(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定対象物の表面に接触する接触子を支持するスタイラスと、前記スタイラスを保持する保持部と、前記保持部を回転軸によって揺動自在に保持し、前記保持部の変位を検出する測定部と、前記測定部を収納する本体部と、を備え、前記保持部は、前記スタイラスの軸であるスタイラス軸と前記本体部の軸である本体軸とを平行に、かつ前記スタイラス軸と前記本体軸とを前記本体軸及び前記回転軸に直交する第1方向にオフセットして前記スタイラスを保持する検出器と、
前記測定対象物の測定面に前記接触子を接触させ、前記測定対象物と前記接触子とを相対的に移動させる相対移動部と、
前記検出器の検出結果に基づいて前記測定対象物の表面性状を測定する表面性状測定部と、
を備えた表面性状測定機を備えて構成され、
前記相対移動部は、前記測定対象物を回転させる回転ステージを備え、
前記表面性状測定部は、前記測定対象物の真円度を測定する真円度測定機。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0023】
<真円度測定機の構成>
図1は、本実施形態に係る表面性状測定機の全体構成を示す図であり、
図1(A)は正面図、
図1(B)は側面図である。また、
図1(C)は、
図1(B)に示す状態から姿勢を変更した状態の側面図である。
図1に示すように、真円度測定機10は、本体ベース(基台)12上に測定対象物となるワークWを載置する回転ステージ(回転台)14が設けられている。回転ステージ14は、X方向微動つまみ(不図示)及びY方向微動つまみ(不図示)によってX方向及びY方向に微動送りがされ、X方向傾斜つまみ(不図示)及びY方向傾斜つまみ(不図示)によってX方向及びY方向に傾斜が調整されるようになっている。
【0024】
なお、X方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交する方向であり、X方向は水平方向(後述するアーム20の移動方向)、Y方向はX方向に直交する水平方向、Z方向は鉛直方向(後述するキャリッジ18の移動方向)である。
【0025】
本体ベース12の内部には、回転ステージ14に連結されるモータ(不図示)が備えられている。回転ステージ14は、Z方向に平行な回転軸を中心に回転する。
【0026】
回転ステージ14の上面には、ワークWが載置される。
図1(A)及び(B)に示すワークWは、一定の外径と内径とを有する円筒形状を有している。ワークWは、その中心軸が回転ステージ14の回転軸と同軸上となるように載置される。回転ステージ14に載置されたワークWは、回転ステージ14とともに回転軸を中心に回転する。
【0027】
また、本体ベース12上には、鉛直方向(Z方向)に延びるコラム(支柱)16が立設され、コラム16にはキャリッジ18が鉛直方向(Z方向)に移動自在に支持されている。キャリッジ18は、モータ(不図示)の駆動によりZ方向に移動する。
【0028】
キャリッジ18には、アーム(径方向移動軸)20が水平一軸方向(X方向)に移動自在に支持されている。アーム20は、モータ(不図示)の駆動によりX方向に移動する。
【0029】
また、アーム20は、X方向に平行な旋回軸周りに旋回自在に支持されている。
【0030】
アーム20の先端には検出器ホルダ22が設けられており、検出器ホルダ22には検出器24が着脱可能に取り付けられる。検出器24は、例えば、差動変圧器を用いた電気マイクロメータが使用される。検出器24の詳細については後述する。
【0031】
キャリッジ18のZ方向の移動及びアーム20のX方向の移動により、検出器24のZ方向及びX方向の位置を変更することができる。また、アーム20の旋回により、検出器24の向きを変更することができる。
【0032】
図1(B)に示した状態は、検出器24の検出器軸aはZ方向に平行であり、検出器24の第1の姿勢と呼ぶ。また、
図1(C)は、
図1(B)に示した状態からアーム20を図中左回りに90度旋回させた状態を示している。この状態では、検出器24の検出器軸aはY方向に平行であり、検出器24の第2の姿勢と呼ぶ。
【0033】
