特許第6370791号(P6370791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6370791カルバゾール誘導体、これを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、並びにこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6370791
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】カルバゾール誘導体、これを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、並びにこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/88 20060101AFI20180730BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20180730BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180730BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   C07D209/88CSP
   C07D403/14
   H05B33/14 B
   H05B33/22 D
   C09K11/06 660
   C09K11/06 690
【請求項の数】24
【全頁数】81
(21)【出願番号】特願2015-535462(P2015-535462)
(86)(22)【出願日】2014年9月1日
(86)【国際出願番号】JP2014072951
(87)【国際公開番号】WO2015033894
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-183537(P2013-183537)
(32)【優先日】2013年9月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】水木 由美子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕勝
(72)【発明者】
【氏名】羽毛田 匡
(72)【発明者】
【氏名】羽山 友治
(72)【発明者】
【氏名】西村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】河村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】柴田 充
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0093207(KR,A)
【文献】 国際公開第2013/046635(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/057706(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/049325(WO,A2)
【文献】 国際公開第2012/108879(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/150826(WO,A1)
【文献】 特開2006−352046(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/081088(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101062929(CN,A)
【文献】 MORIWAKI,K. et al.,Photochemical reaction of 1,3,5-tris(diphenylamino)benzene,Journal of Photopolymer Science and Technology,1999年,Vol.12, No.5,p.777-80
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D201/00−521/00
C09K 11/00− 11/89
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるカルバゾール誘導体。
【化1】

[式(1)において、Aは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、又は、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基を示す。
1は、N又はCH、X2〜X4は、それぞれN又はCRを示す。
1〜B3のうち下記式(2−2)で表されないもの及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。Rが複数ある場合、それぞれは同一であっても異なっていてもよい。
1〜B3の少なくとも2つは、下記式(2−2)で表される。
【化2】

(*は式(1)におけるB1〜B3が結合する炭素との結合位置を示す。
nは0又は1の整数を示す。Lは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基、又は、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリーレン基を示す。
27、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。
1とR8は水素原子である。
また、ZはLと結合する単結合を表す。nが0の場合は、式(1)と式(2−2)との結合が単結合であることを表す。)
【請求項2】
前記式(1)において、B1〜B3の2つが、前記式(2−2)で表されることを特徴とする請求項1記載のカルバゾール誘導体。
【請求項3】
前記式(1)において、B1及びB2が、前記式(2−2)で表されることを特徴とする請求項1記載のカルバゾール誘導体。
【請求項4】
前記式(2−2)が、下記式(2−3)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカルバゾール誘導体。
【化3】
【請求項5】
Aが、下記式(III)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカルバゾール誘導体。
【化4】

(式(III)において、L1は、単結合、又は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基を示す。X11〜X13は、CR51又は窒素原子を示す。ただし、X11〜X13の少なくとも1つはNである。R51、R19〜R20は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。R51が複数ある場合、それぞれは同一であっても異なっていてもよい。*は結合位置を示す。)
【請求項6】
下記式(3)で表される請求項1〜3のいずれかに記載のカルバゾール誘導体。
【化5】

(式(3)において、R11及び18前記R1及びR8と同様に表され、前記R12〜R17前記R2〜R7と同様に表される。)
【請求項7】
下記式(4)又は(5)で表される請求項1〜3のいずれかに記載のカルバゾール誘導体。
【化6】

(式(4)及び(5)において、X11〜X13は、それぞれ独立に、CR51又はNを示す。ただし、X11〜X13の少なくとも1つはNである。
11及び18前記R1及びR8と同様に表され、前記R12〜R17前記R2〜R7と同様に表され、R19〜R20及びR51は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す。)
【請求項8】
前記R、B1〜B3及び27置換基である場合、該置換基が、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7〜61のアラルキル基、アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキルチオ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のハロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するスルフォニル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ホウ素含有基、亜鉛含有基、スズ含有基、ケイ素含有基、マグネシウム含有基、リチウム含有基、ヒドロキシ基、アルキル置換又はアリール置換カルボニル基、カルボキシル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群から選ばれる基である、請求項1〜3のいずれかに記載のカルバゾール誘導体。
【請求項9】
前記R、B1〜B3及び27置換基である場合、該置換基が、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニリル基、置換もしくは無置換のターフェニリル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、置換もしくは無置換のフルオレニル基、置換もしくは無置換の9,9’−スピロビフルオレニル基、置換もしくは無置換のクリセニル基、置換もしくは無置換のトリフェニレニル基、置換もしくは無置換の9,9−ジメチルフルオレニル基、置換もしくは無置換の9,9−ジフェニルフルオレニル基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のピリミジニル基、置換もしくは無置換のトリアジニル基、置換もしくは無置換のベンゾフラニル基、置換もしくは無置換のイソベンゾフラニル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換のイソキノリル基、置換もしくは無置換のキナゾリニル基、置換もしくは無置換のベンゾチオフェニル基、置換もしくは無置換のイソベンゾチオフェニル基、置換もしくは無置換のインドリジニル基、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のアザトリフェニレニル基、置換もしくは無置換のジアザトリフェニレニル基、置換もしくは無置換のキサンテニル基、置換もしくは無置換のアザカルバゾリル基、置換もしくは無置換のアザジベンゾフラニル基、及び置換もしくは無置換のアザジベンゾチオフェニル基からなる群から選ばれる基である、請求項1〜3のいずれかに記載のカルバゾール誘導体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のカルバゾール誘導体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項11】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、請求項1〜9のいずれかに記載のカルバゾール誘導体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記発光層が前記カルバゾール誘導体を含有する請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記陽極と前記発光層との間に、さらに第1の電荷輸送層を有し、該第1の電荷輸送層が前記カルバゾール誘導体を含有する請求項11又は12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記陰極と前記発光層との間に、さらに第2の電荷輸送層を有し、該第2の電荷輸送層が前記カルバゾール誘導体を含有する請求項11〜13のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
前記発光層が燐光発光材料を含有する請求項11〜14のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
前記発光層が蛍光発光材料を含有する請求項11〜14のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
前記燐光発光材料が、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、白金(Pt)から選択される金属原子のオルトメタル化錯体である請求項15に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項18】
前記燐光発光材料が、下記式(X)で表される錯体である請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化7】

(式(X)において、R0は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基、kは1〜8の整数、tは2〜4の整数である。Mは、Ir、Os、又はPtである。)
【請求項19】
請求項11〜18のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器。
【請求項20】
下記式(10)で表されるカルバゾール誘導体。
【化8】

[式(10)において、A’は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基、又は、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリーレン基を示す。
1及びX5は、それぞれN又はCH、X2〜X4及びX6〜X8は、それぞれN又はCRを示す。
1〜B3のうち下記式(2−2)で表されないもの、R及びB4〜B6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。Rが複数ある場合、それぞれは同一であっても異なっていてもよい。
1〜B3の少なくとも2つは下記式(2−2)で表される。
【化9】
(*は式(10)におけるB1〜B3が結合する炭素との結合位置を示す。
nは0又は1の整数を示す。Lは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基、又は、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリーレン基を示す。
