特許第6369930号(P6369930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6369930分析用小型真空蒸着装置および、蒸着膜の成膜時分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369930
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】分析用小型真空蒸着装置および、蒸着膜の成膜時分析方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20180730BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20180730BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180730BHJP
   H01L 21/203 20060101ALI20180730BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   C23C14/24 A
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 624
   H01L29/78 618A
   H01L21/203 Z
   H01L21/66 L
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-272473(P2013-272473)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124440(P2015-124440A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088096
【弁理士】
【氏名又は名称】福森 久夫
(72)【発明者】
【氏名】吉本 則之
(72)【発明者】
【氏名】菊池 護
【審査官】 宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−036262(JP,A)
【文献】 特開平07−034229(JP,A)
【文献】 特開平04−272169(JP,A)
【文献】 特開平11−229123(JP,A)
【文献】 特開2011−246786(JP,A)
【文献】 特開2002−031523(JP,A)
【文献】 特開2005−281858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
H01L 21/203
H01L 21/336
H01L 21/66
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内の上部に配置された複数個のるつぼホルダーと、
前記容器内の下部に配置された基板支持部と、
前記複数個のるつぼホルダーに、個々に配置されたシャッターと、
前記基板支持部の上部に配置されたシャッターとで構成された分析用小型真空蒸着装置であって、
前記るつぼホルダーは、開口部を下方に向けたガラス製るつぼと、抵抗ヒータとを有し、
前記ガラス製るつぼに投入された原料が、前記抵抗ヒータで加熱され、前記原料の蒸気が、前記容器の下方に拡散し、前記基板支持部に配置された基板上に前記蒸気が到達して、前記基板上に膜が成膜され、
前記複数個のるつぼホルダーの前記ガラス製るつぼの内部には、前記膜を成膜するための前記原料が、金属の細線をまるめて作製された蓋によって保持されていることを特徴とする分析用小型真空蒸着装置。
【請求項2】
前記容器には、分析光の入力用の透過用窓、および前記基板からの反射光の透過用窓が配置されることを特徴とする請求項1記載の分析用小型真空蒸着装置。
【請求項3】
外部に設置された分析機器の分析光によって、前記基板上の前記膜の成膜過程での、成膜初期過程での前記膜の分析が行われることを特徴とする請求項2記載の分析用小型真空蒸着装置。
【請求項4】
前記分析光は、X線あるいは放射光であることを特徴とする請求項3記載の分析用小型真空蒸着装置。
【請求項5】
前記基板上に有機薄膜トランジスタ、あるいは有機薄膜太陽電池の膜が成膜されることを特徴とする請求項1記載の分析用小型真空蒸着装置。
