【文献】
YANG-KOOK SUN,JOURNAL OF MATERIALS CHEMISTRY,2011年 1月 1日,V21 N27,P10108-10112
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ニッケル、コバルト、マンガン、チタン、バナジウム、クロムおよび鉄から選択される少なくとも2種の遷移金属のカチオンを含む、遷移金属炭酸塩、遷移金属水酸化物または遷移金属炭酸水酸化物の球状粒子であって、当該粒子の半径に対してプロットされた遷移金属カチオンの少なくとも1種の濃度が、当該粒子の中心にも縁部にもない少なくとも1つの相対極値を有するとともに、直径にわたり一定の濃度のコバルトを有する、球状粒子。
当該粒子の半径に対してプロットされた少なくとも2種の遷移金属のカチオンの濃度が、それぞれの場合において、当該粒子の中心にも縁部にもない少なくとも1つの相対極値を有する、請求項1に記載の球状粒子。
ニッケル、コバルト、マンガン、チタン、バナジウム、クロムおよび鉄から選択される少なくとも2種の遷移金属のカチオンを有する、微粒子形態のリチウム化遷移金属混合酸化物であって、当該遷移金属混合酸化物の半径に対してプロットされた遷移金属カチオンの少なくとも1種の濃度が、当該粒子の中心にも縁部にもない少なくとも1つの相対極値を有するとともに、直径にわたり一定の濃度のコバルトを有する、リチウム化遷移金属混合酸化物。
当該粒子の半径に対してプロットされた少なくとも2種の遷移金属のカチオンの濃度が、それぞれの場合において、当該粒子の中心にも縁部にもない少なくとも1つの相対極値を有する、請求項14に記載のリチウム化遷移金属混合酸化物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一実施形態において、遷移金属炭酸塩の場合のアニオンは、本発明の当該粒子における全てのアニオンに対して、最大99.9モル%の程度まで、好ましくは最大99.5モル%の程度までの炭酸イオンである。
【0017】
一実施形態において、遷移金属水酸化物の場合のアニオンは、本発明の当該粒子における全てのアニオンに対して、最大99.9モル%の程度まで、好ましくは最大99.5モル%の程度までの水酸化物イオンである。
【0018】
一実施形態において、遷移金属炭酸水酸化物の場合のアニオンは、本発明の当該粒子における全てのアニオンに対して、最大99.9モル%の程度まで、好ましくは最大99.5モル%の程度まで、例えば1:10から10:1の範囲内のモル比の炭酸イオンおよび水酸化物イオンである。
【0019】
例えば少なくとも0.1モル%、好ましくは少なくとも0.5モル%のさらなるアニオンは、例えば、本発明の球状粒子の生成のための原材料として使用される塩の酸化物イオンまたは対イオン、例えば硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、硝酸イオンまたはカルボン酸イオン、例えば酢酸イオンであってもよい。
【0020】
本発明の一実施形態において、本発明の粒子は、ニッケル、コバルト、マンガン、チタン、バナジウム、クロムおよび鉄から選択される少なくとも2種の遷移金属のカチオン、好ましくは上述の遷移金属の少なくとも3種のカチオンを含む。
【0021】
本発明の一実施形態において、本発明の粒子は、全てのカチオンに対して、主に、例えば少なくとも90モル%の程度までの、ニッケル、コバルト、マンガン、チタン、バナジウム、クロムおよび鉄から選択される少なくとも2種の遷移金属のカチオン、好ましくは少なくとも95モル%の程度までの、好ましくは上述の遷移金属の少なくとも3種のカチオンを含む。
【0022】
本発明の一実施形態において、本発明の粒子は、マンガン、コバルトおよびニッケル、ならびに任意に少なくとも1種のさらなる遷移金属のカチオンを含んでもよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、本発明の粒子は、主に、例えば少なくとも90モル%の程度までの、マンガン、コバルトおよびニッケル、ならびに任意に少なくとも1種のさらなる遷移金属のカチオンを含んでもよい。
【0024】
好ましくは、本発明の粒子は、測定不可能な、または極めて低い割合の、例えば遷移金属カチオンに対して僅か0.0001質量%から0.001質量%の範囲内のリチウムを含む。
【0025】
本発明の一実施形態において、本発明の粒子におけるニッケルの濃度は、当該粒子の半径にわたり測定して、40モル%から80モル%の範囲内であり、ここで、モル%は、全ての遷移金属に対するものである。これは、本発明に関連して、当該粒子全体におけるニッケルイオンの濃度が、40モル%以上80モル%以下であることを意味する。
【0026】
当該粒子の半径に対してプロットされた遷移金属カチオンの少なくとも1種の濃度、例えばニッケルカチオンまたはマンガンカチオンの濃度は、当該粒子の中心にも縁部にもない少なくとも1つの相対極値を有することが、本発明の粒子の独特の特徴である。好ましくは、当該粒子の半径に対してプロットされた少なくとも2種の異なる遷移金属カチオンの濃度は、それぞれ、少なくとも1つの極値を有し、極値は、好ましくは、互いに相補的であり、例えば、1種の遷移金属の濃度は相対的最大値を有し、第2の遷移金属の濃度は相対的最小値を有する。
【0027】
これに関連して、相対的最大値および相対的最小値に対する±1モル%以下の範囲内の濃度差は、本発明に関連して極値とはみなされないものとする。
【0028】
これに関連して、当該カチオンの濃度は、当該粒子の半径全体にわたり変化する必要はないが、一変形例において、半径の一部にわたり、例えば半分において、特に外側半分において変化してもよく、濃度は本質的に他の半分にわたり一定である。本発明の好ましい実施形態において、6μmから30μmまで、好ましくは15μmまでの範囲内の平均直径を有する本発明の粒子の場合、例えば最大5μmの直径を有するコアにおいては、各遷移金属カチオンの濃度は本質的に一定であり、コアの外側では上述のように変動する。
【0029】
当該粒子の半径に対してプロットされた遷移金属の少なくとも1種の濃度が、少なくとも1つの極点を有する場合が好ましい。当該粒子の半径に対してプロットされた少なくとも2つの異なる遷移金属カチオンの濃度が、それぞれ少なくとも1つの極点を有する場合が特に好ましく、極点は、好ましくは互いに相補的である。
【0030】
少なくとも2種の遷移金属カチオンの濃度、例えばニッケルカチオンおよびマンガンカチオンの濃度が、いくつかの相対極値および対応する数の極点を有する場合が、極めて特に好ましい。
【0031】
本発明の一実施形態において、本発明の粒子は、直径にわたり一定の濃度のコバルトを有する。
【0032】
本発明の一実施形態において、本発明の粒子は、直径にわたり一定の濃度のマンガンを有する。
【0033】
本発明の一実施形態において、遷移金属カチオンの1種または好ましくは2種の濃度は、極値および任意に極点を有するが、第3の遷移金属の濃度は、例えば±0.1モル%のスケールで本質的に一定である。
【0034】
本発明の極めて特に好ましい実施形態において、ニッケルおよびマンガンの濃度は、相対極値を有し、コバルトの濃度は本質的に一定のままである。
【0035】
本発明の一実施形態において、本発明の当該粒子内で、遷移金属の少なくとも1種のカチオンの濃度は、
連続関数の様式で、または10モル%以下のステップで、例えば、
連続関数の様式で、または5モル%以下のステップで、例えば2モル%から7モル%のステップで変化してもよい。
【0036】
本発明の一実施形態において、本発明の当該球状粒子内で、2つの相対極値の間の遷移金属の少なくとも1種のカチオンの濃度は、少なくとも6モル%だけ、好ましくは少なくとも10モル%だけ異なってもよい。
【0037】
