特許第6367783号(P6367783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367783水痘帯状疱疹ウイルス検出用免疫クロマト分析装置
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  • 特許6367783-水痘帯状疱疹ウイルス検出用免疫クロマト分析装置 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367783
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】水痘帯状疱疹ウイルス検出用免疫クロマト分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20180723BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20180723BHJP
   C12N 15/00 20060101ALI20180723BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20180723BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G01N33/569 LZNA
   C07K16/08
   C12N15/00
   G01N33/53 V
   G01N33/543 521
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-230928(P2015-230928)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2017-96850(P2017-96850A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2016年9月23日
【審判番号】不服2017-11037(P2017-11037/J1)
【審判請求日】2017年7月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】岩本 久彦
(72)【発明者】
【氏名】望月 浩子
【合議体】
【審判長】 福島 浩司
【審判官】 渡戸 正義
【審判官】 ▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−19786(JP,A)
【文献】 WENDY J. FOWLER et al.,Identification of Immunodominant Regions and Linear B Cell Epitopes of the gE Envelope Protein of Varicella−Zoster Virus,VIROLOGY,1995年,214,p.531−540
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella−Zoster Virus、VZV)を検出するための免疫クロマト分析装置であって、
前記標識物質保持部及び検出部が含有する抗体の組み合わせが、以下(1)〜(3)のいずれかである、免疫クロマト分析装置。
(1)前記標識物質保持部が含有する抗体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列44−88番目のアミノ酸配列からなるペプチドに対して反応性を有する抗体であり、前記検出部が含有する抗体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列89−107番目又は108−135番目のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドに対して反応性を有する抗体である、抗体の組み合わせ
(2)前記標識物質保持部が含有する抗体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列89−107番目のアミノ酸配列からなるペプチドに対して反応性を有する抗体であり、前記検出部が含有する抗体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列108−135番目のアミノ酸配列からなるペプチドに対して反応性を有する抗体である、抗体の組み合わせ
(3)前記標識物質保持部が含有する抗体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列108−135番目のアミノ酸配列からなるペプチドに対して反応性を有する抗体であり、前記検出部が含有する抗体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列44−88番目又は89−107番目のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドに対して反応性を有する抗体である、抗体の組み合わせ
【請求項2】
前記標識物質保持部が含有する標識物質が金コロイド粒子であり、前記標識物質保持部が前記金コロイド粒子を、0.05〜1.5μg/cm含有する、請求項1に記載の免疫クロマト分析装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の免疫クロマト分析装置と、検体を希釈して展開するための検体希釈液とを含む、免疫クロマト分析キット。
【請求項4】
前記検体希釈液が少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含有する、請求項に記載の免疫クロマト分析キット。
【請求項5】
試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む免疫クロマト分析装置を用いて、検体中の水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella−Zoster Virus、VZV)を検出する方法であり、前記免疫クロマト分析装置の前記標識物質保持部及び検出部が含有する抗体の組み合わせが、以下(i)〜(iii)のいずれかである、以下の工程(1)〜(4)を含む免疫クロマト分析方法。
(i)前記標識物質保持部が含有する抗体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列44−88番目のアミノ酸配列からなるペプチドに対して反応性を有する抗体であり、前記検出部が含有する抗体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列89−107番目又は108−135番目のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドに対して反応性を有する抗体である、抗体の組み合わせ
(ii)前記標識物質保持部が含有する抗体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列89−107番目のアミノ酸配列からなるペプチドに対して反応性を有する抗体であり、前記検出部が含有する抗体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列108−135番目のアミノ酸配列からなるペプチドに対して反応性を有する抗体である、抗体の組み合わせ
(iii)前記標識物質保持部が含有する抗体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列108−135番目のアミノ酸配列からなるペプチドに対して反応性を有する抗体であり、前記検出部が含有する抗体が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列44−88番目又は89−107番目のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドに対して反応性を有する抗体である、抗体の組み合わせ
(1)検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に保持されている抗体により水痘帯状疱疹ウイルスを認識させる工程
(3)前記検体及び抗体を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
