特許第6368655号(P6368655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368655
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】高粘度コーンスープ
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20180723BHJP
【FI】
   A23L23/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-15000(P2015-15000)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-136910(P2016-136910A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】仁田 友香
(72)【発明者】
【氏名】長野 学
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−71473(JP,A)
【文献】 コーンスープ風スムージー,クックパッド,2014年12月12日,レシピID:2924619,[online],[平成30年6月21日検索],インターネット<URL:http://cookpad.com/recipe/2924619>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 23/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度1〜20Pa・sのコーンスープであって、
0.1〜5質量%のペースト状のひよこ豆と、
0.1〜5質量%の加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を含有する、
コーンスープ。
【請求項2】
請求項1記載のコーンスープにおいて、
カルシウムを40〜1,000mg/100g含有する、
コーンスープ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコーンスープにおいて、
ナトリウムを20〜200mg/100g含有する、
コーンスープ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のコーンスープにおいて、
食物繊維を1.0〜10g/100g含有する、
コーンスープ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のコーンスープにおいて、
ペースト状のひよこ豆対する加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の質量比が30:1〜1:10である、
コーンスープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口の中でコーンスープ全体の味を感じる時間が延長でき、後味の味気なさや、カルシウム強化した場合の後味のえぐみが改善された、後味まで美味しいコーンスープに関する。
【背景技術】
【0002】
介護を要する高齢者の中には、飲食物の飲み込み機能が低下した嚥下困難者がおり、誤嚥による肺炎等の発症が問題となっている。
誤嚥は、飲食品が誤って気管内に入ってしまうことであり、粘度が低い飲食品を食す時に特に起こりやすい。
嚥下機能が低下した高齢者の中には食品を咀嚼する力も低下している場合が多く、介護の現場においては、粘度を調整し、また、ほとんど咀嚼する必要なく摂食することができる、高粘度のスープ等流動状食品が提案されている(特許文献1)。
【0003】
ところで、スープの中でも、すり潰したトウモロコシの実を主な食材として用いたコーンスープは、長く親しまれている身近な味である。通常コーンスープの粘度は30mPa・s程度であり、嚥下困難者が食すには粘度が低く誤嚥につながる恐れがある。
そのため、嚥下困難者であっても安心して食すことができるよう粘度を高めたコーンスープが求められている。
【0004】
しかしながら、食品の粘度を上げるとフレーバーリリースが悪くなることが知られている。高粘度のコーンスープにおいても、口の中でスープの味がすぐに消えてしまい、後味が味気なく感じられ、後味まで美味しいコーンスープを提供することができなかった。
さらに、高粘度でフレーバーリリースの悪いコーンスープにおいてカルシウムを強化した場合、コーンスープの味はすぐに消えてしまうので、後味にはカルシウムのえぐみのみが残ることになり、後味の悪さが際立ってしまい、後味まで美味しいコーンスープを提供することがさらに困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−318356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、高粘度のコーンスープであってもペースト状のひよこ豆と加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を含有することによって、口の中でコーンスープ全体の味を感じる時間が延長でき、後味の味気なさや、カルシウム強化した場合の後味のえぐみが改善された、後味まで美味しいコーンスープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の原料を含有させることにより、意外にも口の中でコーンスープ全体の味を感じる時間が延長でき、後味の味気なさや、カルシウム強化した場合の後味のえぐみが改善された、後味まで美味しいコーンスープが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)粘度1〜20Pa・sのコーンスープであって、
0.1〜5質量%のペースト状のひよこ豆と、
