(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368591
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】チャージアンプ回路
(51)【国際特許分類】
G01L 9/00 20060101AFI20180723BHJP
H03F 3/70 20060101ALI20180723BHJP
G01L 9/08 20060101ALI20180723BHJP
G01L 23/32 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
G01L9/00 E
H03F3/70
G01L9/08
G01L23/32
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-175041(P2014-175041)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-50798(P2016-50798A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】北島 敦
【審査官】
大森 努
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−140047(JP,A)
【文献】
特開2003−283266(JP,A)
【文献】
特開2007−251909(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0296496(US,A1)
【文献】
特開昭52−018503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 9/00,9/08,23/32
H03F 3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子の出力信号を直接入力して一定ゲインで積分する積分回路と、該積分回路の出力電圧に含まれているGNDノイズを抑制する差動増幅回路と、該差動増幅回路の出力電圧を増幅する出力増幅回路と、該出力増幅回路の出力電圧から直流成分を取り出すローパスフィルタと、該ローパスフィルタから出力する直流成分と基準電圧を比較して得た誤差電圧を前記出力増幅回路に帰還電圧として入力させる誤差増幅回路とを備えることを特徴とするチャージアンプ回路。
【請求項2】
圧電素子の出力信号を直接入力して一定ゲインで積分する積分回路と、該積分回路の出力電圧に含まれているGNDノイズを抑制する差動増幅回路と、該差動増幅回路の出力電圧を増幅する出力増幅回路と、該出力増幅回路の出力電圧から直流成分を取り出すローパスフィルタと、該ローパスフィルタから出力する直流成分と基準電圧を比較して得た誤差電圧を前記差動増幅回路に帰還電圧として入力させる誤差増幅回路とを備えることを特徴とするチャージアンプ回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のチャージアンプ回路において、
前記出力増幅回路の出力側と前記ローパスフィルタの入力側との間に、前記出力増幅回路の出力電圧の振幅をカットするスライス回路又は前記出力増幅回路の出力電圧を減衰する減衰回路を挿入接続したことを特徴とするチャージアンプ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出信号を取り込み積分増幅して電圧信号として出力するチャージアンプ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼室内の圧力を検出する装置として圧電素子を使用し、その圧電素子で得られ圧力信号を積分増幅して出力するチャージアンプ回路として、
図8に示す回路が提案されている(特許文献1)。
【0003】
このチャージアンプ回路は、圧電素子10から出力する圧力検出信号を、オペアンプOP1とキャパシタC1と抵抗R1からなる積分回路20で積分し、その積分電圧V1をオペアンプOP2と抵抗R2,R3とからなる出力増幅回路30で増幅することで、出力電圧Voutを出力するものである。電圧源4の固定電圧Vdはバイアス用である。
【0004】
また、この出力電圧Voutは、ローパスフィルタ40においてその直流成分(低周波成分)電圧V2が取り出される。その電圧V2は、オペアンプOP3からなる誤差増幅回路50Aにおいて電圧源2の固定電圧Vbとの差分が演算されて誤差電圧V3が生成され、積分回路20のオペアンプOP1の正転入力端子に基準電圧として入力する。
【0005】
この結果、積分回路20、出力増幅回路30、ローパスフィルタ40、誤差増幅器回路50によって負帰還ループが構成され、ローパスフィルタ40の出力電圧V2が固定電圧Vbと一致するように、積分回路20の正転入力端子の電圧V3が制御される。これによって、次段の処理回路に出力する出力電圧Voutの直流成分が電圧V2となるよう制御されるので、その直流成分の変動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−140048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図8に示したチャージアンプ回路は、オペアンプOP1,OP2,OP3のオフセット電圧によって、オペアンプOP1の正転入力端子に入力する電圧V3が変動する。オペアンプOP1は、その反転入力端子の電圧が正転入力端子の電圧V3に一致するように動作するので、結局、圧電素子10に入力する電圧が変動して、出力電圧Voutに大きな誤差が含まれることになる。
