(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6370255
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】ペリクル用フレーム及びそれを用いたペリクル
(51)【国際特許分類】
G03F 1/64 20120101AFI20180730BHJP
【FI】
G03F1/64
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-78209(P2015-78209)
(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公開番号】特開2016-200616(P2016-200616A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2017年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀越 淳
【審査官】
田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06623893(US,B1)
【文献】
国際公開第2015/046327(WO,A1)
【文献】
特開2007−264636(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0246234(US,A1)
【文献】
特開2009−146912(JP,A)
【文献】
特開2002−040628(JP,A)
【文献】
特開2014−021217(JP,A)
【文献】
特開平10−163091(JP,A)
【文献】
特開2015−018228(JP,A)
【文献】
特開2002−040629(JP,A)
【文献】
特開2004−012597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G03F 1/00−1/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線膨張係数が10×10−6(1/K)以下の金属からなるペリクル用フレームを用いてなり、かつ、
ペリクル膜の材質が、単結晶シリコン、多結晶シリコン、及び非晶質シリコンから選択されるものである、
フォトレジスト膜に10nm以下の微細パターンを形成する場合のEUVリソグラフィー用のペリクル。
【請求項2】
前記金属が、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Co合金、Fe−Ni−Co−Cr合金、及びFe−Co−Cr合金から選択されるものである請求項1に記載のペリクル。
【請求項3】
前記金属が、インバー、スーパーインバー、ステンレスインバー、及びコバールから選択されるものである請求項1に記載のペリクル。
【請求項4】
線膨張係数が10×10−6(1/K)以下のセラミックスからなるペリクル用フレームを用いてなり、かつ、
ペリクル膜の材質が、単結晶シリコン、多結晶シリコン、及び非晶質シリコンから選択されるものである、
フォトレジスト膜に10nm以下の微細パターンを形成する場合のEUVリソグラフィー用のペリクル。
【請求項5】
前記セラミックスが、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素から選択されるものである請求項4に記載のペリクル。
【請求項6】
前記セラミックスが、窒化ホウ素から選択されるものである請求項5に記載のペリクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI、超LSIなどの半導体デバイス、プリント基板、液晶ディスプレイ等を製造する際のゴミ除けとして使用されるリソグラフィー用ペリクルに関し、さらに詳細には、極めて短波長の光を用いてリソグラフィーを行い、微細なパターンを形成するのに適した低線膨張係数のペリクル用フレーム及びそれを用いたペリクルに関する。
【背景技術】
【0002】
LSI、超LSI等の半導体デバイスや液晶ディスプレイ等を製造する際、半導体ウェハー或いは液晶用原板に光を照射してパターンを作製するが、このときに用いるフォトマスク或いはレチクル(以下、これらを単に「フォトマスク」と記述する。)にゴミが付着していると、パターンのエッジががさついたものとなるほか、下地が黒く汚れたりするなど、得られる製品の寸法、品質、外観等が損なわれるという問題があった。
【0003】
このため、パターンの作製作業は通常クリーンルーム内で行われているが、それでもフォトマスクを常に清浄に保つことは難しい。そこで、フォトマスク表面にゴミ除けとしてペリクルを貼り付けた後に露光が行われている。この場合、異物はフォトマスクの表面には直接付着せず、ペリクル膜上に付着するため、リソグラフィー時に焦点をフォトマスクのパターン上に合わせておけば、ペリクル膜上の異物は転写に無関係となる。
【0004】