【請求項6】
前記容器は、上側容器と、下側容器とが合体して構成されており、前記下側容器内に前記基板支持部と、前記分析光の入力用の透過用窓、および前記基板からの前記反射光の透過用窓が設置されたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の分析用小型真空蒸着装置。
【請求項7】
容器内の上部に複数個のるつぼホルダーを配置し、
前記容器内の下部に基板支持部を配置し、前記複数個のるつぼホルダーに、個々にシャッターを配置し、前記基板支持部の上部にシャッターを配置し、
前記るつぼホルダーに、開口部を下方に配置したガラス製るつぼと、抵抗ヒータとを配置し、
前記ガラス製るつぼに投入された原料が、前記抵抗ヒータで加熱され、前記ガラス製るつぼに投入された前記原料の蒸気が、前記容器の下方に拡散し、前記基板支持部に配置された基板上に到達して、前記基板上に膜が成膜される過程において、
前記容器に、分析光の入力用の透過用窓、および前記基板からの反射光用の透過用窓を配置して、
外部分析装置からの前記分析光が、前記入力用の透過用窓を通過して、前記基板上の成膜中の前記膜にあたり、反射して、前記反射光用の透過用窓を通過して、前記外部分析装置にもどり、前記膜の分析が行われ、
前記基板上の前記膜の成膜過程で初期形成過程での、前記膜の分析を、実時間で行われ、
前記複数個のるつぼホルダーの前記ガラス製るつぼの内部に、前記膜を成膜するための原料を、金属の細線をまとめて作製された蓋によって保持することを特徴とする蒸着膜の成膜時分析方法。
【請求項8】
前記分析光を、X線あるいは放射光とすることを特徴とする請求項記載の蒸着膜の成膜時分析方法。
【請求項9】
前記基板上に有機薄膜トランジスタ、あるいは有機薄膜太陽電池の膜を成膜することを特徴とする請求項7記載の蒸着膜の成膜時分析方法。
【請求項10】
前記容器を、上側容器と、下側容器とを合体して構成し、前記下側容器内に前記基板支持部と、前記分析光の入力用の透過用窓、および前記基板からの前記反射光の透過用窓を設置することを特徴とする請求項7ないしのいずれか1項記載の蒸着膜の成膜時分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、るつぼ内の原料を加熱して、原料の蒸気を下方に拡散させて、基板に膜を成膜する構造を有する真空蒸着装置であって、前記基板に膜を成膜する過程で、特に成膜初期過程での、膜の品質を、リアルタイムに分析できる分析用小型真空蒸着装置および、蒸着膜の成膜時分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の真空蒸着装置は、容器の下部にるつぼが配置され、上部に基板が配置された構造であって、るつぼ内の原料を加熱して、原料の蒸気を、上側に拡散させ、上部に配置された基板上に、膜を成膜する。
【0003】
特許文献1には、有機EL素子を製造するための真空蒸着装置が開示されており、膜厚センサーによって蒸着レートを計測することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、蒸着装置において、多数の基板の薄膜の膜厚を成膜中に測定する方法について記載されている。ここで、特許文献1、特許文献2ともに、蒸着装置の下方に原料が配置され、上方の基板が配置される構造の蒸着装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−196082号公報
【特許文献2】特開2013−14798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の特許文献1、特許文献2では、基板への成膜する膜の膜厚については、モニターすることは記載されているが、膜の品質、特の成膜初期における膜の品質を分析することに関しては、全く開示されていない。
【0007】
