特許第6367812号(P6367812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367812
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】ゼオライト材料の後処理
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/46 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   C01B39/46
【請求項の数】25
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-537192(P2015-537192)
(86)(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公表番号】特表2015-536291(P2015-536291A)
(43)【公表日】2015年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2013071041
(87)【国際公開番号】WO2014060260
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年10月7日
(31)【優先権主張番号】12189040.4
(32)【優先日】2012年10月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】マウラー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】エツキリム,ファルク
(72)【発明者】
【氏名】パルフレスク,アンドライ−ニコラエ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ウルリヒ
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−131513(JP,A)
【文献】 特開平03−164423(JP,A)
【文献】 特開平03−197313(JP,A)
【文献】 特開平03−242317(JP,A)
【文献】 特開2010−215434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト材料の後処理の方法であって、
(i)ゼオライト材料の骨格構造がYO及びXを含み、Yが4価元素であり、Xが3価元素であり、YがSi、Sn、Ti、Zr、Ge及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択され、XがAl、B、In、Ga、Fe及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択される、ゼオライト材料を準備する工程と、
(ii)(i)において準備したゼオライト材料を、
(a)最大限でも5のpHを有する、有機酸及び/又は無機酸を含む水溶液により、及び35℃〜100℃の範囲の温度で処理する工程と、
(b)(a)から得られたゼオライト材料を、5.5〜8の範囲のpH及び少なくとも75℃の温度を有し、かつ、少なくとも90質量%の水を含む液体水性系により処理する工程と を含む方法で処理する工程とを含み、
(a)における水溶液のpH及び(b)における液体水性系のpHをpH感受性ガラス電極を用いて測定する、方法。
【請求項2】
(ii)による方法が、
(a)ゼオライト材料を最大限でも5のpHを有する水溶液により処理する工程と、
(b)(a)から得られたゼオライト材料を5.5〜8の範囲のpH及び少なくとも75℃の温度を有する液体水性系により処理する工程と、
(a)(b)から得られたゼオライト材料を最大限でも5のpHを有する水溶液により処理する工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)の後、ゼオライト材料を、5.5〜8の範囲のpH及び75℃未満の範囲の温度を有する液体水性系による処理にかける、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)において、水溶液が、シュウ酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される有機酸、及び/又は、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される無機酸を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(a)において、水溶液が0〜5の範囲のpHを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(a)において、ゼオライト材料を水溶液により10分〜12時間の範囲の期間にわたり処理する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(b)において、ゼオライト材料を液体水性系により80℃〜180℃の範囲の温度で処理する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(b)において、ゼオライト材料を液体水性系により0.5時間〜24時間の範囲の期間にわたり処理する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(b)において、ゼオライト材料に対する液体水性系の質量比が20:1〜2:1の範囲にある、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(b)において、液体水性系が少なくとも99質量%の水を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(ii)において(b)の後に、ゼオライト材料を乾燥及び/又は焼成処理する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
YがSiであり、XがAlである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(a)による水溶液及び/又は(b)による液体水性系が少なくとも1種の有機酸の少なくとも1種の塩及び/又は少なくとも1種の無機酸の少なくとも1種の塩を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の塩がアンモニウム塩であり、(i)において準備されるゼオライト材料がそのナトリウム型として準備される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(i)におけるゼオライト材料を準備する工程が、
(1)種結晶並びにYOの少なくとも1つの源及びXの少なくとも1つの源を含む混合物を調製する工程と、
(2)(1)において調製した混合物からゼオライト材料を結晶化する工程と
を含む、
有機鋳型を用いない合成方法を含み、
(1)において用いる種結晶が(i)において準備されるゼオライト材料の骨格構造を有するゼオライト材料を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(i)において準備するゼオライト材料がLEV、CHA、MFI、MWW、BEA骨格構造を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
(i)においても(ii)においても(ii)の後においても、ゼオライト材料を蒸気処理にかけない、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
Yが4価元素であり、Xが3価元素であり、YがSi、Sn、Ti、Zr、Ge及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択され、XがAl、B、In、Ga、Fe及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択される、YO及びXを含む骨格構造を有し、
3730cm−1〜3750cm−1の範囲に極大を有する第1の吸収帯と、3600cm−1〜3700cm−1の範囲に極大を有する第2の吸収帯とを示し、
第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比が0.1〜0.9の範囲にある、IRスペクトルによって特徴づけられる、ゼオライト材料。
【請求項19】
YO:Xモル比が20:1〜60:1の範囲にある、請求項18に記載のゼオライト材料。
【請求項20】
水取込み量が最大限でも20質量%である、請求項18又は19に記載のゼオライト材料。
【請求項21】
IRスペクトルが3730cm−1〜3750cm−1の範囲に極大を有する第1の吸収帯と、3600cm−1〜3700cm−1の範囲に極大を有する第2の吸収帯とを示し、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比が0.2〜0.8の範囲にある、請求項18又は20に記載のゼオライト材料。
【請求項22】
YがSiであり、XがAlである、請求項18から21のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【請求項23】
LEV、CHA、MFI、MWW、BEA骨格構造を有する、請求項18から22のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【請求項24】
YがSiであり、XがAlであり、ゼオライト材料が脱アルミニウム化ゼオライトベータである、請求項18から23のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【請求項25】
触媒工程における触媒として請求項18から24のいずれか一項に記載のゼオライト材料を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Yが4価元素であり、Xが3価元素である、YO及びXを含む骨格構造を有するゼオライト材料を準備(製造)し、次いで、最大限でも5のpHを有する水溶液による少なくとも1回の処理とそれに続く5.5〜8の範囲のpH及び少なくとも75℃の温度を有する液体水性系(水性液システム、liquid aqueous system)による少なくとも1回の処理を含む方法にかける、ゼオライト材料の後処理の方法に関する。さらに、本発明は、少なくとも20:1のYO:Xモル比及び少なくとも70%の結晶化度を有するYO及びXを含む骨格構造を有するゼオライト材料に関する。さらに、本発明は、触媒としてのこのゼオライト材料及び本発明の方法により得られた又は得られるゼオライト材料を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、化学産業における、主として様々な化学及び石油化学工程における不均一触媒に多くの用途を有する。一般的に、ゼオライトは、微細孔構造を有する結晶性アルミノケイ酸塩である。ゼオライトの特殊な特性は、とりわけ、それらの形状及びそれらのサイズによって分子が出入りできる分子サイズの細孔系の形のそれらの多孔質構造に起因すると考えられる。いくつかの種類の用途の選択的な不均一触媒としての役割を果たし得る多くの公知のゼオライト骨格構造が存在する。骨格の種類及び化学的組成は、イオン交換容量、多孔度、接近容易性、酸性度及び親水性又は疎水性などのゼオライトの特性に関わる。
【0003】
それらの構造又はそれらの組成などのゼオライト材料の特性を改良するために、後処理方法がしばしば用いられる。一般的な後処理方法は、蒸気処理、酸処理又は塩基処理である。
【0004】
蒸気処理は、様々な選択的反応における水蒸気に対するゼオライトの活性及び安定性を増大させるためにしばしば用いられる。例えば、EP0013433A1は、Si/Al比を増加させることによりゼオライトの活性を増加させるための蒸気処理の使用方法を教示している。この蒸気処理は、Si/Al比に影響を及ぼすだけでなく、ゼオライトの酸性/塩基性及び親水性/疎水性にも影響を及ぼす。