一般に、ペリクルは光を良く透過させるニトロセルロース、酢酸セルロース、フッ素樹脂等からなる透明なペリクル膜をアルミニウム、ステンレス、ポリエチレン等からなるペリクルフレームの上端面にペリクル膜の良溶媒を塗布した後、風乾して接着するか(特許文献1参照)、アクリル樹脂やエポキシ樹脂等の接着剤で接着している(特許文献2,3参照)。さらに、ペリクルフレームの下端には、フォトマスクに貼り付けるための、ポリブテン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等からなる粘着剤層、及び粘着剤層の保護を目的とした離型層(セパレータ)が設けられている。
【0005】
そして、このようなペリクルをフォトマスクの表面に取り付けて、フォトマスクを介して半導体ウエハー或いは液晶用原版に形成されたフォトレジスト膜を露光する場合には、ゴミなどの異物は、ペリクルの表面に付着しフォトマスクの表面には直接付着しないため、フォトマスクに形成されたパターン上に焦点が位置するように露光用の光を照射すれば、ゴミなどの異物の影響を回避することが可能になる。
【0006】
ところで、近年では、半導体デバイス及び液晶ディスプレイは、ますます高集積化、微細化してきているのが実情である。現在では、32nm程度の微細パターンをフォトレジスト膜に形成する技術も実用化されつつある。32nm程度のパターンであれば、半導体ウエハー或いは液晶用原版と投影レンズとの間を超純水などの液体で満たし、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザーを用いて、フォトレジスト膜を露光する液浸露光技術や二重露光などの従来のエキシマレーザーを用いた改良技術によって対応可能である。
【0007】
しかし、次世代の半導体デバイスや液晶ディスプレイにはさらに微細化した10nm以下のパターン形成が要求されており、このような微細化した10nm以下のパターン形成のためには、もはや、従来のエキシマレーザーを用いた露光技術の改良では対応することは不可能である。
【0008】
そこで、10nm以下のパターンを形成するための方法として、13.5nmを主波長とするEUV(Extreme Ultra Violet)光を使用したEUV露光技術が本命視されている。このEUV露光技術を使用して、フォトレジスト膜に10nm以下の微細なパターンを形成する場合には、どのような光源を用いるか、どのようなフォトレジストを用いるか、どのようなペリクルを用いるかなどの技術的課題を解決することが必要であり、これら技術的課題のうち、新たな光源と新たなフォトレジスト材料については、開発が進み、種々の提案がなされている。
【0009】
半導体デバイス或いは液晶ディスプレイの歩留りを左右するペリクルについては、例えば、特許文献3には、EUVリソグラフィーに用いるペリクル膜として、透明で光学的歪みを生じない厚さ0.1〜2.0μmのシリコン製フィルムが記載されているものの、実際に適用するには未解決な問題も残っており、EUV露光技術を実用化する上で大きな障害となっているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58−219023号公報
【特許文献2】米国特許第4861402号明細書
【特許文献3】特公昭63−27707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、ペリクルを構成するペリクル用フレームの材質については、i線(波長365nm)を用いた露光、フッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザー光(波長248nm)を用いた露光、及びフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザー光(波長193nm)を用いた露光においては、その剛性と加工性のみを考慮して選択されており、通常、アルミニウム、ステンレス、ポリエチレンなどが使用されている。
【0012】
一方、フォトマスクの材質については、通常、石英ガラスが使用されることが多く、また、ペリクル膜にはi線用、KrF用、ArF用であれば、ニトロセルロース、酢酸セルロース或いはフッ素樹脂など、EUV用としては、シリコンなど、光源に応じた透明膜が使用される。
【0013】
しかしながら、EUV露光技術を使用して、フォトレジスト膜に10nm以下の微細なパターンを形成する場合に従来のペリクルを使用すると、ペリクル膜にシワが入ってしまったり、ペリクル用フレームからペリクル膜が剥がれてしまったり、破れてしまったり、割れてしまったり、また、フォトマスクを歪ませてしまう可能性がある。
【0014】
そして、フォトマスクが歪んだ場合には、フォトマスクの平坦度が悪くなり、露光装置内でデフォーカスの問題が発生しうる。その一方で、フォトマスクが変形してフォトマスク表面に形成されたパターンが歪み、その結果、露光したときにウエハーに転写されたパターン像が歪んでしまうという問題も発生しうる。
