特許第6367483号(P6367483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367483
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】スパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   C23C14/34 B
   C23C14/34 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-519374(P2017-519374)
(86)(22)【出願日】2016年5月18日
(86)【国際出願番号】JP2016064667
(87)【国際公開番号】WO2016186119
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2017年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2015-103981(P2015-103981)
(32)【優先日】2015年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-113150(P2015-113150)
(32)【優先日】2015年6月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】村田 周平
(72)【発明者】
【氏名】山越 康廣
(72)【発明者】
【氏名】永津 光太郎
【審査官】 塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−538257(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/050041(WO,A1)
【文献】 特開2012−104605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタ面にフラット部とテーパ部を備えたスパッタリングターゲットにおいて、前記スパッタ面のテーパ部又はテーパ部とフラット部に加工溝が配置され、前記加工溝の断面形状がV字型、U字型、角型のいずれかであることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項2】
スパッタ面にフラット部とテーパ部を備えたスパッタリングターゲットにおいて、前記スパッタ面のテーパ部又はテーパ部とフラット部に加工溝が配置され、前記加工溝の平面形状が、放射状、格子状のいずれかであることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記スパッタ面のテーパ部の加工溝の面積比率が0.6%以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
前記スパッタ面のフラット部の加工溝の面積比率が10%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
前記加工溝の深さが0.1mm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項6】
純度4N5以上のタンタルからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリングにおいてスパッタ時のイグニッション(プラズマ点火)を安定的に行うことが可能なスパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の配線は、世代を重ねるごとに細線化が要求されており、このような配線となる薄膜の形成には、物理蒸着法の一種であるスパッタリングが使用されている。近年では、スパッタリングの成膜速度を上げるために電磁力によりプラズマを制御するマグネトロンスパッタリングが使用されることが多い。このような最先端に用いられるスパッタリングにおいては、安定かつ制御が容易なターゲットが不可欠となる。プラズマ点火不良により装置が停止したり、電圧変動などが発生したりして、安定した成膜ができない場合、生産性を低下させるだけでなく、製品の品質を劣化させることがある。また、制御が困難であると、成膜条件を意図的に変化させた場合、安定した成膜を開始、維持できなくなるということがある。
【0003】
銅配線のバリア膜を形成するために、タンタルからなるスパッタリングターゲットが使用されている。バリア膜は、アスペクト比(段差の深さと開口の比)の高い配線孔にも形成するため成膜速度を制御して、安定的に極薄膜を形成できる必要がある。また、スパッタ収率を上げるためにハイパワーでスパッタする必要もあり、そのような条件下でも膜厚制御に有利な、成膜速度の低いターゲットが望まれている。そして、このような成膜制御技術は、PVDの発展の一翼を担っている。
【0004】
タンタルターゲットは、汎用性の観点から、純度4N5(99.995wt%)品が使用されているが、不純物による膜の密着性の劣化やリーク電流の増加などを極力抑制するために、実質的に純度6N(99.9999wt%)品が使用されることもある。近年では、配線設計の自由度を高めるために、このような超高純度の材料を使用することが増えている。
【0005】
