特許第6370068号(P6370068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6370068
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】熱反応性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/18 20060101AFI20180730BHJP
   C09J 109/02 20060101ALI20180730BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180730BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20180730BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   C08G59/18
   C09J109/02
   C09J11/06
   C09J163/00
   B32B27/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-53897(P2014-53897)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-174959(P2015-174959A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100143856
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 廣己
(72)【発明者】
【氏名】板野 和幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 尭大
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋介
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−236879(JP,A)
【文献】 特開昭59−004657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)、(B)及び(C)を必須成分とし、且つ(A)と(B)の合計量に対する(B)の比が50質量%より多く85質量%以下であり、
前記(A)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂が、下記の一般式(1−1)〜(1−3)の何れかで表されるユニットを含有する樹脂であることを特徴とする熱反応性樹脂組成物。
(A)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂
(B)(A)成分を除く多官能エポキシ樹脂
(C)少なくとも1個以上の活性水素と、少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンと、酸性化合物とを反応させて得られる反応生成物からなる硬化剤(C−1)、又はシアネートエステル型硬化剤(C−2)
【化1】
(式中、Qは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、塩素原子及び弗素原子から選択される1種又は2種以上の原子で分断或いは置換されてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を表し、l、m及びnはそれぞれ独立して2〜1000の数を表す。)
【請求項2】
更に、(D)溶剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱反応性樹脂組成物。
【請求項3】
更に、(E)カップリング剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱反応性樹脂組成物。
【請求項4】
エンジニアリングプラスチックの接着に使用されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の熱反応性樹脂組成物からなる接着剤。
【請求項5】
エンジニアリングプラスチックが液晶ポリマーであることを特徴とする請求項4に記載の接着剤。
【請求項6】
エンジニアリングプラスチックと無機基材との接着に使用されることを特徴とする請求項4又は5に記載の接着剤。
【請求項7】
請求項6に記載の接着剤を使用して作製したエンジニアリングプラスチックを支持体とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱反応性樹脂組成物に関する。より詳しくは、エンジニアリングプラスチックの接着に好適な熱反応性樹脂組成物に関し、特に、液晶ポリマーと銅箔との接着に好適な熱反応性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、プリント基板等の表面実装基板に液晶ポリマー等のエンジニアリングプラスチックが用いられているが、この実装工程においては、300℃以上のはんだ耐熱性が要求され、エンジニアリングプラスチックに用いられる接着剤においてもはんだ耐熱性が要求されている。こうした要求を受けて、耐熱性の高い接着剤が開発されてきた(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
一方、近年多用されているフレキシブルプリント基板は、柔軟性があり大きく変形可能な基板であるが、変形箇所において接着剤のはがれや破損が発生しやすいため、接着剤に高い接着強度が必要となる。そのため市場からは、高い耐熱性と高い接着強度を両立する接着剤が求められている。
【0004】
特許文献1には、高い耐熱性を持つ接着剤が開示されている。しかしながら接着強度に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−082836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、高い熱反応性及び高い接着強度を持つ熱硬化性の樹脂組成物及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者等は、上記目的を達成するために、鋭意検討した結果、高い熱反応性及び高い接着強度を持つ熱硬化性の樹脂組成物を見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、下記の(A)、(B)及び(C)を必須成分とし、且つ(A)と(B)の合計量に対する(B)の比が50質量%より多く85質量%以下であることを特徴とする熱反応性樹脂組成物を提供するものである。
