(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リソグラフィマスク(7)を配置することができる照明視野(5)に照明光(16)を案内するためのEUV投影リソグラフィのための照明光学ユニット(4;26)であって、
前記照明光(16)を前記照明視野(5)に案内するための複数のファセット(25)を有するファセットミラー(19)を含み、
照明光部分ビーム(16i)を案内するそれぞれ1つの照明チャネル(27i)が、前記ファセット(25)のうちの1つによって予め決定され、
正確に1つの照明チャネル(27i)が、前記ファセット(25)のうちのそれぞれ1つにわたって案内され、
照明光学ユニット(4;26)が、照明光学ユニット(4;26)が動作している時に、前記照明視野(5)内の同じ点に同時に入射する異なる照明チャネル(27i)にわたって案内された照明光部分ビーム(16i)のあらゆる対(ペア)が前記照明光(16)のコヒーレンス持続時間τκよりも大きい相互進行時間差を有するように具現化され、
前記照明光(16)を前記照明視野(5)に案内するための複数の第1のファセット(25)を有する第1のファセットミラー(19)を含み、
前記照明光(16)のビーム経路内で前記第1のファセットミラー(19)の下流に配置され、かつ複数の第2のファセット(28)を含む第2のファセットミラー(20)を含み、前記第1及び第2のファセット(25,28)は、照明光部分ビーム(16i)を案内するそれぞれ1つの照明チャネル(27)が第1のファセット(25)と関連の第2のファセット(28)とによって予め決定されるように配置され、正確に1つの照明チャネル(27)が、該ファセット(25,28)のうちのそれぞれ1つにわたって案内され、
前記第1のファセットミラーは、視野ファセットミラー(19)として具現化され、前記第2のファセットミラーは、瞳ファセットミラー(20)として具現化され、
前記視野ファセットミラー(19)の下流に配置されて前記照明光(16)の前記部分ビームのうちのそれぞれ1つを反射するための複数の瞳ファセット(28)を含む前記瞳ファセットミラー(20)を含む前記照明視野(5)において前記視野ファセット(25)の結像を重ねるための伝達光学ユニット(21)を含み、
照明光学ユニットは、照明光源(2)の像が前記瞳ファセットミラー(20)の前記瞳ファセット(28)の場所に収まるように配置することができ、
前記瞳ファセットミラー(20)の主ミラー面(55’)が、前記照明視野(5)の視野点の各1つに前記照明光(16)の前記部分ビームを当てることができる様々な前記照明チャネルが前記光源(2)と該照明視野(5)の該視野点のそれぞれ1つとの間に異なる照明チャネル長をそれぞれ有するように平面基準面(55)からずれる、
ことを特徴とする照明光学ユニット(4;26)。
リソグラフィマスク(7)を配置することができる照明視野(5)に照明光(16)を案内するためのEUV投影リソグラフィのための照明光学ユニット(4;26)であって、
前記照明光(16)を前記照明視野(5)に案内するための複数のファセット(25)を有するファセットミラー(19)を含み、
照明光部分ビーム(16i)を案内するそれぞれ1つの照明チャネル(27i)が、前記ファセット(25)のうちの1つによって予め決定され、
正確に1つの照明チャネル(27i)が、前記ファセット(25)のうちのそれぞれ1つにわたって案内され、
照明光学ユニット(4;26)が、照明光学ユニット(4;26)が動作している時に、前記照明視野(5)内の同じ点に同時に入射する異なる照明チャネル(27i)にわたって案内された照明光部分ビーム(16i)のあらゆる対(ペア)が前記照明光(16)のコヒーレンス持続時間τκよりも大きい相互進行時間差を有するように具現化され、
前記ファセットミラー(19)上に入射する時の照明ビーム(16)の全体ビーム断面が前記ファセット(25)のうちの1つの反射面の200%よりも大きい照明ビーム(16)を前記照明光(16)が前記照明視野(5)を照明するように該ファセットミラー(19)の該ファセット(25)にわたって走査する走査デバイス(36)を含み、
前記走査デバイス(36)は、いずれの与えられた時間においても前記照明視野(5)内のそれぞれ1つの視野点(42)が、光路長差が少なくとも1つのコヒーレンス長だけそれぞれ異なるファセット(25)によって照明されるのみであるように具現化される、
ことを特徴とする照明光学ユニット(4;26)。
前記ファセットミラー(19)上に入射する時の照明ビーム(16)の全体ビーム断面が前記ファセット(25)のうちの1つの反射面の20%よりも大きい照明ビーム(16)を該照明光(16)が前記照明視野(5)を照明するように該ファセットミラー(19)の該ファセット(25)にわたって走査する走査デバイス(36)を含み、
前記走査デバイス(36)は、いずれの与えられた時間においても前記照明視野(5)内のそれぞれ1つの視野点(42)が各場合に前記ファセット(25)のうちの最大で1つのものによって照明されるのみであるように具現化される、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の照明光学ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、照明視野の照明の品質が改善されるような冒頭に示したタイプの照明光学ユニットを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、この目的は、
当初請求項1に指定した特徴を含む照明光学ユニットによって達成される。
[当初請求項1]
リソグラフィマスク(7)を配置することができる照明視野(5)に照明光(16)を案内するためのEUV投影リソグラフィのための照明光学ユニット(4;26)であって、
前記照明光(16)を前記照明視野(5)に案内するための複数のファセット(25)を有するファセットミラー(19)を含み、
照明光部分ビーム(16i)を案内するそれぞれ1つの照明チャネル(27i)が、前記ファセット(25)のうちの1つによって予め決定され、
正確に1つの照明チャネル(27i)が、前記ファセット(25)のうちのそれぞれ1つにわたって案内され、
照明光学ユニット(4;26)が、照明光学ユニット(4;26)が動作している時に、前記照明視野(5)内の同じ点に同時に入射する異なる照明チャネル(27i)にわたって案内された照明光部分ビーム(16i)のあらゆる対(ペア)が前記照明光(16)のコヒーレンス持続時間τκよりも大きい相互進行時間差を有するように具現化される、
ことを特徴とする照明光学ユニット(4;26)。
【0010】
照明光学ユニットは、EUV投影リソグラフィのための照明光学ユニットとすることができる。以下ではコヒーレンス長と略記する縦コヒーレンス長は、照明光の使用スペクトル帯域幅に依存する。コヒーレンス時間は、コヒーレンス長と同等であり、これらの2つの間の変換を光の速度を用いて実施することができる。照明光学ユニットが照明光のスペクトルフィルタリングを実施する場合に、関連の帯域幅は、照明視野内に到達する照明光のスペクトル帯域幅であり、光源におけるスペクトル帯域幅ではない。一例として、コヒーレンス長は、10μmの領域内にあるとすることができる。使用光源のタイプに基づいて、より長いコヒーレンス長も可能である。
【0011】
本発明が明らかにしたものは、照明視野内で重ね合わされる照明光の部分ビームの間の干渉問題が、照明光の少なくとも2つの部分ビームがいずれかの時間に照明視野のいずれかの点上に入射する時点で発生し、かつその過程においてこれらの部分ビームのうちの少なくとも2つの間で光源から測定した光路長は、照明光のコヒーレンス長よりも短い長さだけ異なるということである。
当初請求項1に記載の実施形態は、望ましくない干渉に対する条件が満たされるのを阻止し、従って、干渉問題が発生する可能性を防止する。異なる照明チャネルにわたって案内される照明光部分ビームのいずれの対の相互進行時間差も照明光のコヒーレンス持続時間よりも大きいという指定した条件は、照明視野内の各点に適用される。
【0012】
この目的に対して、最初に、照明チャネルのうちの各々は、各々正確に1つの照明チャネルへのファセットの割り当てによって正確に定められる。異なる照明チャネルは、一般的に空間内のいずれかの場所で重なり合うが、ファセットミラー上では空間的に分離される。従って、1つの同じファセットは、正確に1つの照明チャネルの照明光を案内する。従って、正確に1つの照明チャネルにわたって案内される照明光は、ファセットミラー上の複数のファセット上に同時に入射しない。照明チャネルは、このようにして一意的に定められる。照明光の部分ビームは、ファセット光学要素上の反射によって生成され、対応する照明チャネル内で伝播する。
【0013】
ファセットミラーは、視野ファセットミラーとすることができ、この視野ファセットミラーの視野ファセットは、照明視野内で互いに重ねて結像される。これに代えて、ファセットミラーは、鏡面反射器とすることができる。鏡面反射器は、US 2006/0132747 A1、EP 1 614 008 B1、及びUS 6,573,978から公知である。照明光部分ビームの照明チャネルは、照明光学ユニットの中を照明光の光源から照明視野まで辿ることができる。考慮する進行時間差に対しては、照明チャネルのうちで照明光部分ビームが照明光学ユニット内で互いから分離される部分だけが関連のあるものである。光源からの照明チャネルの全てを考慮する代わりに、例えば、照明光学ユニット内でのビーム案内の入力からの照明チャネルを考慮することができる。
【0014】
[当初請求項2]
前記照明光(16)を前記照明視野(5)に案内するための複数の第1のファセット(25)を有する第1のファセットミラー(19)を含み、
前記照明光(16)のビーム経路内で前記第1のファセットミラー(19)の下流に配置され、かつ複数の第2のファセット(28)を含む第2のファセットミラー(20)を含み、前記第1及び第2のファセット(25,28)は、照明光部分ビーム(16i)を案内するそれぞれ1つの照明チャネル(27)が第1のファセット(25)と関連の第2のファセット(28)とによって予め決定されるように配置され、正確に1つの照明チャネル(27)が、該ファセット(25,28)のうちのそれぞれ1つにわたって案内される、
ことを特徴とする当初請求項1に記載の照明光学ユニット。
当初請求項2に記載の実施形態は、設定される照明を予め決定するのに特に適切であることが見出されている。第1のファセットミラーは、照明光学ユニットの視野平面の領域に配置することができる。第2のファセットミラーは、照明光学ユニットの瞳平面の領域に配置することができる。少なくとも1つのファセットミラーのファセットを更に個々のミラーに再分割することができる。一例として、そのような個々のミラー再分割は、US 2011/001 947 A1から公知である。そのような個々のミラー装置のある一定の実現は、マイクロ電気機械系(MEMS)とも呼ぶ。
【0015】
[当初請求項3]
進行時間差が、前記照明チャネル(27)のビーム経路の経路長の差に依存して前記照明光部分ビーム(16i)の間に現れるような実施形態を特徴とし、
前記照明光(16)の前記ビーム経路内の前記照明光部分ビーム(16i)へのその分割の前の場所(18)と前記照明視野(5)との間で測定された2つの異なる照明光部分ビーム(16i)の進行時間の間の各差(Δt)が、該照明視野(5)内の各場所に対して該照明光(16)のコヒーレンス持続時間(τκ)よりも常に大きい、
ことを特徴とする当初請求項1又は当初請求項2に記載の照明光学ユニット。
様々な照明部分ビームの間の光路長差は、特に照明チャネルの幾何学配置から現れる。
当初請求項3に記載の実施形態において、その照明チャネルの選択及び配置により、照明チャネルに沿った経路長差が、上記に指定した望ましくない干渉に対する条件が満たされないように常に十分に長いことが確実にされる。
当初請求項3に記載の実施形態において、照明光学ユニット内で、時間経過に伴って照明視野内に到達する照明光成分、特に照明光パルスの間で照明光のコヒーレンス持続時間よりも長いリターデーションがもたらされる。
【0016】
そのような時間リターデーションは、部分ビームの間又は照明チャネルの間で設定される光路長差に対応し、照明チャネルの幾何学形状から現れる。部分ビームのいずれの対の時間リターデーションも照明光のコヒーレンス持続時間よりも長く、従って、照明光の光源と照明視野との間で測定した最短経路長を有する照明チャネルと最長経路長を有する照明チャネルとの間で、照明チャネル数と光源のコヒーレンス時間との積に少なくとも等しい最小進行時間差が現れる。
【0017】
この経路長差条件を考慮した時に現れる照明視野の照明の規則性は、多くの場合に不十分である。この規則性は、点、照明される物体、又はこの物体の像を照明することに寄与する照射量が、照明視野内の又は物体視野又は像視野内の場所の関数としてどれ程大きく変化するかを表している。投影リソグラフィの関連では、規則性を均一性とも呼ぶ。規則性は、2つの代替手法で、すなわち、照明照射量の最大偏差により、又は視野の場所の関数としての照明照射量の分散、特に相対分散によりそのいずれかで定量化することができる。
【0018】
当初請求項3に記載の照明光学ユニットでは、照明光部分ビームの間の進行時間差は、照明光学ユニットが
動作状態にある時のいずれの時間及び照明視野内のいずれの点においても、異なる照明チャネルにわたって案内される照明光部分ビームのいずれの対も少なくとも照明光のコヒーレンス長よりも長い互いからの光路長差を有するように予め決定される。
