【文献】
フライパンで簡単15分レシピ ソース肉じゃが,All About, [retrieved on 2017-09-25],2012年,<https://allabout.co.jp/gm/gc/390970/>
【文献】
キッコーマン フライパンを使って煮物が短時間でできる!「うちのごはん 煮込み料理の素」シリーズ新登場!,共同通信PRワイヤー, [retrieved on 2017-09-25],2017年 7月21日,<https://prw.kyodonews.jp/opn/release/201707183805/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
糖類、旨味エキス、及び、エチルアルコールを含有し、醤油、味噌、食酢、魚醤、みりん、醸造酒、コチュジャン、豆板醤、甜麺醤から選ばれた発酵調味料を含有しない煮込み用調味液を、食塩濃度が1.74%(w/w)以下で、全糖濃度が4.2%(w/w)以上で、かつエチルアルコールの濃度が0.5〜3.4%(v/v)となるように水で希釈して煮込み液を調製し、該煮込み液を具材に添加して前半の加熱調理を行い、続いて、食塩、前記発酵調味料、及び、増粘剤を含有する仕上げ用調味液を添加して、前記煮込み液に前記仕上げ用調味液を添加した混合調味液の粘度が、18〜1435cpであって、前記煮込み液の粘度より高くなるように調整して、後半の加熱調理を行い、前記前半の調理時間と、前記後半の調理時間との合計が10分以内になるようにすることを特徴とする煮物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年においては、より迅速にかつ手軽に調理できる食品が好まれる傾向にあり、煮物においても、調理時間を短縮することが望まれている。特許文献1の煮物用液状調味料セットによれば、ダシ汁の風味や甘味が良好に付与され、食品材料固有の色調が鮮明に維持された煮物が得られるものの、短時間調理をしようとすると、味付けが不十分となるという問題があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、フライパン等の調理器具で短時間加熱するだけで、充分に味がしみ込んで風味が良く、食感の良い煮物を調理できるようにした煮物用調味液セット及び煮物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の煮物用調味液セットは、糖類、及び、旨味エキスを含有し、調理前半の煮込み時に使用する煮込み用調味液と、食塩、発酵調味料、及び、増粘剤を含有し、後半の調理時に添加される仕上げ用調味液とを備え、前記煮込み用調味液は、製品の使用説明中に記載された希釈倍率で希釈した煮込み液の食塩濃度が1.74%(w/w)以下で、かつ全糖濃度が4.2%(w/w)以上であり、前記仕上げ用調味液の増粘剤の含有量は、前記煮込み液に前記仕上げ用調味液を添加した混合調味液の粘度が、前記煮込み液の粘度より高くなるように調整されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の煮物用調味液セットによれば、食塩含量が低く糖含量の高い煮込み用調味液を希釈した煮込み液を使用して前半の煮込みを行うことにより、具材に糖類や旨味エキスがしみ込みやすくなる。また、煮込み液による煮込み時には低粘度に抑えて、具材に味をしみ込み易くし、次いで、煮込み液に、発酵調味料と増粘剤を含む前記仕上げ用調味液を添加して後半の調理を行うことにより、発酵調味料の風味の劣化を抑制すると共に、増粘剤によって食塩、発酵調味料等の具材へのからみ付けを良好にすることができる。その結果、短時間の調理であっても、風味や味付けが良好な煮物を得ることができる。
【0010】
本発明の煮物用調味液セットは、前半及び後半の合計調理時間が15分以内とされる煮物に利用されることが好ましい。本発明の煮物用調味液を用いれば、合計調理時間を15分以内にして、調理を簡便に行うことが可能になると共に、風味や味付けも良好な煮物を得ることができる。
【0011】
本発明の煮物用調味液セットは、フライパンを用いて加熱調理される煮物に利用されることが好ましい。フライパンで調理することにより、具材や煮汁がフライパン表面に広がって加熱されやすくなり、短時間でも具材を十分に煮込んで調味液による風味や味付けを良好に行うことができる。