遷移金属カチオンの濃度が10モルパーセント以下のステップで、または好ましくは2モル%から7モル%のステップで変化する場合、一定組成を有する層が本発明の粒子内に形成し得る。そのような層は、例えば、0.2μmから5μmの範囲内の厚さを有してもよく、その場合、少なくとも10μmの直径を有するそれらの粒子は、例えば、0.5μmの最大厚さを有する層を有してもよい。
【0038】
本発明の一実施形態において、本発明の粒子は、平均して、以下の式(I)に対応する組成を有する。
【0039】
Ni
aCo
bMn
cM
dO
e(OH)
f (I)
【0040】
式中、変数は以下のように定義される。
【0041】
Mは、MgもしくはAl、ならびに/またはFe、CrおよびVから選択される1種もしくは複数種の遷移金属であり、
aは、0.4から0.8、好ましくは0.48から0.65の範囲内であり、
bは、0.1から0.4、好ましくは0.15から0.25の範囲内であり、
cは、0.1から0.5、好ましくは0.15から0.35の範囲内であり、
dは、ゼロから0.2、好ましくはゼロから0.02の範囲内であり、
a+b+c+d=1であり、
eは、ゼロから1、好ましくは0.5から0.8の範囲内であり、
fは、0.5から2、好ましくは1.1から1.6の範囲内であり、
Ni、CoおよびMnの平均酸化状態は、2.1から3.2の範囲内である。
【0042】
これに関連して、Ni、CoおよびMnの平均酸化状態は、本発明の当該粒子における全ての遷移金属にわたり平均化された酸化状態を意味するように理解される。
【0043】
本発明の別の実施形態において、本発明の粒子は、平均して、以下の式(Ia)に対応する組成を有する。
【0044】
Ni
a’Co
b’Mn
c’M
d’O
e’(OH)
f’ (Ia)
【0045】
式中、変数は以下のように定義される。
【0046】
Mは、Mg、ならびに/またはFe、CrおよびVから選択される1種もしくは複数種の遷移金属であり、
a’は、0.1から0.4、好ましくは0.18から0.35の範囲内であり、
b’は、ゼロから0.3、好ましくは0.1から0.3の範囲内であり、
c’は、0.4から0.75、好ましくは0.48から0.67の範囲内であり、
d’は、ゼロから0.2、好ましくはゼロから0.05の範囲内であり、
a’+b’+c’+d’=1であり、
e’は、ゼロから1.2、好ましくは0.1から0.6の範囲内であり、
f’は、0.5から2、好ましくは1.0から1.9の範囲内であり、
Ni、CoおよびMnの平均酸化状態は、2.1から3.2の範囲内である。
【0047】
本発明の一実施形態において、本発明の粒子は、平均して、以下の式(II)に対応する組成を有する。
【0048】
Ni
a’Co
b’Mn
c’M
d’O
e’(OH)
j(CO
3)
h (II)
【0049】
式中、変数は以下のように定義される。
【0050】
Mは、Mgならびに/またはFe、CrおよびVから選択される1種もしくは複数種の遷移金属であり、
a’は、0.1から0.4、好ましくは0.18から0.35の範囲内であり、
b’は、ゼロから0.3、好ましくは0.1から0.3の範囲内であり、
c’は、0.4から0.75、好ましくは0.48から0.67の範囲内であり、
d’は、ゼロから0.2、好ましくはゼロから0.05の範囲内であり、
a’+b’+c’+d’=1であり、
e’は、ゼロから0.6、好ましくはゼロから0.2の範囲内であり、
hは、0.4から1、好ましくは0.7から1の範囲内であり、
jは、ゼロから0.2、好ましくは0.01から0.1の範囲内である。
【0051】
本発明の粒子は、リチウムイオン電池用の電極材料、特にリチウム化(リチウム含有)遷移金属混合酸化物の生成に極めて好適である。
【0052】
本発明は、さらに、省略して本発明の生成方法とも呼ばれる、本発明の粒子を生成するための方法をさらに提供する。本発明の生成方法は、好ましくは、いくつかの工程を含む方法である。本発明の好ましい実施形態において、本発明の生成方法は、
(A)少なくとも1種のアルカリ金属炭酸(水素)塩または少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物、および任意に少なくとも1種の化合物Lの水溶液を準備する工程と、
(B)全体として少なくとも2種の遷移金属を含む、遷移金属塩の少なくとも2種の水溶液(B1)および(B2)を準備する工程であって、水溶液(B1)および(B2)は、異なるモル比の遷移金属を有する工程と、
(C)少なくとも2つの撹拌槽の撹拌槽カスケード、またはバッチ反応器において、混合された遷移金属炭酸塩、遷移金属水酸化物または遷移金属炭酸水酸化物の沈殿を行い、
(C1)溶液(B1)および(B2)を、撹拌槽カスケードの様々な撹拌槽内に供給することにより、または
(C2)溶液(B1)および(B2)を、異なる時点または異なる量でバッチ反応器内に供給することにより、
異なる遷移金属濃度で沈殿をもたらす工程と、
(D)このようにして沈殿した球状粒子を取り出す工程とを含む。
【0053】
工程(A)の実行のためには、少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化カリウムもしくは好ましくは水酸化ナトリウム、または少なくとも1種のアルカリ金属炭酸(水素)塩が、水中に溶解される。対応する溶液は、本発明に関連して「溶液(A)」とも呼ばれる。
【0054】
アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属炭酸水素塩の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムから、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0055】
本発明の一実施形態において、溶液(A)は、1質量%から50質量%、好ましくは10質量%から25質量%の範囲内の濃度のアルカリ金属水酸化物を有する。本発明の別の実施形態において、溶液(A)は、1質量%から飽和溶液の最大値まで、NaHCO
3の場合では約10質量%まで、Na
2CO
3の場合では21.5質量%までの範囲(それぞれの場合において20℃における値、相応により高い温度の場合それ以上)の濃度のアルカリ金属炭酸(水素)塩を有する。
【0056】
本発明の一実施形態において、遷移金属に対して過剰のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属炭酸(水素)塩が使用される。モル過剰は、例えば、1.1:1から100:1の範囲内であってもよい。本発明の好ましい実施形態において、遷移金属に対して化学量論的量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属炭酸(水素)塩が使用される。
【0057】
溶液(A)は、少なくとも1種の化合物Lを含んでもよい。化合物Lは、遷移金属の少なくとも1種に対する配位子として機能してもよい。例えば、Lは、有機アミンまたは特にアンモニアであってもよい。本発明に関連して、水は、化合物Lとしてみなされるべきではない。
【0058】
本発明の好ましい実施形態において、十分な量の配位子L、より好ましくは十分な量のアンモニアが使用され、0.05モル/lから1モル/l、好ましくは0.1モル/lから0.7モル/lの配位子Lまたはアンモニアの範囲で母液中に量り入れられる。母液中のニッケル溶解度が1000pm以下、より好ましくは500ppm以下であるアンモニアの量が、極めて特に好ましい。「アンモニア濃度」は、アンモニウムを含むアンモニアの濃度を意味するように理解される。したがって、有機アミンはまた、有機プロトン化アミンも意味するように理解される。
【0059】