このように構成された真円度測定機10において、回転ステージ14(相対移動部の一例)を回転することで、ワークWと検出器24とを相対的に移動させる。そして、検出器24の検出結果に基づいて、ワークWの表面性状を測定する(表面性状測定部の一例)ことができる。特に、検出器24の第1の姿勢において、ワークWの円柱外側面、円筒内側面、及び細穴内側面の真円度を測定することができる。また、第2の姿勢において、ワークWの上面及び細溝上下面の表面性状を測定することができる。
【0034】
<従来の検出器の問題点>
図2は、従来の検出器24の構成の一例を示す図である。
【0035】
検出器24は、円筒状の検出器本体100の下端100Aから棒状に延びるスタイラス102と、検出器本体100の内部にスタイラス102の変位量を差動トランス等により検出して電気信号として出力する不図示の変位検出部と、を有する。
【0036】
スタイラス102は、先端部にワークWの表面に接触する接触子104を有する。スタイラス102は、X方向双方向に変位可能に検出器本体100に支持されるとともに、バネ等の付勢部材によりX方向双方向に付勢される。
【0037】
また、スタイラス102は、回転ステージ14の回転軸に対する角度を変更することで姿勢を変更可能に構成されている。
図2に示す検出器24は、スタイラス102がZ方向に平行な角度である垂直姿勢に設定されている場合を示している。
【0038】
図3は、垂直姿勢におけるワークWの真円度測定を示す概略図である。垂直姿勢は、
図3(A)に示すように、ワークWの細穴内側面の真円度測定に適している。しかしながら、垂直姿勢は、
図3(B)に示すワークWの円柱外側面の測定、及び
図3(C)に示すワークWの円筒内側面の測定において、検出器本体100の下端100AがワークWと衝突する可能性がある。
【0039】
一方、
図4は、スタイラス102がZ方向に対して一定の傾斜角度を有する傾斜姿勢に設定されている検出器24を示す図である。
【0040】
また、
図5は、傾斜姿勢におけるワークWの真円度測定を示す概略図である。傾斜姿勢は、
図5(A)に示すワークWの円柱外側面の測定、及び
図5(B)に示すワークWの円筒内側面の測定に適している。しかしながら、傾斜姿勢は、
図5(C)に示すワークWの細穴内側面の測定において、スタイラス102がワークWと衝突する可能性がある。
【0041】
このように、従来の検出器24は、ワークWの測定面に応じて、スタイラス102の姿勢を変更する必要があった。
【0042】
また、接触子104が略球形であり、偏摩耗した場合について考える。
図6は、ワークWに対する接触子104の接触点の位置を示す模式図であり、
図6(A)はスタイラス102が垂直姿勢の場合、
図6(B)はスタイラス102が傾斜姿勢の場合を示している。
【0043】
図6(A)に示すように、垂直姿勢の場合は、ワークWに対する接触子104の接触点P
1と接触子104の中心O
1との距離はR
1である。一方、
図6(B)に示すように、傾斜姿勢の場合は、接触点P
2と接触子104の中心O
1との距離はR
2である。
【0044】
ここで、接触子104が偏摩耗している場合には、R
1≠R
2となる。したがって、接触子104が偏摩耗している場合には、スタイラス102の姿勢を変更すると、測定結果がスタイラス102の姿勢に依存して変化してしまう。このように、再現性の高い測定が困難であるという問題点があった。
【0045】
<検出器の構成>
図7は、本実施形態に係る検出器24の構成の一例を示す図である。検出器24は、円筒状の検出器本体100、スタイラス102、接触子104、保持部106、回転軸108、測定部110、及びアーム部112を有する。
【0046】
検出器24は、スタイラス102が回転変位する際の接触子104の主たる変位方向(X方向)及び回転軸108に直交する軸である検出器軸aを有する。
【0047】
検出器本体100(本体部の一例)は、円筒形状であり、中心軸である本体軸bを有する。検出器本体100は、保持部106及び測定部110を収納している。なお、本実施形態において検出器軸aと本体軸bとは同軸上にある。
【0048】
保持部106は、スタイラス102を保持しており、回転軸108によって揺動自在に保持される。ここでは、保持部106は、図中紙面に垂直な(Y方向に平行な)回転軸108まわりに回転自在(揺動自在)に検出器本体100に軸支されている。また、スタイラス102は、不図示のバネにより図中左右方向に(検出器軸aに対して直交する方向に)付勢される。
【0049】
検出器本体100からは、保持部106によって保持されたスタイラス102が延出している。スタイラス102は、ワークWの表面に接触する接触子104を先端に支持している。スタイラス102と接触子104とを介在する部材を設けてもよい。
