【実施例】
【0083】
〔実施例1〕
(膜組成物の調製)
膜組成物を調製するために用いた樹脂A及び樹脂Bは以下に示す通りである。
【0084】
樹脂Aは、下記一般式(2’)で表されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(分子量2000)である。
【0085】
【化7】
【0086】
また、樹脂Bは、下記一般式(4)で表されるポリエチレンイミン(分子量10000)である。
【0087】
【化8】
【0088】
50重量部の樹脂Aと、50重量部の樹脂Bとを4900重量部の乳酸エチル(EL)に溶解して膜組成物(膜を構成する材料を含む組成物)を得た。
【0089】
(複合層材料の形成)
次に、ポリビニルアルコールを原料とした水溶性フィルム(日本合成化学工業株式会社製、「ハイセロンC−200」、厚さ50μm)と、上記膜組成物とを用い、複合層材料の形成を行なった。
【0090】
6インチシリコン基板にハイセロンC−200を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm
2、0.4m/分の条件でローラにより押圧することでラミネートした。
【0091】
次に、当該支持フィルムの片面に上記膜組成物を、スピンナーを用いて塗布した。そして、乾燥炉にて120℃で300秒間乾燥させることにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0092】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をガラス基板から剥離した。
【0093】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料を水に浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は、良好であった。
【0094】
〔実施例2〕
(膜組成物の調製)
50重量部の上記樹脂Aと、50重量部の上記樹脂Bとを4900重量部の乳酸エチル(EL)に溶解して膜組成物を得た。
【0095】
(複合層材料の形成)
まず、6インチシリコン基板にハイセロンC−200を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm
2、0.4m/分の条件でローラにより押圧することでラミネートした。これによって、膜厚50μmの支持フィルムをシリコン基板上に形成した。
【0096】
次に、シリコン基板上に形成した支持フィルムの表面上に上記膜組成物をスプレー塗布装置(Sono−Tek社_Exacta Coat)を用いて塗布した。乾燥炉にて120℃で300秒間乾燥させることにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0097】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥離した。
【0098】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料を水に浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、実施例1と同じく10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は、良好であった。
【0099】
〔実施例3〕
(膜組成物の調製)
50重量部の上記樹脂Aと、50重量部の上記樹脂Bとを4900重量部の乳酸エチル(EL)に溶解して膜組成物を得た。
【0100】
(複合層材料の形成)
まず、ハイセロンC−200(厚さ50μm)を支持フィルムとして用いた。
【0101】
上記支持フィルムの表面上に上記膜組成物をスプレー塗布装置(Sono−Tek社_Exacta Coat)を用いて塗布した。乾燥炉にて120℃で300秒間乾燥させることにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。これにより、膜と支持フィルムとからなる複合層材料を得た。
【0102】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料を水に浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、実施例1と同じく10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は、良好であった。
【0103】
〔実施例4〕
(膜組成物の調製)
50重量部の上記樹脂Aと、50重量部の上記樹脂Bとを4900重量部の乳酸エチル(EL)に溶解して膜組成物を得た。
【0104】
(複合層材料の形成)
まず、以下の一般式(1)に示すスチレン系熱可塑性エラストマー(Mw=70000)である樹脂Cを用いて支持フィルムを形成した。
【0105】
【化9】
【0106】
樹脂Cをデカヒドロナフタリンに25質量%になるように溶解し、支持フィルム用組成物(支持フィルムを構成する材料を含む組成物)を得た。当該支持フィルム用組成物をロールコータによりPET基材(厚さ100μm)に塗布した。次に、基板としての貫通孔を有するガラス基板(6インチ、孔径300μm)に、支持フィルム用組成物を介して上記PET基材を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm
2、0.4m/分の条件でローラにより押圧することでラミネートした。その後、PET基材を剥がすことによって、膜厚50μmの支持フィルムをガラス基板上に形成した。
【0107】
次に、スピンナーを用い、上記支持フィルムのPET基材と接していた面に上記膜組成物を塗布した。そして、乾燥炉にて120℃で300秒間乾燥させることにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0108】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をガラス基板から剥離した。
【0109】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料をp−メンタンに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態に異常はなかった。
【0110】
〔実施例5〕
(膜組成物の調製)
100重量部の上記樹脂Aを1300重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、下記一般式(5)によって表される光酸発生剤Aを3重量部添加することによって膜組成物(膜を構成する材料を含む組成物)を得た。
