特許第6369405号(P6369405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6369405-半導体封止用熱硬化性樹脂組成物 図000021
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369405
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】半導体封止用熱硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/04 20060101AFI20180730BHJP
   C08L 61/14 20060101ALI20180730BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20180730BHJP
   C08K 5/315 20060101ALI20180730BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20180730BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   C08L79/04
   C08L61/14
   C08K9/06
   C08K5/315
   H01L23/30 F
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-135799(P2015-135799)
(22)【出願日】2015年7月7日
(65)【公開番号】特開2017-14472(P2017-14472A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(72)【発明者】
【氏名】隅田 和昌
(72)【発明者】
【氏名】串原 直行
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−076542(JP,A)
【文献】 特開2015−044939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 5/00− 5/59
C08K 9/00− 9/12
C08L 61/00−61/34
H01L 23/00−23/66
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)成分を含む半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。

(A)下記式(1)
【化1】
(式(1)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R3は下記式(2)〜(5)からなる群から選択される2価の連結基であり、n=0又は1の整数である)
【化2】

で表されるJIS K7117−1:1999記載の方法で、B型回転粘度計を用いて測定した23℃における粘度が50Pa・s以下である1分子中に2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル化合物
及び
式(1)以外の2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル化合物
の混合物(ただし、(A)成分において、式(1)で表されるシアネートエステル化合物が、(A)成分全体の配合量に対して、90質量%以上100質量%未満である。)

(B)下記式(6)で表されるレゾルシノール型フェノール樹脂を含むフェノール硬化剤
【化3】

(式(6)中、nは0以上10以下の整数を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリル基及びビニル基からなる群から選択される1価の基を表す)

(C)硬化促進剤

(D)レーザー回折法で測定した平均粒径が1〜20μmの球状であり、下記式(7)で表されるシランカップリング剤で表面処理された無機質充填材
【化4】
(式(7)中、R1はメチル基又はエチル基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基であり、R3は下記式(8)〜(11)で表される含窒素官能基からなる群から選択される基であり、aは0〜3の整数である)
【化5】
(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して1,200〜2,200質量部
【請求項2】
前記(B)成分において、式(6)で表されるレゾルシノール型フェノール樹脂が(B)成分全体の配合量に対して、10質量%以上100質量%以下であり、かつ、(B)成分のフェノール硬化剤中の水酸基1当量に対して(A)成分のシアネートエステル化合物中のシアナト基が0.5〜100当量である請求項1に記載の半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