工程(B)の実行のためには、全体として少なくとも2種の異なる遷移金属を特に水溶性塩の形態で含む、少なくとも2種の異なる溶液(B1)および(B2)が作製され、水溶液(B1)および(B2)は、異なるモル比の遷移金属を有する。「水溶性」は、当該遷移金属塩が蒸留水中に20℃で少なくとも10g/l、好ましくは少なくとも50g/lの程度まで溶解することを意味するように理解される。その例は、好ましくはそのアコ錯体の形態の、ニッケル、コバルト、マンガン、チタン、バナジウム、クロムおよび鉄のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩および特に硫酸塩である。
【0060】
本発明の一実施形態において、水溶液(B1)および(B2)は、それぞれの場合において少なくとも2つの異なる遷移金属、好ましくは少なくとも3つの異なる遷移金属のカチオンを含む。
【0061】
水溶液(B1)および(B2)に関して、濃度は幅広い範囲内で選択され得る。好ましくは、濃度は、それらが全体で1モルから1.8モルの遷移金属/溶液kg、より好ましくは1.5モルから1.7モルの遷移金属/溶液kgの範囲内であるように選択される。
【0062】
水溶液(B1)および(B2)は、4から7の範囲内のpHを有してもよい。
【0063】
好ましくは、水溶液(B1)も水溶液(B2)も配位子Lを含まない。
【0064】
本発明の一実施形態において、水溶液(B1)中の遷移金属の少なくとも1種の割合は、水溶液(B2)中の割合から少なくとも5モル%だけ異なる。例えば、水溶液(B1)中のNi
2+の割合は、(B2)中よりも少なくとも5モル%高くてもよい。例えば、水溶液(B1)中のMn
2+の割合は、(B2)中よりも少なくとも5モル%低くてもよい。これに関連して、割合は、全遷移金属に対するものである。
【0065】
本発明による方法の工程(C)の実行のためには、手順は、少なくとも2つの撹拌槽の撹拌槽カスケード、またはバッチ反応器において、混合された遷移金属炭酸塩、遷移金属水酸化物または遷移金属炭酸水酸化物の沈殿を行い、
(C1)水溶液(B1)および(B2)を、撹拌槽カスケードの様々な撹拌槽内に供給することにより、または
(C2)溶液(B1)および(B2)を、異なる時点または異なる量でバッチ反応器内に供給することにより、
異なる遷移金属濃度で沈殿がもたらされる。
【0066】
工程(C)の実行を通して、沈殿は、異なる遷移金属濃度でもたらされる。これは、使用される異なる濃度の遷移金属カチオンおよび異なる濃度比の遷移金属カチオンが、経時的に液相に(変形例(C2))または局所的に(変形例(C1))存在することを意味するように理解される。したがって、撹拌槽カスケードにおける特定の場所で、またはバッチ反応器における特定の沈殿時間に存在する、使用される遷移金属カチオンの濃度比は、本発明の粒子内の様々な層または場所の組成を決定付ける。
【0067】
工程(C)の間、好ましくは、配位子Lなしで、またはそれと共に溶液(A)を量り入れることも可能である。
【0068】
一変形例において、工程(C)の間、溶液(A)およびそれとは別個に配位子Lが、または、一方は追加的に配位子Lを含み、他方は含まない2種の溶液(A)が、量り入れられる。
【0069】
工程(C)の実行のためには、手順は、好ましくは、遷移金属カチオンの少なくとも2種、例えばNi
2+、Mn
2+および任意にCo
2+の、沈殿の間変動するモル比で処理することであり、遷移金属カチオンの少なくとも1種、例えばNi
2+またはMn
2+または任意にCo
2+の濃度は、沈殿の間、少なくとも1つの極小もしくは極大、または好ましくは追加的に少なくとも1つの極点を通る。このために、バッチ反応器において処理することが望ましい場合、対応する遷移金属カチオンを含む異なる溶液を、沈殿の間中量り入れることができる。撹拌槽カスケードにおいて処理することが望ましい場合、対応する遷移金属カチオンを含む異なる水溶液(B1)および(B2)を、様々な撹拌槽内に量り入れることができる。
【0070】
工程(C)の実行のためには、手順は、好ましくは、Ni
2+、Mn
2+および任意にCo
2+の、沈殿の間変動するモル比で処理することであり、遷移金属の少なくとも1種、例えばCo
2+または好ましくはNi
2+および/またはMn
2+の濃度は、沈殿の間、少なくとも1つの極小もしくは極大、または好ましくは追加的に少なくとも1つの極点を通る。このために、バッチ反応器において処理することが望ましい場合、ニッケル塩、マンガン塩および任意にコバルト塩を含む異なる水溶液(B1)および(B2)を、沈殿の間中量り入れることができる。撹拌槽カスケードにおいて処理することが望ましい場合、ニッケル塩、マンガン塩および任意にコバルト塩を含む異なる水溶液(B1)および(B2)を、様々な撹拌槽内に量り入れることができる。
【0071】
手順は、好ましくは、最初に配位子Lを含む水溶液を撹拌容器内に投入すること、ならびに、工程(C)の段階で、ニッケル塩、マンガン塩および任意にコバルト塩を含む溶液(B1)と、同時に溶液(A)とを量り入れることである。計量添加は、母液のpHが10.5から11.3の範囲内にあるように制御される。次いで、異なるモル組成のニッケル塩、マンガン塩および任意にコバルト塩を含む溶液(B2)が量り入れられ、同時に、少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物または少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩または少なくとも1種のアルカリ金属炭酸水素塩を含むさらなる溶液(A)が量り入れられる。
【0072】
より好ましくは、手順は、最初に配位子Lを含む水溶液を撹拌容器内に投入すること、ならびに、工程(C)の段階で、ニッケル塩、マンガン塩および任意にコバルト塩を含む溶液(B1)と、同時に溶液(A)とを量り入れることである。計量添加は、母液のpHが10.5から11.3の範囲内であるように制御される。次いで、水溶液(B1)と、追加的に、(B1)とは異なるモル組成のニッケル塩、マンガン塩および任意にコバルト塩を含む水溶液(B2)と、同時に、少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物または少なくとも1種のアルカリ金属炭酸塩または少なくとも1種のアルカリ金属炭酸水素塩を含むさらなる溶液(A)とが量り入れられる。水溶液(B2)の計量添加は、徐々に、または突然に開始してもよい。水溶液(B2)の計量添加は、水溶液(B1)の計量添加に加えて、またはその代わりに達成され得る。
【0073】
本発明の一実施形態において、バッチ反応器で処理することが望ましい場合、遷移金属カチオンの濃度比を、一度だけではなく何回か変更することが可能である。
【0074】
例えば、まず、水溶液(B1)のみを、次いで水溶液(B2)および任意に水溶液(B1)を、次いで再び水溶液(B1)のみを、次いで再び水溶液(B2)および任意に水溶液(B1)を、例えば1回、または20回まで交互に量り入れることが可能である。
【0075】
別の変形例において、遷移金属カチオンの濃度比は、まず水溶液(B1)および水溶液(B2)を1つの比で、次いで別の比で、次いで再び第1の比で、次いで再び他の比で、例えば1回または20回まで交互に量り入れることにより、2回以上変更される。
【0076】
好ましい実施形態において、水溶液(B1)および(B2)は、少なくともある期間同時に量り入れられ、この場合、2種の溶液は、反応器に入る前に、例えば静的混合機内で混合される。
【0077】
本発明の一実施形態において、例えば、全水溶液(A)、(B1)および(B2)の合計のゼロ体積%から300体積%、好ましくはゼロ%から50%の範囲内の水が、撹拌容器内に連続的に、またはある期間導入される。
【0078】
本発明の一実施形態において、本発明の生成方法の工程(C)は、10℃から85℃の範囲内の温度、好ましくは20℃から50℃の範囲内の温度で行われる。