【0005】
酸処理は、同様な効果を有し、ゼオライトの脱アルミニウム化ももたらす。そのような酸処理のために、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸などの有機酸又は塩酸、硝酸、硫酸若しくはリン酸などの鉱酸がしばしば用いられる。例えば、ゼオライト材料の疎水性を増大させるために酸処理が行われている、WO02/057181A2を参照のこと。
【0006】
蒸気処理及び酸処理の併用がWO2009/016153A2に記載されている。この文書によれば、ゼオライト骨格構造からAlを除去するために酸性溶液による浸出工程を実施する前に低いSi/Al比を有するリン修飾モレキュラーシーブを高温での蒸気処理にかける。
【0007】
蒸気処理及び酸処理の両方がゼオライト材料の特性にかなりの影響を及ぼす。それぞれ4価及び3価構造成分YO及びXの両方を含むゼオライト材料を蒸気及び/又は酸処理にかけることにより、YO:Xモル比が増加する。しかし、ゼオライト材料の結晶化度が蒸気処理及び/又は酸処理により低下すること、並びにゼオライト材料の疎水性が低下することが見いだされた。したがって、蒸気処理及び酸処理の両方がゼオライト材料の非晶質物質への部分的変換をもたらす。さらに、疎水性を変化させることにより、ゼオライト材料の最初に意図された使用方法がしばしばもはや可能でない。したがって、蒸気処理又は酸処理によって所望のYO:Xモル比を達成することができるが、得られるゼオライト材料は、とりわけ、商業的利用に関心を抱かせなくする重大な不都合を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP0013433A1
【特許文献2】WO02/057181A2
【特許文献3】WO2009/016153A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、前記の不都合を示さないゼオライト材料の後処理の方法を提供することが本発明の目的であった。
【0010】
さらに、高いYO:Xモル比及び同時に高い結晶化度を有する後処理済みゼオライト材料を提供することが本発明の目的であった。高いYO:Xモル比、高い結晶化度及び同時にシラノールネストなどの内部欠陥の濃度の低下を有する後処理済みゼオライト材料を提供することも本発明の目的であった。特に、酸処理によるなどのYO:Xモル比を増加させるためのゼオライト材料の処理は、例えば、3600cm−1〜3700cm−1の範囲に位置するゼオライト材料のIRスペクトルにおける吸収帯によって特徴づけられるシラノールネストの形成の増加をもたらすことが認められた。本発明の意味の範囲内で、「シラノールネスト」という用語は、好ましくは、Zecchinaら、J.Phys.Chem.1992、96、4991〜4997頁に記載されているように、例えば、シリカライトのIRスペクトルにおけるその特性吸収が3200〜3650cm−1の範囲に見いだされる水素結合性Si−OH基を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、YO及びXを含むゼオライト材料を最大限でも5のpHを有する水溶液による少なくとも1回の処理及び少なくとも75℃の高温での5.5〜8の範囲のpHを有する液体水性系による少なくとも1回の処理にかける工程を含む後処理方法によって前記不都合が回避されることが見いだされた。特に、前記後処理工程中にX元素がゼオライト材料から部分的に除去されるが、得られるゼオライト材料が結晶化度の増加と内部欠陥の濃度の低下さえも示すことがさらに驚くべきことに見いだされた。
【0012】
したがって、本発明は、ゼオライト材料の後処理の方法に関し、該方法は、
(i)ゼオライト材料の骨格構造がYO及びXを含み、Yが4価元素であり、Xが3価元素である、ゼオライト材料を準備する工程と、
(ii)(i)において準備したゼオライト材料を、
(a)最大限でも5のpHを有する水溶液により処理する工程と、
(b)(a)から得られたゼオライト材料を5.5〜8の範囲のpH及び少なくとも75℃の温度を有する液体水性系により処理する工程と
を含む方法にかける工程とを含み、
(ii)において(b)の後に、ゼオライト材料を(a)による少なくとも1回のさらなる処理及び/又は(b)による少なくとも1回のさらなる処理に場合によってかけ、(a)による水溶液のpH及び(b)による液体水性系のpHをpH感受性ガラス電極を用いて測定する。
【0013】
したがって、本発明の方法は、(a)による2回以上の処理及び/又は(b)による2回以上の処理を含み得る。該方法が(a)による2回以上の処理を含む場合、所定の処理(a)における条件は、別の処理(a)における条件と同じ又は異なり得る。方法が(b)による2回以上の処理を含む場合、所定の処理(b)における条件は、別の処理(b)における条件と同じ又は異なり得る。
【0014】
本発明によれば、工程(i)において準備するゼオライト材料の骨格構造に含まれるYO及びXは、骨格構造により形成された細孔及び空洞中に存在し得る、また概してゼオライト材料に一般的であり得る非骨格要素とは対照的に、骨格形成要素としてそれに含まれる。
【0015】
Y及びXの化学的性質に関する限りは、特定の制約は存在しない。特に、Yは、あらゆる考えられる4価元素又は2種以上の4価元素の混合物であり得、Xは、あらゆる考えられる3価元素又は2種以上の3価元素の混合物であり得る。本発明による好ましい4価元素は、Si、Sn、Ti、Zr及びGeを含むが、これらに限定されない。本発明による好ましい3価元素は、Al、B、In、Ga及びFeを含むが、これらに限定されない。好ましくは、Yは、Si、Sn、Ti、Zr、Ge及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択され、Yは、好ましくはSiであり、Xは、Al、B、In、Ga、Fe及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択され、Xは、好ましくはAlである。
【0016】
一般的に、本発明によれば、(i)において準備するゼオライト材料の骨格構造は、YO及びXを含む。好ましくは、(i)において準備するゼオライト材料の骨格構造の少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%は、YO及びXからなる。したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、(i)において準備するゼオライト材料の骨格構造の少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%は、SiO及びAlからなる。
【0017】
本発明によれば、(i)において準備するゼオライト材料の結晶化度は、いかなる特定の制約を受けない。結晶化度に関する限りは、本発明との関連で言及される値は、参照例2で述べる方法により測定されると理解すべきである。例として、(i)において準備するゼオライト材料の結晶化度は、60%〜90%又は70%〜80%などの50%〜100%の範囲にあり得る。
【0018】
本発明によれば、(i)において準備するゼオライト材料の水取込み量は、特定の制約を受けない。水取込み量に関する限りは、本発明との関連で言及する値は、参照例1で述べる方法により測定されると理解すべきである。例として、(i)において準備するゼオライト材料の水取込み量は、10質量%〜20質量%又は10質量%〜15質量%などの10質量%〜30質量%の範囲にあり得る。
【0019】
本発明によれば、(i)において準備するゼオライト材料のIRスペクトルは、3730cm−1〜3750cm−1の範囲に極大を有する第1の吸収帯及び3600cm−1〜3700cm−1の範囲に極大を有する第2の吸収帯を示し得、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比は、1より大きいことがあり得る。IRスペクトルに関する限りは、本発明との関連で言及する値は、参照例3で述べる方法により測定されると理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
工程(ii)
本発明によれば、(i)において準備したゼオライト材料を(a)最大限でも5のpHを有する水溶液により処理する工程と、(b)(a)から得られたゼオライト材料を5.5〜8の範囲のpHを有する液体水性系により処理する工程とを含み、該処理を少なくとも75℃の温度で行う、方法にかける。
【0021】
好ましくは、そのように得られたゼオライト材料を(a)による水溶液によるさらなる処理にかけ、(a)による第1及び第2の処理は、同じ又は異なる条件下で行うことができる。
【0022】
好ましくは、工程(a)で用いる液体水性系は、少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%、より好ましくは少なくとも99.9質量%の水、最も好ましくは脱イオン水を含む。
【0023】
一般的に、(b)から得られたゼオライト材料は、(a)による少なくとも1回のさらなる処理及び/又は(b)による少なくとも1回のさらなる処理にかけることができる。したがって、第1の工程(b)の後に、さらなる工程(a)及び/又はさらなる工程(b)を行うことができる。好ましくは、第1の工程(b)の後に、さらなる工程(a)を行うことができる。したがって、本発明はまた、上で規定した方法に関し、(ii)による方法は、
(a)ゼオライト材料を最大限でも5のpHを有する水溶液により処理する工程と、
(b)(a)から得られたゼオライト材料を5.5〜8の範囲のpH及び少なくとも75℃の温度を有する液体水性系により処理する工程と、
(a)(b)から得られたゼオライト材料を最大限でも5のpHを有する水溶液により処理する工程と
を含む。
【0024】
場合によって、第2の工程(a)の後に、ゼオライト材料を少なくとも1回のさらなる一連の(b)による処理とそれに続く(a)による処理にかける。或いは、第2の工程(a)の後に、該方法は、後の工程(a)を用いずに(b)による処理を後続させることができる。好ましくは、本発明の工程(a)及び(b)を交互の順序で行う。例として、本発明による好ましい一連の処理は、下記のものを含むが、それらに限定されない。
− (a)(b)(a)
− (a)(b)(a)(b)
− (a)(b)(a)(b)(a)
− (a)(b)(a)(b)(a)(b)
− (a)(b)(a)(b)(a)(b)(a)
− (a)(b)(a)(b)(a)(b)(a)(b)
− (a)(b)(a)(b)(a)(b)(a)(b)(a)
− (a)(b)(a)(b)(a)(b)(a)(b)(a)(b)
したがって、本発明はまた、上で規定した方法に関し、(ii)による方法は、
(a)ゼオライト材料を最大限でも5のpHを有する水溶液により処理する工程と、
(b)(a)から得られたゼオライト材料を5.5〜8の範囲のpH及び少なくとも75℃の温度を有する液体水性系により処理する工程と、
(a)(b)から得られたゼオライト材料を最大限でも5のpHを有する水溶液により処理する工程と
を含み、
最後の工程(a)から得られたゼオライト材料を少なくとも1回の一連の(b)によるさらなる処理とそれに続く(a)による処理に場合によってかける。
【0025】
一般的に、本発明による工程(a)及び(b)の回数に関する特定の制約は存在しない。一般的に、所定の工程(a)の後に、少なくとも1回のさらなる工程(a)を行うことが考えられる。さらに、所定の工程(a)の後に、少なくとも1回のさらなる工程(b)を行うことが考えられる。
【0026】
さらに、少なくとも1回の工程(a)及び/又は少なくとも1回の工程(b)の後に、ゼオライト材料を、5.5〜8の範囲のpH及び75℃未満、好ましくは高くても50℃、より好ましくは高くても40℃、より好ましくは15℃〜35℃の範囲の温度を有する液体水性系による処理にかけることが考えられる。好ましくは、そのような処理工程は、少なくとも1回の工程(a)の後に行う。