(A)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂
(B)(A)成分を除く多官能エポキシ樹脂
(C)少なくとも1個以上の活性水素と、少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンと、酸性化合物とを反応させて得られる反応生成物からなる硬化剤(C−1)、又はシアネートエステル型硬化剤(C−2)
また、本発明は、エンジニアリングプラスチックの接着に使用されることを特徴とする上記熱反応性樹脂組成物からなる接着剤を提供するものである。
また、本発明は、エンジニアリングプラスチックと無機基材との接着に使用されることを特徴とする上記接着剤を使用して作製したエンジニアリングプラスチックを支持体とする積層体を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果は、高い熱反応性及び高い接着強度を持つ熱硬化性の樹脂組成物及びその硬化物を提供したことにある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の熱反応性樹脂組成物は、下記の(A)、(B)及び(C)を必須成分とするものである。
(A)アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂
(B)(A)成分を除く多官能エポキシ樹脂
(C)少なくとも1個以上の活性水素と、少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンと、酸性化合物とを反応させて得られる反応生成物からなる硬化剤(C−1)、又はシアネートエステル型硬化剤(C−2)
以下、各成分について順に説明する。
【0010】
<(A)成分>
上記のアクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂(A)は、分子内にエポキシ基を2個以上有し、骨格がアクリロニトリルブタジエンゴムであればよい。骨格を形成するアクリロニトリルブタジエンゴム骨格としては、例えば、アクリロニトル及びブタジエンとを反応させたアクリロニトリルブタジエンゴムに、アクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基を有するモノマーを共重合させた共重合体が挙げられる。当該共重合体の分子量やモノマー重合比は特に制限されるものではないが、上記の共重合体であるアクリロニトリルブタジエンゴム骨格にエポキシ化合物を反応させたものが、本発明で用いられるアクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂(A)となる。
【0011】
上記のアクリロニトリルブタジエンゴム骨格に反応させるエポキシ化合物は、エポキシ基を2つ含む化合物であればその種類を選ばないが、原料の入手が容易なことから、以下の一般式(2)又は(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0012】
【化1】
(式中、R5は、単結合、−O−CH2−CO−又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、該アルキレン基のメチレン基はメチル基で置換されてもよく、R3及びR4はそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、p及びqはそれぞれ独立して0〜9の数を表す。)
【0013】
【化2】
(式中、R40及びR42はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、x及びyはそれぞれ独立して0〜5の数を表し、R41は以下の一般式(4)、一般式(5)及び式(6)の何れかを表す。)
【0014】
【化3】
(式中、R6〜R22はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Z1及びZ2はそれぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、該アルキレン基のメチレン基はメチル基又はハロゲン原子で置換されてもよく、r及びsはそれぞれ独立して0〜5の数を表す。)
【0015】
【化4】
(式中、R23は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R24〜R39はそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、Z3及びZ4はそれぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、該アルキレン基のメチレン基は直鎖であっても分岐鎖を有していても環状であってもよく、メチル基で置換されてもよく、−CO−O−又は−O−CO−で中断されてもよく、t及びvはそれぞれ独立して0〜5の数を表す。)
【0016】
【化5】
【0017】
上記一般式(2)のR5は、単結合、−O−CH2−CO−又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、このアルキレン基のメチレン基はメチル基で置換されてもよい。こうした炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(2)のR3及びR4はそれぞれ独立してハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、p及びqはそれぞれ独立して0〜9の数を表す。
【0019】
上記一般式(3)のR40及びR42は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基等が挙げられる。またx及びyはそれぞれ独立して0〜5の数を表す。
【0020】
上記一般式(3)のR41は、上記一般式(4)〜(6)の何れかの基を表す。一般式(4)のR6〜R22はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキレン基のメチレン基はメチル基又はハロゲン原子で置換されてもよい。こうした炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、クロロエチレン基、フルオロエチレン基、1−クロロプロピレン基、2−フルオロプロピレン基等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(4)のZ1及びZ2はそれぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、該アルキレン基のメチレン基はメチル基又はハロゲン原子で置換されてもよい。こうした炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、クロロエチレン基、フルオロエチレン基、1−クロロプロピレン基、2−フルオロプロピレン基等が挙げられる。また、一般式(4)のr及びmはそれぞれ独立して0〜5の数を表す。
