特許第6369980号(P6369980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369980
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】アイスリンクの冷却設備及び冷却方法
(51)【国際特許分類】
   F25C 3/02 20060101AFI20180730BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20180730BHJP
   F25B 6/04 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   F25C3/02
   F25B1/00 399Y
   F25B6/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-140670(P2014-140670)
(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公開番号】特開2016-17697(P2016-17697A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】福岡 美則
(72)【発明者】
【氏名】田中 義昭
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/129035(WO,A1)
【文献】 特開2010−271007(JP,A)
【文献】 特開2001−336842(JP,A)
【文献】 米国特許第03831394(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01816415(EP,A2)
【文献】 欧州特許出願公開第01536190(EP,A1)
【文献】 特開平09−178217(JP,A)
【文献】 特開2016−017696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00− 7/00
F25B 13/00
F25B 31/00−31/02
F25B 39/00−41/06
F24F 1/06− 1/68
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイスリンクの底部に敷設された冷却管群を流れるCOブラインの潜熱を用いて、前記アイスリンクを冷却するように構成されたアイスリンクの冷却設備であって、
前記COブラインを貯留する受液器と、
圧縮機及び凝縮器を含む冷凍サイクルを形成し、前記COブラインのうちCOガスを冷却して液化する冷凍装置と、
前記受液器に貯留されたCOブラインを前記冷却管群に供給するための循環ユニットと、を備え、
前記循環ユニットは、
前記COブラインのうちCO液を容器内に貯留し、該CO液の少なくとも一部を前記圧縮機の廃熱によってガス化して前記容器の内部圧力を上昇するように構成された圧力調整器と、
前記受液器からの前記CO液が貯留され、前記圧力調整器と連通されることによって前記冷却管群よりも高圧に維持され、前記冷却管群との圧力差を利用して前記CO液を前記冷却管群に強制循環させる送液器と、
前記圧力調整器の前記容器内に設けられ、前記圧縮機で圧縮された高温の冷媒と、前記圧力調整器の前記容器内の前記CO液とを熱交換することによって前記CO液を加熱する熱交換器と、
を備え
前記熱交換器の入口は、前記冷凍サイクルにおける前記冷媒の循環ラインのうち前記圧縮機の下流側且つ前記凝縮器の上流側の部位に連通し、前記圧縮機から出た前記高温の冷媒を前記熱交換器に導くとともに、
前記熱交換器を通過した前記高温の冷媒を前記凝縮器に戻すように構成された
ことを特徴とするアイスリンクの冷却設備。
【請求項2】
アイスリンクの底部に敷設された冷却管群を流れるCOブラインの潜熱を用いて、前記アイスリンクを冷却するように構成されたアイスリンクの冷却設備であって、
前記COブラインを貯留する受液器と、
圧縮機及び凝縮器を含む冷凍サイクルを形成し、前記COブラインのうちCOガスを冷却して液化する冷凍装置と、
前記受液器に貯留されたCOブラインを前記冷却管群に供給するための循環ユニットと、を備え、
前記循環ユニットは、