27、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。
1とR8は水素原子である。
また、ZはLと結合する単結合を表す。nが0の場合は、式(10)と式(2−2)との結合が単結合であることを表す。)
【請求項21】
前記式(10)において、B1〜B3の2つが、前記式(2−2)で表されることを特徴とする請求項20記載のカルバゾール誘導体。
【請求項22】
前記式(10)において、B1及びB2が、前記式(2−2)で表されることを特徴とする請求項20記載のカルバゾール誘導体。
【請求項23】
前記式(2−2)が、下記式(2−3)で表されることを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載のカルバゾール誘導体。
【化10】
【請求項24】
下記式(11)で表される請求項20〜23のいずれかに記載のカルバゾール誘導体。
【化11】

(式(11)において、X11〜X13は、それぞれ独立に、CR51又はNを示す。R31及び3841及び48は、前記R1及びR8と同様に表され、R32〜R37及びR42〜R47前記R2〜R7と同様に表される。
51は、水素原子又は置換基を示す。R51が複数ある場合、それぞれは同一であっても異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルバゾール誘導体、これを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、並びにこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は陽極、陰極、及び陽極と陰極に挟まれた1層以上の有機薄膜層から構成されている。両電極間に電圧が印加されると、陰極側から電子、陽極側から正孔が発光領域に注入され、注入された電子と正孔は発光領域において再結合して励起状態を生成し、励起状態が基底状態に戻る際に光を放出する。
また、有機EL素子は、発光層に種々の発光材料を用いることにより、多様な発光色を得ることが可能であることから、ディスプレイなどへの実用化研究が盛んである。特に赤色、緑色、青色の三原色の発光材料の研究が最も活発であり、特性向上を目指して鋭意研究がなされている。
【0003】
このような有機EL素子用の材料として、特許文献1,2には、カルバゾールの1、3位に、さらにカルバゾールが結合した化合物が開示されている。
しかしながら、有機EL素子の分野においては、さらなる素子性能の向上を目指すため、新たな材料系の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/049325号
【特許文献2】中国特許出願公開第101126020号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、有機EL素子用材料として有用な新規材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、カルバゾール誘導体の2、3、4位のいずれかに、カルバゾールに代表される特定の構造基が2つ以上結合した化合物が、有機EL素子用材料として素子性能向上に有効であることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の一実施態様によれば、以下に示されるカルバゾール誘導体が提供される。
[1]下記式(1)で表されるカルバゾール誘導体。
【0008】
【化1】
【0009】
[式(1)において、Aは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、又は、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基を示す。
1は、N又はCH、X2〜X4は、それぞれN又はCRを示す。
R及びB1〜B3は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。Rが複数ある場合、それぞれは同一であっても異なっていてもよい。
1〜B3の少なくとも2つは、下記式(2)で表される。
【0010】
【化2】
【0011】
(*は式(1)におけるB1〜B3が結合する炭素との結合位置を示す。
nは0〜4の整数。Lは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキレン基を示す。
Yは、NZ、O、S、CR’R''を示す。
1〜R8、Z、R’及びR''は、それぞれ独立に、単結合、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。
ただし、YがNZのとき、R1とR8は水素原子である。
また、R1〜R8、Z、R’及びR''のうちいずれか1つはLと結合する単結合を表し、nが0の場合は、式(1)と式(2)との結合が単結合であることを表す。nが2以上の場合は、複数のLは同一であっても異なっていてもよく、L同士で互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。)]
【0012】
[2]前記カルバゾール誘導体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
[3]陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、前記カルバゾール誘導体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
[4]前記有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器。
[5]下記式(10)で表されるカルバゾール誘導体。
【0013】
【化3】
【0014】
[式(10)において、A’は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基、又は、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリーレン基を示す。
1及びX5は、N又はCH、X2〜X4及びX6〜X8は、それぞれN又はCRを示す。
R及びB1〜B6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。
1〜B3の少なくとも2つは下記式(2)で表される。
【0015】
【化4】
【0016】
(*は式(10)におけるB1〜B3が結合する炭素との結合位置を示す。
nは0〜4の整数。Lは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキレン基を示す。
Yは、NZ、O、S、CR’R''を示す。
1〜R8、Z、R’及びR''は、それぞれ独立に、単結合、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。
ただし、YがNZのとき、R1とR8は水素原子である。
また、R1〜R8、Z、R’及びR''のうちいずれか1つはLと結合する単結合を表し、nが0の場合は、式(10)と式(2)との結合が単結合であることを表す。nが2以上の場合は、複数のLは同一であっても異なっていてもよく、L同士で互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。)]
【発明の効果】
【0017】
本発明は、有機EL素子用材料として有用な新規材料及びこれを用いてなる有機EL素子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る有機EL素子の一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願において、「置換もしくは無置換の炭素数a〜bのX基」という表現における「炭素数a〜b」は、X基が無置換である場合の炭素数を表すものであり、X基が置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。
また、隣接する置換基同士で環を形成する場合は、一方の置換基の炭素数がa〜bの範囲内で最小となる箇所で当該環を切り離して、他方の置換基の炭素数もa〜bの範囲内となる構造が含まれる。
【0020】
「環形成炭素数」とは、原子又は分子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、スピロ環化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、特筆しない限り同様とする。
【0021】
「環形成原子数」とは、原子又は分子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、スピロ環化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子の未結合手を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、特筆しない限り同様とする。
【0022】
また、本願において、「水素原子」とは、中性子数が異なる同位体、すなわち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)及び三重水素(tritium)を包含する。
【0023】
更に、「置換もしくは無置換」というときの任意の置換基は、炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基;環形成炭素数3〜50(好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8、さらに好ましくは5又は6)のシクロアルキル基;環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基;環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基を有する炭素数7〜51(好ましくは7〜30、より好ましくは7〜20)のアラルキル基;アミノ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基を有するアルコキシ基;環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基を有するアリールオキシ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基;環形成原子数5〜50(好ましくは5〜24、より好ましくは5〜13)のヘテロアリール基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のハロアルキル基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);シアノ基;ニトロ基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するスルフォニル基;炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基;、アルキルスルホニルオキシ基;アリールスルホニルオキシ基;アルキルカルボニルオキシ基;アリールカルボニルオキシ基;ホウ素含有基;亜鉛含有基;スズ含有基;ケイ素含有基;マグネシウム含有基;リチウム含有基;ヒドロキシ基;アルキル置換又はアリール置換カルボニル基;カルボキシル基;ビニル基;(メタ)アクリロイル基;エポキシ基;並びにオキセタニル基からなる群より選ばれるものが好ましい。
これらの置換基は、さらに上述の任意の置換基により置換されていてもよい。
【0024】
[カルバゾール誘導体]
本発明の一実施態様であるカルバゾール誘導体は、下記(1)で表される。
【化5】
【0025】
式(1)において、Aは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、又は、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基を示す。
1は、N又はCH、X2〜X4は、それぞれN又はCRを示す。
R及びB1〜B3は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。Rが複数ある場合、それぞれは同一であっても異なっていてもよい。
1〜B3の少なくとも2つは、下記式(2)で表される。
【0026】
【化6】
【0027】
*は式(1)におけるB1〜B3が結合する炭素との結合位置を示す。
nは0〜4の整数である。Lは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキレン基を示す。
Yは、NZ、O、S、CR’R''を示す。
1〜R8、Z、R’及びR''は、それぞれ独立に、単結合、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。
ただし、YがNZのとき、R1とR8は水素原子である。
また、R1〜R8、Z、R’及びR''のうちいずれか1つはLと結合する単結合を表し、nが0の場合は、式(1)と式(2)との結合が単結合であることを表す。nが2以上の場合は、複数のLは同一であっても異なっていてもよく、L同士で互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。
【0028】
式(1)において、式(2)で表される基は、B1〜B3のいずれか2つであると好ましく、その組み合わせとして(B1,B2)、(B1,B3)、(B2,B3)に結合したものが挙げられ、(B1,B2)であると好ましい。
また、式(2)において、Yが、NZであるものが好ましい。また、nが0又は1が好ましく、1がより好ましい。
さらに、式(1)が下記式(3)で表されるカルバゾール誘導体が好ましい。
【0029】
【化7】
(式(3)において、R11〜R18は上記R1〜R8と同様に表される。)
【0030】
これらの中でも、特に下記式(4)又は(5)のカルバゾール誘導体が好ましい。
【化8】
【0031】
(式(4)及び(5)において、X11〜X13は、それぞれ独立に、CR51又はNを示す。ただし、X11〜X13の少なくとも1つはNである。
