特許第6368563号(P6368563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6368563-複合層材料 図000016
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368563
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】複合層材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20180723BHJP
   B32B 7/06 20060101ALI20180723BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   C08J5/18CFC
   B32B7/06
   B32B27/38
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-139142(P2014-139142)
(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公開番号】特開2015-33850(P2015-33850A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2017年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-144848(P2013-144848)
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510022336
【氏名又は名称】株式会社ナノメンブレン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】緒方 寿幸
(72)【発明者】
【氏名】野口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】藤村 悟史
(72)【発明者】
【氏名】藤川 茂紀
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−000897(JP,A)
【文献】 特開2009−241613(JP,A)
【文献】 特開2005−246960(JP,A)
【文献】 特表2003−528755(JP,A)
【文献】 特開2013−081938(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/122884(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/024739(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/001803(WO,A1)
【文献】 特開平08−029765(JP,A)
【文献】 特開2012−144040(JP,A)
【文献】 特開2009−190328(JP,A)
【文献】 Arif A. Mamedov,Free-Standing Layer-by-Layer Assembled Films of Magnetic Nanoparticles [online],Langmuir,米国,American Chemical Society,2000年 5月27日,2000,16,p.5530-5533,[平成30年4月13日検索],インターネット,,URL,https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/la000560b
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02;5/12−5/22
B01D 53/22;61/00−71/82
C02F 1/44
B29C 41/00−41/52
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの層が積層してなり、
一方の最外側の層は、それ以外の層から除去することができ、かつ自立性を有する支持フィルムであり、
上記支持フィルムの厚さが1μm以上、100μm以下であり、
上記支持フィルムは、液体に溶解する材料からなり、
上記最外側の層以外の層のうち少なくとも一つの層は、或る物質を含む混合物から当該物質を分離する分離機能を備える層であり、
上記最外側の層以外の層のうち少なくとも一つの層は、(i)エポキシ基を有する有機化合物、(ii)アミノ基を有する有機化合物、並びに(iii)エポキシ基を有する有機化合物及び光酸発生剤を含む材料からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む材料を硬化した層である
ことを特徴とする複合層材料。
【請求項2】
上記液体は、水又は水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の複合層材料。
【請求項3】
上記液体は、有機溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の複合層材料。
【請求項4】
上記最外側の層以外の層の厚さが10nm以上、1μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の複合層材料。
【請求項5】
三つ以上の層が積層してなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の複合層材料。
【請求項6】
上記最外側の層以外の層のうち少なくとも一つの層は、PCGF((o−クレシルグリシジルエーテル)−ホルムアルデヒド共重合体)及びPEI(ポリエチレンイミン)を含む材料からなり、PCGFとPEIとの比率は重量比で10:90から90:10の範囲であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の複合層材料。
【請求項7】
少なくとも二つの層が積層してなり、
一方の最外側の層は、それ以外の層から除去することができ、かつ自立性を有する支持フィルムであり、
上記最外側の層以外の層のうち少なくとも一つの層は、金属アルコキシドを含む材料を硬化した層である
ことを特徴とする複合層材料。
【請求項8】
上記支持フィルムの厚さが1μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の複合層材料。
【請求項9】
上記支持フィルムは、液体に溶解する材料からなることを特徴とする請求項7又は8に記載の複合層材料。
【請求項10】
上記液体は、水又は水溶液であることを特徴とする請求項9に記載の複合層材料。
【請求項11】
上記液体は、有機溶媒であることを特徴とする請求項9に記載の複合層材料。
【請求項12】