【0012】
本発明の煮物用調味液セットにおいて、前記煮込み用調味液は、アルコールを含有していることが好ましい。煮込み用調味液がアルコールを含有することにより、糖類やエキスの具材へのしみ込みを更に良好にすることができる。
【0013】
本発明の煮物用調味液セットにおいて、前記仕上げ用調味液の前記増粘剤の含有量は、前記煮込み液に前記仕上げ用調味液を添加した混合調味液の粘度が、18〜1435cpとなるように調整されていることが好ましい。これによれば、後半の調理時における食塩、発酵調味料等の具材へのからみ付けをより良好にして、味付けを短時間で効果的に行うことができる。
【0014】
一方、本発明の煮物の製造方法は、糖類、及び、旨味エキスを含有する煮込み用調味液を、食塩濃度が1.74%(w/w)以下で、かつ全糖濃度が4.2%(w/w)以上となるように水で希釈して煮込み液を調製し、該煮込み液を具材に添加して前半の加熱調理を行い、続いて、食塩、発酵調味料、及び、増粘剤を含有する仕上げ用調味液を添加して、前記煮込み液よりも粘度を高めて、後半の加熱調理を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明の煮物の製造方法によれば、前述したように、食塩含量が低く糖含量の高い煮込み用調味液を希釈した煮込み液を使用して前半の煮込みを行うことにより、具材に糖類や旨味エキスがしみ込みやすくなり、次いで、煮込み液に、発酵調味料と増粘剤を含む仕上げ用調味液を添加して後半の調理を行うことにより、発酵調味料の風味の劣化を抑制すると共に、増粘剤によって食塩、発酵調味料等の具材へのからみ付けを良好にして、短時間の調理であっても、風味や味付けが良好な煮物を得ることができる。
【0016】
本発明の煮物の製造方法においては、前半の調理時間と後半の調理時間の合計時間を10としたとき、前半の調理時間と後半の調理時間の比率を5:5〜9:1とすることが好ましい。前半の調理時間を後半の調理時間以上にすることにより、具材への糖類や旨味エキスのしみ込みを良好にし、後半の調理時には、増粘剤によって調味液の絡み付きを良好にして、調理時間を短縮することができる。
【0017】
本発明の煮物の製造方法においては、フライパンを用いて加熱調理することが好ましい。前述したように、フライパンで調理することにより、短時間でも具材を十分に煮込んで調味液による風味や味付けを良好に行うことができる。
【0018】
本発明の煮物の製造方法においては、前記煮込み用調味液として、アルコールを含有するものを用いることが好ましい。前述したように、煮込み用調味液がアルコールを含有することにより、糖類やエキスの具材へのしみ込みを更に良好にすることができる。
【0019】
本発明の煮物の製造方法においては、前記仕上げ用調味液の前記増粘剤の含有量は、前記煮込み液に前記仕上げ用調味液を添加した混合調味液の粘度が、18〜1435cpとなるように調整されていることが好ましい。これによれば、前生姜述したように、後半の調理時における食塩、発酵調味料等の具材へのからみ付けをより良好にして、味付けを短時間で効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、食塩含量が低く糖含量の高い煮込み用調味液を希釈した煮込み液を使用して前半の煮込みを行うことにより、具材に糖類や旨味エキスがしみ込みやすくなる。また、煮込み液に、発酵調味料と増粘剤を含む仕上げ用調味液を添加して後半の調理を行うことにより、発酵調味料の風味の劣化を抑制すると共に、増粘剤によって食塩、発酵調味料等の具材へのからみ付けを良好にすることができる。その結果、短時間の調理であっても、風味や味付けが良好な煮物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の煮物用調味料セットは、調理前半の煮込み時に使用する煮込み用調味液と、後半の調理時に添加される仕上げ用調味液とを備えている。
【0022】
煮込み用調味液は、糖類、及び、旨味エキスを含有する。
【0023】
糖類としては、特に限定されないが、例えば、砂糖、乳糖、麦芽糖、ぶどう糖、果糖、水飴、デキストリン、異性化糖、トレハロースなどや、ソルビト−ル、マルチト−ルなどの糖アルコ−ル類が挙げられ、これらから選ばれた1種又は2種以上が用いられる。