【0015】
これらの問題に対し、ペリクルを構成する弾性接着剤によって対処する方法がある。しかしながら、ペリクル膜とペリクル用フレームの接着、また、フォトマスクとペリクル用フレームの接着に対して弾性接着剤を使用した場合には、ある程度の対処は可能であるが、ペリクル膜のシワ、剥がれ、破れ、割れ、フォトマスク上のパターンの歪みを完全に抑えることはできない。
【0016】
そこで、本発明は、フォトレジスト膜に微細パターンを形成する場合、特にEUV露光技術を使用して、フォトレジスト膜に10nm以下の微細パターンを形成する場合において、ペリクル膜にシワが入ったり、ペリクル用フレームからペリクル膜が剥がれたり、破れたり、割れたり、また、フォトマスク上のパターンを歪ませてしまう事態を有効に防止することができるペリクル用フレーム及びそれを用いたペリクルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、EUV露光技術を使用して、フォトレジスト膜に10nm以下の微細パターンを形成する場合において、ペリクル膜にシワが入ったり、ペリクル用フレームからペリクル膜が剥がれたり、破れたり、割れたり、また、フォトマスク上のパターンを歪ませてしまうという事態に対して、前述したように弾性接着剤で対処するのではなく、ペリクル用フレームにより対処するという新たな課題に取り組み、かかる課題を解決するために鋭意検討を行った結果、EUV露光技術を使用して、フォトレジスト膜に10nm以下の微細なパターンを形成する場合には、その露光時の光エネルギーにより温度上昇が認められるため、従来のように剛性と加工性のみを考慮してペリクル用フレームの材質を選択することは適切でないこと、そしてさらには、物理的特性の1つである線膨張係数に着目して、ペリクル用フレームを構成する材料の線膨張係数を特定の範囲に設定したところ、露光時の光エネルギーによる温度上昇によって生じうるペリクル用フレームの伸縮、歪みを小さく抑えることができ、その結果、上記課題を見事に解決できることを見い出して、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明のペリクル用フレームは、線膨張係数が10×10
−6(1/K)以下の材質からなることを特徴とするペリクル用フレームである。
【0019】
また、本発明のペリクル用フレームは、線膨張係数が10×10
−6(1/K)以下の金属からなることを特徴とするペリクル用フレームである。
【0020】
また、本発明のペリクル用フレームは、線膨張係数が10×10
−6(1/K)以下のガラスからなることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明のペリクル用フレームは、線膨張係数が10×10
−6(1/K)以下のセラミックスからなることを特徴とするものである。
【0022】
さらに、本発明のペリクルは、ペリクル用フレームとして、本発明のペリクル用フレームを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、フォトレジスト膜に微細パターンを形成する場合、特にEUV露光技術を使用して、フォトレジスト膜に10nm以下の微細パターンを形成する場合において、露光による光エネルギーによってペリクル用フレームの温度が上昇しても、ペリクル用フレームの伸縮、歪みを小さく抑えることができるため、ペリクル膜にシワが入ったり、ペリクル用フレームからペリクル膜が剥がれたり、破れたり、割れたり、また、フォトマスク上のパターンを歪ませてしまう事態を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】線膨張係数が10×10
−6(1/K)以下の材質からなるペリクル用フレームを用いた本発明の一例のペリクルの縦断面図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は図面に示した態様に限定されるものではない。
【0026】
図1は、線膨張係数が10×10
−6(1/K)以下の材質からなるペリクル用フレーム3を用いて構成された本発明のペリクル10の一実施形態を示す縦断面図である。このペリクル10では、ペリクル10を貼り付けるフォトマスク5の形状に対応した通常四角枠状(長方形枠状又は正方形枠状)のペリクル用フレーム3の上端面に膜接着剤2を介してペリクル膜1が張設されている。この場合、ペリクル10をフォトマスク5に粘着させるためのマスク粘着剤4がペリクル用フレーム3の下端面に形成され、該マスク粘着剤4の下端面にライナー(図示せず)が剥離可能に貼着される。また、ペリクル用フレーム3に気圧調整用穴(通気口)6が設置されていて、さらにパーティクル除去の目的で除塵用フィルター7が設けられている。
【0027】