【0008】
本発明の目的は、圧電素子に入力する電圧の精度を向上させたチャージアンプ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明のチャージアンプ回路は、圧電素子の出力信号を直接入力して一定ゲインで積分する積分回路と、該積分回路の出力電圧
に含まれているGNDノイズを抑制する差動増幅回路と、該差動増幅回路の出力電圧を増幅する出力増幅回路と、該出力増幅回路の出力電圧から直流成分を取り出すローパスフィルタと、該ローパスフィルタから出力する直流成分と基準電圧を比較して得た誤差電圧を前記出力増幅回路に帰還電圧として入力させる誤差増幅回路とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2にかかる発明のチャージアンプ回路は、圧電素子の出力信号を直接入力して一定ゲインで積分する積分回路と、該積分回路の出力電圧に含まれているGNDノイズを抑制する差動増幅回路と、該差動増幅回路の出力電圧を増幅する出力増幅回路と、該出力増幅回路の出力電圧から直流成分を取り出すローパスフィルタと、該ローパスフィルタから出力する直流成分と基準電圧を比較して得た誤差電圧を前記
差動増幅回路に帰還電圧として入力させる誤差増幅回路とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3にかかる発明は、
請求項1又は2に記載のチャージアンプ回路において、前記出力増幅回路の出力側と前記ローパスフィルタの入力側との間に、前記出力増幅回路の出力電圧の振幅をカットするスライス回路又は前記出力増幅回路の出力電圧を減衰する減衰回路を挿入接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜4に係る発明のチャージアンプ回路によれば、ローパスフィルタの出力電圧が誤差増幅器の基準電圧に一致するように動作するための帰還ループには、圧電素子の出力信号が直接入力する積分回路が含まれず、その積分回路は一定ゲインで動作する。このため、積分回路に直接接続される圧電素子に入力する電圧が、積分回路、増幅回路、誤差増幅回路等におけるオペアンプのオフセット電圧の影響を受けることはなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のチャージアンプ回路の第1の実施例の回路図である。
【
図2】本発明のチャージアンプ回路の第2の実施例の回路図である。
【
図3】本発明のチャージアンプ回路の第3の実施例の回路図である。
【
図4】本発明のチャージアンプ回路の第4の実施例の回路図である。
【
図5】本発明のチャージアンプ回路の第5の実施例の回路図である。
【
図6】本発明のチャージアンプ回路の第6の実施例の回路図である。
【
図7】(a)は
図1、
図2、
図3の出力増幅回路30の出力電圧Voutとローパスフィルタ40の出力電圧V2の波形図、(b)は
図4の出力増幅回路30の出力電圧Voutとスライス回路70の出力電圧V4とローパスフィルタ40の出力電圧V2の波形図、(c)は
図5の出力増幅回路30の出力電圧Voutと減衰回路80の出力電圧V5とローパスフィルタ40の出力電圧V2の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施例>
図1に第1の実施例のチャージアンプ回路を示す。10は内燃機関燃焼室の圧力を検出する圧電素子であり、積分回路20の入力側に直接接続されている。この積分回路20はオペアンプOP1と抵抗R1とキャパシタC1とにより構成されていて、そのオペアンプOP1の正転入力端子には電圧源1の固定電圧Vaが入力され、反転入力端子には前記圧電素子10が接続されている。この積分回路20からは圧電素子10で検出された電荷信号を積分した積分電圧V1が出力する。
【0016】
30は出力増幅回路であり、オペアンプOP1と抵抗R2,R3により構成され、積分回路20から出力する積分電圧V1を増幅して電圧Voutを出力する。
【0017】
40はローパスフィルタであり、出力増幅回路30の出力電圧Voutを入力してその直流成分(低周波成分)である電圧V2を出力する(
図7(a)参照)。
【0018】
50は誤差増幅回路であり、電圧源2の固定電圧Vbが基準電圧として反転入力端子に入力したオペアンプOP3で構成され、そのオペアンプOP3の正転入力端子にローパスフィルタ40の出力電圧V2が入力する。これによりオペアンプOP3の出力端子には、誤差分である「V2−Vb」を演算した電圧V3が出力し、この電圧V3は出力増幅回路30の抵抗R3の片端に入力する。
【0019】
上記した積分回路20では、オペアンプOP1の正転入力端子の電圧が固定電圧Vaであるので、反転入力端子の電圧がその固定電圧Vaに一致するようにそのオペアンプOP1が動作する。つまり、反転入力端子の電圧(圧電素子10に入力する電圧)がオペアンプOP2,OP3のオフセット電圧の影響を受けることはない。この結果、圧電素子10に入力する電圧は、電圧源1の固定電圧Vaとなって安定化し、高精度を保持できる。
【0020】
また、オペアンプOP2,OP3と抵抗R2,R3とローパスフィルタ40とは、負帰還ループを構成する。そして、ローパスフィルタ40の出力電圧V2が電圧源2の固定電圧Vbに一致するように、オペアンプOP2,OP3が制御される。
【0021】