【0024】
本発明において、旨味エキスとは、食品に旨味を付与するエキス類を意味し、例えば、肉エキス、魚介類エキス、野菜エキス、海藻エキス、酵母エキス、ダシ汁から選ばれた少なくとも1種が用いられる。ここで、肉エキスとしては、鶏、豚、牛などの肉類から得られるエキスやスープが挙げられる。魚介類エキスとしては、例えば、鰹エキス、鰹節エキス、ホタテエキスなどが挙げられる。野菜エキスとしては、例えば、たまねぎ、にんにく、生姜、白菜、キャベツ、人参、マッシュルーム、椎茸、ねぎなどの野菜を搾汁、あるいは加水抽出した液を濃縮したエキスなどが挙げられる。ダシ汁としては、例えば、魚節類、例えば鰹節、宗田節、鮪節、鯖節、鰯節などの粉砕物や削り節などや、鰯、鯖、鯵、エビなどを干して乾燥させた煮干し類の粉砕物などを、熱水や、エタノ−ルなどの有機溶媒や、熱水とエタノ−ルなどの混合溶媒を用いて抽出したダシ汁類が好ましく用いられ、特に熱水で抽出して得られたダシ汁が好ましい。ダシ汁を抽出する熱水の重量は所望により決定されるが、例えば魚節類の重量に対して1〜100倍の重量であり、1〜40倍の熱水重量で抽出すると濃厚なダシ類が得られるので好ましい。また、必要に応じてコンブ、ワカメなどの海藻類、しいたけなどの茸類のダシ汁も用いられる。
【0025】
煮込み用調味液は、製品の使用説明中に記載された希釈倍率で希釈して使用される。上記希釈倍率は、特に限定されないが、一般的には水にて体積比で2〜3倍に希釈されることが好ましい。ただし、本発明の煮込み用調味液は、希釈されずにそのまま使用するストレートタイプであってもよく、本発明はそのような煮込み用調味液(希釈倍率1倍の調味液)も含むものとする。その場合の本発明における煮込み液は、煮込み用調味液そのものとなる。煮込み用調味液の希釈倍率は、例えば、煮物用調味液の製品のパッケージや、製品に添付された説明書や、製品の広告宣伝等に記載された使用説明中に記載されている希釈倍率で判断することができる。この場合、希釈倍率は直接的に記載されていなくてもよく、例えば、煮込み用調味液に添加する水の量で記載されていてもよく、その場合には、計算によって希釈倍率を求めることができる。
【0026】
そして、煮込み用調味液は、上記希釈倍率で希釈した煮込み液の食塩濃度が1.74%(w/w)以下で、かつ全糖濃度が4.2%(w/w)以上であることが必要である。ここで、食塩濃度は、日本農林規格に規定されている食塩分測定方法(電位差滴定法)により分析した値であり、また、全糖濃度は、煮込み液における全糖濃度(加水分解後の還元糖の全質量を煮込み液の質量で割って100倍した値(質量%)を意味する。
【0027】
煮込み用調味液を希釈した煮込み液の食塩濃度が1.74%(w/w)を超えると、糖類や旨味エキスの具材へのしみ込みが良好になされず、味付けが不十分となる傾向がある。なお、煮込み液の食塩濃度は1.0%(w/w)以下であることが好ましく、0.5%(w/w)以下であることがより好ましい。
【0028】
煮込み用調味液を希釈した煮込み液の全糖濃度が4.2%(w/w)未満では、具材への味のしみ込みが不十分となる傾向がある。なお、煮込み液の全糖濃度は、5.0〜30.0%(w/w)であることが好ましく、15.0〜30.0%(w/w)であることがより好ましい。
【0029】
また、煮込み用調味液は、アルコール(エチルアルコール)を含有していることが好ましい。煮込み用調味液中のアルコール濃度は、製品の使用説明中に記載された希釈倍率で希釈して煮こみ液としたときの濃度で、0.5〜3.4%(v/v)となるようにすることが好ましい。アルコールを含有することにより、前半の加熱調理時における糖類や旨味エキスの具材へのしみ込みをより良好にすることができると共に、煮込み用調味液の保存性を高めることができる。
【0030】
