(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369546
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】放電加工用電極線及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B23H 7/08 20060101AFI20180730BHJP
C22C 18/02 20060101ALI20180730BHJP
C25D 5/50 20060101ALI20180730BHJP
C25D 7/06 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
B23H7/08
C22C18/02
C25D5/50
C25D7/06 U
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-534746(P2016-534746)
(86)(22)【出願日】2015年1月7日
(86)【国際出願番号】JP2015050277
(87)【国際公開番号】WO2016110964
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】辻 隆之
(72)【発明者】
【氏名】黒田 洋光
(72)【発明者】
【氏名】徳光 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】木村 孝光
(72)【発明者】
【氏名】芝 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】松崎 寛
(72)【発明者】
【氏名】小室 裕一
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 慎悟
【審査官】
竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−160655(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0025959(US,A1)
【文献】
米国特許第5945010(US,A)
【文献】
特開昭54−67519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金からなる芯材の外周が亜鉛を含む被覆層により被覆されており、
前記被覆層は、銅−亜鉛系合金であるε相のみからなる最外層を有し、
前記最外層は、Cu濃度が12〜20質量%であって、電極線長手方向のCu濃度のばらつき幅が5質量%以内である放電加工用電極線。
【請求項2】
前記被覆層は、銅−亜鉛系合金であるγ相を含む内層を有する請求項1に記載の放電加工用電極線。
【請求項3】
前記被覆層中のε相の(0001)X線回折強度が、前記被覆層中のγ相の(332)X線回折強度の2倍よりも大きい請求項2に記載の放電加工用電極線。
【請求項4】
前記芯材は、黄銅からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の放電加工用電極線。
【請求項5】
銅又は銅合金からなる芯材の外周が亜鉛を含む被覆層により被覆されている放電加工用電極線の製造方法において、
前記芯材の外周に亜鉛めっき又は亜鉛合金めっきを1回施す工程と、
めっきを施した前記芯材を伸線する工程と、
伸線後に、前記被覆層が銅−亜鉛系合金であるε相のみからなる最外層を有し、前記最外層のCu濃度が12〜20質量%であって、電極線長手方向のCu濃度のばらつき幅が5質量%以内となる熱処理条件で熱処理を施す工程とを含む放電加工用電極線の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理条件は、熱処理温度100〜120℃、熱処理時間3〜24時間の範囲内である請求項5に記載の放電加工用電極線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電加工用電極線及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅又は銅合金からなる芯材の外周に亜鉛被覆を有する放電加工用電極線(例えば特許文献1〜4参照)は、銅又は銅合金からなる芯材のみの放電加工用電極線に比べて、被加工物の加工部分の面精度が良いという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−126950号公報
【特許文献2】特開2008−296298号公報
【特許文献3】特許3549663号公報
【特許文献4】米国特許8,067,689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最表面層が純亜鉛である放電加工用電極線の場合は最表面が軟らかいため、放電加工の際の摩耗粉が発生しやすい。そこで、伸線前後に熱処理を行ない、表面層に銅を拡散させ、最表面層を亜鉛−銅合金にすることにより、摩耗粉の発生を抑制する。
