特許第6370282号(P6370282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6370282
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】現像処理方法及び現像処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20180730BHJP
   G03F 7/30 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   H01L21/30 569F
   H01L21/30 569C
   G03F7/30 502
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-188094(P2015-188094)
(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公開番号】特開2017-63132(P2017-63132A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2017年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】久保田 稔
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−053467(JP,A)
【文献】 特開2001−319861(JP,A)
【文献】 特開昭60−217627(JP,A)
【文献】 特開2011−091274(JP,A)
【文献】 特開2012−104602(JP,A)
【文献】 特開2000−315643(JP,A)
【文献】 特開平11−204401(JP,A)
【文献】 特開2015−032749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に現像液を供給して、所定のパターンを露光した基板上のレジスト膜を現像する現像処理方法であって、
基板の中央部に、純水を供給して直径100mmの純水液溜りを形成し、次いで前記純水液溜りに直径40mmのノズルの接液面を接触させ、前記ノズルの接液面と基板表面のレジスト膜表面との間の距離を、0.5mm〜3.0mmに維持しつつ当該ノズルから純水液溜りに対して現像液を供給しながら、基板中心から20mm偏心した位置から基板中心を通る径方向に当該ノズルを移動させ、その後基板中心から20mm偏心した位置にて停止させて、基板上に希釈現像液の液溜りを形成する希釈現像液の液溜り形成工程と、
その後基板を回転させて前記希釈現像液の液溜りを基板全面に拡散させる拡散工程と、
その後基板を回転させつつ、基板周辺部から現像液を基板に供給しながら現像液供給ノズルを基板中心へと移動させて基板表面に現像液を供給し、その後基板の回転を停止して前記基板を静止現像する現像工程と、
を有することを特徴とする、現像処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の現像処理方法を実施する際に用いる現像処理装置であって、
基板の裏面を保持し、当該保持した基板を、鉛直軸を中心に回転させる基板保持部と、
接液面を有し、当該接液面に現像液を供給する供給孔が形成された直径40mmのノズルと、
前記ノズルを移動させる移動機構と、
基板上に純水を供給する純水供給ノズルと、
前記純水供給ノズルを移動させる他の移動機構と、
前記ノズルの接液面と基板表面のレジスト膜表面との間の距離を、0.5mm〜3.0mmに維持しながら、基板の偏心位置から基板中心を通って径方向に移動するように前記移動機構を制御するように構成された制御部と、を有することを特徴とする、現像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト膜が形成された基板に対して、現像処理して基板に所定のパターンを形成する現像処理方法及び現像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程では、例えば基板としての半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)上にレジスト液を塗布しレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、当該レジスト膜に所定のパターンを露光する露光処理、露光後にレジスト膜内の化学反応を促進させる加熱処理(ポストエクスポージャーベーキング)、露光されたレジスト膜を現像する現像処理などが順次行われ、ウェハ上に所定のレジストパターンが形成される。