上記最外側の層以外の層の厚さが10nm以上、1μm以下であることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載の複合層材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも二つの層が積層してなる複合層材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表面積が大きく、ナノオーダーの厚みを有する自立性薄膜が、選択透過膜、マイクロセンサ、薬物送達用のフィルム等として用いることができるとして注目されている。そのため、自立性薄膜の製造方法が種々検討されており、水面キャスト法、シランカップリング剤を用いた界面反応法等が知られている。しかし、これらの方法により得られる薄膜は、通常、機械的な強度に乏しく、また得られる薄膜の精度にも限界がある。
【0003】
一方、生体脂質の薄膜は、分子自体が持つ自己組織化能によって製膜における精度は極めて高いが、機能性薄膜として使用するには機械的な強度が不足している。そのため、生体脂質の薄膜は、多層の膜からなる構造とする必要があり、一般的な実用性には優れていない。
【0004】
また、薄膜形成方法として知られている、ラングミュア・ブロジェット法(Langmuir Blodgett, LB)法やレイヤーバイレイヤー法(layer-by-layer、LbL)は、作製操作が煩雑であり、また、多くの欠陥を含む微結晶ドメインの集合体となることも多く、その実用性は高くない。すなわち、これらの方法では、表面積が大きく、かつ、強度の高い膜を得ることは困難である。
【0005】
特許文献1には、厚さを100nm以下としても自己支持性を有するポリマー薄膜及び当該ポリマー薄膜を製造する製造方法が開示されている。より詳細には、支持体の表面に犠牲層を設け、当該犠牲層の表面にて組成物中の重合性化合物を連鎖重合させた後、前記犠牲層を除去することにより、前記支持体と前記重合させた組成物とを分離させてポリマー薄膜を製造する。
【0006】
また、自立性を有する薄膜を直接製造することは困難であるため、転写法を利用して、物体表面に薄膜を製造する方法が検討されている。例えば、特許文献2には、仮支持体と、その少なくとも一つの表面に形成されている微粒子積層膜とを備える薄膜転写材が開示されている。さらに、特許文献2には、成形体の表面に薄膜転写材の微粒子積層膜を転写することにより、前記成形体表面に前記微粒子積層膜を埋没させて薄膜付き成形体を製造する方法、及び、前記成形体表面に前記微粒子積層膜を埋没させた後に、薄膜付き成形体から仮支持膜を剥離することが開示されている。
【0007】
また、ポリマー薄膜の構造単位として利用できる単量体の範囲を広めるという観点から、連鎖重合によって、硬化する組成物を用いて硬化型ポリマー薄膜を得る方法が検討されている。例えば、特許文献3には、多官能ビニル芳香族共重合体(A)を含む組成物を連鎖重合、特に、ラジカル重合によって硬化することにより得られる硬化型ポリマー薄膜が開示されている。
【0008】
さらに、表面積が大きく、強度の強い高分子薄膜を製造する方法が検討されている。例えば、特許文献4には、親水性ポリマー成分と、架橋可能な構造を有する疎水性ポリマー成分とが共有結合してなるブロック共重合体からなる自立性高分子薄膜であって、上記自立性高分子薄膜がその膜中に一定方向に配向した上記親水性ポリマー成分からなるシリンダーを有しており、上記疎水性ポリマー成分が架橋している自立性高分子薄膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−285617号公報(2008年11月27日公開)
【特許文献2】特開2012−86477号公報(2012年5月10日公開)
【特許文献3】特開2009−126904号公報(2009年6月11日公開)
【特許文献4】特開2010−275349号公報(2010年12月9日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、3及び4では、犠牲層を除去する際に、当該犠牲層の除去に時間がかかってしまい、また、犠牲層の表面に設けた薄膜を大型化することが困難であるという課題がある。
【0011】
特許文献2では、成形体表面に薄膜転写材の前記微粒子積層膜を埋没させた後に、薄膜付き成形体から仮支持体を剥離する必要がある。そのため、薄膜転写材から仮支持体を直接除去することができず、単独で微粒子積層膜を得ることができないという課題がある。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、大型化が容易に可能で、支持フィルム以外の層から短時間で容易に除去することができる支持フィルムを備えた複合層材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る複合層材料は、上記の課題を解決するために、少なくとも二つの層が積層してなり、一方の最外側の層は、それ以外の層から除去することができ、かつ自立性を有する支持フィルムであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る複合層材料では、大型化が容易に可能で、支持フィルム以外の層から支持フィルムを短時間で容易に除去することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る複合層材料を製造する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の一例について、図1を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る複合層材料10を製造する工程を示す図である。なお、本発明に係る複合層材料は、基板上に支持フィルムを設置した状態で、当該支持フィルム上に膜を形成し、その後基板から支持フィルムを剥離することで製造される構成に限定されず、後に説明するように、ロールトゥロール等により膜を支持フィルムに連続的に形成して複合層材料を製造してもよい。
【0017】
〔複合層材料10〕
本発明に係る複合層材料は、少なくとも二つの層が積層してなり、一方の最外側の層は、それ以外の層から除去することができ、かつ自立性を有する支持フィルムである。
【0018】
本発明の一実施形態に係る複合層材料10は、図1の(d)に示すように、支持フィルム(最外側の層)2上に膜(最外側の層以外の層)1を積層することにより形成される。
【0019】
(複合層材料を形成する層)
複合層材料を形成する層が、少なくとも二つ以上積層することにより、本発明に係る複合層材料が形成される。本実施形態では、支持フィルム2と膜1とからなる二つの層が積層することによって複合層材料10が形成されている。
【0020】
なお、本発明に係る複合層材料は、三つ以上の層が積層することにより形成されていてもよい。
【0021】
(支持フィルム2)
複合層材料10を形成する層において、支持フィルム2は、それ以外の層(膜1)から除去することができ、かつ自立性を有するフィルムである。また、複合層材料10が三つ以上の層が積層することにより形成されている場合、支持フィルム2は、一方の最外側の層に対応する。
【0022】