【0005】
しかし、ボビン等に巻きつけコイル状で上記の熱処理を行なった場合、ボビン巻きされた電極線の内部に熱がこもりやすく、熱処理の度合いが電極線長手方向で異なる。そのため、最表面層のCu濃度がばらつき、ひいては電極線の放電加工特性が電極線長手方向でばらつくという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、芯材の外周に亜鉛被覆を有する放電加工用電極線において最表面層のCu濃度のばらつきが抑制された放電加工用電極線及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、下記の放電加工用電極線及びその製造方法を提供する。
【0008】
[1]銅又は銅合金からなる芯材の外周が亜鉛を含む被覆層により被覆されており、前記被覆層は、銅−亜鉛系合金であるε相のみからなる最外層を有し、前記最外層は、Cu濃度が12〜20質量%であって、電極線長手方向のCu濃度のばらつき幅が5質量%以内である放電加工用電極線。
[2]前記被覆層は、銅−亜鉛系合金であるγ相を含む内層を有する前記[1]に記載の放電加工用電極線。
[3]前記被覆層中のε相の(0001)X線回折強度が、前記被覆層中のγ相の(332)X線回折強度の2倍よりも大きい前記[2]に記載の放電加工用電極線。
[4]前記芯材は、黄銅からなる前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の放電加工用電極線。
[5]銅又は銅合金からなる芯材の外周が亜鉛を含む被覆層により被覆されている放電加工用電極線の製造方法において、前記芯材の外周に亜鉛めっき又は亜鉛合金めっきを1回施す工程と、めっきを施した前記芯材を伸線する工程と、伸線後に、前記被覆層が銅−亜鉛系合金であるε相のみからなる最外層を有し、前記最外層のCu濃度が12〜20質量%であって、電極線長手方向のCu濃度のばらつき幅が5質量%以内となる熱処理条件で熱処理を施す工程とを含む放電加工用電極線の製造方法。
[6]前記熱処理条件は、熱処理温度100〜120℃、熱処理時間3〜24時間の範囲内である前記[5]に記載の放電加工用電極線の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、芯材の外周に亜鉛被覆を有する放電加工用電極線において最表面層のCu濃度のばらつきが抑制された放電加工用電極線及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る放電加工用電極線の構造を示す横断面図である。
【
図2】実施例及び比較例の放電加工用電極線についての最表面層のCu濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図3A】各焼鈍時間及び焼鈍温度で作製した放電加工用電極線(芯材の線径:0.20mm)についてのX線回折強度の測定結果のうちε相(CuZn
5)の(0001)強度を示すグラフである。
【
図3B】各焼鈍時間及び焼鈍温度で作製した放電加工用電極線(芯材の線径:0.20mm)についてのX線回折強度の測定結果のうちγ相(Cu
5Zn
8)の(332)強度を示すグラフである。
【
図3C】各焼鈍時間及び焼鈍温度で作製した放電加工用電極線(芯材の線径:0.20mm)についてのX線回折強度の測定結果のうちη相(Zn)の(100)強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔放電加工用電極線〕
図1は、本発明の実施の形態に係る放電加工用電極線の構造を示す横断面図である。
図1に示される本発明の実施の形態に係る放電加工用電極線10は、銅又は銅合金からなる芯材1の外周が亜鉛を含む被覆層2により被覆されており、被覆層2は、銅−亜鉛系合金であるε相のみからなる最外層2Bを有し、最外層2Bは、Cu濃度が12〜20質量%であって、電極線長手方向のCu濃度のばらつき幅が5質量%以内であることを特徴とする。被覆層2を構成する最外層2Bは、放電加工用電極線10の表面層である。
【0012】
芯材1は、銅又は銅合金からなる。銅合金としては特に限定されるものではないが、黄銅であることが好ましい。
【0013】
芯材1の外周に設けられた亜鉛を含む被覆層2は、亜鉛めっき又は亜鉛合金めっき、好ましくは、亜鉛めっきを施すことにより設けられる。
【0014】
被覆層2は、少なくとも銅−亜鉛系合金であるε相のみからなる最外層2Bを有する。ε相とは、一般的に、CuZn
5で表され、Cu濃度が12〜24質量%程度、Zn濃度が76〜88質量%程度のCu−Zn合金である。ε相は島状ではなく、芯材の全周を覆うように層状に形成される。
【0015】