【0027】
少なくとも1回の工程(a)の後及び/又は少なくとも1回の工程(a)の後及び/又は5.5〜8の範囲のpH及び75℃未満、好ましくは高くても50℃、より好ましくは高くても40℃、より好ましくは15℃〜35℃の範囲の温度を有する液体水性系による処理の少なくとも1回の工程の後に、ゼオライト材料を乾燥若しくは焼成又は乾燥及び焼成にかけることができる。好ましくは、乾燥は、75℃〜200℃、好ましくは100℃〜180℃、より好ましくは120℃〜150℃の範囲の温度で、1時間〜100時間、好ましくは5時間〜80時間、より好ましくは10時間〜70時間、より好ましくは15時間〜25時間の範囲の期間にわたり行う。乾燥は、空気、リーン空気、窒素、アルゴン中など、好ましくは空気中などの適切な雰囲気下で行うことができる。好ましくは、焼成は、400℃〜750℃、好ましくは550℃〜700℃、より好ましくは600℃〜680℃の範囲の温度で、0.1〜20時間、好ましくは0.5時間〜15時間、1時間〜10時間、より好ましくは2時間〜5時間の範囲の期間にわたり行う。焼成は、空気、リーン空気、窒素、アルゴン中など、好ましくは空気中などの適切な雰囲気下で行うことができる。2回以上の乾燥工程を実施する場合、これらの工程は、同じ又は異なる条件で実施することができる。2回以上の焼成工程を実施する場合、これらの工程は、同じ又は異なる条件で実施することができる。
【0028】
本発明の1つの実施形態によれば、焼成は、少なくとも1回の工程(a)の後に行い、少なくとも1回の工程(b)の後に行わない。この実施形態によれば、例えば、すべての工程(a)の後に焼成を行うのに対して、いずれの工程(b)の後にも焼成を行わないことが考えられる。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、焼成は、少なくとも1回の工程(a)の後にも少なくとも1回の工程(b)の後にも行わない。この実施形態によれば、例えば、いずれの工程(a)の後にも且ついずれの工程(b)の後にも焼成を行わないことが考えられる。
【0030】
(a)による処理
(a)によれば、ゼオライト材料を最大限でも5のpHを有する水溶液により処理する。好ましくは、(a)において用いる水溶液は、0〜5、より好ましくは0〜4、より好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2の範囲のpHを有する。
【0031】
(a)において用いる水溶液のpHは、水に溶解する適切な量の少なくとも1種の酸により調整する。一般的に、少なくとも1種の酸に加えて、水溶液は、少なくとも1種の塩基を含むことが考えられる。ただし、水溶液は、上で規定したpHを有する。好ましくは、(a)において用いる水溶液は、水及び水に溶解した少なくとも1種の酸からなる。
【0032】
本発明によれば、(a)において用いる水溶液は、少なくとも1種の有機酸又は少なくとも1種の無機酸又は少なくとも1種の有機酸と少なくとも1種の無機酸との混合物を含む。原則として、いかなる考えられる酸を(a)において用いる水溶液に含めることができる。好ましくは、有機酸は、シュウ酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。好ましくは、無機酸は、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1種の無機酸を用いる。好ましくは、無機酸は、硝酸である。
【0033】
一般的に、(a)において用いる水溶液に含まれる有機酸及び無機酸の濃度に関しては特定の制約は存在しない。ただし、(a)において用いる水溶液のpHは、上で規定した通りである。
【0034】
好ましくは、ゼオライト材料を、(a)において20℃〜100℃、より好ましくは25℃〜95℃、より好ましくは30℃〜90℃、より好ましくは35℃〜85℃、より好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは45℃〜75℃、より好ましくは50℃〜70℃、より好ましくは55℃〜65℃の範囲の温度で水溶液により処理する。(a)の実施中、ゼオライト材料を2種以上の温度で処理することができる。
【0035】
好ましくは、ゼオライト材料を、(a)において10分〜12時間、より好ましくは0.5時間〜6時間、より好ましくは1時間〜2時間の範囲の期間にわたり水溶液により処理する。
【0036】
一般的に、(a)による処理は、任意の適切な方法により行うことができる。好ましくは、ゼオライト材料を水溶液に懸濁する。(a)の実施中、ゼオライト材料を含む水溶液を撹拌することがさらに好ましい。撹拌速度は、(a)の実施中本質的に一定に維持又は変化させることができる。最も好ましくは、ゼオライト材料を第1の撹拌速度で水溶液に懸濁し、ゼオライト材料を完全に懸濁した後に、その撹拌速度を変化させる、好ましくは増加させる。撹拌速度は、例えば、水溶液の体積、用いるゼオライト材料の量、所望の温度などによって適切に選択することができる。好ましくは、上述の温度で処理を行っているもとでの撹拌速度は、好ましくは容器のサイズによって5r.p.m.〜300r.p.m.(1分当たりの回転数)の範囲にある。
【0037】
好ましくは、(a)による処理中のゼオライト材料に対する水溶液の質量比は、2:1〜10:1、より好ましくは2:1〜5:1の範囲にあり、より好ましくは(a)による処理中のゼオライト材料に対する水溶液の質量比は、3:1である。
【0038】
(a)による水溶液によるゼオライト材料の処理の後に、ゼオライト材料を好ましくは懸濁液から適切に分離する。懸濁液からゼオライト材料を分離するすべての方法が想定できる。これらの方法は、例えば、ろ過、限外ろ過、透析ろ過及び遠心分離法を含む。特に、工程(a)が本発明の方法の最終工程である場合、噴霧乾燥法又は噴霧造粒によりゼオライト材料を分離することが考えられる。これらの方法の2つ以上の組合せを適用することができる。本発明によれば、ゼオライト材料は、好ましくはろ過法により懸濁液から分離する。上述のように、工程(a)の後に、好ましくは分離されたゼオライト材料を75℃未満の温度での洗浄工程及び/又は乾燥及び/又は焼成にかけることができる。洗浄剤は、水、メタノール、エタノール若しくはプロパノールなどのアルコール又はそれらの2種以上の混合物を含むが、これらに限定されない。混合物の例は、メタノールとエタノール若しくはメタノールとプロパノール若しくはエタノールとプロパノール若しくはメタノールとエタノールとプロパノールなどの2種以上のアルコールの混合物、又は水とメタノール若しくは水とエタノール若しくは水とプロパノール若しくは水とメタノールとエタノール若しくは水とメタノールとプロパノール若しくは水とエタノールとプロパノール若しくは水とメタノールとエタノールとプロパノールなどの水と少なくとも1種のアルコールとの混合物である。水又は水と少なくとも1種のアルコール、好ましくは水とエタノールとの混合物が好ましい。単独の洗浄剤としての水がとりわけ好ましい。洗浄剤、好ましくは洗浄水が最大限でも400マイクロジーメンス/cm、好ましくは最大限でも300マイクロジーメンス/cm、より好ましくは最大限でも200マイクロジーメンス/cmの伝導率を有するまで、洗浄工程を継続することが好ましい。
【0039】
(b)による処理
(a)による水溶液によるゼオライト材料の第1の処理の後、場合によって洗浄し、及び/又は乾燥し、及び/又は焼成したゼオライト材料を、ゼオライト材料を5.5〜8の範囲のpH及び少なくとも75℃の温度を有する液体水性系により処理する、(b)による処理にかける。
【0040】
もし水性系が少なくとも部分的に、好ましくは完全にその液体状態にあるならば、(b)において用いる反応条件は、特に制限されない。特に、下記の好ましい温度に関しては、当業者は、溶剤系をその液体状態に保つために、処理が行われているもとでのそれぞれの圧力を選択する。
【0041】
好ましくは、ゼオライト材料は、(b)において80℃〜180℃、より好ましくは80℃〜150℃、より好ましくは80℃〜120℃、より好ましくは80℃〜100℃、より好ましくは85℃〜95℃の範囲の温度で液体水性系により処理する。
【0042】
好ましくは、ゼオライト材料は、(b)において0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜18時間、より好ましくは6時間〜10時間の範囲の期間にわたり液体水性系により処理する。
【0043】
一般的に、(b)による処理は、任意の適切な方法により行うことができる。好ましくは、ゼオライト材料を液体水性系に懸濁する。(b)の実施中、ゼオライト材料を含む液体水性系を撹拌することがさらに好ましい。撹拌速度は、(b)の実施中本質的に一定に維持又は変化させることができる。最も好ましくは、ゼオライト材料を第1の撹拌速度で液体水性系に懸濁し、ゼオライト材料を完全に懸濁した後に、その撹拌速度を変化させる、好ましくは増加させる。撹拌速度は、例えば、液体水性系の体積、用いるゼオライト材料の量、所望の温度などによって適切に選択することができる。好ましくは、上述の温度で処理を行っているもとでの撹拌速度は、好ましくは容器のサイズによって5r.p.m.〜300r.p.m.(1分当たりの回転数)の範囲にある。
【0044】
好ましくは、(b)による処理中のゼオライト材料に対する液体水性系の質量比は、20:1〜2:1、より好ましくは15:1〜3:1、より好ましくは14:1〜4:1、より好ましくは13:1〜6:1、より好ましくは12:1〜8:1の範囲にある。
【0045】
好ましくは、(b)において用いる液体水性系の50質量%超が水からなる。水に加えて、液体水性系は、アルコール、好ましくは、1、2、3、4若しくは5個の炭素原子、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノールなどの1、2若しくは3個の炭素原子を有する短鎖アルコール、及び/又は酸、及び/又は塩基、及び/又はそれらの2種以上の混合物など、少なくとも1つの適切な成分を含み得る。ただし、液体水性系のpHは、上で規定した範囲にある。好ましくは、(b)において用いる液体水性系の少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%、より好ましくは少なくとも99.9質量%は、水からなる。
【0046】
本発明の処理(ii)による方法により、YO:Xのモル比の増加を有するゼオライト材料を得ることができたことが見いだされた。さらに、得られたゼオライト材料が水取込み量により判断された疎水性の維持又はわずかな低下を示すことが見いだされた。驚くべきことに、前記の得られたゼオライト材料は、例えば、(a)に規定されるような酸処理によるが、本発明の(b)に規定されるような追加の処理を用いない、ゼオライト材料骨格構造からのXの除去のための従来の浸出法によってのみ得られたゼオライト材料と比較した場合、XRD測定により決定された結晶化度の増加を有する。より驚くべきことに、このように得られた前記ゼオライト材料が、第1の吸収帯が3730〜3750cm−1の範囲にその極大を有し、前記第1の吸収帯が表面シラノール基に帰せられ、第2の吸収帯が3600〜3700cm−1の範囲にその極大を有し、前記第2の吸収帯がシラノールネストに帰せられ、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比が処理(ii)による方法の後に1未満に有意に低下している、ゼオライト材料のIRスペクトルにより明らかなように、低下した濃度の内部欠陥を含むことが見いだされた。再び、本発明の意味の範囲内で、「表面シラノール」又は「表面シラノール基」という用語は、Zecchinaら、J.Phys.Chem.1992、96、4991〜4997頁に記載されているように、水素結合性でなく、例えば、シリカライトのIRスペクトルにおけるその特性吸収が3650〜3800cm−1の範囲に見いだされるSi−OH基を好ましくは意味する。より詳細には、ゼオライト材料の所定のIRスペクトルの評価により得られる第1の吸収帯に対する第2の吸収帯の強度比は、所定のゼオライト材料におけるシラノールネストの相対濃度に関する、及び特にゼオライト材料の処理による、例えば、その酸処理の結果としてのシラノールネスト濃度の変化に関する信頼できる指標となる。より詳細には、第の吸収帯に対する第の吸収帯の強度比の低下は、ゼオライト材料におけるシラノールネストの相対濃度の低下を示すのに対して、その増加は、したがってシラノールネストの相対濃度の増加を反映する。