【0003】
これらの処理のうち、現像処理の方式としては、露光後の基板を基板保持部に水平に保持する工程と、基板の一部に現像液ノズルから現像液を供給して液溜まりを形成する工程と、基板を回転させる工程と、回転する前記基板における現像液の供給位置が当該基板の径方向に沿って移動するように、前記現像液ノズルを移動させて前記液溜まりを基板の全面に広げる工程と、前記液溜まりを基板の全面に広げる工程に並行して行われ、前記現像液ノズルと共に移動し、前記基板に対向する面が前記基板の表面よりも小さい接触部を、前記液溜まりに接触させる工程と、を備えた現像方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−53467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術によれば、使用する現像液の量を抑え、かつスループットを高くすることが可能であったが、面内の均一性についてはさらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、基板の現像処理において、従来技術よりもさらに高い面内均一性を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、基板上に現像液を供給して、所定のパターンを露光した基板上のレジスト膜を現像する現像処理方法であって、基板の中央部に、純水を供給して直径100mmの純水液溜りを形成し、次いで前記純水液溜りに直径40mmのノズルの接液面を接触させ、前記ノズルの接液面と基板表面のレジスト膜表面との間の距離を、0.5mm〜3.0mmに維持しつつ当該ノズルから純水液溜りに対して現像液を供給しながら、基板中心から20mm偏心した位置から基板中心を通る径方向に当該ノズルを移動させ、その後基板中心から20mm偏心した位置にて停止させて、基板上に希釈現像液の液溜りを形成する希釈現像液の液溜り形成工程と、その後基板を回転させて前記希釈現像液の液溜りを基板全面に拡散させる拡散工程と、その後基板を回転させつつ、基板周辺部から現像液を基板に供給しながら現像液供給ノズルを基板中心へと移動させて基板表面に現像液を供給し、その後基板の回転を停止して前記基板を静止現像する現像工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、基板の中央部に、純水を供給して純水液溜りを形成し、次いで前記純水液溜りにノズルの接液面を接触させて当該ノズルから純水液溜りに対して現像液を供給しながら、基板中心を通る径方向に当該ノズルを移動させて基板上に希釈現像液の液溜りを形成するようにしたので、ノズルの接液面と基板表面、すなわちレジスト膜表面との間の希釈現像液については、希釈現像液によって発生した反応生成物がノズルの移動に伴って順次追い出され、新鮮な希釈現像液による現像が促進される。そしてそのようにして基板中央部に希釈現像液の液溜りが形成された後、基板を回転させて前記希釈現像液の液溜りを基板全面に拡散させるので、基板全体には希釈現像液によるいわゆるプリウェット処理がなされる。
【0009】
この点に関し、従来の基板中央部に単に希釈現像液を供給し、その後基板を回転させて拡散させてプリウェット処理して、その後に現像処理していた方法では、基板中央部における線幅の制御が困難であったが、本発明によれば、かかる点を改善することができ、面内均一性が向上する。
【0018】
別な観点によれば、本発明は、前記現像処理方法を実施する際に用いる現像処理装置であって、基板の裏面を保持し、当該保持した基板を、鉛直軸を中心に回転させる基板保持部と、接液面を有し、当該接液面に現像液を供給する供給孔が形成された直径40mmのノズルと、前記ノズルを移動させる移動機構と、
基板上に純水を供給する純水供給ノズルと、前記純水供給ノズルを移動させる他の移動機構と、前記ノズルの接液面と基板表面のレジスト膜表面との間の距離を、0.5mm〜3.0mmに維持しながら、基板の偏心位置から基板中心を通って径方向に移動するように前記移動機構を制御するように構成された制御部と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、基板の現像処理において、従来技術よりもさらに高い面内均一性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施の形態にかかる現像処理方法を実施するための現像処理装置を搭載した基板処理システムの構成の概略を示す平面図である。
図2図1の基板処理システムの構成の概略を模式的に示す正面図である。