本明細書において、「自立性を有する」とは、自己支持性を有し、他の支持体等に保持されていなくても支持フィルム単独で形状を維持でき、かつ、当該支持フィルムが塊状に不可逆な凝集を起こさないことをいう。
【0023】
支持フィルム2は、液体に溶解する材料からなるフィルムである。これにより、支持フィルム2を液体に浸漬させることにより、あるいは、支持フィルム2に液体を噴射、滴下、塗布等することにより、支持フィルム2を複合層材料10から好適に除去することができる。
【0024】
支持フィルム2を溶解する液体としては、例えば、水又は水溶液が挙げられる。水溶液としては、例えば、酸性水溶液、アルカリ水溶液、有機溶剤水溶液(アルコール水溶液)等が挙げられる。
また、支持フィルム2の形成に用いられ、かつ、水又は水溶液に溶解する材料としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これら水又は水溶液に溶解する材料は、単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられていてもよい。なお、支持フィルム2には、マンナン、キサンタンガム、グアーガム等のゴム成分が添加されていてもよい。
【0025】
支持フィルム2としては、特に生産安定性と水又は水溶液に対する溶解性及び経済性の点から、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムが好ましい。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、PVA以外に、澱粉やゴム等の添加剤を含有していてもよい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコールの重合度、ケン化度、及び澱粉やゴム等の添加剤の配合量等を変えることにより、支持フィルム2に対して膜1を形成する際に必要な機械的強度、取り扱い中の耐湿性、吸水による柔軟化の速度、水中での延展又は拡散に要する時間等を適宜調節することができる。
【0026】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる支持フィルムとして好適なものは、特開昭54−92406号公報に説明されているようなものであり、例えば、PVA樹脂80質量%、高分子水溶性樹脂15質量%、澱粉5質量%の混合組成からなり、平衡水分3%程度のものが好適である。また、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは水溶性ではあるが、水に溶解する前段階では水に膨潤して軟化しつつもフィルムとして存続することが好ましい。
【0027】
また、支持フィルム2を溶解する液体としては、例えば、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、支持フィルム2を溶解することができれば特に限定されないが、ラクトン類、ケトン類、多価アルコール類、環式エーテル類及びエステル類の有機溶媒、芳香族系有機溶媒、アルコール系溶媒、テルペン系溶媒、炭化水素系溶媒、石油系溶媒等が挙げられる。これら有機溶媒は、一種類のみを用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ラクトン類の有機溶媒としては、γ−ブチロラクトンなどが挙げられ、ケトン類の有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、又は2−ヘプタノンなどが挙げられ、多価アルコール類の有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、又はジプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0029】
また、多価アルコール類の有機溶媒としては、多価アルコールの誘導体であってもよく、例えば、エステル結合(エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテートなど)を有する化合物、又はエーテル結合(上記多価アルコール類又は上記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、又はモノブチルエーテルなどのモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル)を有する化合物などが挙げられ、これらのうちプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい。
【0030】
また、環式エーテル類の有機溶媒としては、ジオキサンなどが挙げられ、エステル類の有機溶媒としては、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、又はエトキシプロピオン酸エチルなどが挙げられる。
【0031】
また、芳香族系有機溶媒としては、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、又はメシチレンなどが挙げられる。
【0032】
また、アルコール系溶媒としては、支持フィルム2を溶解することができれば特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0033】
また、テルペン系溶媒としては、例えば、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー等が挙げられる。
【0034】
また、炭化水素系溶媒としては、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素が挙げられる。当該炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の炭素数3から15の直鎖状の炭化水素;メチルオクタン等の炭素数4から15の分岐状の炭化水素;p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、α−ピネン、β−ピネン、α−ツジョン、β−ツジョン等の環状の炭化水素が挙げられる。
【0035】
また、石油系溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、テトラヒドロナフタレン(テトラリン)等が挙げられる。
【0036】
ここで、支持フィルム2の形成に用いられ、かつ、有機溶媒に溶解する材料としては、例えば、炭化水素樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。
【0037】
また、炭化水素樹脂としては、炭化水素骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂であれば限定されず、例えば、シクロオレフィン系ポリマーなどが挙げられる。シクロオレフィン系ポリマーとしては、具体的には、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂などが挙げられる。
【0038】