前記COブラインのうちCO液を貯留し、該CO液の少なくとも一部を前記圧縮機の廃熱によってガス化して内部圧力を上昇するように構成された圧力調整器と、
前記受液器からの前記CO液が貯留され、前記圧力調整器と連通されることによって前記冷却管群よりも高圧に維持され、前記冷却管群との圧力差を利用して前記CO液を前記冷却管群に強制循環させる送液器と、
前記圧縮機で圧縮された高温の冷媒と、前記圧力調整器内の前記CO液とを熱交換することによって前記CO液を加熱する熱交換器と、
を備え、
前記循環ユニットは、
前記冷凍装置から前記圧力調整器へ前記CO液を供給する加圧用CO送りラインと、
前記加圧用CO送りラインに設けられた第1バルブと、
前記圧縮機で圧縮された冷媒を前記熱交換器に供給する冷媒供給ラインと、
前記冷媒供給ラインに設けられた第2バルブと、
前記圧力調整器と前記送液器とを接続する均圧化ラインと、
前記均圧化ラインに設けられた第3バルブと、
前記第1バルブ、前記第2バルブ及び前記第3バルブを制御するように構成された制御装置と、を備えており、
前記制御装置は、
前記圧力調整器に前記CO液を供給するために前記第1バルブを開くとともに前記第2バルブ及び第3バルブを閉じる制御を行う第1制御部と、
前記圧力調整器の前記内部圧力を上昇させるために前記第2バルブを開くとともに前記第1バルブ及び第3バルブを閉じる制御を行う第2制御部と、
前記圧力調整器と前記送液器とを連通して前記送液器の内部圧力を上昇させるために前記第3バルブを開く制御を行う第3制御部と、を含むことを特徴とするアイスリンクの冷却設備。
【請求項3】
前記圧力調整器の液レベルを検出する液レベル計をさらに備え、
前記制御装置の前記第2制御部は、前記液レベル計の検出値が設定値以上となったら前記圧力調整器の前記内部圧力を上昇させる制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項に記載のアイスリンクの冷却設備。
【請求項4】
前記圧力調整器の内部圧力を検出する圧力計をさらに備え、
前記制御装置の前記第3制御部は、前記圧力計の検出値が設定値以上となったら前記送液器の内部圧力を上昇させる制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のアイスリンクの冷却設備。
【請求項5】
アイスリンクの底部に敷設された冷却管群を流れるCOブラインの潜熱を用いて、前記アイスリンクを冷却設備によって冷却するように構成されたアイスリンクの冷却方法であって、
前記冷却設備は、前記COブラインを貯留する受液器と、圧縮機及び凝縮器を含む冷凍サイクルを形成し、前記COブラインのうちCOガスを冷却して液化する冷凍装置と、前記受液器に貯留されたCOブラインを前記冷却管群に供給するための循環ユニットと、を備え、
前記循環ユニットの圧力調整器の容器内に前記COブラインのうちCO液を貯留するCO液貯留ステップと、
前記圧力調整器の前記容器に貯留された前記CO液の少なくとも一部を前記圧縮機の廃熱によってガス化して該圧力調整器の内部圧力を上昇させる圧力調整ステップと、
前記受液器からの前記CO液が貯留された送液器と前記圧力調整器とを連通させることによって前記送液器を前記冷却管群よりも高圧に維持し、前記送液器と前記冷却管群との圧力差を利用して前記冷却管群に前記CO液を強制循環させる送液ステップと、を備え
前記圧力調整ステップでは、
前記冷凍サイクルにおける冷媒循環ラインのうち前記圧縮機の下流側且つ前記凝縮器の上流側の部位から、前記圧力調整器の容器内に設けられた熱交換器に高温の冷媒を導き、
前記熱交換器において、前記圧縮機で圧縮された前記高温の冷媒と、前記圧力調整器の前記容器内の前記CO液とを熱交換し、
前記熱交換器を通過した前記高温の冷媒を前記凝縮器に戻す
ことを特徴とするアイスリンクの冷却方法。
【請求項6】
アイスリンクの底部に敷設された冷却管群と、
前記冷却管群を流れるCOブラインの潜熱を用いて、前記アイスリンクを冷却するように構成された請求項1乃至4の何れか一項に記載の冷却設備と