【0022】
上記一般式(5)のR23は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0023】
上記一般式(5)のR24〜R39はそれぞれ独立してハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0024】
上記一般式(5)のZ3及びZ4はそれぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、該アルキレン基のメチレン基は直鎖であっても分岐鎖を有していても環状であってもよく、メチル基で置換されてもよく、−CO−O−又は−O−CO−で中断されてもよい。こうした炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、クロロエチレン基、フルオロエチレン基、1−クロロプロピレン基、2−フルオロプロピレン基等が挙げられる。また、一般式(5)のs及びtはそれぞれ独立して0〜5の数を表す。
【0025】
またアクリロニトリルブタジエンゴム骨格に反応させるエポキシ化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂(A)は、上記の方法で製造したものであれば種類を選ばないが、上記の好ましいエポキシ化合物を用いて反応したものが好ましく、下記の一般式(1−1)〜(1−3)の何れかで表されるユニットを含有する樹脂が本発明の樹脂組成物の接着性能が良好になることからより好ましい。
【0027】
【化6】
(式中、Qは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、塩素原子及び弗素原子から選択される1種又は2種以上の原子で分断或いは置換されてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を表し、l、m及びnはそれぞれ独立して2〜1000の数を表す。)
【0028】
上記一般式(1−3)のQは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、塩素原子及び弗素原子から選択される1種又は2種以上の原子で分断或いは置換されてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を表す。こうした炭素数1〜30の炭化水素基としては、公知の脂環族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、または脂肪族エポキシ樹脂からエポキシ基を除いた残基が挙げられる。
具体的には、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又はシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物、より具体的には、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等の脂環族エポキシ樹脂からエポキシ基を除いた残基や、
少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、より具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテルやエポキシノボラック樹脂等の芳香族エポキシ樹脂からエポキシ基を除いた残基や、
脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等、より具体的には、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル等や、更には、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン等の脂肪族エポキシ樹脂からエポキシ基を除いた残基が挙げられる。
上記一般式(1−1)のl、上記一般式(1−2)のm及び上記一般式(1−3)のnは、それぞれ独立して2〜1000の数を表す。
【0029】
本発明の熱反応性樹脂組成物において、(A)成分が、上記一般式(1−1)〜(1−3)の何れかで表されるユニットを含有する場合、(A)成分中における各ユニットの好ましい含有量は、以下の通りとなる。
上記一般式(1−1)で表されるユニット:5〜90質量%
上記一般式(1−2)で表されるユニット:5〜90質量%
上記一般式(1−3)で表されるユニット:5〜90質量%
【0030】
本発明の熱反応性樹脂組成物において、(A)成分の配合量は、好ましくは1質量%以上50質量%未満であり、より好ましくは15質量%50質量%未満である。(A)成分の含有量が1質量%未満であっても50質量%以上であっても接着性が低下する場合がある。
【0031】
<(B)成分>
上記の多官能エポキシ樹脂(B)としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂;クレゾールノボラックエポキシ樹脂;ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノール等の多官能型のエポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのポリエステルポリオールのポリグリシジルエーテル;脂肪族多価カルボン酸のポリグリシジルエステル;脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのポリエステルポリカルボン酸のポリグリシジルエステル;グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により得られるダイマー、オリゴマー、ポリマー; グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートと他のビニルモノマーとのビニル重合により得られるオリゴマー、ポリマー;エポキシ化植物油;エポキシ化植物油のエステル交換体;エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0032】