前記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセンなどの四環体、シクロペンタジエン三量体などの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体、又はこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)置換体、アルケニル(ビニルなど)置換体、アルキリデン(エチリデンなど)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチルなど)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、又はこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーがより好ましい。
【0039】
炭化水素樹脂を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、炭素数2〜10のアルケンモノマーが挙げられ、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンが挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
【0040】
また、スチレン系樹脂としては、スチレン骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂であれば限定されず、例えば、スチレン、スチレンの芳香族環にある水素原子がヒドロキシル基又はアルコキシ基によって置換された、ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレンなどのモノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂、及びスチレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0041】
これらスチレン系樹脂のうち、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることがより好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーは、下記一般式(1)に示すスチレン構成単位と、オレフィン構成単位との共重合体であり、平均分子量(Mw)は10000以上、300000以下である。
【0042】
【化1】
【0043】
支持フィルム2の厚さとしては、支持フィルム2が自立性を有していれば限定されないが、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。
【0044】
さらに、支持フィルム2の厚さとしては、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。支持フィルム2の厚さが100μm以下であることにより、支持フィルム2を溶解する液体を用いて支持フィルム2を容易に溶解することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る複合層材料10において、支持フィルム2は自立性を有しているため、支持フィルム2をガラス等の基板に固定した状態で処理する必要がない。さらに、支持フィルム2を溶解させる液体を用いてガラス等に固定された支持フィルム2を溶解する場合と比較して、本実施形態に係る複合層材料10における支持フィルム2は容易に液体に溶解する。
【0046】
以上により、本実施形態に係る複合層材料10では、支持フィルム2をガラス等に固定した状態で支持フィルム2を液体に溶解させるよりも、より短時間で支持フィルム2を溶解させることができる。したがって、複合層材料10から支持フィルム2を除去した膜1をより効率的に製造することができる。さらに、従来よりも支持フィルム2の除去が容易であり、ガラス等の支持体、塗布方法等による制約を受けにくいため、塗膜1の大型化が可能である。
【0047】
なお、本発明に係る複合層材料を構成する支持フィルムは、自立性を有していれば限定されず、例えば、紫外線等の光、電子線等を照射することで変質し、分解される支持フィルムを用いてもよい。当該支持フィルムを変質させることで、本発明に係る複合層材料から支持フィルムを短時間で容易に除去することができる。
【0048】
(膜1)
膜1は、複合層材料10において、支持フィルム2上に形成されている膜である。膜1としては、以下に限定されないが、例えば、ハードコート膜、ガスバリア膜、透明蒸着膜、ハイブリッド膜、光反射膜、光反射防止膜、導電膜、帯電防止膜、制電膜、透明導電膜、電磁波遮蔽膜、印刷用紙用薄膜、磁気テープ用フェライト膜、光触媒・親水・防汚・防曇・撥水膜、光触媒膜、親水親油性膜、撥水性膜、農業用防曇膜、遮断膜、近赤外線遮断膜、紫外線防御膜、透明断熱膜、抗菌・防臭膜等の機能を有する膜、炭素系薄膜、ダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド状炭素膜等の素材膜、医療用膜生体骨用膜、人工血管膜、人工臓器用膜などの医療用途膜、多孔質膜等が挙げられる。
【0049】
また、複合層材料10が三つ以上の層からなる場合、上記機能が互いに異なる膜を組み合わせて複合層材料10を形成してもよい。
【0050】
また、膜1の厚さとしては、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。膜1の厚さが10nm以上であることにより、膜1を支持する支持フィルム2が除去された場合であっても、膜1はその形態を好適に維持することができる。
【0051】
さらに、膜1の厚さとしては、1μm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがさらに好ましい。膜1の厚さが1μm以下であることにより、膜1に柔軟性をもたせることができ、かつ、その物質透過性、緻密性等を高めることができる。
【0052】
膜1は、或る物質を含む混合物から当該物質を分離する分離機能を備える薄膜であることが特に好ましい。分離対象となる或る物質が当該分離機能を備える膜1を通過する、あるいは、分離対象となる或る物質以外の物質が当該分離機能を備える膜1を通過し、分離対象となる或る物質が膜1を通過しないことにより、分離対象となる当該物質を混合物から分離することができる。
【0053】
薄膜である膜1が混合物から分離することができる物質としては、特に限定されず、気体、液体、固体が挙げられる。気体としては、混合気体に含まれる水素、窒素、二酸化炭素等が挙げられ、固体としては、溶液中に含まれる不純物、微粒子等が挙げられる。
【0054】
膜1を構成する材料としては、特に限定されないが、ビニル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、ビニルエーテル基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、メルカプト基、アルキルハライド基、イソ(チオ)シアナート基、酸ハライド基、ホスホノ基、及びアルコキシホスホノ基から選択される官能基を有する有機化合物を含む材料、又は、当該有機化合物のうち、少なくとも二種を含む材料であることが好ましい。
