特許第6369323号(P6369323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369323
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】検知ローラおよび紙葉類厚み検出装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20180730BHJP
   G07D 7/16 20160101ALI20180730BHJP
   G07D 9/00 20060101ALI20180730BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20180730BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B65H5/06 C
   G07D7/16
   G07D9/00 403C
   B65H7/02
   F16C13/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-257349(P2014-257349)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-117545(P2016-117545A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】清水 政之
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 和也
(72)【発明者】
【氏名】船橋 博美
(72)【発明者】
【氏名】三星 剛
(72)【発明者】
【氏名】平山 済
(72)【発明者】
【氏名】中山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】城戸 保
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−246107(JP,A)
【文献】 特開2000−118778(JP,A)
【文献】 特開平09−058884(JP,A)
【文献】 特開平11−095025(JP,A)
【文献】 特開平07−334024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B65H 7/02
F16C 13/00
G07D 7/16
G07D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される紙葉類の厚みを検出する紙葉類厚み検出装置において、回転可能に支持される基準ローラに当接した状態で配置され、回転可能に、かつ前記基準ローラとの間に搬送される紙葉類の厚みに応じて変位可能に支持される検知ローラであって、
ゴム組成物から形成される内輪と、前記内輪の外周を被覆し、前記内輪よりも剛性の高い材料から形成される外輪と備え、
前記ゴム組成物が、ジメチルシリコーンゴムおよびフェニル基含有シリコーンゴムを含むゴム成分と、フェニル基含有シリコーンオイルとを含有する、検知ローラ。
【請求項2】
前記フェニル基含有シリコーンオイルの25℃での粘度が20mPa・s以上10000mPa・s以下である、請求項1に記載の検知ローラ。
【請求項3】
前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して前記フェニル基含有シリコーンオイルを2質量部以上20質量部以下含有する、請求項1又は2に記載の検知ローラ。
【請求項4】
前記ゴム組成物が、前記ゴム成分を100質量部としたとき、前記フェニル基含有シリコーンゴムを30質量部以上50質量部以下含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の検知ローラ。
【請求項5】
反発弾性が45%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の検知ローラ。
【請求項6】
回転可能に支持される基準ローラと、
前記基準ローラに当接して配置され、回転可能に、かつ前記基準ローラとの間に搬送される紙葉類の厚みに応じて変位可能に支持される検知ローラと、
前記検知ローラの紙葉類の厚みに応じて変位する変位量を検出する変位センサと、を備える、搬送される紙葉類の厚みを検出する紙葉類厚み検出装置であって、
前記検知ローラが、ゴム組成物から形成される内輪と、前記内輪の外周を被覆し、前記内輪よりも剛性の高い材料から形成される外輪と備え、
