フェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニルイル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニルイル−4,4’−ジアミン、N,N’−(メチルフェニル)−N,N’−(4−n−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン等、又はこれらの芳香族三級アミンに由来する構成単位を有するオリゴマーもしくはポリマーであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0087】
フタロシアニン(Pc)誘導体としては、例えば、H2Pc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、Cl2SiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc等のフタロシアニン誘導体及びナフタロシアニン誘導体があるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の有機EL素子は、発光層と陽極との間に、これらの芳香族三級アミン誘導体及び/又はフタロシアニン誘導体を含有する層、例えば、前記正孔輸送層又は正孔注入層を有することが好ましい。
【0088】
正孔注入材料に電子受容物質を添加することにより増感させることもできる。
【0089】
電子注入層/電子輸送層
電子注入層/電子輸送層は、発光層への電子の注入を助け、電子を発光領域まで輸送する層であって、電子移動度が大きい。付着改善層は陰極との付着が特に良い材料からなる電子注入層である。
発光した光が電極(この場合は陰極)により反射するため、直接陽極から取り出される発光と、電極による反射を経由して陽極から取り出される発光とが干渉することが知られている。この干渉効果を効率的に利用するため、電子輸送層は数nm〜数μmの膜厚で適宜選ばれるが、特に膜厚が厚いとき、電圧上昇を避けるために、104〜106V/cmの電界印加時に電子移動度が少なくとも10-5cm2/Vs以上であることが好ましい。
電子注入層に用いられる材料としては、具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、電子注入材料に電子供与性物質を添加することにより増感させることもできる。
【0090】
他の効果的な電子注入材料は、金属錯体化合物及び含窒素五員環誘導体である。
前記金属錯体化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
前記含窒素五員誘導体としては、例えば、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール誘導体が好ましい。
特に、本発明においては、前記含窒素五員誘導体として、下記式(1)〜(3)のいずれかで表されるベンゾイミダゾール誘導体が好ましい。
【0091】
【化27】
【0092】
上記式(1)〜(3)中、Z1、Z2及びZ3は、それぞれ独立に、窒素原子又は炭素原子である。
11及びR12は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換の環炭素数3〜60のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。
mは、0〜5の整数であり、mが2以上の整数であるとき、複数のR11は互いに同一でも異なっていてもよい。また、隣接する2個のR11同士が互いに結合して置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環を形成していてもよい。該置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。
Ar1は、置換もしくは無置換の環炭素数6〜60のアリール基又は置換もしくは無置換の環炭素数3〜60のヘテロアリール基である。
Ar2は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環炭素数6〜60のアリール基又は置換もしくは無置換の環炭素数3〜60のヘテロアリール基である。
Ar3は、置換もしくは無置換の環炭素数6〜60のアリーレン基又は置換もしくは無置換の環炭素数3〜60のヘテロアリーレン基である。
1、L2及びL3は、それぞれ独立に、単結合、置換もしくは無置換の環炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換の環原子数9〜60のヘテロ縮合環基又は置換もしくは無置換のフルオレニレン基である。
【0093】
本発明の有機EL素子においては、本発明の芳香族アミン誘導体を含有する層に、発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料又は電子注入材料が含有されてもよい。
【0094】
発明の芳香族アミン誘導体を含有する層には、必要に応じて、公知の発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料、電子注入材料を使用することもできるし、本発明の芳香族アミン誘導体をドーピング材料として使用することもできる。
有機EL素子は、複数の有機薄膜層を形成することにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができる。必要があれば、発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料、電子注入材料を組み合わせて使用することができる。また、ドーピング材料により、発光輝度や発光効率を向上させ、発光色を変化させることもできる。