【0055】
また、膜1を構成する材料としては、エポキシ基を有する有機化合物及びアミノ基を有する有機化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む材料であることがより好ましい。
【0056】
エポキシ基を有する有機化合物としては、例えば、PCGF((o−クレシルグリシジルエーテル)−ホルムアルデヒド共重合体)、トリス(4−ヒドロキシフェノイル)メタントリグリシジルエーテル(CAS66072−38−6、mp48〜50℃)、ポリ(ビスフェノールA−co−エピクロルヒドリン)、グリシジル末端封止(CAS25036−25−3)等が挙げられる。また、アミノ基を有する有機化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリブチルアミン、ポリリシン等が挙げられる。
【0057】
さらに、膜1を構成する材料としては、エポキシ基を有する有機化合物であるPCGF((o−クレシルグリシジルエーテル)−ホルムアルデヒド共重合体)、かつ、アミノ基を有する有機化合物であるPEI(ポリエチレンイミン)を含む材料であることがさらに好ましい。PCGF及びPEIを含む材料から構成される膜1は、混合気体に含まれる二酸化炭素、水素等を分離する薄膜として、好適に用いることができる。
【0058】
PCGF((o−クレシルグリシジルエーテル)−ホルムアルデヒド共重合体)としては、下記一般式(2)により表されるものがより好ましく、ここで、Rは、メチル基または水素であり、Xは、メチレンであり、nは1以上、50以下の整数である。
【0059】
【化2】
【0060】
また、エポキシ基を有する有機化合物には、下記一般式(3)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂も好適に用いることができる。
【0061】
【化3】
【0062】
また、ポリエチレンイミン(PEI)は、以下の一般式(4)で表されるものがより好ましく、分子量は300〜70000の範囲である。
【0063】
【化4】
【0064】
このとき、PCGF又はビスフェノールA型エポキシ樹脂とPEIとの比率は、重量比で10:90から90:10の範囲であることが好ましい。
【0065】
また、一実施形態に係る複合層材料では、膜1は、上述のエポキシ基を有する有機化合物と、光を照射することによってプロトンを発生する光酸発生剤とを含んでいてもよい。当該構成によっても、例えば、紫外線等の光を照射することによって、膜1を好適に支持フィルム2上に形成することができる。
【0066】
光酸発生剤としては、例えば、トリフェニルスルホニウム系光酸発生剤、ジフェニルヨードニウム系光酸発生剤などを挙げることができ、トリフェニルスルホニウム系光酸発生剤としては、下記一般式(5)によって表されるものを挙げることができ、ここで、Xは、アンチモンイオン、及びヘキサフルオロリン酸イオン等を挙げることができる。
【0067】
【化5】
【0068】
また、一実施形態に係る複合層材料では、膜1は、金属アルコキシド等を含む材料により構成してもよい。金属アルコキシドとしては、例えば、テトラアルキルアルコキシシラン等、並びに、それらのオリゴマー等の反応性のオルガノシランを挙げることができる。この場合、テトラアルキルアルコキシシランなどの金属アルコキシドを重合させるために、酸、及びアルカリなどと、水とを添加剤として用いるとよい。
【0069】
なお、テトラアルキルアルコキシシランとしては、下記一般式(6)によって表されるテトラメトキシシランを用いることができる。
【0070】
【化6】
【0071】
膜1は、膜1を構成する材料を含む組成物を塗布し、かつ、塗布した組成物を乾燥加熱することによって、支持フィルム2上に形成される。当該組成物は、溶媒中に、膜1を構成する材料等を添加して調製する。ここで用いる溶媒としては、これらに限定されないが、例えば、エタノール、クロロホルム、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、乳酸エチル等が挙げられる。
【0072】
上記組成物は、膜1に特定の機能を持たせるための物質を含んでいてもよい。このような物質としては、有機化合物、無機化合物のいずれでもよく、色素、顔料、無機微粒子等が挙げられる。
【0073】
なお、上述した膜1の厚さ、膜1を構成する材料の組成、膜1の機能及び膜1の製法等の説明は、支持フィルム2上に直接形成される膜1だけに限定されない。つまり、複合層材料が三つ以上の層が積層してなる場合の他の層、例えば、膜1上に形成される層についても援用される。
【0074】
〔複合層材料10の製造工程〕
以下、図1を用いて、本発明の実施形態に係る複合層材料10の製造工程について説明する。なお、本発明に係る複合層材料は、基板上に支持フィルムを設置した状態で、当該支持フィルム上に膜を形成し、その後基板から支持フィルムを剥離して製造する構成に限定されず、予め準備した単独の支持フィルム上に膜を形成して製造してもよい。
【0075】
まず、図1の(a)及び(b)に示すように、基板3上に支持フィルム2を形成する。支持フィルム2を基板3に貼り付けて、基板3上に支持フィルム2を形成してもよく、支持フィルム2を形成する溶液を基板3に塗布して、基板3上に支持フィルム2を形成してもよい。
【0076】
次に、図1の(c)に示すように、支持フィルム2上に膜1を形成する。膜1を支持フィルム2上に形成する方法としては、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレー塗布等の薄層を形成する方法を採用することができる。スピンコーティング法を採用する場合、回転数600rpm以上、8000rpm以下で行なうことが好ましい。また、膜1の厚さは、本発明で用いる組成物中における材料の濃度、又は、スピンコートの条件等により調整することができる。
【0077】
次に、図1の(d)に示すように、基板3から支持フィルム2を剥がすことにより、膜1と支持フィルム2とからなる複合層材料10を形成する。図示はしていないが、複合層材料10を、支持フィルム2を溶解させる液体に浸漬することにより、支持フィルム2を複合層材料10から好適に除去することができる。
【0078】
本実施形態に係る複合層材料10において、支持フィルム2は自立性を有しているため、支持フィルム2を基板3に固定したまま処理する必要はない。さらに、基板3に固定された支持フィルム2を、支持フィルム2を溶解させる液体に浸漬させた場合と比較して、本実施形態に係る複合層材料10における支持フィルム2は容易に液体に溶解する。
【0079】
以上により、本実施形態に係る複合層材料10では、支持フィルム2を基板3に固定した状態で支持フィルム2を液体に溶解させるよりも、より短時間で支持フィルム2を溶解させることができる。したがって、複合層材料10から支持フィルム2を除去した膜1をより効率的に製造することができる。さらに、従来よりも支持フィルム2の除去が容易であり、ガラス等の支持体、塗布方法等による制約を受けにくいため、膜1の大型化が可能である。