備えることを特徴とするアイスリンク設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスリンクの冷却に用いられるアイスリンクの冷却設備及び冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アイススケートなどに利用されるアイスリンクには、リンク形成時の製氷又は氷温調整に用いられる冷却設備が併設されている。アイスリンクの冷却設備は、特許文献1(特開平09−303920号公報)等に開示されるように、アイスリンクの基盤となる床部に複数の冷却管を敷設し、この冷却管にブラインクーラ等の冷凍装置で冷却したブラインを循環させてアイスリンク内を冷却し、製氷又は氷温調整を行うようになっている。また、特許文献2(国際公開第2011/129035号)には、均一な温度でアイスリンクを冷却可能な技術として、COブラインの蒸発潜熱を利用してアイスリンクを冷却する技術が開示されている。この冷却装置においては、ポンプを用いてCOブラインをアイスリンクに供給する構成となっている。
【0003】
こういった冷却装置においても、近年、エネルギー利用に伴うコスト削減及び環境への負荷の削減を目的として、省エネルギー化が推進されている。アイスリンクに適用したものではないが、例えば特許文献3(実開平06−40771号公報)には、冷却装置におけるポンプ動力を削減するために、機械式動力を用いずに冷媒を強制循環させるようにした構成が開示されている。具体的には、冷凍機からの液体冷媒を冷媒貯留容器に流れ込ませ、該液体冷媒をヒータで加熱することによって上昇する冷媒貯留容器内の圧力を利用して冷媒を循環させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−303920号公報
【特許文献2】国際公開第2011/129035号
【特許文献3】実開平06−40771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、近年はアイスリンクの冷却設備においても省エネルギー化の要求が高まっている。特許文献3に記載される冷却装置では、ポンプ動力を削減できるもののヒータを新たに設置する必要があり、ヒータのランニングコストが上乗せされるため、大きな省エネルギー効果が得られるとは言い難い。また、特許文献3に記載される冷却装置はアイスリンクに適用したものではないため、アイスリンクに適した省エネルギーの冷却設備が求められている。
【0006】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、上述の事情に鑑み、ポンプ動力を削減し、優れた省エネルギー性を備えたアイスリンクの冷却設備及び冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態に係るアイスリンクの冷却設備は、
アイスリンクの底部に敷設された冷却管群を流れるCOブラインの潜熱を用いて、前記アイスリンクを冷却するように構成されたアイスリンクの冷却設備であって、
前記COブラインを貯留する受液器と、
圧縮機及び凝縮器を含む冷凍サイクルを形成し、前記COブラインのうちCOガスを冷却して液化する冷凍装置と、
前記受液器に貯留されたCOブラインを前記冷却管群に供給するための循環ユニットと、を備え、
前記循環ユニットは、
前記COブラインのうちCO液を貯留し、該CO液の少なくとも一部を前記圧縮機の廃熱によってガス化して内部圧力を上昇するように構成された圧力調整器と、
前記受液器からの前記CO液が貯留され、前記圧力調整器と連通されることによって前記冷却管群よりも高圧に維持され、前記冷却管群との圧力差を利用して前記CO液を前記冷却管群に強制循環させる送液器と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記アイスリンクの冷却設備では、圧力調整器内のCO液を圧縮機の廃熱によって加熱し、圧力調整器の内部圧力を上昇させた後、該圧力調整器の内部空間と送液器の内部空間とを連通することによって送液器の内部圧力も上昇させる。これにより、送液器と冷却管群との間に圧力差が生じ、この圧力差によって送液器内のCO液を強制的に冷却管群へ供給することができる。このように、機械的なポンプを用いなくてもCOブラインを冷却管群に循環させることができ、さらに圧縮機の廃熱を用いて圧力調整器の内部圧力を上昇させる構成であるためヒータが不要で、さらなるランニングコストの削減が可能となる。よって、優れた省エネルギー性を備えたアイスリンクの冷却設備を提供できるものである。
【0009】
一実施形態では、前記循環ユニットは、前記圧縮機で圧縮された高温の冷媒と、前記圧力調整器内の前記CO液とを熱交換することによって前記CO液を加熱する熱交換器を含む。
