特許第6369563号(P6369563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6369563(メタ)アクリル系共重合体、重合体含有組成物、防汚塗料組成物及び(メタ)アクリル系共重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369563
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル系共重合体、重合体含有組成物、防汚塗料組成物及び(メタ)アクリル系共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20180730BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20180730BHJP
   C08F 290/04 20060101ALI20180730BHJP
   C08L 55/00 20060101ALI20180730BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20180730BHJP
   C09D 151/06 20060101ALI20180730BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180730BHJP
【FI】
   C08F265/06
   C08L51/06
   C08F290/04
   C08L55/00
   C09D5/16
   C09D151/06
   C09D7/40
【請求項の数】11
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2016-562277(P2016-562277)
(86)(22)【出願日】2016年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2016078242
(87)【国際公開番号】WO2017051922
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2016年10月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-188349(P2015-188349)
(32)【優先日】2015年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-190946(P2015-190946)
(32)【優先日】2015年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】勝間田 匠
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】浦 正敏
(72)【発明者】
【氏名】加門 良啓
(72)【発明者】
【氏名】浅井 学文
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−095816(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/108880(WO,A1)
【文献】 特開2006−077095(JP,A)
【文献】 特開平02−067303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/06
C08F 290/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)、下記式(2)又は下記式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(I)を有する構成単位(A1)とラジカル重合性基を有し、かつラジカル重合性基を有する単量体由来の構成単位を2以上有するマクロモノマー(b)由来の構成単位(B)と、を有する(メタ)アクリル系共重合体。
【化1】
(式中、Xは−O−、−S−又は−NR14−を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1〜10のアルキレン基を示す。)
【請求項2】
前記マクロモノマー(b)が、下記式(b’)で表される構成単位を2以上有する、数平均分子量が500〜50000であるマクロモノマーである、請求項1に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
【化2】
(式中、R41は水素原子、メチル基又はCHOHを示し、R42はOR43、ハロゲン原子、COR44、COOR45、CN、CONR4647又はR48を示す。R43〜R47はそれぞれ独立に水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、R48は非置換の若しくは置換基を有するアリール基又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル系共重合体を含む、重合体含有組成物。
【請求項4】
記式(11)で表される化合物、下記式(12)で表される化合物、及び下記式(13)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルケニル化合物をさらに含む、請求項に記載の重合体含有組成物。
【化5】
(式中:Xは−O−、−S−又は−NR14−を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数1〜9のアルキル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示す。R及びR11はそれぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示す。R10は、単結合、又は炭素数1〜9のアルキレン基を示す。R12は、炭素数1〜9のアルキレン基を示す。)
【請求項5】
請求項3又は4に記載の重合体含有組成物を含む、防汚塗料組成物。
【請求項6】
防汚剤をさらに含む、請求項に記載の防汚塗料組成物。
【請求項7】
前記防汚剤が、亜酸化銅、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル、ピリジン−トリフェニルボラン及びメデトミジンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項に記載の防汚塗料組成物。
【請求項8】
25℃における粘度が、5000mPa・s以下である、請求項のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
【請求項9】
VOC含有量が、500g/L以下である、請求項のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル系共重合体以外の熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
【請求項11】
下記式(1)、下記式(2)又は下記式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(I)を有する単量体(a1)と
ラジカル重合性基を有し、かつラジカル重合性基を有する単量体由来の構成単位を2以上有するマクロモノマー(b)と、
を含む単量体混合物を重合して(メタ)アクリル系共重合体を得る工程を含む、(メタ)アクリル系共重合体の製造方法。
【化6】
式中、Xは−O−、−S−又は−NR14−を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1〜10のアルキレン基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系共重合体、重合体溶液、重合体含有組成物、防汚塗料組成物及び(メタ)アクリル系共重合体の製造方法に関する。
本願は、2015年9月25日に、日本に出願された特願2015−188349号、及び2015年9月29日に、日本に出願された特願2015−190946号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
海洋構造物や船舶には、海水と接する部分の腐食や航行速度低下の原因となる海中生物の付着防止を目的として、防汚塗料を塗装することが知られている。
防汚塗料として、自己研磨型の防汚塗料が知られている。自己研磨型の防汚塗料は、典型的には、加水分解性樹脂と防汚剤とを含む。この防汚塗料から得られる塗膜は、塗膜表面が徐々に海水に溶解して表面更新(自己研磨)され、塗膜表面に常に防汚成分が露出することにより、長期にわたって防汚効果を発揮する。
【0003】
自己研磨型の防汚塗料として、例えば以下のような、金属含有重合体を含む樹脂組成物を用いたものが提案されている。かかる樹脂組成物は防汚剤等が配合されて防汚塗料とされる。これらの樹脂組成物に含まれる金属含有重合体は加水分解性を有しており、これを含む塗膜は自己研磨性を示す。
(1)無機金属化合物とカルボキシ基含有ラジカル重合性単量体の反応物と、少なくともアルコール系溶剤を含む有機溶剤と、特定量の水とからなる金属含有モノマー混合物と、その他のラジカル重合性不飽和単量体とを共重合した樹脂組成物(特許文献1)。
(2)カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体と、2価金属含有エチレン性不飽和単量体と、ラジカル重合性基を有するマクロモノマーとを特定の手順で重合させたビニル系ポリマーを、水を含む分散媒に分散させた樹脂組成物(特許文献2)。
【0004】
自己研磨型の防汚塗料として、例えば、側鎖にヘミアセタールエステル基及び/又はヘミケタールエステル基を有するビニル重合体と有機溶剤とを含有する防汚塗料用組成物を用いたものが提案されている(特許文献3)。かかる防汚塗料用組成物は、防汚剤等が配合されて防汚塗料とされる。前記ビニル重合体は加水分解性を有しており、これを含む塗膜は自己研磨性を示す。
【0005】
近年、環境等への影響から、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound;以下、「VOC」ともいう。)の低減が重要になっており、防汚塗料についてもVOCの低減が検討されている。
有機溶剤の含有量が抑えられた防汚塗料用組成物として、前記特許文献2の樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−012630号公報
【特許文献2】国際公開第2013/108880号公報
【特許文献3】特開平4−103671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の樹脂組成物を用いた防汚塗料から形成される塗膜は、硬度及び耐水性が不足している傾向がある。そのため、塗膜の長期の防汚効果は必ずしも充分ではない。
さらに、この樹脂組成物は、有機溶剤の含有量を少なくして高固形分化しようとすると、高粘度になり防汚塗料の調製や塗装が困難となるため、高固形分化が難しい問題もある。
【0008】
特許文献2の樹脂組成物から形成される塗膜は、耐水性が充分ではない。また、溶解速度が遅い(消耗度が低い)傾向もある。そのため、塗膜の長期の防汚効果は必ずしも充分ではない。
【0009】
特許文献3の防汚塗料用組成物を用いた防汚塗料の塗膜は、硬度及び耐水性のいずれか1以上が不足している傾向がある。特に防汚塗料組成物の粘度を低くした場合、塗膜の硬度が不足しやすい。塗膜の硬度が低いことにより、塗装後に仮置きする際、架台との接触により跡が残り、塗膜の欠陥となりやすい。
さらに、この防汚塗料用組成物には有機溶剤が多量に含まれており、この防汚塗料用組成物を用いた防汚塗料はVOC含有量が多い。有機溶剤の含有量を減らせばVOCは低減されるが、固形分が増えることで粘度が上昇し、防汚塗料の調製や塗装が困難となる。
【0010】
本発明の目的は、耐水性及び硬度に優れた塗膜を形成できる防汚塗料組成物、前記防汚塗料組成物を得るために好適な(メタ)アクリル系共重合体、重合体溶液及び重合体含有組成物、ならびに前記(メタ)アクリル系共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の側面を有する。
〔1〕下記式(1)、下記式(2)又は下記式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(I)を有する構成単位(A1)、及びトリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する構成単位(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位と、マクロモノマー(b)由来の構成単位(B)と、を有する(メタ)アクリル系共重合体。
【化1】
(式中、Xは−O−、−S−又は−NR14−を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1〜10のアルキレン基を示す。)
〔2〕下記式(4)又は(5)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(III)を有する構成単位(A3)と、マクロモノマー(b)由来の構成単位(B)と、を有する(メタ)アクリル系共重合体と、
有機溶剤と、を含み、
25℃における粘度が、5×10mPa・s以下である、重合体溶液。
−COO−M−OCO ・・・(4)
−COO−M−R32 ・・・(5)
(式中、MはZn、Cu、Mg又はCaを示し、R32は(メタ)アクリロイルオキシ基以外の有機酸残基を示す。)
〔3〕〔2〕に記載の重合体溶液を含み、有機溶剤の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体を除いた全量に対して30質量%以上である、重合体含有組成物。
〔4〕水分含有量が15質量%以下である、〔3〕に記載の重合体含有組成物。
〔5〕前記マクロモノマー(b)が、下記式(b’)で表される構成単位を2以上有する、数平均分子量が500〜50000であるマクロモノマーである、〔1〕に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
【化2】
(式中、R41は水素原子、メチル基又はCHOHを示し、R42はOR43、ハロゲン原子、COR44、COOR45、CN、CONR4647又はR48を示す。R43〜R47はそれぞれ独立に水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、R48は非置換の若しくは置換基を有するアリール基又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。)
〔6〕前記マクロモノマー(b)が、下記式(b’)で表される構成単位を2以上有する、数平均分子量が500〜50000であるマクロモノマーである、〔2〕に記載の重合体溶液。
【化3】
(式中、R41は水素原子、メチル基又はCHOHを示し、R42はOR43、ハロゲン原子、COR44、COOR45、CN、CONR4647又はR48を示す。R43〜R47はそれぞれ独立に水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、R48は非置換の若しくは置換基を有するアリール基又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。)
〔7〕前記マクロモノマー(b)が、下記式(b’)で表される構成単位を2以上有する、数平均分子量が500〜50000であるマクロモノマーである、〔3〕又は〔4〕に記載の重合体含有組成物。
【化4】
(式中、R41は水素原子、メチル基又はCHOHを示し、R42はOR43、ハロゲン原子、COR44、COOR45、CN、CONR4647又はR48を示す。R43〜R47はそれぞれ独立に水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、R48は非置換の若しくは置換基を有するアリール基又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。)
〔8〕〔1〕に記載の(メタ)アクリル系共重合体を含む、重合体含有組成物。
〔9〕前記(メタ)アクリル系共重合体が前記構成単位(A1)を有し、
下記式(11)で表される化合物、下記式(12)で表される化合物、及び下記式(13)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルケニル化合物をさらに含む、〔8〕に記載の重合体含有組成物。
【化5】
(式中:Xは−O−、−S−又は−NR14−を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数1〜9のアルキル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示す。R及びR11はそれぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示す。R10は、単結合、又は炭素数1〜9のアルキレン基を示す。R12は、炭素数1〜9のアルキレン基を示す。)
〔10〕〔3〕、〔4〕、〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の重合体含有組成物を含む、防汚塗料組成物。
〔11〕防汚剤をさらに含む、〔10〕に記載の防汚塗料組成物。
〔12〕前記防汚剤が、亜酸化銅、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル、ピリジン−トリフェニルボラン及びメデトミジンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、〔11〕に記載の防汚塗料組成物。
〔13〕25℃における粘度が、5000mPa・s以下である、〔10〕〜〔12〕のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
〔14〕VOC含有量が、500g/L以下である、〔10〕〜〔13〕のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
〔15〕前記(メタ)アクリル系共重合体以外の熱可塑性樹脂をさらに含む、〔10〕〜〔14〕のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
〔16〕下記式(1)、下記式(2)又は下記式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(I)を有する単量体(a1)、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する単量体(a2)、及び下記式(a3−1)で表される単量体及び下記式(a3−2)で表される単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(a3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(a)と、
マクロモノマー(b)と、
を含む単量体混合物を重合して(メタ)アクリル系共重合体を得る工程を含む、(メタ)アクリル系共重合体の製造方法。
【化6】
(CH=C(R31)−CO−O)M ・・・(a3−1)
CH=C(R31)−CO−O−M−R32 ・・・(a3−2)
(式中、Xは−O−、−S−又は−NR14−を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、MはZn、Cu、Mg又はCaを示し、R31は水素原子又はメチル基を示し、R32は(メタ)アクリロイルオキシ基以外の有機酸残基を示す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐水性及び硬度に優れた塗膜を形成できる防汚塗料組成物、該防汚塗料組成物を得るために好適な(メタ)アクリル系共重合体、重合体溶液及び重合体含有組成物、ならびに前記(メタ)アクリル系共重合体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「VOC」とは、常温常圧で容易に揮発する有機化合物(揮発性有機化合物)を意味する。
「構成単位」は、重合反応によって単量体から直接形成されたものであってもよく、重合反応によって得られた重合体を処理することによって、前記重合体が有する前記構成単位の構造の一部が別の構造に変換された構成単位であってもよい。
「単量体」は、重合性を有する化合物(重合性単量体)を意味する。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称であり、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の総称であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称であり、「(メタ)アクリロニトリル」は、アクリロニトリルとメタクリロニトリルの総称であり、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドとメタクリルアミドの総称である。
「(メタ)アクリル系共重合体」は、構成単位の少なくとも一部が(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位である共重合体を意味する。(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系単量体以外の単量体(例えばスチレン等のビニル系単量体)由来の構成単位をさらに有していてもよい。
「(メタ)アクリル系単量体」は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
「粘度」は、特に規定のない場合は、B型粘度計により測定される値を意味する。
【0014】
〔(メタ)アクリル系共重合体〕