【0080】
基板3としては、その表面上に支持フィルム2を形成することができれば限定されないが、形成した支持フィルム2を容易に剥離できることが好ましい。具体的な基板3としては、これらに限定されないが、ガラス基板、シリコン基板、PETフィルム等が挙げられる。基板3に形成された支持フィルム2を容易に剥離する観点から、支持フィルム2が形成される基板3の表面には、公知の離型処理がなされていてもよい。
【0081】
本発明に係る複合層材料は、ロールトゥロール等により連続的に製造してもよい。例えば、支持フィルムを搬送しながら、当該支持フィルムの表面上にスプレー塗布等で膜を構成する材料を含む組成物を塗布して支持フィルム上に膜を形成してもよい。これにより、加工コスト、生産性に優れたロール状の複合層材料を製造することができる。
【0082】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0083】
〔実施例1〕
(膜組成物の調製)
膜組成物を調製するために用いた樹脂A及び樹脂Bは以下に示す通りである。
【0084】
樹脂Aは、下記一般式(2’)で表されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(分子量2000)である。
【0085】
【化7】
【0086】
また、樹脂Bは、下記一般式(4)で表されるポリエチレンイミン(分子量10000)である。
【0087】
【化8】
【0088】
50重量部の樹脂Aと、50重量部の樹脂Bとを4900重量部の乳酸エチル(EL)に溶解して膜組成物(膜を構成する材料を含む組成物)を得た。
【0089】
(複合層材料の形成)
次に、ポリビニルアルコールを原料とした水溶性フィルム(日本合成化学工業株式会社製、「ハイセロンC−200」、厚さ50μm)と、上記膜組成物とを用い、複合層材料の形成を行なった。
【0090】
6インチシリコン基板にハイセロンC−200を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm、0.4m/分の条件でローラにより押圧することでラミネートした。
【0091】
次に、当該支持フィルムの片面に上記膜組成物を、スピンナーを用いて塗布した。そして、乾燥炉にて120℃で300秒間乾燥させることにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0092】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をガラス基板から剥離した。
【0093】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料を水に浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は、良好であった。
【0094】
〔実施例2〕
(膜組成物の調製)
50重量部の上記樹脂Aと、50重量部の上記樹脂Bとを4900重量部の乳酸エチル(EL)に溶解して膜組成物を得た。
【0095】
(複合層材料の形成)
まず、6インチシリコン基板にハイセロンC−200を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm、0.4m/分の条件でローラにより押圧することでラミネートした。これによって、膜厚50μmの支持フィルムをシリコン基板上に形成した。
【0096】
次に、シリコン基板上に形成した支持フィルムの表面上に上記膜組成物をスプレー塗布装置(Sono−Tek社_Exacta Coat)を用いて塗布した。乾燥炉にて120℃で300秒間乾燥させることにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0097】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥離した。
【0098】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料を水に浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、実施例1と同じく10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は、良好であった。
【0099】
〔実施例3〕
(膜組成物の調製)
50重量部の上記樹脂Aと、50重量部の上記樹脂Bとを4900重量部の乳酸エチル(EL)に溶解して膜組成物を得た。
【0100】
(複合層材料の形成)
まず、ハイセロンC−200(厚さ50μm)を支持フィルムとして用いた。
【0101】
上記支持フィルムの表面上に上記膜組成物をスプレー塗布装置(Sono−Tek社_Exacta Coat)を用いて塗布した。乾燥炉にて120℃で300秒間乾燥させることにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。これにより、膜と支持フィルムとからなる複合層材料を得た。
【0102】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料を水に浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、実施例1と同じく10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は、良好であった。
【0103】
〔実施例4〕
(膜組成物の調製)
50重量部の上記樹脂Aと、50重量部の上記樹脂Bとを4900重量部の乳酸エチル(EL)に溶解して膜組成物を得た。
【0104】
(複合層材料の形成)
まず、以下の一般式(1)に示すスチレン系熱可塑性エラストマー(Mw=70000)である樹脂Cを用いて支持フィルムを形成した。
【0105】
【化9】
【0106】
樹脂Cをデカヒドロナフタリンに25質量%になるように溶解し、支持フィルム用組成物(支持フィルムを構成する材料を含む組成物)を得た。当該支持フィルム用組成物をロールコータによりPET基材(厚さ100μm)に塗布した。次に、基板としての貫通孔を有するガラス基板(6インチ、孔径300μm)に、支持フィルム用組成物を介して上記PET基材を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm、0.4m/分の条件でローラにより押圧することでラミネートした。その後、PET基材を剥がすことによって、膜厚50μmの支持フィルムをガラス基板上に形成した。
【0107】
次に、スピンナーを用い、上記支持フィルムのPET基材と接していた面に上記膜組成物を塗布した。そして、乾燥炉にて120℃で300秒間乾燥させることにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0108】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をガラス基板から剥離した。