(4)展開された移動相中の水痘帯状疱疹ウイルスを検出部に含まれる抗体により検出する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水痘帯状疱疹ウイルスの検出のための免疫クロマト分析装置、免疫クロマト分析キットおよびその検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella−Zoster Virus、VZV)は、α−ヘルペスウイルス亜科に属し、約125kbpの塩基配列からなる線状2本鎖DNAを有するウイルスである。このウイルスは、ヒトに対して初感染時に水痘(varicella)を引き起こし、治癒後の非活動期は神経細胞周囲の外套細胞に潜伏しており、何らかの原因で免疫力が低下するとウイルスが再び活性化し、帯状疱疹(zoster)を引き起こす。免疫抑制状態(免疫抑制剤使用、悪性腫瘍、免疫不全等の基礎疾患)のヒトがVZVに初感染、あるいは再活性化した場合、重症化し、時に致命的になることもあり、早期治療を行うための迅速診断法の確立が望まれている。
【0003】
特許文献1には、帯状疱疹後の神経痛等の予防または治療の手段として、水痘帯状疱疹ウイルスの前初期タンパク質IE62を認識し、かつ、脳由来神経栄養因子と交差反応する抗体を用いた、神経疾患の予防または治療剤が開示されている。
特許文献2には、DNaseXタンパク質の機能を増強するエンドサイトーシス依存性DNA取り込み抑制剤が開示されており、ヒトDNaseXを抗原として間接的に、水痘帯状疱疹ウイルス等に起因する病状を予知する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5279504号明細書
【特許文献2】特開2008−253188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、VZVによって引き起こされる神経痛の原因を検出、または治療する方法であって、VZVを特異的に検出するものではない。また、特許文献2に記載の方法においても、VZVそのものを直接検出するのではなく、ヒトDNaseXを抗原として間接的に病状を予知する方法である。このように、これまで、VZVを特異的に検出する方法は確立されておらず、迅速にVZVの感染を診断することができなかった。そこで本発明は、迅速にVZVの感染を診断する手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
VZVは、糖タンパク質であって、免疫グロブリンGのFc部位を捕捉する機能を持つ水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質E(以下、VZVgEともいう)を有している。このVZVgEは、他のα−ヘルペスウイルス(例えば、HSV、BHV、FeHV等)が有する糖タンパク質E(glycoprotein E、gE)と、アミノ酸配列において約50%程度の相同性を有しており、それぞれのgEはその機能、構造ともに類似している。
【0007】
本発明者らは、VZVを直接検出する手段として、上記VZVgEに着目し、鋭意研究した結果、VZVgEのある特定の領域を認識する抗体は、他のα−ヘルペスウイルスとは交差反応を示さず、VZVを特異的に検出できることを見出した。
そして、VZVgEの特定の領域を認識する抗体を用いた免疫クロマト分析装置によれば、迅速に、そして簡易にVZVのヒトへの感染を診断できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
したがって、本発明は以下の通りである。
1.試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella−Zoster Virus、VZV)を検出するための免疫クロマト分析装置であって、
前記標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体を含有する、免疫クロマト分析装置。
2.試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella−Zoster Virus、VZV)を検出するための免疫クロマト分析装置であって、
前記標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列108−135番目を認識する抗体を含有する、免疫クロマト分析装置。
3.前記試料添加部に添加する試料が、前記水痘帯状疱疹ウイルスを含む水疱内容液である、前記1又は2に記載の免疫クロマト分析装置。
4.前記標識物質保持部が含有する標識物質が金コロイド粒子であり、前記標識物質保持部が前記金コロイド粒子を、0.05〜1.5μg/cm含有する、前記1〜3のいずれか1に記載の免疫クロマト分析装置。
5.前記1〜4のいずれか1に記載の免疫クロマト分析装置と、検体を希釈して展開するための検体希釈液とを含む、免疫クロマト分析キット。
6.前記検体希釈液が少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含有する、前記5に記載の免疫クロマト分析キット。
7.試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む免疫クロマト分析装置を用いて、検体中の水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella−Zoster Virus、VZV)を検出する方法であり、前記免疫クロマト分析装置の前記標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が、配列番号1のアミノ酸配列からなる前記水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体を含有し、以下の工程(1)〜(4)を含む免疫クロマト分析方法。
(1)検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に保持されている抗体により水痘帯状疱疹ウイルスを認識させる工程
(3)前記検体及び抗体を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
(4)展開された移動相中の水痘帯状疱疹ウイルスを検出部に含まれる抗体により検出する工程
【発明の効果】
【0009】
本発明は、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella−Zoster Virus、VZV)の糖タンパク質E(gE)の特定の部位に結合する抗体を用いた免疫クロマト分析装置である。本発明の免疫クロマト分析装置を用いることによって、VZVを特異的に迅速かつ簡易に検出できる。すなわち、水痘、帯状疱疹の診断をより確実かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の免疫クロマト分析装置の構造を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
本発明の、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella−Zoster Virus、VZV)を検出するための免疫クロマト分析装置は、検体を添加する試料添加部と、標識物質を保持する標識物質保持部と、VZVを検出する検出部を有するクロマトグラフ媒体部と、検出部を通過した液体を吸収する吸収部とを備え、標識物質保持部及び検出部のいずれもが、VZVの糖タンパク質E(以下、VZVgEともいう)を認識する抗体を含有しており、特に、標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が、配列番号1のアミノ酸配列からなるVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体を含有することを特徴としている。好ましくは、標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が、配列番号1のアミノ酸配列からなるVZVgEのうち、アミノ酸配列48−135番目を認識する抗体を含有することであり、より好ましくは、標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が、配列番号1のアミノ酸配列からなるVZVgEのうち、アミノ酸配列48−88番目、89−107番目、及び108−135番目の少なくともいずれか1つを認識する抗体を含有することであり、特に好ましくは、標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が、配列番号1のアミノ酸配列からなるVZVgEのうち、アミノ酸配列108−135番目を認識する抗体を含有することである。以下、標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が、配列番号1のアミノ酸配列からなるVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体を含有する場合を例に説明をするが、標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が含有する抗体の好ましい態様は、上記のとおりである。