【0019】
上記に指定した進行時間差又は経路長差の条件を考慮した時に現れる照明視野の照明の規則性は、
当初請求項4に記載の光学リターデーション構成要素を用いて、照明チャネルの他の幾何学形状に手を加えることを必要とせずに更に改善される。リターデーション構成要素は、互いに対して遅延された複数の部分ビーム又はビーム成分とも呼ぶ光ビームを入射光ビームから生成する。ファセット光学要素の反射によってビーム経路に生成される照明光部分ビームは、光学リターデーション構成要素を用いて、これらのビームの進行時間に関して互いに対して遅延させることができる。これに代えて又はこれに加えて、ファセット反射によって生成された部分ビーム自体は、この場合に互いに対して対
ごとの進行時間差を有する部分ビーム成分に光学リターデーション構成要素を用いて分割することができる。これらの遅延光ビームの各々は、照明視野の照明の規則性を改善する。
当初請求項4に記載の実施形態は、望ましくない干渉を発生させる場合がないことを確実にする。
[当初請求項4]
少なくとも1つの照明光部分ビーム(16k)を複数の部分ビーム成分(16kl)に分割するための光学リターデーション構成要素(29;33)を特徴とし、該部分ビーム成分(16kl)は、それら自体の間で、前記照明光(16)の前記ビーム経路内の前記照明光部分ビーム(16i)へのその分割の上流及び該リターデーション構成要素の上流の両方に位置する場所(18)と前記照明視野(5)との間で測定されたいずれの照明光部分ビーム(16k)の該部分ビーム成分(16kl)の進行時間の間の各差(Δt)も、依然として該照明光(16)の前記コヒーレンス持続時間(τκ)よりも大きいような対毎の進行時間差を有する、
ことを特徴とする当初請求項1から当初請求項3のいずれか1項に記載の照明光学ユニット。
【0020】
光学リターデーション構成要素は、少なくとも1つの照明光部分ビームの部分ビーム成分の全ての対毎の進行時間差が、照明光のビーム経路内の照明光部分ビームへの照明光の分割の前の場所と照明視野との間で測定された2つの照明光部分ビームの最大進行時間差よりも長いように構成することができる。光学リターデーション構成要素は、少なくとも1つの照明光部分ビームの部分ビーム成分の全ての対毎の進行時間差が、照明光のビーム経路内の照明光部分ビームへの照明光の分割の前の場所と照明視野との間で測定された2つの異なる照明光部分ビームの間の最小進行時間差よりも短いように構成することができる。照明光学ユニットのこれらの変形は、照明光の照明チャネル部分光パルスの異なる時間混合を可能にし、
当初請求項4に記載のリターデーション構成要素によって加えられる進行時間差に関して異なるものである。特に有利な変形は、特に小さい段差又は特に大きい段差を有し、それに対して平均的な段差は、不利である傾向を有する。段差の長さスケールは、照明光のコヒーレンス長による影響を受ける。この場合に、特に小さい段差は、50μmよりも小さく、特に20μmよりも小さく、特に10μmよりも小さく、特に5μmよりも小さく、特に2μmよりも小さく、特に1μmよりも小さい。特に大きい段差は、250μmよりも大きく、特に1mmよりも大きく、特に5mmよりも大きく、特に20mmよりも大きい。
【0021】
光学リターデーション構成要素は、入射する少なくとも1つの照明光部分ビームを対毎の進行時間差を有する反射部分ビーム成分に偏向する少なくとも1つの照明光部分ビームを複数の部分ビーム成分に分割するための反射階段状ミラーとして具現化することができ、この場合に、これらの成分は、階段状ミラーの異なる段によって予め決定される。そのような反射階段状ミラーは、十分な精度で生成することができる光学リターデーション構成要素である。特に、EUV光の反射の場合であっても高い反射度が得られるように、照明光は、光学リターデーション構成要素上に小さい入射角、すなわち、垂直入射の領域内のもの、例えば、30°よりも小さく、25°よりも小さく、20°よりも小さく、15°よりも小さく、又は10°よりも小さい入射角で入射することができる。原理的には、光学リターデーション構成要素は、かすめ入射の下で、すなわち、60°よりも大きく、65°よりも大きく、70°よりも大きく、75°よりも大きく、又は80°よりも大きい入射角で
動作される反射階段状ミラーとして具現化することもできる。光学リターデーション構成要素は、反射されるEUV波長に対して反射の程度を最適化するための多層コーティングを含むことができる。
【0022】
部分ビーム成分の進行時間差は、階段状ミラーの段差によって予め決定することができる。階段状ミラーの段によって加えられる典型的なリターデーション経路は、数μmの領域内、例えば、1μm、2μm、5μm、10μmの領域内にある。数10μmの領域内、例えば、25μm、50μm、75μmの領域内、100μm、250μm、500μmの領域内、又は他にミリメートル範囲、例えば、1mm、2mm、5mmの領域内の比較的大きい経路差、又は更に長い経路差も可能である。リターデーション経路は、照明光を供給する光源のコヒーレンス長に調整することができる。
【0023】
光学リターデーション構成要素は、第1又は第2のファセットミラーの場所に形成することができる。光学リターデーション構成要素のそのような実施形態は、追加の反射を回避することができる。特に、リターデーション構成要素は、第2のファセットミラーの場所に形成することができる。この場合に、ファセット自体が、光学リターデーション構成要素として具現化される。光学リターデーション構成要素は、一般的に、照明光学ユニットの瞳平面の領域に配置することができる。この場合に、光学リターデーション構成要素によって照明光に加えられるリターデーション進行時間差は、全体の照明視野にわたって作用する。これに代えて、光学リターデーション構成要素は、照明光学ユニットの視野平面の領域に配置することができる。
【0024】
照明チャネルに沿った光源と照明視野の間の光路長は、考慮する照明視野点に系統的に依存する。従って、2つの特定の照明チャネルに着目した場合に、第1の照明視野点に関するこれらの照明チャネルの光路長差は、そこからある距離の場所にある照明視野点に関するものとは一般的に異なる。これが示すことは、この依存性が、望ましくない干渉に対する条件が照明視野上のいずれの場所においても満たされない照明チャネルの幾何学配置を求めることをより困難にすることである。2つの照明チャネルが、照明視野点への異なる光路長の依存性を有する場合に、これらの2つの照明チャネルにわたる光路長の大きさに関して最小の差のみを有する照明視野点においても、照明光の少なくともコヒーレンス長の差を得ることができるためには、多くの場合に、ほとんどの照明視野点における2つの光路長の大きさに関する差が、照明光のコヒーレンス長よりも大きい桁のものである必要がある。そのような大きい経路長差の幾何学的な実現の選択肢には欠点がもたらされ、従って、各照明視野点において照明光の少なくともコヒーレンス長の光路長差を得るために相応に大きい経路長差を提供する必要がない照明光学ユニットの構成が有利である。
【0025】
[当初請求項5]
前記第1のファセットミラーは、視野ファセットミラー(19)として具現化され、前記第2のファセットミラーは、瞳ファセットミラー(20)として具現化され、
前記視野ファセットミラー(19)の下流に配置されて前記照明光(16)の前記部分ビームのうちのそれぞれ1つを反射するための複数の瞳ファセット(28)を含む前記瞳ファセットミラー(20)を含む前記照明視野(14)において前記視野ファセット(25)の結像を重ねるための伝達光学ユニット(21)を含み、
照明光学ユニットは、前記照明光源(2)の像が前記瞳ファセットミラー(20)の前記瞳ファセット(28)の場所に収まるように配置することができ、
前記瞳ファセットミラー(20)は、前記照明視野(5)の視野点の各1つに前記照明光(16)の前記部分ビームを入射させることができる様々な前記照明チャネルが前記光源(2)と該照明視野(5)の該視野点のそれぞれ1つとの間に異なる照明チャネル長をそれぞれ有するような傾斜を用いて配置される、
ことを特徴とする当初請求項1から当初請求項4のいずれか1項に記載の照明光学ユニット。
当初請求項5に従って瞳ファセットミラーを傾斜させることにより、照明視野点への光路長のこの系統的依存性を考慮することが容易になる。1つの照明視野点において上記に指定した望ましくない干渉に対する条件が満たされないと、直ぐにそれは全体の照明視野の大部分においても満たされなくなる。
【0026】
瞳ファセットのいずれかの対とそれぞれ考慮する照明視野点との間の光路が同一の長さを持たないような
当初請求項5に記載の瞳ファセットミラーの傾斜を存在させることができる。照明視野内での照明光の妨害干渉は回避される。照明視野の各視野点に対して確実になることは、これらの視野点が、異なる照明チャネルを通して光源によって照明される場合に、異なる光路長を通して照明されることである。
【0027】
瞳ファセットミラーの主ミラー面上の法線は、視野ファセットミラーの主ミラー面上への照明光部分ビームの入射平面に対して少なくとも2°の傾斜を有するように配置することができる。そのような傾斜角は、妨害干渉を回避するのに適することが見出されている。傾斜角は、3°、4°、5°、7°、又は10°とすることができる。視野ファセットミラーの主ミラー面上への照明光部分ビームの入射平面は、視野ファセットミラーの主ミラー面上、すなわち、視野ファセットミラーのファセットが配置された平面上への照明光の重心光線の入射平面によって定められる。
【0028】
[当初請求項6]
前記第1のファセットミラーは、視野ファセットミラー(19)として具現化され、前記第2のファセットミラーは、瞳ファセットミラー(20)として具現化され、
前記視野ファセットミラー(19)の下流に配置されて前記照明光(16)の前記部分ビームのうちのそれぞれ1つを反射するための複数の瞳ファセット(28)を含む前記瞳ファセットミラー(20)を含む前記照明視野(5)において前記視野ファセット(25)の結像を重ねるための伝達光学ユニット(21)を含み、
照明光学ユニットは、前記照明光源(2)の像が前記瞳ファセットミラー(20)の前記瞳ファセット(28)の場所に収まるように配置することができ、
前記瞳ファセットミラー(20)の主ミラー面(55’)が、前記照明視野(5)の視野点の各1つに前記照明光(16)の前記部分ビームを入射させることができる様々な前記照明チャネルが前記光源(2)と該照明視野(5)の該視野点のそれぞれ1つとの間に異なる照明チャネル長をそれぞれ有するように平面基準面(55)からずれる、
ことを特徴とする当初請求項1から当初請求項5のいずれか1項に記載の照明光学ユニット。
当初請求項6に記載のこれに代えて又はこれに加えて可能な配置変形においても、照明像内での妨害干渉を回避する様々な照明チャネル長の間の経路長差が同じく得られる。この場合に、照明チャネルに沿った光路長の系統的依存性の少なくとも一部は、瞳ファセットミラーの適切な形状によって補償される。
【0029】
瞳ファセットミラーの主ミラー面は、放物状に湾曲したものとすることができる。瞳ファセットミラーの主ミラー面のそのような放物曲面は、生成技術の観点から比較的低い複雑さしか伴わずに実現することができる。
【0030】
[当初請求項7]
前記ファセットミラー(19)上に入射する時の照明ビーム(16)の全体ビーム断面が前記ファセット(25)のうちの1つの反射面の20%よりも大きい照明ビーム(16)を該照明光(16)が前記照明視野(5)を照明するように該ファセットミラー(19)の該ファセット(25)にわたって走査する走査デバイス(36)を含み、
前記走査デバイス(36)は、いずれの与えられた時間においても前記照明視野(5)内のそれぞれ1つの視野点(42)が各場合に前記ファセット(25)のうちの最大で1つのものによって照明されるのみであるように具現化される、
ことを特徴とする当初請求項1から当初請求項6のいずれか1項に記載の照明光学ユニット。
当初請求項7に記載の実施形態は、いずれか1つの時点において、照明視野の各点
に、最大で1つの照明チャネルに沿う照明光しか
当たらず、従って、2つの照明光部分ビームが干渉することができないことを確実にする走査デバイスを使用することにより、妨害干渉に対する条件が決して満たされないことを確実にする。これは、いずれか1つの時点において、走査デバイスによって同じく第1のファセットミラーの僅かな領域しか照明されないことによって達成される。これが示すことは、この実施形態は、一時点において第1のファセットミラー上で照明される領域の全面積
(area)が視野ファセットの面積よりも十分に小さいことを必要とするが、ビーム断面の全面積さえ十分に小さければ、照明領域は、複数の視野ファセットを部分的に覆うことができるということである。
【0031】
当初請求項7に記載の照明ビームのビーム断面は、ファセットミラーに
当たる時に視野ファセットのうちの1つの反射面の5分の1よりも大きい寸法を有し、従って、良くても一桁よりも小さい分
だけ視野ファセットのうちの1つの反射面よりも
小さい。この比は、視野ファセットミラーの全ての視野ファセットに当てはめることができる。照明系は、ファセットミラーに
当たるときの照明ビームの全体ビーム断面が、視野ファセットのうちの1つの反射面の30%よりも大きく、33%よりも大きく、35%よりも大きく、40%よりも大きく、50%よりも大きく、60%よりも大きく、75%よりも大きく、又は80%よりも大きいように具現化することができる。ファセットミラーに
当たるときのビーム断面のこの