19〜R20及びR51は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示す。R51が複数ある場合、それぞれは同一であっても異なっていてもよい。)
【0032】
本発明の一実施態様であるカルバゾール誘導体は、下記式(10)で表されても良い。
【化9】
【0033】
式(10)において、A’は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基、又は、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリーレン基を示す。
1及びX5は、N又はCH、X2〜X4及びX6〜X8は、それぞれN又はCRを示す。
R及びB1〜B6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。Rが複数ある場合、それぞれは同一であっても異なっていてもよい。
1〜B3の少なくとも2つは上記式(2)で表される。
式(10)において、B1〜B3の少なくとも2つは下記式(2)で表され、B4〜B6の少なくとも2つは上記式(2)で表されると好ましい。
【0034】
式(10)で表されるカルバゾール誘導体は、下記式(11)で表されると好ましい。
【化10】
【0035】
(式(11)において、X11〜X13は、それぞれ独立に、CR51又はNを示す。R1〜R8、R11〜R18、R31〜R38及びR41〜R48は、式(1)のR1〜R8と同じである。
51は、水素原子又は置換基を示す。R51が複数ある場合、それぞれは同一であっても異なっていてもよい。)
【0036】
上記式(2)は、下記式(2−1)で表されると好ましく、下記式(2−2)で表されるとより好ましく、下記式(2−3)で表されるとさらに好ましい。
【0037】
【化11】
【0038】
上記式(1)〜(5)及び(10)〜(11)において、前記R、B1〜B6、R1〜R8、R11〜R20、R31〜R38、R41〜R48、R51、Z、R’及びR''としては、それぞれ独立に、水素原子又は下記(A)群から選択される置換基であることが好ましく、水素原子又は下記(B)群から選択される置換基であることがより好ましく、水素原子又は下記(C)群から選択される置換基であることがさらに好ましい。
【0039】
上記(A)群とは、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基(「芳香族炭化水素基」と同義、以下同様)、置換もしくは無置換の炭素数7〜61のアラルキル基、アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキルチオ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基(「複素環基」と同義、以下同様)、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のハロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するスルフォニル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ホウ素含有基、亜鉛含有基、スズ含有基、ケイ素含有基、マグネシウム含有基、リチウム含有基、ヒドロキシ基、アルキル置換又はアリール置換カルボニル基、カルボキシル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、並びにオキセタニル基からなる群である。
【0040】
上記(B)群とは、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7〜51のアラルキル基、アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキルチオ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のハロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するスルフォニル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基、からなる群である。
【0041】
上記(C)群とは、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7〜51のアラルキル基、アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基及び置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基、ハロゲン原子、並びにシアノ基からなる群である。
以上の置換基の中でも、具体的には、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニリル基、置換もしくは無置換のターフェニリル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のフェナントリル基、置換もしくは無置換のフルオレニル基、置換もしくは無置換の9,9’−スピロビフルオレニル基、置換もしくは無置換のクリセニル基、置換もしくは無置換のトリフェニレニル基、置換もしくは無置換の9,9−ジメチルフルオレニル基、置換もしくは無置換の9,9−ジフェニルフルオレニル基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のピリミジニル基、置換もしくは無置換のトリアジニル基、置換もしくは無置換のベンゾフラニル基、置換もしくは無置換のイソベンゾフラニル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換のイソキノリル基、置換もしくは無置換のキナゾリニル基、置換もしくは無置換のベンゾチオフェニル基、置換もしくは無置換のイソベンゾチオフェニル基、置換もしくは無置換のインドリジニル基、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のアザトリフェニレニル基、置換もしくは無置換のジアザトリフェニレニル基、置換もしくは無置換のキサンテニル基、置換もしくは無置換のアザカルバゾリル基、置換もしくは無置換のアザジベンゾフラニル基、及び置換もしくは無置換のアザジベンゾチオフェニル基からなる群から選ばれる基であると好ましい。
【0042】
前記炭素数1〜50(好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは炭素数1〜8)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基(異性体を含む)、ヘキシル基(異性体を含む)、ヘプチル基(異性体を含む)、オクチル基(異性体を含む)、ノニル基(異性体を含む)、デシル基(異性体を含む)、ウンデシル基(異性体を含む)、及びドデシル基(異性体を含む)、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、テトラコサニル基、テトラコンタニル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基(異性体を含む)、ヘキシル基(異性体を含む)、ヘプチル基(異性体を含む)、オクチル基(異性体を含む)、ノニル基(異性体を含む)、デシル基(異性体を含む)、ウンデシル基(異性体を含む)、ドデシル基(異性体を含む)、トリデシル基、テトラデシル基、及びオクタデシル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基(異性体を含む)、ヘキシル基(異性体を含む)、ヘプチル基(異性体を含む)、及びオクチル基(異性体を含む)がより好ましい。
【0043】
前記環形成炭素数3〜50(好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8、さらに好ましくは5又は6)のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基などが挙げられ、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0044】
前記環形成炭素数6〜60(好ましくは環形成炭素数6〜25、より好ましくは環形成炭素数6〜18)のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ナフチルフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、アセナフチレニル基、アントリル基、ベンゾアントリル基、アセアントリル基、フェナントリル基、ベンゾフェナントリル基、フェナレニル基、フルオレニル基、9,9’−スピロビフルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、ピセニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾクリセニル基、s−インダニル基、as−インダニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、テトラセニル基、トリフェニレニル基、ベンゾトリフェニレニル基、ペリレニル基、コロニル基、ジベンゾアントリル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、9,9−ジフェニルフルオレニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、フェナントリル基、ベンゾフェナントリル基、フルオレニル基、9,9’−スピロビフルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、クリセニル基、ベンゾクリセニル基、s−インダニル基、as−インダニル基、トリフェニレニル基、ベンゾトリフェニレニル基、アントリル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、9,9−ジフェニルフルオレニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、9,9’−スピロビフルオレニル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、9,9−ジフェニルフルオレニル基がより好ましい。
【0045】
環形成原子数5〜60(好ましくは5〜24、より好ましくは環形成原子数5〜13)のヘテロアリール基は少なくとも1個、好ましくは1〜5個(より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)のヘテロ原子、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、リン原子を含む。該へテロアリール基としては、例えば、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチオフェニル基、インドリジニル基、キノリジニル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズチアゾリル基、インダゾリル基、ベンズイソキサゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、アザトリフェニレニル基、ジアザトリフェニレニル基、キサンテニル基、アザカルバゾリル基、アザジベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基、ベンゾフラノベンゾチオフェニル基、ベンゾチエノベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラノナフチル基、ジベンゾチエノナフチル基、及びジナフトチエノチオフェニル基などが挙げられ、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチオフェニル基、インドリジニル基、キノリジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズイソキサゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、アザトリフェニレニル基、ジアザトリフェニレニル基、キサンテニル基、アザカルバゾリル基、アザジベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基が好ましく、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチオフェニル基、インドリジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、アザトリフェニレニル基、ジアザトリフェニレニル基、キサンテニル基、アザカルバゾリル基、アザジベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基がより好ましい。
【0046】
前記環形成炭素数6〜60(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基を有する総炭素数7〜61のアラルキル基としては、上記アリール基を有するアラルキル基が挙げられる。
前記炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜60のアリール基(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基としては、上記アルキル基及び上記アリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基が挙げられ、該ジ置換アミノ基が好ましく、上記アリール基から選ばれる置換基を有するジ置換アミノ基がさらに好ましい。
【0047】
前記炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基を有するアルコキシ基としては、上記アルキル基を有するアルコキシ基が挙げられ、例えば、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