本発明の実施の形態に係る放電加工用電極線10においては、ε相のみからなる最外層2BのCu濃度が12〜20質量%であって、電極線長手方向のCu濃度のばらつき幅が5質量%以内である。最外層2BのCu濃度は、好ましくは14〜20質量%であり、より好ましくは15〜19質量%である。最外層2Bの電極線長手方向のCu濃度のばらつき幅は、好ましくは4質量%以内であり、より好ましくは3質量%以内である。Cu濃度は、例えば、SEM−EDX(走査型電子顕微鏡及びそれに付属するエネルギー分散型X線分析装置)を用いて最表面からおよそ1μmの領域を測定することで求められる。
【0016】
電極線長手方向のCu濃度のばらつき幅とは、電極線長手方向において端部から一定間隔ごとにCu濃度を測定した際のCu濃度の差(=Cu濃度の最大値−Cu濃度の最低値)である。一定間隔は、特に限定されるものではないが、例えば200kg以上の電極線では端部から10〜50kgごとに測定することが好ましい。200kg未満の電極線では端部から1〜25kgごとに測定することが好ましい。後述の熱処理工程が行われるボビン毎に、ばらつき幅が測定されることが望ましい。熱処理工程後、1つのボビンから電極線を切り分けて出荷する場合には、切り分けられたそれぞれの電極線におけるばらつき幅は、切り分けの長さによっても異なるが、通常、ボビン毎に測定して求められたばらつき幅よりも小さいばらつき幅となる。例えば、ボビンに巻かれた300kgの電極線が熱処理後に、約20〜50kgごとに切り分けられた場合、小分けされたそれぞれの電極線の長手方向のCu濃度のばらつき幅は、4質量%以内であることが好ましく、3質量%以内であることがより好ましく、2質量%以内であることがさらに好ましい。但し、前述のCu濃度範囲内で、かつ、ばらつき幅が5質量%以内である限り、本発明の範囲内である。通常、電極線は5kg以上の単位で販売されているところ、本実施の形態におけるばらつき幅とは、5kg以上の電極線における長手方向のCu濃度のばらつき幅を言う。
【0017】
被覆層2は、最外層2Bの内側に亜鉛を含むその他の層を有していてもよく、例えば、銅−亜鉛系合金であるγ相を含む内層2Aを有することが好ましい。γ相とは、一般的に、Cu
5Zn
8で表され、Cu濃度が45〜35質量%程度、Zn濃度が55〜65質量%程度のCu−Zn合金である。γ相を含む内層2Aは、γ相を内層中に85質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、95質量%以上含むことがさらに好ましく、100質量%含むことが最も好ましい。
【0018】
被覆層2を構成する内層2Aは、2層以上からなるものであってもよい。なお、銅−亜鉛系合金であるβ相からなる層や純亜鉛であるη相からなる層は、有していないことが好ましいが、本発明の効果を奏する限りにおいて存在していてもよい。
【0019】
被覆層2は、被覆層2中のε相の(0001)X線回折強度が、被覆層2中のγ相の(332)X線回折強度の2倍よりも大きいことが好ましい。本実施の形態においては、被覆層2中のε相の全部もしくは大部分が最外層2Bに存在し、被覆層2中のγ相の全部が内層2Aに存在する。ε相の(0001)X線回折強度は、γ相の(332)X線回折強度の3倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがより好ましい。上限は特に限定されるものではないが、20倍以下であることが好ましい。X線回折強度は、薄膜法(入射X線を低角度(例えば10°)に固定させることによりX線の侵入深さを浅くし、芯材にわずかにX線が入る程度に調整して表面層の分析感度を高める手法)により測定したピーク強度を比較したものである。
【0020】
被覆層2の厚さは、全体として、1〜20μmであることが好ましい。内層2Aを有する場合、層厚比は、最外層2B/内層2A=4/1〜1/1であることが好ましい。
【0021】
〔放電加工用電極線の製造方法〕
本発明の実施の形態に係る放電加工用電極線10の製造方法は、銅又は銅合金からなる芯材1の外周が亜鉛を含む被覆層2により被覆されている放電加工用電極線10の製造方法において、芯材1の外周に亜鉛めっき又は亜鉛合金めっきを1回施す工程と、めっきを施した芯材1を伸線する工程と、伸線後に、被覆層2が銅−亜鉛系合金であるε相のみからなる最外層2Bを有し、最外層2BのCu濃度が12〜20質量%であって、電極線長手方向のCu濃度のばらつき幅が5質量%以内となる熱処理条件で熱処理を施す工程とを含むことを特徴とする。以下、熱処理を焼鈍と言うことがある。
【0022】
亜鉛めっき又は亜鉛合金めっきを1回施す工程及び伸線する工程は、公知の方法により行なうことができる。
【0023】