桁(order of magnitude)により、与えられた時間に過度に小さい照明視野領域が照明されることが回避される。それによって安定した照明系がもたらされる。
【0032】
ファセットミラーは、照明視野の配置平面に対して光学的に共役な平面に配置された視野ファセットミラーとすることができる。
【0033】
走査デバイスは、ファセットミラー上で各々少なくとも1つの連続走査領域が順次走査され、走査領域の走査領域面積が最大でファセットのうちの1つの面積に対応するように具現化することができる。そのような実施形態において、視野ファセットミラーのファセット自体は、個々に走査することができ、又は最大でファセットのうちの1つの面積に対応する走査領域面積を有する隣接する随伴ファセットの間の連続走査領域を走査することができる。ファセットミラーの順次走査中に、ファセットミラーにわたって走査されるそれぞれの走査領域の境界形状は、正確にファセットミラーの個々のファセットの境界形状とすることができる。これに代えて、境界形状は、ファセットミラーの個々のファセットの境界形状内に書き込むことができる。走査デバイスは、順次走査される個々の走査領域が、次に、走査によって照明されるように具現化することができる。これに代えて、走査デバイスは、走査領域が少なくとも区画的に照明されるか又は他に相応に拡幅された照明光ビームによって同時に完全に照明されるように具現化することができる。少なくとも1つの連続走査領域の順次走査中に、この走査領域は、完全な走査処理の完了後に全体のファセットミラーが照明されるように、走査デバイスを用いてファセットミラーにわたって変位される。この場合に、少なくとも1つの走査領域は、ファセットミラー上で連続して又はファセットミラー上で不連続に変位させることができる。走査領域面積、又は複数の走査領域が同時に走査される場合の走査領域の全面積は、ファセットのうちの1つの面積の少なくとも3分の1の寸法を有することができる。
【0034】
走査領域面積は、少なくとも、第1にファセット上の照明視野の物体点の最大原像変位と第2にこの変位と平行なファセット広がりとの比の分だけファセットのうちの1つの面積よりも小さいとすることができる。そのような照明光学ユニットの場合に確実になることは、照明視野内へのファセットミラーの様々なファセットの結像の差が、これらの差の結果として照明光のサブビームの間の妨害干渉が現れるような効果を持たないことである。特に、投影露光中に物体が照明視野を通して変位した物体変位方向に沿った走査領域面積の広がりは、この方向と平行なファセットの広がりよりも小さいとすることができる。
【0035】
走査領域面積の境界形状は、それぞれのファセットの境界形状に対応することができる。そのような実施形態において、各々ファセットミラーのファセットのうちの最大で1つのものが照明視野の視野点をそれぞれ照明する際に従う条件は、容易に満たすことができる。走査領域面積の境界形状は、走査領域がファセット上の使用反射面よりも若干小さいように、それぞれのファセットの境界形状よりも若干小さいものであるように具現化することができる。それによって照明視野内のそれぞれ1つの視野点が各々ファセットのうちの最大で1つのものだけによって照明される確実性が高まる。
【0036】
[当初請求項8]
前記走査デバイス(36)は、複数のファセット(25)にわたって広がる走査領域(48;67)が前記ファセットミラー(19)上で走査されるように具現化されることを特徴とする当初請求項7に記載の照明光学ユニット。
当初請求項8に記載の代替実施形態は、走査移動を簡素化する。
【0037】
複数のファセットにわたって
広がる走査領域は、連続領域とすることができる。そのような構成は、ファセットミラーを走査するときに不連続領域の間でジャンプする必要がない走査デバイスの連続
動作を可能にする。
【0038】
ファセットミラーのファセットは、列毎に配置することができる。走査領域は、ファセット列を横切って傾斜して
広がるストリップとすることができる。走査領域のそのような構成は、特に適切であることが見出されている。
【0039】
複数の走査領域を同時に走査することができる。そのような実施形態は、個々のファセット上の高すぎる同時負荷を回避する。
【0040】
列毎に隣接する2つのファセットの間の走査領域のオフセットは、走査領域のオフセット方向の広がりよりも少なくとも1つの最大原像変位分だけ大きいとすることができる。そのようなオフセットもまた、像によってもたらされるサブビーム又は部分ビームの妨害干渉の危険性を回避する。
【0041】
[当初請求項9]
前記ファセットミラー(19)上に入射する時の照明ビーム(16)の全体ビーム断面が前記ファセット(25)のうちの1つの反射面の200%よりも大きい照明ビーム(16)を前記照明光(16)が前記照明視野(5)を照明するように該ファセットミラー(19)の該ファセット(25)にわたって走査する走査デバイス(36)を含み、
前記走査デバイス(36)は、いずれの与えられた時間においても前記照明視野(5)内のそれぞれ1つの視野点(42)が、光路長差が少なくとも1つのコヒーレンス長だけそれぞれ異なるファセット(25)によって照明されるのみであるように具現化される、
ことを特徴とする当初請求項1から当初請求項8のいずれか1項に記載の照明光学ユニット。
当初請求項9に記載の実施形態において、上記に既に解説したものの意味の範囲で光学リターデーション構成要素としての役割を同時にもたらすファセットミラーを使用することができる。ファセットミラーは、互いにオフセットして配置された複数のファセット列に再分割することができ、それによって照明チャネルを通して異なるファセット列に案内される照明光部分ビームは、この場合に、十分に大きい経路長差が存在することに起因して妨害干渉を持たない。
【0042】
[当初請求項10]
時間差(Δt)が前記照明光(16)のコヒーレンス持続時間(τκ)よりも短いように、照明チャネル対(ペア)(27i,27j)に沿って案内される照明光が照明視野(5)の少なくとも1つの点において入射するような照明チャネル対(ペア)(27i,27j)の場合に、これらの照明チャネル対(ペア)(27i,27j)の前記照明チャネル(27)のうちの少なくとも1つの断面区域が、該照明視野(5)を照明することに寄与しないことを特徴とする当初請求項1から当初請求項9のいずれか1項に記載の照明光学ユニット。
当初請求項10に記載の照明光学ユニットの実施形態において、物体視野点において妨害干渉に寄与する可能性がある照明チャネルの成分、従って、この照明チャネルにわたって案内される照明光部分ビームの成分が抑制され、従って、これらの成分が照明視野を照明することに寄与しないことにより、干渉が回避される。そのような抑制は、照明光部分ビームをそれぞれの照明チャネルにわたって案内される時に、考慮する照明チャネルの断面区域内で遮蔽
(block)することによってもたらすことができる。この目的に対して、それぞれの照明チャネルを定めるファセットのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの相応に配置された遮蔽領域を有する反射面を含むことができる。干渉を回避するために、複数又は多数のそのような遮蔽領域をそれぞれ1つのファセット上に設けることができる。一例として、それぞれの遮蔽領域は、吸収又は散乱コーティングにより、又は絞りによって実現することができる。遮蔽領域内で照明光に対する高反射コーティングを省くことも単純に可能である。驚くべきことに、比較的多数のファセットが使用される時に現れる多数の可能な照明チャネル対にも関わらず、妨害部分ビーム干渉を回避するために照明チャネルの断面区域のうちの比較的小さい部分しか抑制する必要がないことが見出されている。これらの断面区域を遮蔽する結果として発生する照明光の損失は、10%よりも低く、5%よりも低く、更に3%よりも低くすることができる。照明チャネル対の部分ビームの間の妨害部分ビーム干渉の場合に、この照明チャネル対を構成する一方の照明チャネル又は他方の照明チャネルのいずれの断面区域が抑制されるかには差がないので、低い積分照明光強度を有する方の断面区域を選択することができ、それによって更に光損失が低減される。
【0043】
少なくとも1つのファセットミラーが、複数又は多数の個々のミラー又はマイクロミラーに具現化される場合に、照明光が、対応するマイクロミラーによって弱められるように、すなわち、照明光が、照明視野を照明することに寄与しないように、干渉を回避するために照明チャネルを通しての照明を望ましい断面区域内で抑制する適切な構成要素は、マイクロミラーによって実現することができる。この実現は、特に、少なくとも1つのファセットミラーのMEMS(マイクロ電気機械系)実施形態の場合であれば有利である。
【0044】
[当初請求項11]
当初請求項1から当初請求項10のいずれか1項に記載の照明光学ユニットを含み、かつ
EUV光源(2)を含む、
ことを特徴とする光学系。
当初請求項11に記載の光学系と、照明光学ユニットに加えて、照明視野に配置された物体視野を像視野に結像するための投影光学ユニットが更に設けられた光学系との利点は、本発明による照明光学ユニットを参照して上述したものに対応する。EUV光源は、短いコヒーレンス時間を有し、従って、本発明による照明光学ユニットを小型方式で実現することができる。EUV光源としては、自由電子レーザ(FEL)を使用することができる。望ましくない干渉が存在する場合に、この干渉は、光源が少数のモードのみを含む場合に強く発達する可能性がある。FELの少ないモード数の結果として、この場合に、妨害部分ビーム干渉を回避する利点は特に顕著である。
【0045】
EUV光源は、10よりも少ない横モードを有する自由電子レーザとすることができる。横モード数の上限は、エタンデュから導出することができる。特に、光源のエタンデュは、1×10
-3mm
2よりも小さく、1×10
-4mm
2よりも小さく、1×10
-5mm
2よりも小さく、又は他に1×10
-6mm
2よりも小さいとすることができる。エタンデュの定義及び計算に関しては、EP 1 072 957 A2を参照されたい。照明視野の照明の規則性をもたらすための本発明による対策は、特にそのような光源に適している。特に、スペックルの低減を達成することが可能である。他のタイプのEUV光源を使用することもできる。光学リターデーション構成要素は、個々の光源のコヒーレンス持続時間に依存して具現化することができる。この場合に言えることは、短いコヒーレンス持続時間を有する光源に対しても、長いコヒーレンス持続時間を有する光源に向けて具現化された照明光部分ビームの間で進行時間差を有する照明光学ユニットを使用することができるということである。
【0046】
光源と第1のファセットミラーとの間には、中間フォーカスを配置することができる。上述の光学リターデーション構成要素は、中間フォーカスの場所に形成することができる。光学系の中間フォーカスの場所における光学リターデーション構成要素のそのような配置は、光学リターデーション構成要素による照明視野全域にわたって同じ方式で作用する追加のリターデーション進行時間差の印加を可能にする。これは、光学リターデーション構成要素の他の配置場所にも、これらの配置場所が照明光学ユニットの瞳平面の領域に存在する範囲で適用される。
【0047】
[当初請求項12]
当初請求項11に記載の光学系を含み、かつ
照明視野(5)に配置された物体視野を像視野(11)に結像するための投影光学ユニット(10)を含む、
ことを特徴とする投影露光装置(1)。
[当初請求項13]
投影露光の方法であって、
当初請求項12に記載の投影露光装置(1)を与える段階と、
ウェーハ(13)を与える段階と、
リソグラフィマスク(7)を与える段階と、
前記投影露光装置(1)の投影光学ユニット(10)を用いて前記リソグラフィマスク(7)の少なくとも一部を前記ウェーハ(13)感光層の領域上に投影する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
[当初請求項14]
当初請求項13に記載の方法によって生成された微細構造化又はナノ構造化構成要素。
当初請求項12に記載の投影露光装置、
当初請求項13に記載の生成方法、及び
当初請求項14に記載の構成要素の利点は、本発明による照明光学ユニット及び本発明による光学系を参照して上述したものに対応する。微細構造化及びナノ構造化構成要素は、極めて高い構造分解能によって生成することができる。このようにして、例えば、極めて高い集積密度又は記憶密度を有する半導体構成要素を生成することができる。
【0048】
本発明の例示的実施形態を図面に基づいて以下により詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、マイクロリソグラフィのための投影露光装置1の子午断面図を略示している。投影露光装置1は、光源又は放射線源2を含む。投影露光装置1の照明系3は、物体平面6の物体視野5と一致する照明視野を露光するための照明光学ユニット4を含む。照明視野は、特に物体ホルダ8の変位方向を横断する方向に物体視野5よりも大きいとすることができる。照明視野は、特に物体ホルダ8の変位方向に沿って物体視野5よりも小さいとすることができる。この場合に、物体視野5に配置され、物体ホルダ又はレチクルホルダ8によって保持されるレチクル7の形態にある物体が露光される。レチクル7をリソグラフィマスクとも表している。物体ホルダ8は、物体変位ドライブ9を用いて変位方向に沿って変位させることができる。投影光学ユニット10は、物体視野5を像平面12の像視野11に結像するように機能する。レチクル7上の構造は、像平面12の像視野11の領域に配置されたウェーハ13の感光層上に結像される。ウェーハ13は、ウェーハホルダ14(同じく、ここに例示していない)によって保持される。ウェーハホルダ14もまた、ウェーハ変位ドライブ15を用いて物体ホルダ8と同期して変位方向に沿って変位させることができる。