前記ゴム組成物が、ジメチルシリコーンゴムおよびフェニル基含有シリコーンゴムを含むゴム成分と、フェニル基含有シリコーンオイルとを含有する、紙葉類厚み検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣などの紙葉類の厚みを検出する紙葉類厚み検出装置に用いられる検知ローラおよび紙葉類厚み検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動預払機(ATM)や現金自動支払機(CD)には、預入される紙幣または支払われる紙幣の枚数確定ならびに紙幣金種および真偽の判定のために、紙葉類の厚みを検出する紙葉類厚み検出装置が設けられている。
【0003】
紙葉類厚み検出装置では、基準ローラと検知ローラとが対向するように配置されており、これらの間に紙葉類が搬送されたときに、紙葉類の厚みに応じて変位する検知ローラの変位量から、紙葉類の厚みが検出される(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
検知ローラは、例えば、ゴム等の弾性材料からなる内輪と、内輪の外周を被覆し、内輪よりも剛性の高い金属等の材料からなる外輪と、を備えて構成される。検知ローラは、弾性を有する内輪により基準ローラに押圧された状態で配置されるが、基準ローラとの間に紙葉類が搬送されたときには、紙葉類の厚みにより内輪が弾性変形することで、紙葉類の厚みの分だけ変位することができる。
【0005】
内輪に所望の弾性を付与する観点から、内輪の弾性材料としては例えばシリコーンゴム等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−226859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、シリコーンゴムからなる内輪は反発弾性が高いため、このような内輪を備える検知ローラは、基準ローラとの間に紙葉類を搬送させたときに急激に跳ね上がり、その反動により振動してしまうことがある。この場合、検知ローラの外輪の変位量が精度よく検出できず、紙葉類の枚数を正確に把握することが困難となる。
【0008】
そこで、本発明は、反発弾性が低く、紙葉類の厚みに応じて変位したときに振動が生じにくい検知ローラ、およびそれを備える紙葉類厚み検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、
搬送される紙葉類の厚みを検出する紙葉類厚み検出装置において、回転可能に支持される基準ローラに当接した状態で配置され、回転可能に、かつ前記基準ローラとの間に搬送される紙葉類の厚みに応じて変位可能に支持される検知ローラであって、
ゴム組成物から形成される内輪と、前記内輪の外周を被覆し、前記内輪よりも剛性の高い材料から形成される外輪と備え、
前記ゴム組成物が、ジメチルシリコーンゴムおよびフェニル基含有シリコーンゴムを含むゴム成分と、フェニル基含有シリコーンオイルとを含有する、検知ローラが提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、
回転可能に支持される基準ローラと、
前記基準ローラに当接して配置され、回転可能に、かつ前記基準ローラとの間に搬送される紙葉類の厚みに応じて変位可能に支持される検知ローラと、
前記検知ローラの紙葉類の厚みに応じて変位する変位量を検出する変位センサと、を備える、搬送される紙葉類の厚みを検出する紙葉類厚み検出装置であって、
前記検知ローラが、ゴム組成物から形成される内輪と、前記内輪の外周を被覆し、前記内輪よりも剛性の高い材料から形成される外輪と備え、
前記ゴム組成物が、ジメチルシリコーンゴムおよびフェニル基含有シリコーンゴムを含むゴム成分と、フェニル基含有シリコーンオイルとを含有する、紙葉類厚み検出装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反発弾性が低く、紙葉類の厚みに応じて変位したときに振動が生じにくい検知ローラ、およびそれを備える紙葉類厚み検出装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る紙葉類厚み検出装置の構成概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る検知ローラの断面図である。
図3】検知ローラが紙葉類の厚みに応じて変位する場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1.紙葉類厚み検出装置の概要>
