特許第6369829号(P6369829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369829
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】ガンマ線計測装置及びガンマ線計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20180730BHJP
   G01T 1/06 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   G01T7/00 A
   G01T1/06
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-122911(P2014-122911)
(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公開番号】特開2016-3892(P2016-3892A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2016年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】久利 修平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利治
(72)【発明者】
【氏名】堀池 寛
(72)【発明者】
【氏名】帆足 英二
(72)【発明者】
【氏名】村田 勲
(72)【発明者】
【氏名】土井 幸子
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−140252(JP,A)
【文献】 特開2008−224442(JP,A)
【文献】 特開2004−170122(JP,A)
【文献】 特開2002−071810(JP,A)
【文献】 特開昭54−018821(JP,A)
【文献】 特開平01−167690(JP,A)
【文献】 特開平04−130293(JP,A)
【文献】 特開平04−034828(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/008287(WO,A1)
【文献】 特開平11−109038(JP,A)
【文献】 特開平11−109036(JP,A)
【文献】 特開昭63−313086(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0068958(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−1/16
G01T 1/167−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線量計を有する第二検出器と、
前記第二検出器を構成する前記放射線量計と同一の放射線量計及び前記放射線量計の周囲に配置され且つ鉛又は鉛合金からなると共に、中性子の減衰とガンマ線の補正係数とがガンマ線の計測における許容範囲に収まるように厚さを決定したフィルターを有する第一検出器と、を備え
前記第二検出器の前記放射線量計で計測した線量から前記第一検出器の前記放射線量計で計測した線量を引き算して、残りの線量をガンマ線の線量の減衰分としてガンマ線の線量を推定することを特徴とするガンマ線計測装置。
【請求項2】
前記フィルターの厚さは、純鉛換算で2cm以下1cm以上であることを特徴とする請求項1に記載のガンマ線計測装置。
【請求項3】
更に、前記フィルターは、中心に前記放射線量計を配置した均一厚を有する中空の略球状体又は略円筒体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガンマ線計測装置。
【請求項4】
更に、前記放射線量計を所定の位置に支持する支持部材を内部に有することを特徴とする請求項3に記載のガンマ線計測装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載のガンマ線計測装置の第一検出器と、第一検出器に用いる放射線量計と同じ放射線量計で構成した第二検出器とを中性子及びガンマ線の混在場に置き、
その後、第二検出器の放射線量計で計測した線量から第一検出器の放射線量計で計測した線量を引き算して、残りの線量をガンマ線の線量の減衰分としてガンマ線の線量を推定することを特徴とするガンマ線計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子及びガンマ線の混在場においてガンマ線の線量を計測するガンマ線計測装置及びガンマ線計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ホウ素中性子捕捉療法(Boron neutron capture therapy; BNCT)が癌細胞を選択的に殺傷し治療できる技術として注目されている。BNCTでは、熱中性子や熱外中性子を利用する必要があるため、患者が中性子を生成利用できる原子炉まで出向く必要がある等の制約が多いため、病院内で中性子を発生させ得る小型の中性子発生装置が望まれている。中性子発生装置では、ベリリウムやリチウムのターゲットに加速器で加速させた陽子や重陽子を衝突させる。