【0013】
水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella−Zoster Virus、VZV)は、α−ヘルペスウイルス亜科に属し、水痘(varicella)及び帯状疱疹(zoster)の病原媒体である。このVZVが有する糖タンパク質の1つである、水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質E(VZVgE)は、配列番号1に示される623個のアミノ酸からなり、アミノ酸配列1−544番目にあたる細胞外領域(Extracellular Domain)、アミノ酸配列545−562番目にあたる膜貫通領域(transmembrane domain;TM)、アミノ酸配列563−623番目にあたる細胞質尾部(Cytoplasmic Tail)から構成されている(Jurie K et al Journal of Virology,Jan.1997,p110−119)。
【0014】
本発明に使用する抗体のうち、後述する免疫クロマト分析装置の標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が含有する抗体は、VZVgEのアミノ酸配列のうち1−188番目を認識する。ここで、本明細書において、抗体がある特定のアミノ酸配列を「認識する」とは、該特定のアミノ酸配列に対して、それ以外の他のアミノ酸配列よりも高い親和性をもって結合することを意味する。
【0015】
上記したように、VZVgEは他のα−ヘルペスウイルスのgEと約50%程度のアミノ酸配列の相同性を有する。本発明においては、VZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体を用いることで、相同性の高い他のα−ヘルペスウイルスとも交差反応なく特異的にVZVを検出する免疫クロマト分析装置を提供することが可能となる。
【0016】
本発明の免疫クロマト分析装置においては、その標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方に、VZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体を含有させておく。すなわち、標識物質保持部のみに上記抗体を含有させておいてもよいし、検出部のみに上記抗体を含有させておいてもよいし、標識物質保持部及び検出部の両方に上記抗体を含有させておいてもよい。
【0017】
標識物質保持部及び検出部のいずれか一方のみに上記抗体を含有させておくことが好ましいのは、標識物質保持部に担持された抗体(以下、第一抗体ともいう)が認識するVZVgEの部位と、検出部に担持された抗体(以下、第二抗体ともいう)が認識するVZVgE部位とが異なることによって、抗体結合によりエピトープがマスクされることなく、または抗原の立体構造変化による影響等の相互作用を受けることなく、以下に示すようなサンドイッチ構造が形成され、検出感度が向上するからである。すなわち、まず、標識物質保持部に担持された抗体(第一抗体)が、VZVgEの一部に結合する。続いて、検出部に固定化された抗体(第二抗体)が、第一抗体が結合した箇所とは別の箇所に結合することによって、VZVgEを抗体同士で挟むようにしてサンドイッチの構造を形成し、VZVを検出する。
【0018】
(抗体の作製方法)
本明細書において「抗体」とは、ポリクローナル抗体やモノクローナル抗体等の天然型抗体、遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体や一本鎖抗体、ヒト抗体産生トランスジェニック動物等を用いて製造され得るヒト抗体、ファージディスプレイによって作製された抗体およびこれらの結合性断片が含まれる。
抗体産生動物種としては、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等である。免疫グロブリンとしては、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのいずれでもよい。
【0019】
一実施態様において、免疫原としてのVZVgEペプチドは、既知の一般的な製造方法によって製造することができる。すなわち、配列番号1のアミノ酸配列を含むVZVから抽出精製したgEタンパク質またはクローニングされたgEタンパク質の遺伝子を大腸菌などの宿主で遺伝子工学的に発現させて抽出精製したgEタンパク質、さらにはgEタンパク質の一部を構成するポリペプチドを免疫原として用いることができる。
【0020】
モノクローナル抗体は、常法に従って、上記免疫原で免疫したマウスの脾臓細胞と骨髄腫細胞をハイブリッドさせ、目的とする抗体を産生するハイブリドーマを選択し、このハイブリドーマから産生されてくるモノクローナル抗体を収得する[例えば、ケーラーとミルスタインの技法(Nature 256(1975)495−497)を参照]。ポリクローナル抗体は、常法により、上記免疫原を産生動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等)に免疫して得た抗血清中から目的とする抗体を分離することにより得られる。
【0021】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンのスクリーニングは、ハイブリドーマを、例えばマイクロタイタープレート中で培養し、増殖の見られたウェルの培養上清の上記免疫原に対する反応性を、例えばELISA等の酵素免疫測定法によって測定することにより行うことができる。
【0022】
このハイブリドーマは、培地(例えば、10%牛胎児血清を含むDMEM)を用いて培養し、その培養液の遠心上清をモノクローナル抗体溶液とすることができる。また、本ハイブリドーマを由来する動物の腹腔に注入することにより、腹水を生成させ、得られた腹水をモノクローナル抗体溶液とすることができる。モノクローナル抗体は、単離および/または精製されることが好ましい。
【0023】
VZVgEを認識する抗体のうち、VZVgEのアミノ酸配列の特定部位を認識する抗体は、例えば、上記VZVgEのアミノ酸配列の特定部位に相当するタンパク質の断片を用いたウエスタンブロッティング等により、上記VZVgEを認識する抗体を産生するハイブリドーマの中から、上記VZVgEのアミノ酸配列の特定部位に対してより強い反応性を示す抗体を産生するハイブリドーマを選択することにより得ることができる。具体的には実施例に示すように、例えばVZVgEのアミノ酸配列の1−188番目を特異的に認識する抗体は、以下のようなスクリーニングを行うことによって得られる。例えば、実施例にて後述するように、VZVgEのアミノ酸配列1−188番目のタンパク質の断片により、上記VZVgEを認識する抗体を産生するハイブリドーマの中から、VZVgEのアミノ酸配列1−188番目に対してより強い反応性を示す抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。VZVgEのアミノ酸配列の48−88番目、89−107番目、又は108−135番目を特異的に認識する抗体についても、同様にして得ることができる。
【0024】
以上、本発明に使用する抗体の作製方法について記載したが、具体的には実施例にて詳述する。
【0025】
(本発明の免疫クロマト分析装置)
次に、図面を参照しながら本発明の免疫クロマト分析装置の一実施形態について説明する。なお本明細書において、「固定」とは、抗体が移動しないように膜等の担体に配置されていることを意味し、「担持」または「保持」とは、膜等の担体の中または表面を移動可能に配置されることを意味する。