本発明の第一の態様は、構造(I)を有する構成単位(A1)及びトリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する構成単位(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位と、マクロモノマー(b)由来の構成単位(B)と、を有する(メタ)アクリル系共重合体(以下、「共重合体(A−1)」ともいう。)である。
共重合体(A−1)は、必要に応じて、構造(III)を有する構成単位(A3)をさらに有することができる。
共重合体(A−1)は、構成単位(A1)〜(A3)及び構成単位(B)以外の他の構成単位(C)をさらに有することができる。
【0015】
共重合体(A−1)が有する構成単位の少なくとも一部は(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位である。共重合体(A−1)中の全構成単位の合計(100質量%)に対する(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位の割合は、20〜100質量%が好ましく、40〜100質量%がより好ましい。
【0016】
(構成単位(A1))
構成単位(A1)は、下記式(1)、下記式(2)又は下記式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(I)を有する。
【0017】
【化7】
(式中、Xは−O−、−S−又は−NR14−を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ、炭素数1〜10のアルキレン基を示す。)
【0018】
Xは、−O−(エーテル性酸素原子)、−S−(スルフィド系硫黄原子)、−NR14−のいずれであってもよく、−O−が好ましい。
【0019】
式(1)中、R及びRにおける炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
及びRにおけるアルキル基の炭素数は、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
【0020】
及びRの好ましい組み合わせとして、水素原子とメチル基との組み合わせ、メチル基とメチル基との組み合わせ、水素原子と炭素数2〜10のアルキル基(以下、「長鎖アルキル基」ともいう。)との組み合わせ、メチル基と長鎖アルキル基との組み合わせ、水素原子と水素原子との組み合わせ、長鎖アルキル基と長鎖アルキル基との組み合わせ等が挙げられる。これらの中でも、加水分解性の点で、水素原子とメチル基との組み合わせが好ましい。
【0021】
における炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば前述の炭素数1〜10のアルキル基として挙げたアルキル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。Rにおけるアルキル基の炭素数は、1〜10が好ましい。
シクロアルキル基としては、炭素数4〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えばシクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
としては、炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基が好ましい。
【0022】
におけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基はそれぞれ、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アラルキル基及びアセトキシ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、置換基の数は1つでもよく2つ以上でもよい。
置換基としてのシクロアルキル基、アリール基はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。アルカノイルオキシ基としては、エタノイルオキシ基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。
【0023】
式(2)中、Rにおける炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
におけるアルキレン基の炭素数は、2〜7が好ましく、3〜4がより好ましい。
前記アルキレン基は、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシル基、アルカノイルオキシ基、アラルキル基及びアセトキシ基からなる群から選ばれる置換基により置換されていてもよい。置換基により置換されている場合、置換基の数は1つでもよく2つ以上でもよい。アルキレン基に置換してもよい置換基の具体例としては、Rにおける置換基と同様のものが挙げられる。
【0024】
式(3)中、Rは、式(1)中のRと同様であり、好ましい態様も同様である。
は、式(2)中のRと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0025】
構成単位(A1)は、典型的には、構造(I)を有する単量体(a1)単位である。
単量体(a1)としては、構造(I)とエチレン性不飽和結合(重合性炭素−炭素二重結合)とを有する単量体が挙げられる。この場合、単量体(a1)単位は、単量体(a1)のエチレン性不飽和結合が開裂して単結合となった構造を有する。
単量体(a1)は、共重合体(A−1)を有機溶剤に溶解したときの粘度が低くなる点から、エチレン性不飽和結合を1つ有する単官能単量体であることが好ましい。
【0026】
単量体(a1)としては、例えば、下記式(a1−1)で表される単量体、下記式(a1−2)で表される単量体、下記式(a1−3)で表される単量体等が挙げられる。
【0027】
【化8】
(式中、Zは、CH=CH−COO−、CH=C(CH)−COO−、CHR=CH−COO−、CH=C(CH)−COO−又はCH=CR−CHCOO−を示し、Rは、前記構造(I)又はアルキルエステル基を示し、Xは−O−、−S−又は−NR14−を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、R〜Rは前記と同義である。)
【0028】
Zにおいて、CH=CH−COO−はアクリロイルオキシ基、CH=C(CH)−COO−はメタクリロイルオキシ基である。
CH(CH)=CH−COO−は、クロトノイルオキシ基(エチレン性不飽和結合がトランス型)又はイソクロトノイルオキシ基(エチレン性不飽和結合がシス型)である。
CHR=CH−COO−は、カルボキシ基がヘミアセタールエステル基、ヘミケタールエステル基又はアルキルエステル基に置換された、マレイノイルオキシ基(エチレン性不飽和結合がシス型)又はフマロイルオキシ基(エチレン性不飽和結合がトランス型)である。
における構造(I)は、前記と同様である。Rが構造(I)である場合、Rは、Zが結合した基と同じ構造を有することが好ましい。例えば式(a1−1)で表される化合物の場合、Rは、−CR−XRで表される基であることが好ましい。
におけるアルキルエステル基は、−COORX1で表される。RX1はアルキル基を示す。RX1のアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
CH=C(CH)−COO−又はCH=CR−CHCOO−は、カルボキシ基がヘミアセタールエステル基、ヘミケタールエステル基又はアルキルエステル基に置換されたイタコノイルオキシ基である。Rは前記と同様である。
Zとしては、CH=CH−COO−又はCH(CH)=CH−COO−が好ましい。
【0029】
単量体(a1)としては、例えば以下に示すものが挙げられる。
【0030】
【化9】
【0031】
単量体(a1)は、市販品を購入することも可能であり、公知の方法を利用して適宜合成することも可能である。
例えば、カルボキシ基を有する単量体(a0)のカルボキシ基を構造(I)に変換することにより単量体(a1)を合成できる。
単量体(a0)としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル等が挙げられる。
【0032】
単量体(a0)のカルボキシ基を構造(I)に変換する方法としては、例えば単量体(a0)と、下記式(11)で表される化合物、下記式(12)で表される化合物、及び下記式(13)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルケニル化合物とを反応(付加反応)させる方法が挙げられる。アルケニル化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0033】
【化10】
(式中:Xは−O−、−S−又は−NR14−を示し、R14は水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数1〜9のアルキル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示す。R及びR11はそれぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示す。R10は、単結合、又は炭素数1〜9のアルキレン基を示す。R12は、炭素数1〜9のアルキレン基を示す。)
【0034】
アルケニル化合物として式(11)で表される化合物を用いると、前記式(a1−1)中のRがCH、RがR、RがRである化合物が得られる。
式(11)中、Rにおける炭素数1〜9のアルキル基は、炭素数が9以下である以外は、Rにおける炭素数1〜10のアルキル基と同様である。R、RはそれぞれR、Rと同様である。
式(11)で表される化合物としては、例えば、アルキルビニルエーテル(例えば、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル)、シクロアルキルビニルエーテル(例えば、シクロへキシルビニルエーテル)等のビニルエーテル類;エチル−1−プロペニルエーテル等の1−プロペニルエーテル類;エチル−1−ブテニルエーテル等の1−ブテニルエーテル類;等が挙げられる。これらのなかでは、ビニルエーテル類、1−プロペニルエーテル類が好ましい。
【0035】
アルケニル化合物として式(12)で表される化合物を用いると、前記式(a1−2)中のRがCH−R10である化合物が得られる。
式(12)中、R10における炭素数1〜9のアルキレン基は、炭素数が9以下である以外は、Rと同様である。
式(12)で表される化合物としては、例えば、2,3−ジヒドロフラン、5−メチル−2,3−ジヒドロフラン等のジヒドロフラン類;3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、5,6−ジヒドロ−4−メトキシ−2H−ピラン等のジヒドロピラン類;等が挙げられる。
【0036】
アルケニル化合物として式(13)で表される化合物を用いると、前記式(a1−3)中のRがR11、RがCH−R12である化合物が得られる。
式(13)中、R11は、Rと同様である。R12は、炭素数が9以下である以外は、Rと同様である。
式(13)で表される化合物としては、例えば、1−メトキシ−1−シクロペンテン、1−メトキシ−1−シクロヘキセン、1−メトキシ−1−シクロヘプテン、1−エトキシ−1−シクロペンテン、1−エトキシ−1−シクロヘキセン、1−ブトキシ−1−シクロペンテン、1−ブトキシ−1−シクロヘキセン等の1−アルコキシ−1−シクロアルキレン類;1−エトキシ−3−メチル−1−シクロヘキセン等の置換基含有1−アルコキシ−1−シクロアルキレン類;等が挙げられる。
【0037】
単量体(a0)とアルケニル化合物との反応は、比較的マイルドな条件で進行する。例えば、塩酸、硫酸、燐酸などの酸性触媒の存在下又は非存在下に、40〜100℃の反応温度に保って5〜10時間反応させることにより目的物が得られる。反応終了後、所定の条件で減圧蒸留を行って目的の単量体を回収することができる。
【0038】
(構成単位(A2))
構成単位(A2)は、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する。トリオルガノシリルオキシカルボニル基としては、例えば、下記式(II)で表される基が挙げられる。
−CO−O−SiR212223 ・・・(II)
(式中、R21〜R23はそれぞれ、炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
【0039】
21〜R23における炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
シクロアルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子、アルキル基、アシル基、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。置換基としてのアルキル基の炭素数は、1〜18程度が好ましい。
21〜R23はそれぞれ同一でもよく異なってもよい。
安定したポリッシングレート(研磨速度)を示す塗膜が得られ、防汚性能を長期間安定して維持できる点で、R21〜R23のうち少なくとも1つがイソプロピル基であることが好ましく、全てがイソプロピル基であることが特に好ましい。
【0040】
構成単位(A2)は、典型的には、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する単量体(a2)単位である。
単量体(a2)としては、トリオルガノシリルオキシカルボニル基とエチレン性不飽和結合とを有する単量体が挙げられる。
単量体(a2)は、共重合体(A−1)を有機溶剤に溶解したときの粘度が低くなる点から、エチレン性不飽和結合を1つ有する単官能単量体であることが好ましい。
【0041】
単量体(a2)としては、例えば、下記式(a2−1)で表される単量体、下記式(a2−2)で表される単量体等が挙げられる。これらの中でも前記式(a2−1)で表される単量体が好ましい。
CH=C(R24)−CO−O−SiR212223 ・・・(a2−1)
CH(COOR25)=C(R24)−CO−O−SiR212223 ・・・(a2−2)
(式中、R21〜R23は前記と同義であり、R24は水素原子またはメチル基を示し、R25はアルキル基を示す。)
【0042】
前記式(a2−1)で表される単量体の具体例として、以下に示すものが挙げられる。
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ−p−メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−s−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−2−メチルイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−t−ブチルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n−ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、n−オクチルジ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート等。
【0043】
前記式(a2−2)中、R25におけるアルキル基としては、例えば炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。
前記式(a2−2)で表される化合物の具体例として、以下に示すものが挙げられる。
トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ−n−ブチルシリル−n−ブチルマレート、t−ブチルジフェニルシリルメチルマレート、t−ブチルジフェニルシリル−n−ブチルマレート、トリイソプロピルシリルメチルフマレート、トリイソプロピルシリルアミルフマレート、トリ−n−ブチルシリル−n−ブチルフマレート、t−ブチルジフェニルシリルメチルフマレート、t−ブチルジフェニルシリル−n−ブチルフマレート等。
単量体(a2)は、市販品を購入することも可能であり、公知の方法を利用して適宜合成することも可能である。
【0044】
(構成単位(A3))
構成単位(A3)は、下記式(4)又は(5)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(III)を有する。
−COO−M−OCO ・・・(4)
−COO−M−R32 ・・・(5)
(式中、MはZn、Cu、Mg又はCaを示し、R32は(メタ)アクリロイルオキシ基以外の有機酸残基を示す。)
【0045】
構成単位(A3)は、典型的には、構造(III)を有する単量体(a3)単位である。構成単位(A3)及び単量体(a3)については後で詳しく説明する。
【0046】
なお、構成単位(A1)〜(A3)は、海水中等で加水分解可能な構造を持つ点で共通する。
単量体(a1)〜単量体(a3)はそれぞれマクロモノマー(b)に該当しない単量体である。
【0047】
(構成単位(B))
構成単位(B)は、マクロモノマー(b)由来の構成単位である。
マクロモノマー(b)は、ラジカル重合性基を有し、かつラジカル重合性基を有する単量体(以下「単量体(b1)」ともいう)由来の構成単位を2以上有する化合物である。マクロモノマー(b)が有する2以上の構成単位はそれぞれ同じでも異なってもよい。
【0048】
マクロモノマー(b)が有するラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、例えば、CH=C(COOR)−CH−、(メタ)アクリロイル基、2−(ヒドロキシメチル)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
ここで、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基又は非置換の若しくは置換基を有する複素環基を示す。
【0049】
Rにおけるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜20の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。炭素数1〜20の分岐又は直鎖アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基及びイコシル基が挙げられる。
【0050】
Rにおける脂環式基としては、単環式のものでも多環式のものでもよく、例えば、炭素数3〜20の脂環式基が挙げられる。脂環式基としては、シクロアルキル基等の飽和脂環式基が好ましく、具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、シクロオクチル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0051】
Rにおけるアリール基としては、例えば、炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。炭素数6〜18のアリール基の具体例としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0052】
Rにおける複素環式基としては、例えば、炭素数5〜18の複素環式基が挙げられる。炭素数5〜18の複素環式基の具体例としては、γ−ブチロラクトン基及びε−カプロラクトン基等の酸素原子含有複素環式基、ピリジル基、カルバゾリル基、ピロリジニル基、ピロリドン基等の窒素原子含有複素環式基、モルホリノ基等が挙げられる。
【0053】
前記アルキル基、脂環式基、アリール基、複素環基はそれぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基(ただしRが置換基を有するアルキル基である場合を除く)、アリール基、−COOR51、シアノ基、−OR52、−NR5354、−CONR5556、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、シロキシ基、及び親水性又はイオン性を示す基からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
ここで、R51〜R56はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、脂環式基又はアリール基を示す。これらの基はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。
【0054】
前記置換基としてのアルキル基、アリール基はそれぞれ、Rにおけるアルキル基、アリール基と同様のものが挙げられる。
前記置換基における−COOR51のR51としては、水素原子又はアルキル基が好ましい。すなわち、−COOR51は、カルボキシ基又はアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。
前記置換基における−OR52のR52としては、水素原子又は非置換のアルキル基が好ましい。すなわち、−OR52は、ヒドロキシ基又はアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられ、具体例としては、メトキシ基が挙げられる。
【0055】
前記置換基における−NR5354としては、例えばアミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。
前記置換基における−CONR5556としては、例えば、カルバモイル基(−CONH),N−メチルカルバモイル基(−CONHCH)、N,N−ジメチルカルバモイル基(ジメチルアミド基:−CON(CH)等が挙げられる。
【0056】
前記置換基におけるハロゲン原子としては、例えば、ふっ素原子、塩素原子、臭素原子及びよう素原子等が挙げられる。
前記置換基における親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシ基のアルカリ塩又はスルホキシ基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
【0057】
