【実施例】
【0066】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、単結晶炭化珪素薄膜及び介在層の厚さは、反射率分光法により測定した。
【0067】
[実施例1]
単結晶炭化珪素基板1として、市販品の直径3インチの単結晶炭化珪素ウェーハ(ポリタイプ4H、厚さ400μm)を用意し、これに100KeV,ドーズ量8.8×10
16atom/cm
2で水素イオン(H
+)を注入した。
次に、ハンドル基板12として、直径3インチのアモルファス炭化珪素ウェーハ(厚さ400μm)を用意し、その主面に薄膜3b(介在層13)としてPECVD法によっての酸化珪素(SiO
2)薄膜をその厚さを変化させて形成した後、この薄膜をCMP処理により研磨した。研磨後の酸化珪素薄膜の厚さは、0.02、0.1、0.5、0.8、0.9、1.0、1.2、1.5、2.0μmの9水準とした。
次いで、単結晶炭化珪素基板のイオン注入した表面及びハンドル基板の薄膜形成面にプラズマ活性化表面処理を施した後、両者を貼り合わせて接合体を得た。
次いで、この接合体を500℃に加熱し、イオン注入領域の一端に機械的衝撃を付与して、このイオン注入領域で剥離させて、アモルファス炭化珪素ウェーハに酸化珪素薄膜を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された9枚の複合基板を得た。このときの単結晶炭化珪素薄膜の厚さをいずれも0.95μmとした。
【0068】
得られた複合基板を不活性ガス雰囲気下で1,420℃に加熱して、単結晶炭化珪素薄膜のグラフェン化を行った。
グラフェン膜形成後にそのグラフェン膜表面を1,000倍の光学顕微鏡で観察して欠陥数としてピット状の穴の数を目視で計測した。その結果を表1及び
図3に示す。介在層の厚さが1μm以下では欠陥数が3000個/cm
2前後であったが、1μmを超えると欠陥数が4000個/cm
2超に増加した。
【0069】
【表1】
【0070】
[実施例2]
単結晶炭化珪素基板1として、市販品の直径3インチの単結晶炭化珪素ウェーハ(ポリタイプ4H、厚さ400μm)を用意し、これに100KeV,ドーズ量8.8×10
16atom/cm
2で水素イオン(H
+)を注入した。
次いで、この単結晶炭化珪素基板1のイオン注入面に薄膜3aとして電子ビーム蒸着法によってチタン(Ti)薄膜と厚さ10nmの金(Au)薄膜を形成した。なお、チタン薄膜の厚さを0、40、240、390、440、490、590、740、990nmの9水準に変化させた。
次に、ハンドル基板12として、直径3インチの多結晶炭化珪素ウェーハ(厚さ400μm)を用意し、その主面に薄膜3bとして電子ビーム蒸着法によってチタン(Ti)薄膜と厚さ10nmの金(Au)薄膜を形成した。なお、チタン薄膜の厚さを上記薄膜3aにおけるチタン薄膜の厚さと同じとした。その結果、貼り合わせ後の薄膜3a、3bの合計膜厚(介在層13の厚さ)は、0.02、0.1、0.5、0.8、0.9、1.0、1.2、1.5、2.0μmの9水準となる。
次いで、単結晶炭化珪素基板の薄膜形成面及びハンドル基板の薄膜形成面にプラズマ活性化表面処理を施した後、両者を貼り合わせて接合体を得た。
次いで、この接合体を500℃に加熱し、イオン注入領域の一端に機械的衝撃を付与して、このイオン注入領域で剥離させて、アモルファス炭化珪素ウェーハに介在層(Au/Auの2層構造又はTi/Au/Au/Tiの4層構造の薄膜)を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された9枚の複合基板を得た。このときの単結晶炭化珪素薄膜の厚さをいずれも0.95μmとした。
【0071】
得られた複合基板を不活性ガス雰囲気下で1,420℃に加熱して、単結晶炭化珪素薄膜のグラフェン化を行った。
グラフェン膜形成後にそのグラフェン膜表面を1,000倍の光学顕微鏡で観察して欠陥数としてピット状の穴の数を目視で計測した。その結果を表2及び
図4に示す。介在層の厚さが1μm以下では欠陥数が3300〜3500個/cm
2程度であったが、1μmを超えると欠陥数が4000個/cm