JIS K 7197:2012に記載の方法に基づいて、5×5×15mmの試験片を用いて、昇温5℃/分、荷重19.6mNで測定したときの線膨張係数が3.0〜5.0ppm/℃の範囲である請求項1又は2に記載の半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
1個以上の半導体素子を載置した面積200〜1500cm2のシリコンウエハー又は基板全体を、請求項1〜のいずれか1項に記載の半導体封止用熱硬化性樹脂組成物の硬化物で一括封止する工程を有し、かつ、封止後のシリコンウエハー又は基板の反り量が2mm以下である樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項5】
一括封止する工程において、半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を押圧下に被覆するか、又は真空雰囲気下で減圧被覆し、該樹脂組成物を加熱硬化して半導体素子を封止する請求項に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用熱硬化性樹脂組成物、及び該樹脂組成物で封止した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置は目覚しい技術革新を迎えている。スマートフォン、タブレットなどの携帯情報、通信端末は大容量の情報を高速で処理できるように、TSV(through silicon via(スルー・シリコン・ビア))技術を用いて半導体素子を多層接続し、8インチないし12インチのシリコンインターポーザーにフリップチップ接続した後、熱硬化樹脂により、多層接続された半導体素子が複数個搭載されたインターポーザーごとに封止する。半導体素子上の不要な硬化樹脂を研磨した後、個片化し、薄型で小型、多機能かつ高速処理可能な半導体装置を得ることができる。
【0003】
8インチ程度の小径ウエハーなどの基板を使用した場合は現状でも大きな問題もなく封止成形できる。しかし、12インチ以上、近年では20インチウエハーや、20インチを超えるパネルの成形では、封止後エポキシ樹脂などの収縮応力が大きいため、半導体素子が金属などの基板から剥離するという問題があり、量産化できない。ウエハーやガラス基板、金属基板の大口径化にともなう上記のような問題を解決するには、樹脂にフィラーを90質量%以上充填したり、樹脂の低弾性化で硬化時の収縮応力を小さくしたりすることが必要であった(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、シリコンインターポーザー上に熱硬化樹脂を全面封止した場合、シリコンと熱硬化性樹脂の熱膨張係数の違いから大きな反りが発生する。反りが大きいとその後の研磨工程や個片化工程に適用することができないため、反りの防止が大きな技術課題となっている。更に近年では、半導体素子の積層化に伴って、封止層が厚くなるため、封止した樹脂層を研磨して薄型にした半導体装置が主流となってきている(特許文献2)。
【0005】
従来、エポキシ樹脂と酸無水物やフェノール樹脂などの硬化剤を用いた組成物に、フィラーを85質量%以上充填し、応力緩和のためにゴムや熱可塑性樹脂を配合した封止材が使用されてきた。このような組成物では、3Dパッケージングの工程による熱履歴から、反りが変化し、この反りにより、半導体素子が損傷したり、ウエハー自体が割れたりしてしまう問題が生じている。一方、従来のシリコーン化合物に代表される低弾性樹脂の材料では樹脂がやわらかいため、研磨の際に樹脂つまりが発生したり、信頼性試験において樹脂クラックが生じたりする問題があった(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−209453号公報
【特許文献2】特開2014−229771号公報
【特許文献3】特開平11−289034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、半導体装置を封止した場合に、耐水性、研磨性が良好であり、大型ウエハーを用いて封止しても、流動性が優れており、反りが小さく、汎用性の高い半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定のシアネートエステル化合物と、特定のフェノール硬化剤と、特定の無機質充填材とを組合せた熱硬化性樹脂組成物が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は、下記の半導体封止用熱硬化性樹脂組成物及び該組成物の硬化物を用いた樹脂封止型半導体装置の製造方法を提供するものである。
【0009】
[1]
下記(A)〜(D)成分を含む半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
【0010】
(A)下記式(1)で表されるJIS K7117−1:1999記載の方法で、B型回転粘度計を用いて測定した23℃における粘度が50Pa・s以下であるシアネートエステル化合物を含む、1分子中に2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル化合物
【0011】
