(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367316
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】デヒドロローズオキシドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 309/18 20060101AFI20180723BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20180723BHJP
【FI】
C07D309/18
!C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-513366(P2016-513366)
(86)(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公表番号】特表2016-519141(P2016-519141A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】EP2014060003
(87)【国際公開番号】WO2014184311
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2017年5月11日
(31)【優先権主張番号】13168094.4
(32)【優先日】2013年5月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】シュレムス,マルクス ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】エッゲルト,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ヤン ウヴェ
(72)【発明者】
【氏名】アルント,ヤン−ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ゴットヴァルト,ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ヒュット,フォルカー
【審査官】
齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】
ソ連国特許発明第00825528(SU,A)
【文献】
特表2011−506552(JP,A)
【文献】
特開2005−104955(JP,A)
【文献】
Tyman, J. H. P. et al.,Tetrahedron Letters,1970年,no.51,p.4507-4508
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの4-メチレン-2-(2-メチルプロパ-1-エニル)-テトラヒドロピラン(デヒドロローズオキシド)
【化1】
を製造する方法であって、
式IIの3-メチルブタ-3-エン-1-オール(イソプレノール)及び式IIIの3-メチルブタ-2-エナール(プレナール)
【化2】
を、触媒としての式R
1-SO
3H(式中、R
1は、2つ又は3つのC
1〜C
4-アルキル置換基を有するフェニル、1つのC
8〜C
20-アルキル置換基を有し、さらに1つ又は2つのC
1〜C
4-アルキル置換基を有していてもよいフェニル、及び1つ又は2つのC
1〜C
4-アルキル置換基を有していてもよいナフチルから選択される)で表される少なくとも1種のスルホン酸の存在下で反応させるステップを含む、前記方法。
【請求項2】
R1が、2つ又は3つのC1〜C4-アルキル置換基、又は1つのC8〜C20-アルキル置換基を有するフェニル、及びナフチルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1が、1つのC8〜C20-アルキル置換基を有するフェニルから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
R1が、1つのC10〜C14-アルキル置換基を有するフェニルから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
R1が、2つ又は3つのC1〜C4-アルキル置換基を有するフェニルから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
R1が、2つ又は3つのC1〜C4-アルキル置換基を有するフェニルから選択され、前記C1〜C4-アルキル置換基の1つ又は2つが、SO3H基に対してオルト位に結合している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、使用される3-メチルブタ-3-エン-1-オールの量に対して、0.01〜1 mol%の量で使用される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
3-メチルブタ-3-エン-1-オール及び3-メチルブタ-2-エナールが、5:1〜1:5の重量比で使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