図3図1の基板処理システムの構成の概略を模式的に示す背面図である。
図4】現像処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
図5】現像処理装置の構成の概略を模式的に示す横断面図である。
図6】希釈用の現像液供給ノズルの斜視図である。
図7】ウェハ上の中心位置上方に純水ノズルが位置した状態を示す側面からの説明図である。
図8】ウェハ上に純水の液溜りを形成する様子を示す側面からの説明図である。
図9】希釈現像液ノズルが純水の液溜り上のウェハの偏心位置に位置した状態を示す側面からの説明図である。
図10】希釈現像液ノズルの下端面が純水の液溜りに接液して移動した状態を示す側面からの説明図である。
図11】ウェハを回転させて、希釈現像液をウェハの外周方向に拡散させた状態を示す側面からの説明図である。
図12】ウェハの周辺部の上方に、現像液供給ノズルが位置した状態を示す側面からの説明図である。
図13】ウェハの中心部の上方に、現像液供給ノズルを移動させた状態を示す側面からの説明図である。
図14】実施の形態と単純プリウェット処理して各々現像処理したときの、各々のウェハの半径方向の線幅のプロファイルを示すグラフ図である。
図15】希釈用の現像液供給ノズルの接液面とウェハ上のレジスト膜との間の距離と、線幅の均一性との関係を示すグラフである。
図16】ノズル移動開始位置のウェハの中心からの距離と線幅の関係を示すグラフ図である。
図17】ノズル移動距離と線幅の関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる現像処理方法を実施する現像処理装置を備えた基板処理システム1の構成の概略を模式的に示した平面説明図である。図2及び図3は、各々基板処理システム1の内部構成の概略を模式的に示す、各々正面図と背面図である。
【0024】
基板処理システム1は、図1に示すように複数枚のウェハWを収容したカセットCが搬入出されるカセットステーション10と、ウェハWに所定の処理を施す複数の各種処理装置を備えた処理ステーション11と、処理ステーション11に隣接する露光装置12との間でウェハWの受け渡しを行うインターフェイスステーション13とを一体に接続した構成を有している。
【0025】
カセットステーション10には、カセット載置台20が設けられている。カセット載置台20には、基板処理システム1の外部に対してカセットCを搬入出する際に、カセットCを載置するカセット載置板21が複数設けられている。
【0026】
カセットステーション10には、図1に示すようにX方向に延びる搬送路22上を移動自在なウェハ搬送装置23が設けられている。ウェハ搬送装置23は、上下方向及び鉛直軸周り(θ方向)にも移動自在であり、各カセット載置板21上のカセットCと、後述する処理ステーション11の第3のブロックG3の受け渡し装置との間でウェハWを搬送できる。
【0027】
処理ステーション11には、各種装置を備えた複数例えば4つのブロック、すなわち第1のブロックG1〜第4のブロックG4が設けられている。例えば処理ステーション11の正面側(図1のX方向負方向側)には、第1のブロックG1が設けられ、処理ステーション11の背面側(図1のX方向正方向側、図面の上側)には、第2のブロックG2が設けられている。また、処理ステーション11のカセットステーション10側(図1のY方向負方向側)には、既述の第3のブロックG3が設けられ、処理ステーション11のインターフェイスステーション13側(図1のY方向正方向側)には、第4のブロックG4が設けられている。
【0028】
例えば第1のブロックG1には、図2に示すように複数の液処理装置、例えばウェハWを現像処理する現像処理装置30、ウェハWのレジスト膜の下層に反射防止膜(以下「下部反射防止膜」という)を形成する下部反射防止膜形成装置31、ウェハWにレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布装置32、ウェハWのレジスト膜の上層に反射防止膜(以下「上部反射防止膜」という)を形成する上部反射防止膜形成装置33が下からこの順に配置されている。
【0029】
例えば現像処理装置30、下部反射防止膜形成装置31、レジスト塗布装置32、上部反射防止膜形成装置33は、それぞれ水平方向に3つ並べて配置されている。なお、これら現像処理装置30、下部反射防止膜形成装置31、レジスト塗布装置32、上部反射防止膜形成装置33の数や配置は、任意に選択できる。
【0030】
これら下部反射防止膜形成装置31、レジスト塗布装置32、上部反射防止膜形成装置33では、例えばウェハW上に所定の塗布液を塗布するスピンコーティングが行われる。スピンコーティングでは、例えば塗布ノズルからウェハW上に塗布液を吐出すると共に、ウェハWを回転させて、塗布液をウェハWの表面に拡散させる。なお、現像処理装置30の構成については後述する。