【0051】
放射線源2は、5nmと30nmの間の範囲の放出使用放射線を有するEUV放射線源である。この場合に、放射線源2は、シンクロトロン又は自由電子レーザ(FEL)に基づく放射線源とすることができる。プラズマ光源、例えば、GDPP(ガス放電生成プラズマ)光源又はLPP(レーザ生成プラズマ)光源を放射線源2として使用することができる。当業者は、例えば、US 6,859,515 B2においてそのような放射線源に関する情報を見出されるであろう。光源2は、パルス方式で
動作し、すなわち、光パルス又は放射線パルスの時間シーケンスを放出する。時間的に隣接する2つの光パルスの間の時間距離Tは、例えば、1から100kHzまでの範囲に収まり、例えば、50kHzにある光源2の繰り返し数に反比例する。光パルスの持続時間は、時間的に隣接する2つの光パルスの間の距離Tよりもかなり短く、すなわち、EUV放射線が放出されない中断期間が、EUV放射線が放出される期間よりもかなり長い。コヒーレンス時間又はコヒーレンス持続時間は、EUV放射線の使用スペクトル帯域幅から明らかになり、この場合に、光パルスの持続時間よりもかなり短い。使用スペクトル帯域幅は、特に、光源2の場所に存在するスペクトル帯域幅よりも小さい。
【0052】
放射線源2から発するEUV放射線16は、コレクター17によってフォーカスされる。対応するコレクターがEP 1 225 481 Aから公知である。EUV放射線16は、コレクター17の後に中間焦点面18を通って伝播し、その後に、視野ファセットミラー19上に
当たる。視野ファセットミラー19は、照明光学ユニット4の第1のファセットミラーである。視野ファセットミラー19は、
図1には示していない複数の視野ファセットを有する。更に、視野ファセットは、同じく図面内には示していない複数の個々のミラーにそれぞれ再分割することができる。視野ファセットミラー19は、物体平面6に対して光学的に共役な照明光学ユニット4の平面に配置される。
【0053】
以下に続く本文では、EUV放射線16を照明光又は結像光とも呼ぶ。
【0054】
EUV放射線16は、視野ファセットミラー19の後に瞳ファセットミラー20によって反射される。瞳ファセットミラー20は、照明光学ユニット4の第2のファセットミラーである。瞳ファセットミラー20は、中間焦点面18及び投影光学ユニットの瞳平面に対して光学的に共役であり、又はこの瞳平面と一致する照明光学ユニット4の瞳平面に配置される。瞳ファセットミラー20は、
図1には示していない複数の瞳ファセットを含む。視野ファセットミラー19の視野ファセット25は、瞳ファセットミラー20の瞳ファセットと、ビーム経路の順序で22、23、及び24で表記しているミラーを含む、伝達光学ユニット21の形態にある後続結像光学アセンブリを用いて物体視野5に結像される。伝達光学ユニット21の最後のミラー24は、かすめ入射ミラーである。照明光16の部分ビームを案内するそれぞれ1つの照明チャネルは、第1のファセット、すなわち、視野ファセットミラー19の視野ファセットのうちの1つにより、更に、関連付けられた第2のファセット、すなわち、瞳ファセットミラー20の瞳ファセットのうちの1つによって予め決定される。
【0055】
位置関係の説明を簡易化するために、
図1は、物体平面6と像平面12の間の投影露光装置1の構成要素の位置関係の説明のための広域座標系として直交xyz座標系をプロットしている。
図1では、x軸は、作図面と垂直に作図面に向けて延びている。
図1では、y軸は、右に向けて物体ホルダ8及びウェーハホルダ14の変位方向と平行に延びている。
図1では、z軸は下向きに、すなわち、物体平面6及び像平面12と垂直に延びている。
【0056】
物体視野5又は像視野11にわたるx寸法を視野高さとも呼ぶ。
【0057】
図2は、投影露光装置1内で照明光学ユニット4の代わりに使用することができる照明光学ユニットの変形26を示している。
図1を参照して上述したものに対応する構成要素を同じ参照記号で表記し、これらに対しては再度詳細に解説することはしない。最初に、下記の説明は、下記でより詳細に説明する光学リターデーション成分の影響がない照明光16の案内に関するものである。
【0058】
図2は、照明光16の部分ビーム16
k(k=1,...6)を案内する6つの照明チャネル27
1、27
2、27
3、27
4、27
5、及び27
6のビーム経路を示している。図示するのは、光源2とレチクル7の間のビーム経路であり、光源2と中間焦点面18の間のビーム経路だけを略示している。光源2と中間焦点面18の間の光路は、照明光16に対してほぼ一定である。視野ファセットミラー15は、照明光16を照明チャネル27
1から27
6に沿って案内される部分ビームに分解する。照明チャネル27
1の照明光部分ビームが反射される視野ファセット25を下記では視野ファセット25
1で表し、更に別の照明チャネル27
2から27
6に対しては、視野ファセット25と瞳ファセット28の両方において、対応する添字付けを行う。一例として、視野ファセット25
3及び瞳ファセット28
3は、照明チャネル27
3に属する。下記では照明光16の部分ビーム16
kもそれに沿って添字付けし、従って、例えば、照明光部分ビーム16
3は、照明チャネル27
3に属する。
【0059】
ビーム経路の経路長の差に基づいて、照明チャネル27
1から27
6にわたって案内される照明光部分ビーム16
kにおいて異なる進行時間が現れる。各照明光部分ビーム16
kは、それ自体で、規則的ではなくスペックルと呼ぶ疑似ランダム強度変化を含む照明視野5の照明を生成する。光源の横モードの数が低下するときに、スペックルコントラストは増大する。全てのモードが同じ強度を有する場合に、相対スペックルコントラストは、モード数の平方根の逆数に等しい。スペックルに関する更に別の情報は、Joseph W.Goodman著「光学系におけるスペックル現象(Speckle Phenomena in Optics)」、Roberts & Company、2010年に見出すことができる。
【0060】
2つの照明チャネル27の間の経路長の差が、照明光のコヒーレンス時間に光速を乗算することによって現れる照明光16のコヒーレンス長よりも小さい場合に、これらに関連付けられる照明光部分ビーム16
kは、互いに干渉する可能性がある。最良の場合に、2つ又はそれよりも多くの照明光部分ビーム16
kによる照明視野5の組合せ照明の残差コントラストは、1つの部分ビームだけによる照明の場合にもたらされることになるものに等しい。特に少ないモードのみを有する光源2の場合に、照明視野5上の照明において系統的な干渉構造がこれに加えて存在することができ、それによって単一の照明光部分ビーム16の場合よりも強いコントラストがもたらされる可能性さえもある。この例は、周期的な完全変調をもたらす小さい角度にある2つの部分ビーム16の重ね合わせによって形成される。
【0061】
2つの照明チャネル27の間の進行時間差が照明光16のコヒーレンス長よりも大きい場合に、2つの照明チャネルの2つの独立したスペックルパターンが重なり、照明視野5の照明の規則性の改善がもたらされる。従って、2つの照明チャネル27の間の進行時間差が、照明光16のコヒーレンス長よりも大きい場合に、照明視野5内での重ね合わせは有利な挙動をもたらし、それに対してコヒーレンス長よりも小さい進行時間差は改善をもたらさないか又は規則性の不都合な修正さえももたらす。
【0062】
従って、照明チャネル27
1から27
6に沿った照明光部分ビーム16の進行時間にわたる差は、
図2に示す有利な実施形態における手法で、照明チャネル27
k、27
lから構成される全ての対に沿った進行時間が各々照明光のコヒーレンス時間よりも大きく異なるように選択される。これが意味することは、照明光16の光源2と照明視野5の間で測定した最短経路長を有する照明チャネル27と最長経路長を有する照明チャネルとの間の最小進行時間差が、照明チャネル数と照明光のコヒーレンス時間との積に少なくとも等しいということである。照明チャネル27
1から26
7に沿った進行時間差は、照明視野5の入射場所に依存し、各入射場所において上述の条件が成り立たなければならないので、最短経路長を有する照明チャネルと最長経路長を有する照明チャネルとの間の最小進行時間差は、照明チャネル数と照明光16のコヒーレンス時間との積よりも視野の少なくとも一部の場所において、特に視野の殆どの場所において実質的に大きい可能性がある。
【0063】
図3は、照明光学ユニット4又は照明光学ユニット26のこの構成の効果を明らかにしている。照明チャネル27
1から27
6に沿って案内されて光源2を同時に射出した照明光成分16
1から16
6のレチクル7上への入射時間は、時間軸tに沿って示している。従って、図示の時間軸t上での絶対時間の指定は意味を持たず、時間差のみが有意である。プロットした棒グラフの幅は、照明光16のコヒーレンス時間又はコヒーレンス持続時間τ
κを表している。照明チャネル部分光パルス16
kの全体パルス持続時間は、
図3にプロットした棒グラフよりも有意に長い可能性がある。照明チャネル部分光パルス16
kのこれらの全体パルス持続時間は、以下に続く干渉の考察において役割を果たさない。
【0064】
照明光学ユニット4及び26は、部分光パルス16
kのコヒーレンス持続時間棒グラフが重なり合わないように構成される。
【0065】
従って、各使用照明チャネル27
kが規則性の改善をもたらすので、照明視野の照明の規則性は、照明光学ユニットのそのような実施形態によって最適化される。
【0066】
上述の例示的実施形態による照明光学ユニットの構成は、コヒーレンス長よりも大きい進行時間差が照明チャネル27
k、27
lから構成される全ての対において得られることを確実にすることができる。それによって視野照明の規則性の対応する改善がもたらされる。上述の実施形態のこれらの利点は、特に、10タイプよりも少ない横モードしか含まず、相応に大きい横コヒーレンス長を有する照明光源の場合に重要になる。横コヒーレンス長は、照明光16のコヒーレンス時間に光速を乗算することによって現れるコヒーレンス長と区別しなければならない。更に、上述の実施形態の利点は、広帯域光源の場合に特に重要である。最後に、上述の実施形態の利点は、数百本よりも少ない照明チャネルのみを備え、特に、百本よりも少ない照明チャネルのみを備える照明光学ユニットにおいて重要になる。
【0067】
上述の実施形態によって回避することができるものは、照明光学ユニット内で最も短い進行時間又は経路長を有する照明チャネルと照明光学ユニット内で最も長い経路長を有する照明チャネルとの間の過度に短い進行時間差であり、特に妨害スペックルの生成を排除することができないようなものである。上述の実施形態によって回避される最も短い進行時間又は経路長を有する照明チャネルと最も長い経路長を有する照明チャネルとの間のそのような過度に短い進行時間差は、照明チャネル数とコヒーレンス長との積として現れる。
【0068】
図2は、光学リターデーション構成要素29を用いた照明光学ユニット26の構成を示している。光学リターデーション構成要素29は、入射照明光16を物体視野5内で空間的に重ね合わされる異なるリターデーションを有する複数の部分に分割する。照明光チャネル27
1から27
6に沿った照明光部分ビームの進行時間にわたる進行時間差は、この場合に、照明チャネル27
1から27
6の異なるビーム経路から現れる進行時間差と、照明光部分ビームが光学リターデーション構成要素29の効果に起因して受ける追加のリターデーション進行時間差とで構成される。従って、照明チャネル27
kに沿う照明光部分ビーム16
kは、各々が独自の進行時間を有する複数の成分16
klから構成され、ここで添字kは、照明チャネルを表し、添字lは、光学リターデーション構成要素29によるリターデーションを表している。
【0069】
図2に記載の実施形態において、光学リターデーション構成要素29は、中間焦点面18内、すなわち、光源2と視野ファセットミラー19の間の中間フォーカスの場所に配置された反射階段状ミラーとして具現化される。
図2に記載の照明光学ユニット26では、この中間フォーカスは、
図2には示していないコレクターによって光源2の背後の照明光16のビーム経路に生成される。
【0070】
図4は、光学リターデーション構成要素29をより詳細に示している。光学リターデーション構成要素29の反射面30は、
図4に記載の実施形態では合計で4つのミラー段31
1、31
2、31
3、及び31
4を含む。隣接するミラー段31は、反射面30上の法線に沿って互いからΔl/2の距離の場所にある。光学リターデーション構成要素29上への照明光16の入射角αは小さいので、隣接ミラー段31
1、31
2、31
3、及び31
4で反射される照明光16の成分の間にΔlという光路長に対応するリターデーション進行時間差が良好な近似で適用される。4つのミラー段31
1、31
2、31
3、及び31
4にわたって可能な放射線経路と6つの照明チャネル27
1、27
2、27
3、27
4、27
5、及び27
6との組合せは、24本の照明光部分ビーム16
11から16
64をもたらす。この場合に、添字16
klは、
図2に関して上述したものである。Δl’は、経路長差Δlと類似の時間、すなわち、進行時間差である。
【0071】
図5は、