【化1】
【0012】
(式(1)中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは下記式(2)〜(5)からなる群から選択される2価の連結基であり、n=0又は1の整数である)
【0013】
【化2】
【0014】
(B)下記式(6)で表されるレゾルシノール型フェノール樹脂を含むフェノール硬化剤
【0015】
【化3】
【0016】
(式(6)中、nは0以上10以下の整数を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリル基及びビニル基からなる群から選択される1価の基を表す)
【0017】
(C)硬化促進剤
【0018】
(D)レーザー回折法で測定した平均粒径が1〜20μmの球状であり、下記式(7)で表されるシランカップリング剤で表面処理された無機質充填材
【0019】
【化4】
【0020】
(式(7)中、Rはメチル基又はエチル基であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは下記式(8)〜(11)で表される含窒素官能基からなる群から選択される基であり、aは0〜3の整数である)
【0021】
【化5】
(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して1,200〜2,200質量部
【0022】
[2]
前記(A)成分において、式(1)で表されるシアネートエステル化合物が、(A)成分全体の配合量に対して、90質量%以上100質量%未満であり、かつ、2種以上のシアネートエステル化合物が含まれる[1]に記載の半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
【0023】
[3]
前記(B)成分において、式(6)で表されるレゾルシノール型フェノール樹脂が(B)成分全体の配合量に対して、10質量%以上100質量%以下であり、かつ、(B)成分のフェノール硬化剤中の水酸基1当量に対して(A)成分のシアネートエステル化合物中のシアナト基が0.5〜100当量である[1]又は[2]に記載の半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
【0024】
[4]
JIS K 7197:2012に記載の方法に基づいて、5×5×15mmの試験片を用いて、昇温5℃/分、荷重19.6mNで測定したときの線膨張係数が3.0〜5.0ppm/℃の範囲である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の半導体封止用熱硬化性樹脂組成物。
【0025】
[5]
1個以上の半導体素子を載置した面積200〜1500cmのシリコンウエハー又は基板全体を、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の半導体封止用熱硬化性樹脂組成物の硬化物で一括封止する工程を有し、かつ封止後のシリコンウエハー又は基板の反り量が2mm以下である樹脂封止型半導体装置の製造方法。
[6]
一括封止する工程において、半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を押圧下に被覆するか、又は真空雰囲気下で減圧被覆し、該樹脂組成物を加熱硬化して半導体素子を封止する[5]に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、1個以上の半導体素子を接着剤(ダイボンド材)で無機基板、金属基板又は有機基板上に搭載した半導体素子アレイや、半導体素子を形成した大径のシリコンウエハーを封止しても加熱硬化後に冷却した際の反りの発生がほとんどなく、かつ耐熱性、耐湿性に優れた半導体装置を提供することができ、かつ、ウエハーレベルで一括封止が可能でかつ容易に封止樹脂を研磨、ダイシングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ガラス転移温度の決定方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
(A)シアネートエステル化合物
(A)成分は、本発明の組成物の主成分であり、2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル化合物であり、上記式(1)で表される化合物を含むものである。
【0030】
【化6】
【0031】
(式(1)中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは下記式(2)〜(5)からなる群から選択される2価の連結基であり、n=0又は1の整数である)
【0032】
【化7】
【0033】
上記式(1)で表される化合物は、JIS K7117−1:1999記載の方法で、B型回転粘度計を用いて測定した23℃における粘度が50Pa・s以下、特に20Pa・s以下であることが好ましい。50Pa・sを超えると、無機質充填材を高充填できなくなり、膨張係数が大きくなるため、12インチ以上のウエハーに成形した場合に反りが大きくなり、シート状に形成できない虞がある。