【0079】
本発明の一実施形態において、本発明の生成方法の工程(C)は、7.5から12.5、好ましくは11.3から12.0の範囲内のpHで行われる。工程(C)の実行の間のpHは、本質的に一定である、または最大0.2単位だけ増加する、または最大1.0単位だけ減少する、または最大0.2単位だけ変化してもよい。しかしながら、水酸化物の沈殿の場合、pHは、7.5の下限値を下回らない、または12.5の上限値を上回らない。炭酸塩を沈殿させることが望ましい場合、それぞれ母液中で23℃で測定される7.5〜8.5のpH範囲内で処理することが好ましい。
【0080】
本発明の一実施形態において、本発明の生成方法の工程(C)は、500mbarから20barの範囲内の圧力、好ましく標準圧力で行われる。
【0081】
本発明の生成方法の工程(C)の実行の間、水溶液(B1)または(B2)の供給速度は、それぞれの場合において一定であってもよく、またはある特定の限度内で変化されてもよい。
【0082】
本発明の生成方法の工程(C)は、空気下で、不活性ガス雰囲気下で、例えば希ガスもしくは窒素雰囲気下で、または還元雰囲気下で行われてもよい。還元ガスの例は、例えば、COおよびSO
2を含む。不活性ガス雰囲気下での処理が好ましい。
【0083】
工程(C)の実行の間、すでに沈殿した粒子を引き出すことなく、母液を撹拌槽カスケードまたはバッチ反応器から取り除くことが可能である。母液は、水、水溶性塩、および溶液中に存在する任意のさらなる添加剤を指す。有用な水溶性塩は、例えば、遷移金属の対イオンのアルカリ金属塩、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、ハロゲン化ナトリウム、特に塩化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、およびさらに追加的な塩、使用される任意の添加剤、および任意の過剰のアルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属水酸化物、およびさらに配位子Lを含む。さらに、母液は、微量の可溶性遷移金属塩を含んでもよい。沈殿した粒子を引き出さずに母液を取り除くための好適な装置の例は、沈降分離機、傾斜浄化機、遠心分離機、フィルタおよび浄化装置、ならびにさらに母液と粒子との間の密度差を利用する分離装置である。
【0084】
本発明の一実施形態において、2つのセクションに分割された衝撃浄化機を使用して母液を取り除くことができ、沈殿した粒子が取り出されるだけでなく、撹拌容器内での撹拌により懸濁液に導入された気泡も除去される。
【0085】
本発明の一実施形態において、手順は、バッチ反応器に接続された容器内で水溶液(B2)を生成し、次いでそれをバッチ反応器に量り入れることである。このために、例えば、バッチ反応器に接続された容器内において、水溶液(B1)がまず遷移金属のある特定のモル比で生成され、バッチ反応器内に量り入れられ得る。ある特定の割合の水溶液(B1)が量り入れられたら、遷移金属塩が異なる遷移金属モル比で添加され、水溶液(B2)が生成される。次いで、水溶液(B2)がバッチ反応器内に量り入れられる。この実施形態において、水溶液(B2)は、好ましくは一定の組成を有さない。
【0086】
本発明の一実施形態において、水溶液(B1)および(B2)の遷移金属カチオンのモル比とは異なるモル比の遷移金属カチオンを含む第3の水溶液(B3)が提供され、これがカスケードの第3の撹拌槽内に、または異なる時点でバッチ反応器内に量り入れられる。
【0087】
本発明の一実施形態において、手順は、母液中の可溶性Ni
2+塩の濃度が1000ppm未満であり、可溶性Co
2+塩およびMn
2+塩の濃度がそれぞれ200ppm未満であるように、好ましくは母液中の可溶性Ni
2+塩の濃度が400ppm未満であり、可溶性Co
2+塩およびMn
2+塩の濃度がそれぞれ50ppm未満であるように、Lの濃度およびpHが選択されることである。可溶性Ni
2+塩、Co
2+塩およびMn
2+塩の総計の下限値は、それぞれの場合において5ppmである。
【0088】
Lの濃度は、一定のままであってもよく、または、好ましくは工程Lの実行の間変動してもよく、より好ましくは、例えば、母液と共に取り除かれるものより少ない配位子Lを添加することにより低下される。
【0089】
本発明の一実施形態において、方法は、形成する懸濁液に2W/lを超える、好ましくは4W/lを超えるエネルギーを導入するために撹拌することを含む。一変形例において、反応時間の間エネルギー入力が変更され、例えば、本発明の生成方法の実行の間撹拌することにより、エネルギー入力を変化させることが可能である。特定の変形例において、手順は、反応時間の最初の3分の1の間、例えば4W/l、5.5W/lまたは6.3W/lでのその後の3分の2よりも高い平均撹拌機入力、例えば8W/lで処理することである。好ましい実施形態において、20W/l以下の平均撹拌機出力が導入される。
【0090】
本発明の一実施形態において、工程(C)は、バッチ反応器において処理する場合、30分から最長48時間の期間にわたり実行され得る。
【0091】
撹拌槽カスケードにおいて処理することが望ましい場合、工程(C)の期間は、理論的には制限されず、平均滞留時間は、30分から最長48時間の範囲内であってもよい。
【0092】
本発明の生成方法の工程(D)において、このようにして生成された本発明の粒子は、母液から特定して取り出される。取り出しは、例えば、濾過、遠心分離、デカンテーション、噴霧乾燥もしくは沈降により、または上述の操作の2つ以上の組合せにより達成され得る。好適な装置は、例えば、フィルタプレス、ベルトフィルタ、噴霧乾燥機、液体サイクロン、傾斜浄化機、または上述の装置の組合せである。
【0093】
取り出しを改善するために、例えば、純水で、またはアルカリ金属炭酸塩もしくはアルカリ金属水酸化物の水溶液で、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムもしくはアンモニアの水溶液で洗浄することが可能である。水、およびアルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムの水溶液が好ましい。
【0094】
洗浄は、例えば、上昇した圧力、または30℃から50℃等の上昇した温度の使用と共に達成されてもよい。別の変形例において、洗浄は、室温で行われる。洗浄の効率は、分析的尺度により確認され得る。例えば、洗浄水中の遷移金属の含量が分析され得る。一変形例において、洗浄水の電気伝導性が測定され得る。
【0095】
アルカリ金属水酸化物の水溶液ではなく水で洗浄が達成される場合、洗浄水に対する導電性試験を利用して、水溶性物質、例えば水溶性塩がまだ洗い流され得るかどうかを確認することが可能である。
【0096】
本発明の粒子の取り出しの後に乾燥が行われてもよい。乾燥は、例えば、不活性ガスまたは空気で行われてもよい。乾燥は、例えば、30℃から150℃の範囲内の温度で行われてもよい。乾燥が空気で行われる場合、多くの場合において、いくつかの遷移金属が部分酸化され、例えばMn
2+がMn
4+に、およびCo
2+がCo
3+に酸化されるのが観察され、本発明の粒子の黒変が観察される。空気で乾燥することが好ましい。
【0097】
本発明の粒子は、リチウムイオン電池用のカソード材料への変換に良好な適合性を有する。したがって、本発明は、さらに、リチウム含有遷移金属混合酸化物の生成に本発明の粒子を使用する方法を提供する。本発明は、さらに、省略して本発明の操作とも呼ばれる、本発明の粒子を使用してリチウム含有遷移金属混合酸化物を生成するための方法を提供する。
【0098】