前記環形成炭素数6〜60(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基を有するアリールオキシ基としては、上記アリール基を有するアリールオキシ基が挙げられ、例えば、フェノキシ基等が挙げられる。
【0048】
前記炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基を有するアルキルチオ基としては、上記アルキル基を有するアルキルチオ基が挙げられる。
前記環形成炭素数6〜60(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基を有するアリールチオ基としては、上記アリール基を有するアリールチオ基が挙げられる。
【0049】
炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び環形成炭素数6〜60(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基としては、上記アルキル基及び上記アリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基が挙げられ、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基等が挙げられる。
前記炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のハロアルキル基としては、上記アルキル基の水素原子の1以上が、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)により置換されたものが挙げられる。
【0050】
前記炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び前記環形成炭素数6〜60(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するスルフォニル基としては、上記アルキル基又は上記アリール基から選ばれる置換基を有するスルフォニル基が挙げられる。
前記炭素数1〜50(好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8)のアルキル基及び前記環形成炭素数6〜60(好ましくは6〜25、より好ましくは6〜18)のアリール基から選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基としては、上記アルキル基及び上記アリール基から選ばれる置換基を有するジ置換ホスフォリル基が挙げられる。
前記アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキル置換又はアリール置換カルボニル基としては、それぞれ、上記アルキル基及び上記アリール基から選ばれる置換基を有する基が挙げられる。
以上の置換基の中でも、特に、フッ素原子、シアノ基、アルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、ジ置換アミノ基が好ましい。
【0051】
式(1)において、Aの示す置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基としては、上記R及びB1〜B6、R1〜R8、R11〜R20、R31〜R38、R41〜R48、R51、Z、R’及びR''で表される置換基のアリール基と同様の例が挙げられる。
Aの示す置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基としては、上記R、B1〜B6、R1〜R8、R11〜R20、R31〜R38、R41〜R48、R51、Z、R’及びR''で表される置換基のヘテロアリール基と同様の例が挙げられる。
式(10)において、A’の示す置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基としては、上記R、B1〜B3、R1〜R8、R11〜R20、R31〜R38、R41〜R48、R51、Z、R’及びR''で表される置換基のアリール基の例を2価としたアリーレン基が挙げられる。
A’の示す置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリーレン基としては、上記R、B1〜B3、R1〜R8、R11〜R20、R31〜R38、R41〜R48、R51、Z、R’及びR''で表される置換基のヘテロアリール基の例を2価としたヘテロアリーレン基が挙げられる。
【0052】
式(2)において、Lの示す置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基としては、上記R、B1〜B6、R1〜R8、R11〜R20、R31〜R38、R41〜R48、R51、Z、R’及びR''で表される置換基のアリール基の例を2価としたアリーレン基が挙げられる。
Lの示す置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリーレン基としては、上記R、B1〜B6、R1〜R8、R11〜R20、R31〜R38、R41〜R48、R51、Z、R’及びR''で表される置換基のヘテロアリール基の例を2価としたヘテロアリーレン基が挙げられる。
Lの示す置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキレン基としては、上記R、B1〜B6、R1〜R8、R11〜R20、R31〜R38、R41〜R48、R51、Z、R’及びR''で表される置換基のアルキル基の例を2価としたアルキレン基が挙げられる。
【0053】
なお、前記式(1)〜(5)及び(10)における、R、B1〜B6、R1〜R8、R11〜R20、R31〜R38、R41〜R48、R51、Z、R’及びR''のうち隣接する置換基同士が互いに結合して形成してもよい環としては、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基が挙げられる。
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基としては、上記R、B1〜B6、R1〜R8、R11〜R20、R31〜R38、R41〜R48、R51、Z、R’及びR''で表される置換基のアリール基と同様の例が挙げられる。
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基としては、上記R、B1〜B6、R1〜R8、R11〜R20、R31〜R38、R41〜R48、R51、Z、R’及びR''で表される置換基のヘテロアリール基と同様の例が挙げられる。
【0054】
本発明の一実施態様のカルバゾール誘導体は、置換基として環構造含有基を有するものが好ましく、特に、Aが環構造含有基を有するものが好ましい。
カルバゾール誘導体が環構造含有基を有することにより、有機EL素子用材料として用いた場合に、該材料を含む有機薄膜の膜質が良好となるなどの効果を奏する。
【0055】
環構造含有基としては、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜60(好ましくは3〜6、より好ましくは5又は6)のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60(好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18)のアリール基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60(好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18)のアリール基を有する総炭素数7〜61のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基(好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18)を置換基として有するアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60(好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18)のアリール基を有するアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60(好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18)のアリール基を置換基として有するシリル基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60(好ましくは5〜24、より好ましくは5〜13)のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60(好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18)のアリール基を置換基として有するスルフォニル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60(好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18)のアリール基を置換基として有するホスフォニル基から選択される基を含有する基が挙げられ、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基を有するモノ置換又はジ置換アミノ基を含有する基がより好ましい。これらの基の詳細は、上述のものと同様である。
【0056】
これらの中でも、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリール基であることが好ましい。
上記環構造含有基としては、置換基上に環構造含有基を有するものも包含され、この置換基の具体例としては、上述したものが挙げられる。
【0057】
また、Aは、特に下記式(I)で表される基が好ましく、下記式(II)で表される基、もしくは下記式(III)で表される基がより好ましい。
【0058】
*−L1−(R10)s (I)
[式(I)において、L1は、単結合、又は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基を示す。R10は水素原子又は置換基を示す。sは、1〜5の整数である。sが2以上の場合、複数のR10は同一であっても異なっていてもよい。*は結合位置を示す。]
【0059】
【化12】
[式(II)において、R10は水素原子又は置換基を示す。sは、1〜5の整数である。sが2以上の場合、複数のR10は同一であっても異なっていてもよい。*は結合位置を示す。]
【0060】
【化13】
[式(III)において、L1は、単結合、又は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基を示す。X11〜X13は、CR51又は窒素原子を示す。ただし、X11〜X13の少なくとも1つはNである。R51、R19〜R20は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を示し、隣接する置換基同士は、互いに結合して飽和又は不飽和の環構造を形成してもよい。R51が複数ある場合、それぞれは同一であっても異なっていてもよい。*は結合位置を示す。]
なお、前記式(III)における、R51、R19〜R20のうち隣接する置換基同士が互いに結合して形成してもよい環としては、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリーレン基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60のヘテロアリーレン基が挙げられる。
【0061】
上記式(I)〜(II)において、R10としては、上述のR、B1〜B3、R1〜R8、R11〜R20、R31〜R38、R41〜R48、R51、Z、R’及びR''と同様の例が挙げられる。
上記式(III)において、R19〜R20及びR51としては、上述のR、B1〜B3、R1〜R8、R11〜R18、R31〜R38、R41〜R48、Z、R’及びR'' と同様の例が挙げられる。R51としてより好ましくは、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、又は、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30のヘテロアリール基を示す。R19〜R20としてより好ましくは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、又は、置換もしくは無置換の件形成原子数5〜30のヘテロアリール基を示す。
【0062】
上述の本発明の一実施態様であるカルバゾール誘導体は有機EL素子用材料として有用である。上述の本発明の一実施態様であるカルバゾール誘導体の製造方法は特に制限されず、当業者であれば本明細書の実施例を参照しながら、公知の合成反応を利用及び変更して容易に製造することができる。
【0063】
[有機エレクトロルミネッセンス素子用材料]
本発明の一実施態様の有機EL素子用材料は、上記カルバゾール誘導体を含む。本発明の一実施態様の有機EL素子用材料におけるカルバゾール誘導体の含有量は、特に制限されず、例えば、1質量%以上であればよく、10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の一実施態様のカルバゾール誘導体及び有機EL素子用材料は、有機EL素子における材料として有用であり、例えば、蛍光発光ユニットの発光層におけるホスト材料及びドーパント材料や、燐光発光ユニットの発光層におけるホスト材料として用いることができる。この場合、発光層は本発明の一実施態様のカルバゾール誘導体と蛍光発光材料又は燐光発光材料を含有する。また、蛍光発光ユニット及び燐光発光ユニットのいずれにおいても、有機EL素子の陽極と発光層との間に設けられる陽極側有機薄膜層や、有機EL素子の陰極と発光層との間に設けられる陰極側有機薄膜層の材料、すなわち、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層、電子阻止層等の材料としても有用である。