【0109】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料をp−メンタンに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態に異常はなかった。
【0110】
〔実施例5〕
(膜組成物の調製)
100重量部の上記樹脂Aを1300重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、下記一般式(5)によって表される光酸発生剤Aを3重量部添加することによって膜組成物(膜を構成する材料を含む組成物)を得た。
【0111】
【化10】
【0112】
なお、一般式(5)中、Xはヘキサフルオロリン酸イオン(PF)である。
【0113】
(複合層材料の形成)
まず、実施例4と同じ手順で調製した上記樹脂Cを含む支持フィルム用組成物をロールコータによりPET基材(厚さ100μm)に塗布した。
【0114】
次に、基板としての貫通孔を有するガラス基板(6インチ、孔径300μm)に、支持フィルム用組成物を介して上記PET基材を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm、0.4m/分の条件でローラにより押圧することでラミネートした。その後、PET基材を剥がすことによって、膜厚50μmの支持フィルムをガラス基板上に形成した。
【0115】
次に、スピンナーを用い、上記支持フィルムのPET基材と接していた面に上記膜組成物を塗布した。そして、乾燥炉にて90℃で180秒間乾燥させ、続いて、平行光露光装置(伯東株式会社製 MAT−2501)を用いて、100mJの条件で露光し、120℃で180秒間加熱することにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0116】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をガラス基板から剥離した。
【0117】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料をp−メンタンに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は良好であった。
【0118】
〔実施例6〕
(膜組成物の調製)
まず、下記一般式(3)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂である樹脂Dを用いて膜組成物を調製した。
【0119】
【化11】
【0120】
100重量部の上記樹脂Dを1600重量部のPGMEAに溶解し、上記光酸発生剤Aを3重量部添加することによって膜組成物(膜を構成する材料を含む組成物)を得た。
【0121】
(複合層材料の形成)
実施例4と同じ手順で調製した上記樹脂Cを含む支持フィルム用組成物をロールコータによりPET基材(厚さ100μm)に塗布した。
【0122】
次に、基板としての貫通孔を有するガラス基板(6インチ、孔径300μm)に、支持フィルム用組成物を介して上記PET基材を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm、0.4m/分の条件でローラにより押圧することでラミネートした。その後、PET基材を剥がすことによって、膜厚50μmの支持フィルムをガラス基板上に形成した。
【0123】
次に、当該支持フィルムのPET基材と接していた面に上記膜組成物を、スピンナーを用いて塗布した。そして、乾燥炉にて90℃で180秒間乾燥させ、続いて、平行光露光装置(伯東株式会社製 MAT−2501)を用いて、100mJの条件で露光し、120℃で180秒間加熱することにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0124】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をガラス基板から剥離した。
【0125】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料をp−メンタンに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は良好であった。
【0126】
〔実施例7〕
(膜組成物の調製)
まず、以下の一般式(6)によって表されるテトラメトキシシランを用いて膜組成物を調製した。
【0127】
【化12】
【0128】
100重量部のテトラメトキシシランを1150重量部のエタノールに溶解し、100重量部の水と、0.2重量部の硝酸とを添加することによって膜組成物を得た。
【0129】
(複合層材料の形成)
6インチシリコン基板にハイセロンC−200を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cmの条件で押圧することでラミネートした。これによって、膜厚50μmの支持フィルムをシリコン基板上に形成した。
【0130】
次に、上記支持フィルムの片面に上記膜組成物を、スピンナーを用いて塗布した。そして、乾燥炉にて90℃で180秒間乾燥させることにより、厚さ200nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0131】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥離した。
【0132】
(支持フィルムの溶解)
次に、上記複合層材料を水に浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、10分間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は良好であった。
【0133】
実施例1〜7の複合層材料の形成条件、及び評価結果について、以下の表1にまとめる。
【0134】
【表1】
【0135】
〔比較例1〕
(膜組成物の調製)
50重量部の上記樹脂Aと、50重量部の上記樹脂Bとを4900重量部のクロロホルムに溶解して膜組成物を得た。
【0136】
(複合層材料の形成)
まず、ポリヒドロキシスチレン(PHS)を原料とし、支持フィルム用組成物を調製した。
【0137】
6インチシリコン基板上に、スピンナーを用いてPHS溶液を塗布し、乾燥炉にて120℃で60秒間乾燥させることにより支持フィルム(膜厚1μm)を作成した。次いで、当該支持フィルムの片面に上記膜組成物を、スピンナーを用いて塗布した。そして、乾燥炉にて120℃で300秒間乾燥させることにより、厚さ100nmの膜を支持フィルム上に形成した。
【0138】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥がすことなく、つまり、シリコン基板に複合層材料を接着させた状態で、下記の通り支持フィルムを溶解させた。
【0139】
(支持フィルムの溶解)