0.1〜5質量%の加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を含有する、
コーンスープ、
(2)(1)記載のコーンスープにおいて、
カルシウムを40〜1,000mg/100g含有する
コーンスープ、
(3)(1)又は(2)に記載のコーンスープにおいて、
ナトリウムを20〜200mg/100g含有する
コーンスープ、
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載のコーンスープにおいて、
食物繊維を1.0〜10g/100g含有する
コーンスープ、
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載のコーンスープにおいて、
ペースト状のひよこ豆:加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉が30:1〜1:10である
コーンスープ、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高粘度のコーンスープであっても、口の中でコーンスープ全体の味を感じる時間を延長させることによって、後味の味気なさや、カルシウム強化した場合の後味のえぐみが改善された、後味まで美味しいコーンスープを提供することができる。これらによって、嚥下困難者向け高粘度スープの更なる需要拡大が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0011】
<本発明の特徴>
本発明は、ペースト状のひよこ豆と加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を含有することによって、口の中でコーンスープ全体の味を感じる時間が延長でき、後味の味気なさや、カルシウム強化した場合の後味のえぐみが改善された、後味まで美味しいコーンスープであることを特徴とする。
【0012】
<コーンスープ>
本発明におけるコーンスープは、トウモロコシの実を含有した、液状又はペースト状食品である。含有するトウモロコシの実は、コーンスープの嚥下しやすさの観点から全てペースト状とすることができる。
また、コーンの配合量は、コーンの味を十分に感じ、本発明の後味改善効果が得られやすいことから、10%〜40%とすることができ、さらに20%〜35%とすることができる。
【0013】
<粘度>
本発明におけるコーンスープの粘度は、誤嚥防止の観点から、1〜20Pa・sであり、3〜15Pa・sであるとよい。
コーンスープの粘度が前記範囲であることにより、嚥下困難者であっても安心して食すことができるコーンスープとなる。前記範囲より粘度が低ければ、誤嚥を生じやすくなってしまい、また、コーンスープの粘度が前記範囲より高ければ、フレーバーリリースが悪くなり本発明の効果を得ることができない。
【0014】
<粘度の測定方法>
コーンスープの粘度の測定は、BH形粘度計により測定する。測定は、品温60℃、回転数10rpmの条件で、ローターNo.3を使用し、測定開始後ローターが3回転した時の示度により求めた。
【0015】
<ひよこ豆>
本発明のコーンスープには、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉と併用することによってコーンスープ全体の味を感じる時間を延長できる、ペースト状のひよこ豆を用いる。
ひよこ豆は、マメ科ヒヨコマメ属の食用の豆のことであり、例えば、ガルバンゾや半割のチャナダール等が知られている。また、ひよこ豆には、豆粒の大きさが10〜13mm程度で表皮の色が肌色の大粒種と、7〜10mm程度で濃褐色の小粒種の2種類があるが、本発明で用いるひよこ豆は特に制限されない。
ただし、本発明の後味改善効果を得るため本発明のコーンスープ中ではペースト状でなければならない。ホール又はひき割りのひよこ豆を用いた場合、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉と併用することによるコーンスープ全体の味の持続効果を得られず、後味の悪さを改善することができない。
【0016】
<ひよこ豆の含有量>
ひよこ豆の含有量は、コーンスープ全体の0.1〜5%であり、0.5〜3%とすることができる。ひよこ豆含有量が下限を下回ると本発明の後味の改善効果が得られず、上限を上回ると、コーンの味が損なわれてコーンスープ全体の味の持続効果が得られない。
【0017】
<コーン100部に対するひよこ豆の割合>
本発明のコーンスープは、後味の悪さを改善し美味しいスープを得るために、コーンとひよこ豆の相対量を一定の範囲に規定することができる。つまり、本発明におけるコーンとひよこ豆の相対的な配合割合は、後味改善効果が得られ易いことから、コーン100部に対しひよこ豆含有量が0.5〜20部とすることができ、さらに2〜10部とすることができる。
【0018】
<加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉>
本発明のコーンスープには、コーンスープ全体の味を感じる時間を延長できることから、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を用いる。
本発明に用いる加工澱粉としては、小麦粉澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉に、常法により架橋処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸化処理などの一種又は二種以上の処理を行った架橋澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉等が挙げられ、