2超に増加した。
【0072】
【表2】
【0073】
[比較例1]
実施例2において、薄膜3a、3bそれぞれのチタン薄膜の厚さを80nmとし、更に単結晶炭化珪素薄膜11の厚さを1.04μmとし、それ以外は実施例2と同様にして複合基板を作製した。
得られた複合基板を不活性ガス雰囲気下で1,420℃に加熱して、単結晶炭化珪素薄膜のグラフェン化を行った。
グラフェン膜形成後にそのグラフェン膜表面を1,000倍の光学顕微鏡で観察して欠陥数としてピット状の穴の数を目視で計測したところ、4520個/cm
2であった。
【0074】
[実施例3]
本発明の複合基板の製造方法において、単結晶炭化珪素基板1、ハンドル基板12それぞれに6種類の薄膜3a、3bを形成して、複合基板を以下のように作製した。
【0075】
(実施例3−1)
単結晶炭化珪素基板1として、市販品の直径3インチの単結晶炭化珪素ウェーハ(ポリタイプ4H、厚さ400μm)を用意し、これに100KeV,ドーズ量8.8×10
16atom/cm
2で水素イオン(H
+)を注入した。
次いで、この単結晶炭化珪素基板1のイオン注入面に薄膜3aとしてPECVD法によって厚さ100nmの酸化珪素(SiO
2)薄膜を形成した後、この薄膜をCMP処理により研磨した。
次に、ハンドル基板12として、直径3インチの多結晶炭化珪素ウェーハ(厚さ400μm)を用意し、その主面に薄膜3bとしてPECVD法によって厚さ100nmの酸化珪素(SiO
2)薄膜を形成した後、この薄膜をCMP処理により研磨した。
次いで、単結晶炭化珪素基板の薄膜形成面及びハンドル基板の薄膜形成面にプラズマ活性化表面処理を施した後、両者を貼り合わせて接合体を得た。
次いで、この接合体についてイオン注入領域にて機械剥離を起こし、多結晶炭化珪素ウェーハに酸化珪素薄膜を介して単結晶炭化珪素薄膜(厚さ0.65μm)が転写された複合基板を得た。
得られた複合基板について500℃の熱処理を施した後、粘着テープ(商品名:カプトンテープ、デュポン(株)製)を単結晶炭化珪素薄膜に貼った後に引き剥し、該単結晶炭化珪素薄膜の剥離の有無を確認するピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3080個/cm
2であった。
【0076】
(実施例3−2)
実施例3−1において、薄膜3a、3bとして、それぞれスパッタリング法によって厚さ100nmの窒化珪素(SiN)薄膜を形成した後、この薄膜をCMP処理により研磨して仕上げるようにし、それ以外は実施例3−1と同様にして複合基板を作製した。
その結果、多結晶炭化珪素ウェーハに窒化珪素薄膜を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3480個/cm
2であった。
【0077】
(実施例3−3)
実施例3−1において、薄膜3a、3bとして、それぞれスパッタリング法によって厚さ100nmのアモルファス炭化珪素(SiC)薄膜を形成した後、この薄膜をCMP処理により研磨して仕上げるようにし、それ以外は実施例3−1と同様にして複合基板を作製した。
その結果、多結晶炭化珪素ウェーハに炭化珪素薄膜を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3320個/cm
2であった。
【0078】
(実施例3−4)
実施例3−1において、薄膜3a、3bとして、それぞれスパッタリング法によって厚さ100nmのアモルファスシリコン(Si)薄膜を形成した後、この薄膜をCMP処理により研磨して仕上げるようにし、それ以外は実施例3−1と同様にして複合基板を作製した。
その結果、多結晶炭化珪素ウェーハにシリコン薄膜を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3290個/cm
2であった。
【0079】
(実施例3−5)
実施例3−1において、薄膜3a、3bとして、それぞれ電子ビーム蒸着法によって厚さ20nmのチタン(Ti)薄膜を形成した後、CMP処理することなくそのままとし、それ以外は実施例3−1と同様にして複合基板を作製した。