【0026】
本発明の免疫クロマト分析装置の一実施形態としては、図1に示すように、試料添加部(サンプルパッドともいう)(1)、標識物質保持部(コンジュゲートパッドともいう)(2)、クロマトグラフ媒体部(3)、検出部(4)、吸収部(5)およびバッキングシート(6)から構成されている。
【0027】
試料添加部(1)は、免疫クロマト分析装置において、検体(サンプル)を滴下する部位である。試料添加部(1)では検体試料が迅速に吸収されるが、保持力は弱く、速やかに検体試料が移動していくような性質の多孔質シートで構成することができる。多孔質シートとしては、例えば、セルロース濾紙、ガラスファイバー濾紙、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ナイロン、綿布等が挙げられる。
【0028】
標識物質保持部(2)は、後述する標識物質(マーカー物質)を含有しており、該標識物質は抗体と結合した標識抗体として標識物質保持部(2)に担持されている。標識物質と結合する抗体(第一抗体)は、上記したように、VZVgEを認識する抗体である。後述する検出部に含有させる抗体(第二抗体)が、VZVgEを認識する抗体のうちVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体でない場合は、標識物質と結合する抗体(第一抗体)はVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体とする。標識物質保持部内を検体が移動する際に、上記標識抗体(第一抗体)と検体中のVZVとが結合する。標識物質保持部(2)には、グラスファイバーまたはセルロースの膜が通常使用される。
【0029】
標識物質保持部中の抗体(第一抗体)の含有量は、通常0.03〜0.50μgであり、好ましくは0.05〜0.4μgであり、より好ましくは0.1〜0.3μgである。また、標識物質保持部の単位面積当たりの抗体(第一抗体)の含有量は、通常0.05〜1.0μg/cmであり、好ましくは0.1〜0.8μg/cmであり、より好ましくは0.17〜0.6μg/cmである。
【0030】
免疫クロマト分析における検出試薬の標識には、一般に酵素等も使用されるが、被検出物質の存在を目視で判定するのに適していることから、標識物質としては不溶性担体を用いることが好ましい。抗体を不溶性担体に感作することにより標識化した検出試薬を調製することができる。なお、抗体を不溶性担体に感作する手段は、公知の方法に従えばよい。
【0031】
標識物質としての不溶性担体には、金、銀もしくは白金のようなコロイド状金属粒子、酸化鉄のようなコロイド状金属酸化物粒子、硫黄などのコロイド状非金属粒子及び合成高分子よりなるラテックス粒子、またはその他を用いることができる。特に、金コロイド粒子が、検出が簡便であり、かつ凝集しづらく非特異的な発色が起こりにくい点で好ましい。金コロイドの粒子の平均粒径は、例えば10nm〜250nm、好ましくは35nm〜120nmである。平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM:日本電子(株)製、JEM−2010)により、撮影した投影写真を用いて無造作に100個の粒子を粒子の投影面積円相当径を計測し、その平均値から算出することができる。標識物質保持部が含有する金コロイド粒子は、標識物質保持部の単位面積あたり、通常0.025〜1.5μg/cmであり、好ましくは0.05〜1.5μg/cmであり、より好ましくは0.1〜1.0μg/cmであり、さらに好ましくは0.2〜0.6μg/cmである。前記範囲に設定することによって、標識された粒子が分散したまま展開し、抗体の認識部位が阻害されず高感度化できるからである。
【0032】
不溶性担体は、被検出物質の存在を視覚的に判定するのに適した標識物質であり、目視による判定を容易にするためには有色であることが好ましい。コロイド状金属粒子及びコロイド状金属酸化物粒子は、それ自体が粒径に応じた特定の自然色を呈するものであり、その色彩を標識として利用することができる。
【0033】
クロマトグラフ媒体部(3)は、クロマトグラフの展開部位である。クロマトグラフ媒体部(3)は、毛管現象を示す微細多孔性物質からなる不活性の膜である。クロマトグラフで使用される検出試薬、固定化試薬または被検出物質などと反応性を有しないという観点から、また、本発明の効果が向上するという観点から、例えば、ニトロセルロース製のメンブレン(以下、ニトロセルロースメンブレンともいう)や、酢酸セルロース製のメンブレン(以下、酢酸セルロースメンブレンともいう)が好ましく、ニトロセルロースメンブレンがさらに好ましい。なお、セルロース類メンブレン、ナイロンメンブレン及び多孔質プラスチック布類(ポリエチレン、ポリプロピレン)も使用可能である。
【0034】
ニトロセルロースメンブレンとしては、ニトロセルロースが主体で含まれていればよく、純品またはニトロセルロース混合品などニトロセルロースを主材とするメンブレンを使用することができる。
【0035】
ニトロセルロースメンブレンは、さらに毛細管現象を促進させる物質を含有させることもできる。該物質としては、膜面の表面張力を低下させ、親水性をもたらす物質が好ましい。例えば、糖類、アミノ酸の誘導体、脂肪酸エステル、各種合成界面活性剤またはアルコール等の両親媒性の作用を有する物質であって、被検出物質の移動に影響がなく、マーカー物質(例えば金コロイド粒子など)の発色に影響を及ぼさない物質が好ましい。
【0036】
ニトロセルロースメンブレンは、多孔性であって、毛細管現象を示す。この毛細管現象の指標は、吸水速度(吸水時間:capillary flow time)を測ることで確認できる。吸水速度は、検出感度と検査時間に影響する。
【0037】
上記のようなニトロセルロースメンブレンや酢酸セルロースメンブレンに代表されるクロマトグラフ媒体部(3)の形態及び大きさは特に制限されるものではなく、実際の操作の点及び反応結果の観察の点において適切であればよい。
【0038】
さらに操作をより簡便にするためには、クロマトグラフ媒体部(3)の裏面に、プラスチックなどよりなる支持体を設けることが好ましい。この支持体の性状は特に制限されるものではないが、目視判定によって測定結果の観察を行う場合には、支持体は、標識物質によりもたらされる色彩と類似しない色彩を有するものであることが好ましく、通常、無色又は白色であることが好ましい。
【0039】
検出部(4)は、前記クロマトグラフ媒体部(3)上に形成される。すなわち、VZVを認識する抗体が、クロマトグラフ媒体部(3)上の任意の位置に固定化される。該抗体の固定化は常法に従って行うことができる。該抗体(第二抗体)は、標識物質と結合する抗体(第一抗体)が、VZVgEを認識する抗体のうちVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体でない場合は、この検出部に含有させる抗体(第二抗体)はVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体とする。
【0040】
検出部(4)における抗体(第二抗体)の含有量は、通常0.1〜3.0μgであり、好ましくは0.3〜2.0μgであり、より好ましくは0.3〜1.0μgである。また、検出部(4)の単位面積当たりの抗体(第二抗体)の含有量は、通常0.04〜1.0g/cmであり、好ましくは0.125〜0.8μg/cmであり、より好ましくは0.125〜0.42μg/cmである。
【0041】
また、クロマトグラフ媒体部(3)上には、非特異的な吸着により分析の精度が低下することを防止するため、必要に応じて、クロマトグラフ媒体部(3)に、公知の方法でブロッキング処理を行うことができる。一般にブロッキング処理はウシ血清アルブミン、スキムミルク、カゼインまたはゼラチン等のタンパク質が好適に用いられる。かかるブロッキング処理後に、必要に応じて、例えば、Tween20、TritonX−100またはSDS等の界面活性剤を1つ又は2つ以上組み合わせて洗浄してもよい。
【0042】
検出部(4)には、上記第二抗体の他に、コントロールとして抗IgG抗体を担持させた抗IgG抗体塗布部を設けてもよい。該部位は、抗原と反応しなかった標識抗体の標識物質や上記第二抗体と反応しなかった標識抗体の標識物質はこの抗IgG抗体塗布部で抗IgG抗体と反応し固定化され、展開が正常に行われていることを示すコントロールとして機能する。
【0043】