本発明に用いる湿熱処理澱粉としては、小麦粉澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉に、常法により湿熱処理を行ったものが挙げられる。
これらの中でも、コーンスープ全体の味をより長く口の中で感じられることから、リン酸架橋澱粉がよい。
【0019】
<加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の含有量>
加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の含有量は、コーンスープ全体の0.1〜5%であり、さらに0.5〜3%とすることができる。加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉含有量が下限を下回ると、後味の改善効果が得られず、上限を上回ると、コーンスープ全体の味の持続効果が得られない。
【0020】
<コーン100部に対する加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の割合>
本発明のコーンスープは、後味の悪さを改善し美味しいスープを得るために、コーンと加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の相対量を一定の範囲に規定することができる。つまり、本発明におけるコーンと加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の相対的な配合割合は、コーンスープ全体の味をより長く口の中で感じることができることから、コーン100部に対し加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の含有量が0.5〜20部とすることができ、さらに2〜10部とすることができる。
【0021】
<ひよこ豆と加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の質量比>
本発明のコーンスープは、後味の悪さを改善し美味しいスープを得るために、ひよこ豆と加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の質量比を30:1〜1:10とすることができ、さらに20:1〜1:8とすることができる。
ひよこ豆と加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の質量比が前記範囲にあることにより、コーンスープ全体の味をより長く感じ、後味まで美味しいコーンスープが得られ易くなる。
【0022】
<カルシウム>
本発明のコーンスープは、後味改善効果を感じやすいことから、カルシウムを含有してもよい。
本発明で用いるカルシウム原料は、食品素材として用いることができるものであれば、特に限定されず、例えば、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、卵殻カルシウム、貝殻カルシウム、乳清カルシウム等が挙げられる。これらは、一種類を単独で使用しても、二種類以上を併用してもよい。
これらカルシウム原料の中でも、本発明の後味改善効果が得られ易いことから、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、卵殻カルシウム、貝殻カルシウム等がよく、さらに卵殻カルシウムがよい。
【0023】
<カルシウムの含有量>
本発明のカルシウム含有量は、40〜1000mg/100gがよく、さらに100〜700mg/100gがよい。カルシウム含有量が前記範囲であることにより、コーンスープの後味にえぐみを生じ、本発明の後味改善効果を感じられ易い。
なお、本発明におけるカルシウムの含有量はICP発光分光分析法により測定した値である。
【0024】
<ナトリウム>
本発明のコーンスープは、ナトリウム量を制限してもよい。
塩分含有量を制限した場合、スープの味をより感じ難くなるため、粘度を高めることによる後味の悪さが際立ち、本発明の後味改善効果が感じられ易くなる。
【0025】
<ナトリウムの含有量>
本発明のコーンスープは、後味改善効果を感じやすいことから、ナトリウムを20〜200mg/100g、さらに50〜150mg/100gに制限するとよい。なお、一般的なコーンスープのナトリウムは280mg/100g程度である。
ナトリウム含有量が前記範囲内であり、減塩により後味の悪さが際立ったとしても、本発明の後味の改善効果はより感じやすくなり、美味しいコーンスープが得られ易い。
なお、本発明におけるナトリウムの含有量は原子吸光光度法により測定した値である。
【0026】
<食物繊維>
本発明のコーンスープは、食物繊維を含有することでコーンスープ全体の味が増強されるため、後味改善効果をさらに感じやすくなる。
本発明のコーンスープに含まれる食物繊維とは、ヒトの消化酵素で消化されない難消化性の成分を指す。食物繊維は、野菜や豆類に多く含まれており、コーンスープ中の食物繊維含有量は酵素−HPLC法によって測定した数値とする。食物繊維量の調整方法は特に制限されず、例えば難消化性デキストリンや野菜ペーストなどを用いて調節すればよい。
【0027】
<食物繊維の含有量>
食物繊維の含有量は、1.0〜10g/100gがよく、さらに3.0〜7.0g/100gがよい。
食物繊維の含有量が前記範囲内であることによりコーンスープ全体の味が自然に増強されるため、本発明の後味改善効果が得られ易い。
【0028】
<増粘多糖類>
本発明のコーンスープを高粘度に調整するために、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉以外の増粘多糖類を用いてもよい。用いる増粘多糖類は、食用として一般的に利用されているものであれば特に限定されず、
キサンタンガム、タマリンド種子ガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム、アラビアガム、サイリュームシードガム、カルボキシメチルセルロース、発酵セルロース等が挙げられる。
