【実施例】
【0036】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例によって限定されるものではない。
【0037】
[セリウム−ジルコニウム系複合酸化物粒子の合成]
硝酸セリウム六水和物とオキシ硝酸ジルコニル二水和物を、モル比が9:1となるよう量り取った後、蒸留水を加え、硝酸セリウムとオキシ硝酸ジルコニルの合計の濃度を0.1mol/Lとした。次に、沈殿物が充分生成するまでアンモニア水を撹拌しながら加えた後、吸引濾過して沈殿物を回収した。さらに、濾物に対する質量比が11/75となるようにカーボンパウダーを加えた後、混練機ハイブリッドミキサーHM−500(キーエンス社製)を用いて2分間撹拌してカーボンを均一に分散させた。次に、70℃で12時間乾燥させた後、900℃で4時間で焼成した。さらに、めのう乳鉢で粉砕し、セリウム−ジルコニウム系複合酸化物粒子を得た。セリウム−ジルコニウム系複合酸化物粒子は、走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒径が約100nmであった。
【0038】
[実施例1]
スクリーン印刷法を用いて、白金ペーストTR−7091T(田中貴金属社製)をアルミナ基板上に印刷した後、200℃/hで1400℃まで昇温し、2時間保持して焼成し、白金の櫛型電極を形成した。次に、アルミナ基板の櫛型電極が形成されていない側に、櫛型電極と同様の手順で、白金製の自己加熱することが可能なヒータを設置した。
【0039】
エチルセルロースとテルピネオールが混合されている有機バインダーに、セリウム−ジルコニウム系複合酸化物粒子を加えて混合し、ペースト1を得た。
【0040】
スクリーン印刷法を用いて、櫛型電極上にペースト1を印刷した後、150℃で15分間乾燥させた。次に、500℃/hで500℃まで昇温し、5時間保持して仮焼した後、200℃/hで1100℃まで昇温し、2時間保持して本焼し、酸化物半導体膜を形成した。
【0041】
エチルセルロースとテルピネオールが混合されている有機バインダーに、平均粒径が約100nmのアルミナ粒子を加えて混合し、ペースト2を得た。
【0042】
スクリーン印刷法を用いて、酸化物半導体膜に重ねるようにペースト2を印刷した後、150℃で15分間乾燥させた。次に、500℃/hで500℃まで昇温し、5時間保持して仮焼し、絶縁膜を形成した。
【0043】
スクリーン印刷法を用いて、絶縁膜に重ねるようにペースト1を印刷した後、150℃で15分間乾燥させた。次に、500℃/hで500℃まで昇温し、5時間保持して仮焼した。さらに、平均粒径が約2nmのポリビニルピロリドンがコーティングされている白金のコロイド分散液(田中貴金属社製)を、触媒膜中の白金の含有量が3質量%となるように滴下した後、70℃で乾燥させ、触媒膜を形成した。
【0044】
ヒータ及び櫛型電極の白金が剥き出しになっている箇所を絶縁するための保護膜を形成するため、誘電体ペーストQM42(デュポン社製)を印刷した後、200℃/hで800℃まで昇温し、2時間保持して焼成し、酸素センサを得た。なお、上記焼成は、絶縁膜及び触媒膜の本焼を兼ねる。
【0045】
[比較例1]
絶縁膜及び触媒膜を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、酸素センサを得た。
【0046】
[酸素センサの性能]
酸素センサの酸化物半導体膜が形成されている部分を、ガス雰囲気を置換することが可能なガスセンサ試料室内に挿入した後、ガスが漏れないように封止した。次に、ヒータに電圧を印加して自己加熱することにより600℃まで昇温し、酸素の濃度が100%、30%、10%及び3%、可燃性の燃焼ガスの濃度が0%のガス雰囲気における酸化物半導体膜の電気抵抗を測定した。さらに、酸素の濃度が約1ppm、可燃性の燃焼ガスの濃度が0%のガス雰囲気における酸化物半導体膜の電気抵抗を測定した。ここで、試料室にリークがあり、大気中の酸素が試料室内に微量混入すると、酸素の濃度が約1ppmである場合、酸素センサにより検出される酸素の濃度が大きく変動する。このため、酸素の濃度の正確さを担保するために、黄燐発光式酸素濃度計TOAIIs(大陽日酸社製)を用いて、ガス雰囲気における酸素の濃度を測定した。
【0047】
なお、酸素の濃度が減少すると、酸化物半導体膜を構成するセリウム−ジルコニウム系複合酸化物の電気抵抗は減少する。これは、セリウム−ジルコニウム系複合酸化物の格子酸素が酸素分子として脱離し、酸素空孔が生成する、式
O
o×→V
o・・+1/2O
2+2e’
で表される機構がガス雰囲気における酸素分圧に依存するためである。このような性質から、セリウム−ジルコニウム系複合酸化物は、酸素分圧を検出することができる。
【0048】
なお、上記機構は、クレーガー=ビンクの表記法により表記されている。
【0049】
図2及び
図3に、それぞれ実施例1及び比較例1の酸素センサの可燃性の燃焼ガスを含まないガス雰囲気における酸素分圧と酸化物半導体膜の電気抵抗の関係を示す。なお、酸素分圧P(O
2)の単位がPaであり、酸化物半導体膜の電気抵抗Rの単位がΩである。また、ガス雰囲気は、常温常圧であるため、
図2及び
図3における、logP(O
2)=5は、酸素の濃度100%に相当し、logP(O
2)=−1は、酸素の濃度1ppmに相当する。
【0050】
図2及び
図3から、logRは、logP(O
2)の一次関数であることがわかる。
【0051】
次に、上記と同様にして、酸素の濃度が約1ppm、水素の濃度が0.1〜1.0ppmのガス雰囲気における酸化物半導体膜の電気抵抗を測定した後、
図2及び
図3から求められる近似一次関数を用いて、ガス雰囲気における酸素の濃度を換算した。
【0052】
なお、ガス雰囲気が水素を含むと、セリウム−ジルコニウム系複合酸化物の電気抵抗は減少する。これは、セリウム−ジルコニウム系複合酸化物の表面で、式
O
o×+H
2→V
o・・+H
2O+2e’
で表されるように、水素が格子酸素と反応するためである。
【0053】
表1及び表2に、それぞれ実施例1及び比較例1の酸素センサが検出する、水素を含むガス雰囲気における酸素の濃度を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1から、実施例1の酸素センサは、水素の濃度が0.1ppmである場合に、微量酸素濃度を精度良く測定できることがわかる。
【0057】
表1及び表2から、実施例1の酸素センサは、水素の濃度が1.0ppmである場合に、logRが減少するが、水素の影響を抑制して、微量酸素濃度を測定できることがわかる。
【0058】
これに対して、比較例1の酸素センサは、水素の濃度が1.0ppmである場合に、logRが大きく減少する。これは、酸化物半導体膜上に水素を消費する触媒膜が形成されていないため、酸化物半導体膜の格子酸素と水素が反応し、酸化物半導体膜に酸素空孔が多量に生成するためであると考えられる。