【0003】
従来の加速器としては、非特許文献1に記載のようなものが知られている。この加速器は、ECR(electron cyclotron resonance)型のイオン源と、高周波四重ごく線形加速器(RFQリニアック)と、ドリフト導入管型線形加速器(DTL)とを連設した構成である。この加速器では、RFQリニアックにより重陽子イオンを5MeVまで加速させ、DTLにより40MeVまで加速させる。加速した重陽子イオンのビームは、湾曲したバックウォール上に流れる液体リチウムに照射され、その背後に中性子を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】国際核融合材料照射施設(IFMIF)計画の概要 東北大学金属材料研究所,日本原子力研究所 松井秀樹 第11回核融合研究開発問題検討会 平成15年9月29日 第14頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
BNCTの中性子照射場は、中性子及びガンマ線の混在場であり、このガンマ線の線量を分離して測定する手法の開発が望まれている。また、ガンマ線の線量を測定する手法に必要な装置は、治療コストの低減のためには簡易かつ安価な構成である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガンマ線計測装置は、共に使用される第二検出器を構成する放射線量計と同一の放射線量計の周囲に配置され且つ鉛又は鉛合金からなると共に、中性子の減衰とガンマ線の補正係数とがガンマ線の計測における許容範囲に収まるように厚さを決定したフィルターから構成される第一検出器を備えたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、前記フィルターの厚さは、純鉛換算で2cm以下1cm以上とすることで好ましい計測結果が得られる。
【0008】
また、前記フィルターは、中心に前記ガラス線量計を配置した均一厚を有する中空の略球状体又は略円筒体とするのが好ましい。更に、前記ガラス線量計を所定の位置に支持する支持部材を内部に有する構成とするのが好ましい。
【0009】
次に、本発明のガンマ線計測方法は、上記いずれか一つに記載の第一検出器と、第一検出器に用いる放射線量計と同じ放射線量計で構成した第二検出器とを中性子及びガンマ線の混在場に置き、その後、第二検出器の放射線量計で計測した線量から第一検出器の放射線量計で計測した線量を引き算して、残りの線量をガンマ線の線量の減衰分としてガンマ線の線量を推定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態1に係るガンマ線計測装置を示す構成図である。
図2図1に示した第一検出器の底方向からの斜視図である。
図3】中性子エネルギーに対する中性子線量の減衰比を示すグラフ図である。
図4】ガンマ線線量のフィルターの厚さに対する補正係数のエネルギー依存性を示すグラフ図である。
図5】第一検出器の変形例を示す構成図である。
図6】Flat response解析による、場の線量Dについての、フィルター有無の差し引き結果(ソース当たりのSv値)を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、この発明の実施の形態1に係るガンマ線計測装置を示す構成図であり、(a)は第一検出器の断面図、(b)は平面図、(c)は第二検出器の平面図を示す。図2は、図1に示した第一検出器の底方向からの斜視図である。このガンマ線計測装置100は、鉛のフィルター11を用いた場合と用いない場合の線量を同じ場所で計測し、その差からガンマ線量を取得する方法に用いるものであって、ガンマ線を遮蔽する鉛製のフィルター11及び当該フィルター11の中心に配置したガラス線量計3とから構成する第一検出器1と、ガラス線量計3のみから構成される第二検出器2とから構成される。
【0012】
フィルター11は、鉛の鋳造品であり中空の球状体である。鉛を用いたのは、加工が容易あり、ガンマ線の遮へい能が高く且つ中性子の減衰能が低いためである。鉛は、純鉛(99.97%以上)である。なお、フィルター11に必要な量の鉛を有するのであれば鉛合金を用いても良い。また、球状としたのは、内部に一様な場を作り、線量計の形状依存性を無くすことができるためである。フィルター11の分割端面11aは段形状となっており、組み合わせて球体にした状態において、中心からの放射方向でガンマ線や中性子が抜けることがないようにする。
【0013】
フィルター11は半分に分割可能であり、球体の中心にガラス線量計3を保持できる支持部材12が設けられる。支持部材12は、半球体に分割した際の端面から90度毎に球体中心に向かって延出するアーム13により構成する。前記ガラス線量計3は、この支持部材12により球体の中心に保持される。支持部材12は、紙や樹脂等の加工しやすい部材から構成するのが好ましい。また、ガラス線量計3を保持する固定部14に接着テープ等を設ける。