【0034】
式(1)の化合物の配合量は、シアネートエステル化合物全体に対して、90質量%以上含むことが好ましい。該配合量が90質量%未満では、無機質充填材を高充填できず、シート状に形成できない虞がある。
【0035】
本発明では、式(1)のシアネートエステル化合物を1種以上と、別のシアネートエステル化合物を2種以上とを混合して用いることができる。式(1)以外の2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル化合物としては、一般に公知のものが使用でき、例えば、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ジ(4−シアナトフェニル)チオエーテル、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、2−tert−ブチル−1,4−ジシアナトベンゼン、2,4−ジメチル−1,3−ジシアナトベンゼン、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ジシアナトベンゼン、テトラメチル−1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、2,2’−ジシアナトビフェニル、4,4’−ジシアナトビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジシアナトビフェニル、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,5−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、1,1,1−1トリス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、4,4’−(1,3−フェニレンジイソピロピリデン)ジフェニルシアネート、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナト−フェニル)ホスフィン、フェノールノボラック型シアネート、クレゾールノボラック型シアネート、ジシクロペンタジエンノボラック型シアネート等が挙げられる。
【0036】
(A)成分のシアネートエステル化合物の組成物樹脂全体中の配合量は、80〜99質量%であることが好ましく、85〜99質量%であることがより好ましく、90〜97質量%であることが最も好ましい。
【0037】
(B)フェノール硬化剤
(B)成分は、下記式(6)で表されるレゾルシノール型フェノール樹脂を含むフェノール硬化剤である。
【0038】
【化8】
【0039】
(式(6)中、nは0以上10以下の整数を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリル基及びビニル基からなる群から選択される1価の基を表す)
【0040】
上記式(6)のnは溶融流動性の観点から0以上10以下であることが好ましい。nが10を超える場合、100℃以下で溶融せず、樹脂組成物の流動性が低下する。(B)成分は、nの値が異なるレゾルシノール型フェノール樹脂(式(6))を2種以上混合して使用してもよく、nの値に分布を持つレゾルシノール型フェノール樹脂(式(6))を使用してもよい。上記式(6)のR及びRは水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、アリル基及びビニル基からなる群から選択される1価の基であることが好ましく、特に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリル基及びビニル基からなる群から選択される1価の基であることが好ましい。R及びRは異なる官能基であってもよい。なお、炭素原子数10を超える基を用いるとき、脂肪族基の場合には十分な耐熱性が得られず、アリール基の場合には溶融時の流動性が低下する。
【0041】
(B)フェノール硬化剤と(A)成分の配合比は、式(2)のレゾルシノール型フェノール樹脂中の水酸基(OH基)1当量に対して、(A)成分の2個以上のシアナト基(CN基)を有するシアネートエステル化合物中のシアナト基(CN基)が0.5〜100当量となる量が好ましく、1〜50当量となる量がより好ましく、5〜35当量となる量がさらに好ましい。100当量を超えると硬化が不十分となり、0.5当量未満ではシアネートエステル化合物自体の耐熱性が損なわれる虞がある。
【0042】
フェノール硬化剤は、上記式(6)で表されるレゾルシノール型フェノール樹脂を含むことで、溶融時の樹脂粘度を低下させるとともに、シアネートエステル化合物の硬化反応を促進することができる。更に、レゾルシノール型フェノール樹脂自身の耐熱性が高いため、優れた耐熱性を有する硬化物を得ることができる。
【0043】
(C)硬化促進剤