【0029】
<その他の原料>
本発明のコーンスープは、上述の各成分の他に、
ジャガイモ、タマネギ、ニンジン、カボチャ、パセリなどの野菜及びこれらをすりおろしたもの、
砂糖、水飴、糖アルコール、デキストリン、オリゴ糖などの糖質、
牛乳、クリーム、発酵乳、脱脂乳などの乳製品、
コーン油、大豆油、オリーブオイル、バター、マーガリン、ショートニングなどの油脂類、
グルタミン酸ナトリウム、食塩、醤油、味噌などの各種調味料、
ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ナイアシンなどのビタミン類原料、無機鉄、ヘム鉄、カリウム、マグネシウム、亜鉛、銅、セレン、マンガン、コバルト、ヨウ素などのミネラル類、
保存料、乳化剤、乳化補助剤、フレーバー、着色料等を、
本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択し、用いることができる。
なお、コーンスープの嚥下しやすさの観点から、野菜等の具材は全てペースト状になっているとよい。
【0030】
<製造方法>
本発明のコーンスープの製造方法としては、通常用いられている方法であれば特に限定されないが、例えば、原料を全て混合撹拌してからミキサー処理し、加熱することによってコーンスープを得る方法等が挙げられる。
【0031】
<保存方法>
製造したコーンスープは、容器詰め後、レトルト殺菌して常温保存するか、冷蔵、冷凍保存することができる。中でも、冷凍保存後のスープは、コーンスープ全体の味が弱く後味の悪さが際立ってしまうため、冷凍コーンスープとすると本発明の後味改善効果を感じやすい。
【0032】
以下、本発明のコーンスープについて、実施例及び比較例に基づき、具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定するものではない。
【実施例】
【0033】
[実施例1]
本発明のコーンスープにおける、ひよこ豆と加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の後味増強効果を検討するため、配合表1に従ってコーンスープを1000g調製し、実施例1とした。
具体的には、配合表1に記載の原料を全て混合撹拌し、ミキサー処理した後に、品温が90℃になるまで加熱し、ペースト状のコーンスープを仕上げた。
続いて、得られたコーンスープを、200gずつパウチに充填・密封し、急速凍結させて容器入り冷凍コーンスープを得た。
なお、得られたコーンスープの60℃における粘度は5Pa・sであり、コーンの含有量100部に対するひよこ豆の含有量は5部、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の含有量は5部、カルシウム含量は300mg/100g、ナトリウム量は113mg/100g、食物繊維量は3.6g/100gであった。また、加工澱粉として、リン酸架橋澱粉を用いた。
【0034】
[配合表1]
コーン 30%
ひよこ豆 1.5%
加工澱粉 1.5%
卵殻カルシウム 0.8%
食塩 0.3%
難消化性デキストリン 2.5%
砂糖 1%
生クリーム(乳脂肪分45%) 10%
水 残余
―――――――――――――――――――――
合計 100%
【0035】
実施例1で得られたコーンスープを60℃まで加温し、後味の評価を行った。その結果、口の中でコーンスープ全体の味が持続し、カルシウム強化した場合の後味のえぐみが改善された、後味まで美味しいコーンスープスープが得られた。
【0036】
[試験例1]
ひよこ豆と加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の併用が本発明の後味改善効果に与える影響を検討するため、表1に従って、ひよこ豆を含有しない比較例1および加工澱粉又は湿熱処理澱粉を含有しない比較例2を調製した。
比較例1は、実施例1の配合からひよこ豆を除く以外は実施例1と全く同様に調製したものであり、得られたコーンスープの60℃における粘度は5Pa・s、コーンの含有量100部に対する加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の含有量は5部、カルシウム含量は300mg/100g、ナトリウム量は113mg/100g、食物繊維量は3.4g/100gであった。
比較例2は、加工澱粉をキサンタンガムに変更した以外は実施例1と全く同様に調製したものであり、得られたコーンスープの60℃における粘度は3.5Pa・sであり、コーンの含有量100部に対するひよこ豆の含有量は5部、カルシウム含量は300mg/100g、ナトリウム量は113mg/100g、食物繊維量は3.6g/100gであった。
次に、比較例1,2で得られたコーンスープについて、下記の評価基準にもとづいて実施例1と同様の評価を行い、表1に示した。
【0037】
[評価基準]
〇:後味まで美味しいコーンスープが得られた。
△:後味の悪さをやや感じたものの、問題のない範囲であった。
×:後味の悪いコーンスープであった。
【0038】
[表1]
【0039】
表1の通り、比較例1は、ひよこ豆を含有しないために、コーンスープ全体の味が口の中で持続せず、後味まで美味しいコーンスープは得られなかった。
また、比較例2に関しても、加工澱粉のかわりにキサンタンガムを用いたため、コーンスープ全体の味が口の中で持続せず、後味まで美味しいコーンスープは得られなかった。
以上より、本発明の後味改善効果を得るためには、ひよこ豆と加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を併用することが重要であると理解できる。
【0040】
[試験例2]