本発明の課題は、蒸着装置において、基板に膜を成膜する過程での、特に成膜初期過程での、膜の品質を、リアルタイムにて分析が可能で、小型化された分析用小型真空蒸着装置および、蒸着膜の成膜時分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1の分析用小型真空蒸着装置は、容器と、前記容器内の上部に配置された複数個のるつぼホルダーと、前記容器内の下部に配置された基板支持部と、前記複数個のるつぼホルダーに、個々に配置されたシャッターと、前記基板支持部の上部に配置されたシャッターとで構成された分析用小型真空蒸着装置であって、前記るつぼホルダーは、開口部を下方に向けたガラス製るつぼと、抵抗ヒータとを有し、前記ガラス製るつぼに投入された原料が、前記抵抗ヒータで加熱され、前記原料の蒸気が、前記容器の下方に拡散し、前記基板支持部に配置された基板上に前記蒸気が到達して、前記基板上に膜が成膜され、前記複数個のるつぼホルダーのガラス製るつぼの内部には、前記膜を成膜するための前記原料が、金属の細線をまるめて作製された蓋によって保持されていることを特徴とする分析用小型真空蒸着装置である。
【0010】
本発明の請求項2の分析用小型真空蒸着装置は、前記容器には、前記分析光の入力用の透過用窓、および前記基板からの前記反射光の透過用窓が配置されることを特徴とする請求項1記載の分析用小型真空蒸着装置である。
【0011】
本発明の請求項3の分析用小型真空蒸着装置は、外部に設置された分析機器の分析光によって、前記基板上の前記膜の成膜過程での、成膜初期過程での前記膜の分析が行われることを特徴とする請求項2記載の分析用小型真空蒸着装置である。
本発明の請求項の分析用小型真空蒸着装置は、前記分析光は、X線あるいは放射光であることを特徴とする請求項3記載の分析用小型真空蒸着装置である。
【0012】
本発明の請求項5の分析用小型真空蒸着装置は、前記基板上に有機薄膜トランジスタ、あるいは有機薄膜太陽電池の膜が成膜されることを特徴とする請求項1記載の分析用小型真空蒸着装置である。
【0013】
本発明の請求項6の分析用小型真空蒸着装置は、前記容器は、上側容器と、下側容器とが合体して構成されており、前記下側容器内に前記基板支持部と、前記分析光の入力用の透過用窓、および前記基板からの前記反射光の透過用窓が設置されたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の分析用小型真空蒸着装置である。
【0014】
本発明の請求項7の蒸着膜の成膜時分析方法は、容器内の上部に複数個のるつぼホルダーを配置し、前記容器内の下部に基板支持部を配置し、前記複数個のるつぼホルダーに、個々にシャッターを配置し、前記基板支持部の上部にシャッターを配置し、前記るつぼホルダーに、開口部を下方に配置したガラス製るつぼと、抵抗ヒータとを配置し、前記ガラス製るつぼに投入された原料が、前記抵抗ヒータで加熱され、前記ガラス製るつぼに投入された前記原料の蒸気が、前記容器の下方に拡散し、前記基板支持部に配置された基板上に到達して、前記基板上に膜が成膜される過程において、前記容器に、分析光の入力用の透過用窓、および前記基板からの反射光用の透過用窓を配置して、外部分析装置からの前記分析光が、前記入力用の透過用窓を通過して、前記基板上の成膜中の前記膜にあたり、反射して、前記反射光用の透過用窓を通過して、前記外部分析装置にもどり、前記膜の分析が行われ、前記基板上の前記膜の成膜過程で初期形成過程での、前記膜の分析を、実時間で行われ、前記複数個のるつぼホルダーのガラス製るつぼの内部に、前記膜を成膜するための原料を、金属の細線をまとめて作製された蓋によって保持することを特徴とする蒸着膜の成膜時分析方法である。
【0017】
本発明の請求項の蒸着膜の成膜時分析方法は、前記分析光を、X線あるいは放射光とすることを特徴とする請求項記載の蒸着膜の成膜時分析方法である。
【0018】
本発明の請求項の蒸着膜の成膜時分析方法は、前記基板上に有機薄膜トランジスタ、あるいは有機薄膜太陽電池の膜を成膜することを特徴とする請求項7記載の蒸着膜の成膜時分析方法である。
【0019】
本発明の請求項1の蒸着膜の成膜時分析方法は、前記容器を、上側容器と、下側容器とを合体して構成し、前記下側容器内に前記基板支持部と、前記分析光の入力用の透過用窓、および前記基板からの前記反射光の透過用窓を設置することを特徴とする請求項7ないしのいずれか1項記載の蒸着膜の成膜時分析方法である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の分析用小型真空蒸着装置によれば、るつぼホルダーの開口部を下側に配置した、安定して成膜可能な分析用小型真空蒸着装置を提供することができる。