ペリクル膜の種類については特に制限はなく、例えば、従来エキシマレーザー用に使用されている、非晶質フッ素ポリマー等が用いられる。非晶質フッ素ポリマーの例としては、サイトップ[旭硝子株式会社製:商品名]、テフロン(登録商標)AF[デュポン株式会社製:商品名]等が挙げられる。これらのポリマーは、そのペリクル膜作製時に必要に応じて溶媒に溶解して使用してもよく、例えば、フッ素系溶媒などで適宜溶解することができる。
【0028】
一方、EUV露光用の場合には、ペリクル膜には、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンなど、EUV光に対する透過性の高い材料を用いることが好ましい。さらには、前記ペリクル膜を保護する目的で、SiC、SiO
2、Si
3N
4、SiON、Y
2O
3、YN、Mo、Ru及びRhなどの保護膜を備えてもよい。
【0029】
本発明のペリクル用フレームは、EUV露光による温度上昇の結果生じるペリクル用フレームの伸縮、歪みを小さくするため、該ペリクル用フレームが使用される温度域において、線膨張係数が10×10
−6(1/K)以下の材質からなるものである。
【0030】
前記ペリクル用フレームの材質は、その線膨張係数が10×10
−6(1/K)以下である限りにおいて特に限定はされず、金属、ガラス、セラミックス等が挙げられる。具体的には、例えば、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Co合金、Fe−Ni−Co−Cr合金、Fe−Co−Cr合金等の金属、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、結晶化ガラス等のガラス、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等のセラミックスが例示される。これらは1種又は2種以上からなるものでもよい。
【0031】
前記材質のうち、特には、インバー(Fe−Ni36)、スーパーインバー(Fe−Ni32−Co5)、ステンレスインバー(Fe−Ni52−Co11−Cr)、コバール(Fe−Ni29−Co17)等の金属、及び石英ガラス(SiO
2)、ホウケイ酸ガラス(Na
2O−B
2O
3−SiO
2)、ソーダ石灰ガラス(Na
2O−CaO−SiO
2)等のガラス、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)等のセラミックスが、本願発明の効果、剛性、加工性等を総合的に勘案すると好ましく、特にインバー、スーパーインバー、石英ガラス、酸化アルミニウムがより好ましい。
【0032】
各種材料の線膨張係数(1/K)の参考値を以下に記す。
インバー:1×10
−6
スーパーインバー:0.1×10
−6
ステンレスインバー:0.1×10
−6
コバール:5×10
−6
石英ガラス:0.5×10
−6
ホウケイ酸ガラス:5×10
−6
ソーダ石灰ガラス:8×10
−6
炭化ケイ素:4×10
−6
窒化ケイ素:3×10
−6
窒化ホウ素:1×10
−6
窒化アルミニウム:5×10
−6
酸化アルミニウム:6×10
−6
アルミニウム:24×10
−6
SUS304:17×10
−6
【0033】
図1に示したペリクル10において、ペリクル膜1をペリクル用フレーム3へ接着させるための膜接着剤2、及びペリクル用フレーム3をフォトマスク5へ接着させるためのマスク粘着剤4には特に制限はなく、公知のものを使用することができる。例えば、ペリクル膜のペリクル用フレームへの接着には、ペリクル膜の良溶媒を塗布した後、風乾して接着するか、アクリル樹脂やシリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの接着剤で接着することができる。なお、EUV露光用の膜接着剤には、低アウトガス性接着剤の使用が好ましい。
【0034】
また、前記ペリクル用フレームを前記基板へ接着させるためのマスク粘着剤には、ポリブテン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、SEBS(ポリ(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン))樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等からなる粘着剤を使用することができ、特にアクリル樹脂、シリコーン樹脂からなる粘着剤がより好ましい。
【0035】
前記膜接着剤、及びマスク粘着剤の塗布は、例えば、ディップ、スプレー、刷毛塗り、ディスペンサーによる塗布装置等にて行うことができるが、ディスペンサーによる塗布装置を使用した塗布が、安定性、作業性、歩留り等の点から好ましい。
【0036】