【0111】
【化10】
【0112】
なお、一般式(5)中、Xはヘキサフルオロリン酸イオン(PF
6)である。
【0113】
(複合層材料の形成)
まず、実施例4と同じ手順で調製した上記樹脂Cを含む支持フィルム用組成物をロールコータによりPET基材(厚さ100μm)に塗布した。
【0114】
次に、基板としての貫通孔を有するガラス基板(6インチ、孔径300μm)に、支持フィルム用組成物を介して上記PET基材を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm
2、0.4m/分の条件でローラにより押圧することでラミネートした。その後、PET基材を剥がすことによって、膜厚50μmの支持フィルムをガラス基板上に形成した。
【0115】
次に、スピンナーを用い、上記支持フィルムのPET基材と接していた面に上記膜組成物を塗布した。そして、乾燥炉にて90℃で180秒間乾燥させ、続いて、平行光露光装置(伯東株式会社製 MAT−2501)を用いて、100mJの条件で露光し、120℃で180秒間加熱することにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0116】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をガラス基板から剥離した。
【0117】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料をp−メンタンに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は良好であった。
【0118】
〔実施例6〕
(膜組成物の調製)
まず、下記一般式(3)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂である樹脂Dを用いて膜組成物を調製した。
【0119】
【化11】
【0120】
100重量部の上記樹脂Dを1600重量部のPGMEAに溶解し、上記光酸発生剤Aを3重量部添加することによって膜組成物(膜を構成する材料を含む組成物)を得た。
【0121】
(複合層材料の形成)
実施例4と同じ手順で調製した上記樹脂Cを含む支持フィルム用組成物をロールコータによりPET基材(厚さ100μm)に塗布した。
【0122】
次に、基板としての貫通孔を有するガラス基板(6インチ、孔径300μm)に、支持フィルム用組成物を介して上記PET基材を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm
2、0.4m/分の条件でローラにより押圧することでラミネートした。その後、PET基材を剥がすことによって、膜厚50μmの支持フィルムをガラス基板上に形成した。
【0123】
次に、当該支持フィルムのPET基材と接していた面に上記膜組成物を、スピンナーを用いて塗布した。そして、乾燥炉にて90℃で180秒間乾燥させ、続いて、平行光露光装置(伯東株式会社製 MAT−2501)を用いて、100mJの条件で露光し、120℃で180秒間加熱することにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0124】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をガラス基板から剥離した。
【0125】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料をp−メンタンに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は良好であった。
【0126】
〔実施例7〕
(膜組成物の調製)
まず、以下の一般式(6)によって表されるテトラメトキシシランを用いて膜組成物を調製した。
【0127】
【化12】
【0128】
100重量部のテトラメトキシシランを1150重量部のエタノールに溶解し、100重量部の水と、0.2重量部の硝酸とを添加することによって膜組成物を得た。
【0129】
(複合層材料の形成)
6インチシリコン基板にハイセロンC−200を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm
2の条件で押圧することでラミネートした。これによって、膜厚50μmの支持フィルムをシリコン基板上に形成した。
【0130】
次に、上記支持フィルムの片面に上記膜組成物を、スピンナーを用いて塗布した。そして、乾燥炉にて90℃で180秒間乾燥させることにより、厚さ200nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0131】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥離した。
【0132】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料を水に浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は良好であった。
【0133】
実施例1〜7の複合層材料の形成条件、及び評価結果について、以下の表1にまとめる。
【0134】
【表1】
【0135】
〔比較例1〕
(膜組成物の調製)
50重量部の上記樹脂Aと、50重量部の上記樹脂Bとを4900重量部のクロロホルムに溶解して膜組成物を得た。
【0136】
(複合層材料の形成)
まず、ポリヒドロキシスチレン(PHS)を原料とし、支持フィルム用組成物を調製した。
【0137】
6インチシリコン基板上に、スピンナーを用いてPHS溶液を塗布し、乾燥炉にて120℃で60秒間乾燥させることにより支持フィルム(膜厚1μm)を作成した。次いで、当該支持フィルムの片面に上記膜組成物を、スピンナーを用いて塗布した。そして、乾燥炉にて120℃で300秒間乾燥させることにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0138】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥がすことなく、つまり、シリコン基板に複合層材料を接着させた状態で、下記の通り支持フィルムを溶解させた。
【0139】
(支持フィルムの溶解)
次に、シリコン基板と接着した複合層材料をエタノールに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、5時間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態に異常はなかった。