【0050】
スタイラス102は、接触子104を有する一端から図中上方向(検出器軸aと同方向)に延びる第1部分102Aと、第1部分102Aの他端において第1部分102Aと接続され、保持部106に保持される第2部分102Bとを有している。
【0051】
第1部分102Aの中心軸であるスタイラス軸cは、本体軸bとは平行である。また、スタイラス軸cは、検出器本体100の外周面の図中下方向(本体軸bと同方向)に沿った延長面である仮想延長面S上に配置されている。
【0052】
すなわち、保持部106は、スタイラス軸cと本体軸b(検出器軸a)とを平行に、かつスタイラス軸cと本体軸b(検出器軸a)とを本体軸b(検出器軸a)及び回転軸108に直交する方向(第1方向の一例)にオフセットしてスタイラス102の第1部分102Aを保持している。また、そのオフセット量は、検出器本体100の円筒形状の半径に等しい。
【0053】
第2部分102Bは、第1部分102Aと接続され、図中右方向へ延びる第3部分102Cと、第3部分102Cと接続され、図中上方向へ延びて保持部106に保持される第4部分102Dとを有している。ここでは、第1部分102Aと第2部分102Bとを一体に形成しているが、別部材としてもよい。
【0054】
接触子104は、図中右方向から左方向(X方向)に、ワークWに接触する。ワークWに対する接触子104の接触点は、仮想延長面Sに対して検出器本体100とは反対側に存在する。すなわち、本体軸bとワークWに対する接触子104の接触点との水平方向(第1方向)の距離は、本体軸bと検出器本体100の外周面との水平方向の距離よりも大きい。
【0055】
保持部106には、保持部106の回転に伴って変位するアーム部112が設けられている。スタイラス102の回転変位によって保持部106が回転変位し、この変位がアーム部112を介して測定部110に伝えられる。
【0056】
測定部110は、いわゆるてこ式検出器を用いている。測定部110は、アーム部112の変位量、すなわちスタイラス102の回転変位量に基づいて接触子104の図中左右方向の変位を不図示のセンサにおいて測定する。例えば、アーム部112が検出器軸aと平行になる位置における出力を0とし、
図7の右側にアーム部112が変位した場合にはプラスの値を出力し、左側にアーム部112が変位した場合にはマイナスの値を出力する。
【0057】
なお、ここでは測定部110が双方向型検出器の場合を示したが、これに限らず、片方向のみの検出機能を有する片方向型検出器で構成されてもよい。この場合、ワークWの測定面に対して接触子104を接触させる方向(向き)に応じて検出器24の向きを変更すればよい。
【0058】
このように構成された検出器24によれば、スタイラス102の姿勢変更を行うことなく、ワークWの細穴内側面の真円度測定、円柱外側面の測定、及び円筒内側面の測定を行うことができる。すなわち、
図8(A)に示すように、ワークWの細穴内側面の真円度測定において、スタイラス102とワークWが衝突することはなく、
図8(B)及び
図8(C)に示すように、ワークWの円柱外側面の測定及び円筒内側面の測定において、検出器本体100の下端100AとワークWが衝突することもない。
【0059】
したがって、複数の面を自動的に測定し、測定に要する時間を短縮することができる。
【0060】
また、ワークWに対する接触子104の接触点P
1(
図6(A)参照)が接触子104の常に同じ位置になるので、接触子104の摩耗による変化に対して高精度な測定を維持することができる。
【0061】
さらに、後述する円弧補正が一定となるため、高精度な測定を行うことができる。
【0062】
また、
図9は、第2の姿勢における検出器24付近の拡大図である。第2の姿勢では、検出器ホルダ22は、
図1(B)に示した状態から検出器24を90度回転させて、スタイラス軸cが検出器軸aから下方向にオフセットさせた状態で検出器24を保持している。
図9(A)に示すように、接触子104は、図中上方向から下方向に(検出器軸aに対して垂直に)、ワークWに接触する。スタイラス102の第1部分102Aは、接触子104からワークWの上面に沿って図中左方向へ(検出器軸aに対して同方向に)延びている。
【0063】
したがって、ワークWに対する接触子104の接触点P