煮込み用調味液としては、上記の他に、例えば、なす、ごぼう、たまねぎ、人参、ねぎ、大根、ジャガイモ、ピーマン、ブロッコリー、きのこ等の野菜類や、鶏、豚、牛等の肉類や、鮭、タラ、マグロ、ホタテ、イカ、タコ、カニ等の魚介類や、コンブ、ワカメ、ヒジキ等の海藻類を含有することができる。これらは、具材として添加されてもよく、粉砕又は細断されて、味付けや食感付与のための材料として添加されてもよい。煮込み用調味液が具材や味付け材料を含有する場合、製造時や取扱時にそれらが沈降してしまうのを抑制するため、加工デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン等の分散安定剤を添加してもよい。加工デンプンとしては、例えば、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン等が好ましく用いられる。但し、これらの含有量は、味のしみ込みを良くするため、煮込み液の粘度が、該煮込み液に仕上げ用調味液を添加した混合調味液の粘度より低くなるように調整されることが好ましい。
【0031】
また、煮込み用調味液としては、更に、蛋白加水分解物、蛋白酵素分解物、グルタミン酸ナトリウム、グリシンなどのアミノ酸系調味料、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムなどの核酸系調味料、コハク酸ナトリウムなどの旨味調味料などを含有することもできる。
【0032】
煮込み用調味液は、例えばラミネートフィルムの小袋や平袋、パウチ等の包装袋や容器に密封包装され、長期保存が可能な状態に加熱殺菌されていることが好ましい。加熱殺菌は、使用する材料等によって異なるが、例えば80〜120℃で5〜60分間行うことが好ましい。また、煮込み用調味液は、包装袋や容器に密封包装して、冷凍又は冷蔵保存することもできる。
【0033】
次に、仕上げ用調味液は、食塩、発酵調味料、及び、増粘剤を含有する。
【0034】
仕上げ用調味液の食塩の含有量は、調理対象によって適宜調整されるが、前半の調理工程で使用される、煮込み用調味液を希釈した煮込み液に、仕上げ用調味液を添加して混合調味液にした状態で、食塩濃度が1.5〜5.0%(w/w)となるようにすることが好ましく、2.0〜4.0%(w/w)となるようにすることがより好ましい。煮込み液に、仕上げ用調味液を添加して混合調味液にした状態での食塩濃度が、1.5%(w/w)未満では、煮物としての塩味が不足する傾向があり、5.0%(w/w)を超えると、塩味が強くなりすぎる傾向がある。なお、上記食塩相当量は、発酵調味料等に含まれる食塩も含んだ、混合調味液全体としての量である。
【0035】
また、仕上げ用調味液に含まれる発酵調味料としては、例えば、醤油、味噌、食酢、魚醤、みりん、醸造酒、コチュジャン、豆板醤、甜麺醤などが挙げられる。醤油としては、例えば、濃口醤油、淡口醤油、溜醤油、再仕込み醤油、白醤油などが挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。
【0036】
仕上げ用調味液に含まれる増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カラギナン、カボキシメチルセルロースナトリウム、グァーガム、ペクチンなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。増粘剤の含有量は、調理対象によって適宜調整されるが、煮込み液の粘度より、該煮込み液に仕上げ用調味液を添加した混合調味液の粘度の方が高くなるように調整されることが好ましい。具材への味の絡み付きを良くするため、具体的には、該煮込み液に仕上げ用調味液を添加した混合調味液の粘度は、18〜1435cpとなるようにすることが好ましい。なお、上記粘度は、B型粘度計を用いて測定した粘度である。
【0037】
仕上げ用調味液としては、上記の他に、必要に応じて、にんにく、たまねぎ、オレガノ、タイム、セージ、生姜、レッドペパー、ペパー、オールスパイス、クローブ、ナツメグ、カルダモンなどから選ばれた一種又は二種以上の香辛料や、クエン酸、酢酸、乳酸などの酸味料、果汁、香辛野菜、乳化剤、食用油脂、香料、着色料などを含有させてもよい。
【0038】
仕上げ用調味液は、例えばラミネートフィルムの小袋や平袋、パウチ等の包装袋や容器に密封包装され、長期保存が可能な状態に加熱殺菌されていることが好ましい。加熱殺菌は、使用する材料等によって異なるが、例えば60〜100℃で1〜30分間行うことが好ましい。仕上げ用調味液は、食塩等を含有するため、比較的低温での加熱殺菌でも長期保存が可能となるため、発酵調味料や、香辛料や、香辛野菜や、香料等の風味や香りが損なわれるのを防ぐことができる。
【0039】