ここで、「発光ユニット」とは、一層以上の有機層を含み、そのうちの一層が発光層であり、注入された正孔と電子が再結合することにより発光することができる最小単位をいう。
【0064】
以下に本発明の一実施態様であるカルバゾール誘導体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。

【0065】
【化14】
【0066】
【化15】
【0067】
【化16】
【0068】
【化17】
【0069】
【化18】
【0070】
【化19】
【0071】
(有機EL素子)
次に、本発明の一実施態様の有機EL素子について説明する。
本発明の一実施態様の有機EL素子は、陰極と陽極の間に発光層を含有する有機薄膜層を有し、この有機薄膜層のうちの少なくとも1層が前述した有機EL素子用材料を含むことを特徴とする。
前述の有機EL素子用材料が含まれる有機薄膜層の例としては、陽極と発光層との間に設けられる陽極側有機薄膜層(正孔輸送層、正孔注入層等)、発光層、陰極と発光層との間に設けられる陰極側有機薄膜層(電子輸送層、電子注入層等)、スペース層、障壁層等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前述の有機EL素子用材料は、上記いずれの層に含まれていてもよく、例えば、蛍光発光ユニットの発光層におけるホスト材料やドーパント材料、燐光発光ユニットの発光層におけるホスト材料、発光ユニットの正孔輸送層、電子輸送層等として用いることができる。
【0072】
本発明の一実施態様の有機EL素子は、蛍光又は燐光発光型の単色発光素子であっても、蛍光/燐光ハイブリッド型の白色発光素子であってもよいし、単独の発光ユニットを有するシンプル型であっても、複数の発光ユニットを有するタンデム型であってもよく、中でも、燐光発光型であることが好ましい。ここで、「発光ユニット」とは、一層以上の有機層を含み、そのうちの一層が発光層であり、注入された正孔と電子が再結合することにより発光することができる最小単位をいう。
【0073】
従って、シンプル型有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の素子構成を挙げることができる。
(1)陽極/発光ユニット/陰極
また、上記発光ユニットは、燐光発光層や蛍光発光層を複数有する積層型であってもよく、その場合、各発光層の間に、燐光発光層で生成された励起子が蛍光発光層に拡散することを防ぐ目的で、スペース層を有していてもよい。発光ユニットの代表的な層構成を以下に示す。
(a)正孔輸送層/発光層(/電子輸送層)
(b)正孔輸送層/第一燐光発光層/第二燐光発光層(/電子輸送層)
(c)正孔輸送層/燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(d)正孔輸送層/第一燐光発光層/第二燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(e)正孔輸送層/第一燐光発光層/スペース層/第二燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(f)正孔輸送層/燐光発光層/スペース層/第一蛍光発光層/第二蛍光発光層(/電子輸送層)
(g)正孔輸送層/電子障壁層/発光層(/電子輸送層)
(h)正孔輸送層/発光層/正孔障壁層(/電子輸送層)
(i)正孔輸送層/蛍光発光層/トリプレット障壁層(/電子輸送層)
【0074】
上記各燐光又は蛍光発光層は、それぞれ互いに異なる発光色を示すものとすることができる。具体的には、上記積層発光層(d)において、正孔輸送層/第一燐光発光層(赤色発光)/第二燐光発光層(緑色発光)/スペース層/蛍光発光層(青色発光)/電子輸送層といった層構成等が挙げられる。
なお、各発光層と正孔輸送層あるいはスペース層との間には、適宜、電子障壁層を設けてもよい。また、各発光層と電子輸送層との間には、適宜、正孔障壁層を設けてもよい。電子障壁層や正孔障壁層を設けることで、電子又は正孔を発光層内に閉じ込めて、発光層における電荷の再結合確率を高め、発光効率を向上させることができる。
【0075】
タンデム型有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の素子構成を挙げることができる。
(2)陽極/第一発光ユニット/中間層/第二発光ユニット/陰極
ここで、上記第一発光ユニット及び第二発光ユニットとしては、例えば、それぞれ独立に上述の発光ユニットと同様のものを選択することができる。
上記中間層は、一般的に、中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、第一発光ユニットに電子を、第二発光ユニットに正孔を供給する、公知の材料構成を用いることができる。
【0076】
図1に、本発明の一実施態様の有機EL素子の一例の概略構成を示す。有機EL素子1は、基板2、陽極3、陰極4、及び該陽極3と陰極4との間に配置された発光ユニット10とを有する。発光ユニット10は、燐光ホスト材料と燐光ドーパント(燐光発光材料)を含む少なくとも1つの燐光発光層を含む発光層5を有する。発光層5と陽極3との間に正孔注入・輸送層(陽極側有機薄膜層)6等、発光層5と陰極4との間に電子注入・輸送層(陰極側有機薄膜層)7等を形成してもよい。また、発光層5の陽極3側に電子障壁層を、発光層5の陰極4側に正孔障壁層を、それぞれ設けてもよい。これにより、電子や正孔を発光層5に閉じ込めて、発光層5における励起子の生成確率を高めることができる。
【0077】
なお、本明細書において、蛍光ドーパント(蛍光発光材料)と組み合わされたホストを蛍光ホストと称し、燐光ドーパントと組み合わされたホストを燐光ホストと称する。蛍光ホストと燐光ホストは分子構造のみにより区分されるものではない。すなわち、燐光ホストとは、燐光ドーパントを含有する燐光発光層を構成する材料を意味し、蛍光発光層を構成する材料として利用できないことを意味しているわけではない。蛍光ホストについても同様である。
【0078】
(基板)
本発明の一実施態様の有機EL素子は、透光性基板上に作製する。透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、400nm〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で平滑な基板が好ましい。具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を原料として用いてなるものを挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を原料として用いてなるものを挙げることができる。
【0079】
(陽極)
有機EL素子の陽極は、正孔を正孔輸送層又は発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有するものを用いることが効果的である。陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛酸化物、金、銀、白金、銅等が挙げられる。陽極はこれらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選択される。
【0080】
(陰極)
陰極は電子注入層、電子輸送層又は発光層に電子を注入する役割を担うものであり、仕事関数の小さい材料により形成するのが好ましい。陰極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金等が使用できる。陰極も、陽極と同様に、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。また、必要に応じて、陰極側から発光を取り出してもよい。
【0081】
(発光層)
発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料を含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。
燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
【0082】
ここで、上記発光層は、例えば、電子輸送性のホストと正孔輸送性のホストを組み合わせるなどして、発光層内のキャリアバランスを調整するダブルホスト(ホスト・コホストともいう)を採用してもよい。
また、量子収率の高いドーパント材料を二種類以上入れることによって、それぞれのドーパントが発光するダブルドーパントを採用してもよい。具体的には、ホスト、赤色ドーパント及び緑色ドーパントを共蒸着することによって、発光層を共通化して黄色発光を実現する態様が挙げられる。
【0083】
上記発光層は、複数の発光層を積層した積層体とすることで、発光層界面に電子と正孔を蓄積させて、再結合領域を発光層界面に集中させて、量子効率を向上させることができる。
発光層への正孔の注入し易さと電子の注入し易さは異なっていてもよく、また、発光層中での正孔と電子の移動度で表される正孔輸送能と電子輸送能が異なっていてもよい。
【0084】
発光層を形成する燐光ドーパント(燐光発光材料)は三重項励起状態から発光することのできる化合物であり、三重項励起状態から発光する限り特に限定されないが、Ir,Pt,Os,Au,Cu,Re及びRuから選択される少なくとも一つの金属と配位子とを含む有機金属錯体であることが好ましい。前記配位子は、オルトメタル結合を有することが好ましい。燐光量子収率が高く、発光素子の外部量子効率をより向上させることができるという点で、Ir,Os及びPtから選ばれる金属原子を含有する金属錯体が好ましく、イリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体等の金属錯体、特にオルトメタル化錯体がより好ましく、イリジウム錯体及び白金錯体がさらに好ましく、オルトメタル化イリジウム錯体が特に好ましい。
【0085】
燐光ドーパントの発光層における含有量は特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.1〜70質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。燐光ドーパントの含有量が0.1質量%以上であると十分な発光が得られ、70質量%以下であると濃度消光を避けることができる。
【0086】
燐光ドーパントとして好ましい有機金属錯体の具体例を、以下に示す。
【化20】
【0087】
【化21】
【0088】
【化22】
【0089】
【化23】
【0090】
さらに、本発明においては、燐光ドーパントとして、下記式(X)で表される錯体が好ましい。
【化24】
【0091】
(式(X)において、R0は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基、kは1〜8の整数、tは2〜4の整数である。Mは、Ir、Os、又はPtである。)
0の置換基としは、式(1)の置換基と同様の例が挙げられる。
【0092】
燐光ホストは、燐光ドーパントの三重項エネルギーを効率的に発光層内に閉じ込めることにより、燐光ドーパントを効率的に発光させる機能を有する化合物である。本発明の一実施態様のカルバゾール誘導体又は有機EL素子用材料は燐光ホストとして有用であるが、本発明の一実施態様の有機EL素子用材料以外の化合物も、燐光ホストとして、上記目的に応じて適宜選択することができる。また、本発明の一実施態様の有機EL素子用材料は、上記燐光ホストへの適用に限定されない。
本発明の一実施態様の有機EL素子用材料とそれ以外の化合物を同一の発光層内の燐光ホスト材料として併用してもよいし、複数の発光層がある場合には、そのうちの一つの発光層の燐光ホスト材料として本発明の一実施態様の有機EL素子用材料を用い、別の一つの発光層の燐光ホスト材料として本発明の一実施態様の有機EL素子用材料以外の化合物を用いてもよい。また、本発明の一実施態様の有機EL素子用材料は発光層以外の有機層にも使用しうるものであり、その場合には発光層の燐光ホストとして、本発明の一実施態様の有機EL素子用材料以外の化合物を用いてもよい。
【0093】
本発明の一実施態様の有機EL素子用材料以外の化合物で、燐光ホストとして好適な化合物の具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。燐光ホストは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。具体例としては、以下のような化合物が挙げられる。
【0094】
【化25】
【0095】
本発明の一実施態様の有機EL素子は、蛍光発光材料を含有する発光層、つまり蛍光発光層を有していてもよい。蛍光発光層としては、公知の蛍光発光材料を使用できる。該蛍光発光材料としては、アントラセン誘導体、フルオランテン誘導体、スチリルアミン誘導体及びアリールアミン誘導体から選択される少なくとも1種が好ましく、アントラセン誘導体、アリールアミン誘導体がより好ましい。特に、ホスト材料としてはアントラセン誘導体が好ましく、ドーパントとしてはアリールアミン誘導体が好ましい。具体的には、国際公開第2010/134350号や国際公開第2010/134352号に記載する好適な材料が選択される。本発明の一実施態様の有機EL素子用材料は、蛍光発光層の蛍光発光材料として用いてもよく、蛍光発光層のホスト材料として用いてもよい。
【0096】
(電子供与性ドーパント)
本発明の一実施態様の有機EL素子は、陰極と発光ユニットとの界面領域に電子供与性ドーパントを有することも好ましい。このような構成によれば、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。ここで、電子供与性ドーパントとは、仕事関数3.8eV以下の金属を含有するものをいい、その具体例としては、アルカリ金属、アルカリ金属錯体、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属錯体、アルカリ土類金属化合物、希土類金属、希土類金属錯体、及び希土類金属化合物等から選ばれた少なくとも一種類が挙げられる。
【0097】