次に、シリコン基板と接着した複合層材料をエタノールに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、5時間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態に異常はなかった。
【0140】
〔比較例2〕
(膜組成物の調製)
50重量部の上記樹脂Aと、50重量部の上記樹脂Bとを4900重量部の乳酸エチル(EL)に溶解して膜組成物を得た。
【0141】
(複合層材料の形成)
まず、ポリヒドロキシスチレン(PHS)を原料とし、支持フィルム用組成物を調製した。
【0142】
6インチシリコン基板上に、PHS溶液を塗布し、乾燥炉にて120℃で60秒間乾燥させることにより支持フィルムを作成し、当該支持フィルムの片面に上記膜組成物を、スピンナーを用いて塗布したが、支持フィルム上に膜組成物を均一に塗布することができなかった。
【0143】
〔比較例3〕
(膜組成物の調製)
50重量部の樹脂Aと、50重量部の樹脂Bとを4900重量部の乳酸エチル(EL)に溶解して膜組成物を得た。
【0144】
(複合層材料の形成)
まず、実施例4と同じ手順で調製した上記樹脂Cを含む支持フィルム用組成物をロールコータによりPET基材(厚さ100μm)に塗布した。次に、基板として6インチシリコン基板上に、支持フィルム用組成物を介してPET基材を貼り付け、80℃において加熱し、3kgf/cm、0.4m/分の条件でローラにより押圧することでラミネートした。その後、PET基材を剥がすことによって、膜厚50μmの支持フィルムをシリコン基板上に形成した。
【0145】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥がすことなく、つまり、シリコン基板を複合層材料に接着させた状態で、下記の通り支持フィルムを溶解させた。
【0146】
(支持フィルムの溶解)
次に、シリコン基板と接着した複合層材料をp−メンタンに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、120時間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態に異常はなかった。
【0147】
〔比較例4〕
実施例1と同様の条件で6インチシリコン基板の表面に複合層材料を形成した。
【0148】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥がすことなく、つまり、シリコン基板を複合層材料に接着させた状態で、下記の通り支持フィルムを溶解させた。
【0149】
(支持フィルムの溶解)
次に、シリコン基板と接着した複合層材料を水に浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、1時間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態に異常はなかった。
【0150】
〔比較例5〕
(複合層材料の形成)
樹脂Cをデカヒドロナフタリンに10質量%になるように溶解し、支持フィルム用組成物を調製した。
【0151】
次に、スピンナーを用いて、6インチシリコン基板に支持フィルム用組成物を塗布し、120℃、180秒の条件で乾燥させた。これによって、膜厚1.5μmの支持フィルムをシリコン基板上に形成した。
【0152】
次に、実施例5と同様の膜組成物を調製し、実施例5と同じ条件で、支持フィルム上に膜組成物を塗布し、複合層材料を形成した。
【0153】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥がすことなく、つまり、シリコン基板を複合層材料に接着させた状態で、下記の通り支持フィルムを溶解させた。
【0154】
(支持フィルムの溶解)
次に、シリコン基板と接着した複合層材料をp−メンタンに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、5時間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態に異常はなかった。
【0155】
〔比較例6〕
比較例5と同様に支持フィルム用組成物を調製した。
【0156】
次に、スピンナーを用いて、6インチシリコン基板に支持フィルム用組成物を塗布し、120℃、180秒の条件で乾燥させた。これによって、膜厚1.5μmの支持フィルムをシリコン基板上に形成した。
【0157】
次に、実施例6と同様の膜組成物を調製し、実施例6と同じ条件で、支持フィルム上に膜組成物を塗布し、複合層材料を形成した。
【0158】
その後、膜と支持フィルムとからなる複合層材料をシリコン基板から剥がすことなく、つまり、シリコン基板を複合層材料に接着させた状態で、下記の通り支持フィルムを溶解させた。
【0159】
(支持フィルムの溶解)
次に、シリコン基板と接着した複合層材料をp−メンタンに浸すことにより、支持フィルムを溶解させた。複合層材料からの膜の剥離(遊離)に要した時間は、5時間であった。また、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態に異常はなかった。
【0160】
比較例1〜6複合層材料の形成条件、及び評価結果について、以下の表2にまとめる。
【0161】
【表2】
【0162】
(まとめ)
形成した複合層材料を基板から剥がした後で、支持フィルムを水又はp−メンタンに溶解させた実施例1から実施例7では、より短い時間で複合層材料から膜を剥離することができた。一方、作成した複合層材料を基板から剥がすことなく、支持フィルムを水、p−メンタン又はエタノールに溶解させた比較例1及び比較例3から比較例6では、複合層材料から膜を剥離するために、より長い時間が必要であった。また、比較例2は、PHSを用いて形成した支持フィルム上に膜を形成することができなかった。
【0163】
さらに、支持フィルムとしてハイセロンを用いた実施例1から実施例3では、支持フィルムを溶解させた後の膜の状態は良好(非常にきれい)であった。これに対して、実施例1から実施例3と同じく支持フィルムとしてハイセロンを用いた比較例4では、支持フィルムを溶解させた後の膜に多少しわが観察されたが、異常はなかった。これら実施例1から実施例3と比較例4とにおける支持フィルム溶解後の膜の状態から、膜の剥離時間を短縮することにより、よりきれいな膜を得られることが分かった。また、実施例5および実施例6と、比較例5及び比較例6との評価結果から、エポキシ基を有する有機化合物と光酸発生剤Aとを用いて膜を形成する場合においても、剥離時間を短縮することができ、よりきれいな膜の形成ができることを確認した。また、実施例7から、エポキシ基を有する有機化合物を含む膜以外の膜を備えた複合層材料の形成も可能であることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、所望の機能を有する膜の製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0165】
1 膜(最外側の層以外の層)
2 支持フィルム(最外側の層)
3 基板
10 複合層材料
図1