本発明の煮物用調味液は、前半及び後半の合計調理時間が15分以内とされる煮物に好適に利用される。ここで、その煮物用調味液の合計調理時間が15分以内とされるか否かは、例えば、煮物用調味液の商品パッケージや、商品に添付された説明書や、商品の広告宣伝等に記載された商品説明中に記載された合計調理時間が、15分以内の時間(例えば15分、12分、10分等)になっているかどうかで判断することもできる。なお、合計調理時間は、12分以内とされることがより好ましく、10分以内とされることが更に好ましい。
【0040】
また、本発明の煮物用調味液は、フライパンを用いて加熱調理される煮物に好適に利用される。ここで、その煮物用調味液が、フライパンを用いて調理するためのものであるかどうかは、例えば、煮物用調味液の製品パッケージや、製品に添付された説明書や、製品の広告宣伝等に記載された使用説明中に、フライパンを用いて調理できる旨が記載されているかどうかで判断することもできる。
【0041】
次に、上記煮物用調味液を用いた、本発明の煮物の製造方法について説明する。本発明の煮物の製造方法では、前半と後半に分けた二段階調理を行う。
【0042】
前半の調理は、前記煮込み用調味液を水で希釈して、具材に添加して煮込むことによって行う。この場合、具材としては、特に限定されないが、例えば、なす、白菜、たまねぎ、人参、ねぎ、大根、かぶ、ジャガイモ、ピーマン、しいたけ、しめじ、えのき、などの野菜類や、鶏肉、豚肉、牛肉などの肉類や、鮭、タラ、マグロ、ブリ、ホタテ、イカ、タコ、カニなどの魚介類や、コンブ、ワカメ、ヒジキ等の海藻類や、豆腐、こんにゃく、しらたき、ちくわ、さつま揚げ、かまぼこなどの加工食品類などが挙げられる。これらは、食べやすく調理しやすい大きさ、例えば1口大に切断して使用することが好ましい。
【0043】
煮込み用調味液の希釈倍率は、特に限定されないが、前述したように、水にて体積比で2〜3倍に希釈することが好ましい。なお、煮込み用調味液の希釈液としては、真水に限らず、水を含むものであればよく、牛乳、豆乳などを用いることもできる。また、加温した湯を用いて希釈してもよい。
【0044】
煮込み用調味液を希釈した煮込み液は、前述したように、食塩濃度が1.0%(w/w)以下であることが好ましく、0.5%(w/w)以下であることがより好ましい。
【0045】
調理器具は、特に限定されないが、フライパンを用いることが好ましい。フライパンで調理することにより、前述したように、具材や煮汁がフライパン表面に広がって加熱されやすくなり、短時間でも具材を十分に煮込んで調味液による風味や味付けを良好に行うことができる。
【0046】
前半の調理時間は、後半の調理時間と合わせて、全体として15分以内となる時間であって、全体の調理時間の5〜9割を占める時間とすることが好ましい。全体の調理時間は、12分以内であることがより好ましく、10分以内であることが更に好ましい。また、前半の調理時間の全体に占める割合は、7〜9割であることがより好ましい。
【0047】
前半の調理の際、食塩濃度が低いことによって、煮込み用調理液に含まれる糖類、及び、旨味エキスが具材にしみ込みやすくなり、短時間の調理でも良好な味付けがなされる。また、煮込み用調理液がアルコールを含有する場合には、糖類、及び、旨味エキスが具材により一層しみ込みやすくなる。
【0048】
こうして前半の調理を行った後、煮込み用調味液を希釈した煮込み液に、仕上げ用調理液を添加して、更に煮込みを続けて、後半の調理を行う。この場合、フライパン等の調理器具で加熱している具材及び調味液に、仕上げ用調味液を添加して混ぜ込むだけでよいので、作業は簡単である。
【0049】
仕上げ用調味液は、食塩、発酵調味料、及び、増粘剤を含有するので、増粘剤によって調味液の粘度が上昇し、食塩や、発酵調味料などが、具材に絡み付きやすくなり、短時間の調理でも良好な味付けがなされる。
【0050】
仕上げ用調味液の食塩の含有量は、前述したように、煮込み液に、仕上げ用調味液を添加して混合調味液にした状態で、食塩濃度が1.5〜5.0%(w/w)となるようにすることが好ましく、2.0〜4.0%(w/w)となるようにすることがより好ましい。
【0051】