【0031】
例えば第2のブロックG2には、図3に示すようにウェハWの加熱及び冷却といった熱処理を行う複数の熱処理装置40〜43が設けられている。
【0032】
例えば第3のブロックG3には、図2図3に示すように、複数の受け渡し装置50、51、52、53、54、55、56が下から順に設けられている。また、第4のブロックG4には、図3に示すように、複数の受け渡し装置60、61、62が下から順に設けられている。
【0033】
図1に示すように第1のブロックG1〜第4のブロックG4に囲まれた領域には、ウェハ搬送領域Dが形成されている。ウェハ搬送領域Dには、例えばY方向、X方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有する、ウェハ搬送装置70が複数配置されている。ウェハ搬送装置70は、ウェハ搬送領域D内を移動し、周囲に位置する第1のブロックG1、第2のブロックG2、第3のブロックG3及び第4のブロックG4内の所定の装置との間でウェハWを搬送できる。
【0034】
また、ウェハ搬送領域Dには、図3に示すように、第3のブロックG3と第4のブロックG4との間で直線的にウェハWを搬送するシャトル搬送装置80が設けられている。
【0035】
シャトル搬送装置80は、例えば図3のY方向に直線的に移動自在になっている。シャトル搬送装置80は、ウェハWを支持した状態でY方向に移動し、第3のブロックG3の受け渡し装置52と第4のブロックG4の受け渡し装置62との間でウェハWを搬送できる。
【0036】
図1に示すように第3のブロックG3のX方向正方向側の隣には、ウェハ搬送装置100が設けられている。ウェハ搬送装置100は、例えばX方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送装置100は、ウェハWを支持した状態で上下に移動して、第3のブロックG3内の各受け渡し装置にウェハWを搬送できる。
【0037】
インターフェイスステーション13には、ウェハ搬送装置110と受け渡し装置111が設けられている。ウェハ搬送装置110は、例えばY方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送装置110は、例えば搬送アームにウェハWを支持して、第4のブロックG4内の各受け渡し装置、受け渡し装置111及び露光装置12との間でウェハWを搬送できる。
【0038】
次に、上述した現像処理装置30の構成について説明する。現像処理装置30は、図4に示すように内部を密閉可能な処理容器130を有している。処理容器130の側面には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が形成されている。
【0039】
処理容器130内には、ウェハWを保持して回転させる基板保持部としてのスピンチャック140が設けられている。スピンチャック140は、例えばモータなどのチャック駆動部141により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動部141には、例えばシリンダなどの昇降駆動機構が設けられており、スピンチャック140は昇降自在になっている。
【0040】
スピンチャック140の周囲には、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ142が設けられている。カップ142の下面には、回収した液体を排出する排出管143と、カップ142内の雰囲気を排気する排気管144が接続されている。
【0041】
図5に示すようにカップ142のX方向負方向(図5の下方向)側には、Y方向(図5の左右方向)に沿って延伸するレール150が形成されている。レール150は、例えばカップ142のY方向負方向(図5の左方向)側の外方からY方向正方向(図5の右方向)側の外方まで形成されている。レール150には、例えば3本のアーム151、152、153が取り付けられている。
【0042】
第1のアーム151には、純水を供給する純水供給ノズル154が支持されている。第1のアーム151は、図5に示すノズル駆動部155により、レール150上を移動自在である。これにより、純水供給ノズル154は、カップ142のY方向正方向側の外方に設置された待機部156からカップ142内のウェハWの中央部上方を通って、カップ142のY方向負方向側の外側に設けられた待機部157まで移動できる。
【0043】