アルカリ金属としては、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)、Cs(仕事関数:1.95eV)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち好ましくはK、Rb、Cs、さらに好ましくはRb又はCsであり、最も好ましくはCsである。アルカリ土類金属としては、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0eV〜2.5eV)、Ba(仕事関数:2.52eV)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。希土類金属としては、Sc、Y、Ce、Tb、Yb等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
【0098】
アルカリ金属化合物としては、Li2O、Cs2O、K2O等のアルカリ酸化物、LiF、NaF、CsF、KF等のアルカリハロゲン化物等が挙げられ、LiF、Li2O、NaFが好ましい。アルカリ土類金属化合物としては、BaO、SrO、CaO及びこれらを混合したBaxSr1-xO(0<x<1)、BaxCa1-xO(0<x<1)等が挙げられ、BaO、SrO、CaOが好ましい。希土類金属化合物としては、YbF3、ScF3、ScO3、Y23、Ce23、GdF3、TbF3等が挙げられ、YbF3、ScF3、TbF3が好ましい。
【0099】
アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、希土類金属錯体としては、それぞれ金属イオンとしてアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンの少なくとも一つ含有するものであれば特に限定はない。また、配位子にはキノリノール、ベンゾキノリノール、アクリジノール、フェナントリジノール、ヒドロキシフェニルオキサゾール、ヒドロキシフェニルチアゾール、ヒドロキシジアリールオキサジアゾール、ヒドロキシジアリールチアジアゾール、ヒドロキシフェニルピリジン、ヒドロキシフェニルベンゾイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフルボラン、ビピリジル、フェナントロリン、フタロシアニン、ポルフィリン、シクロペンタジエン、β−ジケトン類、アゾメチン類、及びそれらの誘導体などが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0100】
電子供与性ドーパントの添加形態としては、界面領域に層状又は島状に形成すると好ましい。形成方法としては、抵抗加熱蒸着法により電子供与性ドーパントを蒸着しながら、界面領域を形成する有機化合物(発光材料や電子注入材料)を同時に蒸着させ、有機化合物に電子供与性ドーパントを分散する方法が好ましい。分散濃度はモル比で有機化合物:電子供与性ドーパント=100:1〜1:100、好ましくは5:1〜1:5である。
【0101】
電子供与性ドーパントを層状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を層状に形成した後に、還元ドーパントを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは層の厚み0.1nm〜15nmで形成する。電子供与性ドーパントを島状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を島状に形成した後に、電子供与性ドーパントを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは島の厚み0.05nm〜1nmで形成する。
本発明の一実施態様の有機EL素子における、主成分と電子供与性ドーパントの割合は、モル比で主成分:電子供与性ドーパント=5:1〜1:5であると好ましく、2:1〜1:2であるとさらに好ましい。
【0102】
(電子輸送層)
電子輸送層は、発光層と陰極との間に形成される有機層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有する。電子輸送層が複数層で構成される場合、陰極に近い有機層を電子注入層と定義することがある。電子注入層は、陰極から電子を効率的に有機層ユニットに注入する機能を有する。本発明の一実施態様のカルバゾール誘導体及び有機EL素子用材料は、電子輸送層(第2の電荷輸送層)に含有される電子輸送材料として用いることもできる。
【0103】
電子輸送層に用いる電子輸送材料としては、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する芳香族ヘテロ環化合物が好ましく用いられ、特に含窒素環誘導体が好ましい。また、含窒素環誘導体としては、含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する芳香族環、又は含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する縮合芳香族環化合物が好ましい。
この含窒素環誘導体としては、例えば、下記式(A)で表される含窒素環金属キレート錯体が好ましい。
【0104】
【化26】
【0105】
式(A)におけるR101〜R106は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素数1〜40の炭化水素基、炭素数1〜40のアルコキシ基、炭素数数6〜50のアリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、又は、環形成炭素数5〜50の芳香族複素環基であり、これらは置換されていてもよい。
【0106】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
置換されていてもよいアミノ基の例としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基が挙げられる。
アルキルアミノ基及びアラルキルアミノ基は−NQ12と表される。Q1及びQ2は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアラルキル基を表す。Q1及びQ2の一方は水素原子又は重水素原子であってもよい。
アリールアミノ基は−NAr1’Ar2’と表され、Ar1’及びAr2’は、それぞれ独立に、炭素数6〜50の非縮合芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基を表す。Ar1及びAr2の一方は水素原子又は重水素原子であってもよい。
【0107】
炭素数1〜40の炭化水素基はアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基を含む。
アルコキシカルボニル基は−COOY’と表され、Y’は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
Mは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)であり、Inであると好ましい。
100は、下記式(A’)又は(A”)で表される基である。
【0108】
【化27】
【0109】
式(A’)中、R107〜R111は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜40の炭化水素基であり、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。また、前記式(A”)中、R112〜R126は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1〜40の炭化水素基であり、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。
【0110】
式(A’)及び式(A”)のR107〜R126が示す炭素数1〜40の炭化水素基は、前記式(A)中のR101〜R106が示す炭化水素基と同様である。また、R107〜R111の互いに隣接する基が環状構造を形成した場合の2価の基としては、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ジフェニルメタン−2,2’−ジイル基、ジフェニルエタン−3,3’−ジイル基、ジフェニルプロパン−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
【0111】
電子輸送層に用いられる電子伝達性化合物としては、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体、オキサジアゾール誘導体、含窒素複素環誘導体が好適である。上記8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウムを用いることができる。そして、オキサジアゾール誘導体としては、下記のものを挙げることができる。
【0112】
【化28】
【0113】
前記式中、Ar17、Ar18、Ar19、Ar21、Ar22及びAr25は、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基を示し、Ar17とAr18、Ar19とAr21、Ar22とAr25は、たがいに同一でも異なっていてもよい。芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、ペリレニル基、ピレニル基などが挙げられる。これらの置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はシアノ基等が挙げられる。
【0114】
Ar20、Ar23及びAr24は、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数6〜60の2価の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基を示し、Ar23とAr24は、たがいに同一でも異なっていてもよい。2価の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ペリレニレン基、ピレニレン基などが挙げられる。これらの置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はシアノ基等が挙げられる。
【0115】
これらの電子伝達性化合物は、薄膜形成性の良好なものが好ましく用いられる。そして、これら電子伝達性化合物の具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【0116】
【化29】
【0117】
電子伝達性化合物としての含窒素複素環誘導体は、以下の式を有する有機化合物からなる含窒素複素環誘導体であって、金属錯体でない含窒素化合物が挙げられる。例えば、下記式(B)に示す骨格を含有する5員環もしくは6員環や、下記式(C)に示す構造のものが挙げられる。
【0118】
【化30】
【0119】
前記式(C)中、X1は炭素原子もしくは窒素原子を表す。Z1ならびにZ2は、それぞれ独立に含窒素ヘテロ環を形成可能な原子群を表す。
【0120】
含窒素複素環誘導体は、さらに好ましくは、5員環もしくは6員環からなる含窒素芳香多環族を有する有機化合物である。さらには、このような複数窒素原子を有する含窒素芳香多環族の場合は、上記式(B)と(C)もしくは上記式(B)と下記式(D)を組み合わせた骨格を有する含窒素芳香多環有機化合物が好ましい。
【0121】
【化31】
【0122】
前記の含窒素芳香多環有機化合物の含窒素基は、例えば、以下の式で表される含窒素複素環基から選択される。
【0123】
【化32】
【0124】
前記各式中、R’’’は、炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、炭素数3〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、n1は0〜5の整数であり、n1が2以上の整数であるとき、複数のR’’’は互いに同一又は異なっていてもよい。
【0125】
さらに、好ましい具体的な化合物として、下記式(D1)で表される含窒素複素環誘導体が挙げられる。
HAr−L101−Ar101−Ar102 (D1)
前記式(D1)中、HArは、置換もしくは無置換の炭素数3〜40の含窒素複素環基であり、L101は単結合、置換もしくは無置換の炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の炭素数3〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基であり、Ar101は置換もしくは無置換の炭素数6〜40の2価の芳香族炭化水素基であり、Ar102は置換もしくは無置換の炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の炭素数3〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
【0126】
HArは、例えば、下記の群から選択される。
【化33】
【0127】
101は、例えば、下記の群から選択される。
【化34】
【0128】
Ar101は、例えば、下記式(D2)、式(D3)ので表される基から選択される。
【化35】
【0129】
前記式(D2)、式(D3)中、R201〜R214は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の炭素数3〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基であり、Ar103は、置換もしくは無置換の炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の炭素数3〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
【0130】
Ar102は、例えば、下記の群から選択される。
【化36】
【0131】
電子伝達性化合物としての含窒素芳香多環有機化合物には、この他、下記の化合物も好適に用いられる。
【0132】
【化37】
【0133】