(C)成分としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、これらのN−アルキル置換体、N−アリール置換体及びこれら含窒素複素環化合物の塩、並びにアミン系硬化促進剤等が挙げられる。(C)成分の硬化促進剤の配合量は、(A)2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル樹脂100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。
【0044】
DBUの塩の具体例としては、DBUのフェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、オルソフタル酸塩、無水トリメリット酸塩、フェノールノボラック樹脂塩、テトラフェニルボレート塩が挙げられる。一方、DBNの塩の具体例としては、DBNのフェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、オルソフタル酸塩、無水トリメリット酸塩、フェノールノボラック樹脂塩、テトラフェニルボレート塩が挙げられる。
【0045】
アミン系硬化促進剤としては、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノベンジディン、オルソトリジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,6−ジアミノトルエン、1,8−ジアミノナフタレンなどの芳香族アミン系硬化促進剤;N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、3,3−ジアミノジプロピルアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、3,3−ジアミノジプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の鎖状脂肪族ポリアミン;1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)モルホリン、N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン等の環状脂肪族ポリアミン;ポリアミドアミン;イミダゾール系硬化促進剤;及びグアニジン系硬化促進剤が挙げられる。前記ポリアミドアミンはダイマー酸とポリアミンとの縮合により生成されるものであり、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジドが挙げられる。前記イミダゾール系硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインが挙げられる。前記グアニジン系硬化促進剤としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−o−トリグアニジンなどの脂肪族アミンが挙げられる。特に第3級アミン、第3級アミン塩、又はイミダゾール系硬化促進剤を用いることが好ましい。
【0046】
(D)無機質充填材
本発明の組成物に配合される無機質充填材は、エポキシ樹脂組成物に通常配合されるものを使用することができる。無機質充填材の具体例としては、例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維等が挙げられる。
【0047】
無機質充填材は、レーザー回折法によって測定した平均粒径が1〜20μm、特に平均粒径3〜15μmで、かつ球状であることが好ましく、このような平均粒径及び形状の溶融シリカが特に好ましい。さらに、この無機質充填材は下記式(7)で示されるシランカップリング剤によって表面処理される。
【0048】
【化9】
【0049】
(式(7)中、Rはメチル基又はエチル基であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは下記式(8)〜(11)で表される含窒素官能基からなる群から選択される基であり、aは0〜3の整数である)
【0050】
【化10】
【0051】
この処理によって、シアネートエステルとの親和性に優れ、無機質充填材との結合を強めることができ、かつ組成物の流動性を著しく向上させることができる。該カップリング剤での表面処理方法については、公知の方法を使用することができ、特に制限されるものではない。
【0052】
式(7)で表されるシランカップリング剤の配合量としては、無機質充填材100質量部に対して、0.2〜0.5質量部が好ましい。シランカップリング剤の配合量が少ないと、シアネートエステルと無機質充填材とが十分に結合できないか、又は組成物の流動性が十分に得られない場合がある。シランカップリング剤の配合量が多いと、膨張係数が大きくなる場合がある。
【0053】
(D)成分の配合量は、(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して1,200〜2,200質量部であることが好ましく、1,400〜2,000質量部であることがより好ましい。上記下限未満では、成形後の反りが大きくなり、十分な強度を得ることができず、上記上限を超えると、流動性が著しく悪くなり、サブマウント上に配列された半導体素子の完全封止ができなくなる。
【0054】
(E)その他の添加剤