Rとしては、アルキル基又は飽和脂環式基が好ましく、アルキル基、又は非置換の若しくは置換基としてアルキル基を有する飽和脂環式基がより好ましい。
上記の中でも、入手のし易さから、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、イソボルニル基及びアダマンチル基が好ましい。
【0058】
単量体(b1)が有するラジカル重合性基としては、マクロモノマー(b)が有するラジカル重合性基と同様に、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。
単量体(b1)としては、種々のものが用いられ得るが、例えば、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸3,5,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートやその誘導体、水添ロジンアクリレートやその誘導体、(メタ)アクリル酸ドコシル等の炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等のカルボキシル基含有ビニル系単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系のビニル系単量体;
(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;
アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、「プラクセルFM」(ダイセル化学(株)製カプロラクトン付加モノマー、商品名)、「ブレンマーPME−100」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が2であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME−200」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が4であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME−400」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が9であるもの)、商品名)、「ブレンマー50POEP−800B」(日油(株)製オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−メタクリレート(エチレングリコールの連鎖が8であり、プロピレングリコールの連鎖が6であるもの)、商品名)及び「ブレンマー20ANEP−600」(日油(株)製ノニルフェノキシ(エチレングリコール−ポリプロピレングリコール)モノアクリレート、商品名)、「ブレンマーAME−100」(日油(株)製、商品名)、「ブレンマーAME−200」(日油(株)製、商品名)及び「ブレンマー50AOEP−800B」(日油(株)製、商品名)サイラプレーンFM−0711(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM−0721(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM−0725(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM−0701(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM−0701T(JNC(株)製、商品名)、X−22−174DX(信越化学工業(株)製、商品名)、X−22−2426(信越化学工業(株)製、商品名)、X−22−2475(信越化学工業(株)製、商品名)、
3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤含有モノマー、
前記単量体(a2)等の、シランカップリング剤含有モノマー以外のオルガノシリル基含有モノマー;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン、
(メタ)アクリル酸2−イソシアナトエチル2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)メタクリレート、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2−テトラフルオロー1−(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有モノマー(ただしハロゲン化オレフィンを除く)、
1−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、1−(2−エチルへキシルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−(シクロへキシルオキシ)エチルメタクリレート)、2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等のアセタール構造を持つモノマー、
4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、(メタ)アクリル酸−2−イソシアナトエチル等が挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
単量体(b1)の少なくとも一部は(メタ)アクリル系単量体であることが好ましい。
【0059】
単量体(b1)由来の構成単位としては、下記式(b’)で示される構成単位(以下「構成単位(b’)」ともいう)が好ましい。すなわち、マクロモノマー(b)は、ラジカル重合性基を有し、かつ構成単位(b’)を2以上有することが好ましい。
【0060】
【化11】
(式中、R41は水素原子、メチル基又はCHOHを示し、R42はOR43、ハロゲン原子、COR44、COOR45、CN、CONR4647又はR48を示す。R43〜R47はそれぞれ独立に水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するへテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、又は非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基を示し、R48は非置換の若しくは置換基を有するアリール基又は非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。)
【0061】
43〜R47におけるアルキル基、脂環式基、アリール基はそれぞれ、前述のRにおけるアルキル基、脂環式基、アリール基と同様のものが挙げられる。
ヘテロアリール基としては、例えば、ピリジル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
非芳香族の複素環式基としては、例えば、ピロリジニル基、ピロリドン基等が挙げられる。
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
オルガノシリル基としては、例えばトリオルガノシリル基が挙げられる。トリオルガノシリル基としては、前記トリオルガノシリルオキシカルボニル基におけるトリオルガノシリル基(例えば−SiR212223)が挙げられる。
【0062】
前記アルキル基、脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、オルガノシリル基はそれぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、カルボン酸基(COOH)、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基(SOH)、ハロゲン原子等が挙げられる。
カルボン酸エステル基としては、例えば前記Rの説明で挙げた−COOR51のR51がアルキル基、脂環式基又はアリール基である基が挙げられる。
アルコキシ基としては、前記−OR52のR52がアルキル基である基が挙げられる。
2級アミノ基としては、前記−NR5354のR53が水素原子、R54がアルキル基、脂環式基又はアリール基である基が挙げられる。
3級アミノ基としては、前記−NR5354のR53及びR54がそれぞれアルキル基、脂環式基又はアリール基である基が挙げられる。
アルキル基、アリール基、ハロゲン原子はそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。
【0063】
48におけるアリール基、ヘテロアリール基はそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。
前記アリール基、ヘテロアリール基はそれぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、ハロゲン原子等が挙げられる。
カルボン酸エステル基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルキル基、アリール基及びハロゲン原子はそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。
オレフィン基としては、例えばアリル基等が挙げられる。オレフィン基は置換基を有していてもよい。オレフィン基における置換基としては、R48における置換基と同様のものが挙げられる。
【0064】
構成単位(b’)としては、R41が水素原子又はメチル基がであり、R42がCOOR45である構成単位が好ましい。R45は、水素原子、アルキル基、飽和脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基又は非芳香族の複素環式基が好ましい。
【0065】
構成単位(b’)は、CH=CR4142に由来する構成単位である。CH=CR4142の具体例としては、以下のものが挙げられる。
置換又は非置換のアルキル(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−メトキシブチル(メタ)アクリレート]、置換又は非置換のアラルキル(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、置換又は非置換のアリール(メタ)アクリレート[例えば、フェニル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、脂環式(メタ)アクリレート[例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート]、ハロゲン原子含有(メタ)アクリレート[例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート]等の疎水基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート等のオキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル等の末端アルコキシアリル化ポリエーテル単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル単量体;
ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の第一級または第二級アミノ基含有ビニル単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第三級アミノ基含有ビニル単量体;
ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性単量体;
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ−p−メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−s−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−2−メチルイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−t−ブチルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n−ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、n−オクチルジ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート等のオルガノシリル基含有ビニル単量体;
メタクリル酸、アクリル酸、ビニル安息香酸、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
アクリロニトリル、メタクリロニトニル等のシアノ基含有ビニル単量体;
アルキルビニルエーテル[例えば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等]、シクロアルキルビニルエーテル[例えば、シクロヘキシルビニルエーテル等]等のビニルエーテル単量体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル単量体;
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;
塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化オレフィン;等。
【0066】
マクロモノマー(b)は、構成単位(b’)以外の他の構成単位をさらに有していてもよい。他の構成単位としては、例えば前述の単量体(b1)のうちCH=CRに該当しない単量体に由来する構成単位が挙げられる。
他の構成単位の好ましい具体例として、以下の単量体由来の構成単位が挙げられる。
トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ−n−ブチルシリル−n−ブチルマレート、t−ブチルジフェニルシリルメチルマレート、t−ブチルジフェニルシリル−n−ブチルマレート、トリイソプロピルシリルメチルフマレート、トリイソプロピルシリルアミルフマレート、トリ−n−ブチルシリル−n−ブチルフマレート、t−ブチルジフェニルシリルメチルフマレート、t−ブチルジフェニルシリル−n−ブチルフマレート等のオルガノシリル基含有ビニル単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル単量体;
クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル等の多官能単量体等。
【0067】
マクロモノマー(b)としては、2以上の構成単位(b’)を含む主鎖の末端にラジカル重合性基が導入されたマクロモノマーが好ましく、下記式(b−1)で表されるマクロモノマーがより好ましい。
【0068】
【化12】
(式中、Rは前記と同義であり、Qは2以上の構成単位(b’)を含む主鎖部分を示し、Eは末端基を示す。)
【0069】
式(1)中、Rは、前述のCH=C(COOR)−CH−におけるRと同様であり、好ましい態様も同様である。
Qに含まれる2以上の構成単位(b’)はそれぞれ、同じでもよく異なってもよい。
Qは、構成単位(b’)のみからなるものでもよく、構成単位(b’)以外の他の構成単位をさらに含むものであってもよい。
Qを構成する構成単位の数は、マクロモノマー(b)の数平均分子量が後述する好ましい範囲内となる値が好ましい。
Eとしては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子、ラジカル重合開始剤に由来する基、ラジカル重合性基等が挙げられる。
【0070】
マクロモノマー(b)としては、下記式(b−2)で表されるマクロモノマーが特に好ましい。
【0071】
【化13】
(式中、R、R41、R45及びEはそれぞれ前記と同義であり、nは2以上の自然数を示す。)
【0072】
nは2以上の自然数である。nは、マクロモノマー(b)の数平均分子量(Mn)が500〜50000となる範囲内であることが好ましい。数平均分子量のより好ましい範囲は下記のとおりである。n個のR41はそれぞれ同じでも異なってもよい。n個のR42はそれぞれ同じでも異なってもよい。
【0073】
マクロモノマー(b)の数平均分子量(Mn)は、500〜50000が好ましく、500以上50000未満がより好ましく、800〜30000がさらに好ましく、1000〜20000が特に好ましい。マクロモノマー(b)の数平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の硬度、耐水性がより優れる。マクロモノマー(b)の数平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体(A−1)の溶液やこれを含む重合体含有組成物、防汚塗料組成物の貯蔵安定性がより優れる。
マクロモノマー(b)の数平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを基準物質として測定される。
マクロモノマー(b)の数平均分子量は、マクロモノマー(b)製造時における重合開始剤や連鎖移動剤の使用量等によって調整できる。
【0074】
したがって、マクロモノマー(b)としては、構成単位(b’)を2以上有する、数平均分子量(Mn)が500〜50000であるマクロモノマーが好ましい。このマクロモノマーにおける構成単位(b’)の好ましい種類、より好ましい数平均分子量の範囲は前記と同様である。
【0075】
マクロモノマー(b)のガラス転移温度は、−50〜120℃が好ましく、−20〜100℃がより好ましく、20〜80℃がさらに好ましい。マクロモノマー(b)のガラス転移温度が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の硬度、耐水性がより優れる。マクロモノマー(b)のガラス転移温度が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体(A−1)の溶液やこれを含む組成物(重合体含有組成物、防汚塗料組成物)の貯蔵安定性がより優れる。また、それらの溶液や組成物を高固形分でも低粘度のものとしやすい。
マクロモノマー(b)のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
マクロモノマー(b)のガラス転移温度は、マクロモノマー(b)を形成する単量体の組成等によって調整できる。
【0076】
マクロモノマー(b)は、公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。
マクロモノマー(b)の製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、α−メチルスチレンダイマー等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法、重合体にラジカル重合性基を化学的に結合させる方法、熱分解による方法等が挙げられる。
これらの中で、マクロモノマー(b)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点で、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。なお、コバルト連鎖移動剤を用いて製造した場合のマクロモノマー(b)は、前記式(b−1)で表される構造を有する。
【0077】
コバルト連鎖移動剤を用いてマクロモノマー(b)を製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、及び懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法が挙げられる。回収工程が簡便である点から、水系分散重合法が好ましい。
重合体にラジカル重合性基を化学的に結合させる方法としては、例えば、ハロゲン基を有する重合体のハロゲン基を、ラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物で置換することにより製造する方法、酸基を有するビニル系単量体とエポキシ基を有するビニル系重合体とを反応させる方法、エポキシ基を有するビニル系重合体と酸基を有するビニル系単量体とを反応させる方法、水酸基を有するビニル系重合体とジイソシアネート化合物とを反応させ、イソシアネート基を有するビニル系重合体を得て、このビニル系重合体と水酸基を有するビニル系単量体とを反応させる方法等が挙げられ、いずれの方法によって製造されても構わない。
【0078】
(構成単位(C))
構成単位(C)としては、特に限定されず、例えば、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(a3)及びマクロモノマー(b)以外の他の単量体(c)単位が挙げられる。
単量体(c)としては、単量体(a1)、単量体(a2)、マクロモノマー(b)と共重合可能なものであれば特に限定されず、エチレン性不飽和結合等のラジカル重合性基を有する種々の単量体を用いることができる。例えば前記で挙げたマクロモノマー(b)を得るための単量体(b1)と同様のものを用いることができる(ただし、単量体(a1)、単量体(a2)及び単量体(a3)は除く。)。単量体(c)は1種又は2種以上を必要に応じて適宜選択して使用することができる。
【0079】
単量体(c)は、共重合体(A−1)を有機溶剤に溶解したときに高固形分でも低粘度としやすい点から、エチレン性不飽和結合を1つ有する単官能単量体であることが好ましく、エチレン性不飽和結合が、アクリロイル基に由来するものであることが特に好ましい。すなわち単量体(c)は、アクリロイル基を1つ有する単官能単量体が特に好ましい。
【0080】
単量体(c)は、形成される塗膜の可撓性や耐クラック・耐剥離性と、長期の自己研磨性とをバランスよく良好にすることができる点では、疎水基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体を含むことが好ましい。