反応が、60〜200℃の温度で実施される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応が、100〜1200 mbarの圧力で実施される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
反応が、水と共沸混合物を形成することができる溶媒中で実施される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
溶媒が、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、オルト-キシレン、メタ-キシレン、パラ-キシレン、及びそれらの混合物から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
3-メチルブタ-3-エン-1-オールと3-メチルブタ-2-エナールの反応において生成した水が、反応中に、共沸蒸留により除去される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
3-メチルブタ-3-エン-1-オール、3-メチルブタ-2-エナール、少なくとも1種のスルホン酸、及び場合により溶媒を混合するステップ、混合物を所望の温度及び圧力にするステップ、並びに生成した水を除去するステップ、あるいは、
溶媒中の少なくとも1種のスルホン酸を所望の温度及び圧力にするステップ、3-メチルブタ-3-エン-1-オール及び3-メチルブタ-2-エナールを添加するステップ、並びに生成した水を除去するステップ
を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デヒドロローズオキシドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デヒドロローズオキシド(4-メチレン-2-(2-メチルプロパ-1-エニル)-テトラヒドロピラン)は、ローズオキシドの製造における重要な中間体である。また、ローズオキシド(2-(2-メチルプロパ-1-エニル)-4-メチルテトラヒドロピラン)、とりわけcis異性体は、香料工業(そのほとんどが化粧品や洗剤)において使用される有用な香料である。
【0003】
デヒドロローズオキシドは一般に、3-メチルブタ-3-エン-1-オール(イソプレノール)と3-メチルブタ-2-エナール(プレナール)を、酸性条件下で反応することによって合成される。
【0004】
J.H.P. Tymanらは、Tetrahedron Lett. 1970、51、4507-4508において、3-メチル-2-ブテン-1-アールと2-メチル-1-ブテン-4-オールを、相当する4-メチレン-テトラヒドロピランにする反応を記載する。反応は、3-メチルブタナールと2-メチル-1-ブテン-4-オールの反応と同様に実施し、この反応はさらに酸性条件下で実施すると記載されている。それ以上の詳細は記載されていない。
【0005】
WO 79/00509及びEP-A-0082401は、デヒドロローズオキシドの水素化によるcis-ローズオキシドの製造に関する。デヒドロローズオキシドは同様に、上記Tymanらによる文献に記載される通りに調製されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 79/00509
【特許文献2】EP-A-0082401
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.H.P. Tymanら、Tetrahedron Lett. 1970、51、4507-4508
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
デヒドロローズオキシドの一般的な製造方法では、収率が未だ満足のいくものではなく、その上、副生成物のネロールオキシドであるデヒドロローズオキシドの二重結合異性体がかなり多量に形成され、その分離が困難であることが問題になっていることから、その方法を改善する継続的な必要性が存在する。
【0009】
したがって、本発明の目的は、目的生成物の収率がより高くなり、ネロールオキシドの生成が低減される、デヒドロローズオキシドの製造方法を提供することであった。さらに、好ましくは、本方法において使用される触媒は当該方法において悪影響を与えるべきではなく、すなわち、本方法において使用される触媒は扱いやすく、とりわけ導入及び除去しやすく、さらに、反応を一般に工業規模で実施する際の反応器に悪影響を与えるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、本目的は、触媒としてスルホン酸を使用することにより達成されることが判明した。
【0011】
したがって、本発明は、式Iの4-メチレン-2-(2-メチルプロパ-1-エニル)-テトラヒドロピラン(デヒドロローズオキシド)
【化1】
を製造する方法であって、
式IIの3-メチルブタ-3-エン-1-オール(イソプレノール)及び式IIIの3-メチルブタ-2-エナール(プレナール)
【化2】
を、触媒としての式R
1-SO
3H(式中、R
1は、2つ又は3つのC
1〜C
4-アルキル置換基を有するフェニル、1つのC
8〜C
20-アルキル置換基を有し、さらに1つ又は2つのC
1〜C
4-アルキル置換基を有していてもよいフェニル、及び1つ又は2つのC
1〜C