また、仕上げ用調味液の増粘剤の含有量は、前述したように、煮込み液の粘度より、該煮込み液に仕上げ用調味液を添加した混合調味液の粘度の方が高くなるように調整されることが好ましく、具体的には、前記混合調味液の粘度が、18〜1435cpとなるようにすることが好ましい。
【0052】
後半の調理時間は、前半の調理時間と合わせて、全体として15分以内となる時間であって、全体の調理時間の5〜1割を占める時間とすることが好ましい。前述したように、全体の調理時間は、12分以内であることがより好ましく、10分以内であることが更に好ましい。また、後半の調理時間の全体に占める割合は、3〜1割であることがより好ましい。後半の調理時間を短くすることによって、食塩や発酵調味料等のしみ込みが過剰となって、具材本来の色調が損なわれたり、具材本来の風味や食感が損なわれたりすることを軽減できる。
【0053】
このように、本発明の煮物の製造方法によれば、食塩含量が低く糖含量の高い煮込み用調味液を希釈した煮込み液を使用して前半の煮込みを行うことにより、具材に糖類や旨味エキスがしみ込みやすくなり、また、発酵調味料と増粘剤を含む仕上げ用調味液を添加して後半の調理を行うことにより、発酵調味料の風味の劣化を抑制すると共に、増粘剤によって食塩、発酵調味料等の具材へのからみ付けを良好にすることができ、その結果、短時間の調理であっても、風味や味付けが良好な煮物を得ることができる。
【実施例1】
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
<煮込み用調味液及び仕上げ用調味液の調整>
煮込み用調味液については、上白糖、チキンエキス(アリアケジャパン社製)、食塩、水等を混和して、80℃1分間での加熱殺菌を行い、本発明の「煮込み用調味液(ストレートタイプであってそれ自体が煮込み液となる)」を得た。
【0056】
仕上げ用調味液については、濃口しょうゆ(キッコーマン食品社製)、食塩、増粘剤(キサンタンガム)、水等を混和して、同じく80℃1分間の加熱殺菌を行い、本発明における「仕上げ用調味液」を得た。
【0057】
<煮物の作成>
市販の鶏もも肉を一口小にカットし、市販の大根、人参の皮を剥き、5〜7mm厚の銀杏切りにカットして、具材の下処理を行った。調整した煮込み用調味液(煮込み液)250gと下処理した鶏肉100g、大根100g、人参100gをフライパンに加え、蓋をして8分間煮込んだ。
【0058】
その後、調整した仕上げ用調味液30gを加えて混和し、更に2分間の煮込み調理を行って鶏と大根と人参の煮物を得た。
【0059】
<煮物の官能評価>
鶏と大根と人参の煮物について煮汁を切り、「甘味のしみこみ」、「旨味のしみこみ」、「食感」について、官能評価を実施した。官能評価は10人の専門パネルにて、各評価項目について5段階で評価した。評価については、「甘味のしみ込み」、「旨味のしみ込み」、「食感」のいずれも、対照例を基準として、「悪い」を1、「やや悪い」を2、「同じ」を3、「やや良い」を4、「良い」を5とした。「総合評価」については、各評価項目の平均点数において、3以下が×、3より大きく4未満が○、4以上が◎とした。
【0060】
<試験例1(食塩量によるしみこみの変化)>
表1に示すように、煮込み用調味液(煮込み液)と、仕上げ用調味液の食塩濃度を変えて、比較例1(対照例)、実施例1,2,3の調味液を作成し、前述した方法で煮物を作成した。なお、表1中における数字は、いずれも重量(g)である。また、表1における煮込み用調味液は、ストレートタイプであってそれ自体が煮込み液となるものであるが、製品化に際しては、2〜3倍に水で希釈したときに、表1に示す水分量の煮込み液となるようにすることが好ましい。
【0061】
得られた煮物について、前述した方法で官能評価を行った。この結果を煮込み用調味液(煮込み液)のスペックと共に、第2表に示す。なお、全糖濃度(w/w)は、しょうゆのIS測定法により測定したものであり、食塩濃度は電位差滴定法により測定したものである。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
上記表1,2に示すように、煮込み用調味液(煮込み液)の食塩濃度が0.27〜1.75%の実施例1,2,3は、対照例に比べて、甘味のしみ込み、旨味のしみ込みが良好で、食感も良く、総合評価も高かった。
【0065】
<試験例2(糖分量によるしみこみの変化)>