吸収部(5)は、クロマトグラフ媒体部(3)の末端に、検出部(4)を通過した検体や展開液等の液体を吸収させるために設置される。本発明の免疫クロマト分析装置において、吸収部(5)は、例えばグラスファイバーからなることができる。吸収部(5)がグラスファイバーからなることによって、試料液の液戻りを大幅に低減することができる。
【0044】
バッキングシート(6)は、基材である。片面に粘着剤を塗布したり、粘着テープを貼り付けることにより、片面が粘着性を有し、該粘着面上に試料添加部(1)、標識物質保持部(2)、クロマトグラフ媒体部(3)、検出部(4)、および吸収部(5)の一部または全部が密着して設けられている。バッキングシート(6)は、粘着剤によって試料液に対して不透過性、非透湿性となるようなものであれば、基材としては、特に限定されない。
【0045】
上記のようにして作製した免疫クロマト分析装置は、製品化する前に、通常乾燥処理に施される。乾燥温度は例えば20〜50℃、乾燥時間は0.5〜1時間である。
【0046】
(本発明の免疫クロマト分析キット)
本発明の免疫クロマト分析キットは、上記の免疫クロマト分析装置と、検体(検体試料または単に試料ということもある)を希釈して展開するための検体希釈液とを含む。
【0047】
本発明の免疫クロマト分析キットにおいて検体希釈液は、展開液としても使用することができるものであるが、通常溶媒として水を用い、これに緩衝液、塩、および非イオン性界面活性剤、さらに、例えば抗原抗体反応の促進または非特異的反応を抑制するためのタンパク質、高分子化合物(PVP等)、イオン性界面活性剤もしくはポリアニオン、または、抗菌剤、キレート剤等々の1種もしくは2種以上を加えてもよい。
【0048】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、Triton X−100(商品名、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル)、Tween20(商品名、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、NP−40(商品名 ノニデット40)、Brij35、ノニオンMN−811(日油社製)等が挙げられ、1種もしくは2種以上を加えてもよい。
好ましくは、検体希釈液が含有する非イオン性界面活性剤が、HLB値6〜12の非イオン性界面活性剤を一種以上含むことである。更に好ましくはHLB値7〜11、最適にはHLB値8〜10の非イオン性界面活性剤を一種以上含むことである。HLB値6〜12の非イオン性界面活性剤としては、好ましくは片末端が水酸基のポリオキシアルキレンエーテルが用いられる。片末端のアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、繰り返しのアルキルエーテル基のアルキル部位についても、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0049】
また、検体希釈液が含有する非イオン性界面活性剤が、HLB値6〜12の非イオン性界面活性剤を一種以上含むことに加え、HLB値13〜18の非イオン性界面活性剤を一種以上含むことがより好ましい。その配合比としては、HLB値6〜12の非イオン性界面活性剤の総量(A)に対するHLB値13〜18の非イオン性界面活性剤の総量(B)の質量比が、A:B=30:70〜70:30であることが好ましい。より好ましくは、A:B=40:60〜60:40で用いられる。
【0050】
または、検体希釈液中で、検体試料から被検出物質(VZVgE等)を抽出するために、アルコール等の周知の疎水的な物質(疎水性物質)を検体希釈液に含有させたり、検体を採取した直後に加えたりしてもよい。検体希釈液中に上記疎水性物質を含有させたり、加えたりすることによって、検体を希釈するのと同時に検体から被検出物質(VZVgE等)を抽出することができるため、事前の抽出の手間を省くことができる上、検出感度を高めることができるため好ましい。
【0051】
検体希釈液を展開液として用いる場合には、検体試料と展開液を予め混合した検体含有液を、試料添加部上に供給・滴下して展開させることもできるし、先に検体試料を試料添加部上に供給・滴下した後、展開液を試料添加部上に供給・滴下して展開させてもよい。
【0052】
(本発明の免疫クロマト分析方法)
本発明の免疫クロマト分析方法は以下の工程(1)〜(4)を含み、上記の免疫クロマト分析装置を用いて検体に含まれる被検出物質の水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella−Zoster Virus、VZV)を検出する方法であり、免疫クロマト分析装置の標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が、配列番号1のアミノ酸配列からなる水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)のアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体を含有し、以下の工程(1)〜(4)を含む免疫クロマト分析方法である。
(1)検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に保持されている抗体により水痘帯状疱疹ウイルスを認識させる工程
(3)前記検体及び抗体を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
(4)展開された移動相中の水痘帯状疱疹ウイルスを検出部に含まれる抗体により検出する工程
本発明の免疫クロマト分析方法に使用する前記免疫クロマト分析装置における標識物質保持部及び検出部のいずれもが、VZVgEを認識する抗体を含有している。特に、標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が、配列番号1のアミノ酸配列からなるVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体を含有する。また、標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が含有する抗体は、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列からなるVZVgEのうち、アミノ酸配列48−135番目を認識する抗体であり、より好ましくは、標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が、配列番号1のアミノ酸配列からなるVZVgEのうち、アミノ酸配列48−88番目、89−107番目、及び108−135番目の少なくともいずれか1つを認識する抗体であり、特に好ましくは、標識物質保持部及び検出部の少なくとも一方が、配列番号1のアミノ酸配列からなるVZVgEのうち、アミノ酸配列108−135番目を認識する抗体である。
各工程について以下に説明する。
【0053】
(1)検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料添加部に添加する工程
工程(1)では、第一に、検体を、測定精度を低下させることなく、免疫クロマトグラフ媒体中をスムーズに移動する程度の濃度に、検体希釈液で適宜調整または希釈して検体含有液とするのが好ましい。検体希釈液は上述したものを使用できる。第二に、検体含有液を試料添加部(1)上に、所定量(通常、0.1〜2ml)滴下する。検体含有液が滴下されると、検体含有液は試料添加部(1)中で移動を開始する。
【0054】
本発明において使用する検体試料は、被検出物質である水痘帯状疱疹ウイルスを含む可能性のある検体試料であり、具体的には、水痘帯状疱疹ウイルスに感染した患者の水疱を穿刺することによって得られる水疱内容液、又は咽頭拭い液等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
(2)標識物質保持部に保持されている抗体により水痘帯状疱疹ウイルスを認識させる工程
工程(2)は、工程(1)において試料添加部に添加された検体含有液を、標識物質保持部(2)へと移動させ、標識物質保持部に保持されている標識物質が結合した抗体(第一抗体)により検体中の被検出物質である水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質E(VZVgE)を認識させる工程である。
【0056】