ターゲットは、純度を高めることでその材料は軟化し、塑性加工後の集合組織の配向不均質や熱処理による再結晶時の結晶粗大化など、ターゲットの品質を制御することが困難となることがある。これらの問題は、ターゲットの製造プロセスを厳密に制御することである程度解決可能であるが、このような作製された高品質ターゲットにおいても、ターゲットの使用環境がより厳しくなることで、新たな問題が顕在化することがある。
【0006】
ところで、スパッタリングは、ターゲットをカソードとして電圧を印加し、ターゲットから飛び出した一次電子が、導入されたArガスをイオン化し、Arイオンがカソードであるターゲットに引き寄せられて衝突し、ターゲット材を叩き出すと共に二次電子を放出し、再度Arをイオン化するといったサイクルが連続的に継続する現象であるが、このとき、プラズマを発生させるために点火(イグニッション)が必要となる。
【0007】
このプラズマ点火において、導入ガスの低減による膜質の向上、電圧印加時間の短縮による歩留まりの向上、装置保護のため、点火失敗による再点火プロセスの回数制限などイグニッションプロセスに関する条件は厳しくなっている。このような状況下において超高純度材料は点火プロセスが不安定になりやすく、点火成功率を上げるために低純度品とするか、品質を向上させるために高純度品を採用するかというジレンマがあった。
【0008】
ここでの問題は、成膜プロセスの第1段階である点火プロセスのみであり、その後の成膜プロセスはプラズマが安定してしまえば、問題なく継続されるため、点火プロセスにのみ作用し、その後の成膜には寄与しないような特性を備えたターゲットを作製することが考えられた。なお、形状に特徴を有するスパッタリングターゲットとして、下記特許文献1〜4などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開WO2006/054409号公報
【特許文献2】特開2003−226965号公報
【特許文献3】特開2003−27225号公報
【特許文献4】特開2004−84007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような事情を鑑みてなされたものであって、スパッタ時のプラズマ点火(イグニッション)の際に、点火不良によるリトライや装置停止などなく、安定的にスパッタを開始することが可能なスパッタリングターゲットを提供することを課題とする。特には、高純度材料や導入ガス低減などイグニッションに不利な状況下にあっても、安定的にスパッタを開始することができるスパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる知見を基礎として、本発明は、以下の技術を提供する。
1)フラット部とテーパ部を備えたスパッタリングターゲットにおいて、スパッタリングターゲットのテーパ部に加工溝が配置されていることを特徴とするスパッタリングターゲット。
2)前記テーパ部の加工溝の面積比率が0.6%以上であることを特徴とする上記1)記載のスパッタリングターゲット。
3)前記フラット部の加工溝の面積比率が10%以下であることを特徴とする上記1)又は2)記載のスパッタリングターゲット。
4)前記加工溝の深さが0.1mm以上であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲット。
5)純度4N5以上のタンタルからなることを特徴とする上記1)〜4)のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスパッタリングターゲットは、導入ガスの低減、電圧印加時間の短縮などの条件下においても、イグニッション(プラズマ点火)の点火失敗率を低下させることができ、安定的にスパッタプロセスを開始することを可能とする。これにより、装置のダウンタイムを短縮することができるので、スループットの向上やコストパフォーマンスの改善に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のスパッタリングターゲットの説明概略図である。
図2】比較例のスパッタリングターゲットの説明概略図(同心円状加工溝)である。
図3】本発明のスパッタリングターゲットの説明概略図(放射状加工溝)である。
図4】実施例1のスパッタリングターゲット(スパッタ面)の写真である。
図5】実施例4のスパッタリングターゲット(スパッタ面)の写真である。
図6】実施例5のスパッタリングターゲット(スパッタ面)の写真である。
図7】比較例2のスパッタリングターゲット(スパッタ面)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のスパッタリングターゲットは、スパッタ面のテーパ部において、イグニッション用の加工溝が配置されていることを特徴とするものである。このように配置された加工溝は、プラズマを発生させる際に電子雪崩を生じやすくするため、イグニッションの発生や安定化に大きく寄与することができる。このメカニズムは必ずしも明確ではないが、一次荷電粒子(Arイオン、電子)がターゲットの加工溝に突入する際の角度が浅くなるために、二次電子放出確率を向上させることが可能となることが考えられる。
【0015】