3は、検出器本体100の外周面の図中右方向に沿った延長面である仮想延長面Sに対して検出器本体100とは反対側に存在する。
【0064】
このように構成された第2の姿勢の検出器24によれば、ワークWの上面だけでなく、
図9(B)に示すように、ワークWの細溝上下面を測定することも可能である。接触点P
3は常に同じ位置であるため、偏摩耗の影響もない。
【0065】
<検出器の他の実施形態>
図10〜
図12は、他の実施形態に係る検出器24の構成の一例を示す図である。なお、
図7に示した検出器24と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図10及び
図11に示す検出器24は、スタイラス102の形状がそれぞれ異なる。また、
図12に示す検出器24は、接触子104の形状がそれぞれ異なる。
【0066】
図10(A)に示す検出器24のスタイラス102は、第2部分102Bが図中右方向へ延びる第3部分102Cからなり、第3部分102Cが保持部106に保持される。
【0067】
図10(B)に示す検出器24のスタイラス102は、第1部分102Aが仮想延長面Sに対して保持部106側にあり、ワークWに対する接触子104の接触点は、仮想延長面Sに対して検出器本体100とは反対側に存在する。
【0068】
図10(C)に示す検出器24のスタイラス102は、第3部分102Cが、
図7に示す検出器24の第3部分102Cよりも長い。すなわち、
図7に示す検出器24よりもスタイラス軸cと本体軸bとのオフセット量が大きい。
【0069】
図11(A)に示す検出器24のスタイラス102は、第3部分102Cが、
図10(C)に示す検出器24の第3部分102Cよりもさらに長い。
【0070】
なお、ワークWに対する接触子104の接触点P
1(
図6(A)参照)の仮想延長面Sからの距離が大きくなると、後述する円弧補正の影響が大きくなるため、測定精度が低下する。したがって、接触点P
1は仮想延長面Sに対して検出器本体100の反対側に存在するとともに、仮想延長面Sからの距離はできるたけ小さい方が好ましい。
【0071】
図11(B)に示す検出器24のスタイラス102は、第3部分102Cが第1部分102Aから第4部分102Dへ向かって図中右上方向へ延びている。また、
図11(C)に示す検出器24のスタイラス102は、第3部分102Cが第1部分102Aから第4部分102Dへ向かって図中右下方向へ延びている。このように、第3部分102Cの延びる方向は、X方向と平行な方向でなくてもよい。
【0072】
図12(A)〜(D)に示す検出器24のスタイラス102は、第1部分102Aが仮想延長面Sに対して保持部106側にあり、接触子104の一部が仮想延長面Sに対して検出器本体100とは反対側に存在する。
【0073】
図12(A)に示す検出器24の接触子104は略球形状であり、
図7に示す検出器24の接触子104よりも直径が大きい。
【0074】
図12(B)に示す検出器24の接触子104は三角錐形状であり、その頂点が仮想延長面Sに対して検出器本体100とは反対側に存在する。ここでは、三角錐形状を用いたが、円錐形状又は多角錐形状であってもよい。
【0075】
図12(C)に示す検出器24の接触子104は円盤形状であり、
図12(D)に示す検出器24の接触子104は斧形状である。
【0076】
図10〜
図12に示した検出器24であっても、姿勢変更を行うことなく、ワークWの細穴内側面の真円度測定、円柱外側面の測定、及び円筒内側面の測定を行うことができる。したがって、複数の面を自動的に測定し、測定に要する時間を短縮することができる。
【0077】
また、検出器本体100の形状は、可能な限り直径の小さい円筒形状が望ましい。
図13は、
図8(C)に示すワークWの円筒内側面の測定の上面図である。
図13に示すように、ワークWの円筒内側に検出器本体100が入ることで、円筒内側面の奥(
図8(C)において下方向)までの測定が可能となる。
【0078】
なお、検出器本体100の形状は、多角柱形状、又は小突起のある円筒形状等でもよい。
【0079】
<円弧補正>
図14は、検出器24の円弧補正を説明するための図である。
【0080】
検出器24の静的なパラメータとして、接触子104の中心と回転軸108とを結ぶ直線と鉛直軸(Z方向)のなす角度をθ、回転軸108と測定部110との距離をL
D、接触子104の中心と回転軸108との距離をL
Sとする。
【0081】