本発明の耐熱性樹脂組成物は、上記成分(A)〜(D)の所定量を配合することによって得られるが、その他の添加剤を必要に応じて本発明の目的、効果を損なわない範囲で添加することができる。かかる添加剤としては、無機充填材、離型剤、難燃剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、接着性付与剤、低応力剤、着色材等が挙げられる。
【0055】
難燃剤は、難燃性を付与する目的で添加される。該難燃剤は、公知のものを全て使用することができ、例えば、ホスファゼン化合物、シリコーン化合物、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデン等を使用することができる。
【0056】
イオントラップ剤は、樹脂組成物中に含まれるイオン不純物を捕捉し、熱劣化や吸湿劣化を防ぐ目的で添加される。イオントラップ剤は、公知のものを全て使用することができ、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス化合物、希土類酸化物等を使用することができる。
【0057】
接着性付与剤は、封止されるチップや基材に対する接着性を付与する目的で添加される。該接着性付与剤は、公知のものを全て使用することができ、例えば、分子内にビニル基、アミノ基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基などの接着性官能基と加水分解性シリル基とを有するシラン化合物、ポリシロキサン化合物などが挙げられる。
シラン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトシキシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトシキシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。また、ポリシロキサン化合物は、環状、鎖状、網目鎖状のいずれであってもよい。
【0058】
(E)成分の配合量は、組成物の用途により相違するが、通常は、組成物全体の20質量%以下の量である。
【0059】
本発明の熱硬化性樹脂組成物の製造方法
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、以下に示されるような方法で調製することができる。
まず、(A)シアネートエステル化合物と(B)フェノール硬化剤とを、同時に又は別々に、必要に応じて加熱処理を行いながら混合、撹拌及び/又は分散させることにより、(A)及び(B)成分の混合物を得る。(A)及び(B)成分の混合物に(C)硬化促進剤を混合、撹拌及び/又は分散させることにより(A)〜(C)成分の混合物を得る。そして、(A)〜(C)成分の混合物に(D)無機質充填材を混合、撹拌及び/又は分散させることにより(A)〜(D)成分の混合物を得る。使用用途によって、(A)及び(B)成分の混合物、(A)〜(C)成分の混合物、(A)〜(D)成分の混合物に、離型剤、難燃剤及びイオントラップ剤の添加剤のうち少なくとも1種を配合して混合してもよい。
【0060】
混合、撹拌、分散等の装置は特に限定されないが、具体的には撹拌及び加熱装置を備えたライカイ機、2本ロール、3本ロール、ボールミル、連続押し出し機、プラネタリーミキサー、マスコロイダー等を用いることができ、これらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0061】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、従来のコンプレッション成形やラミネーション成形を利用して成形することができるが、特にコンプレッション成形を行うことが好ましい。この場合、組成物の成形温度は160〜180℃で300〜600秒間、ポストキュアーは160〜180℃で1〜6時間行うことが好ましい。
【0062】
本発明の組成物は、8インチ、12インチ及び20インチウエハー上に成形した場合の反りを小さくすることができる。また、本発明の組成物の硬化物は、機械強度、絶縁性に優れ、該硬化物で封止された半導体装置は長期信頼性に優れる。さらに本発明の組成物は、従来のコンプレッションや、ラミネーション成形時に使用される装置及び成形条件において、フローマークや未充填といった成形不良が発生しないため、生産性の観点からも優れている。
【0063】
本明細書においてフローマークとは、成形物の中心から外側に向かって放射状に残る白い流動痕のことをいう。フローマークが発生すると外観不良や、シリカ不均一分散による硬化物の物性のバラつきや、それに伴う信頼性の低下等が懸念される。
【0064】
本明細書において未充填とは、ウエハー外周部に発生する樹脂の欠けのことをいう。未充填が発生すると後工程でウエハーを搬送するときに、センサーが未充填部をノッチと誤認識して、位置合わせ特性の低下が懸念される。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書において粘度とは、JIS K7117−1:1999記載の方法で、B型回転粘度計を用いて測定した23℃における粘度をいう。