図3と類似の図に、光学リターデーション構成要素29の効果を明らかにしている。放射線源を与えられた時間にそれぞれ射出した照明光成分16
klのレチクル7上への入射時間を時間軸tに沿ってプロットしている。第1に照明チャネル27の異なる経路と、第2にリターデーション構成要素29に起因する追加のリターデーション進行時間差との組合せ効果の結果として、示した6つの照明チャネル部分光パルス16
1から16
6において、レチクル7上に時間的に隣接して入射する2つの照明チャネル部分光パルス16
klの入射時間にわたって、光源2からの照明光16のコヒーレンス持続時間よりも常に大きい期間Δtをもたらす全体進行時間差が現れる。これらの入射時間は、
図5に示す棒グラフの左手縁部に対応し、一方、棒グラフの幅は、
図3と同じく照明光16のコヒーレンス持続時間に等しい。従って、Δt>τ
κが成り立ち、ここでτ
κは、光源2のコヒーレンス持続時間である。自由電子レーザ(FEL)を対応するスペクトル帯域幅を有する光源2とする場合に、コヒーレンス持続時間τ
κに対応するコヒーレンス長は、例えば、1.35μmである。このコヒーレンス長は、13.5nmの中心波長及び100の帯域幅λ/Δλに対応する。
【0072】
従って、光学リターデーション構成要素29によって比較的大きいリターデーションが印加される。光学リターデーション構成要素29によるリターデーションは、2つの隣接ミラー段31
1から31
4の間のリターデーション段
の桁(order of magnitude)のものである。この段寸法は、光学リターデーション構成要素の場合は少なくともΔl/2であり、この場合Δl>τ
κ’が成り立つ。ここでΔlは、最短経路長を有する照明チャネル27と最長経路長を有する照明チャネルとの間の最大経路長差である。τ
κ’は、コヒーレンス持続時間τ
κと類似の経路長である。
【0073】
図5に記載の照明の場合に、極端な時間分解能と光源2からの極端に短い光パルスとを仮定して、レチクルは、照明光チャネル27
1、27
2、27
5、27
4、27
6、及び27
3の方向からの照明成分16を立て続けに「見る」。異なる方向から浴びせられるこの光は、立て続けに何回か、正確に言えば、光学リターデーション構成要素29の使用段毎に1回ずつ繰り返す。
【0074】
図3と同様に、
図6は、与えられた時間に光源2を射出し、照明チャネル27
1から27
6に沿ってレチクル7上に案内される照明光成分16
1から16
6の入射時間を時間軸tに沿って示している。
図3と
図6の間の主な
違いは、
図6が、照明光チャネル27
1から27
6の間の経路長差が
図3に記載の実施形態におけるものよりも大きい照明光学ユニット4又は26に基づいている点である。
【0075】
図7は、光学リターデーション構成要素の更に別の実施形態33を示している。下記では、光学リターデーション構成要素29とは異なる部分を説明する。光学リターデーション構成要素29との主な
違いは、2つの隣接ミラー段31
1から31
4の間のリターデーション段の
桁(order of magnitude)にある。光学リターデーション構成要素33では、この段寸法はδl/2であり、ここでτ
κ’<δl<ΔL/Mが成り立つ。この場合に、ΔLは、2つの照明光チャネル27
1から27
6に沿った最小経路長差であり、Mは、リターデーション構成要素33における段数である。
【0076】
すなわち、光学リターデーション構成要素33は、比較的小さいリターデーションを印加し、従って、放射線源2を与えられた時間に射出し、特定の照明光チャネル27
iを通してリターデーション構成要素33の異なる段にわたって進んだ照明光16の全ての成分16
ilは、異なる照明チャネル27
jを通した照明光16の成分16
jlがレチクル7に達する前にレチクル7に到達している。これを
図5と類似の表現で
図8に示している。
【0077】
図8に記載の入射の時間シーケンスでは、極端な時間分解能と光源2からの極端に短い光パルスとを仮定して、レチクル7は、最初に第1の照明方向からの照明チャネル部分光パルスの時間的に互いに対応する成分のシーケンスを「見て」、次いで、第2の照明方向からの照明チャネル部分光パルスの時間的に互いに対応する成分のシーケンスを見て、以降同じく続く。
【0078】
この場合に、照明チャネル部分光パルス16
klの時間的に互いに対応する成分のレチクル7上への入射時間にわたる最小時間間隔Δtも、光源2のコヒーレンス持続時間τ
κよりも大きい。δl’は、経路長差δlと類似の時間、すなわち、進行時間差である。この場合に、δl’=Δtが成り立つ。
【0079】
光学リターデーション構成要素33は、瞳ファセットミラー22の瞳ファセットの場所に配置することができる。それによって追加の反射及びそれに関する光損失が回避される。小さい段差の結果として、大きい段差が存在する場合よりも、例えばファセットミラーのような他の光学構成要素へのより容易な統合が可能である。
【0080】
光学リターデーション構成要素29は、中間フォーカスの場所に配置することができる。大きい段差は生成することが若干複雑であり、中間フォーカスの場所における配置の場合に、単一のそのような要素しか必要とされない。
【0081】
投影露光装置1を用いた投影露光の場合に、微細構造化又はナノ構造化構成要素、特に半導体構成要素、例えば、マイクロチップのリソグラフィ生成に向けて、物体視野5内のレチクル7の少なくとも一部は、像視野11内のウェーハ13上の感光層の領域上に結像される。この場合に、走査
動作中にレチクル7とウェーハ13は、時間的に同期してy方向に連続的に変位される。
【0082】
以下に続く本文では、マイクロリソグラフィ投影露光装置の更に別の実施形態を説明する。上述した構成要素及び機能は、同じ参照記号で表記し、下記では、離反する構成要素又は機能の理解に必要な場合にしか記載しない。
【0083】
図9に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置1は、微細構造又はナノ構造を有する電子半導体構成要素を生成するように機能する。光源又は放射線源2は、例えば、5nmと30nmの間の波長領域のEUV放射線を放出する。
図9に記載の実施形態において、光源2は、自由電子レーザ(FEL)として具現化される。この場合に、自由電子レーザ(FEL)は、非常に高い輝度を有するコヒーレント放射線を生成するシンクロトロン放射線源である。そのようなFELが記載されている先行公報は、WO 2009/121 438 A1に指定されている。例えば、
図9に記載の実施形態に対して使用することができる光源2は、Uwe Schindler著「電気的に切換可能なヘリシティーを有する超電導アンジュレータ(Ein supraleitender Undulator mit elektrisch umschaltbarer Helizitat)[電気的に切換可能なヘリシティーを有する超電導アンジュレータ(A Superconducting Undulator having Electrically Switchable Helicity)]」、Research Center Karlsruhe in the Helmholtz Association、Scientific Reports、FZKA 6997、2004年8月、及びDE 103 58 225 B3に記載されている。
【0084】
EUV光源2は、電子ビーム2bを生成するための電子ビーム供給デバイス2aと、EUV生成デバイス2cとを有する。EUV生成デバイス2cには、電子ビーム供給デバイス2aを用いて電子ビーム2bが供給される。EUV生成デバイス2cは、アンジュレータとして具現化される。
【0085】
光源2は、2.5kWの平均電力を有する。光源2のパルス周波数は、30MHzである。この場合に、各個々の放射線パルスは、83μJのエネルギを有する。100fsの放射線パルス長の場合に、このエネルギは、833MWの放射線パルス電力に対応する。
【0086】
投影露光装置1内での照明及び結像の目的で、出力ビームとも呼ぶ使用放射線ビームが照明光又は結像光16として使用される。使用放射線ビーム16は、投影露光装置1の照明光学ユニット4に整合される開口角35の範囲で、以下に更に説明する走査デバイス36を用いて照射される。光源2から発して、使用放射線ビーム16は、5mradよりも小さい発散
(divergence)を有する。走査デバイス36は、照明光学ユニット4の中間視野平面18に配置される。走査デバイス36の後に、使用放射線ビーム16は、最初に視野ファセットミラー19上に入射する。走査デバイス36に関する詳細に関しては、更に下記で
図10及び
図11に基づいてより詳細に説明する。
【0087】
特に、使用放射線ビーム16は、2mradよりも小さく、好ましくは、1mradよりも小さい発散のみを有する。視野ファセットミラー19上での使用放射線ビームのスポットサイズは約4mmである。
【0088】
図10は、視野ファセットミラー19の視野ファセット25から構成されるファセット配置である視野ファセットアレイを例示的に示している。視野ファセットミラー19は、投影露光装置1の照明系のファセットミラーに対応する。実際に存在する視野ファセット25のうちの一部のみを3本の列と15本の行とで例示的に示している。視野ファセットミラー19の視野ファセットアレイは、合計で6本の列と75本の行とを有する。視野ファセット25は矩形形状を有する。他の形状、例えば、
図12から
図17に関して以下に示すもののような弓形形状、又はリング形又は部分リング形の幾何学形状の視野ファセット25も可能である。従って、1つの可能な変形において、視野ファセットミラー19は、全体として450個の
視野ファセット25を有する。各視野ファセット25は、
図10の水平方向に50mmの広がりを有し、
図10の垂直方向に4mmの広がりを有する。それに応じて、全体視野ファセットアレイは、300mm×300mmの広がりを有する。
図10では、視野ファセット25を正確な縮尺に示していない。
【0089】
視野ファセットミラー19上での反射の後に、個々の視野ファセット25に割り当てられた光線ペンシル又は照明光部分ビームに分割された使用放射線ビーム16は、瞳ファセットミラー20上に入射する。
図9には1つしか示していない瞳ファセットミラー20の瞳ファセット28は円形である。視野ファセット25のうちの1つから反射された使用放射線ビーム16の各光線ペンシルは、これらの瞳ファセット28のうちの1つに割り当てられ、従って、視野ファセット25のうちの1つと瞳ファセット28のうちの1つとを有するそれぞれ1つの
当てられた(impinged)ファセット対は、それに関連付けられた使用放射線ビーム16の光線ペンシルに対する照明チャネル又はビーム案内チャネル27を予め決定する。ファセットミラー25への瞳ファセット28のチャネル別割り当ては、投影露光装置1による望ましい照明に依存してもたらされる。従って、出力ビーム16は、個々の照明角度を予め決定するために、視野ファセット25のうちのそれぞれ1つと瞳ファセット28のうちのそれぞれ1つとから構成される対にわたって順次照明チャネルに沿って案内される。また、複数の視野ファセット25、従って、複数の照明チャネル27を同時に照明することも可能である。いずれかの与えられた時間に、照明光16は、正確に1つの対を通して、又は他にそれぞれ1つの視野ファセット25とそれぞれ1つの瞳ファセット28とから構成される複数の対であるが、一般的には少数の対を通して案内することができる。視野ファセット25の各々は、それぞれ、所定の瞳ファセット28を作動させるために個々に傾斜される。
【0090】
視野ファセット25は、瞳ファセットミラー20と、3つのEUVミラー22、23、24から構成されるその後の伝達光学ユニット21とにより、投影露光装置1の投影光学ユニット10のレチクル平面又は物体平面6内の照明視野又は物体視野5内に結像される。EUVミラー24は、かすめ入射ミラーとして具現化される。
【0091】
個々のファセット対25、28の照明チャネルによって所定の個々の照明角度のシーケンスから、走査デバイス36を用いた視野ファセットミラー19のファセット25の走査照明によってもたらされる全ての照明チャネルの走査積分により、照明光学ユニット4による物体視野5の照明の照明角度分布が現れる。
【0092】
照明光学ユニット4の実施形態(本明細書には示していない)、特に投影光学ユニット10の適切な位置の入射瞳の場合に、ミラー22、23、及び24を割愛することができ、使用放射線ビーム16に対する投影露光装置の対応する伝達率の増大がもたらされる。
【0093】
視野ファセットミラー19の各完全な走査において、49.2Jの全照射量が全体の物体視野5に到着する。像視野11内の全照射量を得るためには、この全照射量に、最初に照明光学ユニット4、次いで、投影光学ユニット10の全伝達率を更に乗算しなければならない。これらの例示的な仕様は、ウェーハ13上のある点が像視野11を通過するのに必要とする期間中に全体視野ファセットミラー19の完全な走査が実施されることを仮定している。原理的に、視野ファセットミラー19にわたる照明光16の高速走査が可能である。走査露光の場合にウェーハ13上の点が像視野11を通過するのに必要とする期間は、照明光16によって全体視野ファセットミラー19を走査するのに必要とされる期間の整数倍数とすることができる。
【0094】
使用放射線ビーム16を反射するレチクル7は、物体視野5の領域内の物体平面6に配置される。レチクル7は、レチクル変位ドライブ9を用いて作動方式で変位させることができるレチクルホルダ8によって支持される。
【0095】