このように、圧縮機で圧縮された高温の冷媒が循環して圧力調整器内のCO液を加熱する熱交換器を有することによって、圧力調整器内のCO液を効果的に加熱することができる。また、加熱に用いられた冷媒を冷凍装置、特に凝縮器に戻すことによって、凝縮器で必要とされる冷却エネルギーの削減も可能となり、より一層省エネルギー化を図ることができる。
【0010】
幾つかの実施形態において、
前記循環ユニットは、
前記冷凍装置から前記圧力調整器へ前記CO液を供給する加圧用CO送りラインと、
前記加圧用CO送りラインに設けられた第1バルブと、
前記圧縮機で圧縮された冷媒を前記熱交換器に供給する冷媒供給ラインと、
前記冷媒供給ラインに設けられた第2バルブと、
前記圧力調整器と前記送液器とを接続する均圧化ラインと、
前記均圧化ラインに設けられた第3バルブと、
前記第1バルブ、前記第2バルブ及び前記第3バルブを制御するように構成された制御装置と、を備えており、
前記制御装置は、
前記圧力調整器に前記CO液を供給するために前記第1バルブを開くとともに前記第2バルブ及び第3バルブを閉じる制御を行う第1制御部と、
前記圧力調整器の前記内部圧力を上昇させるために前記第2バルブを開くとともに前記第1バルブ及び第3バルブを閉じる制御を行う第2制御部と、
前記圧力調整器と前記送液器とを連通して前記送液器の内部圧力を上昇させるために前記第3バルブを開く制御を行う第3制御部と、を含む。
これにより、圧力調整器へのCO液の供給、圧力調整器及び送液器の圧力調整のそれぞれを、制御装置による各バルブの開閉によって実現できる。
【0011】
一実施形態では、前記圧力調整器の液レベルを検出する液レベル計をさらに備え、
前記制御装置の前記第2制御部は、前記液レベル計の検出値が設定値以上となったら前記圧力調整器の前記内部圧力を上昇させる制御を行うように構成されている。
また、一実施形態では、前記圧力調整器の内部圧力を検出する圧力計をさらに備え、
前記制御装置の前記第3制御部は、前記圧力計の検出値が設定値以上となったら前記送液器の内部圧力を上昇させる制御を行うように構成されている。
これにより、第2制御部又は第3制御部において各バルブを適正なタイミングで開閉することが可能となる。
【0012】
本発明の幾つかの実施形態に係るアイスリンクの冷却方法は、
アイスリンクの底部に敷設された冷却管群を流れるCOブラインの潜熱を用いて、前記アイスリンクを冷却するように構成されたアイスリンクの冷却方法であって、
前記COブラインを貯留する受液器と、圧縮機及び凝縮器を含む冷凍サイクルを形成し、前記COブラインのうちCOガスを冷却して液化する冷凍装置と、前記受液器に貯留されたCOブラインを前記冷却管群に供給するための循環ユニットと、を備え、
前記循環ユニットの圧力調整器に前記COブラインのうちCO液を貯留するCO液貯留ステップと、
前記圧力調整器に貯留された前記CO液の少なくとも一部を前記圧縮機の廃熱によってガス化して該圧力調整器の内部圧力を上昇させる圧力調節ステップと、
前記受液器からの前記CO液が貯留された送液器と前記圧力調整器とを連通させることによって前記送液器を前記冷却管群よりも高圧に維持し、前記送液器と前記冷却管群との圧力差を利用して前記冷却管群に前記CO液を強制循環させる送液ステップと、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記アイスリンクの冷却方法によれば、圧力調整ステップにおいて、圧力調整器内のCO液を圧縮機の廃熱によって加熱し、圧力調整器の内部圧力を上昇させた後、送液ステップにおいて該圧力調整器の内部空間と送液器の内部空間とを連通することによって送液器の内部圧力も上昇させる。これにより、送液器と冷却管群との間に圧力差が生じ、この圧力差によって送液器内のCO液を強制的に冷却管群へ供給することができる。このように、機械的なポンプを用いなくてもCOブラインを冷却管群に循環させることができ、さらに圧縮機の廃熱を用いて圧力調整器の内部圧力を上昇させる構成であるためヒータが不要で、さらなるランニングコストの削減が可能となる。
【0014】
本発明の幾つかの実施形態に係るアイスリンク設備は、
アイスリンクの底部に敷設された冷却管群と、
前記冷却管群を流れるCOブラインの潜熱を用いて、前記アイスリンクを冷却するように構成された冷却設備と、を備え、
前記冷却設備は、
前記COブラインを貯留する受液器と、