また、接触子104のワークWとの接触によって生じる変位パラメータとして、測定部110によって観察されるX方向の変位をΔD、アーム部112の変位角をΔθ、接触子104の回転方向の変位をΔC、接触子104の変位のX方向成分をΔX、とする。
【0082】
検出器24は、測定部110によって観察されるX方向の変位ΔDから、接触子104の変位のX方向成分ΔXを求める。
【0083】
これらのパラメータに対して、以下の関係式が成立する
Δθ=ΔD/L
D …(式1)
Δθ=ΔC/L
S …(式2)
ΔX=ΔC×cosθ …(式3)
また、式1〜式3により、以下の式が成立する。
【0084】
ΔX=ΔD×(L
S/L
D)×cosθ …(式4)
ここで、cosθが円弧補正の項である。
【0085】
測定部110として、てこ式検出器を使用する場合、接触子104は直線運動では無く、正確には円運動を行う。この円運動に起因する効果を補正(円弧補正)する事で、より高精度に測定を実施する事ができる。
【0086】
従来の検出器24では、この円弧補正をスタイラス102の姿勢変更に応じて実施する必要があり、特に手動で姿勢変更を実施する場合においては、設定角度の違いに応じて円弧補正をその都度実施する必要があった。
【0087】
本実施形態における検出器24によれば、スタイラス102の姿勢変更を実施する必要は無く、常に同じ円弧補正を実施する事でより高精度な測定が容易に実現できる。
【0088】
<平行リンク機構検出器>
ここまでは、測定部110として、てこ式検出器を用いた場合について説明したが、測定部110はてこ式検出器に限定されない。例えば、平行リンク機構検出器を用いることも可能である。
【0089】
図15は、測定部110として平行リンク機構を用いた検出器24の構成の一例を示す図である。
【0090】
図15に示すように、検出器24は、円筒状の検出器本体100、スタイラス102、接触子104、回転軸120A、120B、120C、120D、固定リンク122、可動リンク124A、124B、揺動リンク126、及び変位センサ128を有する。
【0091】
検出器本体100はZ方向に沿った円筒形状を有している。スタイラス102は、検出器本体100の内部において不図示のバネにより図中左方向に付勢される。
【0092】
検出器本体100からは、スタイラス102が延出している。スタイラス102は、先端に接触子104を有している。
【0093】
スタイラス102は、接触子104から図中上方向へ(検出器軸aと同方向に)延びる第1部分102Aと、第1部分102Aと接続され、揺動リンク126に保持される第2部分102Bとを有している。
【0094】
第1部分102Aは、検出器本体100の外周面の図中下方向に沿った延長面である仮想延長面S上に延びている。また、第2部分102Bは、第1部分102Aと接続され、図中右方向へ延びる第3部分102Cと、第3部分102Cと接続され、図中上方向へ延びて保持部106に保持される第4部分102Dとを有している。
【0095】
接触子104は、図中右方向から左方向に、ワークWに接触する。ワークWに対する接触子104の接触点は、仮想延長面Sに対して検出器本体100とは反対側に存在する。
【0096】
固定リンク122は、両端に設けられた一対の回転軸120A及び120Bに固定されている。回転軸120A及び120Bには、一対の可動リンク124A及び124Bの一端がそれぞれ回動自在に支持されている。
【0097】
可動リンク124A及び124Bの他端には、回転軸120C及び120Dが設けられる。揺動リンク126は、回転軸120C及び120Dに両端を揺動自在に軸支される。揺動リンク126は、スタイラス102の第4部分102Dを保持する保持部106として機能する。したがって、ワークWに対する接触子104の接触点は、仮想延長面Sに対して検出器本体100とは反対側に存在する。
【0098】
変位センサ128は、揺動リンク126の揺動量に基づいて接触子104の図中左右方向の変位を測定する測定部110として機能する。
図16に示すように、接触子104がX方向に変位すると、固定リンク122、可動リンク124A及び124B、及び揺動リンク126とからなる形状を平行四辺形に維持しながら揺動リンク126がX方向に揺動する。変位センサ128は、この揺動リンク126の揺動量に基づいて接触子104の図中左右方向の変位を測定する。
【0099】