4-アルキル置換基を有していてもよいナフチルから選択される)で表される少なくとも1種のスルホン酸の存在下で反応させるステップを含む、前記方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「少なくとも1種のスルホン酸」は、一種のスルホン酸又は異なるスルホン酸の混合物を使用することができることを意味する。とりわけ、高分子量のスルホン酸、例えば長鎖アルキル置換基を有するベンゼンスルホン酸(下記参照)としては、工業グレードの異なるアルキル置換基を有する混合物を使用することが多く、したがって、正確にいえば、異なるスルホン酸の混合物である。しかし、構造がさらに異なるスルホン酸の混合物もまた使用することができる。
【0013】
本発明の方法の構成要件についての好ましい実施形態に関する以下に記載される知見は、個別に適用されるだけではなく、とりわけ、考え得るあらゆる組み合わせにおいて適用される。
【0014】
スルホン酸は官能基-SO
3Hを特徴とする。
【0015】
上記の可変基の定義において記載された有機部分は、個々の基の構成要素のそれぞれのリストについての総称である。接頭辞C
n〜C
mは、それぞれの場合に、該基中の取り得る炭素原子の数を示す。
【0016】
用語「アルキル」は、本明細書において使用する場合、飽和の、直鎖状又は分岐鎖状の、1個〜2個(「C
1〜C
2-アルキル」)、1個〜3個(「C
1〜C
3-アルキル」)、1個〜4個(「C
1〜C
4-アルキル」)、1個〜6個(「C
1〜C
6-アルキル」)、1個〜8個(「C
1〜C
8-アルキル」)、1個〜10個(「C
1〜C
10-アルキル」)、又は1個〜20個(「C
1〜C
20-アルキル」)の炭素原子を有する炭化水素基を示す。C
1〜C
2-アルキルは、メチル又はエチルである。C
1〜C
3-アルキルは、上記に加えて、プロピル及びイソプロピルである。C
1〜C
4-アルキルは、上記に加えて、ブチル、1-メチルプロピル(sec-ブチル)、2-メチルプロピル(イソブチル)、又は1,1-ジメチルエチル(tert-ブチル)である。C
1〜C
6-アルキルは、上記に加えて、例えばペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、又は1-エチル-2-メチルプロピルである。C
1〜C
8-アルキルは、上記に加えて、例えば、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル及びそれらの位置異性体である。C
1〜C
10-アルキルは、上記に加えて、例えばノニル、デシル、及びそれらの位置異性体である。C
1〜C
20-アルキルは、上記に加えて、例えば、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、及びそれらの位置異性体である。C
12-アルキルは、ドデシル、及びそれらの位置異性体である。C
8〜C
20-アルキルは、飽和の、直鎖状又は分岐鎖状の、8個〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、例えばオクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、及びそれらの位置異性体である。C
10〜C
14-アルキルは、飽和の、直鎖状又は分岐鎖状の、10個〜14個の炭素原子を有する炭化水素基、例えばデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、及びそれらの位置異性体である。
【0017】
好ましくは、R
1は、2つ又は3つのC
1〜C
4-アルキル置換基、又は1つのC
8〜C
20-アルキル置換基を有するフェニル、及びナフチルから選択される。
【0018】
特定の実施形態では、R
1は、1つのC
8〜C
20-アルキル置換基、さらに具体的には1つのC
10〜C
14-アルキル置換基を有するフェニルから選択される。
【0019】
代替の特定の実施形態では、R
1は、2つ又は3つのC
1〜C
4-アルキル置換基、より具体的には、2つ又は3つのメチル置換基を有するフェニルから選択される。好ましくは、これらのC
1〜C
4-アルキル置換基の1つ又は2つは、SO
3H基に対してオルト位に結合している。
【0020】
好ましくは、少なくとも1種のスルホン酸触媒は、使用される3-メチルブタ-3-エン-1-オールの量に対して、0.01〜1 mol%、好ましくは0.02〜0.3 mol%、特には0.03〜0.2 mol%、具体的には0.1〜0.2 mol%の総量で使用される。
【0021】
好ましくは、3-メチルブタ-3-エン-1-オール及び3-メチルブタ-2-エナールは、5:1〜1:5、好ましくは2:1〜1:2、特には1.5:1〜1:1.5、具体的には約1:1の重量比で使用される。「約」は、可能性のある許容誤差、例えば計量誤差などを含むことを意味する。
【0022】