さらに、前記膜接着剤、及びマスク粘着剤の粘度が高くて塗布装置による塗布が困難な場合には、必要に応じて、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、イソパラフィン等の脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルメトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジイソプルピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤を添加することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
はじめに、外形サイズ149mm×122mm×高さ5.8mm、肉厚2mmで、材質が鉄とニッケルの合金であるインバー(Fe−Ni36、線膨張係数:1×10
−6(1/K))製のペリクル用フレームをクリーンルームに搬入し、中性洗剤と純水により、十分に洗浄・乾燥させた。
次に、前記ペリクル用フレームの下端面にマスク粘着剤として、粘着剤X−40−3122[信越化学工業株式会社製:製品名]を塗布し、該粘着剤が流動しなくなるまで風乾させた後、該ペリクル用フレームを130℃まで加熱し、該粘着剤を完全に硬化させた。
また、前記ペリクル用フレームの上端面に単結晶シリコンからなるペリクル膜を接着するための接着剤として、低アウトガス性接着剤であるシリコーン系のKE−101A/B[信越化学工業株式会社製:製品名]を塗布した。そして、単結晶シリコンからなるペリクル膜をペリクル用フレームの前記接着剤塗布端面側に貼り付け、カッターにて外側の不要膜を切除し、ペリクルを完成させた。
【0039】
[実施例2]
前記インバー製のペリクル用フレームの代わりに、鉄とニッケルとコバルトの合金であるスーパーインバー(Fe−Ni32−Co5、線膨張係数:0.1×10
−6(1/K))製のペリクル用フレームを使用した以外は、実施例1と同様の方法でペリクルを作製した。
【0040】
[実施例3]
前記インバー製のペリクル用フレームの代わりに、石英ガラス(SiO
2、線膨張係数:0.5×10
−6(1/K))製のペリクル用フレームを使用した以外は、実施例1と同様の方法でペリクルを作製した。
【0041】
[実施例4]
前記インバー製のペリクル用フレームの代わりに、酸化アルミニウム(Al
2O
3、線膨張係数:6×10
−6(1/K))製のペリクル用フレームを使用した以外は、実施例1と同様の方法でペリクルを作製した。
【0042】
[比較例1]
前記インバー製のペリクル用フレームの代わりに、Al−Zn−Mg−Cu系のアルミニウム合金(JIS A7075、線膨張係数:23.4×10
−6(1/K))製のペリクル用フレームを使用した以外は、実施例1と同様の方法でペリクルを作製した。
【0043】
[比較例2]
前記インバー製のペリクル用フレームの代わりに、ステンレス鋼材(SUS304、線膨張係数:17×10
−6(1/K))製のペリクル用フレームを使用した以外は、実施例1と同様の方法でペリクルを作製した。
【0044】
次に、前記実施例1〜4及び比較例1、2で作製したペリクルについて、以下に示すヒートサイクル試験を実施して、ペリクルの評価を行った。
[ヒートサイクル試験]
前記実施例1〜4及び比較例1、2で作製したペリクルを石英基板に貼り付け、200℃雰囲気のオーブン中に24時間静置した後、室温で24時間静置、というサイクルを5回行い(ヒートサイクル試験)、その後、前記ペリクル(及びペリクル膜)の状態を目視にて確認した。また、該ヒートサイクル試験後の前記石英基板に対する前記ペリクルの平坦度をFLatMaster(エスオーエル株式会社製)にて測定し、以下に示す評価基準にて評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
(ヒートサイクル試験後のペリクルの平坦度)
○:ヒートサイクル試験後のペリクルの平坦度が15μm以下
×:ヒートサイクル試験後のペリクルの平坦度が15μm以上
(総合評価)
○:ヒートサイクル試験後のペリクルの状態が良好で、ペリクルの平坦度が15μm以下
×:ヒートサイクル試験後のペリクルの状態が不良で、ペリクルの平坦度が15μm以上
【0045】
【表1】
【0046】
上記表1の結果によれば、実施例1〜4のペリクル用フレームでは、それぞれヒートサイクル試験後のペリクルの状態は良好であり、ペリクルの平坦度も良好であった。
一方、比較例1、2のペリクル用フレームでは、ヒートサイクル試験後にペリクル膜に割れが観察され、また、ペリクルの平坦度も低下していた。比較例1、2のペリクル用フレームでは、ヒートサイクル試験によるペリクル用フレームの伸縮が大きく、ペリクル膜(割れ)や、ペリクルの平坦度へ悪影響を与えていることが確認された。
したがって、実施例1〜4のペリクル用フレームは、耐ヒートサイクル性に優れており、高温と低温の温度変化が繰り返し負荷されても、ペリクル膜やマスク基板に悪影響を与えないことから、特にEUV露光技術を使用する際のペリクル用フレームとして、総合的に見て最も適していることが確認された。
【符号の説明】
【0047】
1 ペリクル膜
2 膜接着剤
3 ペリクル用フレーム
4 マスク粘着剤
5 フォトマスク
6 気圧調整用穴
7 防塵用フィルター
10 ペリクル