【0047】
(b)による水溶液によるゼオライト材料の処理の後、ゼオライト材料を好ましくは懸濁液から適切に分離する。ゼオライト材料を懸濁液から分離するすべての方法が想定できる。これらの方法は、例えば、ろ過、限外ろ過、透析ろ過及び遠心分離法を含む。特に、工程(b)が本発明の方法の最終工程である場合、噴霧乾燥法又は噴霧造粒によりゼオライト材料を分離することが考えられる。これらの方法の2つ以上の組合せを適用することができる。本発明によれば、ゼオライト材料を好ましくはろ過方法により懸濁液から分離する。上述したように、工程(b)の後に、好ましくは分離済みゼオライト材料を75℃未満の温度での洗浄工程及び/又は乾燥及び/又は焼成にかけることができる。洗浄剤は、水、メタノール、エタノール若しくはプロパノールなどのアルコール又はそれらの2種以上の混合物を含むが、これらに限定されない。混合物の例は、メタノールとエタノール若しくはメタノールとプロパノール若しくはエタノールとプロパノール若しくはメタノールとエタノールとプロパノールなどの2種以上のアルコールの混合物、又は水とメタノール若しくは水とエタノール若しくは水とプロパノール若しくは水とメタノールとエタノール若しくは水とメタノールとプロパノール若しくは水とエタノールとプロパノール若しくは水とメタノールとエタノールとプロパノールなどの水と少なくとも1種のアルコールとの混合物である。水又は水と少なくとも1種のアルコール、好ましくは水とエタノールとの混合物が好ましい。単独の洗浄剤としての水がとりわけ好ましい。洗浄剤、好ましくは洗浄水が最大限でも400マイクロジーメンス/cm、好ましくは最大限でも300マイクロジーメンス/cm、より好ましくは最大限でも200マイクロジーメンス/cmの伝導率を有するまで、洗浄工程を継続することが好ましい。
【0048】
イオン交換
本発明の実施形態によれば、ゼオライト材料を(ii)において1回又は複数回のイオン交換処置に場合によってかける。一般的に、任意の考えられるイオン交換処置を行うことができる。好ましくは、交換すべきイオンが(a)による少なくとも1つの水溶液に及び/又は(b)による少なくとも1つの液体水性系に、好ましくは(a)による少なくとも1つの水溶液に含まれる。この場合、水溶液又は液体水性系、好ましくは水溶液は、少なくとも1種の有機酸及び/又は少なくとも1種の無機酸の少なくとも1種の塩を含む。好ましくは、交換すべきイオンであるこの塩の陽イオンは、H、NH、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、遷移金属及びそれらの組合せからなる群から、より好ましくはH、NH、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ランタン、セリウム、ニッケル、白金、パラジウム、鉄、銅及びそれらの組合せからなる群から選択され、さらにより好ましくは1つ又は複数の陽イオン要素は、H及び/又はNH、好ましくはNHを含む。この場合、(i)において準備するゼオライト材料がそのナトリウム形で準備することがさらにより好ましい。
【0049】
したがって、本発明の特定の好ましい実施形態によれば、(a)による水溶液及び/又は(b)による液体水性系、好ましくは(a)による水溶液は、少なくとも1種の有機酸の少なくとも1種の塩及び/又は少なくとも1種の無機酸の少なくとも1種の塩、好ましくは少なくとも1種の無機酸の少なくとも1種の塩を含み、少なくとも1種の塩は、好ましくはアンモニウム塩である。
【0050】
工程(i)
一般的に、工程(i)で準備するゼオライト材料がどのようにして準備されるかについての特定の制約は存在せず、ただし、骨格構造は、YO及びXを含み、Yは4価元素であり、Xは3価元素である。好ましくは、ゼオライト材料は、商業的供給元から購入するか、又は適切な合成方法により製造する。合成方法のうちで、水熱法を例として挙げることができ、前記方法は、有機鋳型(有機テンプレート剤)などの構造指向剤の存在下若しくは非存在下及び/又は種結晶の存在下若しくは非存在下で実施することができる。好ましくは、(i)において準備するゼオライト材料は、ゼオライト粉末の形又は噴霧粉末若しくは噴霧細粒の形、好ましくはゼオライト粉末の形である。
【0051】
好ましくは、また特に、骨格構造BEAを有するゼオライト材料について、(i)において準備するゼオライト材料は、
(1)種結晶並びにYOの少なくとも1つの源(原料、YO源)及びXの少なくとも1つの源(原料、X源)を含む混合物を調製する工程と、
(2)(1)において調製した混合物からゼオライト材料を結晶化する工程と
を含む、有機鋳型を用いない合成方法により得られ、
(1)において用いる種結晶は(i)において準備すべきゼオライト材料の骨格構造を有するゼオライト材料を含む。
【0052】
工程(i)におけるゼオライト材料を準備するための前記好ましい合成によれば、いずれの時点においても(1)で準備され、(2)で結晶化された混合物は、ゼオライト材料の合成に特に用いられる有機構造指向剤の不純物、特にテトラエチルアンモニウム及び/又はジベンジルメチルアンモニウム塩、及びジベンジル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの特定のテトラアシルアンモニウム塩及び/又は関連有機鋳型のみを含む。そのような不純物は、例えば、好ましい合成に用いられる種結晶に依然として存在する有機構造指向剤によってもたらされ得る。しかし、種結晶材料に含まれた有機鋳型は、種結晶骨格内に捕捉されており、したがって、本発明の意味の範囲内で構造指向剤として作用し得ないので、結晶化過程に関与しない可能性がある。
【0053】
本発明によれば、(1)により得られたゼオライト材料は、(2)において結晶化させる。この目的のために、YOを含む骨格構造を有するゼオライト材料を(2)において結晶化させることができるならば、YOをあらゆる考えられる形で(1)において準備することができる。好ましくは、YOを、それ自体として及び/又は化学的構成成分としてYOを含む化合物として及び/又は発明による方法においてYOに(部分的に又は完全に)化学的に変換される化合物として準備する。YがSi又はSiと1つ若しくは複数のさらなる4価元素との組合せを表す、本発明の好ましい実施形態において、工程(1)で準備するSiOの源は、あらゆる考えられる源であり得る。したがって、例えば、すべての種類のシリカ及びケイ酸塩、好ましくはフュームドシリカ、シリカヒドロゾル、反応性非晶質固体シリカ、シリカゲル、ケイ酸、水ガラス、メタケイ酸ナトリウム水和物、セスキケイ酸塩又は二ケイ酸塩、コロイドシリカ、焼成シリカ、ケイ酸エステル、若しくはテトラアルコキシシラン、又はこれらの化合物の少なくとも2つの混合物を用いることができる。
【0054】
(1)による混合物がSiOの1つ又は複数の源を含む、好ましい合成方法の好ましい実施形態によれば、前記源は、好ましくは、シリカ及びケイ酸塩、好ましくはアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される1つ又は複数の化合物を含む。好ましいアルカリ金属ケイ酸塩のうちで、1つ又は複数の源は、好ましくは水ガラス、より好ましくはケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウム、より好ましくはケイ酸ナトリウムを含む。本発明の特に好ましい実施形態において、SiOの源は、ケイ酸ナトリウムである。さらに、シリカを含むさらなる好ましい実施形態において、ナトリウム水ガラスが特に好ましい。
【0055】
ゼオライト材料がXを含む、本発明の好ましい実施形態によれば、Xの1つ又は複数の源を、好ましい合成方法の工程(1)において準備する。一般的に、Xを含む骨格構造を有するゼオライト材料を工程(2)において結晶化させることができるならば、Xをあらゆる考えられる形で準備することができる。好ましくは、Xは、それ自体として及び/又は化学的構成成分としてXを含む化合物として及び/又は発明による方法においてXに部分的に若しくは完全に化学的に変換される化合物として準備する。
【0056】
XがAl又はAlと1つ若しくは複数のさらなる3価元素との組合せである、好ましい合成方法の好ましい実施形態によれば、(1)において準備するAlの源は、あらゆる考えられる源であり得る。例えば、あらゆる種類のアルミナ及びアルミネート、例えば、アルカリ金属アルミン酸塩などのアルミニウム塩、例えば、アルミニウムトリイソプロピレートなどのアルミニウムアルコレート、若しくは例えば、アルミナ三水和物などの水和アルミナ、又はそれらの混合物を用いることができる。好ましくは、Alの源は、アルミナ及びアルミネートからなる群から選択される1つ又は複数の化合物、好ましくはアルミネート、より好ましくはアルカリ金属アルミン酸塩を含む。好ましいアルカリ金属アルミン酸塩のうちで、1つ又は複数の源は、好ましくはアルミン酸ナトリウム及び/又はアルミン酸カリウム、より好ましくはアルミン酸ナトリウムを含む。好ましい合成方法の特に好ましい実施形態において、Alの源は、アルミン酸ナトリウムである。
【0057】
好ましい合成方法のさらなる好ましい実施形態によれば、種結晶を(1)において準備し、前記種結晶は、(i)において準備すべきゼオライト材料の骨格構造を有するゼオライト材料を含む。一般的に、ゼオライト材料が(2)において結晶化するならば、前記種結晶は、ゼオライト材料を含み得る。好ましくは、種結晶に含まれるゼオライト材料は、本発明の好ましい実施形態により得られる、好ましくは得られたゼオライト材料である。より好ましくは、種結晶に含まれるゼオライト材料は、(2)においてその後結晶化するゼオライト材料と同じである。
【0058】
本発明によれば、ゼオライト材料が(2)において結晶化するならば、任意の適切な量の種結晶を(1)による混合物に加えることができる。一般的に、(1)による混合物に含まれる種結晶の量は、YOの1つ又は複数の源中のYOの100質量%に対して0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜35質量%、より好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜10質量%、より好ましくは2〜5質量%、さらにより好ましくは2.5〜3.5質量%の範囲にある。
【0059】
好ましい合成方法による(1)において、混合物は、あらゆる考えられる手段により調製することができ、撹拌による、好ましくはかき混ぜによる混合が好ましい。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、(1)による混合物は、溶剤をさらに含む。ゼオライト材料を好ましい合成方法の(2)において結晶化させることができるならば、あらゆる考えられる溶剤をあらゆる考えられる量で用いることができる。好ましくは、溶剤は、水を含み、混合物のHO:YOモル比は、1:1〜100:1、好ましくは5:1〜70:1、より好ましくは10:1〜50:1、より好ましくは12:1〜35:1、より好ましくは15:1〜25:1、より好ましくは16:1〜20:1、特に好ましくは17:1〜18:1の範囲にある。特に好ましい実施形態において、(1)において準備する溶剤は、蒸留水である。
【0061】