疎水基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、置換又は未置換のアルキル(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−メトキシブチル(メタ)アクリレート]、置換又は未置換のアラルキル(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、置換又は未置換のアリール(メタ)アクリレート[例えば、フェニル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、脂環式(メタ)アクリレート[例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート]、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0081】
単量体(c)は、形成される塗膜の溶解性や耐クラック性の点では、オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体を含むことが好ましい。
オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、下記式(c−1)で表される単量体が好ましい。
−(CHCHO)57 (c−1)
(式中、Zは(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、R57は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又はアリール基を示し、pは1〜15の整数を示す。)
【0082】
式(c−1)中、Zがアクリロイルオキシ基の場合とメタクリロイルオキシ基の場合とでは、アクリロイルオキシ基の場合の方が加水分解速度を速い傾向があり、溶解速度にあわせて任意に選択することができる。
57における炭素数1〜10のアルキル基、アリール基はそれぞれ前記Rで挙げたものと同様のものが挙げられる。
pは、耐水性、耐クラック性の点から、1〜10の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1〜3の整数がさらに好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0083】
単量体(c)は、形成される塗膜の耐水性、消耗度の点から、カルボキシ基を有しないことが好ましい。
単量体(c)は、市販品を購入することも可能であり、公知の方法を利用して適宜合成することも可能である。
【0084】
(構成単位の含有量)
共重合体(A−1)における構成単位(A1)及び構成単位(A2)の合計の含有量(いずれか一方の構成単位を含まない場合を含む。)は、全構成単位の合計(100質量%)に対し、1〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%がさらに好ましい。構成単位(A1)及び構成単位(A2)の合計の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の自己研磨性がより優れる。構成単位(A1)及び構成単位(A2)の合計の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、形成される塗膜が適度な加水分解性を有し、長期にわたって自己研磨性が維持され、防汚効果がより優れたものとなる。
【0085】
共重合体(A−1)における構成単位(B)の含有量は、全構成単位の合計(100質量%)に対し、1〜60質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。構成単位(B)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の硬度、耐水性がより優れる。構成単位(B)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体(A−1)を有機溶剤に溶解したときの溶液粘度及びこの溶液を含む重合体組成物や防汚塗料組成物の粘度がより低くなる。
【0086】
共重合体(A−1)における構成単位(A3)の含有量は、例えば、全構成単位の合計(100質量%)に対して0〜97質量%であってよい。
【0087】
構成単位(C)の含有量は、全構成単位の合計(100質量%)に対し、0〜98質量%が好ましく、5〜88質量%がより好ましく、10〜75質量%がさらに好ましい。
【0088】
構成単位(C)が、疎水基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位を有する場合、この構成単位の含有量は、共重合体(A−1)中の全構成単位の合計に対し、1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましい。この構成単位の含有量が前記範囲内であれば、形成される塗膜の可撓性や耐クラック性、耐剥離性がより高くなり、防汚効果がより優れたものとなる。この構成単位の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、形成される塗膜が適度な加水分解性を有し、長期にわたって自己研磨性が維持され、防汚効果がより優れたものとなる。
【0089】
構成単位(C)が、オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位を有する場合、この構成単位の含有量は、共重合体(A−1)中の全構成単位の合計に対し、1〜80質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、20〜50質量%がさらに好ましい。この構成単位の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の親水性がより高くなり、自己研磨性がより優れたものとなる。この構成単位の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、形成される塗膜が適度な加水分解性を有し、長期にわたって自己研磨性が維持され、防汚効果がより優れたものとなる。
【0090】
なお、構成単位(A1)、構成単位(A2)、構成単位(A3)、構成単位(B)及び構成単位(C)の合計は100質量%である。
共重合体中の各構成単位の含有量(質量%)は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル法等の公知の方法により測定できる。
【0091】
共重合体(A−1)は、単量体(a1)及び単量体(a2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(a’)とマクロモノマー(b)とを含む単量体混合物を重合して得られた共重合体であることが好ましい。このような共重合体であれば、エチレン性不飽和結合及びカルボキシ基を有する単量体(a0)とマクロモノマー(b)とを含む単量体混合物(β1)を重合し、カルボキシ基を有する共重合体(A0)を得て、この共重合体(A0)のカルボキシ基を構造(I)に変換して得られた共重合体に比べて、耐水性がより優れる。
前記単量体混合物は、単量体(a’)1〜80質量%と、マクロモノマー(b)1〜60質量%と、単量体(c)0〜98質量%とからなることが好ましい。各単量体の含有量は、単量体混合物全量に対する割合である。各単量体のより好ましい含有量の範囲は、各単量体由来の構成単位の好ましい含有量の範囲と同様である。
【0092】
共重合体(A−1)の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜100,000が好ましく、3,000〜50,000がより好ましく、5,000〜30,000がさらに好ましく、10,000〜20,000が特に好ましい。
共重合体(A−1)の重量平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体(A−1)を有機溶剤に溶解した溶液の粘度がより低くなり、この溶液を含む防汚塗料組成物として高固形分低粘度のものを得やすい。共重合体(A−1)の重量平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の硬度、耐久性等がより優れる。
【0093】
共重合体(A−1)の数平均分子量(Mn)は、1,000〜50,000が好ましく、2,000〜25,000がより好ましく、2,500〜15,000がさらに好ましく、5,000〜10,000が特に好ましい。
重量平均分子量及び数平均分子量はそれぞれ、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを基準物質として測定される。
【0094】
共重合体(A−1)の酸価は、5mgKOH/g以下が好ましく、1mgKOH/g以下がより好ましく、0mgKOH/gであってもよい。共重合体(A−1)の酸価が前記上限値以下であれば、形成される塗膜の耐水性及び塗料の貯蔵安定性がより優れる。
酸価は、水酸化カリウム溶液による中和滴定により測定される。
【0095】
共重合体(A−1)は、架橋構造を有しない鎖状の重合体であることが好ましい。鎖状であると、架橋構造を有する場合に比べて、共重合体(A−1)を有機溶剤に溶解した溶液の粘度が低くなる。
【0096】
(共重合体(A−1)の製造方法)
共重合体(A−1)の製造方法としては、例えば、以下の製造方法(α)が挙げられる。
製造方法(α):単量体(a1)及び単量体(a2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(a’)と、マクロモノマー(b)とを含む単量体混合物(α1)を重合する方法。
前記単量体混合物(α1)は、単量体(a3)、他の単量体(c)をさらに含んでもよい。
【0097】
共重合体(A−1)が構成単位(A1)を有する場合、以下の製造方法(β)によっても共重合体(A−1)を製造できる。
製造方法(β):エチレン性不飽和結合及びカルボキシ基を有する単量体(a0)と、マクロモノマー(b)とを含む単量体混合物(β1)を重合し、カルボキシ基を有する共重合体(A0)を得て、この共重合体(A0)のカルボキシ基を構造(I)に変換する方法。
単量体混合物(β1)は、単量体(a2)、単量体(a3)、他の単量体(c)をさらに含んでもよい。
【0098】
「製造方法(α)」
製造方法(α)において、単量体混合物(α1)の組成、すなわち単量体混合物(α1)を構成する単量体の種類及び全単量体の合計質量に対する各単量体の含有量(質量%)は、共重合体(A−1)の組成、すなわち共重合体(A−1)を構成する各単量体由来の構成単位の種類及び全構成単位の合計質量に対する各構成単位の含有量(質量%)と同様である。
単量体混合物(α1)の重合は、後述する第六の態様の(メタ)アクリル系共重合体の製造方法における単量体混合物の重合と同様にして行うことができる。
【0099】
「製造方法(β)」
製造方法(β)において、単量体混合物(β1)の組成は、単量体(a1)が単量体(a0)である以外は、共重合体(A−1)の組成と同様である。単量体(a0)は前記単量体(a1)の説明で挙げたものと同様である。単量体混合物(β1)の重合は、製造方法(α)における単量体混合物(α1)の重合と同様にして行うことができる。
【0100】
共重合体(A0)のカルボキシ基を構造(I)に変換する方法としては、例えば、共重合体(A0)と、前記式(11)で表される化合物、前記式(12)で表される化合物、及び前記式(13)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルケニル化合物とを反応(付加反応)させる方法が挙げられる。
アルケニル化合物としては前記と同様のものが挙げられる。
共重合体(A0)と1−アルケニルエーテルとの反応は、前記単量体(a0)とアルケニル化合物との反応と同様にして行うことができる。
【0101】
(作用効果)
共重合体(A−1)は、構成単位(A1)及び構成単位(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位を有するため、海水中等で加水分解可能である。そのため共重合体(A−1)を含む塗膜は、海水中等で自己研磨性を示す。すなわち、共重合体(A−1)は、構造(I)及びトリオルガノシリルオキシカルボニル基のいずれか一方又は両方を有しており、この状態では海水に溶解しないが、海水との接触により構造(I)やトリオルガノシリルオキシカルボニル基が加水分解すると、カルボキシ基等が生成し、海水に溶解する。塗膜表面が徐々に海水に溶解して表面更新(自己研磨)される。したがって、共重合体(A−1)を含む防汚塗料組成物の塗膜も自己研磨性を示す。この塗膜は海水中で表面更新され、防汚性を示す。特に塗膜が防汚剤を含む場合は、塗膜表面に常に防汚剤が露出し、優れた防汚効果が長期にわたって発揮される。
【0102】
また、共重合体(A−1)にあっては、構成単位(A1)及び構成単位(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位と構成単位(B)とを有するため、耐水性及び硬度に優れた塗膜を形成できる。さらには、この塗膜を消耗度や基材への密着性に優れたものとすることができる。かかる塗膜は、防汚効果の低下を招く塗膜の損傷や剥離、経時的な消耗度の低下が生じにくい。そのため、海水中等における静置防汚性に優れ、また、防汚効果が長期にわたって安定的に発揮される。
【0103】
また、共重合体(A−1)にあっては、構成単位(A1)及び構成単位(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位と構成単位(B)とを有することで、共重合体(A−1)と有機溶剤とを含む重合体含有組成物を高固形分低粘度の溶液状とすることができ、その貯蔵安定性にも優れる。重合体含有組成物が高固形分低粘度であれば、防汚塗料組成物の製造時にさらに有機溶剤を加えなくても、塗装適性を有する防汚塗料組成物を得ることができる。また、防汚剤等を加える場合に、有機溶剤を加えなくても防汚剤等と良好に混合できる。そのため、VOC含有量が少ない(例えば430g/L以下)防汚塗料組成物を得ることができる。
従来、防汚塗料組成物を高固形分低粘度にしようとすると、塗膜の硬度が低下する傾向があった。防汚塗料組成物に共重合体(A−1)を用いることで、防汚塗料組成物を高固形分低粘度にした場合でも、硬度に優れた塗膜を形成できる。
また、共重合体(A−1)にあっては、共重合体(A−1)を含む塗料を塗装し塗膜を形成した後、塗装直後からの塗膜の硬度の上昇速度が速く、耐盤木性が高い傾向がある。この上昇速度が遅いと、塗膜の硬度が充分に高くなるのに時間がかかる。塗膜の硬度が充分に高くなる前に塗装物を移動させたりすると、塗膜が変形して外観等が悪化するため、塗装後に次の工程を進めるまでに時間がかかる。塗膜の硬度の上昇速度が速いことは、生産性の点で好ましい。
【0104】
共重合体(A−1)は、防汚塗料組成物用として好適である。ただし、共重合体(A−1)の用途は防汚塗料組成物に限定されず、他の用途、例えば防曇塗料組成物等に用いることもできる。
【0105】
〔重合体溶液〕
本発明の第二の態様は、構成単位(A3)と構成単位(B)とを有する(メタ)アクリル系共重合体(以下、「共重合体(A−2)」ともいう。)と、有機溶剤と、を含み、25℃における粘度が5×10mPa・s以下である重合体溶液である。
重合体溶液においては、有機溶剤中に重合体が溶解している。
【0106】
<共重合体(A−2)>
共重合体(A−2)は、構成単位(A1)、構成単位(A2)、構成単位(C)をさらに有することができる。
構成単位(B)、構成単位(A1)、構成単位(A2)、構成単位(C)はそれぞれ前記と同様である。
【0107】
共重合体(A−2)が有する構成単位の少なくとも一部は(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位である。共重合体(A−2)中の全構成単位の合計(100質量%)に対する(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位の割合は、20〜100質量%が好ましく、40〜100質量%がより好ましい。
【0108】
(構成単位(A3))
構成単位(A3)は、下記式(4)又は(5)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(III)を有する。
−COO−M−OCO ・・・(4)
−COO−M−R32 ・・・(5)
(式中、MはZn、Cu、Mg又はCaを示し、R32は(メタ)アクリロイルオキシ基以外の有機酸残基を示す。)
【0109】
Mとしては、ZnまたはCuが好ましい。
32の有機酸残基は、有機酸からプロトン1つを除いた残りの部分(例えばカルボン酸のカルボキシ基からプロトンを除いた残りの部分)をいい、このプロトンの代わりにMとイオン結合している。
有機酸としては、カルボン酸が好ましく、例えばモノクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、バーサチック酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、クレソチン酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、安息香酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、キノリンカルボン酸、ニトロ安息香酸、ニトロナフタレンカルボン酸、ピルビン酸、ナフテン酸、アビエチン酸、水添アビエチン酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。
32としては、長期にわたりクラックや剥離を防止できる耐久性の高い塗膜が得られる点で、炭素数1〜20の脂肪酸残基(脂肪族モノカルボン酸残基)が好ましい。
【0110】
構成単位(A3)は、典型的には、構造(III)を有する単量体(a3)単位である。
構造(III)を有する単量体(a3)としては、例えば、式(4)で表される基の両末端に、非置換又は置換基を有するビニル基が結合した単量体、式(5)で表される基の片末端(R32側とは反対側)に、非置換又は置換基を有するビニル基が結合した単量体等が挙げられる。
式(4)で表される基の両末端に前記ビニル基が結合した単量体として、例えば下記式(a3−1)で表される単量体(以下、「単量体(a3−1)」ともいう。)が挙げられる。
式(5)で表される基の片末端に前記ビニル基が結合した単量体として、例えば下記式(a3−2)で表される単量体(以下、「単量体(a3−2)」ともいう。)が挙げられる。
【0111】
(CH=C(R31)−CO−O)M ・・・(a3−1)
CH=C(R31)−CO−O−M−R32 ・・・(a3−2)
式中、MはZn、Cu、Mg又はCaを示し、R31は水素原子又はメチル基を示し、R32は(メタ)アクリロイルオキシ基以外の有機酸残基を示す。
M及びR32はそれぞれ前記と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0112】
単量体(a3−1)としては、例えばアクリル酸亜鉛[(CH=CHCOO)Zn]、メタクリル酸亜鉛[(CH=C(CH)COO)Zn]、アクリル酸銅[(CH=CHCOO)Cu]、メタクリル酸銅[(CH=C(CH)COO)Cu]、アクリル酸マグネシウム[(CH=CHCOO)Mg]、メタクリル酸マグネシウム[(CH=C(CH)COO)Mg]、アクリル酸カルシウム[(CH=CHCOO)Ca]、メタクリル酸カルシウム[(CH=C(CH)COO)Ca]等が挙られる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
中でも、共重合体(A−2)の透明性が高くなり、これを含む塗膜の色調が美しくなる傾向にある点から、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸銅が好ましい。
【0113】