第2のアーム152には、後述する希釈現像液の液溜り形成工程において、希釈用の現像液を供給する希釈用の現像液供給ノズル158が支持されている。第2のアーム152は、図5に示すノズル駆動部159によってレール150上を移動自在となっている。これにより、希釈用の現像液供給ノズル158は、カップ142のY方向正方向側の外側に設けられた待機部160から、カップ142内のウェハWの中央部上方まで移動できる。また、ノズル駆動部159によって、第2のアーム152は昇降自在であり、希釈用の現像液供給ノズル158の高さを調節できる。待機部160は、待機部156のY方向正方向側に設けられている。希釈用の現像液としては、例えば2.38wt%濃度のTMAHが用いられる。
【0044】
希釈用の現像液供給ノズル158は、例えば図6に示すように、全体として円筒形状を有しており、その下端面158aはウェハWと例えば平行になる平坦な面に形成されている。この下端面158aが、純水と接触する接液面として機能する。しかしながら下端面158aは必ずしもウェハWと平行になるように形成されている必要はなく、希釈用の現像液供給ノズル158の下端面158aとウェハWとの間に現像液の液膜を形成できる形状であれば、例えば下に凸に湾曲する緩やかな球面形状や傾斜面を有していてもよい。
【0045】
そして希釈用の現像液供給ノズル158の下端面158aには、希釈用の現像液を供給する供給孔158bが複数形成されている。供給孔158bの数は任意に選択することができ、1つであってもよい。
【0046】
また希釈用の現像液供給ノズル158の直径は、ウェハWの直径よりも小さく構成され、本実施の形態で直径40mmのものを使用している。そして希釈用の現像液供給ノズル158は、耐薬品性を有する、例えばPTFEや石英などの材質により構成されている。なお、本実施の形態では、ウェハWの直径は例えば300mmである。
【0047】
第3のアーム153には、現像液を供給する現像液供給ノズル161が支持されている。現像液供給ノズル161は、前記した希釈用の現像液供給ノズル158と同形同大、同一構造のものを採用している。現像液としては、例えば2.38wt%濃度のTMAHが用いられる。
【0048】
第3のアーム153は、図5に示す移動機構としてのノズル駆動部163によってレール150上を移動自在となっている。これにより、現像液供給ノズル161は、カップ142のY方向負方向側の外側に設けられた待機部164から、カップ142内のウェハWの中央部上方まで移動できる。待機部164は、待機部157のY方向負方向側に設けられている。また、ノズル駆動部163によって、第3のアーム153は昇降自在であり、現像液供給ノズル161の高さを調節できる。
【0049】
他の液処理装置である下部反射防止膜形成装置31、レジスト塗布装置32、上部反射防止膜形成装置33の構成は、ノズルの形状、本数や、ノズルから供給される液が異なる点以外は、上述した現像処理装置30の構成と同様であるので説明を省略する。
【0050】
以上の基板処理システム1には、図1に示すように制御部200が設けられている。制御部200は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、基板処理システム1におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作、さらには前記したノズル駆動部155、159、163等も制御して、基板処理システム1における後述の現像処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部200にインストールされたものであってもよい。
【0051】
次に、以上のように構成された基板処理システム1を用いて行われるウェハ処理の概略について説明する。先ず、複数のウェハWを収納したカセットCが、基板処理システム1のカセットステーション10に搬入され、ウェハ搬送装置23によりカセットC内の各ウェハWが順次処理ステーション11の受け渡し装置53に搬送される。
【0052】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第2のブロックG2の熱処理装置40に搬送され温度調節処理される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって例えば第1のブロックG1の下部反射防止膜形成装置31に搬送され、ウェハW上に下部反射防止膜が形成される。その後ウェハWは、第2のブロックG2の熱処理装置41に搬送され、加熱処理が行われる。
【0053】