前記式(D4)中、R211〜R214は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の脂肪族式環基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50の芳香族環基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50の複素環基を表し、X21、X22は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又はジシアノメチレン基を表す。
【0134】
また、電子伝達性化合物として、下記の化合物も好適に用いられる。
【化38】
【0135】
前記式(D5)中、R221、R222、R223及びR224は互いに同一の又は異なる基であって、下記式(D6)で表される芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基である。
【化39】
【0136】
前記式(D6)中、R225、R226、R227、R228及びR229は互いに同一又は異なる基であって、水素原子、飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20のアルコキシル基、飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20のアルキル基、アミノ基、又は炭素数1〜20のアルキルアミノ基である。R225、R226、R227、R228及びR229の少なくとも1つは水素原子以外の基である。
【0137】
さらに、電子伝達性化合物は、該含窒素複素環基又は含窒素複素環誘導体を含む高分子化合物であってもよい。
【0138】
本発明の一実施態様の有機EL素子の電子輸送層は、下記式(E)〜(G)で表される含窒素複素環誘導体を少なくとも1種含むことが特に好ましい。
【化40】
【0139】
(式(E)〜式(G)中、Z201、Z202及びZ203は、それぞれ独立に、窒素原子又は炭素原子である。
301及びR302は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルキル基又は置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基である。
vは、0〜5の整数であり、vが2以上の整数であるとき、複数のR301は互いに同一でも異なっていてもよい。また、隣接する2つのR301同士が互いに結合して、置換もしくは無置換の炭化水素環を形成していてもよい。
Ar201は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50のヘテロアリール基である。
Ar202は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50のヘテロアリール基である。
但し、Ar201、Ar202のいずれか一方は、置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜50の縮合芳香族炭化水素環基又は置換もしくは無置換の環形成原子数9〜50の縮合芳香族複素環基である。
Ar203は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリーレン基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50のヘテロアリーレン基である。
201、L202及びL203は、それぞれ独立に、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリーレン基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数9〜50の2価の縮合芳香族複素環基である。)
【0140】
環形成炭素数6〜50のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、クリセニル基、ピレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、トリル基、フルオランテニル基、フルオレニル基などが挙げられる。
環形成原子数5〜50のヘテロアリール基としては、ピローリル基、フリル基、チエニル基、シローリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、べンゾフリル基、イミダゾリル基、ピリミジル基、カルバゾリル基、セレノフェニル基、オキサジアゾリル基、トリアゾーリル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル基、イミダゾ[1,2−a]ピリミジニル基などが挙げられる。
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基などが挙げられる。
炭素数1〜20のハロアルキル基としては、前記アルキル基の1又は2以上の水素原子をフッ素、塩素、ヨウ素及び臭素から選ばれる少なくとも1のハロゲン原子で置換して得られる基が挙げられる。
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、前記アルキル基をアルキル部位としては有する基が挙げられる。
環形成炭素数6〜50のアリーレン基としては、前記アリール基から水素原子1個を除去して得られる基が挙げられる。
環形成原子数9〜50の2価の縮合芳香族複素環基としては、前記ヘテロアリール基として記載した縮合芳香族複素環基から水素原子1個を除去して得られる基が挙げられる。
【0141】
電子輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1nm〜100nmである。
また、電子輸送層に隣接して設けることができる電子注入層の構成成分として、含窒素環誘導体の他に無機化合物として、絶縁体又は半導体を使用することが好ましい。電子注入層が絶縁体や半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。
【0142】
このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲニド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲニドとしては、例えば、Li2O、K2O、Na2S、Na2Se及びNa2Oが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲニドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF2、BaF2、SrF2、MgF2及びBeF2等のフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0143】
また、半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。また、電子注入層を構成する無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子注入層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。なお、このような無機化合物としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0144】
このような絶縁体又は半導体を使用する場合、その層の好ましい厚みは、0.1nm〜15nm程度である。また、本発明の一実施態様の有機EL素子における電子注入層は、前述の電子供与性ドーパントを含有していても好ましい。
【0145】
(正孔輸送層)
発光層と陽極との間に形成される有機層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有する。正孔輸送層が複数層で構成される場合、陽極に近い有機層を正孔注入層と定義することがある。正孔注入層は、陽極から正孔を効率的に有機層ユニットに注入する機能を有する。本発明の一実施態様のカルバゾール誘導体及び有機EL素子用材料は、正孔輸送層(第1の電荷輸送層)に含有される正孔輸送材料として用いることもできる。
正孔輸送層を形成する他の材料としては、芳香族アミン化合物、例えば、下記式(H)で表される芳香族アミン誘導体が好適に用いられる。
【化41】
【0146】
前記式(H)において、Ar211〜Ar214は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基、又は、それら芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基と芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基が結合した基を表す。
また、前記式(H)において、L211は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基を表す。
【0147】
式(H)の化合物の具体例を以下に記す。
【0148】
【化42】
【0149】
また、下記式(J)の芳香族アミンも正孔輸送層の形成に好適に用いられる。
【化43】
【0150】
前記式(J)において、Ar221〜Ar223の定義は前記式(H)のAr211〜Ar214の定義と同様である。以下に式(J)の化合物の具体例を記すがこれらに限定されるものではない。
【0151】
【化44】
【0152】
【化45】
【0153】
【化46】
【0154】
本発明の一実施態様の有機EL素子の正孔輸送層は第1正孔輸送層(陽極側)と第2正孔輸送層(陰極側)の2層構造にしてもよい。
正孔輸送層の膜厚は特に限定されないが、10〜200nmであるのが好ましい。
【0155】
本発明の一実施態様の有機EL素子では、正孔輸送層又は第1正孔輸送層の陽極側にアクセプター材料を含有する層を接合してもよい。これにより駆動電圧の低下及び製造コストの低減が期待される。
前記アクセプター材料としては下記式(K)で表される化合物が好ましい。
【0156】
【化47】
【0157】
(上記式(K)中、R311〜R316は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立にシアノ基、−CONH2、カルボキシル基、又は−COOR317(R317は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数3〜20のシクロアルキル基を表す)を表す。ただし、R311及びR312、R313及びR314、並びにR315及びR316の1又は2以上の対が一緒になって−CO−O−CO−で示される基を形成してもよい。)
317としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アクセプター材料を含有する層の膜厚は特に限定されないが、5〜20nmであるのが好ましい。
前記アクセプタ―材料として下記の材料を用いてもよい。
【0158】
【化48】
【0159】
【化49】
【0160】
【化50】
【0161】
【化51】
【0162】
【化52】
【0163】
【化53】
【0164】
【化54】
【0165】
【化55】
【0166】
【化56】
【0167】
【化57】
【0168】
【化58】
【0169】
【化59】
【0170】
(n/pドーピング)
上述の正孔輸送層や電子輸送層においては、特許第3695714号明細書に記載されているように、ドナー性材料のドーピング(n)やアクセプター性材料のドーピング(p)により、キャリア注入能を調整することができる。
nドーピングの代表例としては、電子輸送材料にLiやCs等の金属をドーピングする方法が挙げられ、pドーピングの代表例としては、正孔輸送材料にF4TCNQ(2,3,5,6-Tetrafluoro-7,7,8,8-tetracyanoquinodimethane)等のアクセプター材料をドーピングする方法が挙げられる。
【0171】
(スペース層)
上記スペース層とは、例えば、蛍光発光層と燐光発光層とを積層する場合に、燐光発光層で生成する励起子を蛍光発光層に拡散させない、あるいは、キャリアバランスを調整する目的で、蛍光発光層と燐光発光層との間に設けられる層である。また、スペース層は、複数の燐光発光層の間に設けることもできる。
スペース層は発光層間に設けられるため、電子輸送性と正孔輸送性を兼ね備える材料であることが好ましい。また、隣接する燐光発光層内の三重項エネルギーの拡散を防ぐため、三重項エネルギーが2.6eV以上であることが好ましい。スペース層に用いられる材料としては、上述の正孔輸送層に用いられるものと同様のものが挙げられる。スペース層用の材料として、本発明の一実施態様の有機EL素子用材料を用いることもできる。
【0172】
(障壁層)
本発明の一実施態様の有機EL素子は、発光層に隣接する部分に、電子障壁層、正孔障壁層、トリプレット障壁層といった障壁層を有することが好ましい。ここで、電子障壁層とは、発光層から正孔輸送層へ電子が漏れることを防ぐ層であり、正孔障壁層とは、発光層から電子輸送層へ正孔が漏れることを防ぐ層である。正孔障壁層用の材料として、本発明の一実施態様の有機EL素子用材料を用いることもできる。
トリプレット障壁層は、発光層で生成する三重項励起子が、周辺の層へ拡散することを防止し、三重項励起子を発光層内に閉じ込めることによって三重項励起子の発光ドーパント以外の電子輸送層の分子上でのエネルギー失活を抑制する機能を有する。
トリプレット障壁層を設ける場合、燐光素子においては、発光層中の燐光発光性ドーパントの三重項エネルギーをETd、トリプレット障壁層として用いる化合物の三重項エネルギーをETTBとすると、ETd<ETTBのエネルギー大小関係であれば、エネルギー関係上、燐光発光性ドーパントの三重項励起子が閉じ込められ(他分子へ移動できなくなり)、該ドーパント上で発光する以外のエネルギー失活経路が断たれ、高効率に発光することができると推測される。ただし、ETd<ETTBの関係が成り立つ場合であってもこのエネルギー差ΔET=ETTB−ETdが小さい場合には、実際の素子駆動環境である室温程度の環境下では、周辺の熱エネルギーにより吸熱的にこのエネルギー差ΔETを乗り越えて三重項励起子が他分子へ移動することが可能であると考えられる。特に燐光発光の場合は蛍光発光に比べて励起子寿命が長いため、相対的に吸熱的励起子移動過程の影響が現れやすくなる。室温の熱エネルギーに対してこのエネルギー差ΔETは大きい程好ましく、0.1eV以上であるとさらに好ましく、0.2eV以上であると特に好ましい。一方、蛍光素子においては、国際公開WO2010/134350A1に記載するTTF素子構成のトリプレット障壁層用の材料として、本発明の一実施態様の有機EL素子用材料を用いることもできる。