単量体(a3−2)としては、例えばモノクロル酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸銅(メタ)アクリレート;モノフルオロ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸銅(メタ)アクリレート;酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、酢酸銅(メタ)アクリレート;プロピオン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸カルシウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸亜鉛(メタ)アクリレート、プロピオン酸銅(メタ)アクリレート;オクチル酸マグネシウム(メタ)アクリレート、オクチル酸カルシウム(メタ)アクリレート、オクチル酸亜鉛(メタ)アクリレート、オクチル酸銅(メタ)アクリレート;バーサチック酸マグネシウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸カルシウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸亜鉛(メタ)アクリレート、バーサチック酸銅(メタ)アクリレート;イソステアリン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸カルシウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸亜鉛(メタ)アクリレート、イソステアリン酸銅(メタ)アクリレート;パルミチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸カルシウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、パルミチン酸銅(メタ)アクリレート;クレソチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸カルシウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、クレソチン酸銅(メタ)アクリレート;α−ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸カルシウム(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート;β−ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸カルシウム(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート;安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、安息香酸カルシウム(メタ)アクリレート、安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、安息香酸銅(メタ)アクリレート;2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート;2,4−ジクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸カルシウム(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート;キノリンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸カルシウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸亜鉛(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸銅(メタ)アクリレート;ニトロ安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸カルシウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸銅(メタ)アクリレート;ニトロナフタレンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸カルシウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸銅(メタ)アクリレート;ピルビン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ピルビン酸カルシウム(メタ)アクリレート、ピルビン酸亜鉛(メタ)アクリレート、ピルビン酸銅(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
中でも、共重合体(A−2)の透明性が高くなり、これを含む塗膜の色調が美しくなる傾向にある点から、MがZnである亜鉛含有モノマーが好ましい。さらに、得られる塗膜の耐久性の点から、脂肪酸亜鉛(メタ)アクリレート(式(a3−2)中のMがZn、R22が脂肪酸残基であるもの)、又は脂肪酸銅(メタ)アクリレート(式(a3−2)中のMがCu、R22が脂肪酸残基であるもの)がより好ましい。
【0114】
単量体(a3)は、得られる塗膜の自己研磨性が長期にわたり維持され、良好な防汚性が得られる点から、単量体(a3−1)及び単量体(a3−2)の両方を含むことができる。すなわち、共重合体(A−2)は、単量体(a3−1)単位及び単量体(a3−2)単位の両方を有することができる。
単量体(a3−1)と単量体(a3−2)との組み合わせとしては、(メタ)アクリル酸亜鉛と脂肪酸亜鉛(メタ)アクリレートとの組み合わせ、又は(メタ)アクリル酸銅と脂肪酸銅(メタ)アクリレートが好ましい。
【0115】
共重合体(A−2)が単量体(a3−1)単位及び単量体(a3−2)単位の両方を有する場合、共重合体(A−2)中の単量体(a3−1)単位と単量体(a3−2)単位との比率(モル比)は、単量体(a3−1)単位/単量体(a3−2)単位=10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、30/70〜70/30がさらに好ましい。この比率が90/10以下であると、塗膜の耐クラック性や密着性が優れ、10/90以上であると、塗料が低粘度化しやすい傾向にある。
【0116】
単量体(a3)は、公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。
単量体(a3−1)は、例えば、式(a3−1)中のMに対応する金属元素を含む無機金属化合物と、(メタ)アクリル酸とを、有機溶剤等の希釈剤またはエチレン性不飽和単量体等の重合性不飽和基を有する反応性希釈剤中で反応させる方法により得られる。この方法で得られる金属含有重合性単量体を含有する混合物は、有機溶剤や他の単量体との相溶性に優れ、重合を容易に行うことができる。前記反応は、水の存在下で行うことが好ましく、反応物中の水の含有量を0.01〜30質量%の範囲とすることが好ましい。前記無機金属化合物としては、例えばZn、Cu、Mg及びCaから選ばれる金属の酸化物、水酸化物、塩化物等が挙げられる。
【0117】
単量体(a3−2)は、例えば、式(a3−2)中のMに対応する金属元素を含む無機金属化合物と、(メタ)アクリル酸と、式(32)中の有機酸残基R32に対応する有機酸とを、有機溶剤等の希釈剤あるいはエチレン性不飽和単量体等の重合性不飽和基を有する反応性希釈剤中で反応させる方法により得られる。前記無機金属化合物としては、単量体(a3−1)を得るための無機金属化合物と同様のものが挙げられる。
【0118】
単量体(a3−1)と単量体(a3−2)とを含有する単量体混合物は、例えば、式(a3−1)〜(a3−2)中のMに対応する金属元素を含む無機金属化合物と、(メタ)アクリル酸と、式(a3−2)中の有機酸残基R32に対応する有機酸とを、有機溶剤等の希釈剤あるいはエチレン性不飽和単量体等の反応性希釈剤中で反応する方法等により得られる。
その際、R22に対応する有機酸の使用量は、無機金属化合物に対して0.01〜3倍モルであることが好ましく、0.01〜0.95倍モルがより好ましく、0.1〜0.7倍モルがさらに好ましい。この有機酸の含有量が0.01倍モル以上であると、この単量体混合物の製造工程において固体の析出が抑制されると共に、得られる塗膜の自己研磨性、耐クラック性がより良好となる。3倍モル以下であると、得られる塗膜の防汚性がより長期間維持される傾向にある。
【0119】
(構成単位の含有量)
共重合体(A−2)における構成単位(A3)の含有量は、全構成単位の合計(100質量%)に対し、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。構成単位(A3)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の自己研磨性がより優れる。構成単位(A3)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、重合体溶液やこれを含む重合体組成物、防汚塗料組成物等の貯蔵安定性、形成される塗膜の密着性、海水中での耐水性、及び硬度と耐クラック性のバランスが向上する傾向にある。
【0120】
共重合体(A−2)における構成単位(B)の含有量は、全構成単位の合計(100質量%)に対し、1〜60質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。構成単位(B)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の硬度、海水中での耐水性及び密着性がより優れる。また、重合体溶液やこれを含む重合体組成物、防汚塗料組成物が高固形分でも低粘度にすることができる。構成単位(B)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、形成される塗膜のクラック性、重合体溶液やこれを含む重合体組成物、防汚塗料組成物等の貯蔵安定性がより優れる。
【0121】
共重合体(A−2)における構成単位(A1)及び構成単位(A2)の合計の含有量は、例えば、全構成単位の合計(100質量%)に対して0〜30質量%であってよい。
【0122】
共重合体(A−2)が構成単位(C)を含む場合、構成単位(C)の含有量は、全構成単位の合計(100質量%)に対し、10〜98質量%が好ましく、20〜93質量%がより好ましく、30〜90質量%がさらに好ましい。
【0123】
共重合体(A−2)中、カルボキシ基含有不飽和単量体に由来する構成単位の含有量は、全構成単位の合計(100質量%)に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、0質量%が特に好ましい。すなわち、共重合体(A−2)は、カルボキシ基含有不飽和単量体に由来する構成単位を含まないことが特に好ましい。カルボキシ基含有不飽和単量体に由来する構成単位の含有量が前記上限値以下であれば、形成される塗膜の耐水性、重合体溶液やこれを含む重合体含有組成物、防汚塗料組成物等の貯蔵安定性がより優れ、防汚塗料組成物を高固形分でも低粘度のものとしやすい傾向にある。
【0124】
共重合体(A−2)は、単量体(a3)とマクロモノマー(b)とを含む単量体混合物を重合して得られた共重合体であることが好ましい。このような共重合体であれば、エチレン性不飽和結合及びカルボキシ基を有する単量体と、マクロモノマーとを含む単量体混合物を重合し、カルボキシ基を有する共重合体を得て、この共重合体のカルボキシ基を構造(III)に変換して得られた共重合体に比べて、耐水性がより優れる。
前記単量体混合物は、単量体(a3)1〜40質量%と、マクロモノマー(b)1〜60質量%と、単量体(c)10〜98質量%とからなることが好ましい。各単量体の含有量は、単量体混合物全量に対する割合である。各単量体のより好ましい含有量の範囲は、各単量体由来の構成単位の好ましい含有量の範囲と同様である。
【0125】
共重合体(A−2)の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜100,000が好ましく、3,000〜50,000がより好ましく、4,000〜20,000がさらに好ましい。
共重合体(A−2)の重量平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の硬度がより優れる。また、重合体溶液やこれを含む重合体組成物、防汚塗料組成物等を高固形分でも低粘度のものを得やすい。また、形成される塗膜の防汚性が優れる。共重合体(A−2)の重量平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の硬度、耐久性がより優れる。
【0126】
共重合体(A−2)の数平均分子量(Mn)は、1,000〜50,000が好ましく、2,000〜25,000がより好ましい。
共重合体(A−2)の多分散度(Mw/Mn)は、1.5〜5.0が好ましく、2.2〜3.0がより好ましい。
【0127】
共重合体(A−2)の酸価は、1〜140mgKOH/gが好ましく、5〜130mgKOH/gがより好ましく、10〜120mgKOH/gがさらに好ましい。共重合体(A)の酸価が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の耐水性、耐クラック性がより優れる。
共重合体(A−2)の酸価は、水酸化カリウム溶液による中和滴定等公知の手法により測定される。
【0128】
本態様の重合体溶液に含まれる共重合体(A−2)は1種でもよく2種以上でもよい。
本態様の重合体溶液中の共重合体(A−2)の含有量は、重合体溶液の全量に対し、85質量%以下であることが好ましく、10〜80質量%がより好ましく、30〜75質量%がさらに好ましく、55〜75質量%が特に好ましい。共重合体(A−2)の含有量が前記上限値以下であれば、耐水性、塗膜硬度等に優れる塗膜を得やすい傾向がある。共重合体(A−2)の含有量が前記下限値以上であれば、VOC含有量の少ない防汚塗料組成物を容易に得ることができる。
【0129】
<有機溶剤>
有機溶剤としては、共重合体(A−2)を溶解できるものであれば特に限定されず、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール系溶剤;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール等の多価アルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メチルエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート系溶剤;酢酸n−ブチル、エチル3−エトキシプロピオネート等の他のエステル系溶剤;n−ペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族系炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族系炭化水素系溶剤;等が挙げられる。これらの有機溶剤はいずれか1種を単独で、または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0130】
本態様の重合体溶液中の有機溶剤の含有量は、重合体溶液の25℃における粘度が5×10mPa・s以下となる量であれば特に限定されないが、典型的には、重合体溶液から共重合体(A−2)を除いた全量に対して30質量%以上であり、45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。有機溶剤の含有量が前記下限値以上であれば、耐水性に優れ、乾燥性に優れた塗膜を得やすい傾向がある。有機溶剤の含有量が前記上限値以下であれば、VOC含有量の少ない防汚塗料組成物を容易に得ることができる。
【0131】
<他の成分>
本態様の重合体溶液は、共重合体(A−2)及び有機溶剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。
他の成分としては、例えば、後述する防汚塗料組成物における他の成分と同様のものが挙げられる。
他の成分の含有量は、共重合体(A−2)(100質量%)に対して200質量%以下が好ましく、0質量%であってもよい。
【0132】
<粘度>
本態様の重合体溶液の25℃における粘度は、5×10mPa・s以下であり、5000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s未満がより好ましく、4000mPa・s未満がさらに好ましく、3000mPa・s未満がさらに好ましく、2,000mPa・s未満がさらに好ましく、1,000mPa・s未満が特に好ましい。重合体溶液の粘度が前記上限値以下であれば、重合体溶液やこれを含む重合体組成物に希釈のための有機溶剤を加えなくても、防汚剤等の配合や塗装を行うことができ、VOC含有量の少ない防汚塗料組成物が得られる。
本態様の重合体溶液は、少なくとも固形分55質量%での粘度が上記の好ましい上限値以下であることが好ましい。
重合体溶液の粘度の下限は特に限定されないが、塗装時の塗料タレ抑制の点では、100mPa・s以上が好ましい。
したがって、重合体溶液の25℃における粘度は、100〜5×10mPa・sが好ましく、100〜5000mPa・sがより好ましく、100mPa・s以上5,000mPa・s未満がさらに好ましく、100mPa・s以上4,000mPa・s未満がさらに好ましく、100mPa・s以上3,000mPa・s未満がさらに好ましく、100mPa・s以上2,000mPa・s未満がさらに好ましく、100mPa・s以上1,000mPa・s未満が特に好ましい。
【0133】
重合体溶液の粘度は、重合体溶液の固形分量(共重合体(A−2)及び他の成分の含有量)、共重合体(A−2)の重量平均分子量、ガラス転移温度、架橋構造の有無等によって調整できる。例えば固形分量、特に共重合体(A−2)の含有量が少ないほど、低粘度になる傾向がある。また、共重合体(A−2)の重量平均分子量が小さいほど、またはガラス転移温度が低いほど、低粘度になる傾向がある。
【0134】
本態様の重合体溶液においては、下記式(i)で求められる比(VX)が、20以下であることが好ましく、17以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。
比(VX)=粘度(VB)/固形分量(NV) ・・・(i)
粘度(VB)は、試料(重合体溶液)の25℃においてB型粘度計で測定される粘度(mPa・s)を示し、固形分量(NV)は試料の加熱残分(質量%)を示す。例えば粘度(VB)が600mPa・s、固形分量(NV)が60質量%の場合は、比(VX)は10である。試料の固形分量(加熱残分)は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
比(VX)が前記上限値以下であれば、重合体溶液やこれを含む重合体組成物に希釈のための有機溶剤を加えなくても、防汚剤等を配合したり塗装したりすることができ、VOC含有量の少ない防汚塗料組成物が得られる。
【0135】
(重合体溶液の製造方法)
本態様の重合体溶液の製造方法としては、例えば、以下の製造方法(γ)又は(δ)により共重合体(A−2)を製造し、必要に応じて有機溶剤を添加する方法が挙げられる。これらのうち、耐水性の点では、製造方法(γ)により共重合体(A−2)を製造し、必要に応じて有機溶剤を添加する方法が好ましい。
製造方法(γ):単量体(a3)とマクロモノマー(b)とを含む単量体混合物(γ1)を重合する方法。
製造方法(δ):エチレン性不飽和結合及びカルボキシ基を有する単量体(a0)と、マクロモノマー(b)とを含む単量体混合物(δ1)を重合し、カルボキシ基を有する共重合体(A0’)を得て、この共重合体(A0’)のカルボキシ基を構造(III)に変換する方法。
【0136】
製造方法(γ)において、単量体混合物(γ1)は、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(c)をさらに含んでもよい。単量体混合物(γ1)の組成は、共重合体(A−2)の組成と同様である。
単量体混合物(γ1)の重合は、後述する第六の態様の(メタ)アクリル系共重合体の製造方法における単量体混合物の重合と同様にして行うことができる。
単量体混合物(γ1)の重合により得られた重合生成物が有機溶剤を含み、25℃における粘度が前記の上限値以下である場合は、この重合生成物をそのまま本態様の重合体溶液とすることができる。粘度の低減、ハンドリング性の向上等のために、さらなる有機溶剤を添加してもよい。
重合生成物が有機溶剤を含み、25℃における粘度が前記の上限値以下である場合以外の場合には、重合生成物または重合生成物から回収しした共重合体(A−2)に、有機溶剤を加えて本態様の重合体溶液を得る。
【0137】
製造方法(δ)において、単量体混合物(δ1)は、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(c)をさらに含んでもよい。単量体混合物(δ1)の組成は、単量体(a3)が単量体(a0)である以外は、共重合体(A−2)の組成と同様である。
単量体混合物(δ1)の重合は、後述する第六の態様の(メタ)アクリル系共重合体の製造方法における単量体混合物の重合と同様にして行うことができる。
共重合体(A0’)のカルボキシ基を構造(III)に変換する方法としては、例えば、共重合体(A0’)と、酢酸銅、酢酸亜鉛等の有機酸金属塩とを反応させる方法が挙げられる。有機酸金属塩の金属は前記Mに対応する。
共重合体(A0’)と有機酸金属塩との反応は、例えば還流温度まで昇温し、留出する酢酸等の有機酸、水及び有機溶剤の混合液を除去しつつ、同量の有機溶剤をを補充しながら、反応を10〜20時間継続すること等で行うことができる。
【0138】
本態様の重合体溶液の製造方法の好ましい一実施形態として、以下の製造方法(ε)が挙げられる。
製造方法(ε):有機溶剤中で、単量体(a3)とマクロモノマー(b)とを含む単量体混合物(ε1)を重合し、重合生成物として、または前記重合により得られる重合生成物を有機溶剤で希釈して、本態様の重合体溶液を得る方法。
単量体混合物(ε1)は、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(c)をさらに含んでもよい。単量体混合物(ε1)の組成は、共重合体(A−2)の組成と同様である。
単量体混合物(ε1)の重合は、有機溶剤中で行う(つまり溶液重合法により行う)ことが必須である以外は、後述する第六の態様の(メタ)アクリル系共重合体の製造方法における単量体混合物の重合と同様にして行うことができる。
【0139】
共重合または希釈に用いる有機溶剤としては、一般の有機溶剤を使用でき、例えば重合体溶液の有機溶剤として挙げた有機溶剤と同様のものが挙げられる。共重合に用いる有機溶剤と希釈に用いる有機溶剤とは、同じであってもよく異なってもよい。
【0140】
重合生成物として前記重合体溶液を得る場合は、共重合を、反応系全体から全単量体を除いた全量に対して30質量%以上の有機溶剤中で行うことが好ましい。この場合、反応系から全単量体を除いた全量に対する有機溶剤の割合の好ましい範囲は、重合体溶液から共重合体(A−2)を除いた全量に対する有機溶剤の含有量の好ましい範囲と同様である。
反応系全体とは、共重合に用いられるすべての材料(各種単量体、有機溶剤、必要に応じて用いられるラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等)の合計である。
【0141】
重合生成物を有機溶剤で希釈して前記重合体溶液を得る場合は、共重合を、反応系全体から全単量体を除いた全量に対して30質量%以上の有機溶剤中で行ってもよく、30質量%未満の有機溶剤中で行ってもよい。
この場合、反応系から全単量体を除いた全量に対する有機溶剤の割合は、重合体溶液から共重合体(A−2)を除いた全量に対する有機溶剤の含有量よりも低い。反応系から全単量体を除いた全量に対する有機溶剤の割合の下限は特に限定されないが、重合中の溶液粘度が低い方が重合安定性が良好であることから、20質量%以上が好ましい。
【0142】
(作用効果)