プレナールとイソプレノールのデヒドロローズオキシドへの反応は、水の生成を含む。水の存在は、水和/脱水ステップによって、デヒドロローズオキシドの二重結合異性体の形成を促進する可能性があると考えられる。したがって、反応の過程で、好ましくは、反応全体を通して、持続的に、脱離水を除去することが有利である。水の除去は、任意の公知の方法により、例えば、単純な蒸留により実施することができる。しかしながら、エントレーナーを使用することがより好ましい。したがって、3-メチルブタ-3-エン-1-オールと3-メチルブタ-2-エナールの反応において生成した水を、反応中に、共沸蒸留により除去することが好ましい。実用的な理由では、水にとってエントレーナーである溶媒、又は言い換えれば、水と共沸混合物、有利には最低共沸混合物を形成することができる溶媒中で反応を実施することが好ましい。
【0023】
水と最低共沸混合物を形成する溶媒は、当業者に公知であり、例えばエタノール、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン類、酢酸エチルなどである。
【0024】
これらの中では、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、オルト-キシレン、メタ-キシレン、パラ-キシレン、及びそれらの混合物が好ましい。具体的には、トルエンを使用する。
【0025】
反応は、60〜200℃、より好ましくは80〜140℃の温度で実施するのが好ましい。
【0026】
反応は、100〜1200 mbar(値は、絶対圧力である)の圧力で実施するのが好ましい。1つの好ましい実施形態では、反応は周囲圧力で実施される。プレナールとイソプレノールのデヒドロローズオキシドへの反応は除去するのが好ましい水の生成を含むので、
より好ましい実施形態では、水の除去を促進するために、反応を周囲圧力未満の圧力;例えば100〜900 mbar、特に300〜900 mbarの圧力で実施する。
【0027】
反応は、様々な方法により実施することができる。例えば、出発化合物であるイソプレノール及びプレナール、少なくとも1種のスルホン酸触媒、並びに場合により溶媒を混合し、混合物を所望の温度及び圧力にし、生成した水を、例えば単純な蒸留により、又はエントレーナー、とりわけ水と(最低)共沸混合物を形成する溶媒を使用する場合は共沸蒸留により除去することができる。水をそれ以上除去することができない場合は、反応を停止するか、又は、好ましくは、しばらくの間継続して反応を完了することができる。上記後反応(after-reaction)の最適期間は、いくつかの因子、例えばバッチサイズ、反応温度、特定の触媒など、に依存し、当業者が、例えば予備実験により決定することができる。
【0028】
しかしながら、初めに、溶媒(好ましくは、水と最低共沸混合物を形成する溶媒;上記参照)及び触媒(すなわち、少なくとも1種のスルホン酸)の混合物を所望の温度及び圧力にして、その後、出発化合物であるイソプレノール及びプレナールを添加することが好ましい。出発化合物は、混合物として、又は別々に添加することができる。別々に添加する場合には、出発化合物は、同時に、又は連続的に添加することができ、同時の添加が好ましい。出発化合物は、同時に、すなわち一度に添加するか、又は、好ましくは少しずつ、一部ずつ若しくは好ましくは断続的に添加することができる。最適な添加速度は、いくつかの因子、例えばバッチサイズ、使用する溶媒量など、に依存する。水は、その生成の開始から除去することが好ましい。これは、共沸蒸留により、とりわけ使用する溶媒との共沸蒸留により実施するのが好ましい。水をそれ以上除去することができない場合は、反応を停止するか、又は、好ましくは、しばらくの間継続して、反応を完了することができる。上記後反応の最適期間は、いくつかの因子、例えばバッチサイズ、反応温度、特定の触媒など、に依存し、当業者が、例えば予備実験により決定することができる。
【0029】
スルホン酸触媒は、反応物に無溶媒で添加することができる。しかしながら、とりわけ、スルホン酸が固体であり、反応が工業規模で実施される場合、実用的な理由から、スルホン酸を分散形態で、例えば懸濁液、エマルションとして、又は好ましくは溶液として導入することが有利になり得る。好適な溶媒は、スルホン酸を十分に分散、とりわけ溶解し、反応に悪影響を与えないものである。例えば、p-トルエンスルホン酸は、その水溶液の形態で使用することができる。スルホン酸が流動性、例えば液体であるか又は粘稠性である場合、工業規模であっても、スルホン酸を分散(溶解)形態で使用する必要はない。
【0030】
反応完了後、得られた生成物を、当該技術分野において公知の方法により、例えば蒸留、抽出及び/又はクロマトグラフィーにより単離及び精製することができる。例えば、生成物を触媒から分離するために、反応混合物を、場合により減圧下で蒸留し、触媒を底部残留物として残す。その後、目的生成物を、さらなる蒸留又は精留ステップにより、未反応出発化合物(もし存在するなら)、溶媒及び副生成物から分離することができる。あるいは、反応混合物を、水性塩基、例えばNaOH、KOH又はNa
2CO
3水溶液により中和し、相を分離して、望ましい場合は、有機相を水及び/又はブラインで洗浄する。有機相中に存在する目的生成物を、さらなる蒸留又は精留ステップにより、未反応出発化合物(もし存在するなら)、溶媒及び副生成物から分離することができる。
【0031】
さらなる精製を、例えばクロマトグラフィー法により実施することができる。
【0032】
本発明の方法により、デヒドロローズオキシドが高い収率及び選択性で得られる。さらに、スルホン酸触媒は摩耗性ではなく、従来技術の触媒よりもかなり腐食性が小さいので、スルホン酸触媒は反応を一般に工業規模で実施する際の反応器に悪影響を与えない。