伸線後に熱処理を施す工程を経ることにより、前述の本発明の実施の形態に係る放電加工用電極線10を製造することができる。熱処理条件は、好ましくは、100〜120℃、3〜24時間、より好ましくは100〜120℃、3〜18時間の範囲内で、前述の最外層2Bを形成できるように調整する。熱処理温度及び時間は、電極線の径や被覆層の厚さによって、適宜、調整する。例えば、100℃で熱処理する場合、電極線の径がφ0.20mmであれば、6〜10時間程度が好ましく、電極線の径がφ0.25mmであれば、10〜17時間程度が好ましい。また、例えば、100℃で熱処理する場合、被覆層の厚さが1.5μm未満であれば、3〜7時間程度が好ましく、被覆層の厚さが1.5μm以上であれば、7〜18時間程度が好ましい。
【0024】
上記本発明の実施の形態に係る製造方法によれば、上記熱処理を施す工程を経ることにより、被覆層2を構成する内層2Aも同時に形成できる。上記熱処理条件内で適宜、調整することにより、被覆層2中のε相の(0001)X線回折強度が、被覆層2中のγ相の(332)X線回折強度の2倍よりも大きい被覆層を形成できる。
【0025】
〔本発明の実施形態の効果〕
本発明の実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)芯材の外周に亜鉛被覆を有する放電加工用電極線において最表面層のCu濃度のばらつきが抑制された放電加工用電極線及びその製造方法を提供できる。
(2)1回のめっき工程で製造できるため、生産性に優れる放電加工用電極線及びその製造方法を提供できる。
【0026】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
〔放電加工用電極線の製造〕
芯材1としての黄銅線(線径:1.2mm)上に電解亜鉛めっき法により厚さ約10μmの亜鉛めっき層を形成した。亜鉛めっきを施した芯材1を線径が0.20mm(めっき層1.7μm)になるまで伸線した後、ボビン(F350:胴径340mm)に巻き取り、この状態で焼鈍(熱処理)を行ない、各300kgの放電加工用電極線を製造した。焼鈍(熱処理)条件は、実施例は、100℃、8時間であり、比較例は160℃、3時間である。
【0028】
製造した放電加工用電極線それぞれについて、SEM−EDX(走査型電子顕微鏡及びそれに付属するエネルギー分散型X線分析装置)を用いて加速電圧15kVで電極線最表面からおよそ1μmの領域をEDX分析することによりCu濃度を測定した。
図2は、実施例及び比較例の放電加工用電極線についての最表面層のCu濃度の測定結果を示すグラフである。実施例では、端部から約25kg間隔で、比較例では、端部から約50kg間隔でCu濃度を測定した。実施例の電極線における長手方向のCu濃度のばらつき幅は2.7質量%であり、比較例の電極線における長手方向のCu濃度のばらつき幅は12質量%であった。
【0029】
また、電極線の断面研磨試料をSEM観察、分析することにより、被覆層(最外層及び内層)の相状態を確認したところ、実施例ではε相のみからなる最外層及びγ相を含む内層が形成されていた。
【0030】
〔X線回折強度の測定・検討〕
下記の方法により放電加工用電極線を製造し、前述の薄膜法(X線入射角度:10°)によりX線回折強度の測定を行なった。
図3A〜Cは、各焼鈍時間及び焼鈍温度で作製した放電加工用電極線(芯材の線径:0.20mm)についてのX線回折強度の測定結果を示しており、
図3Aは被覆層中のε相(CuZn
5)の(0001)強度の測定結果であり、
図3Bは被覆層中のγ相(Cu
5Zn
8)の(332)強度の測定結果であり、
図3Cは被覆層中のη相(Zn)の(100)強度の測定結果である。なお、
図3A〜Cにおける25℃のプロットは、焼鈍しなかった放電加工用電極線の測定結果である。
【0031】
芯材1としての黄銅線(線径:1.2mm)上に電解亜鉛めっき法により厚さ約10μmの亜鉛めっき層を形成した。亜鉛めっきを施した芯材1を線径が0.20mm(めっき層1.7μm)になるまで伸線した後、ボビン(F10:胴径100mm)に巻き取り、この状態で焼鈍を行ない、各10kgの放電加工用電極線を製造した。焼鈍条件は、40〜160℃(40、60、80、100、120、160℃)、3時間及び8時間である。
【0032】
図3A及び3Bより、焼鈍温度120℃以下において、焼鈍時間3時間及び8時間のいずれも、ε相の(0001)X線回折強度が、γ相の(332)X線回折強度の2倍よりも大きいことが分かる。なお、8時間焼鈍品は、焼鈍温度100℃でη相の(100)X線回折強度が0となり、3時間焼鈍品は、焼鈍温度120℃でη相の(100)X線回折強度が0となった(
図3C)。η相は純Zn相であり、軟らかいため摩耗粉が出やすく、放電加工機のパスライン上でカスとして溜まる。そのため、η相は熱処理で無くした方が良く、そのためには100℃以上の熱処理が必要であることが分かる。
【0033】
上記X線回折強度の測定結果より、100℃〜120℃の熱処理が最適である。
【0034】
なお、本発明は、上記実施の形態及び実施例に限定されず種々に変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1:芯材、2:被覆層、2A:内層、2B:最外層(ε相)
10:電極線