圧縮機及び凝縮器を含む冷凍サイクルを形成し、前記COブラインのうちCOガスを冷却して液化する冷凍装置と、
前記受液器に貯留されたCOブラインを前記冷却管群に供給するための循環ユニットと、を有しており、
前記循環ユニットは、
前記COブラインのうちCO液を貯留し、該CO液の少なくとも一部を前記圧縮機の廃熱によってガス化して内部圧力を上昇するように構成された圧力調整器と、
前記受液器からの前記CO液が貯留され、前記圧力調整器と連通されることによって前記冷却管群よりも高圧に維持され、前記冷却管群との圧力差を利用して前記CO液を前記冷却管群に強制循環させる送液器と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
以上記載のように、本発明の幾つかの実施形態によれば、機械的なポンプを用いなくてもCOブラインを冷却管群に循環させることができ、さらに圧縮機の廃熱を用いて圧力調整器の内部圧力を上昇させる構成であるためヒータが不要で、さらなるランニングコストの削減が可能となる。よって、優れた省エネルギー性を備えたアイスリンクの冷却設備を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るアイスリンクの冷却設備の全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係るアイスリンクの冷却設備の制御装置を含む具体的な構成例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るアイスリンクの冷却方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0018】
最初に、図1及び図2を参照して、一実施形態に係るアイスリンク1の冷却設備100の全体構成について説明する。なお、図1は、本発明の一実施形態に係るアイスリンク1の冷却設備100の全体構成図である。図2は、本発明の一実施形態に係るアイスリンクの冷却設備の制御装置を含む具体的な構成例を示す図である。
【0019】
一実施形態に係るアイスリンク1の冷却設備100は、アイスリンク1を形成するための冷却管群2と、COブラインを冷却して液化する冷凍装置10と、COブラインを貯留するための受液器18と、圧力差によってCOブラインを循環させるための循環ユニット20と、COブラインが循環する循環ライン30と、を備える。なお、本実施形態に適用できるアイスリンク1は、スケートリンク、カーリング用リンク、アイスホッケー用リンク等のアイスリンク全般である。
【0020】
冷却管群2は、アイスリンク1の底部(床部)に配設された複数の冷却管を含む。冷却管は、例えば、断面が円形、楕円形又は長円形の管であってもよい。また、複数の冷却管が平行に配設され、伝熱性を向上するために複数の冷却管同士が互いに高熱伝導体によって連結されていてもよい。複数の冷却管は、両端がそれぞれヘッダによって連結され、両端のヘッダを介して循環ライン30に接続されていてもよい。そして、冷却管群2内を通流するCOブライン(CO液)の蒸発潜熱を利用してアイスリンク1を冷却し、アイスリンク1の水を氷結させて氷を形成したり、氷結した氷の温度調整を行うようになっている。
【0021】
また、アイスリンク1の下部が断熱構造を有していてもよい。例えば、アイスリンク1の下部が、断熱材やコンクリートが積層された断熱構造となっており、これによりアイスリンク1の冷熱を蓄熱できるとともに、アイスリンク1下方の基礎の凍結によるアイスリンク1の凍上防止に寄与する。
【0022】
循環ライン30は、冷却管群2に接続されて、COブラインが循環するように構成されている。循環ライン30は、受液器18から循環ユニット20の送液器22へCOブラインのうちCO液を供給する第1CO送りライン31と、送液器22から冷却管群2へCO液を供給する第2CO送りライン34と、冷却管群2から受液器18へ少なくともCOガス(例えばCOガスとCO液の気液混合体)を返送するCO戻りライン34と、を含む。
【0023】
受液器18は、COブラインを貯留するように構成されている。受液器18に貯留されるCOブラインは、主として冷凍装置10で液化されたCO液であるが、冷却管群2から受け入れたCOガス及びCO液を含む気液混合体を含んでいてもよい。より具体的な構成例として、受液器18の上部には再液化送りライン35が接続されており、再液化送りライン35から受液器18内のCOガスが抜き出されて冷凍装置10(例えば後述する再液化器14)に送られるようになっている。また、受液器18の下部には再液化戻りライン36が接続されており、冷凍装置10で再液化されたCO液が受液器18に戻されるようになっている。