その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第2のブロックG2の熱処理装置42に搬送され、温度調節処理される。その後、ウェハWはウェハ搬送装置70によって第1のブロックG1のレジスト塗布装置32に搬送され、ウェハW上にレジスト膜が形成される。その後ウェハWは、熱処理装置43に搬送され、プリベーク処理される。
【0054】
次にウェハWは、第1のブロックG1の上部反射防止膜形成装置33に搬送され、ウェハW上に上部反射防止膜が形成される。その後、ウェハWは第2のブロックG2の熱処理装置43に搬送され、加熱処理が行われる。その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第3のブロックG3の受け渡し装置56に搬送される。
【0055】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置100によって受け渡し装置52に搬送され、シャトル搬送装置80によって第4のブロックG4の受け渡し装置62に搬送される。その後、ウェハWは、インターフェイスステーション13のウェハ搬送装置110によって露光装置12に搬送され、所定のパターンで露光処理される。
【0056】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によって熱処理装置40に搬送され、露光後ベーク処理される。これにより、レジスト膜の露光部において発生した酸により脱保護反応させる。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって現像処理装置30に搬送され、現像処理が行われる。以下、レジスト膜に対して現像する場合の現像処理について説明する。
【0057】
現像処理においては、まず図7に示すように、純水供給ノズル154がウェハWの中心上に移動する。そして図8に示したように、レジスト膜Rが形成されたウェハWの中心部に対して純水供給ノズル154から所定量の純水Pを供給する。本実施の形態では、例えば60〜70mlの純水が供給される。この際、純水PはウェハWが静止した状態で供給される。これにより、ウェハWの中央部に純水Pの液溜りが形成される。本実施の形態では、直径約100mmの純水Pの液溜りがウェハWのレジスト膜R上に形成される。なお、かかる場合、ウェハWは必ずしも静止させている必要はなく、ウェハWの中央部に純水Pの液溜りが形成される程度の低速回転であれば、ウェハWを回転させた状態で純水Pを供給してもよい。
【0058】
次に、純水Pの供給を停止すると共に、図9に示すように、希釈用の現像液供給ノズル158をウェハWの中心から偏心した位置に移動させ、下端面158aを純水Pの液溜りに接触した状態で所定量の希釈用の現像液を供給する。この例では、ウェハWの中心から20mm偏心した位置にて停止させ、そのまま降下させて下端面158aを純水Pの液溜りに接触させた。すなわち、ウェハWの中心から希釈用の現像液供給ノズル158の中心までの距離L1が20mmの位置にて、下端面158aを純水Pの液溜りに接触させた。またそのときの希釈用の現像液供給ノズル158の下端面158aとレジスト膜Rの間の距離dは1mmとなるようにノズル駆動部159は制御部200によって制御されている。
【0059】
そしてその距離dを維持し、ノズル駆動部159によって希釈用の現像液供給ノズル158をそのまま径方向に水平移動させる。このとき希釈用の現像液供給ノズル158の中心は、ウェハWの中心を通るように移動する。ノズルの移動速度は、たとえば20mm/sec.である。そして移動開始時から、希釈用の現像液供給ノズル158の下端面158aの供給孔158bからは希釈用の現像液が供給される。
【0060】
このとき、すなわち希釈用の現像液供給ノズル158を移動させている間、スピンチャック140によってウェハWを回転させてもよい。かかる場合のウェハWの回転速度は、10rpm〜400rpmの低回転がよい。
【0061】
そして図10に示したように、ウェハWの中心を通りすぎてウェハWの中心から20mm偏心した位置にて停止させる。すなわち、ウェハWの中心から希釈用の現像液供給ノズル158の中心までの距離L2が20mmの位置にて、ノズルの移動が停止される。また停止と同時に希釈用現像液の供給も停止する。ノズルの移動速度が20mm/sec.であったから、結局純水Pの液溜まりに対して2秒間、希釈用現像液を供給した。これによって、純水Pの液溜まりに対して6.7mlの希釈用現像液を供給した。
【0062】
これにより、ウェハW上の中央部には、希釈された希釈現像液Qの液溜まりが形成される。
【0063】