【0095】
本発明の有機EL素子の正孔輸送層は第1正孔輸送層(陽極側)と第2正孔輸送層(陰極側)の2層構造にしてもよい。この場合、本発明の芳香族アミン誘導体は第1正孔輸送層と第2正孔輸送層のいずれに含まれていてもよい。
【0096】
また、本発明により得られた有機EL素子の、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上の観点から、素子の表面に保護層を設けることや、シリコンオイル、樹脂等により素子全体を保護することも可能である。
【0097】
本発明の有機EL素子の各層の形成には、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれの方法を用いることができる。
【0098】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な溶媒に溶解又は分散させた溶液又は分散液を用いて薄膜を形成する。また、該溶液又は分散液は成膜性向上、膜のピンホール防止等のために樹脂や添加剤を含んでいてもよい。該樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂及びそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂が挙げられる。また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
【0099】
各層の膜厚は特に限定されるものではなく、良好な素子性能が得られるような膜厚すればよい。膜厚が厚すぎると、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり効率が悪くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電界を印加しても充分な発光輝度が得られない。通常の膜厚は5nm〜10μmの範囲が適しているが、10nm〜0.2μmの範囲がより好ましい。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0101】
中間体合成例1−1(中間体1−1の合成)
アルゴン雰囲気下、2−ブロモトリフェニレン50.8g(150.0mmol)、ジフェニルアミン25.4g(150.0mmol)、t−ブトキシナトリウム28.8g(300.0mmol)に脱水トルエン750mlを加え、撹拌した。酢酸パラジウム674mg(3.0mmol)、トリ−t−ブチルホスフィン607mg(3.0mmol)を加え、80℃にて8時間反応した。
冷却後、反応混合物をセライト/シリカゲルを通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をトルエンで再結晶し、それを濾取した後、乾燥し、48.3gの白色固体を得た。FD−MS(電界脱離質量分析)により、下記中間体1−1と同定した。(収率82%)
【化28】
【0102】
中間体合成例1−2(中間体1−2の合成)
アルゴン雰囲気下、中間体1−1 20.0g(50.6mmol)にトルエン500ml、酢酸エチル300mlを加え、撹拌した。N−ブロモスクシンイミド18.0g(101.2mmol)を加え、室温にて24時間反応した。さらに、N−ブロモスクシンイミド1.0g(5.6mmol)を加え、室温にて3時間反応した。
水300mlを加え、トルエンにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥し、濾過、濃縮した。得られた残渣をトルエンで再結晶し、それを濾取した後、乾燥し、24.4gの白色固体を得た。FD−MSの分析により、下記中間体1−2と同定した。(収率87%)
【化29】
【0103】
中間体合成例1−3(中間体1−3の合成)
アルゴン雰囲気下、2−ブロモトリフェニレン49.1g(160.0mmol)、4−クロロフェニルボロン酸25.0g(160.0mmol)、Pd[PPh34 3.7g(3.20mmol)にトルエン500ml、ジメトキシエタン300ml、2M Na2CO3水溶液160ml(320.0mmol)を加え、30時間加熱還流攪拌した。
反応終了後、室温に冷却し、試料を分液ロートに移しジクロロメタンにて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮した。得られた残渣をトルエンで再結晶し、それを濾取した後、乾燥し、49.0gの白色固体を得た。FD−MSの分析により、下記中間体1−3と同定した。(収率90%)
【化30】
【0104】
中間体合成例1−4(中間体1−4の合成)
中間体合成例1−1において、2−ブロモトリフェニレンの代わりに中間体1−3を30.0g用いた以外は同様に反応を行ったところ、30.0gの白色固体を得た。FD−MSの分析により、下記中間体1−4と同定した。(収率71%)
【化31】
【0105】
中間体合成例1−5(中間体1−5の合成)
中間体合成例1−2において、中間体1−1の代わりに中間体1−4を30.0g用いた以外は同様に反応を行ったところ、25.4gの白色固体を得た。FD−MSの分析により、下記中間体1−5と同定した。(収率63%)
【化32】
【0106】
中間体合成例2−1(中間体2−1の合成)
アルゴン雰囲気下、4−ヨードブロモベンゼン28.3g(100.0mmol)、ジベンゾフラン−4−ボロン酸22.3g(105.0mmol)、Pd[PPh3]4 2.31g(2.00mmol)にトルエン150ml、ジメトキシエタン150ml、2M Na2CO3水溶液150ml(300.0mmol)を加え、10時間加熱還流攪拌した。
反応終了後、室温に冷却し、試料を分液ロートに移しジクロロメタンにて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、26.2gの白色固体を得た。FD−MSの分析により、下記中間体2−1と同定した。(収率81%)