【0140】
〔比較例2〕
(膜組成物の調製)
50重量部の上記樹脂Aと、50重量部の上記樹脂Bとを4900重量部の乳酸エチル(EL)に溶解して膜組成物を得た。
【0141】
(複合層材料の形成)
まず、ポリヒドロキシスチレン(PHS)を原料とし、支持フィルム用組成物を調製した。
【0142】
6インチシリコン基板上に、PHS溶液を塗布し、乾燥炉にて120℃で60秒間乾燥させることにより支持フィルムを作成し、当該支持フィルムの片面に上記膜組成物を、スピンナーを用いて塗布したが、支持フィルム上に膜組成物を均一に塗布することができなかった。
【0143】
〔比較例3〕
(膜組成物の調製)
50重量部の樹脂Aと、50重量部の樹脂Bとを4900重量部の乳酸エチル(EL)に溶解して膜組成物を得た。
【0144】
(複合層材料の形成)
まず、実施例4と同じ手順で調製した上記樹脂Cを含む支持フィルム用組成物をロールコータによりPET基材(厚さ100μm)に塗布した。次に、基板として6インチシリコン基板上に、支持フィルム用組成物を介してPET基材を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm
2、0.4m/分の条件でローラにより押圧することでラミネートした。その後、PET基材を剥がすことによって、膜厚50μmの支持フィルムをシリコン基板上に形成した。
【0145】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥がすことなく、つまり、シリコン基板を複合層材料に接着させた状態で、下記の通り支持フィルムを溶解させた。
【0146】
(支持フィルムの溶解)
次に、シリコン基板と接着した複合層材料をp−メンタンに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、120時間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態に異常はなかった。
【0147】
〔比較例4〕
実施例1と同様の条件で6インチシリコン基板の表面に複合層材料を形成した。
【0148】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥がすことなく、つまり、シリコン基板を複合層材料に接着させた状態で、下記の通り支持フィルムを溶解させた。
【0149】
(支持フィルムの溶解)
次に、シリコン基板と接着した複合層材料を水に浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、1時間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態に異常はなかった。
【0150】
〔比較例5〕
(複合層材料の形成)
樹脂Cをデカヒドロナフタリンに10質量%になるように溶解し、支持フィルム用組成物を調製した。
【0151】
次に、スピンナーを用いて、6インチシリコン基板に支持フィルム用組成物を塗布し、120℃、180秒の条件で乾燥させた。これによって、膜厚1.5μmの支持フィルムをシリコン基板上に形成した。
【0152】
次に、実施例5と同様の膜組成物を調製し、実施例5と同じ条件で、支持フィルム上に膜組成物を塗布し、複合層材料を形成した。
【0153】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥がすことなく、つまり、シリコン基板を複合層材料に接着させた状態で、下記の通り支持フィルムを溶解させた。
【0154】
(支持フィルムの溶解)
次に、シリコン基板と接着した複合層材料をp−メンタンに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、5時間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態に異常はなかった。
【0155】
〔比較例6〕
比較例5と同様に支持フィルム用組成物を調製した。
【0156】
次に、スピンナーを用いて、6インチシリコン基板に支持フィルム用組成物を塗布し、120℃、180秒の条件で乾燥させた。これによって、膜厚1.5μmの支持フィルムをシリコン基板上に形成した。
【0157】
次に、実施例6と同様の膜組成物を調製し、実施例6と同じ条件で、支持フィルム上に膜組成物を塗布し、複合層材料を形成した。
【0158】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥がすことなく、つまり、シリコン基板を複合層材料に接着させた状態で、下記の通り支持フィルムを溶解させた。
【0159】
(支持フィルムの溶解)
次に、シリコン基板と接着した複合層材料をp−メンタンに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、5時間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態に異常はなかった。
【0160】
比較例1〜6複合層材料の形成条件、及び評価結果について、以下の表2にまとめる。
【0161】
【表2】
【0162】
(まとめ)
形成した複合層材料を基板から剥がした後で、支持フィルムを水又はp−メンタンに溶解させた実施例1から実施例7では、より短い時間で複合層材料から膜を剥離することができた。一方、作成した複合層材料を基板から剥がすことなく、支持フィルムを水、p−メンタン又はエタノールに溶解させた比較例1及び比較例3から比較例6では、複合層材料から膜を剥離するために、より長い時間が必要であった。また、比較例2は、PHSを用いて形成した支持フィルム上に膜を形成することができなかった。
【0163】
さらに、支持フィルムとしてハイセロンを用いた実施例1から実施例3では、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は良好(非常にきれい)であった。これに対して、実施例1から実施例3と同じく支持フィルムとしてハイセロンを用いた比較例4では、支持フィルムを溶解させた後の膜に多少しわが観察されたが、異常はなかった。これら実施例1から実施例3と比較例4とにおける支持フィルム溶解後の膜の状態から、膜の剥離時間を短縮することにより、よりきれいな膜を得られることが分かった。また、実施例5および実施例6と、比較例5及び比較例6との評価結果から、エポキシ基を有する有機化合物と光酸発生剤Aとを用いて膜を形成する場合においても、剥離時間を短縮することができ、よりきれいな膜の形成ができることを確認した。また、実施例7から、エポキシ基を有する有機化合物を含む膜以外の膜を備えた複合層材料の形成も可能であることを確認した。