共重合体(A−2)は、構成単位(A3)を有するため、海水中等で加水分解可能である。そのため、共重合体(A−2)を含む塗膜は、海水中等で自己研磨性を示す。すなわち、共重合体(A−2)は、−CO−O−M−O−CO−構造及び−CO−O−M−R32構造のいずれか一方又は両方を有しており、この状態では海水に溶解しないが、海水との接触によりこの構造が加水分解すると、カルボキシ基等が生成し、海水に溶解する。塗膜表面が徐々に海水に溶解して表面更新(自己研磨)される。したがって、本態様の重合体溶液を含む重合体含有組成物やこれを含む防汚塗料組成物の塗膜も自己研磨性を示す。この塗膜は海水中で表面更新され、防汚性を示す。特に塗膜が防汚剤を含む場合は、塗膜表面に常に防汚剤が露出し、優れた防汚効果が長期にわたって発揮される。
【0143】
また、本態様の重合体溶液にあっては、構成単位(A3)と構成単位(B)とを有する共重合体(A−2)を含み、粘度が5×10mPa・s以下であるため、形成される塗膜が耐水性及び硬度に優れる。そのため、防汚効果の低下を招く塗膜の損傷や剥離が生じにくい。また、海水中等での塗膜の溶解速度(消耗度)も充分に速い。そのため、海水中等における静置防汚性に優れ、また、優れた防汚効果が長期にわたって安定的に発揮される。
【0144】
また、本態様の重合体溶液にあっては、重合体溶液やこれを含む重合体含有組成物を高固形分低粘度の溶液状とすることができる。重合体含有組成物が高固形分低粘度であれば、防汚塗料組成物の製造時にさらに有機溶剤を加えなくても、塗装適性を有する防汚塗料組成物を得ることができる。また、防汚剤等を加える場合に、有機溶剤を加えなくても防汚剤等と良好に混合できる。そのため、VOC含有量が少ない(例えば500g/L以下)の防汚塗料組成物を得ることができる。
従来、防汚塗料組成物を高固形分低粘度にしようとすると、塗膜の硬度が低下する傾向があった。防汚塗料組成物に本態様の重合体溶液を用いることで、防汚塗料組成物を高固形分低粘度にした場合でも、硬度に優れた塗膜を形成できる。
また、本態様の重合体溶液にあっては、この重合体溶液を含む塗料を塗装し塗膜を形成した際、塗装直後からの塗膜の硬度の上昇速度が速く、耐盤木性が高い傾向がある。この上昇速度が遅いと、塗膜の硬度が充分に高くなるのに時間がかかる。塗膜の硬度が充分に高くなる前に塗装物を移動させたりすると、塗膜が変形して外観等が悪化するため、塗装後に次の工程を進めるまでに時間がかかる。塗膜の硬度の上昇速度が速いことは、生産性の点で好ましい。
【0145】
したがって、本態様の重合体溶液は、防汚塗料組成物用として好適である。ただし、本態様の重合体溶液の用途は防汚塗料組成物に限定されず、他の用途、例えば防曇塗料組成物等に用いることもできる。
【0146】
〔重合体含有組成物〕
本発明の第三の態様は、第一の態様の共重合体(A−1)を含む重合体含有組成物(以下、「組成物(B−1)」ともいう。)である。
本発明の第四の態様は、第二の態様の重合体溶液を含む重合体含有組成物(以下、「組成物(B−2)」ともいう。)である。
【0147】
<組成物(B−1)>
組成物(B−1)に含まれる共重合体(A−1)は1種でもよく2種以上でもよい。
組成物(B−1)中の共重合体(A−1)の含有量は、組成物(B−1)の総質量に対して50質量%以上が好ましく、57質量%以上がより好ましく、59質量%以上がさらに好ましい。共重合体(A−1)の含有量が前記下限値以上であれば、相対的に組成物(B−1)中に含まれ得る有機溶剤の含有量が少なくなり、VOC含有量の少ない防汚塗料組成物を容易に得ることができる。
共重合体(A−1)の含有量の上限は、特に限定されず、100質量%であってもよい。組成物(B−1)が有機溶剤を含む場合は、組成物(B−1)の25℃における粘度が5×10以下となる量が好ましく、共重合体(A−1)の重量平均分子量、ガラス転移温度、架橋構造の有無等によっても異なるが、80質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。
【0148】
(有機溶剤)
組成物(B−1)は、有機溶剤をさらに含むことが好ましい。組成物(B−1)が有機溶剤を含むと、組成物(B−1)を含む防汚塗料組成物の塗工適性、形成される塗膜の耐水性、成膜性等がより優れる。
有機溶剤としては、共重合体(A−1)を溶解できるものであれば特に限定されず、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;1−アルケニルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル3−エトキシプロピオネート等のエステル系溶剤;等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で、又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0149】
共重合体(A−1)が構造(I)を有する構成単位(A1)を有する場合、組成物(B−1)は、有機溶剤として、前記式(11)で表される化合物、前記式(12)で表される化合物、及び前記式(13)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルケニル化合物を含むことが好ましい。組成物(B−1)が前記アルケニル化合物を含むことにより、組成物(B−1)やこれを含む防汚塗料組成物の貯蔵安定性が向上する。
アルケニル化合物としては、前記で挙げたものと同様のものが挙げられる。アルケニル化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組合わせて用いることができる。
アルケニル化合物としては、前記で挙げたもののなかでも、貯蔵安定性の向上効果がより優れる点で、ブチルビニルエーテルやイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類が好ましい。
1−アルケニルエーテルと他の有機溶剤とを併用してもよい。
【0150】
アルケニル化合物の含有量は、共重合体(A−1)が有する構造(I)に対して20モル%以上であることが好ましく、30〜1000モル%がより好ましく、40〜800モル%がさらに好ましい。アルケニル化合物の含有量が前記範囲内であれば、貯蔵安定性の向上効果がより優れる。
【0151】
組成物(B−1)中の有機溶剤の含有量は、組成物(B−1)の総質量に対して43質量%以下が好ましく、41質量%以下がより好ましく、39質量%以下がさらに好ましい。
有機溶剤の含有量は、組成物(B−1)の25℃における粘度が5×10以下となる量が好ましく、共重合体(A−1)の重量平均分子量、ガラス転移温度、架橋構造の有無等によっても異なるが、30質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。
【0152】
(他の成分)
組成物(B−1)は、共重合体(A−1)及び有機溶剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。
他の成分としては、例えば、後述する防汚塗料組成物における他の成分と同様のものが挙げられる。
他の成分の含有量は、共重合体(A−1)(100質量%)に対して300質量%以下が好ましく、0質量%であってもよい。
【0153】
(粘度)
組成物(B−1)が有機溶剤を含む場合、組成物(B−1)の25℃における粘度は、5×10mPa・s以下が好ましい。より好ましい粘度は第二の態様の重合体溶液の25℃における粘度と同様である。
組成物(B−1)は、少なくとも固形分55質量%での粘度が上記の好ましい上限値以下であることが好ましい。
【0154】
組成物(B−1)の、ガードナー気泡粘度計により測定される粘度は、W以下であることが好ましく、V以下がより好ましく、U以下がさらに好ましい。組成物(B−1)の粘度が前記上限値以下であれば、組成物(B−1)に希釈のための有機溶剤を加えなくても、防汚剤等を配合したり塗装したりすることができ、VOC含有量の少ない防汚塗料組成物が得られる。前記粘度の下限は特に限定されない。
【0155】
組成物(B−1)の粘度は、組成物(B−1)の固形分量(共重合体(A−1)及び他の成分の含有量)、共重合体(A−1)の重量平均分子量、ガラス転移温度、架橋構造の有無等によって調整できる。例えば固形分量、特に共重合体(A−1)の含有量が少ないほど、低粘度になる傾向がある。また、共重合体(A−1)の重量平均分子量が小さいほど、又はガラス転移温度が低いほど、低粘度になる傾向がある。
【0156】
組成物(B−1)においては、前記式(i)で求められる比(VX)が、20以下であることが好ましく、17以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。比(VX)が前記上限値以下であれば、組成物(B−1)に希釈のための有機溶剤を加えなくても、防汚剤等を配合したり塗装したりすることができ、VOC含有量の少ない防汚塗料組成物が得られる。
比(VX)は、前記式(i)において、重合体溶液の粘度、固形分量をそれぞれ組成物(B−1)の粘度、固形分量に置き換えて算出される。
【0157】
組成物(B−1)は、公知の方法を用いて調製できる。例えば前述の製造方法により共重合体(A−1)を合成し、必要に応じて、得られた共重合体(A−1)に有機溶剤や他の成分を配合することにより調製できる。
【0158】
組成物(B−1)は、そのまま、又は必要に応じて防汚剤等と混合して、防汚塗料組成物とすることができる。
組成物(B−1)は、防汚塗料組成物のほか、防曇塗料組成物等に用いることもできる。
【0159】
<組成物(B−2)>
組成物(B−2)は、第二の態様の重合体溶液を含む。したがって、共重合体(A−2)と有機溶剤とを含む。
組成物(B−2)は、第二の態様の重合体溶液のみからなるものであってもよく、第二の態様の重合体溶液に加えて他の材料をさらに含むものであってもよい。
他の材料としては、例えば、希釈用の有機溶剤、他の成分等が挙げられる。希釈用の有機溶剤としては、重合体溶液の有機溶剤として挙げたものと同様のものが挙げられる。重合体溶液中の有機溶剤と希釈用の有機溶剤とは同じでもよく異なってもよい。他の成分は前記と同様である。
【0160】
組成物(B−2)において、共重合体(A−2)の含有量、他の成分の含有量、25℃における粘度、前記式(i)で求められる比(VX)それぞれの好ましい値は重合体溶液と同様である。
【0161】
組成物(B−2)中の有機溶剤の含有量は、組成物(B−2)の共重合体(A−2)を除いた全量(100質量%)に対して30質量%以上であり、45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。有機溶剤の含有量が前記下限値以上であれば、得られる塗膜の乾燥性が優れる。
有機溶剤の含有量の上限は特に限定されないが、例えば、共重合体(A−2)に対して100質量%以下とすることができる。有機溶剤の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、VOC含有量の少ない防汚塗料組成物が得られる。
この有機溶剤の含有量は、組成物(B−2)に含まれる全ての有機溶剤の総量である。
【0162】
組成物(B−2)の水分含有量は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。水分含有量は、組成物(B−2)の総質量に対する水の割合である。水分含有量が前記上限値以下であれば、組成物(B−2)を含む防汚塗料組成物から形成される塗膜の耐水性、乾燥性がより優れる。
【0163】
組成物(B−2)は、公知の方法を用いて調製できる。例えば前述の製造方法により第二の態様の重合体溶液を製造し、必要に応じて、得られた重合体溶液に希釈用の有機溶剤や他の成分を配合することにより調製できる。
【0164】
組成物(B−2)は、そのまま、又は必要に応じて防汚剤等と混合して、防汚塗料組成物とすることができる。
組成物(B−2)は、防汚塗料組成物のほか、防曇塗料組成物等に用いることもできる。
【0165】
重合体含有組成物の他の態様として、第二の態様の重合体溶液を含み、有機溶剤の含有量が、共重合体(A−2)に対して30質量%以上であるむ重合体含有組成物(以下、「組成物(B−3)」ともいう。)が挙げられる。
組成物(B−3)における有機溶剤の含有量は、共重合体(A−2)に対して45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
有機溶剤の含有量の上限は特に限定されず、例えば前記組成物(B−2)と同様であってよい。
組成物(B−3)は、第二の態様の重合体溶液のみからなるものであってもよく、第二の態様の重合体溶液に加えて他の材料をさらに含むものであってもよい。
他の材料としては、例えば、希釈用の有機溶剤、他の成分等が挙げられる。これらはそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。
組成物(B−3)の水分含有量は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
組成物(B−3)は、組成物(B−2)と同様にして調製できる。
組成物(B−3)は、そのまま、又は必要に応じて防汚剤等と混合して、防汚塗料組成物とすることができる。
組成物(B−3)は、防汚塗料組成物のほか、防曇塗料組成物等に用いることもできる。
【0166】
〔防汚塗料組成物〕
本発明の第五の態様は、組成物(B−1)又は組成物(B−2)を含む防汚塗料組成物である。
防汚塗料組成物が組成物(B−1)を含む場合、防汚塗料組成物は少なくとも共重合体(A−1)を含む。防汚塗料組成物が組成物(B−2)を含む場合、防汚塗料組成物は少なくとも共重合体(A−2)及び有機溶剤を含む。
【0167】
組成物(B)が組成物(B−1)であり、防汚塗料組成物が組成物(B−2)を含まない場合でも、防汚塗料組成物は有機溶剤を含むことが好ましい。この場合、防汚塗料組成物中の有機溶剤は、組成物(B−1)に由来する有機溶剤であってもよく、組成物(B−1)に由来しない有機溶剤(防汚塗料組成物の製造時に配合されたもの)であってもよく、それらの混合物であってもよい。組成物(B−1)に由来しない有機溶剤としては、前記の有機溶剤と同様のものが挙げられる。
防汚塗料組成物が組成物(B−2)を含む場合、防汚塗料組成物中の有機溶剤は、組成物(B−2)に由来する有機溶剤のみであってもよく、組成物(B−1)に由来する有機溶剤と由来しない有機溶剤(防汚塗料組成物の製造時に配合されたもの)との混合物であってもよい。
【0168】
本態様の防汚塗料組成物は、防汚剤をさらに含むことが好ましい。
本発明の防汚塗料組成物は、共重合体(A−1)、共重合体(A−2)、有機溶剤及び防汚剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分は、組成物(B)に由来するものであってもよく、由来しないもの(防汚塗料組成物の製造時に配合されたもの)であってもよく、それらの混合物であってもよい。
【0169】
<防汚剤>
防汚剤としては、無機防汚剤、有機防汚剤等が挙げられ、要求性能に応じて1種または2種以上を適宜選択して使用することができる。
防汚剤としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン銅、銅粉末等の銅系防汚剤、他の金属(鉛、亜鉛、ニッケル等)の化合物、ジフェニルアミン等のアミン誘導体、ニトリル化合物、ベンゾチアゾール系化合物、マレイミド系化合物、ピリジン系化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0170】
防汚剤として、より具体的には、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル、マンガニーズエチレンビスジチオカーバメイト、ジンクジメチルジチオカーバメート、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、ジンクエチレンビスジチオカーバメイト、ロダン銅、4,5−ジクロロ−2−nオクチル−3(2H)イソチアゾロン、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N’−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩、テトラメチルチウラムジサルファイド、Cu−10%Ni固溶合金、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、3−ヨード−2−プロピニールブチルカーバメイト、ジヨードメチルパラトリスルホン、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロライド、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、メデトミジン、ピリジン−トリフェニルボラン等が挙げられる。
【0171】
防汚剤は、上記の中でも、亜酸化銅、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3カルボニトリル(以下、「防汚剤(1)」ともいう。)、ピリジン−トリフェニルボラン及びメデトミジンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
亜酸化銅と防汚剤(1)とを組み合わせる場合、配合比率(質量比)は、亜酸化銅/防汚剤(1)=80/20〜99/1が好ましく、90/10〜99/1がより好ましい。
亜酸化銅及び防汚剤(1)のいずれか一方または両方と、これら以外の他の防汚剤とを組み合わせてもよい。
【0172】
防汚塗料組成物中の防汚剤の含有量は、特に制限されないが、共重合体(A−1)又は(A−2)の100質量部に対し、10〜200質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましい。防汚剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の防汚効果がより優れる。防汚剤の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、自己研磨性が優れる。
【0173】
<他の成分>
他の成分としては、例えば共重合体(A−1)及び共重合体(A−2)以外の他の重合体が挙げられる。
他の重合体としては、例えば共重合体(A−1)及び共重合体(A−2)以外の熱可塑性樹脂(熱可塑性重合体)等が挙げられる。
本態様の防汚塗料組成物は、共重合体(A−1)及び共重合体(A−2)以外の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。防汚塗料組成物が前記熱可塑性樹脂を含むと、耐クラック性や耐水性等の塗膜物性が向上する。
【0174】
共重合体(A−1)及び共重合体(A−2)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、塩素化パラフィン;塩化ゴム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン;ポリビニルエーテル;ポリプロピレンセバケート;部分水添ターフェニル;ポリ酢酸ビニル;(メタ)アクリル酸メチル系共重合体、(メタ)アクリル酸エチル系共重合体、(メタ)アクリル酸プロピル系共重合体、(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル系共重合体等のポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ポリエーテルポリオール;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、塩化ビニル−イソブチルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル−イソプロピルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル−エチルビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;シリコーンオイル;ワックス;ワックス以外の常温で固体の油脂、ひまし油等の常温で液体の油脂及びそれらの精製物;ワセリン;流動パラフィン;ロジン、水添ロジン、ナフテン酸、脂肪酸及びこれらの2価金属塩;等が挙げられる。ワックスとしては、例えば、蜜蝋等の動物由来のワックス;植物由来のワックス;アマイド系ワックス等の半合成ワックス;酸化ポリエチレン系ワックス等の合成ワックス等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
可塑剤として機能し、塗膜の耐クラック性や耐剥離性の向上効果が得られる点では、塩素化パラフィンが好ましい。
沈降防止剤やたれ防止剤として機能し、防汚塗料組成物の貯蔵安定性や顔料分散性の向上効果が得られる点では、半合成ワックス、合成ワックス等の有機系ワックスが好ましく、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックスがより好ましい。
【0175】
防汚塗料組成物中の共重合体(A−1)及び共重合体(A−2)以外の熱可塑性樹脂の含有量は、特に制限されないが、共重合体(A−1)又は(A−2)100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、耐クラック性や耐水性等の塗膜物性がより優れ、前記範囲の上限値以下であれば、加水分解性がより優れる。
【0176】
防汚塗料組成物は、塗膜表面に潤滑性を付与し、生物の付着を防止する目的で、ジメチルポリシロキサン、シリコーンオイル等のシリコン化合物、フッ素化炭化水素等の含フッ素化合物等を含んでもよい。
【0177】
防汚塗料組成物は、各種の顔料、脱水剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤(例えば沈降防止剤)、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤、可塑剤、粘性制御剤等を含んでもよい。
顔料としては、酸化亜鉛、タルク、シリカ、硫酸バリウム、カリ長石、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、マイカ、カーボンブラック、弁柄、酸化チタン、フタロシアニンブルー、カオリン、石膏等が挙げられる。特に、酸化亜鉛やタルクが好ましい。