【化33】
【0107】
中間体合成例2−2(中間体2−2の合成)
アルゴン雰囲気下、4'−ブロモアセトアニリド24.0g(112.0mmol)、ジベンゾフラン−4−ボロン酸28.6g(135.0mmol)、Pd[PPh3]4 2.6g(2.24mmol)にトルエン450ml、ジメトキシエタン100ml、2M Na2CO3水溶液110ml(220.0mmol)を加え、10時間加熱還流攪拌した。
反応終了後、室温に冷却し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶をテトラヒドロフランに溶解させ、セライト/シリカゲルを通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をメタノール/ヘキサンで洗浄、乾燥し、18.0gの白色固体を得た。FD−MSの分析により、下記中間体2−2と同定した。(収率53%)
【化34】
【0108】
中間体合成例2−3(中間体2−3の合成)
中間体2−2 18.0g(59.7mmol)にキシレン120ml、水1200ml、エタノール60mlを加え、攪拌した。水酸化カリウム20.0g(360.0mmol)を加え、10時間加熱還流攪拌した。
反応終了後、室温に冷却し、試料を分液ロートに移しジトルエンにて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮した。得られた残渣をキシレンで再結晶し、それを濾取した後、乾燥し、14.7gの白色固体を得た。FD−MSの分析により、下記中間体2−3と同定した。(収率95%)
【化35】
【0109】
中間体合成例2−4(中間体2−4の合成)
窒素雰囲気下、ジベンゾフラン150g(0.89mol)に酢酸1000mlを加え加熱溶解させた。さらに、臭素188g(1.18mol)を滴下して加えた後、室温で20時間撹拌した。析出した結晶を濾取し、酢酸、水で順次洗浄した。粗生成物をメタノールにより数回再結晶を繰り返し、66.8gの白色結晶を得た。FD−MSの分析により、下記中間体2−4と同定した。(収率30%)
【化36】
【0110】
中間体合成例2−5(中間体2−5の合成)
アルゴン雰囲気下、中間体2−4 24.7g(100.0mmol)に脱水テトラヒドロフラン400mlを加え、−40℃に冷却した。さらに、1.6M濃度のn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液63ml(100.0mmol)を徐々に加えた。反応溶液を0℃まで加温しながら1時間攪拌した後、反応溶液を再び−78℃まで冷却し、ホウ酸トリメチル26.0g(250.0mmol)の脱水テトラヒドロフランの50ml溶液を滴下して加えた。滴下後、反応溶液を室温で5時間攪拌した。1N塩酸200mlを加え、1時間攪拌後、水層を除去した。有機層をMgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧留去した。得られた固体をトルエンで洗浄し、15.2gの白色結晶を得た。(収率72%)
【化37】
【0111】
中間体合成例2−6(中間体2−6の合成)
アルゴン雰囲気下、4−ヨードブロモベンゼン28.3g(100.0mmol)、中間体2−5 22.3g(105.0mmol)、Pd[PPh3]4 2.31g(2.00mmol)にトルエン150ml、ジメトキシエタン150ml、2M Na2CO3水溶液150ml(300.0mmol)を加え、10時間加熱還流攪拌した。
反応終了後、試料を分液ロートに移しジクロロメタンにて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、24.2gの白色固体を得た。FD−MSの分析により、下記中間体2−6と同定した。(収率75%)
【化38】
【0112】
中間体合成例2−7(中間体2−7の合成)
合成例2−5において、中間体2−4の代わりに2−ブロモジベンゾチオフェンを26.3g用いた以外は同様に反応を行ったところ、14.8gの白色固体を得た。FD−MSの分析により、下記中間体2−7と同定した。(収率65%)
【化39】
【0113】
中間体合成例2−8(中間体2−8の合成)
アルゴン雰囲気下、2−ブロモトリフェニレン16.9g(50.0mmol)、中間体2−3 13.0g(50.0mmol)、t−ブトキシナトリウム9.6g(100.0mmol)に脱水トルエン250mlを加え、撹拌した。酢酸パラジウム225mg(1.0mmol)、トリ−t−ブチルホスフィン202mg(1.0mmol)を加え、80℃にて8時間反応した。
冷却後、反応混合物をセライト/シリカゲルを通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をトルエンで再結晶し、それを濾取した後、乾燥し、19.9gの白色固体を得た。FD−MSの分析により、下記中間体2−8と同定した。(収率82%)
【化40】
【0114】
合成実施例1(芳香族アミン誘導体(H1)の製造)
アルゴン雰囲気下、中間体1−2 8.3g(15.0mmol)、ジベンゾフラン−4−ボロン酸7.0g(33.0mmol)、Pd[PPh34 0.87g(0.75mmol)にトルエン50ml、ジメトキシエタン25ml、2M Na2CO3水溶液23ml(46.0mmol)を加え、10時間加熱還流攪拌した。
反応終了後、試料を分液ロートに移しトルエンにて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥後、ろ過、濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。得られた粗生成物をトルエンで再結晶し、濾取した後、乾燥し、7.9gの白色固体を得た。FD−MSの分析により、下記芳香族アミン誘導体(H1)と同定した。(収率72%)