上記の脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上のポリオールが挙げられる。
【0033】
また、上記のアルキレンオキサイドとして、より具体的には、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。
【0034】
上記の脂肪族多価カルボン酸として、より具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、1,20−エイコサメチレンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ジカルボキシルメチレンシクロヘキサン、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸が挙げられる。
【0035】
上記の多官能エポキシ樹脂(B)の中でも、反応が速やかに進行し熱反応性が高いこのから、下記一般式(7)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。
【0036】
【化7】
(式中、Z5及びZ7は、それぞれ独立に、単結合、炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐アルキリデン基を表し、Z6は、単結合、炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐アルキリデン基、−O−、−S−、−SO2−、−SS−、−SO−、−CO−、−OCO−又は−CF2−を表し、該アルキリデン基中のメチレン鎖は、酸素原子で中断されていてもよい。)
【0037】
上記一般式(7)のZ5及びZ7は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐アルキリデン基を表す。炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐アルキリデン基としては、メチリデン(メチレン)、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン、イソブチリデン等が挙げられ、
上記一般式(7)のZ6は、単結合、炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐アルキリデン基、−O−、−S−、−SO2−、−SS−、−SO−、−CO−、−OCO−又は−CF2−を表し、該アルキリデン基中のメチレン鎖は、酸素原子で中断されていてもよい。炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐アルキリデン基としては、メチリデン(メチレン)、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン、イソブチリデン等が挙げられる。
【0038】
上記一般式(7)で表されるエポキシ樹脂としては、例えば、EP−4000S、EP−4080E、EP−4088S、EP−4901L、EPR−4033、EPR−1415−1(ADEKA社製);アラルダイトPY4122(ハンツマン社製)等の市販品を用いることもできる。
【0039】
本発明の熱反応性樹脂組成物において、上記の(A)成分と(B)成分は、(A)成分と(B)成分の合計量に対する(B)成分の比が50質量%より多く85質量%以下でなければならず、55〜80質量%が好ましく、60〜75質量%がより好ましい。上記の比が50質量%以下あるいは85質量%を超えると、接着強度が低下するため好ましくない。
尚、上記の(A)成分と(B)成分の合計量の配合量は、好ましくは5〜99.7質量%であり、より好ましくは50〜95質量%である。
【0040】
<(C)成分>
本発明に使用される硬化剤(C)は、少なくとも1個以上の活性水素と、少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンと、酸性化合物とを反応させて得られる反応生成物からなる硬化剤(C−1)、又はシアネートエステル型硬化剤(C−2)である。
【0041】
上記硬化剤(C−1)に用いられる、少なくとも1個以上の活性水素と少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンとしては、特に制限はないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、トリブチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、テトラブチレンペンタミン、N,N'−ジメチルエチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、フェニレンジアミン、4−アミノジフェニルアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、3,5−ジアミノクロロベンゼン、メラミン、ピペラジン、1−アミノエチルピペラジン、モノメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アミノフェニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリ−3−メチルプロピルイミン、ポリ−2−エチルプロピルイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等や、ビニルアミン、アリルアミン等の不飽和アミンと、ジメチルアクリルアミド、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸等及びその塩類等の、共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。これらポリアミンの中でも、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好ましく用いられる。
【0042】
更に上記の少なくとも1個以上の活性水素と少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンとしては、上記のポリアミンにエポキシ化合物を付加させた化合物が特に好ましく用いられる。
【0043】
上記のエポキシ化合物としては、脂環族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。これらエポキシ化合物は1種類又は2種類以上混合して使用される。
【0044】