【0178】
脱水剤としては、シリケート系、イソシアネート系、オルソエステル系、無機系等が挙げられる。より具体的には、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトホウ素エステル、オルト珪酸テトラエチル、無水石膏、焼石膏、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)等が挙げられる。特に、モレキュラーシーブが好ましい。防汚塗料組成物に脱水剤を含有させることによって水分を補足し、貯蔵安定性を向上させることができる。
熱可塑性樹脂以外の沈降防止剤やたれ防止剤としては、ベントナイト系、微粉シリカ系、ステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
【0179】
熱可塑性樹脂以外の可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステル等のグリコールエステル系可塑剤;トリクレジルホスフェート(TCP)、トリアリールホスフェート、トリクロロエチルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ大豆油、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ系可塑剤;ジオクチルすずラウリレート、ジブチルすずラウリレート等の有機すず系可塑剤;トリメリット酸トリオクチル、トリアセチレン等が挙げられる。防汚塗料組成物に可塑剤を含有させることによって塗膜の耐クラック性や耐剥離性を高めることができる。可塑剤としては、上記の中でも、TCPが好ましい。
【0180】
防汚塗料組成物は、水を含んでいてもよく、含まなくてもよい。
防汚塗料組成物の水分含有量は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。水分含有量は、防汚塗料組成物の総質量に対する水の割合である。水分含有量が前記上限値以下であれば、防汚塗料組成物から形成される塗膜の耐水性、乾燥性がより優れる。
【0181】
<VOC含有量>
本発明の防汚塗料組成物のVOC含有量は、500g/L以下が好ましく、420g/L以下がより好ましく、400g/L以下がさらに好ましく、380g/L以下が特に好ましい。
VOC含有量は、防汚塗料組成物の比重及び固形分の値を用いて、下記式から算出される。
VOC含有量(g/L)=組成物の比重×1000×(100−固形分)/100
防汚塗料組成物の比重及び固形分はそれぞれ、後述する実施例に記載の方法により測定される。
VOC含有量は、有機溶剤の含有量により調整できる。
【0182】
<加熱残分>
防汚塗料組成物の加熱残分は、70〜100質量%が好ましく、70〜90質量%がより好ましく、75〜80質量%がさらに好ましい。防汚塗料組成物の加熱残分が前記範囲の下限値以上であれば、VOC含有量が充分に低くなる。加熱残分が前記範囲の上限値以下であれば、防汚塗料組成物の粘度を低くしやすい。
加熱残分は、後述する実施例に示す測定方法により測定される。
【0183】
<粘度>
本発明の防汚塗料組成物の25℃における粘度は、5,000mPa・s未満であることが好ましく、4,000mPa・s未満がより好ましく、3,000mPa・s未満がさらに好ましく、2,000mPa・s未満が特に好ましい。防汚塗料組成物の粘度が前記上限値以下であれば、塗装しやすい。
防汚塗料組成物の25℃における粘度の下限は特に限定されないが、塗装時の塗料タレ抑制の点では、100mPa・s以上が好ましく、200mPa・s以上がより好ましく、300mPa・s以上がさらに好ましく、1,000mPa・s以上が特に好ましい。
したがって、防汚塗料組成物の25℃における粘度は、100mPa・s以上5,000mPa・s未満であることが好ましく、200mPa・s以上4,000mPa・s未満がより好ましく、300mPa・s以上3,000mPa・s未満がさらに好ましく、500mPa・s以上2,000mPa・s未満が特に好ましい。
防汚塗料組成物の粘度は、組成物(B)の粘度、組成物(B)への有機溶剤の添加量等によって調整できる。
【0184】
防汚塗料組成物は、組成物(B)を調製し、必要に応じて防汚剤や他の成分、有機溶剤を添加し、混合することにより調製できる。
【0185】
本態様の防汚塗料組成物は、船舶や各種の漁網、港湾施設、オイルフェンス、橋梁、海底基地等の水中構造物等の基材表面に塗膜(防汚塗膜)を形成するために使用できる。
本態様の防汚塗料組成物を用いた塗膜は、基材表面に、直接に、または下地塗膜を介して形成することができる。
下地塗膜としては、ウオッシュプライマー、塩化ゴム系やエポキシ系等のプライマー、中塗り塗料等を用いて形成できる。
塗膜の形成は、公知の方法により行うことができる。例えば、基材表面又は基材上の下地塗膜の上に、防汚塗料組成物を、刷毛塗り、吹き付け塗り、ローラー塗り、沈漬塗り等の手段で塗布し、乾燥することにより塗膜を形成できる。
防汚塗料組成物の塗布量は、一般的には乾燥塗膜として10〜400μmの厚さになる量に設定できる。
塗膜の乾燥は、通常、室温で行うことができ、必要に応じて加熱乾燥を行ってもよい。
【0186】
〔(メタ)アクリル系共重合体の製造方法〕
本発明の第六の態様は、単量体(a1)、単量体(a2)及び単量体(a3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(a)と、マクロモノマー(b)と、を含む単量体混合物を重合して(メタ)アクリル系共重合体を得る工程を含む、(メタ)アクリル系共重合体の製造方法である。前記単量体混合物は、単量体(c)をさらに含んでもよい。
【0187】
単量体混合物の組成は、製造する(メタ)アクリル系共重合体の組成に応じて設定される共重合体(A−2)の組成と同様とされる。すなわち、単量体混合物を構成する単量体の種類及び全単量体の合計質量に対する各単量体の含有量(質量%)は、製造する(メタ)アクリル系共重合体を構成する各単量体由来の構成単位の種類及び全構成単位の合計質量に対する各構成単位の含有量(質量%)と同様とされる。
本態様の製造方法で製造される(メタ)アクリル系共重合体としては、前記共重合体(A−1)又は前記共重合体(A−2)が好ましい。
【0188】
単量体混合物の重合方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法等の公知の重合方法が適用できる。生産性、塗膜性能の点で溶液重合法が好ましい。
重合は、公知の重合開始剤を用いて、公知の方法で行えばよい。例えば、上記した単量体混合物をラジカル重合開始剤の存在下に60〜180℃(さらには60〜120℃)の反応温度で4〜14時間(さらには5〜10時間)反応させる方法が挙げられる。重合の際、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
【0189】
ラジカル重合開始剤としては、公知のものを使用でき、例えば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ラウリル、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;等が挙げられる。
重合開始剤の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができる。典型的には、重合性単量体100質量部に対して0.1〜20質量部程度である。
【0190】
連鎖移動剤としては、公知のものを使用でき、例えば、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、チオグリコール酸オクチル等のチオグリコール酸エステル類、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン等が挙げられる。
連鎖移動剤の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができる。典型的には、重合性単量体100質量部に対して0.0001〜10質量部程度である。
【0191】
溶液重合で用いられる溶媒としては、特に限定されず、一般の有機溶剤を使用できる。例えば前記で挙げた有機溶剤の中から適宜選択できる。
【0192】
(作用効果)
本態様の(メタ)アクリル系共重合体の製造方法にあっては、単量体(a)とマクロモノマー(b)とを含む単量体混合物を重合するため、得られる(メタ)アクリル系共重合体は、第一の態様の共重合体(A−1)や第二の態様の重合体溶液と同様の効果を奏し得る。例えばこの(メタ)アクリル系共重合体を用いた塗膜の硬度及び耐水性が優れる。この塗膜は、海水中等における静置防汚性にも優れ、また、優れた防汚効果が長期にわたって安定的に発揮される。
共重合体(A−1)や共重合体(A−2)の製造に本態様の製造方法を用いることで、形成される塗膜の硬度及び耐水性をより優れたものとすることができる。
【0193】
本態様の製造方法で得られる(メタ)アクリル系共重合体を用いた塗膜の硬度が優れる理由としては、マクロモノマー(b)由来の構成単位を含むことが挙げられる。前記塗膜が耐水性に優れる理由としては、前記塗膜の硬度が高いことが考えられる。
前述の特許文献2では、マクロモノマーとカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体とを含み、2価金属含有エチレン性不飽和単量体を含まない単量体混合物を重合し、そこに2価金属含有エチレン性不飽和単量体を含む単量体混合物を滴下して重合し、ビニル系ポリマーを得て、その後、水を加えてビニル系ポリマーが水に分散した水性防汚塗料用樹脂組成物を得ている。この方法で得た水性防汚塗料用樹脂組成物を用いた塗膜は、耐水性に劣る。これは、マクロモノマーと2価金属含有エチレン性不飽和単量体とが異なる単量体混合物に配合されていること、水分散体とするためにアミンが含まれていること等が影響していると考えられる。また、1日後の塗膜の硬度も劣る。これは、水系のため、乾燥性が低いためと考えられる。
【実施例】
【0194】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の部は質量部を表す。実施例21〜64は参考例である。
実施例中の評価は、以下に示す方法で行った。
【0195】
(固形分(加熱残分))
測定試料(重合体溶液、重合体含有組成物、防汚塗料組成物等)0.50gをアルミニウム製の皿に測りとり、トルエン3mLをスポイトで加えて皿の底に一様に広げ、予備乾燥を行った。予備乾燥は、測定試料を皿全体にのばし、本乾燥で有機溶剤を揮発させやすくするための処理である。予備乾燥では、70〜80℃の水浴上で測定試料及びトルエンを加熱溶解させ、蒸発乾固させた。予備乾燥後、105℃の熱風乾燥機で2時間の本乾燥を行った。測定試料の予備乾燥前の質量(乾燥前質量)と、本乾燥後の質量(乾燥後質量)とから、以下の式により加熱残分を求め、その値を固形分とした。
加熱残分(質量%)=乾燥後質量/乾燥前質量×100
【0196】
(ガードナー粘度)
乾燥したガードナー気泡粘度管(以下、単に粘度管ともいう。)に測定試料を粘度管の指示線まで入れコルク栓で栓をした。測定試料を採取した粘度管を、規定の温度(25.0±0.1℃)に調節した恒温水槽中に少なくとも2時間垂直に浸漬して測定試料を恒温にし、基準管となる粘度管と測定試料を入れた粘度管を同時に180°回転させ、測定試料のアワ上昇速度を基準管と比較することで、粘度(ガードナー粘度)を決定した。
【0197】
(B型粘度)
測定試料の粘度を25℃においてB型粘度計で測定し、その値をB型粘度として示した。
【0198】
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn))
・構成単位(A−3)を含むメタ(アクリル)系共重合体:
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製HLC−8220)を用いて測定した。メタ(アクリル)系共重合体を0.4質量%になるようにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を調製し、東ソー社製カラム(TSKgelα−M(東ソー株式会社製、7.8mm×30cm)、TSKguardcolumnα(東ソー株式会社製、6.0mm×4cm))が装着された装置に、上記の溶液を100μl注入して、40℃で測定を行った。標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量(Mw)または数平均分子量(Mn)を算出した。
・構成単位(A1)及び(A2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位を含むメタ(アクリル)系共重合体、マクロモノマー(b):
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製HLC−8320)を用いて測定した。共重合体及びマクロモノマーを0.2質量%になるようにテトラヒドロフラン溶液を調整し、東ソー社製カラム(TSKgel SuperHZM−M×HZM−M×HZ2000、TSKguardcolumn SuperHZ−L)が装着された装置に上記の溶液10μlを注入し、流量:0.35ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤BHT)、カラム温度:40℃の条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量(Mw)または数平均分子量(Mn)を算出した。
【0199】
(酸価)
測定試料約0.5gをビーカーに精秤し(A(g))、トルエン/エタノール溶液50mLを加えた。フェノールフタレイン数滴を加え、0.5規定のKOH溶液にて滴定した。(滴定量=B(mL)、KOH溶液の力価=f)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(mL))、以下の式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)={(B−C)×0.2×56.11×f}/A/固形分
【0200】
(VOC含有量)
測定試料のVOC含有量は、下記式により算出した。
VOC含有量(g/L)=測定試料の比重×1000×(100−固形分)/100
測定試料の比重は、25℃において、容量が100mLの比重カップに測定試料を満たし、質量を測定することにより算出した。
【0201】
(塗膜硬度)
ガラス基板上に、重合体含有組成物を500μmアプリケーターで塗布して、25℃で1週間乾燥して塗膜を形成し、試験板を得た。この試験板の塗膜について、超微小硬度計(株式会社フィッシャー・インストルメンツ製試料、商品名:HM2000)によりマルテンス硬度(HM)を測定した。測定条件は、dQRST(F)/dt=一定、F(試験力)=10mN/10秒、C(最大荷重クリープ時間)=5秒、最大押し込み荷重10mN、最大押し込み深さ6μmとした。同じ塗膜のそれぞれ異なる3箇所についてマルテンス硬度を測定し、それらの平均値を塗膜の硬度とした。
なお、マルテンス硬度(HM)は1.2〜15.0N/mmの範囲であることが好ましく、2.0〜10.0N/mmの範囲であることがより好ましい。
【0202】
(1日後の塗膜硬度)
上記塗膜硬度を測定するのと同様にし、ただし、乾燥時間を25℃で1日とした。
【0203】
(塗装適性)
塗装後の塗膜の平滑性を目視で確認し、以下の基準で塗装適性を評価した。
○:塗膜が平滑。
△:塗膜にややムラがある。
×:塗膜にスジが残る。
【0204】
(耐水性1(白化))
ガラス基板上に、試料(重合体含有組成物)を500μmアプリケーターで塗布して、室温で1週間乾燥して塗膜を形成し、試験板を得た。この試験板を滅菌濾過海水中に1ヶ月間浸漬した後、この試験板を温度20℃の室温で1週間乾燥させた。白化度について、該試験板の塗膜表面を目視で観察した。評価は以下の基準で行った。
○:白化が観察されない。
△:少し白化が観察される。
×:かなり白化が観察される。
【0205】
(耐水性2(ヘイズ))
ガラス基板上に、試料(重合体含有組成物又は防汚塗料組成物)を500μmアプリケーターで塗布して、室温で1週間乾燥して塗膜を形成し、試験板を得た。この試験板を滅菌濾過海水中に1ヶ月間浸漬した後、この試験板を温度20℃の室温で1週間乾燥させた。乾燥後の試験板のヘイズをヘイズメータ(村上色彩技術研究所製、商品名:HM−150)で測定した。ヘイズ値が小さいほど、塗膜表面の白化度が低く、耐水性に優れることを示す。
【0206】
(塗膜の消耗度)
防汚塗料組成物を、50mm×50mm×2mm(厚さ)の硬質塩化ビニル板に、乾燥膜厚120μmになるようにアプリケーターで塗布し、乾燥して塗膜を形成し、試験板を得た。この試験板を、海水中に設置した回転ドラムに取り付け、周速7.7m/s(15ノット)で回転させて3カ月後の塗膜の膜厚を測定した。測定された膜厚から、1ヶ月当りの消耗膜厚((120μm−測定された膜厚(μm))/3)を算出し、その値を消耗度とした。消耗度は、1〜30μ/Mが好ましい。
【0207】
(静置防汚性)
防汚塗料組成物を、150mm×70mm×1.6mm(厚さ)のあらかじめ防錆塗料を塗布してあるサンドブラスト鋼板に、乾燥膜厚が120μmになるようにはけで塗布し、乾燥して塗膜を形成し、試験板を得た。この試験板を海中に浸漬し、3ヶ月間静置した後、塗膜の全面積に対する海中生物が付着した面積の割合(海中生物の付着面積)(%)を求め、海洋生物の付着面積が30%以下である場合を静置防汚性が良好とした。
【0208】
以下の各例で使用した材料は、以下のとおりである。
単量体(a1−1):1−ブトキシエチルメタクリレート(後述する製造例a1−1で合成した合成品)。
単量体(a1−2):1−イソブトキシエチルメタクリレート(後述する製造例a1−2で合成した合成品)。
単量体(a1−3):1−(2−エチルへキシルオキシ)エチルメタクリレート(後述する製造例a1−3で合成した合成品)。
単量体(a2−1):トリイソプロピルシリルアクリレート(TIPX)。
単量体(a3−1):金属含有単量体混合物(後述する製造例a3−1で合成した合成品)。
単量体(a3−2):金属含有単量体混合物(後述する製造例a3−2で合成した合成品)。
【0209】
マクロモノマー(MM1):後述する製造例MM1で得た数平均分子量1600のマクロモノマー。
マクロモノマー(MM2):後述する製造例MM2で得た数平均分子量2500のマクロモノマー。
マクロモノマー(MM3):後述する製造例MM3で得た数平均分子量3600のマクロモノマー。
マクロモノマー(MM4):後述する製造例MM4で得た数平均分子量6700のマクロモノマー。
【0210】
MMA:メチルメタクリレート。
MA:メチルアクリレート。
EA:エチルアクリレート。
BA:n−ブチルアクリレート。
MTMA:2−メトキシエチルメタクリレート。
MTA:2−メトキシエチルアクリレート。
MAA: メタクリル酸。
AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル。
AMBN:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)。
ノフマーMSD:商品名、日油株式会社製、α−メチルスチレンダイマー。
【0211】
防汚剤(1):4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル。
添加剤(1):トヨパラックス(登録商標)150(東ソー(株)製、塩素化パラフィン)。
添加剤(2):ディスパロン(登録商標)4200−20(楠本化成(株)製、酸化ポリエチレンワックス)。
添加剤(3):ディスパロンA603−20X(楠本化成(株)製、ポリアマイドワックス)。
添加剤(4):KF−56(信越化学工業(株)製、シリコーンオイル)。
【0212】
<製造例a1−1>
ブチルビニルエーテル150.2部(1.5mol)、ヒドロキノン0.24部、フェノチアジン0.47部を室温で撹拌して均一になるまで混合した。空気(10mL/min)を吹込みながら、メタクリル酸86.1部(1.0mol)、反応液の温度が60℃以下を保つようにして滴下した。滴下後、反応液の温度を80℃まで上げて、5時間反応させた。反応液にt−ブチルメチルエーテル264.5部(3.0mol)を加えて混合し、有機相を20質量%炭酸カリウム(水溶液350部で1回洗浄した。有機相に4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.06部を加え、エバポレータにより低沸分を留出させた。得られた残渣を減圧蒸留して、沸点70℃/5torr(667Pa)の1−ブトキシエチルメタクリレート(単量体(a1−1))166.9部(0.91mol)を得た。
【0213】
<製造例a1−2>
イソブチルビニルエーテル90.1部(0.9mol)、ヒドロキノン0.14部、フェノチアジン0.28部を室温で撹拌して均一になるまで混合した。空気(10ml/min)を吹込みながら、メタクリル酸51.7部(0.6mol)を、反応液の温度が60℃以下を保つようにして滴下した。滴下後、反応液の温度を80℃まで上げて、6時間反応させた。反応液にt−ブチルメチルエーテル158.7部(1.8mol)を加えて混合し、有機相を20質量%炭酸カリウム水溶液200部で1回洗浄した。有機相に4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.03部を加え、エバポレータにより低沸分を留出させた。得られた残渣を減圧蒸留して、沸点60℃/3torrの1−イソブトキシエチルメタクリレート(単量体(a1−2))97.5部(0.52mol)を得た。
【0214】
<製造例a1−3>
2−エチルへキシルビニルエーテル171.9部(1.1mol)、ヒドロキノン0.32部、フェノチアジン0.61部を室温で撹拌して均一になるまで混合した。空気(10ml/min)を吹込みながら、メタクリル酸86.1部(1.0mol)を、反応液の温度が60℃以下を保つようにして滴下した。滴下後、反応液の温度を80℃まで上げて、