投影光学ユニット10は、物体視野5を像平面12の像視野11に結像する。投影露光中には、感光層を担持するウェーハ13は、この像平面12に配置され、感光層は、投影露光中に投影露光装置1によって露光される。ウェーハ13は、この場合に、ウェーハ変位ドライブ15を用いて制御された態様で変位させることができるウェーハホルダ14によって支持される。
【0096】
位置関係の表現を簡易化するために、下記ではxyz座標系を使用する。x軸は、
図9の作図面と垂直に延び、この作図面に向く。
図9では、y軸は右に延びている。
図9では、z軸は下向きに延びている。
【0097】
投影露光中には、レチクル変位ドライブ9及びウェーハ変位ドライブ15の適切な作動により、レチクル7とウェーハ13の両方が、
図9のy方向に同期方式で走査される。ウェーハは、投影露光中にy方向に一般的に600mm/sの走査速度で走査される。2つの変位ドライブ9、15の同期走査は、走査デバイス36の走査
動作とは独立して実施することができる。
【0098】
視野ファセット25の長辺は、走査方向yに対して垂直である。視野ファセット25のx/yアスペクト比は、同じく矩形形態又は弓形形態に具現化することができるスリット形の物体視野5のものに対応する。
【0099】
図10及び
図11は、使用放射線ビーム16に対する走査デバイス36の実施形態をより詳細に示している。位置関係の表現を簡易化するために、
図10の走査デバイスではx’y’座標系を使用する。x軸と平行なx’軸は、
図10の作図面に向けて延びている。yz平面に位置するy’軸は、
図10の右上に向けて傾斜して延びている。
【0100】
視野ファセットミラー19と関連して位置関係を表すために、それに応じてx
FFy
FF座標系を使用する。x
FF軸は、x軸と平行に、すなわち、矩形視野ファセット25の長辺の方向に延びている。y
FF方向は、それと垂直に矩形視野ファセット25の短辺の方向に延びている。視野ファセット25は、x
FF方向にX
FFという広がりを有する。視野ファセット25は、y
FF方向にY
FFという広がりを有する。X
FF/Y
FFは、視野ファセット25のx/yアスペクト比である。
【0101】
図10に記載の実施形態において、走査デバイス36は、使用放射線ビーム16をかすめ方式で反射する走査ミラーであり、この走査ミラーは、y’軸と一致する線走査軸37の回りと、x’軸と平行な線
フィード(feed)軸38の回りとに傾斜させることができる。両方の軸37、38は、走査デバイス36の反射ミラー面39内に位置する。
【0102】
図11では、視野ファセットミラー19は、各々が4つの視野ファセット25を有する4本の水平行を有する4×4アレイとして略示されている。以下の周波数及び時間のデータは、
図10に関して上述した6×75アレイを有する視野ファセットミラー19の照明に関するものである。説明する実施形態において、x
FF方向に沿って視野ファセット線を走査するための線走査軸37の回りの傾斜は、7.5kHzの線周波数で発生する。この場合に、ミラー面39は、±4.5°だけ傾斜され、使用放射線ビーム16に対する±9°の偏向角がもたらされる。それに応じて、視野ファセットミラー19のそれぞれ1つの線(y
FF=一定)上での使用放射線ビーム16の滞留時間は133.3μsである。y
FF方向の線
フィードは、75本の線が正しい線距離で走査されるような線
フィード軸38の回りの同期傾斜によってもたらされ、線
フィード軸38の回りの傾斜は、更に、最後の走査された視野ファセット25zから最初の視野ファセット25aへの復帰を確実にする。従って、ミラー面39は、線
フィード軸38の回りに100Hzの周波数で更に傾斜される。個々の視野ファセット25毎の滞留時間は22.2μsである。すなわち、視野ファセット25のうちの1つの上での滞留時間にわたって660個のEUV放射線パルスが視野ファセット25上に入射する。
【0103】
視野ファセットミラー19を走査するときには、視野ファセットミラー19上の照明をy方向に連続的に移動することができる。そのような走査移動は、機械的に比較的単純で耐久性のある構成要素を用いてもたらすことができる。
【0104】
上述の7.5kHzの線周波数よりも高い線周波数、例えば、10kHz、15kHz、20kHz、又は他に一層高い線周波数も可能である。
【0105】
ミラー面39と視野ファセットミラー19の間の距離は、約1mである。
【0106】
線走査軸37の回りの傾斜の代わりに、線走査軸37の回りに回転する多角形スキャナ40を用いて線走査を生成することができる。この生成を視野ファセットミラー19の平面図を示す
図11に略示している。x
FF軸は、
図11の右に延び、
図11では、y
FF軸は、作図面と垂直に閲覧者に向けて延びている。
【0107】
線走査では、多角形スキャナは、合計で6つの多角形ファセットを有する多角形ミラー41を有し、すなわち、回転軸37の回りの外周方向の正六角形として具現化される。走査デバイス36が多角形ミラー41として具現化される場合に、上述したように線フィード軸38の回りに傾斜させることができる傾斜ミラーが、走査デバイス36の上流又は下流に配置される。これに加えて又はこれに代えて、光源2からの照明放射線は、
図11には示していない光学ユニットによってy方向に拡幅することができる。この場合に、指定したビーム直径は、x広がりだけに関する。
【0108】
多角形ミラー41の合計で6つのミラー面39のうちの1つの上に入射する時に、使用放射線ビーム16は、約5mmの直径を有する。
【0109】
光源2と多角形ミラー41の間の距離は、約1mである。
【0110】
視野ファセットミラー19上に入射する時に、すなわち、多角形ミラー41上での反射の後に、使用放射線ビーム16は、約10mmの直径を有する。
【0111】
像視野11は、走査方向yと平行に2mmのスリット幅を有し、走査方向と垂直に、すなわち、x方向に26mmのスリット幅を有する。ウェーハ13上で感光層が反応することを確実にする30mJ/cm
2の仮定照射量、レチクル7の600mm/sの走査速度、及び26mmの像視野幅の場合に、出力ビーム16は、ウェーハ13上に5Wの電力を伴って到達しなければならない。
【0112】
走査デバイス36のそれぞれの実施形態は、各場合に、視野ファセットミラー19上で最大で視野ファセット25の面積に一致する走査領域面積を有する連続走査領域が順次走査されるようなものである。これを
図12及びそれ以降に基づいて以下により詳細に説明する。上述した図を参照してそれぞれ上述のものに対応する構成要素及び機能を同じ参照記号で表記し、これらに対しては再度詳細に解説することはしない。
【0113】
図12は、その左手側に弓形視野ファセット25を有する視野ファセットミラー19の変形の上面図を略示している。視野ファセット25の3つの列及び合計で20個の視野ファセット25を示している。当然ながら、
図12に記載の視野ファセットミラー19内の視野ファセット25の数は、上述したように現実では非常に大きい。
【0114】
図12は、その右手側に視野ファセットミラー19の視野ファセット25が互いに重なる方式で結像される視野ファセット25を示している。
【0115】
図12に記載の照明視野5内では、1つの視野点42を強調表示している。
図12では、伝達光学ユニット21によって正確にこの視野点42上に結像されるファセット点43(視野点42の原像)も強調表示されている。視野点42上でのファセット点43の像の空間関係の結果として、ファセット点43は、視野ファセット25のそれぞれの輪郭内で全てが正確に同じ相対場所に位置するわけではなく、x
FF方向とy
FF方向の両方に互いに対して僅かに変位する可能性がある。
図12に記載の視野ファセットミラー19の左手の列の2つの最上部の視野ファセット25において変位Δx
FFを例示的に示すこの変位は、視野ファセット25のx
FF方向及びy
FF方向の寸法と比較して小さい。変位Δx
FFと同様に、y
FF方向に沿った変位
Δy
FFが存在する可能性もある。
図12には、これを右手の列内の2つの最上部の視野ファセット25のファセット点43に基づいて示している。y
FF方向には、これらのファセット点43は、互いからY
FFプラスΔy
FFの距離を有し、すなわち、視野ファセット25のy
FF方向の広がりY
FFよりも量Δy
FFだけ遠く互いから分離している。視野点42の選択、及びそれにそれぞれ関連付けられた特定の視野ファセット25のファセット点43に基づいて、視野ファセット25の各々においてΔy
FFの特定の値がもたらされる。視野点42と視野ファセット25のファセット点43との全ての可能な組合せを考えると、Δy
FFが取ることができる最大値Δy
FF,maxが現れる。この寸法Δy
FF,maxをファセットミラー25上での視野点42の最大原像変位
(maximum original image displacement)とも呼ぶ。
【0116】
図12と類似の図において、
図13は、次に、視野ファセットミラー19と照明視野5を示している。視野点42に対して、伝達光学ユニット21によって視野点42上に結像されるファセット点43を視野ファセット25のうちの1つ、すなわち、視野ファセットミラー19の中心列内の下から3番目の視野ファセット25に指定している。
【0117】
他の視野ファセット25に対しては、
図13は、各々、各視野ファセット25の反射面上で各個々の視野ファセット25のx
FF座標及びy
FF座標を基準として正確に同じ場所に位置するファセット領域44を指定している。
【0118】
伝達光学ユニット21を用いて結像を行う場合の上述の幾何学的偏差、更にそこからもたらされるこの像の僅かに異なる結像スケールに起因して、これらのファセット領域44のファセット領域像45は同一ではないが、照明視野5上で互いに重なり合う。
【0119】
図13の右手側の照明視野5上に、伝達光学ユニット21によって照明視野5上に生成されるファセット領域44のファセット領域像45を示している。視野点42は、全てのファセット領域像45内に収まる。与えられた時間にファセット領域44が照明されないように走査デバイス36が作動される場合に、この時間には、他のファセット25による視野点42の照明の結果として、妨害干渉をもたらすことなく視野点42をファセット点43によって照明することができる。
【0120】
次いで、
図13の右手側の視野点42は、ファセット25のうちの1つ、すなわち、
図13の左手側の視野ファセットミラー19の中心列内の下から3番目のファセット25だけによって照明される。
【0121】
図14は、同じく視野ファセットミラー19の上面図を示している。
図14は、視野ファセット25のうちの1つの反射面よりも小さい走査領域面積を有する、視野ファセットミラー19上の連続走査領域46が順次走査される走査デバイス36の作動の変形を示している。
図14に記載の作動変形では、走査領域46は、視野ファセット25と同じく弓形である。走査領域46は、x
FF方向に視野ファセット25と同じ広がりを有する。y
FF方向には、走査領域46の広がりは、視野ファセット25の広がりよりも若干小さい。
図14には比較目的で、視野ファセット25のy
FF広がりを2つの破線(dashed)境界線47によって示している。走査領域46の境界形状は、視野ファセット25の境界形状に対応する。
【0122】
走査領域46の走査領域面積Sは、視野ファセット25のうちの1つの面積F=X
FF×Y
FFよりも、少なくとも、第1に視野ファセットミラー19上での視野点42、すなわち、照明視野5の物体点の最大原像変位Δy
FF,maxの第2にそれと平行なファセット広がりY
FFに対する比の分だけ小さい。従って、次式が成り立つ。
S=F×(1−(Δy
FF,max/Y
FF))
【0123】
図14に記載の変形では、走査デバイス36は、視野ファセットミラー19上で連続走査領域46が常時走査されるように作動され、この場合に、この連続走査領域46は、視野ファセットミラー19にわたってy
FF方向に列毎に走査デバイス36の作動の経時変化に従って変位している。
【0124】
従って、走査デバイス36を作動させる時に2つの走査段階が重ね合わせられる。第1に、走査領域46に対応する区域が常時走査され、第2に、この走査領域が、視野ファセットミラー19の視野ファセット25にわたって列毎に走査される。視野ファセットミラー19の列のうちの1つの端部において、走査は隣接列に続けられる。
【0125】
選択される走査領域46のサイズにより、照明視野5上の視野点は、2つの異なる視野ファセット25によって同時に照明されることはない。従って、照明視野点上での照明光の妨害干渉が排除される。
【0126】
走査領域46がファセットミラー19の上を移動する間に、時折、
図14に記載の
スナップショットに示すように、2つの隣接視野ファセット25
に照明光16
が同時
に当たる。しかし、照明視野5の異なる領域
に照明光16
が当たることをもたらすこれらの2つの隣接視野ファセット25の部分
にしか
当たらないので、これにも関わらず、照明視野5内には照明光干渉が存在しない。
【0127】
図15は、全体視野ファセットミラー19の順次照明のための走査デバイス36の作動の更に別の変形を示している。他の図を参照して上述したものに対応する構成要素及び機能を同じ参照記号で表記し、これらに対しては再度詳細に解説することはしない。
【0128】
図15に記載の実施形態において、走査領域46は矩形である。走査領域46の面積は、視野ファセット25のうちの1つの面積よりも小さい。
図15に記載の走査領域46のy
FF広がりは、
図14に関して上述したように、この場合にも視野ファセット25のy