上記脂環族エポキシ樹脂としては、例えば、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又はシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。具体的には、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0045】
上記脂環族エポキシ樹脂として好適に使用できる市販品としては、UVR−6100、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6200(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド2000、セロキサイド3000、サイクロマーA200、サイクロマーM100、サイクロマーM101、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリード401、エポリード403、ETHB、エポリードHD300(以上、ダイセル化学工業社製)、KRM−2110、KRM−2199(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。
上記脂環族エポキシ樹脂の中でも、シクロヘキセンオキシド構造を有するエポキシ樹脂が、硬化性(硬化速度)の点で好ましい。
【0046】
上記芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル等が挙げられ、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテルやエポキシノボラック樹脂等が挙げられる。
【0047】
更に、上記脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。具体的には、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル等が挙げられる。更に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0048】
上記芳香族又は脂肪族エポキシ樹脂として好適に使用できる市販品としては、エピコート801、エピコート828(以上、油化シェルエポキシ社製)、PY−306、0163、DY−022(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、KRM−2720、EP−4100、EP−4000、EP−4901、EP−4010、EP−4080、EP−4900、ED−505、ED−506(以上、ADEKA社製)、エポライトM−1230、エポライトEHDG−L、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF、エポライト4000、エポライト3002、エポライトFR−1500(以上、共栄社化学社製)、サントートST0000、YD−716、YH−300、PG−202、PG−207、YD−172、YDPN638(以上、東都化成社製)、TEPIC−S(日産化学社製)、エピクロンN−665、エピクロンN−740、エピクロンHP−7200、エピクロンHP-4032(以上、DIC社製)等が挙げられる。
【0049】
上記酸性化合物としては、フェノール樹脂、多価フェノール化合物、ポリカルボン酸等が挙げられる。前記フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類から合成され、その例としては、フェノール/ホルマリン樹脂、クレゾール/ホルマリン樹脂、ビスフェノールA(BPA)/ホルマリン樹脂、ビスフェノールF(BPF)/ホルマリン樹脂、アルキルフェノール/ホルマリン樹脂、又は上記の混合物等が挙げられ、特にフェノール又はクレゾールノボラック樹脂が好ましい。前記多価フェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール等が挙げられる。前記ポリカルボン酸としては、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジ酸、アゼライン酸等のジカルボン酸類が挙げられる。
【0050】
上記酸性化合物としては、ポリカルボン酸として、酸無水物とポリオールとの末端COOH付加物である末端COOHのエステル化合物を使用してもよく、例えば、無水フタール酸/エチレングリコール=2/1モル付加物、テトラヒドロフタリックアンハイドライド/プロピレングリコール=2/1モル付加物等を使用してもよい。
【0051】
上記酸性化合物としてフェノール樹脂又は多価フェノール化合物を用いる場合、その配合量は、上記エポキシ化合物とアミンの付加物1モルに対して、好ましくは0.20〜3.0モル当量、より好ましくは0.3〜1.2モル当量である。配合量が0.20モル当量未満であると貯蔵安定性が著しく劣り、また配合量が3.0モル当量を超えると相溶性、硬化性、物性が低下し、好ましくない。
【0052】
また、上記酸性化合物としてポリカルボン酸を用いる場合、その配合量は、上記エポキシ化合物とアミンの付加物1モルに対して、好ましくは0.01〜2.0モル、より好ましくは0.05〜1.0モルである。ポリカルボン酸の配合量が2.0モルを超えると硬化性が劣り、物性が著しく低下する。
【0053】
また、上記酸性化合物としてフェノール樹脂、多価フェノール化合物及びポリカルボン酸を併用する場合は、フェノール樹脂及び多価フェノール化合物の配合量は、上記エポキシ化合物とアミンの付加物1モルに対して、好ましくは0.3〜1.2モルであり、ポリカルボン酸の配合量は、上記エポキシ化合物とアミンの付加物1モルに対して、好ましくは0.05〜1.0モルである。
【0054】
本発明において、上記エポキシ化合物とアミンの付加物等の少なくとも1個以上の活性水素と少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンに対して、フェノール樹脂、多価フェノール及びポリカルボン酸をそれぞれ併用し反応させるか、又は、上記エポキシ化合物とアミンの付加物等とフェノール樹脂との反応物、上記エポキシ化合物とアミンの付加物等と多価フェノールとの反応物、及び上記エポキシ化合物とアミンの付加物等とポリカルボン酸との反応物を併用混合し、使用することも本発明に包含される。
【0055】
上記硬化剤(C−1)は、上記の少なくとも1個以上の活性水素と少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミン、例えば上記エポキシ化合物とアミンの付加物と、上記酸性化合物とを上述の配合量にて反応させることで得られる。この反応は、好ましくは温度80〜200℃で30分〜5時間行えばよい。