このように、平行リンク機構を用いた検出器24によっても、ワークWに対する接触子104の接触点が仮想延長面Sに対して検出器本体100とは反対側に存在するため、スタイラス102の姿勢変更を行うことなく、ワークWの細穴内側面の真円度測定、円柱外側面の測定、及び円筒内側面の測定を行うことができる。したがって、複数の面を自動的に測定し、測定に要する時間を短縮することができる。
【0100】
また、ワークWに対する接触子104の接触点P
1(
図6(A)参照)が接触子104の常に同じ位置になるので、接触子104の摩耗による変化に対して高精度な測定を維持することができる。
【0101】
<真円度測定機に特有の効果>
これまで説明した検出器24は、表面性状測定機に適用することができるが、特に真円度測定機に用いることで、以下の特有の効果を奏する。
【0102】
検出器軸a及びスタイラス102の第1部分102Aが延びる方向をワークWの回転ステージ14の回転方向(検出器回転型では検出器24の回転軸)と略平行な姿勢で測定を実施することで、細穴の測定が可能となる。特に、比較的小さな内径で深い位置の測定が可能であり、さらに外径の測定が可能である。
【0103】
検出器軸a及びスタイラス102の第1部分102Aが延びる方向を回転ステージ14の回転方向(検出器回転型では検出器24の回転軸)と略垂直な姿勢で測定を実施することで、ワークWの側面の細溝及び上面の測定が可能である。
【0104】
また、真円度測定機10では、測定位置を円筒形状のワークWの中心を通る線上で実施する必要があるが、この点についても以下のように特有の効果を奏する。
【0105】
図17は、
図8(B)に示すワークWの円柱外側面の測定の上面図である。
図17に示すように、ワークWに対する接触子104の接触点P
4は、ワークWの中心O
2を通り、かつX方向に平行な直線Lの線上に存在する。
【0106】
ここで、従来の検出器24を用いた場合であって、スタイラス102の姿勢変更軸が直線Lに対して傾斜している場合について、
図18を用いて説明する。
【0107】
図18(A)は、
図5(A)に示すワークWの円柱外側面の測定の上面図である。
図18(A)に示すように、ワークWに対する接触子104の接触点P
5は、ワークWの中心O
2を通り、かつX方向に平行な直線Lの線上に存在する。
【0108】
一方、
図18(B)は、
図3(C)に示すワークWの円柱内側面の測定の上面図である。ここではスタイラス102の姿勢変更軸が直線Lに対して傾斜しているため、
図18(B)に示すように、ワークWに対する接触子104の接触点P
6は、直線Lの線上から外れた位置となる。
【0109】
このように、スタイラス102の姿勢変更軸が直線Lに対して傾斜している場合には、スタイラス102の姿勢変更によって測定位置が変化してしまうという問題があった。
【0110】
これに対し、本実施形態に係る検出器24を用いた場合であって、スタイラス102の第2部分102BのXY平面に延びる方向が直線Lに対して傾斜している場合について、
図19を用いて説明する。
【0111】
図19(A)は、
図8(B)に示すワークWの円柱外側面の測定の上面図である。
図19(A)に示すように、ワークWに対する接触子104の接触点P
7は直線Lの線上に存在する。
【0112】
また、
図19(C)は、
図8(C)に示すワークWの円柱内側面の測定の上面図である。
図19(A)に示す検出器24の位置からX方向に平行に移動しているため、
図19(B)に示すように、ワークWに対する接触子104の接触点P
8は、直線Lの線上に存在する。
【0113】
このように、スタイラス102の姿勢変更を不要としたことで、測定位置が変化するという不定性がない。したがって、測定位置調整の時間を削減できるとともに、測定精度を向上することができる。
【0114】
<その他>
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。
【解決手段】測定対象物の表面に接触する接触子104を支持するスタイラス102と、スタイラス102を保持する保持部106と、保持部106を回転軸108によって揺動自在に保持し、保持部106の変位を検出する測定部110と、測定部110を収納する本体部と、を備え、保持部106は、スタイラス102の軸であるスタイラス軸cと本体部の軸である本体軸bとを平行に、かつスタイラス軸cと本体軸bとを本体軸b及び回転軸108に直交する第1方向にオフセットしてスタイラス102を保持する検出器24を備える。