【0066】
シート状熱硬化性樹脂組成物の製造方法
熱硬化性樹脂組成物に含まれる以下に示す各成分を表1に示す割合で混合し、2本ロールで混錬することにより熱硬化組成物を得た。表1中の配合比を示す数値の単位は「質量部」である。
前記得られた熱硬化性樹脂組成物の混合物を厚さが100μmとなるように、熱ロールと離型処理を施したポリエステルフィルム(保護層)表面に塗布して、実施例1〜8及び比較例1〜6のシート状の硬化物を製造した。比較例4及び6は、樹脂と無機質充填材の濡れ性が悪く、シート状にすることができなかった。シート状にすることができた組成物を用いて以下に示す試験及び評価を行った。
【0067】
(A)シアネートエステル化合物
(A1)下記式(12)で表わされる1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン(粘度:0.08Pa・s)(商品名LECY、LOZNA(株)製)
【0068】
【化11】
【0069】
(A2)下記式(13)で表わされるフェノールノボラック型シアネートエステル(n=0〜2)(粘度:250Pa・s)(商品名PT30、LOZNA(株)製)
【0070】
【化12】
【0071】
(B)フェノール硬化剤
(B1)下記式(14)で表わされるレゾルシノール型フェノール樹脂(n=0〜4、R及びRはアリル基、重量平均分子量450〜600、当量107)(商品名MEH−8400、明和化成株式会社製)
(B2)下記式(14)で表わされるレゾルシノール型フェノール樹脂(n=5〜7、R及びRはアリル基、重量平均分子量800〜1100、当量132)(明和化成株式会社製)
(B3)下記式(14)で表わされるレゾルシノール型フェノール樹脂(n=0〜4、R及びRはn−プロピル基、重量平均分子量450〜600、当量107)(明和化成株式会社製)
(B4)下記式(14)で表わされるレゾルシノール型フェノール樹脂(n=0〜4、R及びRはビニル基、重量平均分子量450〜600、当量107)(明和化成株式会社製)
【0072】
【化13】
【0073】
(B5)アリールフェノールノボラック(商品名MEH−8000H、明和化成株式会社製、当量141)
【0074】
(C)硬化促進剤
(C1)DBU系テトラフェニルボレート塩(商品名U−CAT 5002、サンアプロ社製)
【0075】
(D)無機質充填材
(D1)処理シリカ
ベース球状溶融シリカ(平均粒径12μmの球状溶融シリカ(龍森製))100質量部に対して、0.3質量部のN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM573、信越化学工業株式会社製)で乾式表面処理を行い、処理シリカ(D1)を調製した。
(D2)処理シリカ
また、球状溶融シリカ(平均粒径12μmの球状溶融シリカ(龍森製)) 100質量部に対して、0.3質量部のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM403、信越化学工業株式会社製)で乾式表面処理を行い、処理シリカ(D2)を調製した。
(D3)処理シリカ
ベース球状溶融シリカ(平均粒径0.8μmの球状シリカ(龍森製))100質量部に対して、0.3質量部のN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM573、信越化学工業株式会社製)で乾式表面処理を行い、処理シリカ(D3)を調製した。
(D4)無処理シリカ
(D1)で用いた球状溶融シリカ(平均粒径12μm、龍森製)を表面処理することなく、無処理の状態で用いた。
【0076】
(E)その他の添加剤
(E1)接着性付与剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM403、信越化学工業株式会社製)
(E2)着色材:カーボンブラック(商品名三菱カーン3230MJ、三菱化学製)
【0077】
試験及び評価方法
ガラス転移温度及び線膨張係数
JIS K 7197:2012に記載の方法に基づいて、実施例及び比較例において製造したシート状の硬化物を、5×5×15mmの試験片にそれぞれを加工した後、それらの試験片を熱膨張計TMA8140C(株式会社リガク社製)にセットした。そして、昇温5℃/分の加熱と、19.6mNの一定荷重が加わるように設定し、25℃から300℃までの間で試験片の寸法変化を測定した。この寸法変化と温度との関係をグラフにプロットした。このようにして得られた寸法変化と温度とのグラフから、下記に説明するガラス転移温度の決定方法により、実施例及び比較例におけるガラス転移温度を求めた。
【0078】
ガラス転移温度の決定方法
図1において、変曲点の温度以下で寸法変化−温度曲線の接線が得られる任意の温度2点をT及びTとし、変曲点の温度以上で同様の接線が得られる任意の温度2点をT’及びT’とした。T及びTにおける寸法変化をそれぞれD及びDとして、点(T1、)と点(T2、)とを結ぶ直線と、T’及びT’における寸法変化をそれぞれD’及びD’として、点(T’)と点(T’)とを結ぶ直線との交点をガラス転移温度(T)とした。T〜Tの傾きをTg以下の線膨張係数(線膨張係数1)、T’〜T’の傾きをTg以上の線膨張係数(線膨張係数2)とした。