【0056】
本発明に使用することのできる硬化剤(C)は、上記の潜在性エポキシ硬化剤(C−1)以外に、シアネートエステル型硬化剤(C−2)も使用することができる。シアネートエステル型硬化剤(C−2)は、分子内に2以上のシアネートエステル基を持つ化合物であれば種類は問わないが、入手が容易であることから、下記の一般式(8)又は一般式(9)で表される化合物が好ましい。
【0057】
【化8】
(式中、R44は非置換又はフッ素置換の2価の炭化水素基を表し、R43及びR45はそれぞれ独立して、非置換又は1〜4個の炭素数1〜8のアルキル基で置換されているフェニレン基を表す。)
【0058】
【化9】
(式中、R46〜R48は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
【0059】
上記一般式(8)のR44は非置換又はフッ素置換の2価の炭化水素基を表す。非置換又はフッ素置換の2価の炭化水素基としては、後述する(10−1)〜(10−9)で表される基が挙げられる。
上記一般式(8)のR43及びR45はそれぞれ独立して、非置換又は1〜4個の炭素数1〜8のアルキル基で置換されているフェニレン基を表す。フェニレン基を置換する炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
上記一般式(9)のR46〜R48は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基等が挙げられる。
【0060】
また、上記一般式(8)又は(9)で表される化合物のシアネート基の一部がトリアジン環を形成したプレポリマーも、(C−2)成分として使用することができる。このようなプレポリマーとしては、例えば、上記一般式(8)の化合物の全部又は一部が3量化した化合物が挙げられる。
【0061】
上記一般式(8)又は(9)で表される化合物では、上記一般式(8)で表される化合物が好ましく、中でも、特に、下記一般式(10)で表される化合物を使用することが好ましい。
尚、これらのシアネートエステル型硬化剤(C−2)は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0062】
【化10】
(式中、R50〜R53はそれぞれ独立に、水素原子又は非置換若しくはフッ素置換のメチル基を表し、R49は以下の(10−1)〜(10−9)で表される基の何れかを表す。)
【0063】
【化11】
(R54及びR55は、それぞれ独立に、水素原子又は非置換若しくはフッ素置換のメチル基を表し、uは4〜12の整数を表す。)
【0064】
上記一般式(10)で表される化合物の中でも、特に4,4'−エチリデンビスフェニレンシアネート、2,2−ビス(4―シアナトフェニル)プロパン及びビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタンを使用することが好ましい。
【0065】
上記硬化剤(C)は、該硬化剤(C)と共に、酸無水物、ジシアンジアミド、メラミン、ヒドラジド、イミダゾール類、アルキル尿素類、グアナミン類等の従来の潜在性エポキシ硬化剤を使用することも可能である。
【0066】
上記硬化剤(C)の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.3〜150質量部であることが好ましく、5〜100質量部であるのがより好ましい。配合量が0.3質量部未満であると、未反応のグリシジル基の残存による硬化物のガラス転移温度の低下を生じ、耐熱、耐湿熱性の低下を生じる場合があり、150質量部を超えると、未反応のアミノ基の残存による硬化物のガラス転移温度の低下による耐熱、耐湿熱性の低下を引き起こす場合がある。
【0067】
更に、本発明の熱反応性樹脂組成物には、取り扱いを容易にするために溶剤を配合することが好ましい。溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;イソ−又はn−ブタノール、イソ−又はn−プロパノール、アミルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジオキサン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素等を使用することができる。なお、これらの溶剤は2種以上を併用することも可能である。
【0068】
上記の溶剤の使用量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対して、0〜200質量部使用すればよく、3〜100質量部使用することが好ましく、10〜50質量部使用することがより好ましい。200質量部を超えると揮発量が多くなって危険性や有害性が増大する場合がある。
【0069】
更に、本発明の熱反応性樹脂組成物には、接着強度を向上させ、耐湿信頼性が優れた熱反応性樹脂組成物を得るために、カップリング剤(E)を配合することが好ましい。カップリング剤(E)としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、 2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3− アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、 3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;イソプロピルトリ(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ジ−イソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、ジ−イソプロポキシビス(2,4−ペンタジオネート)チタニウム、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート等のTiカップリング剤;ジルコニウムアセテート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ジルコニウムラクテート等のZrカップリング剤が挙げられる。また、これらのカップリング剤(E)は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
上記カップリング剤(E)の配合量は、本発明の熱反応性樹脂組成物中、通常0.01質量%〜5質量%程度、好ましくは0.02質量%〜2質量%程度である。
【0071】