また、加工溝のエッジ部において、同種荷電粒子同士の反発力が小さくなるため、電界集中が起きて、二次電子放出確率を向上させることが可能となることも考えられる。二次電子は一次荷電粒子の突入点を起点にあらゆる方向に広がるように発生するため、平面部よりも斜面部の方が二次電子の放出確率が向上する。さらに加工面の凹凸により、ガス分子や荷電粒子の散乱回数が増加して、結果的に荷電粒子の衝突回数を向上させ電離率を向上させることなどが考えられる。
【0016】
いずれにしても、後述の実施例で示すように、スパッタ面のテーパ部に加工溝を形成することにより、イグニッションの点火失敗率を格段に低減することができる。なお、本発明において、スパッタ面とは、スパッタリングターゲットのプラズマに曝される面を意味する。また、テーパ部とは、スパッタリングターゲットのスパッタ面の外周端部において、面取り加工された部分を意味し、実質的に成膜には寄与しないかあるいは寄与が少ない部分である。また、フラット部とは、スパッタ面のうち、テーパ部を除いた実質的に成膜に寄与する部分である。
【0017】
本発明のスパッタリングターゲットについて、以下、図1に基づいて説明する。図1(上図)は、スパッタリングターゲットのスパッタ面を示し、図1の(下図)は、スパッタリングターゲットの断面を示す。なお、図1はあくまで理解を容易にするための一形態であり、この形態によって本発明は制限されるものではない。本発明は以下に説明する形態以外の種々の変形を包含するものである。
【0018】
加工溝は、通常、ターゲットのスパッタ面側のテーパ部に形成するが、テーパ部だけでなく、図1に示すようにフラット部(対向するウエハ面に平行する面)にまたがって形成してもよい。この場合、ターゲット表面のエロージョンが最も深い部分の2/3より浅く、成膜への関与が少ない部分(低エロージョン領域)に形成されていることが好ましい。エロージョンの進行が速い部分では、加工溝による磁束の漏れ量が変化し、成膜時の電流−電圧変化への影響が大きくなるためである。
【0019】
本発明は、ターゲットの外周部(ターゲットの中心からターゲットのテーパ部を含む最端部までの長さの半分から外側の領域)にあるフラット部やテーパ部に加工溝を形成することが好ましい。加工溝をテーパ部のみに形成するか、或いは、テーパ部及びフラット部の両方の領域に形成するかは、スパッタ装置の仕様に依存することがあるため、その仕様に応じて適宜選択することができる。また、このような加工溝は、スパッタリングターゲット表面を切削、或いは、ナーリング(押し付け駒や切削駒を用いて、物質表面に凹凸溝を形成する手法)などの機械加工によって形成することができる。
【0020】
また、加工溝は1箇所或いは2箇所に配置することができるが、ターゲットに4箇所、8箇所、16箇所、32箇所などのように上下左右対称となるように複数配置するのが好ましい。このように配置することで、マグネトロンスパッタ装置においてマグネットの回転数1回/秒程度に対して、少なくとも1/4秒毎に作用することとなり、イグニッションの安定性を向上させることができる。
【0021】
加工溝は、図2に示すような同心円状とするより、図3に示すような放射状(ターゲットの中心を起点とした放射状の線状)に形成する方が効果的であり、エロージョンに伴う効果の低下(ライフ依存性)も少ない。特に、ターゲットの直径方向に対して平行又は直径方向とのなす角が45度以内に形成することが好ましい。また、イグニッション効果に着目すれば、加工溝が等間隔に形成されていることは必ずしも必須ではないが、スパッタ膜厚分布のプロファイル安定性や発塵抑制を考慮すれば、等間隔に形成されていることが好ましい。
【0022】
加工溝の断面形状は、V字型、U字型、角型などとすることができ、その形状は加工の容易さや異物発生状況に応じて選択又は組み合わせることができる。加工溝の深さは、上記面積比率に関与しないため、特に制限はないが、加工の都合上、0.3mm以上とすることが好ましい。また、ターゲットの直径方向と角度をなす溝の場合、図3に示すような2つの異なる方向に施した複数の溝が交差して、格子状模様を構成することもよい。上述する加工溝の位置、直径方向との角度、形状、箇所数などは、スパッタ装置の仕様などに応じて、最適なものを選択することは言うまでもない。
【0023】
ターゲットのテーパ部に加工溝を形成する場合、その加工溝の面積比率は、0.6%以上とすることが好ましい。本発明において加工溝の面積比率は、加工により切り取られた溝のスパッタ面に投影される面積を意味する。テーパ部における加工溝の面積比率が0.6%未満であると、イグニッション安定化の効果が低くなることがある。一方、ターゲットのフラット部にまたがって溝を形成する場合、その加工溝の面積比率は、フラット部に対して、最大でも10%とする。
【0024】
フラット部における加工溝の面積比率が10%を超えると、スパッタ時の電流値が低下し、印可電力が不安定となることがある。なお、テーパ部はスパッタ時の印可電圧に影響を与えないため、上記の面積比率の算出にはテーパ部は含まれない。また、先述のテーパ部に加工溝が形成されていれば、イグニッションの改善に有効であるので、必ずしもフラット部に加工溝が形成されていなくともよい。この場合、フラット部における加工溝の面積比率は0%となる。
【0025】