【0024】
冷凍装置10は、COブラインを冷却して液化するように構成されている。一実施形態において、冷凍装置10は、アンモニア冷媒が循環するアンモニア冷凍サイクルと、COブラインとアンモニア冷媒とを熱交換し、アンモニア冷媒によりCOブラインを冷却して再液化する再液化器14と、を含んでいる。アンモニア冷凍サイクルは、圧縮機(冷凍機)11と、凝縮器12と、膨張弁13と、蒸発器としての再液化器14とが、冷媒ライン15によって順に接続された閉回路を形成して構成される。図1に示す例では、凝縮器12には、クーリングタワー16で冷却されたブラインがポンプ17により循環するようになっている。クーリングタワー16は、外気を取り込むファンを備えた密閉式冷却塔であってもよい。その場合、クーリングタワー16内を流れるブラインを外気で冷却するようになっている。なお、凝縮器12は、上記したような水冷式凝縮器に限定されるものではなく、他のタイプの凝縮器であってもよい。例えば、アンモニア冷媒が通流する冷媒管コイルを備え、ファンによって外気を取り込んでアンモニア冷媒を冷却するとともに冷媒管コイルに水を噴霧して冷却するように構成された蒸発式凝縮器等を用いることができる。
このように、冷凍装置10がアンモニア冷凍サイクルを含む構成とすれば、COブラインを効率的に冷却することができる。
【0025】
循環ユニット20は、圧力調整器21と、送液器22と、各種のバルブと、を含む。
圧力調整器21は、圧縮機11の廃熱によってCO液を加熱し、内部圧力を上昇させるように構成されている。例えば、圧力調整器21には、再液化戻りライン36から分岐した加圧用CO送りライン37が接続され、該加圧用CO送りライン37を介して再液化器14で再液化されたCO液が圧力調整器21に供給される。加圧用CO送りライン37には、開閉制御される第1バルブ51が設けられており、圧力調整器21へのCO液の供給が調節されるようになっている。加圧用CO送りライン37には、第1バルブ51の下流側(圧力調整器21側)に、逆止弁52が設けられていてもよく、これにより圧力調整器21の内部圧力が高くなった場合であっても、圧力調整器21から再液化戻りライン36側へCO液が逆流することを防止できる。なお、圧力調整器21は再液化器14よりも低所に位置していてもよく、これによりポンプを用いずに再液化器14から圧力調整器21へCO液を流入させることができる。
【0026】
また、圧力調整器21と再液化送りライン35とが加圧用CO戻りライン38で接続されており、該加圧用CO戻りライン38を介して、圧力調整器21で発生したCOガスが再液化送りライン35へ戻されるようになっている。加圧用CO戻りライン38には、開閉制御される第5バルブ53が設けられており、再液化送りライン35側へ戻すCOガスが調整されるようになっている。さらに、圧力調整器21と加圧用CO戻りライン38とを接続する第1バイパスライン39が設けられ、該第1バイパスライン39に第1リリーフ弁54が設けられていてもよい。そして、圧力調整器21の内部圧力が許容値を超えて異常圧力となった場合に、第1リリーフ弁54が開いて第1バイパスライン39を介して異常圧力を系内に開放し、循環ユニット20における異常圧力を防止するようになっている。
【0027】
また、圧力調整器21には、圧縮機11の廃熱を用いて該圧力調整器21内のCO液を加熱するように構成された熱交換器25が設けられている。具体的に、熱交換器25の入口側は、圧縮機11と凝縮器12の間の冷媒ライン15から分岐した冷媒送りライン41に接続され、出口側は凝縮器12に繋がる冷媒戻りライン42に接続されている。また、冷媒送りライン41には第2バルブ55が設けられ、冷媒戻りライン42には第2バルブ56が設けられている。圧力調整器21における圧力調整時には、第2バルブ55,56が開かれて、圧縮機11からの高温高圧のアンモニア冷媒ガスが冷媒送りライン41を介して熱交換器25に流入し、該熱交換器25にて高温高圧のアンモニア冷媒ガスと圧力調整器21内のCO液とを熱交換するようになっている。熱交換後のアンモニア冷媒は、ガスと液体の気液混合体として冷媒戻りライン42を介して凝縮器12に戻される。これにより、圧力調整器21内のCO液は少なくとも一部がガス化し、該圧力調整器21の内部圧力が上昇するようになっている。このように、加熱に用いられた冷媒を冷凍装置10、特に凝縮器12に戻すことによって、凝縮器12で必要とされる冷却エネルギーの削減も可能となり、より一層省エネルギー化を図ることができる。