標識物質は上記のものを使用できる。標識物質と結合する抗体(第一抗体)は、上記したように、VZVgEを認識する抗体である。同抗体は、試料添加部より展開されてきた検体中のVZVgEを認識し結合する。特に、標識物質と結合する抗体(第一抗体)が、前者のVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体である場合は、同抗体は、試料添加部より展開されてきた検体中のVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識し結合する。
【0057】
(3)前記検体及び抗体を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
工程(3)は、工程(2)において被検出物質である水痘帯状疱疹ウイルスが標識物質保持部において標識物質が結合した抗体に認識された後、検体および抗体を、クロマトグラフ媒体部上を移動相として通過させる工程である。
【0058】
(4)展開された移動相中の水痘帯状疱疹ウイルスを検出部に含まれる抗体により検出する工程
工程(4)は、クロマトグラフ媒体部上を移動相として通過した検体中の水痘帯状疱疹ウイルスにおけるVZVgEが、抗原・抗体の特異的結合反応により、検出部に保持、即ち、固定されている抗体と、前記工程(2)において標識物質が結合した抗体とによってサンドイッチ状に挟まれるように特異的に反応結合して、検出部が着色する工程である。
該抗体(第二抗体)は、上記したように、VZVgEを認識する抗体である。標識物質と結合する抗体(第一抗体)が、後者のVZVgEを認識する抗体のうちVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体でない場合は、この検出部には必ずVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体を含有させる。
該抗体は、標識物質保持部より展開されてきた検体中のVZVgEを認識し結合する。特に、該抗体(第二抗体)が、前者のVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体である場合は、同抗体は、標識物質保持部より展開されてきた、第一抗体の結合したVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識し結合、捕捉する。
【0059】
標識物質保持部及び検出部のいずれか一方のみがVZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識し結合する抗体を含有する場合、検出部に固定化された抗体(第二抗体)は、標識物質保持部に担持された抗体(第一抗体)が結合した箇所と別の箇所に結合し、被検出物質をサンドイッチ状に挟み、検出部が着色する。
【0060】
被検出物質である水痘帯状疱疹ウイルスが存在しない場合には、試料の水分に溶解した標識試薬は、クロマトグラフ媒体部上の検出部を通過しても特異的結合反応が起こらないので、検出部が着色しない。
【0061】
最後に、検体含有液の水分は、吸収部(5)へと移動する。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0063】
[試験例1]VZVgEを認識する抗体の作製
VZVのgEタンパク質(VZVgE)のアミノ酸配列をDDBJ(国立遺伝学研究所データベース)より入手した(配列番号1)。前記VZVgEのアミノ酸配列から、膜貫通ドメインを除いた細胞外領域である配列番号2に示すアミノ酸配列(1−544番目)を特定し、対応する遺伝子配列を合成した。His−tag発現用ベクターであるpET302/NT−Hisを制限酵素EcoRIで切断した後、脱リン酸化処理としてアルカリフォスファターゼにより処理し、前記遺伝子配列と混合し、DNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ)を用いてライゲーション反応をおこなった。
目的遺伝子を組み込んだ組換えVZVgEプラスミドを組換え蛋白発現用宿主E.coli BL(DE3)pLysS(Novagen)に導入した。導入菌をLB寒天平板培地で培養し、得られたコロニーをLB液体培地で培養した。さらに1mM IPTG(タカラバイオ)を添加して組換えVZVgEの発現を誘導した後、E.coliを回収した。回収した菌を可溶化バッファー[0.5%Triron X−100(sigma)、10mM Imidazole、20mM Phosphateおよび0.5M NaCl(pH7.4)(Amersham)]に再浮遊し、超音波処理により可溶化した後、組換えVZVgEをHis trap Kit(Amersham)を用いて精製した。この精製タンパク質をリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと称する)に対して透析し、目的の組換えVZVgEとした。
【0064】
得られた組換えVZVgEを免疫用抗原として、組換えVZVgEに対するモノクローナル抗体(以下、抗VZVgE抗体と称する)を作出した。モノクローナル抗体の作出は次のように、常法に従っておこなった。100μgの組換えVZVgEと等量のAduvant Complete Freund(Difco)を混合して、マウス(BALB/c、5週齢、日本SLC)に3回免疫し、その脾臓細胞を細胞融合に用いた。細胞融合には、マウスの骨髄腫細胞であるSp2/0−Ag14細胞(Shulmanら、Nature,276,269−270,1978)を用いた。細胞の培養には、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(Gibco)にL−グルタミン 0.3mg/ml、ペニシリンGカリウム 100単位/ml、硫酸ストレプトマイシン 100μg/ml、Gentacin 40μg/mlを添加し(DMEM)、これに牛胎児血清(JRH)を10%となるように加えた培養液を用いた。細胞融合は、免疫マウスの脾臓細胞とSp2/0−Ag14細胞を混合し、そこにPolyethylene glycol solution(Sigma)を添加することにより行った。融合細胞はHAT−DMEM[0.1mM Sodium Hypoxantine、0.4μM Aminopterinおよび0.016mM Thymidine(Gibco)を含む血清加DMEM]で培養し、酵素結合抗体法(ELISA)により培養上清中の抗体産生を確認した。抗体産生陽性の細胞をHT−DMEM[0.1mM Sodium Hypoxantineおよび0.16mM Thymidineを含む血清加DMEM]で培養し、さらに血清加DMEMで培養を続けた。
【0065】
クローニングした細胞は、2,6,10,14−Tetramethylpentadecane(Sigma)を接種しておいたマウス(BALB/c、リタイア、日本SLC)に腹腔内接種し、腹水を採取した。この腹水をプロテインGカラムに供し、モノクローナル抗体を精製した。
最終的にVZVgEを認識するモノクローナル抗体産生細胞が23クローン得られた。
【0066】
[試験例2]VZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体を産生する細胞のスクリーニング
試験例1で得られたVZVgEに認識するモノクローナル抗体産生細胞の23クローンのうち、VZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体を産生する細胞をスクリーニングするため、以下の実験を行った。
試験例1と同様の方法で、配列番号1のアミノ酸配列からなるVZVgEのうち、アミノ酸配列1−188番目からなるリコンビナントタンパク質を作製し以下の実験に用いた。
作製した0.01mg/mlのVZVgE(アミノ酸配列1−188番目)リコンビナントタンパク質溶液を、10%の2−メルカプトエタノールを添加した2×Tris−Glycine SDS Sample Buffer(TEFCO社製)と等量で混合し、100℃で10分間加熱し、SDS−PAGEに供した。SDS−PAGEは、レディーゲル J5−20% 12well(BIO−RAD社製)を用いて、公知の標準的な方法に従った。泳動後のゲルからタンパク質をSequi−Blot PVDF Membrane(BIO−RAD社製)にブロッテイング装置(BIO−RAD社製)により転写した。転写後のPVDF膜をイムノブロック(DSファーマラボラトリーズ)で室温にて1時間ブロッキングした。