【0021】
請求項2、3、4、5の分析用小型真空蒸着装置によれば、X線あるいは放射光にて基板に膜を成膜する過程での、特に成膜初期過での、膜の品質を、リアルタイムにて分析が可能な分析用小型真空蒸着装置を提供できる。
【0022】
請求項の分析用小型真空蒸着装置によれば、容器を上側容器と下側容器に分割するので、より小型化された、作業状態のすぐれた分析用小型真空蒸着装置を提供できる。
【0023】
請求項の蒸着膜の成膜時分析方法によれば、るつぼホルダーの開口部を下側に配置した、安定した分析可能な蒸着膜の成膜時分析方法を提供することができる。
【0024】
請求項8、9の蒸着膜の成膜時分析方法によれば、X線あるいは放射光にて基板に膜を成膜する過程での、特に成膜初期過での、膜の品質を、リアルタイムにて分析が可能な蒸着膜の成膜時分析方法を提供できる。
【0025】
請求項1の蒸着膜の成膜時分析方法によれば、容器を上側容器と下側容器に分割するので、より小型化された、作業状態のすぐれた蒸着膜の成膜時分析方法を提供できる。
【0026】
本発明によれば、蒸着装置において、基板に膜を成膜する過程での、特に成膜初期過での、膜の品質を、リアルタイムにて分析が可能であり、かつ小型化された分析用小型真空蒸着装置および、蒸着膜の成膜時分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1の分析用小型真空蒸着装置の断面図。
図2図1の分析用小型真空蒸着装置での2個のるつぼホルダーの拡大図。
図3】実施例2の分析用小型真空蒸着装置の断面図。
図4】分析装置の図。
図5】電極を配置した基板。
図6】有機半導体(α−セキシチオフェン)を真空蒸着しながらソース−ドレイン電極間に流れる電流をモニターした図。
図7】チャネル間のリアルタイムX線回折データ。
図8】ペンタセン(C22H14)、パーフルオロペンタセン(C22F14)の分子構造の図。
図9】ペンタセンとパーフルオロペンタセンの組成の違いによる2次元X線回折パターンの測定例。
図10】ペンタセンとパーフルオロペンタセンの2元蒸着膜の太陽電池特性。
図11】ペンタセンとパーフルオロペンタセンの2元蒸着膜のトランジスタ特性。
図12】太陽電池の構造図であり、pin構造(透明電極/p型層/混合層/n型層/金属電極)の場合と、組成傾斜構造の場合の図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態による分析用小型真空蒸着装置は、容器と、前記容器内の上部に配置された複数個のるつぼホルダーと、前記容器内の下部に配置された基板支持部と、
前記複数個のるつぼホルダーに、個々に配置されたシャッターと、前記基板ホルダーの上部に配置されたシャッターとで構成された分析用小型真空蒸着装置であって、前記るつぼホルダーは、開口部を下方に向けたガラス製るつぼと、抵抗ヒータとを有し、前記ガラス製るつぼに投入された原料の蒸気が、前記抵抗ヒータで加熱され、前記容器の下方に拡散し、前記基板支持部に配置された基板上に蒸気が到達して、前記基板上に膜が成膜されることを特徴とする分析用小型真空蒸着装置である。
【0029】
ここで、前記複数個のるつぼホルダーのガラス製るつぼの内部には、膜を成膜するための原料が、金属の細線をまるめて作製された蓋によって保持されている。また、前記容器には、分析光の入力用の透過用窓、および基板からの反射光の透過用窓が配置され、外部に設置された分析機器の分析光によって、基板上の膜の成膜過程での、成膜初期過程での膜の分析が行われる。前記分析光は、X線あるいは放射光である。前記基板上には、有機薄膜トランジスタ、あるいは有機薄膜太陽電池の膜が成膜される。
【0030】
ここで、前記容器は、上側容器と、下側容器とが合体して構成されており、前記下側容器内に基板支持部と、分析光の入力用の透過用窓、および基板からの反射光の透過用窓が設置されている。このように、容器を上側容器と下側容器に分割するので、装置が、より小型化され、作業状態のすぐれた装置を提供でき、特に、外部の分析機器の配置に合わせて分析用小型真空蒸着装置を配置することが可能となる。
【0031】