5時間反応させた。反応液にt−ブチルメチルエーテル264.5部(3.0mol)を加えて混合し、有機相を20質量%炭酸カリウム水溶液135部で1回洗浄した。有機相に4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.07部を加え、エバポレータにより低沸分を留出させた。得られた残渣を減圧蒸留して、沸点99℃/3torrの1−(2−エチルへキシルオキシ)エチルメタクリレート(単量体(a1−3))207.0部(0.85mol)得た。
【0215】
<製造例a3−1>
冷却器、温度計、滴下ロート及び攪拌機を備えた四つ口フラスコにプロピレングリコールメチルエーテル(PGM)85.4部及び酸化亜鉛40.7部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメタクリル酸43.1部、アクリル酸36.1部、水5部からなる混合物を3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後反応溶液は乳白色状態から透明となった。さらに2時間撹拌した後n−ブタノールを36部添加して金属含有単量体混合物(単量体(a3−1))を得た。固形分は44.8質量%であった。
【0216】
<製造例a3−2>
冷却器、温度計、滴下ロート及び攪拌機を備えた四つ口フラスコにプロピレングリコールメチルエーテル(PGM)100部及び酸化亜鉛40.7部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメタクリル酸30.1部、アクリル酸25.2部、オクチル酸43.3部からなる混合物を3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後反応溶液は乳白色状態から透明となった。さらに2時間撹拌した後プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)を21.3部添加して金属含有単量体混合物(単量体(a3−2))を得た。固形分は55.0質量%であった。
【0217】
<製造例MM1>
(分散剤1の製造)
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム60部、メタクリル酸カリウム10部及びメチルメタクリレート(MMA)12部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08部を添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを使用して、MMAを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10質量%の分散剤1を得た。
【0218】
(連鎖移動剤1の製造)
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物1.00g及びジフェニルグリオキシム1.93g、あらかじめ窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル80mlを入れ、室温で30分間攪拌した。ついで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体10mlを加え、さらに6時間攪拌した。混合物をろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、15時間真空乾燥して、赤褐色固体である連鎖移動剤1を2.12g得た。
【0219】
(マクロモノマー(MM1)の製造)
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤1(固形分10質量%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、MMAを100部、連鎖移動剤1を0.008部及び1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーオクタO(登録商標)、日油株式会社製)0.8部を加え、水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して1時間反応し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥することにより、マクロモノマー(MM1)を得た。マクロモノマー(MM1)の数平均分子量は1600であった。
【0220】
<製造例MM2>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤1(固形分10質量%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、MMAを100部、連鎖移動剤1を0.004部及び1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーオクタO(登録商標)、日油株式会社製)0.4部を加え、水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して1時間反応し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥することにより、マクロモノマー(MM2)を得た。マクロモノマー(MM2)の数平均分子量は2500であった。
【0221】
<製造例MM3>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤1(固形分10質量%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、MMAを100部、連鎖移動剤1を0.003部及び1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーオクタO、日油株式会社製)0.3部を加え、水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して1時間反応し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥することにより、マクロモノマー(MM3)を得た。マクロモノマー(MM3)の数平均分子量は3600であった。
【0222】
<製造例MM4>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤1(固形分10質量%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、MMAを100部、連鎖移動剤1を0.0015部及び1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーオクタO、日油株式会社製)0.15部を加え、水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して1時間反応し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥することにより、マクロモノマー(MM4)を得た。マクロモノマー(MM4)の数平均分子量は6700であった。
【0223】
<製造例MM5>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤1(固形分10質量%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、MMAを75部、MTMA25部、連鎖移動剤1を0.01部及び1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーオクタO、日油株式会社製)1.5部を加え、水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して1時間反応し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥することにより、マクロモノマー(MM5)を得た。マクロモノマー(MM5)の数平均分子量は2000であった。
【0224】
<実施例1>
撹拌機、温度調整機、滴下ロートを備えた反応容器に、キシレン48.3部を仕込み、窒素雰囲気下で、撹拌しながら85℃に昇温した。続いて、滴下ロートから単量体(a1−1)25部、マクロモノマー(MM1)10部、MMA7.5部、EA20部、MTMA37.5部、AIBN1.5部からなる混合物を4時間かけて等速滴下した。滴下終了30分後、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート2.0部とキシレン9部を30分間隔で4回滴下し、さらに1時間撹拌した後、ブチルビニルエーテル6.7部、酢酸ブチル2部を添加し、固形分59.7質量%、ガードナー粘度TUの溶液状の重合体含有組成物(重合体溶液)A−1を得た。
【0225】
<実施例2〜9、比較例1〜2>
単量体及び開始剤のAIBNの仕込み量(部)を表1に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、溶液状の重合体含有組成物A−2〜A−11を製造した。
【0226】
表1に、得られた重合体含有組成物A−1〜A−11の特性値(固形分(質量%)、ガードナー粘度、B型粘度、各重合体含有組成物に含まれる共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw))を記載した。重合体含有組成物A−1〜A−11の固形分は、共重合体の含有量に等しい。また、重合体含有組成物を用いて形成された塗膜の性能(耐水性1、塗膜硬度)を表1に示す。
【0227】
【表1】
【0228】
表1中、単量体(a1)、マクロモノマー、単量体(c)及び開始剤の欄に記載される数値は、仕込み量(部)を示す。各重合体含有組成物におけるブチルビニルエーテルの含有量は、各重合体含有組成物に含まれる共重合体が有する構造(I)の合計に対して50モル%である。
【0229】
実施例1〜9の重合体含有組成物A−1〜A−5、A−7〜A−10は、高固形分でありながら粘度が低かった。また、形成された塗膜の硬度と耐水性が良好であった。
マクロモノマーを用いなかった比較例1〜2の重合体含有組成物A−6、A−11は、固形分が同じレベルであるが、実施例1〜9に比べて粘度が高かった。また、形成された塗膜の硬度が低く、耐水性も劣っていた。
【0230】
<実施例10〜20、比較例3〜4>
表2に示す組成に従い、各成分を金属缶に仕込んだ後、ガラスビーズ70gを添加し、撹拌棒にてあらかじめ混合したものを、ロッキングシェーカーにより顔料分散することで、防汚塗料組成物を得た。
得られた防汚塗料組成物の評価結果を表2に示す。
【0231】
【表2】
【0232】
表2中、組成の欄に記載される数値は、配合量(部)を示す。表2中、重合体含有組成物の配合量は、重合体含有組成物全体の量である。
【0233】
実施例10〜20の防汚塗料組成物は、高固形分低VOCでありながら粘度が低く、塗装適性が良好であった。また、形成された塗膜の消耗度が良好であり、実施例1〜9の結果から、塗膜の硬度と耐水性も良好であると判断できる。
マクロモノマーに基づく構成単位を含まない共重合体を用いた比較例3の防汚塗料組成物は、重合体含有組成物以外は同じ組成の実施例10〜14に比べて、加熱残分、VOCが同じレベルであるが、塗料粘度が高く、塗装適性に劣っていた。比較例4と実施例18〜20との対比においても同様の傾向が見られた。
実施例10、比較例3の防汚塗料組成物について静置防汚性を評価したところ、結果はそれぞれ良好であった。
【0234】
<実施例21>
撹拌機、温度調整機、滴下ロートを備えた反応容器に、キシレン40部、マクロモノマー(MM2)10部を仕込み、撹拌しながら90℃に昇温した。続いて、窒素雰囲気下で、滴下ロートからTIPX50部、MMA25部、EA10部、MTA5部、AMBN1.0部からなる混合物を4時間かけて等速滴下した。滴下終了30分後に、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート1.0部とキシレン10部を1時間半で滴下し、さらに1時間撹拌した後、固形分61.1質量%、B型粘度760mPa・sの溶液状の重合体含有組成物(重合体溶液)A−12を得た。
【0235】
<実施例22〜23、比較例5>
単量体及び開始剤のAIBNの仕込み量(部)を表1に示すようにしたこと以外は実施例21と同様にして、溶液状の重合体含有組成物A−13〜A−14、A−16を製造した。
【0236】
<実施例24>
撹拌機、温度調整機、滴下ロートを備えた反応容器に、キシレン40部を仕込み、撹拌しながら90℃に昇温した。続いて、窒素雰囲気下で、滴下ロートからTIPX50部、マクロモノマー(MM2)10部、MMA25部、EA10部、MTA5部、AMBN1.0部からなる混合物を4時間かけて等速滴下した。滴下終了30分後に、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート1.0部とキシレン26部を1時間半で滴下し、さらに1時間撹拌した後、固形分61.1質量%、B型粘度690mPa・sの溶液状の重合体含有組成物(重合体溶液)A−15を得た。
【0237】
表3に、得られた重合体含有組成物A−12〜A−16の特性値(固形分(質量%)、有機溶剤量(質量%)、B型粘度、各重合体含有組成物に含まれる共重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び酸価)を記載した。重合体含有組成物A−12〜A−16の固形分は、共重合体の含有量に等しい。また、重合体含有組成物を用いて形成された塗膜の性能(塗膜硬度、1日後の塗膜硬度、耐水性2)を表3に示す。
【0238】
【表3】
【0239】
表3中、単量体(a2)、マクロモノマー、単量体(c)及び開始剤の欄に記載される数値は、仕込み量(部)を示す。なお、最後に添加するキシレンの量で、表に記載の有機溶剤量と固形分量になるように調整した。
【0240】
実施例21〜24の重合体含有組成物A−12〜A−15は、高固形分でありながら粘度が低かった。また、形成された塗膜の硬度、耐水性が良好であった。
マクロモノマーを用いなかった比較例5の重合体含有組成物A−16は、実施例21〜24に比べて、固形分が同じレベルであるが粘度が高かった。また、塗膜硬度、塗装1日後の塗膜硬度が低かった。塗膜の耐水性は、良好ではあるものの、実施例21〜24に比べて劣っていた。
【0241】
<実施例25〜28、比較例6>
表4に示す組成に従い、各成分を金属缶に仕込んだ後、ガラスビーズ70gを添加し、撹拌棒にてあらかじめ混合したものを、ロッキングシェーカーにより顔料分散することで、防汚塗料組成物を得た。
得られた防汚塗料組成物の評価結果を表4に示す。
【0242】
【表4】
【0243】
表4中、組成の欄に記載される数値は、配合量(部)を示す。表4中、重合体含有組成物の配合量は、重合体含有組成物全体の量である。
【0244】
実施例25〜28の防汚塗料組成物は、充分な消耗度を有していた。また、実施例21〜24の結果から、塗膜硬度、1日後の塗膜硬度及び耐水性にも優れると判断できる。
比較例6の防汚塗料組成物の塗膜は、充分な消耗度を有していたが、比較例5の結果から、塗膜硬度、1日後の塗膜硬度及び耐水性が実施例25〜28に比べて劣ると判断できる。
実施例25〜28、比較例6の防汚塗料組成物について静置防汚性を評価したところ、結果はそれぞれ良好であった。
【0245】
<実施例29>
冷却器、温度計、滴下ロート及び攪拌機を備えた四つ口フラスコにPGM(プロピレングリコールメチルエーテル)15部、キシレン30部及びEA4.0部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートからMMAメチルメタクリレート23.0部、EA10部、BA30部、製造例a3−1で得た単量体(a3−1)28.8部(有機溶剤を含めた全量)、製造例MM1で得たマクロモノマー(MM1)20部、連鎖移動剤(日油株式会社製、ノフマー(登録商標)MSD)1.5部、AMBN13.0部からなる混合物を6時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン8部を30分で滴下し、さらに1時間30分撹拌し、固形分57.2質量%、B型粘度390mPa・sの溶液状の重合体含有組成物(重合体溶液)A−17を得た。
【0246】
<実施例30〜34、42〜46、比較例7>
単量体の仕込み量を表5〜6に示すようにしたこと以外は実施例29と同様にして、溶液状の重合体含有組成物(重合体溶液)A−18〜A−22、A−30〜A−33、A−35〜36を製造した。
なお、表5〜6の単量体(a3)の配合量は、固形分量のみを記載している。
【0247】
<実施例35>
冷却器、温度計、滴下タンク及び攪拌機を備えた加圧重合可能なオートクレーブにPGM(プロピレングリコールメチルエーテル)15部及びキシレン30部及びEA4部を仕込み、撹拌しながら350kPaに加圧し145℃に昇温した。続いて、滴下タンクからMMA35部、EA5部、BA30部、製造例a3−1で得た単量体(a3−1)28.8部(有機溶剤を含めた全量)、連鎖移動剤(日本油脂社製ノフマーMSD)1.5部、AMBN6部からなる透明な混合物を4時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン7部を30分で滴下し、さらに1時間30分撹拌した後キシレンを8部添加して、300メッシュでろ過して溶液状の重合体含有組成物(重合体溶液)A−23を得た。
【0248】
<実施例36〜41、47>
単量体の仕込み量を表5〜6に示すようにしたこと以外は実施例35と同様にして、溶液状の重合体含有組成物(重合体溶液)A−24〜A−29、A−37を製造した。
なお、表5〜6の単量体(a3)の配合量は、固形分量のみを記載している。
【0249】
<比較例8>
撹拌機、温度調整機、滴下装置を備えた反応容器に、キシレン15部を仕込み、撹拌しながら130℃に昇温した。その後、下記原料からなる混合物を、2時間かけて等速滴下し、更に0.5時間共重合反応を行った。
マクロモノマー(MM1):20部、
BA:20部、
MAA:7部、
AMBN:3部。
【0250】
次いで、下記原料からなる混合物を3時間で等速滴下し、更に0.5時間共重合反応を行った。
単量体(a3−1):28.8部、
MMA:16部、
EA:9部、
BA:10部、
ノフマーMSD(日油株式会社製):1.5部、
AMBN:10部。
【0251】
次いで、パーブチルO:0.5部を添加し、さらに1時間重合反応を続けた後、80℃に加熱し、ジメチルエタノールアミン(DMEA)7.0部を加え、均一になるまで混合して重合体溶液を得た。この重合体溶液の25℃におけるB型粘度は2000Pa・s以上であった。その後、この重合体溶液に脱イオン水110部を徐々に加え、水性重合体含有組成物A−3を得た。
【0252】
表5〜6に、重合体含有組成物の製造に用いた材料の種類と量、得られた重合体含有組成物A−17〜A−37の特性値(固形分(質量%)、有機溶剤量(質量%)、B型粘度、各重合体含有組成物に含まれる共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、酸価)を記載した。重合体含有組成物A−17〜A−37の固形分は、共重合体の含有量に等しい。また、重合体含有組成物を用いて形成された塗膜の性能(塗膜硬度、1日後の塗膜硬度、耐水性2)を表5〜6に示す。
【0253】
【表5】
【0254】
【表6】
【0255】
表5〜6中、単量体及び開始剤の欄に記載される数値は、仕込み量(部)を示す。単量体(a3)の配合量は、固形分量のみを記載している。なお、単量体(a3−1)、(a3−2)には有機溶剤が含まれているため、最後に添加するキシレンの量で、表に記載の有機溶剤量と固形分量になるように調整した。
【0256】
実施例29〜47の重合体含有組成物の塗膜は、硬度及び耐水性に優れていた。また、1日後の塗膜硬度が高かった。
マクロモノマーを用いなかった比較例7の樹脂組成物の塗膜は、硬度及び耐水性ともに劣っていた。また、重合体含有組成物の粘度が高かった。
25℃におけるB型粘度が5×10mPa・s超の重合体溶液を水に分散させた水性分散液であり、有機溶剤の含有量が、共重合体を除いた全量に対して30質量%未満である比較例8の重合体含有組成物の塗膜は、1日後の塗膜硬度が低く、耐水性に劣っていた。また、重合体溶液が高粘度であり、ハンドリング性が低かった。
【0257】
防汚塗料組成物等を低VOC化しようとした際には、重合体含有組成物の粘度を下げる必要がある。しかし、重合体含有組成物の粘度を下げるために重合体の分子量を下げたりガラス転移温度(Tg)を下げたりすると、比較例7のように、塗膜の耐水性や塗膜硬度が低くなってしまう。マクロモノマーを使用すれば、重合体含有組成物の粘度を低くでき、しかも、塗膜硬度が高く、耐水性もよい塗膜を形成できる。
【0258】
<実施例48〜68、比較例9〜10>
表7〜8に示す組成に従い、各成分を高速ディスパーにより混合して、防汚塗料組成物を得た。得られた防汚塗料組成物を用いて形成された塗膜の性能(消耗度)の評価結果を表7〜8に示す。
【0259】
【表7】
【0260】
【表8】
【0261】
表7〜8中、組成の欄に記載される数値は、配合量(部)を示す。表7〜8中、重合体含有組成物の配合量は、重合体含有組成物全体の量である。
【0262】
実施例48〜68の防汚塗料組成物の塗膜は、充分な消耗度を有していた。また、実施例29〜47の結果から、塗膜硬度、1日後の塗膜硬度及び耐水性にも優れると判断できる。
比較例9の防汚塗料組成物の塗膜は、充分な消耗度を有していたが、比較例7の結果から、塗膜硬度、1日後の塗膜硬度及び耐水性が低いと判断できる。
比較例10の防汚塗料組成物の塗膜は、実施例48〜68に比べて消耗度が少なかった。そのため、防汚性に劣ると判断できる。また、比較例8の結果から、耐水性が低いと判断できる。
実施例48、51、比較例9の防汚塗料組成物について静置防汚性を評価したところ、結果はそれぞれ良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0263】
本発明の(メタ)アクリル系共重合体、重合体溶液及び重合体含有組成物は、防汚塗料組成物、防曇塗料組成物等に用いることができ、特に防汚塗料組成物に好適に用いることができる。