ブロッキング液を除き、PVDF膜を0.05%のTween20(商品名)を含むPBS(以下、T−PBSという。)で10分間3回洗浄後、試験例1で得られた23のモノクローナル抗体産生細胞から産生されたモノクローナル抗体を含む培養上清とともに室温で1時間インキュベートした。抗体の濃度をそれぞれ10μg/mlに調製し、1レーン当たり1.0μgのVZVgEリコンビナントタンパク質と反応させた。PVDF膜をT−PBSで10分間3回洗浄後、T−PBSで5000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG(SIGMA社製)とともに室温で30分間インキュベートした。T−PBSで10分間3回洗浄後、発色基質である1−StepTM NBT/BCIP(PIERCE社製)とともにPVDF膜をインキュベートして、PVDF膜に結合した抗体を可視化した。その結果、21kDaのバンド(VZVgEのアミノ酸配列1−188番目に相当)が、23のモノクローナルの中から複数検出できた。後述する免疫クロマト分析試験に供するため、当該抗体のうちから任意に2種類の抗体を選び、該抗体を産生するハイブリドーマをクローニングして、この2つの独立したクローンを選び、それぞれをハイブリドーマA,Bと命名した。また、ハイブリドーマA,Bがそれぞれ産生する抗体を、抗体A,Bと命名した。両抗体は、VZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体である。該ハイブリドーマ2株から得られたモノクローナル抗体のサブクラスはいずれもIgG1であった。
【0067】
[試験例3]免疫クロマト分析
本試験では、試験例2で得られた抗体A,Bを標識物質保持部及び検出部のいずれかに用いた免疫クロマト分析装置を作製し、免疫クロマト分析を行った。
<免疫クロマト分析装置の作製>
(1)試料添加部の作製
試料添加部としてグラスファイバーからなる不織布(ミリポア社製:300mm×30mm)を用いた。
(2)標識物質保持部の作製
金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製:LC40nm)0.5mlに、リン酸緩衝液(pH7.4)で0.05mg/mlの濃度になるように希釈した抗体(抗体A,Bのいずれか1つ)を0.1ml加え、室温で10分間静置した。
次いで、1質量%の牛血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加え、更に室温で10分間静置した。その後、十分撹拌した後、8000×gで15分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1質量%のBSAを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加えた。以上の手順で標識物質溶液を作製した。
上記作製した標識物質溶液300μLに300μLの10質量%トレハロース水溶液と1.8mLの蒸留水を加えたものを12mm×300mmのグラスファイバーパッド(ミリポア社製)に均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、標識物質保持部を作製した。
【0068】
(3)クロマトグラフ媒体部および検出部の作製
メンブレンとしてニトロセルロースからなるシート(ミリポア社製、商品名:HF120、300mm×25mm)を用いた。
次に、5質量%のイソプロピルアルコールを含むリン酸緩衝液(pH7.4)で1.0mg/mlの濃度になるように、抗体(抗体A,Bのいずれか1つ)を希釈した溶液150μLを、乾燥されたメンブレン上の検出部位(検出ライン)に1mmの幅でイムノクロマト用ディスペンサー「XYZ3050」(BIODOT社製)を用いて1μL/mmの量(1シートあたり25μL)でライン状に塗布した。
また、金ナノ粒子標識試薬の展開の有無や展開速度を確認するために検出部位の下流に、金ナノ粒子標識物質と広く親和性を有するヤギ由来抗血清をリン酸緩衝液(pH7.4)で希釈した液をコントロール部位(コントロールライン)に塗布した。その後、50℃で30分間乾燥させ、室温で一晩乾燥させ、クロマトグラフ媒体部および検出部を作製した。
(4)免疫クロマト分析装置の作製
次に、バッキングシートから成る基材に、試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部、展開した試料や標識物質を吸収するための吸収部としてグラスファイバー製の不織布を順次貼り合わせた。そして、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、免疫クロマト分析装置とした。なお、標識物質保持部の試料展開方向の長さを12mmとした。
【0069】
(5)検体希釈液
1質量%の非イオン性界面活性剤NP−40(ナカライテスク社製、商品名:ノニデットP−40、HLB値17.7)と、ノニオンMN−811(日油社製、商品名:ノニオンMN−811、HLB値8.3)との質量比1:1混合物を含む50mMのHEPES緩衝液(pH7.5)、を調製し、検体を希釈処理するための検体希釈液とした。
【0070】
<測定>
試験例2で作製した0.1mg/mlのVZVgE(アミノ酸配列1−188番目)リコンビナントタンパク質を抗原として、上記作製した免疫クロマト分析装置を用いた場合の、検出部における発色強度を測定した。上記抗原は、上記検体希釈液で100倍に希釈し、検体試料とした。
【0071】
上記それぞれの検体試料150μLを免疫クロマト分析装置の試料添加部上に載せて展開させ、検出部の着色の度合い(発色強度)を目視で確認した。結果を表1に示す。
なお表1中の評価基準は以下の通りである。
±:発色は確認できるが非常に色が薄いもの
++:強い発色を確認できるもの
【0072】
【表1】
【0073】
表1の結果により、VZVgEのアミノ酸配列1−188番目を認識する抗体を免疫クロマト分析装置に用いることによって、VZVを検出することができることが分かった。
【0074】
[試験例4]VZVgEのアミノ酸配列48−135番目を認識する抗体のスクリーニング
試験例1で得られたVZVgEに対するモノクローナル抗体のうち、VZVgEのアミノ酸配列48−135番目を認識する抗体をスクリーニングするため、以下の実験を行った。
0.01mg/mlのVZVgEリコンビナントタンパク質溶液(CalBioreagent社)を、10%の2−メルカプトエタノールを添加した2×Tris−Glycine SDS Sample Buffer(TEFCO社製)と等量で混合し、100℃で10分間加熱し、SDS−PAGEに供した。SDS−PAGEは、レディーゲル J5−20% 12well(BIO−RAD社製)を用いて、公知の標準的な方法に従った。泳動後のゲルからタンパク質をSequi−Blot PVDF Membrane(BIO−RAD社製)にブロッテイング装置(BIO−RAD社製)により転写した。転写後のPVDF膜をイムノブロック(DSファーマラボラトリーズ)で室温にて1時間ブロッキングした。
ブロッキング液を除き、PVDF膜を0.05%のTween20(商品名)を含むPBS(以下、T−PBSという。)で10分間3回洗浄後、試験例1で得られた23のモノクローナル抗体産生細胞から産生されたモノクローナル抗体を含む培養上清とともに室温で1時間インキュベートした。抗体の濃度をそれぞれ10μg/mlに調製し、1レーン当たり1.0μgのVZVgEリコンビナントタンパク質と反応させた。PVDF膜をT−PBSで10分間3回洗浄後、T−PBSで5000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG(SIGMA社製)とともに室温で30分間インキュベートした。T−PBSで10分間3回洗浄後、発色基質である1−StepTM NBT/BCIP(PIERCE社製)とともにPVDF膜をインキュベートして、PVDF膜に結合した抗体を可視化した。その結果、VZVgEリコンビナントタンパク質に相当する11kDaのバンド(VZVgEのアミノ酸配列48−135番目に相当)が、23のモノクローナルの中から6つ検出できた。当該抗体を産生するハイブリドーマをクローニングして、この6つの独立したクローンを選び、それぞれをハイブリドーマ1,2,3,4,5及び6と命名した。また、ハイブリドーマ1,2,3,4,5及び6がそれぞれ産生する抗体を、抗体1,2,3,4,5及び6と命名した。なお、抗体2は試験例2及び3における抗体Aに該当し、抗体6は試験例2及び3における抗体Bに該当する。該ハイブリドーマ6株から得られたモノクローナル抗体のサブクラスは全てIgG1であった。