【0028】
送液器22は、受液器18からCO液を受け入れて、圧力調整器21と連通されることで第2CO送りライン34とCO戻りライン32との間に生じた圧力差によって、CO液を冷却管群2へ強制的に供給するように構成されている。具体的には、送液器22は、第1CO送りライン31によって受液器18と接続され、該受液器18内のCO液が供給されるように構成されている。第1CO送りライン31には、開閉制御される第4バルブ58が接続され、受液器18から送液器22へのCO液の供給が調整されるようになっている。第1CO送りライン31には、第4バルブ58の下流側(送液器22側)に、逆止弁59が設けられていてもよく、これにより送液器22の内部圧力が高くなった場合であっても、送液器22から受液器18側へCO液が逆流することを防止できる。また、送液器22は、CO戻りライン46によっても受液器18と接続されており、送液器22内のCOガスがCO戻りライン46を介して受液器18へ戻されるようになっている。CO戻りライン46には、開閉制御される第6バルブ60が設けられており、受液器18へ戻されるCOガスが調整されるようになっている。さらに、送液器22とCO戻りライン46とを接続する第2バイパスライン47が設けられ、該第2バイパスライン47に第2リリーフ弁61が設けられていてもよい。そして、送液器22の内部圧力が許容値を超えて異常圧力となった場合に、第2リリーフ弁61が開いて第2バイパスライン47を介して異常圧力を系内に開放し、循環ユニット20における異常圧力を防止するようになっている。
【0029】
圧力調整器21と送液器22とは均圧化ライン45によって接続されている。均圧化ライン45には開閉制御される第3バルブ57が設けられており、第3バルブ57を開くことによって、圧力調整器21と送液器22の圧力が均圧化する構成となっている。すなわち、圧力調整器21の内部圧力を上げた後、第3バルブ57を開くことによって圧力調整器21内の圧力も上昇し、該圧力調整器21内のCO液が第2CO送りライン34を介して冷却管群2へ強制的に供給されるようになっている。
【0030】
また、上記構成を有する冷却設備100は、以下の構成をさらに備えていてもよい。
冷却設備100は、上述の各種バルブを開閉制御するための制御装置70と、圧力調整器21内の液レベルを検出するための第1液レベル計63と、圧力調整器21の内部圧力を検出するための第1圧力計64と、送液器22内の液レベルを検出するための第2液レベル計65と、送液器22の内部圧力を検出するための第2圧力計66と、をさらに備えている。
【0031】
制御装置70は、主に、第1制御部71、第2制御部72及び第3制御部73を含んでいる。
第1制御部71は、圧力調整器21にCO液を供給するために第1バルブ51及び第5バルブ53を開くとともに第2バルブ55,56及び第3バルブ57を閉じる制御を行うように構成される。
第2制御部72は、圧力調整器21の内部圧力を上昇させるために第2バルブ55,56を開くとともに第1バルブ51及び第3バルブ57を閉じる制御を行うように構成される。
第3制御部73は、圧力調整器21と送液器22とを連通して送液器22の内部圧力を上昇させるために第3バルブ57を開く制御を行うように構成される。
また、受液器18から送液器22にCO液を供給するために第4バルブ58及び第6バルブ60を開く制御を行うように構成された第4制御部(不図示)を備えていてもよい。
【0032】
ここで、図3を参照して、一実施形態に係るアイスリンク1の冷却方法について説明する。なお、図3は、本発明の一実施形態に係るアイスリンク1の冷却方法のフローチャートである。