一般的に、ゼオライト材料が本発明の(2)において混合物から結晶化するならば、本発明の(1)の混合物を準備するための単一成分は、任意の順序で加えることができる。これは、例えば、場合による溶剤及びXの1つ又は複数の源の添加とその後のYOの1つ又は複数の源の添加を含んでいてもよく、種結晶のみをその後に混合物に加える。或いは、場合による溶剤及びXの1つ又は複数の源の添加が最初で、その後に種結晶の添加を行ってもよく、YOの1つ又は複数の源のみをその後に加える。
【0062】
一般的に、ゼオライト材料が工程(1)による混合物から結晶化するならば、本発明の好ましい実施形態による(2)は、あらゆる考えられる方法で実施することができる。混合物は、あらゆる種類の容器中で結晶化させることができ、撹拌の手段を場合によって用い、前記撹拌は、好ましくは容器の回転及び/又はかき混ぜにより、より好ましくは混合物をかき混ぜることにより達成される。
【0063】
好ましい合成方法によれば、混合物は、好ましくは(2)における結晶化工程の少なくとも一部中において加熱する。一般的に、ゼオライト材料が混合物から結晶化するならば、混合物を結晶化のあらゆる考えられる温度に加熱することができる。好ましくは、混合物を80〜200℃、より好ましくは90〜180℃、より好ましくは95〜170℃、より好ましくは100〜160℃、より好ましくは110〜150℃、さらにより好ましくは115〜145℃の範囲の結晶化の温度に加熱する。
【0064】
本発明の好ましい実施形態の(2)における好ましい加熱は、ゼオライト材料の結晶化に適するあらゆる考えられる方法で行うことができる。一般的に、加熱は、結晶化の1つの温度で行うことができ、又は異なる温度間で異なる。好ましくは、結晶化の温度に到達させるために昇温勾配を用い、例として、加熱速度は、10℃/時〜150℃/時、より好ましくは15℃/時〜70℃/時、より好ましくは20℃/時〜50℃/時、より好ましくは25℃/時〜40℃/時、さらにより好ましくは30℃/時〜35℃/時の範囲にあり得る。
【0065】
溶剤が工程(1)による混合物中に存在する、本発明による方法の好ましい実施形態において、工程(2)における加熱を、例えば、オートクレーブ又はソルボサーマル条件を得るのに適する他の結晶化容器中で加熱を行うことによって用いる溶剤の自己生成圧力下で混合物を結晶化させることを意味する、ソルボサーマル条件下で行うことがさらに好ましい。溶剤が水、好ましくは蒸留水を含む又はそれからなる、特に好ましい実施形態において、工程(2)における加熱は、したがって、好ましくは水熱条件下で行う。
【0066】
結晶化工程の所望のパラメーターを、特に特定の結晶化条件を必要とする好ましい実施形態に関して実現することができるならば、結晶化のために本発明において用いることができる装置は、特に制限されない。ソルボサーマル条件下で実施される好ましい実施形態において、あらゆる種類のオートクレーブ又は消化容器を用いることができる。
【0067】
結晶化生成物の単離は、あらゆる考えられる手段により達成することができる。好ましくは、結晶化生成物の単離は、ろ過、限外ろ過、透析ろ過、遠心分離及び/又は傾斜法により達成することができ、ろ過法は、吸引及び/又は加圧ろ過工程を含み得る。その後、得られたゼオライト材料を75℃未満、好ましくは20〜35℃の範囲の温度での少なくとも1回の洗浄処置にかける。
【0068】
1回又は複数回の場合による洗浄処置に関して、あらゆる考えられる溶剤を用いることができる。用いることができる洗浄剤は、例えば水、メタノール、エタノール若しくはプロパノールなどのアルコール又はそれらの2種以上の混合物である。混合物の例は、メタノールとエタノール若しくはメタノールとプロパノール若しくはエタノールとプロパノール若しくはメタノールとエタノールとプロパノールなどの2種以上のアルコールの混合物、又は水とメタノール若しくは水とエタノール若しくは水とプロパノール若しくは水とメタノールとエタノール若しくは水とメタノールとプロパノール若しくは水とエタノールとプロパノール若しくは水とメタノールとエタノールとプロパノールなどの水と少なくとも1種のアルコールとの混合物である。水又は水と少なくとも1種のアルコール、好ましくは水とエタノールとの混合物が好ましく、蒸留水が単独の洗浄剤として極めてとりわけ好ましい。
【0069】
好ましくは、洗浄剤、好ましくは洗浄水が最大限でも400マイクロジーメンス/cm、好ましくは最大限でも300マイクロジーメンス/cm、より好ましくは最大限でも200マイクロジーメンス/cmの伝導率を有するまで、分離済みゼオライト材料を洗浄する。
【0070】
一般的に、本発明の方法は、(i)において準備したゼオライト材料の後処理及び/又はさらなる物理的及び/又は化学的変換のためのさらなる工程を場合によって含み得る。準備したゼオライト材料は、例えば、一連の単離及び/又は洗浄処置にかけることができ、(i)において準備したゼオライト材料を好ましくは少なくとも1回の単離及び少なくとも1回の洗浄処置にかける。
【0071】
本発明の好ましい実施形態によれば、分離され、洗浄されたゼオライト材料を1回又は複数回の乾燥工程に場合によってかける。一般的に、乾燥のあらゆる考えられる手段を用いることができる。乾燥処置は、好ましくはゼオライト材料の加熱及び/又は真空引きを含む。本発明の想定される実施形態において、1回又は複数回の乾燥工程は、ゼオライト材料の噴霧乾燥、好ましくは噴霧造粒を含み得る。場合によって、(i)から得られた噴霧乾燥済みゼオライト材料を、(ii)による処理にかける前に、焼成にかける。
【0072】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、ゼオライト材料は、水蒸気処理にかけない、好ましくは(i)においても(ii)においても(ii)の後にも、水蒸気処理にかけない。
【0073】
好ましいゼオライト材料
(i)において準備するゼオライト材料の骨格構造は、特に制限されない。
【0074】
一般的に、ゼオライト材料は次の3文字コードによる骨格構造形を有し得る:ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、 ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MMFI、MFS、MON、MOR、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NEES、NON、NPO、OBW、OFF、OSI、OSO、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SOD、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG及びZON。3文字コード及びそれらの定義に関しては、「Atlas of Zeolite Framework Types」、第5版、Elsevier、London、England(2001)を参照のこと。
【0075】
本発明の好ましい実施形態によれば、(i)において準備するゼオライト材料は、LEV、CHA、MFI、MWW、BEA骨格構造を有し、骨格構造は、好ましくはBEAであり、ゼオライト材料は、より好ましくはゼオライトベータである。
【0076】
好ましくは、本発明によれば、(ii)による方法は、ゼオライト材料の骨格構造からXの少なくとも一部を除去するための処置である。(i)により準備するゼオライト材料の組成によって、YO:Xモル比は、本発明の方法により少なくとも20%、好ましくは、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%などの少なくとも25%増加する。驚くべきことに、YO:Xモル比が増加するが、本発明による一連の工程(a)及び(b)によって、結晶化度の損失を示さないゼオライト材料を得ることができることが見いだされた。それと反対に、YO:Xモル比を増加させ、同時に結晶化度を増加させることが可能であることが見いだされた。
【0077】
特に、60%〜90%又は70%〜80%などの50%〜100%の範囲の結晶化度を有する(i)において準備するゼオライト材料については、YO:Xモル比を増加させ、同時に結晶化度を増加させることが可能であることが見いだされ、前記増加した結晶化度が70%〜105%、好ましくは75%〜100%の範囲にある。
【0078】
したがって、本発明は、(a)による少なくとも1回の処理とそれに続く(b)による処理の後に、ゼオライト材料が好ましくは少なくとも12:1の合成後に増加したYO:Xモル比を有し、より好ましくは増加したモル比が12:1〜60:1の範囲にある、Yが4価元素であり、Xが3価元素である、YO及びXを含む骨格構造を有するゼオライト材料に関する。(a)による少なくとも1回のさらなる処理を実施する場合、ゼオライト材料は、好ましくは少なくとも20:1の合成後に増加したYO:Xモル比、より好ましくは20:1〜60:1の範囲にある増加モル比を有する。好ましくは、(a)による1回の処理とそれに続く(b)による処理の後に、ゼオライト材料は、12:1〜60:1の範囲にあるYO:Xモル比を有する。(a)による少なくとも1回のさらなる処理を適用する場合、ゼオライト材料は、好ましくは20:1〜60:1、より好ましくは20:1〜40:1の範囲のYO:Xモル比を有する。
【0079】
したがって、本発明はまた、好ましくは少なくとも12:1の合成後に増加したYO:Xモル比及び少なくとも70%の結晶化度を有する、Yが4価元素であり、Xが3価元素である、YO及びXを含む骨格構造を有するゼオライト材料に関する。より好ましくは、YO:Xモル比は、12:1〜60:1、好ましくは20:1〜60:1、より好ましくは20:1〜40:1の範囲にあり、結晶化度は。70%〜105%、好ましくは75%〜100%の範囲にある。
【0080】
さらに、本発明の方法が、(i)で準備したゼオライト材料の疎水性を本質的に一定に維持させる又はそれを増加さえさせることが驚くべきことに見いだされた。本出願のこの文脈において用いる「疎水性」という用語は、ゼオライト材料の水取込み量によって特徴づけられる。一般的に、水取込み量が低いほど、ゼオライト材料の疎水性が高い。
【0081】
したがって、本発明はまた、上で定義したゼオライト材料に関し、ゼオライト材料の水取込み量は、最大限でも20質量%であり、好ましくは5質量%〜20質量%の範囲、より好ましくは10質量%〜20質量%の範囲、より好ましくは12質量%〜20質量%の範囲、より好ましくは12質量%〜18質量%の範囲にある。
【0082】
さらに、本発明の方法が、ゼオライト材料のシラノール基の特性に対して正の影響を有することが見いだされた。特に、本発明のゼオライト材料の赤外スペクトルにおいて、第1の種類のシラノール基は、3730cm−1〜3750cm−1の領域に極大を有する第1の吸収帯により表され、前記第1の吸収帯は、シラノールネストに帰すことができ、第2の種類のシラノール基は、3600cm−1〜3700cm−1の領域に極大を有する第2の吸収帯により表され、前記第2の吸収帯は、表面シラノール基に帰すことができる。上記のように、第1のIR吸収帯と第2のIR吸収帯との強度比に関して、前記比の低下は、本発明の方法の工程(ii)(b)における液体水性系システムによる処理によってもたらされる、ゼオライト材料における内部欠陥(すなわち、シラノールネスト)の相対濃度の低下を示す。より詳細には、酸処理によるYO:Xモル比を増加させるためのゼオライト材料の処理により、第1の吸収帯の強度の増加によって特徴づけられるシラノールネストの形成の増加がもたらされるのに対して、第2の吸収帯の強度により反映される表面シラノール基の濃度は、YO:Xモル比を増加させるための処理により比較的に一定のままであることを観測することができる。結果として、ゼオライト材料の所定のIRスペクトルの評価から得られる第1の吸収帯と第2の吸収帯との強度比は、所定のゼオライト材料におけるシラノールネストの濃度に関する、また特にゼオライト材料の酸処理によるシラノールネストの濃度の変化に関する信頼できる指標となる。したがって、上記のように、第1の吸収帯と第2の吸収帯との強度比の低下がゼオライト材料におけるシラノールネスト濃度の低下を示すのに対して、その増加は、したがってシラノールネスト濃度の増加を反映する。