表3に示すように、煮込み用調味液(煮込み液)と、仕上げ用調味液の糖分濃度を変えて、比較例2(対照例)、実施例4,5,6の調味液を作成し、前述した方法で煮物を作成した。なお、表3中における数字は、いずれも重量(g)である。また、表3における煮込み用調味液は、ストレートタイプであってそれ自体が煮込み液となるものであるが、製品化に際しては、2〜3倍に水で希釈したときに、表3に示す水分量の煮込み液となるようにすることが好ましい。
【0066】
得られた煮物について、前述した方法で官能評価を行った。この結果を煮込み用調味液(煮込み液)のスペックと共に、第4表に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
上記表3,4に示すように、煮込み用調味液(煮込み液)の糖濃度が4.0〜24.0%の実施例4,5,6は、糖濃度が2.0%の対照例に比べて、甘味のしみ込み、旨味のしみ込みが良好で、食感も良く、総合評価も高かった。
【0070】
<試験例3(煮込み用調味液の粘度の有無によるしみ込みの変化、その1)>
表5に示すように、全体のキサンタムガムの配合量を同じにして、煮込み用調味液(煮込み液)と、仕上げ用調味液のキサンタムガムの配合量を変えて、比較例3(対照例)、実施例7,8の調味液を作成し、前述した方法で煮物を作成した。なお、表5中における数字は、いずれも重量(g)である。また、表5における煮込み用調味液は、ストレートタイプであってそれ自体が煮込み液となるものであるが、製品化に際しては、2〜3倍に水で希釈したときに、表5に示す水分量の煮込み液となるようにすることが好ましい。
【0071】
得られた煮物について、前述した方法で官能評価を行った。この結果を表6に示す。なお、表6中の粘度は、B型粘度計を用い、25℃にて、ローター、rpmは、調味液に合わせて調整し、測定した。
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
表6に示すように、煮込み用調味液(煮込み液)の粘度が120.0cp以下の実施例7,8は、粘度が598.0cpの比較例3に比べて、甘味のしみ込み、旨味のしみ込みが良好で、食感も良く、総合評価も高かった。
【0075】
<試験例4(煮込み用調味液の粘度の有無によるしみ込みの変化、その2)>
表7に示すように、煮込み用調味液(煮込み液)にはキサンタンガムを添加せず、仕上用調味液のキサンタンガムの配合量を変えて、比較例4(対照例)、実施例9,10の調味液を作成し、前述した方法で煮物を作成した。なお、表7中における数字は、いずれも質量部である。また、表7における煮込み用調味液は、ストレートタイプであってそれ自体が煮込み液となるものであるが、製品化に際しては、2〜3倍に水で希釈したときに、表5に示す水分量の煮込み液となるようにすることが好ましい。
【0076】
得られた煮物について、前述した方法で官能評価を行った。この結果を表8に示す。なお、表8中の粘度は、B型粘度計を用い、25℃にて、ローター、rpmは、調味液に合わせて調整し、測定した。
【0077】
【表7】
【0078】
【表8】
【0079】
<試験例5(煮込み用調味液のアルコールの有無によるしみ込みの変化)>
表9に示すように、煮込み用調味液(煮込み液)に95%アルコールを所定の添加量で添加し、仕上げ用調味液に95%アルコールを添加しないものを実施例11、12とし、煮込み用調味液(煮込み液)に95%アルコールを添加せず、仕上げ用調味液に95%アルコールを添加したものを比較例5(対照例)として、それぞれの調味液を作成し、前述した方法で煮物を作成した。なお、表9中における数字は、いずれも重量(g)である。また、表9における煮込み用調味液は、ストレートタイプであってそれ自体が煮込み液となるものであるが、製品化に際しては、2〜3倍に水で希釈したときに、表7に示す水分量の煮込み液となるようにすることが好ましい。
【0080】
得られた煮物について、前述した方法で官能評価を行った。この結果を煮込み用調味液(煮込み液)のスペックと共に、第10表に示す。
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【0083】
表10に示されるように、煮込み用調味液にアルコールを添加することにより、甘味のしみ込み、旨味のしみ込みが良好となり、総合評価も高かった。