その結果、多結晶炭化珪素ウェーハにチタン薄膜を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3310個/cm
2であった。
【0080】
(実施例3−6)
実施例3−1において、薄膜3a、3bとして、それぞれ電子ビーム蒸着法によって厚さ20nmのチタン(Ti)薄膜と厚さ20nmの金(Au)薄膜を形成した後、CMP処理することなくそのままとし、それ以外は実施例3−1と同様にして複合基板を作製した。
その結果、多結晶炭化珪素ウェーハにチタン薄膜と金薄膜の積層薄膜(Ti/Au/Au/Tiの4層構造の薄膜)を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、2290個/cm
2であった。
【0081】
[実施例4]
実施例3において、ハンドル基板12を直径3インチのアモルファス炭化珪素ウェーハ(厚さ400μm)とし、それ以外は実施例3と同様にして複合基板を作製した。また、介在層の材料として酸化ジルコニウム(ジルコニア、ZrO
2)の実施例を追加した。詳しくは以下の通りである。
【0082】
(実施例4−1)
実施例3−1において、ハンドル基板12を直径3インチのアモルファス炭化珪素ウェーハ(厚さ400μm)とし、それ以外は実施例3−1と同様にして複合基板を作製した。
その結果、アモルファス炭化珪素ウェーハに酸化珪素薄膜を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3470個/cm
2であった。
【0083】
(実施例4−2)
実施例3−2において、ハンドル基板12を直径3インチのアモルファス炭化珪素ウェーハ(厚さ400μm)とし、それ以外は実施例3−2と同様にして複合基板を作製した。
その結果、アモルファス炭化珪素ウェーハに窒化珪素薄膜を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3220個/cm
2であった。
【0084】
(実施例4−3)
実施例3−3において、ハンドル基板12を直径3インチのアモルファス炭化珪素ウェーハ(厚さ400μm)とし、それ以外は実施例3−3と同様にして複合基板を作製した。
その結果、アモルファス炭化珪素ウェーハに炭化珪素薄膜を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3400個/cm
2であった。
【0085】
(実施例4−4)
実施例3−4において、ハンドル基板12を直径3インチのアモルファス炭化珪素ウェーハ(厚さ400μm)とし、それ以外は実施例3−4と同様にして複合基板を作製した。
その結果、アモルファス炭化珪素ウェーハにシリコン薄膜を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3360個/cm
2であった。
【0086】
(実施例4−5)
実施例3−5において、ハンドル基板12を直径3インチのアモルファス炭化珪素ウェーハ(厚さ400μm)とし、それ以外は実施例3−5と同様にして複合基板を作製した。
その結果、アモルファス炭化珪素ウェーハにチタン薄膜を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3310個/cm
2であった。
【0087】
(実施例4−6)
実施例3−6において、ハンドル基板12を直径3インチのアモルファス炭化珪素ウェーハ(厚さ400μm)とし、それ以外は実施例3−6と同様にして複合基板を作製した。
その結果、アモルファス炭化珪素ウェーハにチタン薄膜と金薄膜の積層薄膜(Ti/Au/Au/Tiの4層構造の薄膜)を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3020個/cm
2であった。
【0088】
(実施例4−7)
実施例4−1において、薄膜3a、3bとして、それぞれスパッタリング法によって厚さ100nmの酸化ジルコニウム(ZrO
2)薄膜を形成した後、この薄膜をCMP処理により研磨して仕上げるようにし、それ以外は実施例4−1と同様にして複合基板を作製した。