本発明の実施の形態による蒸着膜の成膜時分析方法は、容器内の上部に複数個のるつぼホルダーを配置し、前記容器内の下部に基板支持部を配置し、前記複数個のるつぼホルダーに、個々にシャッターを配置し、前記基板ホルダーの上部にシャッターを配置し、前記るつぼホルダーに、開口部を下方に配置したガラス製るつぼと、抵抗ヒータとを配置し、前記ガラス製るつぼに投入された原料が、前記抵抗ヒータで加熱され、前記ガラス製るつぼに投入された原料の蒸気が、前記容器の下方に拡散し、前記基板支持部に配置された基板上に到達して、前記基板上に膜が成膜される過程において、前記容器に、分析光の入射光用の透過用窓、および基板の膜からの反射光用の透過用窓を配置して、外部分析装置からの入射光が、前記入射光用の透過用窓を通過して、基板上の成膜中の膜にあたり、反射して、反射光用の透過用窓を通過して、外部分析装置にもどり、前記膜の分析が行われれ、基板上の膜の成膜過程で初期形成過程での、膜の分析を、実時間で行なうことを特徴とする蒸着膜の成膜時分析方法である。
【0032】
ここで、前記複数個のるつぼホルダーのガラス製るつぼの内部に、膜を成膜するための原料を、金属の細線をまとめて作製された蓋によって保持される。前記容器には、分析光の入力用の透過用窓、および基板からの反射光の透過用窓が配置され、外部の分析機器の分析光によって、基板上の膜の成膜過程での、成膜初期過程での膜の分析を行なう。前記分析光を、X線あるいは放射光とする。
【0033】
(実施例1)
図1は、実施例1の分析用小型真空蒸着装置100の断面図である。図2は、図1の分析用小型真空蒸着装置での2個のるつぼホルダー1a、1bの拡大図である。容器6は、ステンレス製の容器であり、容器の大きさは、300×150mm、重量5kgで、一般の蒸着装置の容器が500mm、重量20kgであるのに比べると、容器6が非常に軽量であることが特徴である。容器6の上部には、第1のるつぼホルダー1aと、第2のるつぼホルダー1bが配置され、それぞれのるつぼホルダーに対応して、下側に第1のシャッター2a、第2のシャッター2bが設置されている。容器6の下部には、基板支持部5が配置され、基板支持部5には、基板4が搭載されている。前記基板支持部5の上部領域には、基板用のシャッター3が設置されている。
【0034】
図2のるつぼホルダーの拡大図を用いて、るつぼホルダーの構造の詳細を以下説明する。
第1のるつぼホルダー1aは、第1のガラス製るつぼ11aが、開口部を下方に向けて配置され、周辺に抵抗ヒータが配置され、また熱電対18が配置されている。
15は、金属細線による蓋であり、原料14aが落下しないようにする目的で、第1のガラス製るつぼ11aに詰められている。ここで蓋15は、直径0.01〜0.1mm、長さ100mmの金、白金、銅などの金属細線をまとめて蓋としたものである。
【0035】
第2のるつぼホルダー1bの構造は、先に説明した第1のるつぼホルダー1aと同様である。第2のるつぼホルダー1bは、第2のガラス製るつぼ11bが、開口部を下方に向けて配置され、周辺に抵抗ヒータが配置され、また熱電対18が配置されている。
16は、金属細線による蓋であり、原料14bが落下しないようにする目的で、第1のガラス製るつぼ11bに詰められている。ここで蓋16は、直径0.01〜0.1mm、長さ100mmの金、白金、銅などの金属細線をまとめて蓋としたものである。
本実施例では、第1のガラス製るつぼ11a、第2のガラス製るつぼ11bの下方の開口部から、原料の蒸気が拡散していくことが特徴である。
【0036】
ここで、原料14a、14bは、主として、有機トランジスタ、あるいは有機薄膜太陽電池用の膜を成膜するための原料が選択される。原料14aからの蒸気は、金属細線による蓋15、るつぼホルダーの開口部12を通過し、第1のシャッター2aが開放されている時間帯に、基板4の上に膜を成膜する。
同じく。原料14bからの蒸気は、金属細線による蓋16、るつぼホルダーの開口部14を通過し、第2のシャッター2bが開放されている時間帯に、基板4の上に膜を成膜する。
【0037】
容器6には、分析光の入力用の透過用窓7、および基板からの反射光の透過用窓8が設置されている。外部の分析装置から、分析光8aが分析光の入力用の透過用窓7を透過して基板4に照射され、反射して、基板からの反射光9bが、基板からの反射光の透過用窓8を通過して、前記分析装置にもどり、膜4の分析が行われる。