本発明の操作の実行のためには、手順は、例えば、本発明の粒子を少なくとも1種のリチウム化合物と混合し、それらを500℃から1000℃の範囲内の温度で互いに反応させることであってもよい。
【0099】
選択されるリチウム化合物は、好ましくは、それぞれの場合において無水物形態の、または存在する場合には水和物としてのリチウム塩、例えばLi
2O、LiOH、LiNO
3、Li
2SO
4、LiClまたはLi
2CO
3であってもよく、好ましくは、例えば一水和物としてのLiOHであり、特に好ましくはLi
2CO
3である。
【0100】
本発明の粒子およびリチウム化合物の量は、カソード材料の所望の化学量論性が得られるように選択される。全遷移金属および任意のMの総計に対するリチウムのモル比が、1:1から1.3対1、好ましくは1.01対1から1.1対1の範囲内であるように、本発明の粒子およびリチウム化合物を選択することが好ましい。
【0101】
500℃から1000℃での変換は、炉内で、例えば回転式管炉内、マッフル炉内、ペンデュラム炉内、ローラハース炉内、またはプッシュスルー炉内で行われてもよい。上述の炉の2つ以上の組合せもまた可能である。
【0102】
500℃から1000℃での変換は、30分から24時間の期間にわたり行われてもよい。1つの温度で変換する、または温度プロファイルを実行することが可能である。
【0103】
変換が500℃から1000℃で、例えば100℃で、または少なくとも925℃で、非常に長い期間にわたり、例えば24時間行われる場合、ニッケル、マンガン、コバルトおよび任意のMのカチオンの拡散が観察され得る。この拡散は、望ましくなり得る。しかしながら、本発明の球状粒子の生成のためには、1000℃で、または好ましくは925℃で、より短い期間にわたり、例えば30分から4時間変換を行うことが好ましい。950℃での本発明の粒子の生成が望ましい場合、30分から4時間の範囲内の期間が好ましく、900℃の温度では、30分から6時間の範囲が好ましい。
【0104】
本発明の操作の実行は、同様に本発明の主題の一部を形成する、微粒子形態のリチウム含有遷移金属混合酸化物をもたらす。
【0105】
本発明は、特に、省略して本発明の混合酸化物または本発明の遷移金属混合酸化物と呼ばれる、微粒子形態のリチウム含有遷移金属混合酸化物を提供する。本発明の混合酸化物は、ニッケル、コバルト、マンガン、チタン、バナジウム、クロムおよび鉄から選択される少なくとも2種の遷移金属のカチオンを有し、当該遷移金属混合酸化物の半径に対してプロットされた遷移金属カチオンの少なくとも1種の濃度は、少なくとも1つの相対極値を有することが、本発明の混合酸化物の独特の特徴である。
【0106】
本発明の混合酸化物は、球状粒子の形態である。これに関連して、本発明の粒子の場合と同様に、球状粒子は、厳密に球状であるものだけではなく、代表的試料の少なくとも95%(数平均)の最大および最小直径が、5%以下だけ異なる粒子も含むものとする。
【0107】
粒子内の遷移金属イオンの移動度は、本発明の操作の間極めて低いことが観察される。したがって、本発明の粒子に関連する組成の均一性に関して成される記述は、本発明の混合酸化物にも相応に適用される。
【0108】
本発明の一実施形態において、本発明の混合酸化物の粒子は、一次粒子の凝集体として存在する。一次粒子は、例えば、10nmから500nmの範囲内の平均直径を有してもよい。
【0109】
本発明の混合酸化物の粒子は、例えば光散乱により測定された、0.1μmから35μm、好ましくは2μmから30μmの範囲内のメジアン径(D50)を有してもよい。好適な機器は市販されており、例えばMalvern Mastersizerである。
【0110】
本発明の一実施形態において、本発明の混合酸化物の粒子は、狭い粒径分布を有する。例えば、以下の不等式が満足されることが好ましい:0.5(D10)≧(D50)および(D90)≦1.7(D50)。
【0111】
本発明の一実施形態において、本発明の混合酸化物の粒子は、最大10m
2/gのBET表面積を有する。好ましくは、本発明の混合酸化物の粒子は、少なくとも0.1m
2/gのBET表面積を有する。
【0112】
本発明は、リチウムイオン電池用のカソード材料として、またはその生成のために、本発明の混合酸化物を使用する方法を提供する。
【0113】
カソード材料は、本発明の混合酸化物と同様に、電気伝導性の多形体としての、例えばカーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブまたは活性炭の形態の炭素を含んでもよい。
【0114】
カソード材料は、少なくとも1種の結合剤、例えばポリマー結合剤をさらに含んでもよい。
【0115】
好適な結合剤は、好ましくは、有機(コ)ポリマーから選択される。好適な(コ)ポリマー、すなわちホモポリマーまたはコポリマーは、例えば、アニオン、触媒またはフリーラジカル(共)重合により得られる(コ)ポリマーから、特にポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ならびに、エチレン、プロピレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンから選択される、少なくとも2種のコモノマーのコポリマーから選択され得る。ポリプロピレンもまた好適である。さらに、ポリイソプレンおよびポリアクリレートも追加的に好適である。ポリアクリロニトリルが特に好ましい。
【0116】
ポリアクリロニトリルは、本発明に関連して、ポリアクリロニトリルホモポリマーだけでなく、アクリロニトリルの1,3−ブタジエンまたはスチレンとのコポリマーも意味するように理解される。ポリアクリロニトリルホモポリマーが特に好ましい。
【0117】
本発明に関連して、ポリエチレンは、ホモポリエチレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合形態のエチレンおよび最大50モル%の少なくとも1種のさらなるコモノマー、例えば、プロピレン、ブチレン(1−ブテン)、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ペンテンおよびさらにイソブテン等のα−オレフィン、ビニル芳香族、例えばスチレン、ならびにさらに(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸のC
1〜C
10−アルキルエステル、特にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ならびにさらにマレイン酸、無水マレイン酸、および無水イタコン酸を含む、エチレンのコポリマーも意味するように理解される。ポリエチレンは、HDPEまたはLDPEであってもよい。
【0118】
本発明に関連して、ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合形態のプロピレン、および最大50モル%の少なくとも1種のさらなるコモノマー、例えばエチレン、ならびにブチレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンおよび1−ペンテン等のα−オレフィンを含むプロピレンのコポリマーも意味するように理解される。ポリプロピレンは、好ましくは、アイソタクチックまたは本質的にアイソタクチックのポリプロピレンである。
【0119】
本発明に関連して、ポリスチレンは、スチレンのホモポリマーだけでなく、アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC
1〜C
10−アルキルエステル、ジビニルベンゼン、特に1,3−ジビニルベンゼン、1,2−ジフェニルエチレンおよびα−メチルスチレンとのコポリマーも意味するように理解される。
【0120】
別の好ましい結合剤は、ポリブタジエンである。
【0121】