本発明の熱反応性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、その他の添加物を添加しても良い。このような添加物の例としては、例えば、顔料、レベリング剤、チクソ剤、消泡剤、導通材料、稀釈剤、難燃剤及びこれらに類似する物が挙げられる。これらの添加物の配合量は、本発明の熱反応性樹脂組成物全量に対して、合計で1〜10質量%となるように添加するのが好ましい。
【0072】
本発明の熱反応性樹脂組成物の用途は特に限定されず、接着剤、耐熱性樹脂、繊維強化プラスチック等の従来樹脂を使用している用途であればいずれの用途であっても使用するとができる。これらの中でも、接着剤として使用することが好ましい。具体的には、本発明の熱反応性樹脂組成物は精密部品等の接着機能に優れることから、携帯電話のカメラモジュールの他、フレキシブルプリント基板、カバーレイフィルムやTABテープ、タッチパネル用基板、ICカード、ICタグ用基板、電子ペーパー用基板、フレキシブルディスプレイ用基板、光学部品、液晶表示素子、流体素子、インクジェットノズル、精密加工部品等の接着剤として用いることが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下本発明を実施例及び比較例により、具体的に説明する。
【0074】
製造例1:A−1の製造
EP−4100L(二官能グリシジル型エポキシ樹脂 官能基当量:171g/eq ADEKA社製)を166g、Nipol DN601(アクリロニトリルブタジエンゴム変性アクリル樹脂 官能基当量:1169g/eq 日本ゼオン社製)を105.2g反応フラスコに仕込み、窒素ガスを流しながら撹拌し昇温した。90℃まで昇温したらトリフェニルフォスフィン0.15gを仕込み、徐々に130℃まで昇温を続けた。130℃で2時間保持した後、低沸分を120〜130℃で減圧留去し、A−1を得た。
得られたA−1には、(A)成分であり、上記一般式(1−1)、(1−2)及び(1−3)で表されるユニットを含有する、アクリロニトリルブタジエンゴム変性エポキシ樹脂であるEP−4100LとNipol DN601との反応物が50質量%、未反応のEP−4100Lが50質量%含まれている。尚、EP−4100Lは(B)成分に該当し、且つ上記一般式(7)で表されるエポキシ樹脂にも該当する。
【0075】
製造例2:C−3の製造
フラスコに、1,2−ジアミノプロパン201gを仕込んで60℃に加温し、これにアデカレジンEP−4100E((株)ADEKAの商品名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190)580gを、系内温度が100〜110℃に保たれるように少しずつ加えた[1,2−ジアミノプロパン1モルに対するアデカレジンEP−4100Eのエポキシ当量:1.12]。アデカレジンEP−4100Eの添加後140℃に昇温し、1.5時間反応させて変性ポリアミンを得た。得られた変性ポリアミン100gに対してフェノール樹脂30gを仕込み、180〜190℃、30〜40トールで1時間かけて脱溶媒を行い、潜在性硬化剤であるC−3を得た。
【0076】
実施例及び比較例:本発明の熱反応性樹脂組成物及び比較樹脂組成物の製造
以下の原料を[表1]〜[表3]に従い配合し、三本ロールミルにて分散、混練を行い、本発明の熱反応性樹脂組成物(配合例1〜17)及び比較樹脂組成物(比較配合例1〜8)を得た。
【0077】
<原料>
A−1:製造例1で得られた(A)成分と(B)成分の1:1(質量比)の混合物
B−1:EP−4000S(二官能グリシジル型エポキシ樹脂:ADEKA社製)
B−2:EP−4088S(二官能グリシジル型エポキシ樹脂:ADEKA社製)
B−3:BF−1000(二官能グリシジル型エポキシ樹脂:ADEKA社製)
B−4:セロキサイド2021P(二官能脂環型エポキシ樹脂:ダイセル社製)
B−5:EPPN−201(二官能グリシジル型エポキシ樹脂:日本化薬社製)
B−6:EHPE−3150(二官能グリシジル型エポキシ樹脂:ダイセル社製)
C−1:下記の構造を有するシアネート硬化剤
【化12】
C−2:下記の構造を有するシアネート硬化剤
【化13】
(式中、nは平均値で15)
C−3:製造例2で得られた潜在性硬化剤
D−1:酢酸エチル
D−2:トルエン
E−1:ケンリアクトNZ37(Zrカップリング剤:平泉洋行社製)
E−2:ジベンゾイルメタン(キレート剤:和光純薬社製)
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
得られた熱反応性樹脂組成物に関し、以下の材料を使用して評価1〜3の試験を実施した。評価結果を〔表4〕〜〔表8〕に示す。
【0082】
<材料>
LCP:液晶ポリマー製フィルム(E6008:住友化学社製)
ガラス:ホウ珪酸ガラス(イーグルXG:コーニング社製)
CGS:ケミカル強化ガラス(ドラゴントレイル:旭硝子社製)
PI:ポリイミドフィルム(UPILEX:宇部興産社製)
銅:銅箔(3EC−VLP−18:三井金属鉱業社製)
PPS:ポリフェニレンスルファイド樹脂膜(サスティールPPS:東ソー社製)
PES:ポリエーテルサルフォン樹脂膜(スミカエクセル4100G:住友化学社製)
SUS:SUS304
Si:シリコンウエハー
【0083】
<評価1>
LPCフィルムに作成した配合例及び比較配合例のレジンを#75バーコータで塗布後、80℃で30分間乾燥した。乾燥後、銅箔と貼り合せ、200℃のオーブンで20分間反応させて試験片を得た。
その後、試験片を1cm幅に切り出して、引っ張り試験機FTN1−13A(アイコーエンジニアリング社製)で90°剥離試験を行い、基材間の接着強度を測定した。結果を〔表4〕〜〔表6〕に示した。
【0084】
<評価2>
評価1で作成した試験片を、200℃のオーブン内に30分間耐熱試験をした後、評価1と同様の方法で接着強度を測定した。結果を〔表7〕に示した。
【0085】
<評価3>
評価1で使用したLPCフィルムと銅箔を、それぞれ他の材料に置き換え、評価1と同様の方法で接着強度を測定した。なお、接着剤は配合例2の接着剤を使用した。結果を〔表8〕に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
評価結果から、本発明の配合品は接着強度が何れも5N/cmを大きく超えており、十分な接着強度を有していることが確認された。一方、比較配合品は、何れも5N/cmを下回っており、接着強度が不十分である。特に比較配合品1や2のように、(A)と(B)の比が本発明の範囲内でないだけで大きく接着強度が低くなる。また、本発明の配合品は耐熱試験後であっても良好な接着強度を保っており、更に基材の種類を選ばず、接着剤として良好な機能を発揮することができる。