FF広がりよりも若干小さい。従って、走査領域46の境界形状は、
図15に記載の実施形態における視野ファセット25の境界形状に対応しない。
【0129】
走査領域46は、必ずしも視野ファセット25のうちの1つに書き込まれない可能性がある。
【0130】
照明視野5内のそれぞれ1つの視野点が、各場合に視野ファセットミラー19のファセット25のうちの最大で1つによる以外は照明されないようにする走査領域構成の2つの更に別の例を
図16及び
図17に基づいて説明する。他の図を参照して上述したものに対応する構成要素及び機能を同じ参照記号で表記し、これらに対しては再度詳細に解説することはしない。
【0131】
図16及び
図17に記載の実施形態において、視野ファセットミラー19を照明するための走査デバイス36は、走査領域48が複数のファセット25にわたって広がるように具現化される。
【0132】
図16に記載の変形では、走査領域48は、3つのファセット列にわたって
広がる走査範囲ストリップの形態で連続的に具現化される。
図16に記載の実施形態において、この走査領域ストリップは、3つ全てのファセット列にわたって傾斜して延びている。この傾斜したプロファイルの勾配は、照明される隣接ファセット列の間のy
FFオフセットが走査領域48のy
FF広がりよりも大きいような大きさでなければならない。このオフセットを
図16に破線(dashed line)49に示し、走査領域48のy
FF広がりを
図16に更に別の破線50に示している。オフセット49と走査領域48のy
FF広がり50との間のy
FF方向の差Δyは、
図12に関して上述した最大原像変位Δy
FF,maxよりも大きい。同時に、
図16に記載の走査領域48のプロファイルは、走査領域48の全体y
FF広がりAが、最大で個々の視野ファセット25のy
FF広がりY
FFと同程度の大きさであるようなものでなければならない。この場合に、y
FF広がりAとY
FFの間の差は、少なくとも最大原像変位Δy
FF,maxと同程度の大きさで
ある。これらの境界条件を遵守することによって確実にされることは、
図16に記載の走査領域48をもたらす作動の場合であっても、照明視野5内のそれぞれ1つの視野点が、
各場合に視野ファセット25のうちの最大で1つによ
り照明され
るのみであることである。
【0133】
視野ファセットミラー19を照明するときには、走査領域48は、視野ファセット25の各々が1つの走査間隔の範囲で照明されるように視野ファセットミラー19の上をy
FF方向に走査される。
【0134】
図17に記載の作動変形では、各々のx
FF広がりが1つの視野ファセット列幅にそれぞれ対応する複数の走査領域48a、48b、48cは、視野ファセットミラー19の様々な列にわたってy方向に走査される。走査領域48a、48b、及び48cは、y
FF方向に0よりも大きい互いからのy
FFオフセットをそれぞれ有する。走査領域48aと48bと48cの間のyオフセットは、それぞれの走査領域48aから48cのy広がりに最大原像変位Δy
FF,maxを加えたものよりも大きいとすることができる。ここでもまた、
図17に記載の部分48aから48cによって形成される走査領域48の全体広がりAは、最大で個々の視野ファセット25のy
FF広がりである。この場合に、ここでもまた、全体広がりAと個々の視野ファセット25のy
FF広がりとの間の
違いは、最大原像変位Δy
FF,maxの
桁(order of magnitude)にあるとすることができる。
【0135】
2つの列毎に隣接する視野ファセット25の間の走査領域48のオフセットは、少なくとも、
図12に関して上述した走査領域48のy
FF広がりと最大原像変位Δy
FF,maxとの和である。
【0136】
走査領域46又は48の面積が小さい場合に、照明視野5の同時照明領域の面積も小さい。ウェーハ13の点
に使用光16
が当たる間の全体持続時間は、像視野11のサイズ及びウェーハ変位ドライブ15によって制御されるウェーハの走査速度に加えて、照明視野の同時照明領域のサイズに対する照明視野5の全サイズの比に依存する。この全体持続時間の長さが増すと、空間的及び時間的に局在化した干渉が有する場合がある効果はより小さくなる。
【0137】
しかし、走査領域46又は48の面積は、その過程において上述の走査領域の実施形態に対する条件を破ることなく、可能な限り大きくすることができる。走査領域46又は48は、その面積が視野ファセットのうちの1つの反射面の20%よりも大きいように選択することができる。走査領域46又は48の面積は、視野ファセット25のうちの1つの面積の3分の1よりも大きく、視野ファセット25のうちの1つの面積の半分よりも大きく、視野ファセット25のうちの1つの面積の75%よりも大きく、又は視野ファセット25のうちの1つの面積の90%よりも大きいとすることができる。
【0138】
図面には示していない投影露光装置の実施形態において、視野ファセットミラー19の同じ行内の視野ファセット25に属する照明チャネル27
iの対に沿った全ての進行時間差は、照明光16のコヒーレンス時間よりも長い。しかし、視野ファセットミラー19の異なる行内の視野ファセット25に属する照明チャネル27
iの対に沿った進行時間差は、照明光16のコヒーレンス時間よりも短い可能性がある。走査領域46は、
図14及び
図15に関して上述したy広がりを有する。x広がりは、全体視野ファセットミラーを含み、従って、走査領域46の面積は、今度は1つの視野ファセット25の面積よりも大きい。
【0139】
以下に続く本文では、マイクロリソグラフィ投影露光装置の更に別の実施形態を説明する。上述した構成要素及び機能を同じ参照記号で表記し、以下に続く本文では、離反する構成要素又は機能の理解に必要とされる場合にしか言及しない。
【0140】
図18に記載の更に別の実施形態において、マイクロリソグラフィ投影露光装置1は、同じく微細構造又はナノ構造の電子半導体構成要素を生成するように機能する。
【0141】
使用放射線ビーム16は、以下に更に説明するビーム成形デバイス51を用いて投影露光装置1の照明光学ユニット4に適合された開口角35の範囲で照射される。ビーム成形デバイス51は、楕円形ミラーとして具現化される。光源2から発した使用放射線ビーム16は、1mradよりも小さい発散を有する。ビーム成形デバイス51は、照明光学ユニット4の中間焦点面18に配置される。ビーム成形デバイス51の下流では、使用放射線ビーム16は、最初に視野ファセットミラー19上に入射する。
【0142】
図18に記載の実施形態において、使用放射線ビーム16は、500μradよりも小さく、好ましくは、150μradよりも小さい発散を有する。ビーム成形デバイス51上での使用放射線ビーム16の直径は、約5mmである。使用放射線ビーム16は、光源2から射出するときに、1mmよりも小さく、500μmよりも小さく、又は250μmよりも小さいとすることができるほぼ消失する直径を有する。
【0143】
視野ファセットミラー19は、視野ファセットアレイ(この図では、より詳細には図示してない)を有する。
図18に例示的に示す全てのものは、実際に存在する視野ファセット25のうちの僅かに一部に過ぎない。視野ファセット25は、視野ファセットミラー19の主ミラー面上に配置される。
【0144】
瞳ファセット28は、瞳ファセットミラー20の主ミラー面上に配置される。
【0145】
瞳ファセットミラー20は、投影光学ユニット10の入射瞳の位置の領域に配置される。個々の照明光部分ビームに対する照明チャネルは、視野ファセット25から照明視野5に通じる。
【0146】
ビーム成形デバイス51を用いた視野ファセットミラー19のファセット25の照明によって引き起こされる全ての照明チャネルの統合により、照明光学ユニット4によって引き起こされる物体視野5の照明の照明角度分布が、各ファセット対25、28にわたって予め決定された個々の照明角度から現れる。
【0147】
投影光学ユニット10の入射瞳は、時にミラー22、23、及び24の一部又は全てによる結像の後に瞳ファセットミラー20の近くに置かれる。
【0148】
投影露光装置1の個々の構成要素を説明する場合に、当該構成要素の主反射面又は主ミラー面に張られる局所xy−座標系を使用する。広域座標系のx方向と局所座標系のx方向とは、ほぼ一致するか又は互いに平行である。
【0149】
ビーム成形デバイス51は、楕円形ミラーであり、使用放射線ビーム16は、その上にかすめ方式で入射する。光源2とビーム成形デバイス51の間の距離は、例えば、25m、50m、又は他に100mである。特に、この距離は、光源2の発散に基づくことができる。その結果、例えば、5mmの寸法を有するスポットが、ビーム成形ユニット51上にもたらされる。
【0150】
ビーム成形ユニット51の楕円形ミラーは、図面により詳細には示していないビーム案内物体平面のビーム案内像平面内への結像をもたらす。ビーム案内像平面は、視野ファセットミラー19に実質的に対応する。光源2からの使用放射線ビーム16の小さい発散の結果として、ビーム案内物体平面の正確な位置は重要ではなく、使用光16は、ビーム成形ユニット51上のスポット寸法から実質的にほとんどずれない寸法を有するスポットをビーム案内物体平面内に形成する。ビーム成形デバイス51からの楕円形ミラーは、結像スケール|β|=60を有する光学結像をもたらし、従って、使用放射線ビーム16は、全体視野ファセットミラー19を照明する。
【0151】
ビーム成形ユニット51と視野ファセットミラー19の間の距離は、約2mである。
【0152】
図19は、投影露光装置1の主要構成要素を略示している。最初に、光源2が、
図18には示していないコレクター17によって中間焦点面18に結像される。小さいエタンデュを有する光源2の場合に、特に、例えばFELレーザのような電子ビームベースの光源2の場合に、コレクター17を割愛することができる。瞳ファセット28を有する瞳ファセットミラー20は、光源2の像が瞳ファセット28の場所に収まるように配置される。従って、光源2の像は、照明される各瞳ファセット28の領域内に収まる。瞳ファセットミラー20は、時に伝達光学ユニット21(
図18を参照されたい)の更に別の構成要素と共に、視野ファセットミラー19の視野ファセット25を照明視野又は物体視野5内に互い重ね合わせる方式で結像する。特定の瞳ファセット28上に入射する照明光16の全ての光線の光路長は、この瞳ファセット28の場所において一定であり、すなわち、光路長は、この瞳ファセット28に到達した照明光16のどの光線を考慮するかに依存しない。
【0153】
以下に続く本文では、瞳ファセットミラー20の瞳ファセット28とレチクル7の間の光路長opd(光路距離)の視野プロファイルを
図20及び
図21に基づいて解説する。この目的に対して、全てが同じxz平面に位置する瞳ファセットミラー20の3つの瞳ファセット28
1、28
2、及び28
3を例示的に選抜する。これら3つの瞳ファセット28
1から28
3のうちの隣接するものは、互いから125mmの距離を有する。瞳ファセットミラー20は、z方向にレチクル7から1500mmの距離の場所にある。レチクル7のうちの
図20で考慮する部分は、x方向に104mmの広がりを有する。3つの考慮する瞳ファセットのうちの中央のもの、すなわち、瞳ファセット28
2は、レチクル7のx方向の中心(x=0)と同じレベルに位置する。
【0154】
図21に記載の図は、レチクル7のx座標への瞳ファセット28
1から28
3の間の光路長の依存性を指定している。
図20の右に向けて示す瞳ファセット28
3は、レチクル7の左手縁部(x=−52mm)からの最大距離を有し、この距離は、レチクル7の右手縁部(x=+52mm)に向けて連続的に減少する。
図21には、これを経路長曲線52によって示している。相応に鏡像反転した経路長曲線53が、
図20の左手側に示す瞳ファセット28
1に対して現れる。レチクル7にわたって中心に配置された第3の瞳ファセット28
2では、レチクル7の中心(x=0)までの最小距離を有し、この距離は、レチクル7の2つの縁部(x=±52mm)まで連続的に増加する。
【0155】
2つの外側瞳ファセット28
1と28
3は、レチクル7の中心(x=0)から正確に同じ距離を有する。この中心において、2つの経路長曲線52と53は交わる。光源2から発して瞳ファセット28
1及び28
3に通じるそれぞれの照明光部分ビームに対する照明チャネルが、光源2から瞳ファセット28
1までと28
3までとで同じ長さを有する場合に、x=0において辿る経路の長さの等値性から妨害干渉がもたらされ、この干渉は、下記で説明するように瞳ファセットミラー20の適切な配置によって回避される。
【0156】
図22は、瞳ファセットミラー20の主ミラー面55に対する瞳ファセットミラー20の法線Nがyz平面に対して、すなわち、視野ファセットミラー19の主ミラー面56上への照明光部分ビームの入射平面に対して傾斜角α=10°だけ傾斜されるような傾斜を有するように配置された瞳ファセットミラー20を
図20と類似の図に示している。この傾斜により、yz平面内で瞳ファセットミラー20まで
のびる部分ビームは、この傾斜角に従ってyz平面から外れるように偏向される。
【0157】
図26は、両方の瞳ファセット28
1及び28
3、並びにこれらの2つの瞳ファセット28
1、28
3の間に等距離で配置された14個の更に別の瞳ファセット28に対して瞳ファセットミラー20の上述の10°の傾斜角に関するレチクル7に対する経路長の視野プロファイルを示す
図21に対応する図を示している。瞳ファセット28
1は、
図26に最上部の経路長曲線57に示すレチクル7からの最大距離を常に有する。瞳ファセット28