例えば、直径444mmのスパッタリングターゲット(スパッタ面:直径406mm、テーパ部:406mmから外側の面)において、スパッタ面(フラット部)に幅6mm、長さ:フラット部13mm、テーパ部12mm、深さ3mmの断面U字型の加工溝を4ヶ所作製した場合、ターゲットのスパッタ面への加工溝の面積比率は、(6×13×4)/(π×203)×100≒0.24(%)となる。なお、投影面積の下では、面積が同一で形状が異なる場合があるが、電解集中やエッジ効果による二次電子放出確率の向上の効果という観点から、形状の相違はそれほど影響を与えない。
【0026】
上述する加工溝は、あくまでスパッタリングターゲットの形状に関するものであり、ターゲットの材質や組成に関係なく、イグニッションの改善効果を有するものである。しかしながら、イグニッションが不安定になりやすい高純度材料からなるスパッタリングターゲット、例えば、銅配線のバリア膜を形成するための純度4N5(99.995%)以上のタンタルターゲットなどに用いる場合、より効果的にその機能を発揮させることができる。なお、本発明において、純度4N5(99.995%)とは、溶解後のTaインゴットをグロー放電質量分析法(GDMS)にて分析し、Na、Al、Si、K、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zrの合計値が50ppm未満であることを意味する。
【実施例】
【0027】
以下、実施例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで理解を容易にするための一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明で説明する実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0028】
(実施例1)
直径444mm、スパッタ面の直径が406mmのタンタルスパッタリングターゲット(純度4N5以上)において、その外周部に断面V字型の加工溝をターゲットの直径方向に対して平行に、等間隔となるように4ヶ所形成した。このターゲットの写真を図4に示す。溝の幅を6mm、溝の深さを3mm、溝の長さをフラット部13mm、テーパ部12mmとし、フラット部の加工溝の面積比率を0.24%とし、テーパ部の加工溝の面積比率を1.1%とした。次に、このターゲットを以下の条件でスパッタリングを実施し、イグニッションの点火失敗率((イグニッション失敗回数/イグニッション実施回数)×100)を調べた。その結果、加工溝がない同型のターゲットに比べて、点火失敗率は、75%から34.7%まで著しく低下した。
【0029】
(点火試験について)
第1ステップ「ガス安定」(5sec)
Arガスを5sccm導入する。
第2ステップ「イグニッション」(1sec(点火まで5sec))
Arガスを5sccm導入したまま、DC電源で1000W印加する。
(真空度:0.2〜0.3mTorr)
第3ステップ「真空引き」(10sec)
チャンバ内の真空引きを行う(真空度:1〜3μTorr)。
上記3ステップを1サイクルとして、点火試験を実施する。イグニッションの成否は、第2ステップの「イグニッション」において、印可開始から5sec以内に実電力に到達したかで判断する。5sec以内にイグニッションが成功しなかった場合、第2ステップの「イグニッション」の始めに戻り、設定電力を再度印加する。この第2ステップの「イグニッション」で設定電力の印加を3回繰り返し、合計4回行ってもイグニッションが成功しない場合は点火失敗と判断し、処理を停止する。
【0030】
(実施例2)
直径444mm、スパッタ面の直径が406mmのタンタルスパッタリングターゲット(純度4N5以上)において、その外周部に断面V字型の加工溝をターゲットの直径方向と平行に、等間隔となるように4ヶ所形成した。溝の幅を3mm、溝の深さを3mm、溝の長さをフラット部13mm、テーパ部12mmとし、フラット部の加工溝の面積比率を0.12%とし、テーパ部の加工溝の面積比率を0.6%とした。次に、このターゲットを実施例1と同条件にて、スパッタを実施して、イグニッションの点火失敗率を調べた。その結果、加工溝がない同型のターゲットに比べて、点火失敗率は、75%から31.6%まで著しく低下した。
【0031】
(実施例3)
直径444mm、スパッタ面の直径が406mmのタンタルスパッタリングターゲット(純度4N5以上)において、その外周テーパ部のみに断面U字型の加工溝をターゲットの直径方向と平行に、等間隔となるように4ヶ所形成した。溝の幅を3mm、溝の深さを3mm、溝の長さをフラット部0mm、テーパ部12mmとし、フラット部の加工溝の面積比率を0%とし、テーパ部の加工溝の面積比率を0.6%とした。次に、このターゲットをバッキングプレートに接合した後、以下の条件でスパッタリングを実施し、イグニッションの点火失敗率((イグニッション失敗回数/イグニッション実施回数)×100)を調べた。その結果、加工溝がない同型のターゲットに比べて、点火失敗率は、75%から33.7%まで著しく低下した。
【0032】
(実施例4)
直径444mm、スパッタ面の直径が406mmのタンタルスパッタリングターゲット(純度4N5以上)において、その外周テーパ部のみに断面U字型の加工溝をターゲットの直径方向と平行に、等間隔となるように32ヶ所形成した。このターゲットの写真を図5に示す。溝の幅を3mm、溝の深さを3mm、溝の長さをフラット部0mm、テーパ部12mmとし、フラット部の加工溝の面積比率を0%とし、テーパ部の加工溝の面積比率を4.5%とした。次に、このターゲットを以下の条件でスパッタリングを実施し、イグニッションの点火失敗率((イグニッション失敗回数/イグニッション実施回数)×100)を調べた。その結果、加工溝がない同型のターゲットに比べて、点火失敗率は、75%から7.4%まで著しく低下した。