【0079】
フローマーク及び未充填の有無の評価
液状樹脂組成物を175℃で600秒間、樹脂厚み300μmにコンプレッション成形後、180℃/1時間にて完全硬化(ポストキュアー)させた。その後、外観目視によるフローマーク及び未充填の有無を評価した。
【0080】
反り測定
シリコンウエハー12インチ/775μm厚を使用し、アピックヤマダ社製ウエハーモールドにて、液状樹脂組成物を175℃で600秒間、樹脂厚み300μmにコンプレッション成形後、180℃/1時間にて完全硬化(ポストキュアー)させた。その後、反り(mm)を測定した。
【0081】
信頼性試験
厚み200μmの8インチシリコンウエハーに、ダイボンド材SFX−513M1(信越化学工業株式会社製)を20μm厚に厚膜スクリーン印刷機(THICK FILM PRINTER タイプMC212)を用いて印刷し、Bステージ状態で7mm角大にダイシング装置を用いてダイシングして、半導体チップを準備した。
【0082】
次に、厚み200μmの8インチシリコンウエハー上にフリップチップボンダー(Panasonic NM−SB50A)を用いて、厚さ220μmで7mm角のダイボンド材付き半導体チップを10N/150℃/1.0秒の条件でダイボンドし、半導体チップを搭載した厚さ200μmのシリコンウエハーを得た。
【0083】
半導体チップ付き厚さ200μmシリコンウエハーを圧縮成形機にセットし、液状樹脂組成物を適量載せ、成形圧力最大30MPaから15MPaまでの間で、110℃、10分間で硬化を行い、シリコンウエハーを得た。液状樹脂組成物の量は、成形後の樹脂厚みが400μm±10μmとなるように調整した。そのシリコンウエハーを150℃、2時間オーブンで熱処理して後硬化を行った。その後、再びダイシング装置を用いて7.1mm角にダイシングし、厚み400μmの個片化樹脂搭載半導体チップを得た。
【0084】
個片化樹脂搭載半導体チップをBT基板上にフリップチップボンダー(Panasonic NM−SB50A)を用いて、10N/150℃/1.5秒の条件でダイボンド材SFX−513S(信越化学工業株式会社製)でダイボンドした。その後、150℃、4時間オーブンで熱処理し、後硬化を行い、樹脂搭載半導体チップ付きBT基板を得た。
【0085】
樹脂搭載半導体チップ付きBT基板上にモールディングコンパウンド材をトランスファー成形機(G−LINEプレス アピックヤマダ社製)を用いて、175℃、90秒、9MPaの成形条件で1.5mm厚に成形した。その後、再びダイシング装置を用いて10.0mm角にダイシングし、個片化モールディングコンパウンド樹脂搭載半導体チップ付きBT基板(半導体装置)を得た。
【0086】
上記半導体装置を85℃、85%RHの条件で168時間吸湿処理した。これを、最大温度260℃、255〜260℃の時間が30秒±3秒となるように予め設定したリフローオーブンに3回通して半田耐熱試験(剥離検査)を行った。超音波探傷装置(ソニックス社製 QUANTUM350)にて75MHzのプローブで半導体チップ内部の剥離状態を無破壊検査し、剥離及びクラックがない場合には「良好」、剥離及びクラックがある場合には「NG」として評価した。
【0087】
温度サイクル試験(TCT)
個片化したモールディングコンパウンド樹脂搭載半導体チップ付きBT基板を、ESPEC社製小型冷熱衝撃装置TSE−11を用いて、−55℃/15分⇒+125℃/15分(自動)のサイクルを行った。まず、超音波探傷装置(ソニックス社製 QUANTUM350)にて75MHzのプローブを用いて、0サイクルの半導体チップ内部の剥離状態を無破壊検査した。次に、250サイクル後、500サイクル後及び700サイクル後に同様の検査を行った。この検査結果を表1に示す。半導体チップの面積に対する剥離面積の合計が、およそ5%未満(微小剥離)の場合は「OK(剥離なし)」、剥離面積の合計が5%以上の場合は「NG(剥離あり)」として評価した。
【0088】
【表1】
【0089】
結果
(B)成分のフェノール硬化剤について、レゾルシノール型フェノール樹脂(B1〜B4)以外のフェノール硬化剤(B5)を用いた場合には、反り量(mm)が大きくなった(比較例1)。また、フェノール硬化剤(B5)の使用量を2倍にしても、実施例1〜8と比較して、反り量(mm)が大きかった。(A)成分のシアネートエステル化合物について、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン(A1)の配合量が低下すると、未充填が生じた(比較例3)。(D)成分の無機質充填材について、D2を使用した場合(比較例4)や、D1を過剰に高充填した場合(比較例6)には、樹脂組成物をシート状にすることができなかった。なお、無機質充填材の配合量が低下すると、反り量が大きくなり、剥離やクラックが生じた(比較例5)。
【0090】
上記結果から、本発明の樹脂組成物は、ガラス転移温度、流動性及び耐熱性が高く、反り、膨張及び収縮が小さく、シート状に形成することができることがわかった。

図1