次いで希釈用の現像液供給ノズル158を退避させ、図11に示したように、スピンチャック140によってウェハWを回転させる。回転速度は、たとえば200/rpm〜1000rpmである。これによって希釈現像液Qの液溜まりがウェハW上で拡散し、ウェハWは希釈現像液Qによってプリウェットされる。
【0064】
次いで図12に示したように、現像液供給ノズル161をウェハWの周辺部に移動させ、スピンチャック140によってウェハWを回転させながら、現像液供給ノズル161から現像液をウェハW上に供給し、現像液供給ノズル161をウェハWの中心へと移動させる。このときウェハWの回転速度は、例えば120〜130rpmであり、また現像液供給ノズル161の移動速度は15mm/sec.である。そして図13に示したように、現像液供給ノズル161がウェハWの中心上に到達したら、現像液供給ノズル161の移動を停止させ、また現像液供給ノズル161からの現像液の供給も停止し、次いでスピンチャック140の回転も停止する。かかる現像液の供給プロセスにおいて、この例では、ウェハWに対して40〜42mlの現像液を供給した。
【0065】
そして現像液供給ノズル161を退避させ、所定時間静止現像した後、純水ノズル154を再びウェハWの中心上に移動させ、スピンチャック140によってウェハWを回転させながら、ウェハWに対して純水を供給して、ウェハWを洗浄する。この時のウェハWの回転速度は、例えば100〜1200rpmであり、時間の経過と共に回転速度をこの範囲で変化させることがよい。
【0066】
そしてそのように純水によるウェハWの洗浄が終了すると、純水ノズル154を退避させ、ウェハWをたとえば2000rpmで高速回転させて、振り切り乾燥を実施する。これによって現像処理が終了する。
【0067】
以上説明した実施の形態によれば、まずウェハWの中央部に純水Pの液溜まりを形成し、次いで前記純水液溜りに希釈用の現像液供給ノズル158の下端面158a、すなわち接液面を接触させて純水液溜りに対して希釈用の現像液を供給しながら、ウェハW中心を通る径方向に希釈用の現像液供給ノズル158を移動させてウェハWのレジスト膜R上に希釈現像液の液溜りを形成するようにしたので、希釈用の現像液供給ノズル158の接液面とレジスト膜R基板表面との間の希釈現像液については、反応生成物がノズルの移動に伴って順次追い出され、新鮮な希釈現像液による現像が促進される。これによって従来、希釈現像液によるプリウェット処理を採用した現像処理において困難であった、ウェハWの中央部の線幅の制御が可能となる。したがってウェハW全体の面内均一性が向上する。
【0068】
以下、実際に実験した例を下記に示す。図14は、予め純水で希釈した希釈現像液をウェハW全面に注いで単純にプリウェット処理し(以下、「単純プリウェット」という)、その後に本実施の形態と同様な方法、条件により、現像液をウェハWに供給して現像したときの、ウェハWの半径方向のパターンの線幅のプロファイルを示し、横軸はウェハWの中心からエッジまでの距離(mm)を示し、縦軸はウェハW面内の線幅を437点において測定し、そのときの線幅を標準化したものである。そして同グラフ中、実線a、b、cで示されるプロファイルは、それぞれ現像液濃度が2%、8%、15%の希釈現像液でブリウェットしたときを示している。また破線Mで示されるプロファイルは、前記した本実施の形態によるプリウェット処理を行なった後に前記した現像処理によって現像したときのプロファイルを示している。
【0069】
この図14のグラフ図から判るように、本実施の形態によれば、単純プリウェットよりもウェハWの中心から30mmの範囲での線幅のプロファイルが、大きく改善され、全体として面内均一性が向上していることが判る。
【0070】
前記実施の形態では、希釈用の現像液供給ノズル158の下端面158a、すなわち接液面とウェハW表面のレジスト膜Rとの間の距離dを1mmに維持しながら、純水の液溜まりと接触させて希釈用現像液を供給したが、この距離dについては、短いほどよいことが判った。
【0071】
図15は、接液面とウェハW表面のレジスト膜Rとの間の距離dを3mm、2mm、1mmに設定して同一のプリウェット処理を行った場合の、ウェハWの中心から50mmまでの間の線幅と、ウェハWの中心から51mm〜ウェハWのエッジまでの間の線幅とに分類した場合の、線幅の差分(単位nm)を比較したものであり、これによれば、希釈用の現像液供給ノズル158の下端面158a、すなわち接液面とウェハW表面のレジスト膜Rとの間の距離dが3mmから1mmになると、ウェハWの中心から50mmまでの間の線幅と、ウェハWの中心から51mm〜ウェハWのエッジまでの間の線幅との間の差異が小さくなっていることが判る。ただし、たとえば0.5mm未満だと、機械精度にもよるが、ウェハWのレジスト膜表面と希釈用の現像液供給ノズル158の下端面158a、すなわち接液面とが接触するおそれがある。したがって、実際的には下限は0.5mm、より安全をみるなら、1.0mmが妥当なものと思われる。