【0033】
(実施例5)
直径444mm、スパッタ面の直径が406mmのタンタルスパッタリングターゲット(純度4N5以上)において、その外周テーパ部の全てに、断面V字型の加工溝をターゲットの直径方向に対して±45度の角度を成すように1mmの等間隔でナーリング加工して、格子状模様を形成した。このターゲットの加工溝部分の写真を図6に示す。溝の幅を1mm、溝の深さを0.1mm、フラット部の加工溝の面積比率を0%とし、テーパ部の加工溝の面積比率を90%とした。次に、このターゲットを以下の条件でスパッタリングを実施し、イグニッションの点火失敗率((イグニッション失敗回数/イグニッション実施回数)×100)を調べた。その結果、加工溝がない同型のターゲットに比べて、点火失敗率は、75%から3.2%まで著しく低下した。
【0034】
(実施例6)
直径444mm、スパッタ面の直径が406mmのタンタルスパッタリングターゲット(純度4N5以上)において、その外周テーパ部に断面U字型の加工溝をターゲットの直径方向と平行に、等間隔となるように4ヶ所形成し、溝の幅を3mm、溝の深さを3mm、溝の長さをフラット部0mm、テーパ部12mmとした。合わせて、外周部に断面V字型の加工溝を同心円状に形成し、溝の幅を6mm、深さを3mm、溝の長さを外周約1256mm、内周約1193mmとした。上記2種類の加工溝によりテーパ部の加工溝の面積比率を0.6%とし、フラット部の加工溝の面積比率を9.5%とした。次に、このターゲットを以下の条件でスパッタリングを実施し、イグニッションの点火失敗率((イグニッション失敗回数/イグニッション実施回数)×100)を調べた。その結果、加工溝がない同型のターゲットに比べて、点火失敗率は、75%から25.3%まで著しく低下した。
【0035】
(比較例1)
直径444mm、スパッタ面の直径が406mmのタンタルスパッタリングターゲット(純度4N5以上)において、加工溝が無いターゲットを作製した。このターゲットを実施例1と同条件にて、スパッタを実施して、イグニッションの点火失敗率((イグニッション失敗回数/イグニッション実施回数)×100)を調べた。その結果、点火失敗率は75.0%であった。
【0036】
(比較例2)
直径444mmのタンタルスパッタリングターゲット(純度3N5以上)において、その外周部に断面V字型の加工溝を同心円状に形成した。このターゲットの写真を図7に示す。溝の幅を6mm、深さを3mm、溝の長さを外周約1256mm、内周約1193mmとし、フラット部の加工溝の面積比率を9.5%とし、テーパ部の加工溝の面積比率を0%とした。次に、このターゲットを実施例1と同条件にて、スパッタを実施して、イグニッションの点火失敗率((イグニッション失敗回数/イグニッション実施回数)×100)を調べた。その結果、加工溝がない同型のターゲットに比べて、点火失敗率は、75.0%から70.9%と大きな低下は見られなかった。
【0037】
(比較例3)
直径444mmのタンタルスパッタリングターゲット(純度3N5以上)において、その外周部に断面V字型の加工溝を同心円状に形成した。溝の幅は14mm、深さは3mm、溝の長さは外周約1237mm、内周約1150mmとし、フラット部の加工溝の面積比率は11.1%とし、テーパ部の加工溝の面積比率を0%とした。次に、このターゲットを実施例1と同条件にて、スパッタを実施したところ、スパッタ時の電流値が低下し、スパッタ電力が安定しない現象が見られたため、評価を中止した。
【0038】
(比較例4)
直径444mm、スパッタ面の直径が406mmのタンタルスパッタリングターゲット(純度4N5以上)において、その外周フラット部のみに断面U字型の加工溝をターゲットの直径方向と平行に、等間隔となるように4ヶ所形成した。溝の幅を6mm、溝の深さを3mm、溝の長さをフラット部13mm、テーパ部0mmとし、フラット部の加工溝の面積比率を0.24%とし、テーパ部の加工溝の面積比率を0%とした。次に、このターゲットをバッキングプレートに接合した後、以下の条件でスパッタリングを実施し、イグニッションの点火失敗率((イグニッション失敗回数/イグニッション実施回数)×100)を調べた。その結果、加工溝がない同型のターゲットに比べて、点火失敗率は、75%から68.5%と大きな低下はみられなかった。
【0039】
以上の結果をまとめたものを表1に示す。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のスパッタリングターゲットは、導入ガスの低減、電圧印加時間の短縮などの条件下においても、イグニッション(プラズマ点火)の点火失敗率を低下させることができ、安定的にスパッタプロセスを開始することを可能とする。これにより、装置のダウンタイムを短縮できるので、スループットの向上やコストパフォーマンスの改善に寄与することができる。本発明のスパッタリングターゲットは、電子デバイス用薄膜を形成するのに有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7