【0083】
したがって、工程(ii)(b)の処理の前及び後のゼオライト材料のIRスペクトルにおける上記の帯の強度比の漸進的増加を観測することにより本発明の方法の驚くべき技術的効果を観測することができるのに対して、前記工程において観測することができる前記比の低下は、酸処理によりゼオライト骨格からXを除去するための工程(ii)(a)における処理の結果としてのゼオライト構造の分解の後の本発明の方法によってもたらされる驚くべき再生効果を示すものである。
【0084】
第1の種類のシラノール基を表す第1のピークのピーク高さに対する第2の種類のシラノール基を表す第2のピークのピーク高さの比が、好ましくは最大限でも1であり、より好ましくは最大限でも0.9、最大限でも0.8、最大限でも0.7、最大限でも0.6又は最大限でも0.5などの1より小さいことが見いだされた。好ましくは、この比は、0.1〜1、好ましくは0.1〜0.9又は0.2〜0.8又は0.3〜0.7などの0.1から1未満の範囲にある。
【0085】
上で規定したように、Y及びXの化学的性質に関する限りは特定の制約は存在しない。特に、Yは、あらゆる考えられる4価元素又は2種以上の4価元素の混合物であり得、Xは、あらゆる考えられる3価元素又は2種以上の3価元素混合物であり得る。本発明による好ましい4価元素は、Si、Sn、Ti、Zr及びGeを含むが、これらに限定されない。本発明による好ましい3価元素は、Al、B、In、Ga及びFeを含むが、これらに限定されない。好ましくは、Yは、Si、Sn、Ti、Zr、Ge及びそれらの2種以上の組合せからなる群から選択され、Yは、好ましくはSiであり、Xは、Al、B、In、Ga、Fe及びそれらの2種以上の組合せからなる群から選択され、Xは、好ましくはAlである。
【0086】
したがって、本発明はまた、上で定義したゼオライト材料に関し、Yは、Si、Sn、Ti、Zr、Ge及びそれらの2種以上の組合せからなる群から選択され、Yは、好ましくはSiであり、Xは、Al、B、In、Ga、Fe及びそれらの2種以上の組合せからなる群から選択され、Xは、好ましくはAlであり、ゼオライト材料の骨格構造の好ましくは少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%は、YO及びX、好ましくはSiO及びAlからなる。
【0087】
好ましくは、ゼオライト材料は、LEV、CHA、MFI、MWW、BEA骨格構造を有し、骨格構造は、好ましくはBEAであり、ゼオライト材料は、より好ましくはゼオライトベータである。これらのゼオライト骨格構造及びそれらの定義に関しては、「Atlas of Zeolite Framework Types」、第5版、Elsevier 、London、England(2001)に記載されている3文字コードを参照のこと。特に、本発明は、YがSiであり、XがAlであり、ゼオライト材料が脱アルミニウム化ゼオライトベータである、上で定義したゼオライト材料に関する。
【0088】
本発明はさらに、本発明による方法により得られる又は得られたゼオライト材料に関する。
【0089】
好ましい用途
本発明によるゼオライト材料及び/又は本発明による方法により得られる若しくは得られたゼオライト材料は、一般的に触媒活性物質、触媒担体、モレキュラーシーブ、吸着剤、充填剤等などのあらゆる考えられる目的のために用いることができる。
【0090】
一般的に、また特に、本発明のゼオライト材料を触媒として用いる場合、例えば、ゼオライト材料を少なくとも1つの結合剤及び/又は少なくとも1つの結合剤前駆体、並びに場合による少なくとも1つの細孔形成剤及び/又は少なくとも1つの可塑剤と適切に混合することにより、ゼオライト材料を含む成形品を調製することが可能である。成形品は、例えば、四角形、三角形、六角形、正方形、楕円形又は円形断面を有するひも状物、星状物、錠剤、球体、中空円柱などのあらゆる考えられる形状に成形することができる。そのような結合剤の例は、例えば、SiO、Al、TiO、ZrO若しくはMgO若しくは粘土などの金属酸化物又はこれらの酸化物の2つ以上の混合物又はSi、Al、Ti、Zr及びMgの少なくとも2つの混合酸化物である。メソ細孔形成剤などの細孔形成剤は、ポリエチレンオキシドのようなポリアルキレンオキシド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリアミド及びポリエステルなどの重合ビニル化合物を含む。糊剤は、セルロースのような炭水化物などの有機、特に親水性ポリマー、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、及びジャガイモデンプンなどのデンプン、壁紙プラスター、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブテン又はポリテトラヒドロフランを含む。水、アルコール若しくはグリコール又は例えば、水とメタノール、若しくは水とエタノール、若しくは水とプロパノール、若しくは水と糊剤としてのプロピレングリコールなどの水とアルコール、若しくは水とグリコールの混合物などのそれらの混合物の使用を述べることができる。
【0091】
好ましい実施形態によれば、本発明によるゼオライト材料及び/又は本発明による方法により得られる若しくは得られたゼオライト材料は、触媒工程における触媒として用いる。
【0092】
本発明を以下の実施例及び比較例により例示する。
【0093】
実施例
参照例1: 水取込み量の測定
水吸着/脱着等温線測定は、TA Instruments製のVTI SA機器で段階等温線プログラムに従って行った。実験は、機器の内部の微量てんびんパン上に置いた試料物質について行ったラン又は一連のランからなっていた。測定を開始する前に、試料を窒素流下で100℃まで加熱し(5℃/分の昇温勾配)、それを6時間保持することにより、試料の残存水分を除去した。乾燥プログラムの後、セル内の温度を25℃に低下させ、測定中一定に維持した。微量てんびんを校正し、乾燥試料の質量を均衡を保たせた(最大質量偏差0.01質量%)。試料による水取込み量を、乾燥試料と比較した質量の増加として測定した。最初に、試料が曝露された相対湿度(RH)(セルの内部の雰囲気中の水の質量%として表した)を増加させ、試料による水取込み量を平衡として測定することにより吸着曲線を測定した。RHを5%から85%まで10%の段階で増加させ、各段階においてシステムがRHを制御し、試料が平衡状態に達するまで試料の質量をモニターし、試料を85質量%から5質量%まで10%の段階で曝露した後、試料の質量の変化(水取込み量)をモニターし、記録した。
【0094】
参照例2: 結晶化度の測定
本発明によるゼオライト材料の結晶化度は、XRD分析により測定した。2つのゼオライト材料の反射面を比較し、所定の材料の結晶化度を参照ゼオライト材料と比較して表す。参照ゼオライト材料は、商品名CP814C、CAS登録番号1318−02−1のもとにZeolyst International、Valley Forge、PA19482、USAにより市販されているゼオライトアンモニウムベータ粉末であり、この粉末をさらに空気中で500℃(昇温勾配1℃/分)で5時間焼成した。結晶化度の測定は、Bruker AXS製のD8 Advanceシリーズ2回折計で行った。回折計は、0.1°の発散スリットの開口部及びLynxeye検出器で構成されていた。試料並びに参照ゼオライト材料は、19°〜25°(2シータ)の範囲で測定した。ベースライン補正の後、評価ソフトウエアEVA(Bruker AXS製)を用いて反射面を測定した。反射面の比を百分率値として示す。
【0095】
参照例3: IR測定
IR測定は、Nicolet 6700分光計で行った。ゼオライト材料を、いかなる添加物も用いずに自己支持型ペレットに圧縮した。ペレットを高真空セルに導入し、IR装置に入れた。測定前に試料を高真空(10−5mバール)中で300℃で3時間前処理した。セルを50℃に冷却した後にスペクトルを収集した。スペクトルは、2cm−1の分解能で4000cm−1〜800cm−1の範囲で記録した。得られたスペクトルは、x軸上に波数(cm−1)を、y軸上に吸光度(任意単位)を有するプロットにより表した。ピーク高さ及びピーク高さの比の定量的測定のために、ベースライン補正を行った。3000cm−1〜3900cm−1の領域における変化を解析し、複数の試料を比較するために、1800±5cm−1における吸収帯を対照標準として選択した。
【0096】
参照例4: 出発物質(ゼオライト材料)の製造
a)b)により製造した1000gのゼオライト材料を10gの硝酸アンモニウム10質量%溶液に加えた。懸濁液を80℃に加熱し、2時間の連続撹拌のもとにこの温度に保った。固体をフィルタープレスで熱時ろ過した(さらなる冷却なしに)。次いでろ過ケーキを、洗浄水の伝導率が200ミクロンジーメンス/cm未満になるまで蒸留水(室温洗浄水)で洗浄した。ろ過ケーキを120℃で16時間乾燥した。この手順を1回繰り返して、イオン交換結晶性生成物BEAをそのアンモニウム形として得た。続く500℃で5時間(昇温勾配1℃/分)の焼成工程により、イオン交換結晶性生成物BEAをそのH形として得た。
【0097】
b)335.1gのNaAlOを撹拌しながら7314gのHOに溶解した後、74.5gのゼオライトベータ種(商品名CP814C、CAS登録番号1318−02−1のもとにZeolyst International、Valley Forge、PA19482、USAにより市販されている)を加えた。混合物を20Lオートクレーブに入れ、7340gのナトリウム水ガラス及び1436gのLudox AS40を加えた。得られたアルミノケイ酸塩ゲルの結晶化を120℃で117時間行った。反応混合物を室温に冷却した後、ろ過により固体を分離し、蒸留水で繰り返し洗浄し、次いで120℃で16時間乾燥した。得られた物質は、12質量%の水取込み量を有していた。
【0098】
比較例1: 液体水性系による処理を施していないゼオライト材料の脱アルミニウム化
第1の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する300gの4質量%HNO水溶液を容器に入れ、参照例4a)に従って製造したBEA骨格構造、10.79:1のSiO:Alモル比及び78%の結晶化度を有する100gのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で200rpm(1分当たりの回転数)で2時間撹拌した。懸濁液をろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で16時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃の昇温勾配)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、14.80:1のSiO:Alモル比、72%の結晶化度及び13.9質量%の水取込み量を有していた。さらに、得られた生成物のIRスペクトルは、3730〜3750cm−1の範囲に極大を有する第1の吸収帯(3741cm−1における0.37の吸収強度)及び3600〜3700cm−1の範囲に極大を有する第2の吸収帯(3659cm−1における0.37の吸収強度)を示し、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比は、1.01であった。このゼオライト材料を第2の酸脱アルミニウム化にかけた。
【0099】