【0033】
本発明はさらに、以下の非限定的実施例により説明される。
【実施例】
【0034】
実施例1〜7
ディーン-スターク-トラップ及び真空ポンプを備えた0.75 Lの反応器にトルエン(239 g)及びp-トルエンスルホン酸(65%水溶液 560 mg、2.11 mmol)を仕込み、溶液を110℃(周囲圧力)にした。この溶液に、95.7 g (1.14 mol)のプレナール及び97.7 g (1.13 mol)のイソプレノールの混合物をシリンジポンプにより添加した(0.7 mL/分)。添加中、水が生成し始め、水をディーン-スターク-トラップ中に除去した。加熱温度を120℃に維持した。添加の終わり(すなわち、約6時間後)では、反応混合物の温度は98℃であった。添加の完了後、反応物をさらに4時間加熱した。室温まで冷却後、350 gの反応混合物(混合物の総質量: 390 g)を蒸留した(バルブトゥバルブ(bulb to bulb))。蒸留物(319 g)をGCにより分析した。デヒドロローズオキシド(DHRO)の収率は48.5%であり、DHRO/NO比率は3.11(すなわち3.11:1)であった。
【0035】
以下の表に列挙した触媒を使用して、反応を同様に実施した。
表
【表1】
(付記)
(付記1)
式Iの4-メチレン-2-(2-メチルプロパ-1-エニル)-テトラヒドロピラン(デヒドロローズオキシド)
【化3】
を製造する方法であって、
式IIの3-メチルブタ-3-エン-1-オール(イソプレノール)及び式IIIの3-メチルブタ-2-エナール(プレナール)
【化4】
を、触媒としての式R1-SO3H(式中、R1は、2つ又は3つのC1〜C4-アルキル置換基を有するフェニル、1つのC8〜C20-アルキル置換基を有し、さらに1つ又は2つのC1〜C4-アルキル置換基を有していてもよいフェニル、及び1つ又は2つのC1〜C4-アルキル置換基を有していてもよいナフチルから選択される)で表される少なくとも1種のスルホン酸の存在下で反応させるステップを含む、前記方法。
(付記2)
R1が、2つ又は3つのC1〜C4-アルキル置換基、又は1つのC8〜C20-アルキル置換基を有するフェニル、及びナフチルから選択される、請求項1に記載の方法。
(付記3)
R1が、1つのC8〜C20-アルキル置換基を有するフェニルから選択される、請求項2に記載の方法。
(付記4)
R1が、1つのC10〜C14-アルキル置換基を有するフェニルから選択される、請求項3に記載の方法。
(付記5)
R1が、2つ又は3つのC1〜C4-アルキル置換基を有するフェニルから選択される、請求項2に記載の方法。
(付記6)
R1が、2つ又は3つのC1〜C4-アルキル置換基を有するフェニルから選択され、前記C1〜C4-アルキル置換基の1つ又は2つが、SO3H基に対してオルト位に結合している、請求項5に記載の方法。
(付記7)
前記触媒が、使用される3-メチルブタ-3-エン-1-オールの量に対して、0.01〜1 mol%、好ましくは0.03〜0.2 mol%の量で使用される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
(付記8)
3-メチルブタ-3-エン-1-オール及び3-メチルブタ-2-エナールが、5:1〜1:5、好ましくは2:1〜1:2、特には1.5:1〜1:1.5の重量比で使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
(付記9)
反応が、60〜200℃、好ましくは80〜140℃の温度で実施される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
(付記10)
反応が、100〜1200 mbar、好ましくは300〜900 mbarの圧力で実施される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
(付記11)
反応が、水と共沸混合物を形成することができる溶媒中で実施される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
(付記12)
溶媒が、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、オルト-キシレン、メタ-キシレン、パラ-キシレン、及びそれらの混合物から選択され、好ましくはトルエンである、請求項11に記載の方法。
(付記13)
3-メチルブタ-3-エン-1-オールと3-メチルブタ-2-エナールの反応において生成した水が、反応中に、共沸蒸留により除去される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
(付記14)
3-メチルブタ-3-エン-1-オール、3-メチルブタ-2-エナール、少なくとも1種のスルホン酸、及び場合により溶媒を混合するステップ、混合物を所望の温度及び圧力にするステップ、並びに生成した水を除去するステップ、あるいは、
溶媒中の少なくとも1種のスルホン酸を所望の温度及び圧力にするステップ、3-メチルブタ-3-エン-1-オール及び3-メチルブタ-2-エナールを添加するステップ、並びに生成した水を除去するステップ
を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。