ひよこ豆や加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の含有量が本発明の後味改善効果に与える影響について検討するため、試験例2を行った。具体的には、ひよこ豆や加工澱粉の量を表2のように変えた以外は実施例1と同様に実施例2〜5および比較例3,4のコーンスープを調製した。なお、表2の数値は配合割合(%)を示し、(割合)で示した括弧内の数値は、それぞれコーン100部に対するひよこ豆又は加工澱粉の割合である。
また、調製した実施例2〜5および比較例2〜4は全て粘度3〜15Pa・s、食物繊維量は3.0〜4.5g/100gの範囲内であった。
続いて、それぞれのコーンスープについて、試験例1の評価基準にもとづいて実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示した。
【0041】
[表2]
【0042】
表2の通り、ひよこ豆の含有量が多すぎる比較例3は、コーンの味が損なわれ、コーンスープ全体の味は延長されなかったため、後味改善効果は得られなかった。また、実施例2,3は後味改善効果が得られたものの、実施例1ほどの効果は得られなかった。
したがって、表1,2より、ひよこ豆の含有量は0.1〜5%であることによって、口の中でコーンスープ全体の味が持続し、後味の味気なさや後味に残るカルシウムのえぐみが解消された、後味まで美味しいコーンスープが得られ、さらに0.5〜3%であることにより本発明の効果が得られ易いことが理解できる。
【0043】
また、加工澱粉の量が多すぎる比較例4は、コーンスープ全体の味が延長されず、後味改善効果は得られなかった。また、実施例4,5は後味改善効果が得られたものの、実施例1ほどの効果は得られなかった。
したがって、表1,2より、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の含有量は0.1〜5%であることによって、口の中でコーンスープ全体の味が持続し、後味の味気なさや後味に残るカルシウムのえぐみが解消された、後味まで美味しいコーンスープが得られ、さらに0.5〜3%であることにより本発明の効果が得られ易いことが理解できる。
【0044】
[試験例3]
カルシウムの含有量と本発明の後味改善効果について検討するため、試験例3を行った。実施例6および比較例5は、実施例1および比較例2から卵殻カルシウムを抜いたものであり(表3)、実施例1と同様にコーンスープを調製して後味の改善効果について評価した。
なお、調製した実施例6は粘度5Pa・s、比較例5は粘度3.5Pa・sであり、食物繊維量は実施例6と比較例5ともに3.6g/100gであった。
【0045】
[表3]
【0046】
比較例5はカルシウムを含有しないため、比較例2ほどの後味の悪さは感じないものの、キサンタンガムで高粘度に調整したために、コーンスープ全体の味が口の中で持続せず、後味の味気ないコーンスープになった。
一方で、実施例6は、コーンスープ全体の味が口の中で長く続いたため、実施例1と同様に後味の美味しいコーンスープであった。
【0047】
[試験例4]
ナトリウムの含有量と本発明の後味改善効果について検討するため、試験例4を行った。実施例7および比較例6は、実施例1および比較例2にそれぞれ食塩を足したものであり(表4)、実施例1と同様にコーンスープを調製して後味の改善効果について評価した。
なお、調製した実施例7は粘度5Pa・s、比較例6は粘度3.5Pa・sであり、食物繊維量は実施例7と比較例6ともに3.6g/100gであった。
【0048】
[表4]
【0049】
比較例6はナトリウム含有量が比較例2よりも多いため、比較例2ほどではないものの、キサンタンガムで高粘度に調整したために、コーンスープ全体の味が口の中で持続せず、後味の味気ないコーンスープになった。
一方で、実施例7は、コーンスープ全体の味が口の中で長く続いたため、実施例1と同様に後味の美味しいコーンスープであった。
【0050】
[実施例8]
食物繊維の含有量と本発明の後味改善効果について検討するため、実施例1から難消化性デキストリンを除いた以外は実施例1と同様にコーンスープを調製し、実施例8とした。
実施例8においても、本発明の後味の改善効果を十分に感じることができたが、実施例1の方がコーンスープ全体の味が口の中で長く続き、後味まで美味しいコーンスープであった。
【0051】
[実施例9]
コーンの量を20%に変更した以外は実施例1と同様に調製した実施例9においても、実施例1と同様に後味の改善効果を感じ、後味まで美味しいコーンスープを得ることができた。
【0052】
[比較例7,8]
実施例1で用いたひよこ豆を大豆や白いんげんに変更して実施例1と同様にコーンスープを調製し、それぞれ比較例7,8とした。これらの後味について評価したところ、大豆を用いた比較例7はコーンスープ全体の味は少し強まったものの豆臭さが際立ち後味の悪さを改善したコーンスープを得ることができなかった。また、白いんげんを用いた比較例8は、コーンスープ全体の味が延長されなかったため、後味に残るカルシウムのえぐみや味気なさを改善する効果は得られず、後味まで美味しいコーンスープを得ることはできなかった。
【0053】
[実施例10,11]
実施例1で用いた加工澱粉をアセチル化アジピン酸加工澱粉、湿熱処理澱粉に変更して実施例1と同様にコーンスープを調製し、それぞれ実施例10,11とした。これらの後味について評価したところ、実施例1と同様に、後味の改善効果が得られた。
【0054】
[実施例12]
実施例1と同様にコーンスープを調製し、冷凍せずに耐熱性パウチに充填・密封後、レトルト殺菌したコーンスープを実施例12とした。
実施例12のコーンスープの後味について評価したところ、実施例1と同様の後味改善効果が得られ、後味まで美味しいコーンスープであった。ただし、実施例12のレトルト品は高温の加熱により実施例1の冷凍品よりもコーンスープ全体の味が強まっており、実施例1の方が本発明の後味改善効果をより顕著に感じることができた。