第2の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する273gの4質量%HNO水溶液を容器に入れ、第1の酸脱アルミニウム化から得られた91gのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で200rpm(1分当たりの回転数)で2時間撹拌した。懸濁液をろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で16時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃の昇温勾配)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、21.08:1のSiO:Alモル比、72%の結晶化度及び15.9質量%の水取込み量を有していた。さらに、得られた生成物のIRスペクトルは、3730〜3750cm−1の範囲に極大を有する第1の吸収帯(3741cm−1における0.37の吸収強度)及び3600〜3700cm−1の範囲に極大を有する第2の吸収帯(3663cm−1における0.20の吸収強度)を示し、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比は、0.521であった。このゼオライト材料を第3の酸脱アルミニウム化処置にかけた。
【0100】
第3の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する237gの4質量%HNO水溶液を容器に入れ、第2の酸脱アルミニウム化から得られた79gのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で200rpm(1分当たりの回転数)で2時間撹拌した。懸濁液をろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で16時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃の昇温勾配)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、40.00:1のSiO:Alモル比、50%の結晶化度及び14.3質量%の水取込み量を有していた。さらに、得られた生成物のIRスペクトルは、3730〜3750cm−1の範囲に極大を有する第1の吸収帯(3741cm−1における0.95の吸収強度)及び3600〜3700cm−1の範囲に極大を有する第2の吸収帯(3626cm−1における0.54の吸収強度)を示し、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比は、0.565であった。
【0101】
比較実験の結果
上述のような酸処理により、ゼオライト材料のSiO:Alモル比は、10.79:1から40:1に増加した。しかし、ゼオライト材料の結晶化度は、78%の初期値から50%の最終値に著しく低下した。したがって、酸脱アルミニウム化法は、結晶化度の36%の喪失をもたらした。特に、ゼオライト材料の結晶化度は、第3の酸脱アルミニウム化の後に著しく低下し始めた(すなわち、72%から50%へ)。それに加えて、第1、第2の酸脱アルミニウム化の後の最初の低下後、第1のIR吸収帯のピーク高さに対する第2のIR吸収帯のピーク高さの比は、増加し始めており、内部欠陥(すなわち、シラノールネスト)の相対濃度の増加が示唆される。
【実施例1】
【0102】
液体水性系による処理による脱アルミニウム化
第1の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する300gの4質量%HNO水溶液を容器に入れ、参照例4a)に従って製造したBEA骨格構造、10.79:1のSiO:Alモル比及び78%の結晶化度を有する100gのゼオライト材料を加えた(比較例1と同じゼオライト材料を用いた)。
【0103】
懸濁液を60℃の温度で200rpm(1分当たりの回転数)で2時間撹拌した。懸濁液をろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で16時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃の昇温勾配)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、14.58:1のSiO:Alモル比、73%の結晶化度及び14.4質量%の水取込み量を有していた。さらに、得られた生成物のIRスペクトルは、3730〜3750cm−1の範囲に極大を有する第1の吸収帯(3741cm−1における0.37の吸収強度)及び3600〜3700cm−1の範囲に極大を有する第2の吸収帯(3659cm−1における0.37の吸収強度)を示し、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比は、1.01であった。このゼオライト材料を液体水性系による第1の処理にかけた。
【0104】
液体水性系による第1の処理
750gの脱イオン水及び第1の酸脱アルミニウム化により得られた85gのゼオライト材料を容器に入れた。懸濁液を90℃に加熱し、9時間撹拌した。この懸濁液から、ろ過によりゼオライト材料を分離した。得られたゼオライト材料を120℃で16時間乾燥した。得られたゼオライト材料は、14.80:1のSiO:Alモル比、75%の結晶化度及び12質量%の水取込み量を有していた。さらに、得られた生成物のIRスペクトルは、3730〜3750cm−1の範囲に極大を有する第1の吸収帯(3732cm−1における0.36の吸収強度)及び3600〜3700cm−1の範囲に極大を有する第2の吸収帯(3617cm−1における0.26の吸収強度)を示し、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比は、0.730であった。このゼオライト材料を第2の酸脱アルミニウム化にかけた。
【0105】
第2の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する240gの4質量%HNO水溶液を容器に入れ、液体水性系による第1の処理により得られた80gのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で200rpm(1分当たりの回転数)で2時間撹拌した。懸濁液をろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で16時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃の昇温勾配)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、21.62:1のSiO:Alモル比、73%の結晶化度及び15.7質量%の水取込み量を有していた。さらに、得られた生成物のIRスペクトルは、3730〜3750cm−1の範囲に極大を有する第1の吸収帯(3736cm−1における0.29の吸収強度)及び3600〜3700cm−1の範囲に極大を有する第2の吸収帯(3668cm−1における0.18の吸収強度)を示し、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比は、0.621であった。このゼオライト材料を液体水性系による第2の処理にかけた。
【0106】
液体水性系による第2の処理
750gの脱イオン水及び第2の酸脱アルミニウム化により得られた67gのゼオライト材料を容器に入れた。懸濁液を90℃に加熱し、9時間撹拌した。この懸濁液から、ろ過によりゼオライト材料を分離した。得られたゼオライト材料を120℃で16時間乾燥した。得られたゼオライト材料は、21.39:1のSiO:Alモル比、78%の結晶化度及び14.8質量%の水取込み量を有していた。さらに、得られた生成物のIRスペクトルは、3730〜3750cm−1の範囲に極大を有する第1の吸収帯(3734cm−1における0.74の吸収強度)及び3600〜3700cm−1の範囲に極大を有する第2の吸収帯(3663cm−1における0.31の吸収強度)を示し、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比は、0.418であった。このゼオライト材料を第3の酸脱アルミニウム化にかけた。
【0107】
第3の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する195gの4質量%HNO水溶液を容器に入れ、液体水性系による第2の処理により得られた65gのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で200rpm(1分当たりの回転数)で2時間撹拌した。懸濁液をろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で16時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃の昇温勾配)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、36.52:1のSiO:Alモル比、98%の結晶化度及び17.3質量%の水取込み量を有していた。さらに、得られた生成物のIRスペクトルは、3730〜3750cm−1の範囲に極大を有する第1の吸収帯(3743cm−1における0.37の吸収強度)及び3600〜3700cm−1の範囲に極大を有する第2の吸収帯(3658cm−1における0.14の吸収強度)を示し、第1の吸収帯のピーク高さに対する第2の吸収帯のピーク高さの比は、0.383であった。
【0108】
実施例1の結果
比較例1と同様に、3回の酸脱アルミニウム化工程を実施例1で行った。比較例1と同様に、SiO:Alモル比が10.79:1の出発値から比較例1で得られた値(40:1)とほぼ同じである36.52:1の値に増加した。しかし、比較例1による方法に反して、ゼオライト材料の結晶化度は、低下しなかった。全く対照的に、本発明による液体水性系による中間処理は、78%の出発値から98%の最終値への結晶化度の増加さえももたらした。
【0109】
さらに、液体水性系による2回の処理を行ったが、ゼオライト材料の疎水性を特徴づけるものであり、したがって、ゼオライト材料の重要な化学的パラメーターであるゼオライト材料の水取込み量は、有意に変化しなかった(出発物質の12質量%、第1の酸処理の後の物質の14.4質量%、生成物の17.3質量%)。
【0110】
さらに、第1のIR吸収帯のピーク高さに対する第2のIR吸収帯のピーク高さの比に関しては、前記比は、実施例1の製造のための上記の方法の実施中に連続的に低下したことから、内部欠陥(すなわち、シラノールネスト)の相対濃度が請求項1に規定されている工程(ii)(a)及び(ii)(b)を含む本発明の方法により連続的に低下することを示す。従来の脱アルミニウム化法が、特により高いYO:Xモル比を有する生成物を得る場合に、特に結晶化度並びに内部欠陥の濃度に関して、結晶の質の低下をもたらす、比較例1を特に考慮すると、ゼオライト材料からのAlの浸出中のそのような結晶化度の増加及び内部欠陥の低下は、全く予期されないことである。
【実施例2】
【0111】
焼成を用いない液体水性系による処理による脱アルミニウム化
第1の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する300gの4質量%HNO水溶液を容器に入れ、参照例4a)に従って製造したBEA骨格構造、10.79:1のSiO:Alモル比及び78%の結晶化度を有する100gのゼオライト材料を加えた(比較例1及び実施例1と同じゼオライト材料を用いた)。
【0112】
懸濁液を60℃の温度で200rpm(1分当たりの回転数)で2時間撹拌した。懸濁液をろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を真空下で乾燥した。得られたゼオライト材料は、13.49:1のSiO:Alモル比及び14.6質量%の水取込み量を有していた。このゼオライト材料を液体水性系による第1の処理にかけた。
【0113】
液体水性系による第1の処理