その結果、アモルファス炭化珪素ウェーハに酸化ジルコニウム薄膜を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3530個/cm
2であった。
【0089】
[実施例5]
実施例3−6において、4種類のハンドル基板12を用い、それ以外は実施例3−6と同様にして複合基板を作製した。詳しくは以下の通りである。
【0090】
(実施例5−1)
実施例3−6において、ハンドル基板12を直径3インチの単結晶シリコンウェーハ(厚さ400μm)とし、それ以外は実施例3−6と同様にして複合基板を作製した。
その結果、単結晶シリコンウェーハにチタン薄膜と金薄膜の積層薄膜(Ti/Au/Au/Tiの4層構造の薄膜)を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3210個/cm
2であった。
【0091】
(実施例5−2)
実施例3−6において、ハンドル基板12を直径3インチの多結晶酸化アルミニウム(アルミナ)ウェーハ(厚さ400μm)とし、それ以外は実施例3−6と同様にして複合基板を作製した。
その結果、多結晶酸化アルミニウムウェーハにチタン薄膜と金薄膜の積層薄膜(Ti/Au/Au/Tiの4層構造の薄膜)を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3440個/cm
2であった。
【0092】
(実施例5−3)
実施例3−6において、ハンドル基板12を直径3インチの多結晶窒化珪素ウェーハ(厚さ400μm)とし、それ以外は実施例3−6と同様にして複合基板を作製した。
その結果、多結晶窒化珪素ウェーハにチタン薄膜と金薄膜の積層薄膜(Ti/Au/Au/Tiの4層構造の薄膜)を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3330個/cm
2であった。
【0093】
(実施例5−4)
実施例3−6において、ハンドル基板12を直径3インチの多結晶窒化アルミニウムウェーハ(厚さ400μm)とし、それ以外は実施例3−6と同様にして複合基板を作製した。
その結果、多結晶窒化アルミニウムウェーハにチタン薄膜と金薄膜の積層薄膜(Ti/Au/Au/Tiの4層構造の薄膜)を介して単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の剥離は認められず、介在層を介しての密着性は良好であった。
次いで、実施例2と同様にグラフェン化を行い、グラフェン膜における欠陥数を測定したところ、3490個/cm
2であった。
【0094】
[比較例2]
単結晶炭化珪素基板1として、市販品の直径3インチの単結晶炭化珪素ウェーハ(ポリタイプ4H、厚さ400μm)を用意し、これに100KeV,ドーズ量8.8×10
16atom/cm
2で水素イオン(H
+)を注入した。この単結晶炭化珪素ウェーハのイオン注入面をCMP処理で研磨した。その表面粗さRMSは0.95nmであった。
なお、表面粗さRMSは、原子間力顕微鏡(AFM)によりその基板の表面を測定して求めた。測定条件は、測定領域10μm×10μmとした。
次に、ハンドル基板12として、直径3インチの多結晶炭化珪素ウェーハ(厚さ400μm)を用意した。この多結晶炭化珪素ウェーハ表面をCMP処理で研磨し、その表面粗さRMSが1.05nmであった。
次いで、単結晶炭化珪素基板のイオン注入した表面及びハンドル基板の貼り合わせ予定面にプラズマ活性化表面処理を施した後、両者を貼り合わせて接合体を得た。
次いで、この接合体についてイオン注入領域にて機械剥離を起こし、多結晶炭化珪素ウェーハに単結晶炭化珪素薄膜が転写された複合基板を得た。
得られた複合基板について、実施例3−1と同様のピールテストを行ったところ、単結晶炭化珪素薄膜の一部に剥離が発生した。介在層を介していない貼り合わせでは単結晶炭化珪素薄膜とハンドル基板との間で十分な接合強度が得られないことが判明した。
【0095】
なお、これまで本発明を実施形態をもって説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。