3は、レチクル7の全体x寸法にわたって
図26に最下部の経路長曲線58に示すレチクル7からの最小距離を常に有する。瞳ファセット28
1と28
3の間に位置する14個の瞳ファセット28は、経路長曲線57、58の間に位置する経路長曲線59に示す視野プロファイルを有する。傾斜角α=10°の場合に、これらの経路長曲線57から59は、レチクル7の全体x寸法にわたって交わることがない。従って、
図21に関して上述した望ましくない干渉を可能にする状況は発生しない。従って、
図22に従って瞳ファセットミラー20を傾斜させることにより、各場合に光源2と視野点のうちのそれぞれ1つ、すなわち、投影露光に向けてレチクルが配置された時のレチクル7上の点のうちのそれぞれ1つとの間に異なるチャネル長を有し、照明視野5の視野点の各々に照明光16の部分ビームを
当てることができる様々な照明チャネルがもたらされる。
【0158】
図23から
図25は、
図26に従って
図22及び
図26に関して上記に解説した16個の瞳ファセットに対してレチクル7のx寸法への経路長依存性を示している。傾斜角α=7°の場合にも、経路長曲線57から59は同じく交わらず、従って、この場合に、妨害干渉を回避する瞳ファセットミラー20の配置が同じく存在する。4°の傾斜角αの場合に、経路長曲線58と59は、
図20及び
図22の右外側に示す瞳ファセット28
3の領域内にある瞳ファセット28において交わる。
図23は、
図20及び
図21に記載の状況に対応する非傾斜瞳ファセットミラー20(α=0°)の場合の状況を示している。
【0159】
これに代えて又はこれに加えて使用することができる照明光部分ビームに対する照明チャネルの望ましくない均等な光路長opdが存在しないように瞳ファセットミラー20を配置する更に別の対策は、瞳ファセットミラー20の主ミラー面55の定められた曲率の付与にある。この対策を
図19、
図27、及び
図28に基づいて以下に説明する。この変形では、
図19に一点鎖線
(dash−dotted line)に示す湾曲した主ミラー面55’が存在する。
図27は、瞳ファセットミラー20の主ミラー面55’のxz平面(y=一定)内の曲率プロファイル60を拡大スケールに示している。この場合に、
図27の図における左手のスケールが適用される。同時に、
図27の図は、湾曲主ミラー面55’の曲率プロファイル61を水平(x)軸と垂直(z)軸で同一のスケールに示している。この場合に、
図27の図の右手のスケールが適用される。
【0160】
主ミラー面55’は、放物線曲率プロファイルを有する。
【0161】
図28は、
図20に記載の配置の瞳ファセット28
1の位置と28
3の位置との間で等距離に位置合わせした15個の瞳ファセット28ついて、主ミラー面55’の上述の湾曲プロファイル、すなわち、これらの15個の瞳ファセット28の光路長の視野プロファイル(プロファイル曲線62)から現れる光路長opdの依存性を示している。
【0162】
主ミラー面55’は、15個の瞳ファセット28がレチクル7の左手縁部(x=−52mm)からほとんど同じ距離を有するような曲率を有する。この場合に、小さすぎて図では識別することができない小さい距離差が更に存在し、レチクル7の左手縁部への光路長の妨害等値性を阻止する。プロファイル曲線62は、x=−52mmとx=+52mmの間、すなわち、レチクル7の全体使用領域にわたって交わらない。従って、この場合に現れるのは、様々な瞳ファセット28からレチクル7上の特定の点までの光路長の妨害等値性が前と同じく回避される状況である。
【0163】
すなわち、瞳ファセットミラー20の主ミラー面55’は、照明視野5の視野点の各々に照明光16の部分ビームを
当てることができる様々な照明チャネルが、各場合に光源2と照明視野5の視野点のうちのそれぞれ1つとの間に異なるチャネル長を有するように平面(基準面55)から
ずれる。
【0164】
様々な照明チャネルを通して照明視野11に案内される照明光部分ビームの間の妨害干渉を回避するための更に別の実施形態を
図29から
図31に基づいて以下に説明する。これらの図は、今度は弓形又は部分リング形の実施形態を有する視野ファセット25のうちのそれぞれ1つを大きく拡大して示している。図面内では、水平軸と垂直軸で異なるスケールを用いている。視野ファセット25のy広がりは、そのx広がりの10分の1である。
【0165】
図29に記載の視野ファセット25は、「y二重極」構成を有する照明設定、すなわち、物体視野点を照明する照明角度分布を用いて、投影露光装置1の
動作に対して最適化される。この「y二重極」照明設定では、照明視野又は物体視野5は、y方向に互いから分離した2つの照明光極の方向から照明される。この照明設定では、y方向に互いから分離した2つの強度極の形態にある強度分布が、照明光学ユニット4又は26の瞳平面に存在する。そのような照明設定及び更に別の照明設定の例は、DE 10 2008 021 833 B4に解説されている。
【0166】
図29に記載の視野ファセット25は、その反射面64上に遮蔽領域63を有する。遮蔽領域63は線形方式に具現化される。遮蔽領域63は、視野ファセット25の反射面64上に入射する照明光16をこの照明光が照明視野5の照明に寄与しないように遮蔽する。
【0167】
遮蔽領域63は、その縦広がりと垂直に例えば100μm又は更にそれ未満の領域内にある非常に小さい広がりを有する。遮蔽領域63は、視野ファセット25が属する照明チャネルを通して特定の物体視野点に向けてこの視野ファセット25にわたって案内される照明光が、異なる視野ファセット25が属する更に別の照明チャネルからの照明光と妨害干渉を有することになる視野ファセット25に適用されたものである。これらの遮蔽領域63は、そのそれぞれの縦広がりと垂直に例えば最大で1mmであり、通常は有意に小さく、例えば、800μm、700μm、600μm、500μm、400μmであり、又は更に一層小さいとすることができる広がりを有する。遮蔽領域63の広がり方向に対して垂直な1mmよりも大きい広がりも可能である。従って、視野ファセット25の全ての遮蔽領域63は、合わせてこの視野ファセット25の全反射面64の10%未満しか遮蔽しない。
【0168】
遮蔽領域63は、視野ファセット25上に入射する照明光部分ビーム16
iの断面のうちで対応する部分を遮蔽する。
【0169】
従って、遮蔽領域63がもたらすことは、照明光学ユニット4又は26の動作中に照明チャネル対を構成する照明チャネルにわたって案内される照明光部分ビーム16の対応する対が、光源から計算した場合に照明視野5のいずれかそれぞれの着目点において照明光16のコヒーレンス持続時間τ
κよりも短いいずれかの時間にある進行時間差を有する照明チャネル対の場合に、照明チャネル対を構成する照明チャネルのうちの少なくとも一方の断面領域が、遮蔽領域63に起因して照明視野5を照明することに寄与しないことである。従って、遮蔽領域63によって妨害干渉成分が抑制される。
【0170】
そのような遮蔽領域63が適切に装備された視野ファセット25の場合に、視野ファセットミラー19上での視野ファセット25の配置、照明光学ユニット4の幾何学形状、及び照明設定に基づいて、視野ファセット25の各々における反射面64上に遮蔽領域63の個々のパターンが現れる。一例として、個々のパターンは、光線追跡プログラムによって計算することができる。次いで、この計算の結果に基づいて、パターンは、例えば適切なコーティングによって視野ファセット25の反射面64に適用することができる。
【0171】
遮蔽領域63に起因する全体光損失、すなわち、照明光16におけるスループット損失は、10%よりも少なく、かつ2%の領域内に収めることができる。
【0172】
原理的に、視野ファセットミラー25は、複数の個々のマイクロミラー65から構成することができる。
図29には、そのようなマイクロミラー65の対応する行毎及び列毎のアレイ構造を区画的に示している。そのような
代替的マイクロミラー構成では、遮蔽領域63の代わりに、マイクロミラー65上に
当たる照明光16が物体視野5の照明に寄与しないように傾斜されたマイクロミラー65が存在する。
【0173】
マイクロミラー65は、MEMSアレイ配置の構成要素である。一例として、対応するMEMSアレイ配置は、例えば、WO 2009/100 856 A1から当業者に公知である。マイクロミラー65は、そのようなマイクロミラー視野ファセット25上に入射する照明光部分ビーム16の反射案内をマイクロミラー65の傾斜位置によって予め決定することができるように、少なくとも2つの傾斜自由度によって互いに独立して傾斜させることができる。
【0174】
図30は、更に別の視野ファセット25を
図29と類似の図に示している。
図30に記載の視野ファセット25も同じく遮蔽領域63を有する。
図30に記載の視野ファセット25では、遮蔽領域63の配置は、「x二重極」照明設定に対して最適化される。遮蔽領域63のこの配置は、
図29に記載のものとは質的かつ量的に異なる。
【0175】
図31は、視野ファセット25の更に別の実施形態をこの場合にも
図29及び
図30に記載のものに対応する図に示している。
【0176】
図31に記載の視野ファセット25の場合に、遮蔽領域63は、投影露光装置1に対して使用することができる複数の異なる照明設定に向けて適用されたものである。これらの照明設定は、「y二重極」照明設定及び「x二重極」照明設定を含み、従って、
図29及び
図30にある全ての遮蔽領域63は、
図31に記載の視野ファセット25にも同じく存在する。
【0177】
視野ファセット25のマイクロミラー実施形態の場合に、
図29から
図31に記載の様々な遮蔽領域構成は、マイクロミラー65の適切な傾斜作動によって設定することができる。
【0178】
物体視野5内での照明光部分ビーム16
iの妨害干渉を回避するための照明光学ユニット4の更に別の実施形態を
図32から
図34に基づいて説明する。
図1から
図31を参照して上述したものに対応する構成要素及び機能を同じ参照記号で表記し、これらに対しては再度詳細に解説することはしない。
【0179】
図32から
図34に記載の視野ファセットミラー19は、ここでもまた弓形視野ファセット25を有し、これらの視野ファセット25は、4つの列25
I、25
II、25
III、及び25
IV内に互いに隣合わせで配置される。
【0180】
視野ファセットミラー19は、同時に照明光学ユニット4の光学リターデーション構成要素29又は33を構成する。
【0181】
ファセット列25
Iから25
IVは、視野ファセットミラーの主反射平面66に対してz方向に、すなわち、主反射平面66と垂直に互いにオフセット配置される。この場合に、
図33に示すように、隣接ファセット列25
Iから25
IVのオフセットはΔl/2であり、すなわち、コヒーレンス持続時間τ
κの少なくとも半分である。特に
図4に記載の実施形態に関して上述したことは、この経路長差に適用される。これに代えて、視野ファセット列25
Iから25
IVの間の段差距離は、δl/2とすることができる。この場合に、
図7に記載の実施形態に関して上述したことが適用される。
【0182】
この視野ファセットミラーは、EUV光源2からの照明光16により、例えば、
図14から
図17に記載の実施形態の走査領域46及び48に関して上述したように、走査領域67を用いて同時に照明される。走査領域67は、x方向に全体視野ファセットミラー19のx広がりに対応する広がりを有する。y方向には、走査領域67は、視野ファセット25のうちのそれぞれ1つのy広がりに対応する広がりを有する。
【0183】
ファセット列25
Iから25
IVの段状配置が確実にすることは、異なる視野ファセット列25
Iから25
IVに案内される照明光部分ビーム16
iが妨害干渉を持たないことである。
【0184】
図34は、4つのファセット列25
Iから25
IVの
図34でそれぞれ最上部にある視野ファセット25への4つの照明チャネル27の割り当てを例示的に示している。
図34に記載の非常に概略的な図には、視野ファセットミラー19及び瞳ファセットミラー20をそれぞれ上面図に示している。
図34は、例示的に示す4つの照明チャネル27に属する瞳ファセットミラー20の瞳ファセット28しか示していない。これらの4つの照明チャネル27に割り当てられた視野ファセットの傾斜角は、瞳ファセットミラー20の配置平面の領域内で瞳ファセット28の点対称配置が照明されるようなものである。更に、視野ファセット列25
Iから25
IVのうちの1つが有する視野ファセット25にそれぞれの照明チャネル27を通して割り当てられた瞳ファセット28が、瞳ファセットミラー20の配置平面内でそれぞれ望ましい照明設定に従って対称に配置され、かつ均一に配分されるような視野ファセット25への瞳ファセット28の割り当てが存在する。この場合に、視野ファセット列25
Iから25
IVのzオフセットに起因する特に照明のテレセントリック性及び楕円率に対する照明パラメータの望ましくない悪影響を低減するか又は完全に回避することができる。これらのテレセントリック性及び楕円率照明パラメータ
(ellipticity illumination parameters)の定義は、US 8,174,677に見出すことができる。
【0185】
図34に記載の照明チャネル27の配置例は、環状照明設定又は四重極照明設定に属する。
【0186】
図14から
図17に記載の実施形態と比較してより大きい走査領域67に起因して、それは、照明光学ユニット4のより高いスループットをもたらす。更に、照明変数に対する光源変動の効果を低減することができる。