【0014】
また、前記支持部材12は、球体中心にガラス線量計3を保持できればよいので、中性子・ガンマ線を吸収する特性が低い素材からなる平面薄板を前記半球体の端面の間に渡してその中心部に接着テープ等のガラス線量計3の固定部を設けた構成でも良い。また、半球体の端面から片持ちのアームを延出してその先端が球体中心に位置するようにし、当該先端にガラス線量計3の固定部を設けた構成でも良い。また、支持部材12は、ワイヤ状のものでも良い。
【0015】
前記ガラス線量計3には、TLDなどに代わって簡易(個人)被ばく線量計として使用されているものを用いる。第一検出器1のガラス線量計3は、平板状で長方形である。第二検出器2は、この第一検出器1のガラス線量計3と形状・大きさ・材料が同一のガラス線量計3で構成する。
【0016】
前記フィルター11の厚さは、ガンマ線の遮蔽能が高く、且つ、中性子の減衰能が低くなるように、両者の特性をバランスよく備えるように決定する。換言すれば、中性子の減衰とガンマ線の補正係数とがガンマ線の計測における許容範囲に収まる厚さとする。次に、フィルター11の厚さの決定方法について説明する。
【0017】
中性子とガンマ線の混在場の線量Dは、(γ,n)反応が無視できるとすると、
D=Dn+Dnγ+Dγ (1)
であらわされる。
ここで、Dnは、中性子による直接線量、Dnγは、中性子誘起ガンマ線線量、Dγは、ガンマ線の直接線量である。求めたい物理量は、Dγである。
【0018】
ガンマ線の直接線量Dγは、基本的に以下の式で求められる。
Dγ=(D−Dlead)・η (2)
ここで、ηは、補正係数である。Dleadは、フィルター有のガラス線量計3の計測した線量である。ファイルターの有無で中性子線量は変わらないと仮定すると、Dleadは次式で与えられる。
Dlead=Dn+Dnγ+ξDγ (3)
ここで、ξはγ線の減衰率である。この時、ηは、ガンマ線の減衰率ξと以下の関係がある。
η=1/(1−ξ) (4)
以下、中性子の減衰率およびガンマ線の減衰率のエネルギー依存性、Dnγの効果について検討結果を示すことで、(2)及び(3)式の妥当性を示す。
【0019】
図3は、中性子エネルギーに対する中性子線量の減衰比を示すグラフ図である。パラメータは、フィルター11の厚さである。鉛の中性子吸収断面積は小さく、そのα値(弾性散乱による最大エネルギー減少割合)が0.99を超える。このため、鉛は、中性子の強度とエネルギーを減らすことなく中性子を透過させられる。一方、鉛は質量数が大きいため散乱中性子強度の角度依存性が小さい。よって、フィルター11が厚いほどガラス線量計3に届く中性子数が減る。即ち、フィルター11の厚さにより中性子の減衰能を調整でき、例えば中性子の減衰を十分小さくすれば良い。これは、フィルター11の厚さを薄くすればよいことになる。同図に示すように、フィルター11の厚さを、1cm、1.5cm、2cm、3cm、5cmとしてそれぞれの中性子の減衰を測定したところ、フィルター厚が小さいほど中性子の減衰が小さいことが確認できた。また、フィルター11の厚さを2cm以下にすれば、広いエネルギー範囲で中性子の減衰を安定して十分小さくできることが解る。
【0020】
式(2)において、本発明では、フィルター11でガンマ線の遮蔽を行い且つ中性子を遮蔽しないようにした状態で、第二検出器2の測定結果から第一検出器1の測定結果を引き算することで、遮蔽したガンマ線の線量を得る。第一検出器1と第二検出器2による線量を式(1)を用いて下記のように表す。
第一検出器 Dlead=Dn(lead)+Dnγ(lead)+ξDγ(lead)
第二検出器 D=Dn+Dnγ+Dγ
求めたいのはガンマ線の線量の減衰分であるから、
D−Dlead=Dn−Dn(lead)+Dnγ−Dnγ(lead)+Dγ−ξDγ(lead)
となる。
【0021】
上述のように、フィルター11の厚さを2cm以下とすることで、フィルター11の有無が中性子の遮蔽に測定上殆ど影響しないものと考えられる。よって、
Dn(lead)≒Dn
としてよい。
【0022】
次に、ガンマ線の遮蔽について検討する。図4は、ガンマ線線量のフィルターの厚さに対する補正係数のエネルギー依存性を示すグラフ図である。補正係数は、ガンマ線のエネルギーが0.4MeV以下の範囲で概ね1となる。また、フィルター11の厚さが増すにつれて広いエネルギー範囲において補正係数が1に近づき安定することが判る。エネルギー依存性が小さく、安定した補正係数を得るには、フィルター厚は1cm以上が好ましい。特に、p−Liを用いたBNCT線源では、主たるエネルギーは、0.1〜0.5MeV付近となるので、フィルター厚が1cm以上であれば測定上支障がない。
【0023】
一方、厚さが大きい方が、補正係数は安定するが、例えば5cm厚さのフィルター11を用いるとすると、フィルター11の直径は少なくとも10cm以上となり、中性子及びガンマ線場を歪める恐れがある。このため、2cm以下の厚さとするのが好ましい。これは、放射化箔や小型の検出器を用いる場合にも適する。
【0024】