【化41】
【0115】
合成実施例2(芳香族複素環誘導体(H2)の製造)
合成実施例1において、ジベンゾフラン−4−ボロン酸の代わりに中間体2−5を7.0g用いた以外は同様に反応を行ったところ、6.9gの白色結晶を得た。FD−MSの分析により、下記芳香族アミン誘導体(H2)と同定した。(収率63%)
【化42】
【0116】
合成実施例3(芳香族複素環誘導体(H3)の製造)
合成実施例1において、ジベンゾフラン−4−ボロン酸の代わりに中間体2−7を6.8g用いた以外は同様に反応を行ったところ、3.4gの白色結晶を得た。FD−MSの分析により、下記芳香族アミン誘導体(H3)と同定した。(収率33%)
【化43】
【0117】
合成実施例4(芳香族複素環誘導体(H4)の製造)
アルゴン雰囲気下、中間体2−6 3.2g(10.0mmol)、中間体2−8 4.9g(10.0mmol)、Pd2(dba)3 0.14g(0.15mmol)、P(tBu)3HBF4 0.087g(0.3mmol)、t−ブトキシナトリウム1.9g(20.0mmol)に、無水キシレン50mlを加えて8時間加熱還流した。
反応終了後、反応液を50℃に冷却し、セライト、及びシリカゲルを通して濾過を行い、濾液を濃縮した。得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し白色固体を得た。粗生成物をトルエンにて再結晶し、3.6gの白色結晶を得た。FD−MSの分析により、下記芳香族複素環誘導体(H4)と同定した。(収率50%)
【化44】
【0118】
合成実施例5(芳香族複素環誘導体(H5)の製造)
合成実施例4において、中間体2−6の代わりに4−ブロモターフェニルを3.1g用いた以外は同様に反応を行ったところ、3.9gの白色結晶を得た。FD−MSの分析により、下記芳香族アミン誘導体(H5)と同定した。(収率55%)
【化45】
【0119】
合成実施例6(芳香族複素環誘導体(H6)の製造)
合成実施例4において、中間体2−6の代わりに2−ブロモ−9,9−ジメチルフルオレンを2.7g用いた以外は同様に反応を行ったところ、3.5gの白色結晶を得た。FD−MSの分析により、下記芳香族アミン誘導体(H6)と同定した。(収率52%)
【化46】
【0120】
合成実施例7(芳香族複素環誘導体(H7)の製造)
合成実施例1において、中間体1−2の代わりに中間体1−5を9.4g用いた以外は同様に反応を行ったところ、4.1gの白色結晶を得た。FD−MSの分析により、下記芳香族アミン誘導体(H7)と同定した。(収率32%)
【化47】
【0121】
合成実施例8(芳香族複素環誘導体(H8)の製造)
合成実施例1において、ジベンゾフラン−4−ボロン酸の代わりにジベンゾチオフェン−4−ボロン酸を6.8g用いた以外は同様に反応を行ったところ、3.0gの白色結晶を得た。FD−MSの分析により、下記芳香族アミン誘導体(H8)と同定した。(収率26%)
【化48】
【0122】
実施例1
有機EL素子の作製
25mm×75mm×1.1mmのITO透明電極ライン付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で5分間超音波洗浄し、さらに、30分間UV(Ultraviolet)オゾン洗浄した。
洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている面上に前記透明電極を覆うようにして下記電子受容性化合物(A)を蒸着し、膜厚5nmの膜Aを成膜した。
この膜A上に、第1正孔輸送材料として下記芳香族アミン誘導体(TPTE)を蒸着し、膜厚65nmの第1正孔輸送層を成膜した。
第1正孔輸送層の成膜に続けて、第2正孔輸送材料として上記芳香族アミン誘導体(H1)を蒸着し、膜厚10nmの第2正孔輸送層を成膜した。
この正孔輸送層上に、第一ホスト材料として化合物(host1−X)と、第二ホスト材料として化合物(host2−X)と、燐光発光性ドーパント材料としてIr(bzq)3とを共蒸着した。これにより、緑色発光を示す厚さ25nmの発光層を形成した。なお、燐光発光性ドーパント材料の濃度を10質量%とし、第一ホスト材料の濃度を45質量%、第二ホスト材料の濃度を45質量%とした。
続いて、この燐光発光層上に、厚さ35nmの化合物(C)膜、厚さ1nmのLiF膜、厚さ80nmの金属Al膜を順次積層し、陰極を形成した。なお、電子注入性電極であるLiFは、1Å/minの成膜速度で形成した。
【化49】
【0123】
実施例2〜8
有機EL素子の作製
第2正孔輸送材料として表1に記載の上記芳香族アミン誘導体を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜8の各有機EL素子を作製した。
【0124】
比較例1、2
有機EL素子の作製
第2正孔輸送材料として表1に記載の下記比較化合物1又は2を用いた以外は実施例1と同様にして比較例1、2の各有機EL素子を作製した。比較化合物1は特許文献6に記載の化合物である(段落104)。
【化50】
【0125】
(有機EL素子の発光性能評価)
以上のように作製した有機EL素子を直流電流駆動により発光させ、輝度(L)、電流密度を測定し、測定結果から電流密度10mA/cm2における電流効率(L/J)、駆動電圧(V)を求めた。さらに電流密度50mA/cm2における素子寿命を求めた。80%寿命とは、定電流駆動時において、輝度が初期輝度の80%に減衰するまでの時間をいう。結果を表1に示す。
【表1】
【0126】
表1の結果から、本発明の芳香族アミン誘導体を用いることにより、低電圧で駆動しても高効率であり、かつ、長寿命の有機EL素子が得られることがわかる。