750gの脱イオン水及び第1の酸脱アルミニウム化により得られた乾燥ゼオライト材料を容器に入れた。懸濁液を90℃に加熱し、9時間撹拌した。この懸濁液から、ろ過によりゼオライト材料を分離した。得られたゼオライト材料は、12.5質量%の水取込み量を有していた。このゼオライト材料を第2の酸脱アルミニウム化にかけた。
【0114】
第2の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する192gの4質量%HNO水溶液を容器に入れ、液体水性系による第1の処理により得られた64gのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で200rpm(1分当たりの回転数)で2時間撹拌した。懸濁液をろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で16時間乾燥した。得られたゼオライト材料は、19.72:1のSiO:Alモル比及び18.9質量%の水取込み量を有していた。このゼオライト材料を液体水性系による第2の処理にかけた。
【0115】
液体水性系による第2の処理
750gの脱イオン水及び第2の酸脱アルミニウム化により得られた54gのゼオライト材料を容器に入れた。懸濁液を90℃に加熱し、9時間撹拌した。この懸濁液から、ろ過によりゼオライト材料を分離した。得られたゼオライト材料は、20.08:1のSiO:Alモル比、79%の結晶化度及び12.5質量%の水取込み量を有していた。
【0116】
実施例2の結果
実施例1のように、実施例2も、脱アルミニウム化法における工程としての液体水性系による本発明による処理がSiO:Alモル比を増加させ(10.79:1から20.08:1に)、同時にゼオライト材料の結晶化度を増加させる(78%から79%に)ことを示している。
【0117】
さらに、液体水性系による2回の処理を行ったが、ゼオライト材料の疎水性を特徴づけるものであり、したがって、ゼオライト材料の重要な化学的パラメーターであるゼオライト材料の水取込み量は、有意に変化しなかった(出発物質の12質量%、第1の酸処理の後の物質の14.6質量%、生成物の12.5質量%)。
【実施例3】
【0118】
漸増酸強度を用いた大規模実験
第1の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する51.45kgの4質量%HNO水溶液をディスク型撹拌機を備えた容器に入れ、参照例4a)に従って製造したBEA骨格構造、10.79:1のSiO:Alモル比及び78%の結晶化度を有する17.15kgのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で2時間撹拌した。懸濁液を50℃に冷却し、ろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で16時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃の昇温勾配)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、14.49:1のSiO:Alモル比を有していた。このゼオライト材料を液体水性系による第1の処理にかけた。
【0119】
液体水性系による第1の処理
127kgの脱イオン水及び第1の酸脱アルミニウム化により得られた15.89kgのゼオライト材料をプロペラ型撹拌機を備えた容器に入れた。懸濁液を90℃に加熱し、9時間撹拌した。この懸濁液から、ろ過によりゼオライト材料を分離した。得られたゼオライト材料を120℃で68時間乾燥した。このゼオライト材料を第2の酸脱アルミニウム化にかけた。
【0120】
第2の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する46.61kgの4質量%HNO水溶液をディスク型撹拌機を備えた容器に入れ、液体水性系による第1の処理により得られた15.54kgのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で2時間撹拌した。懸濁液を50℃に冷却し、ろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で48時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、19.73:1のSiO:Alモル比を有していた。このゼオライト材料を液体水性系による第2の処理にかけた。
【0121】
液体水性系による第2の処理
116kgの脱イオン水及び第2の酸脱アルミニウム化により得られた14.48kgのゼオライト材料をプロペラ型撹拌機を備えた容器に入れた。懸濁液を90℃に加熱し、9時間撹拌した。この懸濁液から、ろ過によりゼオライト材料を分離した。得られたゼオライト材料を120℃で22時間乾燥した。このゼオライト材料を第3の酸脱アルミニウム化にかけた。
【0122】
第3の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する40.95kgの4質量%HNO水溶液をディスク型撹拌機を備えた容器に入れ、液体水性系による第2の処理により得られた13.65kgのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で2時間撹拌した。懸濁液を50℃に冷却し、ろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で68時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、31.53:1のSiO:Alモル比を有していた。このゼオライト材料を液体水性系による第3の処理にかけた。
【0123】
液体水性系による第3の処理
103kgの脱イオン水及び第3の酸脱アルミニウム化により得られた12.82kgのゼオライト材料をプロペラ型撹拌機を備えた容器に入れた。懸濁液を90℃に加熱し、9時間撹拌した。この懸濁液から、ろ過によりゼオライト材料を分離した。得られたゼオライト材料を120℃で22時間乾燥した。このゼオライト材料を第4の酸脱アルミニウム化にかけた。
【0124】
第4の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する38.16kgの8質量%HNO水溶液をディスク型撹拌機を備えた容器に入れ、液体水性系による第3の処理により得られた12.72kgのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で2時間撹拌した。懸濁液を50℃に冷却し、ろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で25時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、46.67:1のSiO:Alモル比及び82%の結晶化度を有していた。
【0125】
実施例3の結果
実施例1及び2のように、大規模実験として、したがって、異なる条件下で行った実施例3も、脱アルミニウム法における工程としての液体水性系による本発明による処理がSiO:Alモル比を増加させ(10.79:1から46.67:1に)、同時にゼオライト材料の結晶化度を増加させる(78%から82%に)ことを示している。SiO:Alモル比が約5倍増加し、したがって、結晶化度の有意な低下が認められた比較例1によるそれぞれの倍率(約4倍)より大きい倍率で増加したが、結晶化度が本発明による方法により増加したことは、強調しなければならない。
【実施例4】
【0126】
無機酸の塩による処理を含む、液体水性系による処理による脱アルミニウム化
第1の酸脱アルミニウム化
200gのNHNOを0〜1の範囲のpHを有する600gの4質量%HNO水溶液に溶解し、参照例4a)に従って製造したBEA骨格構造、9.68:1のSiO:Alモル比、5.1%のNa含量及び72%の結晶化度を有する200gのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で2時間撹拌した。懸濁液をろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で16時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、13.21:1のSiO:Alモル比及び0.36%のNa含量を有していた。このゼオライト材料を液体水性系による第1の処理にかけた。
【0127】
液体水性系による第1の処理
1500gの脱イオン水及び第2の酸脱アルミニウム化からの160gのゼオライト材料を容器に入れた。懸濁液を90℃に加熱し、9時間撹拌した。この懸濁液からろ過によりゼオライト材料を分離し、120℃で12時間乾燥した。このゼオライト材料を第2の酸脱アルミニウム化にかけた。
【0128】
第2の酸脱アルミニウム化
160gのNHNOを0〜1の範囲のpHを有する480gの4質量%HNO水溶液に溶解し、液体水性系による第2の処理により得られた160gのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で2時間撹拌した。懸濁液をろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料を120℃で16時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、20.81:1のSiO:Alモル比及び0.01%のNa含量を有していた。このゼオライト材料を液体水性系による第2の処理にかけた。
【0129】
液体水性系による第2の処理
1500gの脱イオン水及び第2の酸脱アルミニウム化からの140gのゼオライト材料を容器に入れた。懸濁液を90℃に加熱し、9時間撹拌した。この懸濁液からろ過によりゼオライト材料を分離し、120℃で12時間乾燥した。このゼオライト材料を第3の酸脱アルミニウム化にかけた。
【0130】
第3の酸脱アルミニウム化
0〜1の範囲のpHを有する420gの4質量%HNO水溶液を容器に入れ、液体水性系による第2の処理により得られた140gのゼオライト材料を加えた。懸濁液を60℃の温度で2時間撹拌した。懸濁液をろ過し、次いでろ過ケーキを、洗浄水が200マイクロジーメンス/cm未満の伝導率を有するまで室温で脱イオン水で洗浄した。得られたゼオライト材料120℃で16時間乾燥し、600℃に加熱し(1分当たり1℃)、その後600℃で5時間加熱することにより焼成した。得られたゼオライト材料は、30.77:1のSiO:Alモル比、0.01%のNa含量及び75%の結晶化度を有していた。
【0131】
実施例4の結果
実施例1、2及び3のように、実施例4も、脱アルミニウム法における工程としての液体水性系による本発明による処理がSiO:Alモル比を増加させ(9.68:1から30.77:1に)、同時にゼオライト材料の結晶化度を増加させる(72%から75%に)ことを示している。
【0132】
さらに、実施例4は、本発明による処理が同時のイオン交換を可能にすることを示している。実施例4によるNHNOを含む水溶液による処理は、NHイオンによるNaイオンの交換によるゼオライト材料におけるNa含量の有意な低下(5.1%から0.01%への)をもたらす。
【0133】
実施例の要約
本発明による比較例及び実施例で示したように、本発明の方法は、ゼオライト材料のYO:Xモル比、特にSiO:Alモル比を増加させる方法について極めて有利である。その理由は、ゼオライト材料の重要な特徴である、ゼオライト材料の結晶化度を増加させることができるからである。実験を実験室規模又は産業規模で実施したかどうかを問わず、またYO:Xモル比、特にSiO:Alモル比が増加する倍数に無関係に、液体水性系による本発明の処理は、そのように処理されたゼオライト材料の結晶化度を一定に保たせる又は増加させさえもする。
【0134】
引用文献
EP0013433A1
WO02/057181A2
WO2009/016153A2