次に、中性子誘起ガンマ線線量(Dnγ)については、測定場のガンマ線の成分に比べ、二次的に発生するγ線の寄与が極めて小さいことから、考慮しなくても測定精度上問題ないものと考えられる。よって、
Dnγ(lead)=Dnγ≒0
とする。
【0025】
以上から、
D−Dlead=Dγ−ξDγ=(1−ξ)Dγ
となり、(4)式の定義から、
Dγ=η・(D−Dlead)
となる。BNCTにおいて、p−Liベースの線源の場合、主たるエネルギーは、0.1〜0.5MeV付近となるので、
補正係数η≒2
となることが、計算により十分な精度で予測可能である。
【0026】
この結果は、換言すれば、第二検出器2により測定した放射線線量から第一検出器1により測定した放射線線量を引き算することで、ガンマ線の線量を測定できることになる。これにより、簡単かつ安価な構成により、中性子及びガンマ線の混在場においてガンマ線の線量を測定できる。
【0027】
[フィルター変形例]
図5は、第一検出器の変形例を示す構成図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。フィルター211は、上記同様、鉛の鋳造品であり全体が円筒形状であり軸方向に二分割構造となる。フィルター211の分割端面211aは段形状となっており、組み合わせて筒体にした状態において、中心からの放射方向でガンマ線や中性子が抜けることがないようにする。分割端面211aには、軸方向で中心で且つ円周の中心にガラス線量計3を保持できる支持部材212が設けられている。支持部材212は、分割端面から前記中心に向かって延出したアーム213により構成され、ガラス線量計3を保持する固定部214に接着テープ等を設けた構成である。支持部材212は、中性子・ガンマ線を吸収する特性が低い素材からなる平面薄板からなる。このような構成であっても、上記第一検出器1として用いることができる。
【0028】
[フィルター厚の検討例]
フィルター11の厚さをFlat response解析により検討した。中性子およびガンマ線の減衰はエネルギー依存性があり、エネルギーに対する感度解析は可能であるが、実際の応用では、場のスペクトルに大きく依存するので、その効果は、それぞれの場でスペクトルを確認しつつ、補正係数を評価することになる。しかしながら、係る方法では煩雑となるため、以下のように、場のスペクトル依存性を近似的に排除して傾向を得るものとした。具体的には、中性子とガンマ線のスペクトルが一様(中性子はレサジーあたり一定、ガンマ線は、MeVあたり一定、とする。全積分値で規格化する)であるとし、減衰項などを積分し求めるものと仮定し、積分的な傾向を見た。
【0029】
[中性子の減衰誤差]
Flat response解析による、Dnの引き去り((2)式参照)の残り分(減衰分を%表示したもの)は以下の通りである。これは、図3に示した条件について、あるスペクトル(Flat spectrum)を仮定して積分した量に相当する。
フィルター厚 1cm 2cm 3cm
中性子減衰 6.6% 8.5% 11.1%
このように、フィルター11が厚くなると、引き去りの残部が大きくなる。この中性子の影響は、線量計リーダーによるガンマ線量換算にどのように影響を及ぼすか不確定であるため、中性子減衰をできるだけ減らすことが大切である。このため、出来るだけフィルター11を薄くする必要がある。
【0030】
[Dnγの寄与]
図6は、Flat response解析による、場の線量Dについての、フィルター有無の差し引き結果(ソース当たりのSv値)を示すグラフ図である。同図に示すように、ガンマ線の成分が大きいので基本的に引き算方式が使用可であることが解る。また、Dnγは、その寄与が十分に小さく、無視できることが解る。
【0031】
[ガンマ線の補正係数η]
Flat response解析による補正係数ηは、以下のようになる。
フィルター厚 0.5cm 1cm 2cm 5cm
補正係数η 7.8 3.85 2.08 1.20
この結果は、フィルター11を出来るだけ厚くする方が良いことを示している。フィルター厚が小さいと補正係数が大きくなり、統計誤差が大きく伝搬することとなる。ただし、実際のp−LiによるBNCT用中性子場では、ガンマ線のスペクトルは、0.1〜0.5MeV辺りにピークを持つため、補正係数は更に小さくなる。
【0032】
このFlat response解析により、中性子の減衰誤差は、フィルター厚さが薄い方が良い結果となった。ただ、中性子の線量のガンマ線量換算効果が不明なので、出来るだけこの効果が小さい方(フィルター11が薄い方)が良い。また、ガンマ線の減衰補正係数の観点では、フィルター厚が大きなものが良いと考えられる。なお、フィルター厚が1cmより小さくなると、補正係数がかなり大きくなり好ましくない。以上から、1cmのフィルター11を使用することで、中性子とガンマ線の混在場でガラス線量計3を用いてガンマ線の線量を正確に決定できる。
【符号の説明】
【0033】
100 ガンマ線計測装置
1 第一検出器
2 第二検出器
3 ガラス線量計
11 フィルター
12 支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6