以下、検知ローラ、および紙葉類厚み検出装置について図を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る紙葉類厚み検出装置の構成概略図である。図2は、本発明の一実施形態に係る検知ローラの断面図である。図3は、検知ローラが紙葉類の厚みに応じて変位するときを説明する図である。
【0014】
紙葉類厚み検出装置1(以下、単に検出装置1ともいう)は、回転可能に支持される基準ローラ10と、基準ローラ10に当接して配置され、回転可能に、かつ基準ローラ10との間に搬送される紙葉類の厚みに応じて変位可能に支持される検知ローラ20と、検知ローラ20の紙葉類の厚みに応じて変位する変位量を検出する変位センサ30と、を備える。
【0015】
基準ローラ10は、検出装置1に固定された第1シャフト11により回転可能に支持されている。第1シャフト11には、駆動源(図示略)が連結されており、第1シャフト11が回転駆動されることにより、基準ローラ10が回転する。基準ローラ10は、その外周面が変位しないように、例えば金属で構成されており、紙葉類の厚みを測定する際の基準面となる。
【0016】
検知ローラ20は、第1シャフト11と略平行である第2シャフト21により回転可能に支持されており、図2に示すように、第2シャフト21の外周に、ゴム組成物から形成される内輪22と、内輪22の外周を被覆し、内輪22よりも剛性の高い材料(例えば金属など)から形成される外輪23と、を備えている。検知ローラ20は、弾性を有する内輪22により基準ローラ10に押圧され、基準ローラ10と当接した状態となるように配置される。当接する基準ローラ10が駆動源により回転されることによって、検知ローラ20は従動回転する。
【0017】
検知ローラ20は、図3に示すように基準ローラ10と検知ローラ20との間に紙葉類40が搬送されたときに、紙葉類40の厚みにより内輪22が弾性変形することで、紙葉類40の厚みに応じて上方(基準ローラ10から検知ローラ20へ向かう方向)に、紙葉類40の厚みの分だけ変位することができる。上述したように、検知ローラ20は、紙葉類40により急激に跳ね上がったときに、その反動によって振動するおそれがあるが、本実施形態においては、検知ローラ20の内輪22が、後述するゴム組成物から形成されて、反発弾性が低くなるように構成されているため、検知ローラ20の振動が抑制されることになる。
【0018】
変位センサ30は、検知ローラ20の上方に配置され、検知ローラ20が紙葉類40の厚みに応じて変位したときの変位量を検出するものである。具体的には、変位センサ30は、基準ローラ10に押圧された状態の検知ローラ20(図3中の点線で示す)が紙葉類40の厚みに応じて変位したときの変位量dを測定し、その変位量dを紙葉類40の厚みとして検出する。変位センサ30としては、光学式センサ、磁気式センサまたは電気式センサ等を用いることができる。
【0019】
<2.検知ローラ>
検知ローラ20は、図2に示すように、第2シャフト21の外周上に、ゴム組成物から形成される内輪22と、内輪22の外周を被覆し、内輪22よりも剛性の高い材料から形成される外輪23と、を備えている。
【0020】
本実施形態では、検知ローラ20の振動を抑制する観点から内輪22を反発弾性が低くなるように構成するため、内輪22を形成するゴム組成物にシリコーンオイルを含有させる。シリコーンオイルは可塑剤であり、ゴム組成物の反発弾性を低く抑制する作用を有する。ただし、一般に、ゴム組成物にシリコーンオイルを含有させても、ゴム組成物に含まれるゴム成分とシリコーンオイルとの相溶性が低いことに起因して、シリコーンオイルがゴム組成物からブリード(溶出)してしまうことがある。その結果、ゴム組成物から形成される内輪22においては、シリコーンオイルによる効果を得られず、反発弾性が高くなってしまう。このことから、本実施形態では、ブリードによる特性の低下を抑制するため、ジメチルシリコーンゴムおよびフェニル基含有シリコーンゴムを含むゴム成分と、このゴム成分と相溶性に優れるフェニル基含有シリコーンオイルと、を用いる。以下、各成分について説明する。
【0021】
ジメチルシリコーンゴムは、主鎖がシロキサン結合(−Si−O−)で構成され、側鎖の全てがメチル基であるポリシロキサンである。ジメチルシリコーンゴムは、反発弾性が高く、フェニル基含有シリコーンゴムと比較して柔らかく、低硬度である。
【0022】
フェニル基含有シリコーンゴムは、ジメチルシリコーンゴムの側鎖の一部がフェニル基に置換されたポリシロキサンである。フェニル基含有シリコーンゴムは、反発弾性が低く、ジメチルシリコーンゴムと比較して硬く、高硬度である。