他の好適な結合剤は、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリイミドおよびポリビニルアルコールから選択される。
【0122】
本発明の一実施形態において、結合剤は、50000g/モルから1000000g/モルまで、好ましくは500000g/モルまでの範囲内の平均分子量M
wを有する(コ)ポリマーから選択される。
【0123】
結合剤は、架橋または非架橋(コ)ポリマーであってもよい。
【0124】
本発明の特に好ましい実施形態において、結合剤は、ハロゲン化(コ)ポリマーから、特にフッ素化(コ)ポリマーから選択される。ハロゲン化またはフッ素化(コ)ポリマーは、共重合形態において、分子当たり少なくとも1つのハロゲン原子または少なくとも1つのフッ素原子、好ましくは分子当たり少なくとも2つのハロゲン原子または少なくとも2つのフッ素原子を有する少なくとも1種の(コ)モノマーを含む(コ)ポリマーを意味するように理解される。
【0125】
その例は、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP)、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレンコポリマー、パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、およびエチレン−クロロフルオロエチレンコポリマーである。
【0126】
好適な結合剤は、特に、ポリビニルアルコールおよびハロゲン化(コ)ポリマー、例えば、ポリ塩化ビニルまたはポリ塩化ビニリデン、特にフッ素化(コ)ポリマー、例えばポリフッ化ビニルおよび特にポリフッ化ビニリデン、ならびにポリテトラフルオロエチレンである。
【0127】
電気伝導性炭素質材料は、例えば、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンおよび上記物質の少なくとも2種の混合物から選択され得る。本発明に関連して、電気伝導性炭素質材料はまた、省略して炭素(B)と呼ぶこともできる。
【0128】
本発明の一実施形態において、電気伝導性炭素質材料は、カーボンブラックである。カーボンブラックは、例えばランプブラック、ファーネスブラック、フレームブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックおよびインダストリアルブラックから選択され得る。カーボンブラックは、不純物、例えば炭化水素、特に芳香族炭化水素、または酸素含有化合物もしくは酸素含有基、例えばOH基を含んでもよい。さらに、カーボンブラック中の硫黄または鉄含有不純物が可能である。
【0129】
一変形例において、電気伝導性炭素質材料は、部分酸化カーボンブラックである。
【0130】
本発明の一実施形態において、電気伝導性炭素質材料は、カーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブ(省略してCNT)、例えば単層カーボンナノチューブ(SWCNT)および好ましくは多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は、それ自体知られている。それを生成するための方法およびいくつかの特性は、例えば、A.Jessらにより、Chemie Ingenieur Technik 2006、78、94〜100頁において説明されている。
【0131】
本発明の一実施形態において、カーボンナノチューブは、0.4nmから50nm、好ましくは1nmから25nmの範囲内の直径を有する。
【0132】
本発明の一実施形態において、カーボンナノチューブは、10nmから1mm、好ましくは100nmから500nmの範囲内の長さを有する。
【0133】
本発明に関連して、グラフェンは、個々のグラファイト層に類似した構造の、ほぼ理想的に、または理想的に二次元の六角網炭素結晶を意味するように理解される。
【0134】
本発明の一実施形態において、本発明の遷移金属混合酸化物および電気伝導性炭素質材料の質量比は、200:1から5:1、好ましくは100:1から10:1の範囲内である。
【0135】
本発明のさらなる態様は、上述のように生成された少なくとも1種の遷移金属混合酸化物、少なくとも1種の電気伝導性炭素質材料および少なくとも1種の結合剤を含むカソードである。
【0136】
本発明の遷移金属混合酸化物および電気伝導性炭素質材料は、上で説明されている。
【0137】
本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明のカソードを使用して製造された電気化学セルを提供する。本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明のカソードを含む電気化学セルを提供する。
【0138】
本発明の一実施形態において、本発明に従って生成されたカソード材料は、
60質量%から98質量%、好ましくは70質量%から96質量%の範囲内の本発明の遷移金属混合酸化物と、
1質量%から20質量%、好ましくは2質量%から15質量%の範囲内の結合剤と、
1質量%から25質量%、好ましくは2質量%から20質量%の範囲内の電気伝導性炭素質材料とを含む。
【0139】
本発明のカソードの構成は、幅広い限度内で選択され得る。本発明のカソードを薄いフィルムとして、例えば10μmから250μm、好ましくは20μmから130μmの範囲内の厚さを有するフィルムとして構成するのが好ましい。
【0140】
本発明の一実施形態において、本発明のカソードは、未処理またはシリコン処理されていてもよい箔またはフィルム、例えば金属箔、特にアルミニウム箔、またはポリマーフィルム、例えばポリエステルフィルムを含む。
【0141】
本発明は、さらに、電気化学セルにおいて本発明のカソード材料または本発明のカソードを使用する方法を提供する。本発明は、さらに、本発明のカソード材料または本発明のカソードを使用して電気化学セルを製造するための方法を提供する。本発明は、さらに、少なくとも1つの本発明のカソード材料または少なくとも1つの本発明のカソードを備える電気化学セルを提供する。
【0142】
本発明の電気化学セルは、本発明に関連して、アノードとして定義され、例えば炭素アノード、特にグラファイトアノード、リチウムアノード、ケイ素アノードまたはチタン酸リチウムアノードであってもよい対極を備える。
【0143】
本発明の電気化学セルは、例えば、電池または蓄電池であってもよい。
【0144】
本発明の電気化学セルは、アノードおよび本発明のカソードと同様に、さらなる構成要素、例えば導電性塩、非水溶媒、隔壁、例えば金属または合金で作製された出力導体、ならびにさらにケーブル接続および筐体を備えてもよい。
【0145】
本発明の一実施形態において、本発明の電気セルは、好ましくはポリマー、環式または非環式エーテル、環式および非環式アセタール、ならびに環式または非環式有機カーボネートから選択される、室温で液体または固体であってもよい少なくとも1種の非水溶媒を含む。
【0146】
好適なポリマーの例は、特に、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリ−C
1〜C
4−アルキレングリコール、特にポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、20モル%までの共重合形態の1種または複数種のC
1〜C
4−アルキレングリコールを含んでもよい。ポリアルキレングリコールは、好ましくは、二重にメチルまたはエチルキャッピングされたポリアルキレングリコールである。
【0147】
好適なポリアルキレングリコール、特に、好適なポリエチレングリコールの分子量M
wは、少なくとも400g/モルであってもよい。
【0148】