【0075】
[試験例5]VZVgEのアミノ酸配列48−88番目、89−107番目、108−135番目を認識する抗体のスクリーニング
0.01mg/mlのVZVgEペプチド断片(配列番号1のアミノ酸配列48−88番目、89−107番目、108−135番目)を、ペプチドの化学合成法の常法であるペプチド固相化合成法により合成し以下の実験を行った。上記各ペプチド断片を10%の2−メルカプトエタノールを添加した2×Tris−Glycine SDS Sample Buffer(TEFCO社製)と等量で混合し、100℃で10分間加熱し、SDS−PAGEに供した。SDS−PAGEは、レディーゲル J5−20% 12well(BIO−RAD社製)を用いて、公知の標準的な方法に従った。泳動後のゲルからタンパク質をSequi−Blot PVDF Membrane(BIO−RAD社製)にブロッテイング装置(BIO−RAD社製)により転写した。転写後のPVDF膜をイムノブロック(DSファーマラボラトリーズ)で室温にて1時間ブロッキングした。ブロッキング液を除き、PVDF膜を0.05%のTween20(商品名)を含むPBS(以下、T−PBSという。)で10分間3回洗浄後、上記抗体1,2,3,4,5及び6とともに室温で1時間インキュベートした。抗体の濃度をそれぞれ10μg/mlに調製し、1レーン当たり1.0μgのVZVgEリコンビナントタンパク質と反応させた。PVDF膜をT−PBSで10分間3回洗浄後、T−PBSで5000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgG(SIGMA社製)とともに室温で30分間インキュベートした。T−PBSで10分間3回洗浄後、発色基質である1−StepTM NBT/BCIP(PIERCE社製)とともにPVDF膜をインキュベートして、PVDF膜に結合した抗体を可視化した。各VZVgEペプチド断片(配列番号1のアミノ酸配列48−88番目、89−107番目、108−135番目)に相当するバンドが検出できなかったものを−、検出できたものを+として、結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
この結果、抗体1〜3はVZVgEのアミノ酸配列48−88番目を認識し、抗体4、5はVZVgEのアミノ酸配列108−135番目を認識し、抗体6はVZVgEのアミノ酸配列89−107番目を認識することがわかった。
【0078】
[試験例6]免疫クロマト分析
本試験では、試験例2で得られた抗体1〜6のいずれかを用いた免疫クロマト分析装置を作製し、免疫クロマト分析を行った。
<免疫クロマト分析装置の作製>
(1)試料添加部の作製
試料添加部としてグラスファイバーからなる不織布(ミリポア社製:300mm×30mm)を用いた。
(2)標識物質保持部の作製
金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製:LC40nm)0.5mlに、リン酸緩衝液(pH7.4)で0.05mg/mlの濃度になるように希釈した抗体(抗体1〜6のいずれか1つ)を0.1ml加え、室温で10分間静置した。
次いで、1質量%の牛血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加え、更に室温で10分間静置した。その後、十分撹拌した後、8000×gで15分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1質量%のBSAを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加えた。以上の手順で標識物質溶液を作製した。
上記作製した標識物質溶液300μLに300μLの10質量%トレハロース水溶液と1.8mLの蒸留水を加えたものを12mm×300mmのグラスファイバーパッド(ミリポア社製)に均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、標識物質保持部を作製した。
【0079】
(3)クロマトグラフ媒体部および検出部の作製
メンブレンとしてニトロセルロースからなるシート(ミリポア社製、商品名:HF120、300mm×25mm)を用いた。
次に、5質量%のイソプロピルアルコールを含むリン酸緩衝液(pH7.4)で1.0mg/mlの濃度になるように、抗体(抗体1〜6のいずれか1つ)を希釈した溶液150μLを、乾燥されたメンブレン上の検出部位(検出ライン)に1mmの幅でイムノクロマト用ディスペンサー「XYZ3050」(BIODOT社製)を用いて1μL/mmの量(1シートあたり25μL)でライン状に塗布した。
また、金ナノ粒子標識試薬の展開の有無や展開速度を確認するために検出部位の下流に、金ナノ粒子標識物質と広く親和性を有するヤギ由来抗血清をリン酸緩衝液(pH7.4)で希釈した液をコントロール部位(コントロールライン)に塗布した。その後、50℃で30分間乾燥させ、室温で一晩乾燥させ、クロマトグラフ媒体部および検出部を作製した。
(4)免疫クロマト分析装置の作製
次に、バッキングシートから成る基材に、試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部、展開した試料や標識物質を吸収するための吸収部としてグラスファイバー製の不織布を順次貼り合わせた。そして、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、免疫クロマト分析装置とした。なお、標識物質保持部の試料展開方向の長さを12mmとした。
【0080】
(5)検体希釈液
1質量%の非イオン性界面活性剤NP−40(ナカライテスク社製、商品名:ノニデットP−40、HLB値17.7)と、ノニオンMN−811(日油社製、商品名:ノニオンMN−811、HLB値8.3)との質量比1:1混合物を含む50mMのHEPES緩衝液(pH7.5)、を調製し、検体を希釈処理するための検体希釈液とした。
【0081】
<測定>
0.01mg/mlのVZVgEリコンビナントタンパク質(CalBioreagent社)を抗原として、上記作製した免疫クロマト分析装置を用いた場合の、検出部における発色強度を測定した。上記抗原は、上記検体希釈液で100倍に希釈し、検体試料とした。
【0082】
上記それぞれの検体試料150μLを免疫クロマト分析装置の試料添加部上に載せて展開させ、検出部の着色の度合い(発色強度)を目視で確認した。結果を表3示す。
なお表3中の評価基準は以下の通りである。
−:発色を確認できないもの
±:発色は確認できるが非常に色が薄いもの
+:発色を確認できるもの
++:強い発色を確認できるもの
+++:非常に強い発色が確認できるもの
【0083】
【表3】
【0084】
表3の結果により、VZVgEのアミノ酸配列48−135番目を認識する抗体を免疫クロマト分析装置に用いて、VZVを検出することができることが分かった。特に、VZVgEのアミノ酸配列108−135番目を認識する抗体(抗体4、5)を、標識物質保持部または検出部のいずれか一方に含有させた場合に、VZVをより強く検出することができることが分かった。
【0085】
[試験例7]実検体による免疫クロマト分析
VZVを含有する検体試料として、VZV感染者の水疱内容液を用いたことを除いて、試験例6を繰り返した。水疱内容液は、VZV感染者である被験者の水疱を穿刺することにより採取した。また、採取した水疱内容液は、上記検体希釈液で10倍に希釈し、検体試料とした。
【0086】
上記それぞれの検体試料150μLを免疫クロマト分析装置の試料添加部上に載せて展開させ、検出部の着色の度合い(発色強度)を目視で確認した。結果を表4示す。
なお表4中の評価基準は以下の通りである。
−:発色を確認できないもの
±:発色は確認できるが非常に色が薄いもの
+:発色を確認できるもの
++:強い発色を確認できるもの
+++:非常に強い発色が確認できるもの
【0087】
【表4】
【0088】
検体試料を実検体とした場合も、VZVgEリコンビナントタンパク質を抗原とした試験例6と同様の結果となった。
【符号の説明】
【0089】
1 試料添加部(サンプルパッド)
2 標識物質保持部
3 クロマトグラフ媒体部
4 検出部
5 吸収部
6 バッキングシート
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]