【0023】
これら2種のシリコーンゴムを含有するゴム成分は、反発弾性が低く、かつフェニル基含有シリコーンオイルとの相溶性が高くなるように構成される。また、ゴム成分は、硬度の異なるシリコーンゴムを含有することにより、硬度が所望の範囲となるように構成される。すなわち、このゴム成分によれば、内輪22の反発弾性を低下させ、検知ローラ20の振動を抑制できるとともに、内輪22を適度な硬度として検知ローラ20の所定圧力による変位量を適度な範囲に設定できる。
【0024】
ゴム成分において、ジメチルシリコーンゴムとフェニル基含有シリコーンゴムとの配合比率は、特に限定されないが、これらの合計を100質量部としたとき、フェニル基含有シリコーンゴムの含有量が30質量部以上50質量部以下であることが好ましい。このような含有量とすることにより、検知ローラ20の振動を抑制するとともに、内輪22を適度な硬度として、検知ローラ20の所定圧力による変位量を適度な範囲に設定することができる。
【0025】
フェニル基含有シリコーンオイルは、側鎖の一部がフェニル基に置換された25℃で液状の成分であって、内輪22の反発弾性を低下させ、検知ローラ20の振動を抑制できる。また、内輪22の硬度を低下させ、検知ローラ20の所定圧力による変位量を大きくすることができる。さらに、内輪22の圧縮永久ひずみを小さくできるので、検知ローラ20に基準ローラ10を押圧した状態で長時間放置した場合であっても、内輪22の変形を抑制することができる。なお、シリコーンオイルとしては、フェニル基含有シリコーンオイル以外に、ジメチルシリコーンオイル等があるが、これらのオイルは、上述のゴム成分との相溶性が低いため、ブリードしやすく、内輪22の反発弾性を低くすることが困難であるばかりか、圧縮永久ひずみを抑制することが困難である。
【0026】
フェニル基含有シリコーンオイルの粘度は、ゴム成分との相溶性の観点からは25℃で20〜10000mPa・sの範囲であることが好ましい。このような粘度のシリコーンオイルを用いることにより、そのブリードを抑制し、内輪22の反発弾性を低く抑制することができる。また、所定の粘度のシリコーンオイルはべたつきが小さく、取り扱い性に優れているため、このようなシリコーンオイルを含むゴム組成物を用いることにより内輪22を生産性よく形成することができる。
【0027】
フェニル基含有シリコーンオイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上20質量部以下である。含有量が2質量部未満であると、内輪22の反発弾性を十分に低下させることができず、検知ローラ20の振動を十分に抑制できないおそれがある。一方、含有量が20質量部を超えると、反発弾性を低下させることができるものの、過剰量の分がブリードすることとなり、紙葉類などを汚すおそれがある。
【0028】
以上のように、本実施形態の検知ローラ20は、反発弾性の低い内輪22を備えているので、基準ローラ10との間に紙葉類40が搬送されたときに、振動しにくいように、もしくは振動したとしても振動がすぐに減衰するように構成されている。具体的には、例えば内輪22の厚さが4mmのときに、内輪22の反発弾性を45%以下に抑制することができる。そのため、本実施形態の検知ローラ20を備える紙葉類厚み検出装置1によれば、紙葉類40の厚みを精度よく検出することができ、その枚数を正確に把握することができる。
【0029】
また、内輪22は、反発弾性の低いゴム組成物から形成されているため、厚さが2mmと薄い場合であっても、反発弾性を45%以下の範囲に維持することができる。そのため、内輪22を薄くすることで検知ローラ20を小径化することができる。
【0030】
また、内輪22は、硬度の異なる2種のシリコーンゴムとフェニル基含有シリコーンオイルとを含有するゴム組成物から形成されているため、適度な硬度に調整されており、所定の圧力によって適度に弾性変形することができる。しかも、内輪22は、圧縮永久ひずみが小さくなるように構成されているので、基準ローラ10に押圧された状態で長時間放置された場合であっても、変形しにくい。
【0031】
なお、内輪22は、例えば、溶融したゴム組成物を金型内に注入し、冷却することにより形成することができる。
【0032】
また、内輪22を形成するゴム組成物には、架橋させるために、加硫剤および架橋助剤を含有させてもよい。
加硫剤としては、硫黄、硫黄化合物、硫黄以外の無機加硫剤、ポリアミン、樹脂加硫剤、オキシム類、ニトロソ化合物、トリアジン系、パーオキサイド系等が挙げられる。これらを1種単独で、もしくは2種以上を併用して用いることができる。