好適なポリアルキレングリコール、特に、好適なポリエチレングリコールの分子量M
wは、5000000g/モルまで、好ましくは2000000g/モルまでであってもよい。
【0149】
好適な非環式エーテルの例は、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンであり、1,2−ジメトキシエタンが好ましい。
【0150】
好適な環式エーテルの例は、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンである。
【0151】
好適な非環式アセタールの例は、例えば、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、1,1−ジメトキシエタンおよび1,1−ジエトキシエタンである。
【0152】
好適な環式アセタールの例は、1,3−ジオキサン、および特に1,3−ジオキソランである。
【0153】
好適な非環式有機カーボネートの例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートである。
【0154】
好適な環式有機カーボネートの例は、一般式(III)および(IV)
【化1】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、同じまたは異なっていてもよく、それぞれ、水素ならびにC
1〜C
4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルから選択され、R
2およびR
3は、好ましくは、両方ともtert−ブチルではない)の化合物である。
【0155】
特に好ましい実施形態において、R
1はメチル、R
2およびR
3はそれぞれ水素であり、または、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ水素である。
【0156】
別の好ましい環式有機カーボネートは、式(V)のビニレンカーボネートである。
【0158】
いわゆる無水状態の、すなわち、例えばKarl Fischer滴定により決定され得る1ppmから0.1質量%の範囲内の含水量を有する溶媒を使用することが好ましい。
【0159】
本発明の電気化学セルは、少なくとも1種の導電性塩をさらに備える。好適な導電性塩は、特にリチウム塩である。好適なリチウム塩の例は、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiC(C
nF
2n+1SO
2)
3、リチウムイミド、例えばLiN(C
nF
2n+1SO
2)
2(式中、nは、1から20の範囲内の整数である)、LiN(SO
2F)
2、Li
2SiF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、および一般式(C
nF
2n+1SO
2)
tYLi(式中、tは、以下のように定義される)の塩である。
【0160】
Yが水素および硫黄から選択される場合、t=1、
Yが窒素およびリンから選択される場合、t=2、および
Yが炭素およびケイ素から選択される場合、t=3。
【0161】
好ましい導電性塩は、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4から選択され、LiPF
6およびLiN(CF
3SO
2)
2が特に好ましい。
【0162】
本発明の一実施形態において、本発明の電気化学セルは、それにより電極が互いに機械的に分離される1つまたは複数の隔壁を備える。好適な隔壁は、金属リチウムに対して非反応性であるポリマーフィルム、特に多孔質ポリマーフィルムである。隔壁として特に好適な材料は、ポリオレフィン、特に多孔質ポリエチレンフィルムおよび多孔質ポリプロピレンフィルムである。
【0163】
特にポリエチレンまたはポリプロピレンのポリオレフィン隔壁は、35%から45%の範囲内の空隙率を有してもよい。好適な細孔径は、例えば、30nmから500nmの範囲内である。
【0164】
本発明の別の実施形態において、隔壁は、無機粒子が充填されたPET不織物から選択され得る。そのような隔壁は、40%から55%の範囲内の空隙率を有してもよい。好適な細孔径は、例えば、80nmから750nmの範囲内である。
【0165】
本発明の電気化学セルは、任意の形状、例えば立方体様または扁平円筒形状であってもよい筐体をさらに備える。一変形例において、使用される筐体は、袋として加工された金属箔である。
【0166】
本発明の電気化学セルは、高電圧を提供し、高いエネルギー密度および良好な安定性に関して優れている。より具体的には、本発明の電気化学セルは、特に比較的高い動作温度(35〜60℃)において、エネルギー密度の点でのいかなる欠点もなしに、改善されたレート特性およびサイクル安定性を有する。
【0167】
本発明の電気化学セルは、例えば直列接続または並列接続で互いに組み合わされてもよい。直列接続が好ましい。
【0168】
本発明は、さらに、デバイス、特に移動型デバイスにおいて本発明の電気化学セルを使用する方法を提供する。移動型デバイスの例は、乗り物、例えば自動車、自転車、飛行機、またはボートもしくは船舶等の水上の乗り物である。移動型デバイスの他の例は、携帯可能なもの、例えばコンピュータ、特にラップトップ、電話、または例えば建築部門からの電力ツール、特にドリル、電池式スクリュードライバーもしくは電池式タッカーである。
【0169】
デバイスにおいて本発明の電気化学セルを使用する方法は、充電前のより長い動作時間の利点を提供する。本発明が、より低いエネルギー密度を有する電気化学セルで等しい実行時間を達成するとした場合、より重い質量の電気化学セルが受け入れられなければならない。
【0170】
本発明は、実施例によりさらに例示される。
【0171】
概説:リットルは、別段に指定されない限り、標準リットルを意味するように理解されたい。本発明に関連するパーセンテージは、別段に明示されない限り、質量%である。前駆体中の元素分布は、SEM−EDX(エネルギー分散X線分光器を備えた走査型電子顕微鏡)により決定された。
【0172】
I.カソード材料の生成
I.1 前駆体−遷移金属水酸化物の球状粒子の生成
実施例および比較例は、8lの全容積を有する反応器システムにおいて行われ、反応器システムは、7lの容積を有する撹拌槽、および、1lの容積を有する、セジメンタを備える傾斜浄化器の組合せの形態をとる固体/液体分離装置を備えていた。分離装置を使用して、反応の間、同時に固体を引き出すことなくポンプを用いて撹拌槽から液相を取り除くことが可能であった。
【0173】
最初に、反応器システムに8lの硫酸アンモニウム溶液(36gの(NH
4)
2SO
4/溶液kgの濃度)を充填し、45℃に加熱した。
【0174】
反応の間、撹拌槽の内容物を常に混合し、内容物に対して約45ワットの機械的処理を行った。したがって、撹拌槽における特定の電力入力は、1リットル当たり約6.4ワットであった。分離装置において、撹拌器出力は導入されなかった。
【0175】
反応器システムは、ピッチブレード撹拌器およびバッフルを装備していた。撹拌器電力は、トルク測定と共に電気モータを使用し、速度およびトルクから測定した。さらに、反応器システムは、計量ポンプを有するいくつかの計量ユニット、ならびにpH測定用電極および温度センサを有していた。さらに、撹拌槽内には充填レベルセンサが存在し、これにより、撹拌槽内のレベルが本質的に一定を維持するように、分離装置の液体側接続における排出ポンプが制御された。固体は、分離装置から再び反応器内に再循環される。
【0176】
沈殿の実行の間、反応器システム内のガス空間(2l)は、40l/hの窒素によりパージされた。
【0178】
水溶液(A):溶液のkg当たり5.59モルのNaOH、および溶液のkg当たり1.55モルのNH