【0072】
また前記した実施の形態では、ウェハWの中心から20mm偏心した位置から中心を通って反対側に20mm偏心した位置にまで希釈用の現像液供給ノズル158を移動させて、合計40mmの移動過程において純水の液溜まりに対して希釈用の現像液を供給して希釈したが、そのようなノズル移動開始位置、並びにノズル移動距離によるウェハWの中央部の線幅制御について調べたところ、それぞれ図16図17に示したようになった。
【0073】
図16は、現像液供給ノズル158の移動開始位置(横軸、単位mm)、すなわち図9に示した距離L1をウェハWの中心から10mm、15mm、20mmに設定して、純水Pの液溜まりに対して希釈用の現像液を供給したときの、現像液供給ノズル158の移動開始位置と線幅の3σ値(縦軸、単位nm)との関係を示している。これによれば、実施の形態のように中心から20mm偏心した位置から現像液供給ノズル158の移動を開始して希釈用の現像液を供給した場合に、最も面内均一性が向上していることが判った。
【0074】
また図17は、ノズル移動距離(横軸、単位mm)を20mm、30mm、40mmに設定して、純水の液溜まりに対して希釈用の現像液を供給したときの現像液供給ノズル158の移動距離(スキャン幅)と線幅の3σ値(縦軸、単位nm)との関係を示している。これによれば、実施の形態のように40mm移動させた場合が、最も面内均一性が向上していることが判る。
【0075】
これら図16図17に示した結果からすれば、現像液供給ノズル158の下端面158a、すなわち接液面とウェハW上のレジスト膜Rとの間の距離を調整することで、ウェハWの中央部の線幅を制御することができる。また現像液供給ノズル158の移動距離を調整することで、同様にウェハWの中央部の線幅を制御することができる。
【0076】
なお前記実施の形態では、希釈用の現像液供給ノズル158と現像液供給ノズル161とは同形同大、同一構造のものを使用したが、敢えて専用の希釈用の現像液供給ノズル158を用意せず、現像液供給ノズル161を用いて、純水Pの液溜まりに対して希釈用の現像液を供給し、さらにプリウェット処理後に現像液供給ノズル161を用いて、ウェハWに対して現像用の現像液を供給するようにしてもよい。
【0077】
また前記実施の形態では、一旦純水Pの液溜まりに対して希釈用の現像液供給ノズル158から希釈用の現像液を供給して、ウェハW上に希釈現像液Qの液溜まりを形成するようにしたが、そのように純水Pの液溜まりを形成することなく、希釈用の現像液供給ノズル158から、予め純水で希釈された現像液を、偏心した位置にて供給し始めるようにしてもよい。もちろんその場合であっても、供給した希釈現像液Qの液面に希釈用の現像液供給ノズル158の下端面158a、すなわち接液面を接触させながら希釈現像液を供給し、前記実施の形態と同様、ノズルを移動させることが必要である。
【0078】
かかるプロセスによっても、希釈用の現像液供給ノズル158の下端面158a、すなわち接液面とレジスト膜Rの表面との間の希釈された現像液による反応生成物は、希釈用の現像液供給ノズル158の移動によって追い出され、新鮮な希釈された現像液が流入するので、前記実施の形態と同様に、ウェハWの中央部の線幅のプロファイルが改善され、全体としての面内均一性は向上する。しかも前記した実施の形態よりもスループットが向上する。
【0079】
なお前記実施の形態で用いた希釈用の現像液供給ノズル158、現像液供給ノズル161は、下端面に複数の供給孔を有するものであったが、本発明で使用できるノズルは、このような形態に限られない。たとえば供給孔が1つであってもよい。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、基板上のレジスト膜を現像処理する際に有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 基板処理システム
30 現像処理装置
31 下部反射防止膜形成装置
32 レジスト塗布装置
33 上部反射防止膜形成装置
40 熱処理装置
140 スピンチャック
154 純水供給ノズル
155、159、163 ノズル駆動部
158 希釈用の現像液供給ノズル
161 現像液供給ノズル
200 制御部
P 純水
Q 希釈現像液
R レジスト膜
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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