加硫助剤としては、上述の加硫剤と併用できるものであれば特に限定されない。例えば、金属酸化物、金属炭酸、アミン類、グアニジン系、アルデヒドアミン系、アルデヒドアンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系、アリル化合物、マレイミド類、メタクリレート類、ジビニル化合物等を用いることができる。これらを1種単独で、もしくは2種以上を併用して用いることができる。
【0033】
また、ゴム組成物には、無機充填剤を含有させてもよい。無機充填剤としては、乾式または湿式シリカやカーボン微粒子などを用いることができる。シリコーンオイルのブリードを抑制する観点からは、乾式シリカを用いることが好ましい。乾式シリカによれば、シリコーンオイルを好適に吸着させ、そのブリードを抑制することができる。
【0034】
また、ゴム組成物には、その他の添加剤として、例えば、可塑剤、老化防止剤(酸化防止剤)、安定剤などを含有させてもよい。
【実施例】
【0035】
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0036】
(1)ゴム組成物の調製
(実施例1)
実施例1では、以下の表1に示すように、フェニル基含有シリコーンゴム30質量部およびジメチルシリコーンゴム70質量部を混合したゴム成分100質量部に、可塑剤であるフェニル基含有シリコーンオイル(25℃における粘度;20mPa・s)を5質量部と、架橋剤であるベンゾイルパーオキサイドを1.0質量部と、充填剤である湿式シリカ(BET比表面積;200m/g)を5質量部とを配合し、混合することにより、実施例1のゴム組成物を得た。
【0037】
【表1】
【0038】
(実施例2)
実施例2では、フェニル基含有シリコーンオイルの配合量を10質量部とした以外は、実施例1と同様に、ゴム組成物を調製した。
【0039】
(実施例3〜6)
実施例3〜6では、フェニル基含有シリコーンオイルの粘度を、表1に示すように、適宜変更した以外は、実施例1と同様に、ゴム組成物を調製した。
【0040】
(実施例7)
実施例7では、フェニル基含有シリコーンゴムおよびジメチルシリコーンゴムの配合量をそれぞれ50質量部に変更した以外は、実施例1と同様に、ゴム組成物を調製した。
【0041】
(比較例1)
比較例1では、フェニル基含有シリコーンオイルを配合せずに、フェニル基含有シリコーンゴムを20質量部、ジメチルシリコーンゴムを80質量部用いた以外は、実施例1と同様にゴム組成物を調製した。
【0042】
(比較例2〜4)
比較例2〜4では、表1に示すように、フェニル基含有シリコーンオイルの代わりに、所定粘度のジメチルシリコーンオイルに変更した以外は、実施例1と同様にゴム組成物を調製した。
【0043】
(2)検知ローラの作製
調製したゴム組成物を射出形成機に供給し、射出形成機にてゴム組成物を混練しながら加熱して溶融させ、溶融したゴム組成物を型内に注入し、冷却して固化させた。その後、型を取り外すことにより、円筒状の内輪を得た。本実施例では、厚さが4mmの内輪を形成した。
続いて、円筒状の内輪の孔に、第2シャフト21としてのステンレス製シャフトを圧入して挿通させ、さらに外輪としてのステンレス製筒をはめ込むことにより、検知ローラを作製した。
【0044】
(3)評価方法
検知ローラについて、以下の方法により評価した。
【0045】
(反発弾性)
反発弾性は、上記で得られたゴム組成物を用いて、内輪を模擬した厚さ4mmの試験片を作製した後、この試験片に対して、JIS K6255に準拠してリュプケ式反発弾性装置を用いた試験を実施し、そのときの反発弾性を求めた。本実施例では、反発弾性が45%以下であれば、合格とした。
【0046】
(圧縮永久歪み)
圧縮永久歪みは、上記で得られたゴム組成物を用いて、内輪を模擬した試験片を作製した後、この試験片に、JIS K6262に準拠して試験温度70℃、試験時間24時間の条件で圧縮率が25%となるように圧縮試験を実施し、そのときの圧縮永久歪みを求めた。本実施例では、圧縮永久歪みが15%以下であれば合格とし、15%を超えるようであれば不合格とした。
【0047】
(硬さ)
硬さは、上記で得られたゴム組成物を用いて、内輪を模擬した試験片を作製し、その試験片の硬度をデュロメータで測定した。本実施例では、硬さが15〜30の範囲内であれば、合格とした。硬さが15未満であると、所定の圧力による変位量が過度に小さくなり、30を超えると、変位量が過度に大きくなってしまうため、不合格とした。
【0048】
(たわみ量)