【0038】
(実施例2)
図3は、実施例2の分析用小型真空蒸着装置の断面図である。
実施例2の分析用小型真空蒸着装置101の容器61は、上側容器6a、下側容器6bが合体されて構成されている。上側容器6aには、第1のるつぼホルダー1a、および第2のるつぼホルダー1bが設置されており、この構造は、図2に示す拡大図のごとくである。この部分は、先の実施例1と同様である。
【0039】
下側容器6bは、外径を、上側容器6aよりも小としており、分析装置の空間の収まることを可能としている。下側容器6bには、基板支持部5と基板4および、分析のための分析光の入力用の透過用窓71、および基板からの反射光の透過用窓81が設置されている。外部の分析装置から、分析光8aが分析光の入力用の透過用窓71を透過して基板4に照射され、反射して、基板からの反射光9bが、基板からの反射光の透過用窓81を通過して、前記分析装置にもどり、膜4の分析が行われる。このように、容器を上側容器と下側容器に分割するので、装置が、より小型化され、作業状態のすぐれた装置を提供でき、特に、外部の分析機器の配置に合わせて分析用小型真空蒸着装置を配置することが可能となる。
【0040】
(実施例3)
有機トランジスタの成膜について説明する。
材料名:α−セキシチオフェン(C24H14S6)
融点:290℃
分析データ
【0041】
図5に示す電極を配置した基板上に有機半導体(α−セキシチオフェン)を真空蒸着しながらソース−ドレイン電極間に流れる電流をモニターした(図6)。基板は高ドープシリコンの表面に300 nmの熱酸化膜を配置したものを使用した。表面に真空蒸着法によって作製したAu電極(ソース、ドレイン電極)間に80 Vの電圧を印可し、同時にゲート電極とソース−ドレイン電極間にも80 Vの電圧を印可した。成膜の進行につれて突然増大する電流が観測された。図7は、このときのチャネル間に照射したX線の回折データである。このデータは、トランジスタが形成されている過程の結晶構造を表している。
なお、トランジスタの構造については、ゲート電極/絶縁膜/pn混合層/SD電極という構造とし、有機膜については1層構造とした。
【0042】
(実施例4)
薄膜太陽電池の成膜について説明する。
材料名:ペンタセン(C22H14)、パーフルオロペンタセン(C22F14)
融点:271℃、
分析データ
【0043】
図8は、ペンタセン(C22H14)、パーフルオロペンタセン(C22F14)の分子構造の図である。
図9は、ペンタセンとパーフルオロペンタセンの組成の違いによる2次元X線回折パターンの測定例である。
図10は、ペンタセンとパーフルオロペンタセンの2元蒸着膜の太陽電池特性である。発電が見られる。図10の測定に用いた光は、AM1.5フィールターをつかった疑似太陽光で、照射強度は1000 W/m2である。
図11は、ペンタセンとパーフルオロペンタセンの2元蒸着膜のトランジスタ特性である。両極性トランジスタとしての特性が見られる。
図12は、太陽電池の構造図であり、pin構造(透明電極/p型層/混合層/n型層/金属電極)の場合と、組成傾斜構造の場合の図。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明では、蒸着装置において、基板に膜を成膜する過程での、特に成膜初期過程での、膜の品質を、リアルタイムにて分析が可能で、かつ小型で、作業性の良い、分析用小型真空蒸着装置および、蒸着膜の成膜時分析方法を提供でき、産業の発展に寄与する。
【符号の説明】
【0045】
1a 第1のるつぼホルダー
1b 第2のるつぼホルダー
2a 第1のシャッター
2b 第2のシャッター
3 基板用のシャッター
4 基板
5 基板支持部
6、61 容器
6a 上側容器
6b 下側容器
7、71 分析光の入力用の透過用窓
8、81 基板からの反射光の透過用窓
9a 分析光
9b 基板からの反射光
11a 第1のガラス製るつぼ
11b 第2のガラス製るつぼ
12,13 るつぼホルダー開口部
14a 第1の原料
14b 第2の原料
15,16 金属細線による蓋
17 抵抗ヒータ
18 熱電対
100,101 分析用小型真空蒸着装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12