この結果、オペアンプOP2の出力電圧Voutは、その直流成分が固定電圧Vbになるように制御されるので、その出力電圧Voutの直流成分が安定化する。
【0022】
<第2の実施例>
図2に第2の実施例のチャージアンプ回路を示す。本実施例のチャージアンプ回路が
図1で説明した第1の実施例と異なるところは、積分回路20の出力側と出力増幅回路30の入力側との間に、差動増幅回路60を挿入接続した点である。この差動増幅回路60は、抵抗R4,R5,R6,R7とオペアンプOP4とで構成されている。電圧源4の固定電圧Vcはバイアス電圧として抵抗R7の片端に入力する。
【0023】
図1の実施例のチャージアンプ回路では、圧電素子10の片端が接地GNDに接続されているので、そのオペアンプOP1から出力する積分電圧V1には、GNDノイズが含まれている。
【0024】
そこで第2の実施例では、差動増幅回路60において、接地GNDに接続される抵抗R6にGNDノイズを入力させてオペアンプOP4の正転入力端子に入力させ、反転入力端子に入力する積分電圧V1に重畳したGNDノイズを打ち消すようにした。
【0025】
これにより、第2の実施例では、出力電圧Voutの直流成分の安定化に加えて、出力増幅回路30から出力する電圧Voutに重畳されるGNDノイズ成分の抑制を行うこともできる。
【0026】
<第3の実施例>
図3に第3の実施例のチャージアンプ回路を示す。本実施例のチャージアンプ回路が
図2で説明した第2の実施例と異なるところは、出力増幅回路30の抵抗R3に電圧源4の電圧Vdを入力させた点と、差動増幅回路60の抵抗R7に誤差増幅回路50のオペアンプOP3の出力電圧V3を入力させるようにした点と、その誤差増幅回路50をオペアンプOP3の正転入力端子に電圧源2の固定電圧Vbを入力し、反転入力端子にローパスフィルタ40の出力電圧V2を入力するよう構成した誤差増幅回路50Aに置き換えた点である。この誤差増幅回路50Aからは「VbーV2」を演算した電圧V3が出力する。
【0027】
これにより、差動増幅回路60と出力増幅回路30とローパスフィルタ40と誤差増幅回路50Aとが負帰還ループを構成するので、ローパスフィルタ40の出力電圧V2が固定電圧Vbに一致するような制御が行われて出力電圧Voutの直流成分が安定化されると共に、GNDノイズの抑制が行われる。
【0028】
<第4の実施例>
図4に第4の実施例のチャージアンプ回路を示す。本実施例のチャージアンプ回路が
図1で説明した第1の実施例と異なるところは、出力増幅回路30の出力側とローパスフィルタ40の入力側との間にスライス回路70を挿入接続した点である。
【0029】
このスライス回路70は、出力増幅回路30の出力電圧Voutの振幅を所定レベルでカットするよう動作する(
図7(b)参照)。
【0030】
出力増幅回路30で増幅された出力電圧Voutは、ローパスフィルタ40を通過すると積分されるため、出力電圧Voutの振幅やデューティ比が大きく変動すると、そのローパスフィルタ40の出力電圧V2のレベルが大きく変動する。本発明のチャージアンプ回路ではこの電圧V2が固定電圧Vbに一致するように負帰還制御されるが、ローパスフィルタ40の出力電圧V2が大きく変動すると出力電圧Voutも大きく変動してしまう。
【0031】
そこで本実施例では、ローパスフィルタ40の入力電圧(出力電圧Vout)の振幅制限をスライス回路70によって行って電圧V4を生成し、その電圧V4をローパスフィルタ40に入力することで、そのローパスフィルタ40の出力電圧V2の変動を小さする。
【0032】
これにより、出力電圧Voutの振幅やデューティ比が大きく変動しても、その直流成分の変動を小さな値に抑えることができる。
【0033】
<第5の実施例>
図5に第5の実施例のチャージアンプ回路を示す。本実施例のチャージアンプ回路が
図4で説明した第4の実施例と異なるところは、出力増幅回路30の出力側とローパスフィルタ40の入力側との間に、スライス回路70に代えて減衰回路(アッテネータ回路)80を挿入接続した点である。
【0034】
本実施例では、ローパスフィルタ40の入力電圧(出力電圧Vout)の振幅が減衰される(
図7(c)参照)ので、そのローパスフィルタ40の出力電圧V2の変動を小さくすることができる。
【0035】
このように、スライス回路70を減衰回路80に置き換えても、第4の実施例と同様に、出力電圧Voutの振幅やデューティ比が大きく変動しても、その直流成分の変動を小さな値に抑えることができる。
【0036】
<第6の実施例>
図6に第6の実施例のチャージアンプ回路を示す。本実施例のチャージアンプ回路が
図4で説明した第4の実施例と異なるところは、出力増幅回路30の出力側とローパスフィルタ40の入力側との間に、スライス回路70と減衰回路(アッテネータ回路)80の両方を縦続接続して挿入した点である。
【0037】
このように、スライス回路70と減衰回路80の両者を挿入すると、出力電圧Voutの振幅やデューティ比が大きく変動した際に、その直流成分の変動を小さな値に抑える効果がより大きくなる。
【0038】
<その他の実施例>
なお、第4〜第6の実施例で説明したスライス回路70や減衰回路80は、第2および第3の実施例においても同様に接続することで、同様に、出力電圧Voutの振幅やデューティ比が大きく変動した際に、その直流成分の変動を小さな値に抑えることができる。
【符号の説明】
【0039】
10:圧電素子、20:積分回路、30:出力増幅回路、40:ローパスフィルタ、50,50A:誤差増幅回路、60:差動増幅回路、70:スライス回路、80:減衰回路