まず、制御装置70において、第2バルブ55、第3バルブ57、第4バルブ58及び第6バルブ60を閉じた状態で、第1バルブ51及び第5バルブ53を開く制御を行うことによって、再液化器14から圧力調整器21にCO液が供給される(S1)。このとき、第1液レベル計63により圧力調整器21の液レベルを検出し、第1液レベル計63の検出値が液量設定値L1以上であるか否かを判定する(S2)。第1液レベル計63の検出値が液量設定値L1以上となったら、制御装置70において、第1バルブ51及び第5バルブ53を閉じ、第4バルブ58及び第6バルブ60を開く制御を行うことによって、再液化器14から圧力調整器21へのCO液の供給を停止し、受液器18から送液器22へのCO液の供給を開始する(S3)。このとき、第2バルブ55,56及び第3バルブ57は閉じた状態を維持する。ここで、第2液レベル計65により送液器22の液レベルを検出し、第2液レベル計65の検出値が液量設定値L2以上であるか否かを判定する(S4)。第2液レベル計65の検出値が液量設定値L2以上となったら、制御装置70において、第4バルブ58及び第6バルブ60を閉じ、第2バルブ55,56を開く制御を行って、受液器18から送液器22へのCO液の供給を停止し、熱交換器25への冷媒の循環を開始して圧力調整器21内のCO液の加熱を開始する(S5)。これにより、圧力調整器21の内部圧力が上昇する。
【0033】
ここで、第1圧力計64により圧力調整器21の内部圧力を検出し、第1圧力計64の検出値が圧力設定値P1以上であるか否かを判定する(S6)。第1圧力計64の検出値が圧力設定値P1以上となったら、制御装置70において、第3バルブ57を開く(S7)。これにより圧力調整器21と送液器22が連通した状態となり、圧力調整器21の内部圧力と送液器22の内部圧力とが均圧化される。均圧化によって圧力調整器21の内部圧力は低下し、送液器22の内部圧力は上昇する。送液器22の内部圧力の上昇によって、送液器22から冷却管群2へCO液が強制的に送られる。冷却管群2でアイスリンク1の冷却に用いられ、少なくとも一部がガス化したCO液とCOガスの気液混合体は、CO戻りライン32を介して受液器18に戻される。
循環ライン30におけるCOブラインの循環中、第2液レベル計65によって送液器22の液レベルを検出し、第2液レベル計65の検出値が液量設定値L3以下であるか否かを判定する(S8)。第2液レベル計65の検出値が液量設定値L3以下となったら、制御装置70において、第2バルブ55,56及び第3バルブ57を閉じる制御を行って、冷却管群2へのCO液の供給を停止する(S7)。なお、液量設定値L1,L2,L3は予め記憶部(不図示)に記憶させておいてもよい。
【0034】
そして、制御装置70において、第5バルブ53及び第6バルブ60を開く制御を行って、圧力調整器21及び送液器22の圧力、すなわち第1圧力計64及び第2圧力計66の検出値と、受液器18の圧力とを均圧化する。圧力調整器21及び送液器22の圧力と受液器18の圧力とがバランスした時点で、制御装置70において第1バルブ51と第4バルブ58とを開く制御を行う。
上記制御をCO液の供給終了の指令が入力されるまで繰り返し行う。
【0035】
以上説明したように、上述の実施形態によれば、機械的なポンプを用いなくてもCOブラインを冷却管群2に循環させることができ、さらに圧縮機11の廃熱を用いて圧力調整器21の内部圧力を上昇させる構成であるためヒータが不要で、さらなるランニングコストの削減が可能となる。よって、優れた省エネルギー性を備えたアイスリンクの冷却設備を提供できるものである。
【0036】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 アイスリンク
2 冷却管群
10 冷凍装置
11 圧縮機(冷凍機)
12 凝縮器
13 膨張弁
14 再液化器
15 冷媒ライン
16 クーリングタワー
17 ポンプ
18 受液器
20 循環ユニット
21 圧力調整器
22 送液器
25 熱交換器
30 循環ライン
31 第1CO送りライン
32 CO戻りライン
34 第2CO送りライン
35 再液化送りライン
36 再液化戻りライン
37 加圧用CO送りライン
38 加圧用CO戻りライン
39 第1バイパスライン
41 冷媒送りライン
42 冷媒戻りライン
45 均圧化ライン
46 CO戻りライン
47 第2バイパスライン
51 第1バルブ
52,59 逆止弁
53 第5バルブ
54 第1リリーフ弁
55,56 第2バルブ
57 第3バルブ
58 第4バルブ
60 第6バルブ
63 第1液レベル計
64 第1圧力計
65 第2液レベル計
66 第2圧力計
70 制御装置
71 第1制御部
72 第2制御部
73 第3制御部
図1
図2
図3