たわみ量は、検知ローラに、速度0.5mm/min、圧力200〜500gfの範囲で部材を押圧させたときの、内輪の弾性変形による変位量を測定した。本実施例では、たわみ量が0.1mm〜0.3mmの範囲内であれば合格(○)とし、それ以外の範囲であれば不合格(×)とした。
【0049】
(ブリードの有無)
ブリードは、検知ローラの内輪からオイル成分などが溶出していないかを調べ、オイル成分が溶出していなければ合格(○)とし、溶出していれば不合格(×)とした。
【0050】
(回転試験)
回転試験では、作製した検知ローラを紙葉類厚み検出装置に組み込み、厚さ0.1mmの模擬試験紙を速度1000mm/sで搬送させ、その厚みを正確に検知できるかどうか、を評価した。正確に検知できれば、合格(○)とし、振動により厚みを正確に検知できない、もしくは検知に時間がかかるようであれば、不合格(×)とした。
【0051】
(4)評価結果
表1に示すように、実施例1〜7では、反発弾性、圧縮永久歪みおよび硬さが合格であり、また、たわみ量が適度な数値範囲内であって、回転試験を行ったときに紙葉類の厚みを正確に検知できることが確認された。しかも、内輪からのオイル成分のブリードが確認されなかった。
【0052】
一方、比較例1では、フェニル基含有シリコーンオイルを含有させなかったため、反発弾性を十分に低くすることができず、46%と高かった。また、硬さが14と低く、たわみ量が大きくなってしまうことが確認された。そのため、回転試験において紙葉類の厚みを正確に検知することができないことが確認された。
【0053】
比較例2〜4では、フェニル基含有シリコーンオイルの代わりに、ジメチルシリコーンオイルを用いたものの、反発弾性を十分に低くすることができず、回転試験において、厚みを正確に検知できないことが確認された。さらに、比較例4では、厚みを正確に検知できないばかりか、ブリードが発生したため、紙葉類が汚れてしまうことが確認された。
【0054】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0055】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
搬送される紙葉類の厚みを検出する紙葉類厚み検出装置において、回転可能に支持される基準ローラに当接した状態で配置され、回転可能に、かつ前記基準ローラとの間に搬送される紙葉類の厚みに応じて変位可能に支持される検知ローラであって、
ゴム組成物から形成される内輪と、前記内輪の外周を被覆し、前記内輪よりも剛性の高い材料から形成される外輪と備え、
前記ゴム組成物が、ジメチルシリコーンゴムおよびフェニル基含有シリコーンゴムを含むゴム成分と、フェニル基含有シリコーンオイルとを含有する、検知ローラが提供される。
【0056】
[付記2]
付記1の検知ローラであって、好ましくは、
前記フェニル基含有シリコーンオイルの25℃での粘度が20mPa・s以上10000mPa・s以下である。
【0057】
[付記3]
付記1又は2の検知ローラであって、好ましくは、
前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して前記フェニル基含有シリコーンオイルを2質量部以上20質量部以下含有する。
【0058】
[付記4]
付記1〜3のいずれかの検知ローラであって、好ましくは、
前記ゴム組成物が、前記ゴム成分を100質量部としたとき、前記フェニル基含有シリコーンゴムを30質量部以上50質量部以下含有する。
【0059】
[付記5]
付記1〜4のいずれかの検知ローラであって、好ましくは、
反発弾性が45%以下である。
【0060】
[付記6]
本発明の他の態様によれば、
回転可能に支持される基準ローラと、
前記基準ローラに当接して配置され、回転可能に、かつ前記基準ローラとの間に搬送される紙葉類の厚みに応じて変位可能に支持される検知ローラと、
前記検知ローラの紙葉類の厚みに応じて変位する変位量を検出する変位センサと、を備える、搬送される紙葉類の厚みを検出する紙葉類厚み検出装置であって、
前記検知ローラが、ゴム組成物から形成される内輪と、前記内輪の外周を被覆し、前記内輪よりも剛性の高い材料から形成される外輪と備え、
前記ゴム組成物が、ジメチルシリコーンゴムおよびフェニル基含有シリコーンゴムを含むゴム成分と、フェニル基含有シリコーンオイルとを含有する、紙葉類厚み検出装置が提供される。
【符号の説明】
【0061】
1 紙葉類厚み検出装置
10 基準ローラ
11 第1シャフト
20 検知ローラ
21 第2シャフト
22 内輪
23 外輪
30 変位センサ
図1
図2
図3