3を含み、25質量%のNaOH水溶液および25質量%のアンモニア水溶液から生成された。
【0179】
水溶液(B1):溶液のkg当たり1.275モルの硫酸ニッケル、および溶液のkg当たり0.375モルの硫酸コバルトを含み、対応する水和物錯体を水中に溶解することにより生成された。
【0180】
水溶液(B2):溶液のkg当たり0.579モルの硫酸ニッケル、溶液のkg当たり0.347モルの硫酸コバルト、および溶液のkg当たり0.724モルの硫酸マンガンを含み、対応する水和物錯体を水中に溶解することにより生成された。
【0181】
水溶液(C):溶液のkg当たり6.25モルのNaOHを含んでいた。
【0182】
水溶液(A)、(B1)および(B2)は、計量ポンプを用いて量り入れられ、溶液(C)は、撹拌槽内のpHが一定を維持するように量り入れられた(pH制御)。
【0183】
実験手順
溶液(C)を添加することにより、上述の硫酸アンモニウム溶液を、23℃で測定してpH11.82まで調整した。次いで、計量ポンプを使用して、反応器システムの撹拌槽の撹拌ブレードに近い乱流ゾーン内に、溶液(B1)、(B2)および(A)を一定の質量流量(780/170/516g/h)で量り入れた。溶液(B1)および(B2)は、反応器に入れる前に静的混合機内で予め混合した。制御デバイスを用いて、溶液(C)の添加により、pHを11.82(23℃で測定)で一定に維持した。懸濁液が形成された(粒子中のモル比:Ni:Co:Mn=70:22:8)。6時間後、(B1)の場合170g/h、および(B2)の場合780g/hの流量が3時間後に達成されるように、(B1)および(B2)の流量を変更した(モル比Ni:Co:Mn=43:21:36)。流量は、直線的に、すなわち単位時間当たり一定の流量変化で変化させた。次いで、流量(B1)および(B2)を、それぞれ170g/hまたは780g/hで1時間維持した。この後に、以下のように流量をさらに変化させた。
【0184】
− 780g/h(B1)および170g/h(B2)への3時間にわたる直線的変化、
− 780g/h(B1)および170g/h(B2)で1時間の一定流量、
− 170g/h(B1)および780g/h(B2)への3時間にわたる直線的変化、
− 170g/h(B1)および780g/h(B2)で3時間の一定流量、
− 780g/h(B1)および170/h(B2)への3時間にわたる直線的変化、
− 780g/h(B1)および170g/h(B2)で3時間の一定流量、
− 170g/h(B1)および780g/h(B2)への3時間にわたる直線的変化、
− 170g/h(B1)および780g/h(B2)で4時間の一定流量。
【0185】
全実行時間は33時間であり、次いで供給なしで混合物をさらに15分間撹拌した。
【0186】
これにより、57:22:21のNi:Co:Mnモル比を有する遷移金属水酸化物の懸濁液が得られた。反応器内容物(撹拌槽および浄化装置の内容物)として得られた遷移金属水酸化物懸濁液を、吸引フィルタにより濾過し、濾過ケーキを水で洗浄し、105℃で18時間の期間にわたり乾燥させた。このようにして得られる本発明の粒子は、それぞれの場合において粒子に対して37質量%のニッケル、14.6質量%のコバルト、および12.9質量%のマンガンの組成を有し、部分酸化形態であった。粒子を篩い分けし(メッシュサイズ32μm;粗材料:0.2%)、重装かさ密度を測定した(2.12kg/l)。一部を水中に懸濁させ、光散乱(Malvern Mastersizer 2000)により粒子サイズを測定した。メジアン粒子サイズD50は12.4μmであり、狭い粒径分布を有していた(D10=9.1μm;D90=16.9μm)。
【0187】
本発明の遷移金属水酸化物の粒子は、半径にわたり測定して、ニッケルの3つの相対的最大値を有し(マンガンの3つの相対的最小値を有する)、これらは、当該粒子の縁部にも中心にもなかった。コバルトの濃度は、それぞれの場合において一定であった。
【0188】
I.2 本発明のリチウム化遷移金属混合酸化物の生成
このようにして得られた粒子を、微細化された炭酸リチウムと密に混合し、存在する遷移金属の総計に対するリチウムのモル比は、1.03であった。この混合物の一部(40g)を、マッフル炉内で、酸素雰囲気中で熱処理した(最高温度:900℃)。約30gの本発明の活性材料(AM.1)が得られた。これを篩い分けした(メッシュサイズ32μm;粗材料なし)。事実上凝集体のない粉末が得られ、これは、本発明の電極を製造するために加工可能であった。
【0189】
本発明の活性材料における炭酸リチウム(Li
2CO
3)の粒子サイズ(D50)、重装かさ密度および残留含量を測定した。粒径D50:14.1μm;重装かさ密度:2.34kg/l;Li
2CO
3:0.23質量%。
【0190】
II.本発明の電極および本発明の電気化学セルの製造のための一般的方法
【0191】
使用される材料:
結合剤(BM.1):溶液としてのフッ化ビニリデンのポリマー、NMP中10質量%、Arkema, Inc.からKynar(登録商標)HSV900として粉末が市販されている。
【0192】
電気伝導性炭素質材料:
炭素1:カーボンブラック、約60m
2/gのBET表面積、Timcalから「Super C65」として市販されている。
炭素2:グラファイト、Timcalから「SFG6L」として市販されている。
【0193】
%での数値は、別段に明示されない限り質量パーセントに関する。
【0194】
本発明の活性材料(AM.1)の例を使用した一般的方法:
0.87gの炭素1、1.46gの炭素2および17.25gの結合剤(BM.1)を、19.5gのN−メチルピロリドン(NMP)の添加と共に混合すると、ペーストが得られた。次の工程において、4.35gのこのペーストを、6.0gの本発明の活性材料(AM.1)と混合した。厚さ30μmのアルミニウム箔を、上述のペーストでコーティングした(活性材料投入量約12mg/cm
2)。105℃で乾燥させた後、このようにしてコーティングされたアルミニウム箔の円形部(直径17.5mm)を打ち出した。このようにして得ることができる電極を使用して、本発明の電気化学セルEC.1を製造した。
【0195】
使用された電解質は、2質量%のビニリデンカーボネートをさらに含む、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(質量部に基づいて1:1)中のLiPF
6の1モル/l溶液であった。アノードは、ガラス繊維紙で作製された隔壁によりカソードから分離されたグラファイトコーティング銅箔からなっていた。
【0196】
その後、室温でセルを組み立て、60℃でサイクルに供した。サイクル電流は、カソードの活性材料に対して75A/kgであり、またレート特性を、約50サイクルの間隔で、150Ah/kg、300Ah/kgおよび450Ah/kgで測定した。選択された電圧範囲は、2.8ボルトから4.1ボルトであった。
【0197】
充電は、上限スイッチオフ電圧に達するまで75A/kgで行い、次いで、さらに30分間、一定電圧で充電を達成した。下限スイッチオフ電圧に達するまで、放電を常に行った。
【0198】
EC.1:セルは、本発明の材料を備える。
【0199】
C−EC.1:セルは、本発明の材料と同等の平均組成を有するが、極値を有さずに半径方向に一定に変化する遷移金属組成を有する材料を備える。粒径D50:15.4μm;重装かさ密度:2.21kg/l;Li
2CO
3:0.24質量%。残りに関しては、電極およびセルは、本発明によるものに対応する。
【0200】
C−EC.2:セルは、本発明と同等の平均組成を有するが、半径方向において本質的に一定の遷移金属組成を有する材料を備える。粒径D50:13.2μm;重装かさ密度:2.22kg/l;Li
2CO
3:0.25質量%。残りに関しては、電極およびセルは、本発明によるものに対応する。