【0173】
また、トリプレット障壁層を構成する材料の電子移動度は、電界強度0.04〜0.5MV/cmの範囲において、10-6cm2/Vs以上であることが望ましい。有機材料の電子移動度の測定方法としては、Time of Flight法等幾つかの方法が知られているが、ここではインピーダンス分光法で決定される電子移動度をいう。
電子注入層は、電界強度0.04〜0.5MV/cmの範囲において、10-6cm2/Vs以上であることが望ましい。これにより陰極からの電子輸送層への電子注入が促進され、ひいては隣接する障壁層、発光層への電子注入も促進し、より低電圧での駆動を可能にするためである。
【0174】
本発明の有機EL素子の各層の形成方法は特に限定されない。従来公知の真空蒸着法、スピンコーティング法等による形成方法を用いることができる。本発明の有機EL素子に用いる、本発明の化合物を含有する有機薄膜層は、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)、あるいは本発明の化合物を溶媒に解かした溶液のディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法による公知の方法で形成することができる。
【0175】
本発明の有機EL素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。本発明の化合物を含有する層(特に発光層)を形成する方法としては、例えば、本発明の化合物及び必要に応じてドーパント等のその他の材料からなる溶液を成膜する方法が好ましい。
【0176】
成膜方法としては、公知の塗布法を有効に利用することができ、例えばスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、スリットコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、ノズルプリンティング法等が挙げられる。パターン形成をする場合には、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法が好ましい。これらの方法による成膜は、当業者に周知の条件により行うことができる。
成膜後は、真空下に加熱(上限250℃)乾燥して、溶媒を除去すればよく、光や250℃を超える高温加熱による重合反応は不要である。従って、光や250℃を超える高温加熱による素子の性能劣化の抑制が可能である。
【0177】
成膜用溶液は、少なくとも1種類の本発明の化合物を含有していればよく、また他の正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、アクセプター材料、溶媒、安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
成膜用溶液は、粘度及び/又は表面張力を調節するための添加剤、例えば、増粘剤(高分子量化合物等)、粘度降下剤(低分子量化合物等)、界面活性剤等を含有していてもよい。また、保存安定性を改善するために、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等、有機EL素子の性能に影響しない酸化防止剤を含有していてもよい。
上記成膜用溶液中の本発明の化合物の含有量は、成膜用溶液全体に対して0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0178】
増粘剤として使用可能な高分子量化合物としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂及びそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂が挙げられる。
【0179】
成膜用溶液の溶媒としては、例えばクロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、アニソール等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロへキサン、メチルシクロへキサン、n−ペンタン、n−へキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキサノン、べンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−へキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロへキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。また、これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0180】
これらの溶媒のうち、溶解性、成膜の均一性及び粘度特性等の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、5−ブチルベンゼン、n−へキシルベンゼン、シクロへキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、テトラリン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、アニソール、エトキシベンゼン、シクロへキサン、ビシクロへキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロへキサン、n−へキシルシクロヘキサン、デカリン、安息香酸メチル、シクロへキサノン、2−プロピルシクロへキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロへキシルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンがより好ましい。
【0181】
本発明の一実施態様の有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機ELパネルモジュール等の表示部品、テレビ、携帯電話、若しくはパーソナルコンピュータ等の表示装置、及び、照明、若しくは車両用灯具の発光装置等の電子機器に使用できる。
【実施例】
【0182】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0183】
合成例(1−1)[中間体1の合成]
【化60】
【0184】
アルゴン気流下、反応容器に濃硫酸を83mL入れて、氷浴にて冷却し、発煙硝酸30g、1−ブロモ−3,4−ジフルオロベンゼン17.0g(88mmol)を加え、20℃まで昇温し、2時間撹拌した。
氷水に反応液を入れ、塩化メチレンを加えて抽出し、有機層を分離して、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて有機層を洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、有機溶媒を減圧留去して、中間体1(20.3g、85mmol(収率97%))を得た。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体1と同定した。
【0185】
合成例(1−2)[中間体2の合成]
【化61】
【0186】
アルゴン気流下、反応容器に中間体1(11.9g、50mmol)、フェニルボロン酸(7.9g、65mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.73g、1.5mmol)、トルエン170mL、エタノール30mL、2M炭酸ナトリウム水溶液(50mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、中間体2(11.6g、49mmol(収率98%))を得た。FD−MSの分析により、中間体2と同定した。
【0187】
合成例(1−3)[中間体3の合成]
【化62】
【0188】
アルゴン気流下、反応容器に中間体2(10.0g、43mmol)、カルバゾール(17.3g、103mmol)、炭酸カリウム(35.7g、258mmol)、脱水ジメチルスルホキシド85mLを順次加えて、180℃にて8時間撹拌した。
室温まで反応液を冷却した後、上水、塩化メチレンを加え、有機層を分離し、有機溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、中間体3(8.9g、17mmol(収率40%))を得た。FD−MSの分析により、中間体3と同定した。
【0189】
合成例(1−4)[中間体4の合成]
【化63】
【0190】
アルゴン気流下、反応容器に中間体3(8.9g、17mmol)、トリフェニルホスフィン(11.2g、43mmol)、オルトジクロロベンゼン34mLを順次加えて、180℃にて6時間撹拌した。
室温まで反応液を冷却した後、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、中間体4(5.7g、11.5mmol(収率67%))を得た。FD−MSの分析により、中間体4と同定した。
【0191】
[中間体5〜7の合成]
国際公開第2011−132683号に記載された方法で下記中間体5〜7を合成した。
【化64】
【0192】
合成例(1−5)[化合物1の合成]
【化65】
【0193】
アルゴン気流下、反応容器に中間体4(1.6g、3.2mmol)、中間体5(1.5g、3.8mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(117mg、0.13mmol)、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロホウ酸塩(93mg、0.32mmol)、tert−ブトキシナトリウム(615mg、6.4mmol)、無水キシレン16mLを順次加えて、8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、化合物1(1.9g、2.4mmol(収率67%))を得た。FD−MSの分析により、化合物1と同定した。
得られた化合物について、FD−MSを以下に示す。
FDMS、calcd for C57366、found m/z=804(M+)
【0194】
合成例(2−1)[化合物2の合成]
【化66】
【0195】
化合物1の合成において、中間体5の代わりに中間体6を用いて同様の方法で化合物2を合成した。
得られた化合物について、FD−MSを以下に示す。
FDMS、calcd for C51326、found m/z=728(M+)
【0196】
合成例(3−1)[化合物3の合成]
【化67】
【0197】
化合物1の合成において、中間体5の代わりに中間体7を用いて同様の方法で化合物3を合成した。
得られた化合物について、FD−MSを以下に示す。
FDMS、calcd for C57366、found m/z=804(M+)
【0198】
合成例(4−1)[中間体8の合成]
【化68】
【0199】
中間体2の合成において、中間体1の代わりに、2,4,6−トリクロロピリミジンを用いて同様の方法で合成した。FD−MSの分析により、中間体8と同定した。
【0200】
合成例(4−2)[中間体9の合成]
【化69】
【0201】
中間体3の合成において、中間体2の代わりに、3−ブロモフルオロベンゼンを用いて、カルバゾールの代わりに中間体4を用いて同様の方法で合成した。FD−MSの分析により、中間体9と同定した。
【0202】
合成例(4−3)[中間体10の合成]
【化70】
【0203】
アルゴン気流下、中間体9(3.3g、5mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(1.7g、6.6mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(0.12g、0.15mmol)、酢酸カリウム(1.5g、15mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(34mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体10(1.75g、収率80%)を得た。FD−MSの分析により、中間体10と同定した。
【0204】
合成例(4−4)[化合物4の合成]
【化71】
【0205】
中間体2の合成において、中間体1の代わりに、中間体8を用いて、フェニルボロン酸の代わりに、中間体10を用いて同様の方法で合成した。
得られた化合物について、FD−MSを以下に示す。
FDMS、calcd for C94588、found m/z=1298(M+)
【0206】
合成例(5−1)[化合物5の合成]
【化72】
【0207】
化合物1の合成において、中間体5の代わりにブロモベンゼンを用いて同様の方法で合成した。
得られた化合物について、FD−MSを以下に示す。
FDMS、calcd for C42273、found m/z=573(M+)
【0208】
合成例(6−1)[化合物6の合成]
【化73】
【0209】
化合物1の合成において、中間体5の代わりに2−(4−ブロモフェニル)−4−フェニルキナゾリンを用いて同様の方法で合成した。
得られた化合物について、FD−MSを以下に示す。
FDMS、calcd for C56355、found m/z=777(M+)
【0210】
合成例(7−1)[化合物7の合成]
【化74】
【0211】
化合物1の合成において、中間体5の代わりに2−クロロ−4−フェニルキナゾリンを用いて同様の方法で合成した。
得られた化合物について、FD−MSを以下に示す。
FDMS、calcd for C50315、found m/z=701(M+)
【0212】
合成例(8−1)[化合物8の合成]
【化75】
【0213】
化合物1の合成において、中間体5の代わりに3−(3−ブロモフェニル)フルオランテンを用いて同様の方法で合成した。
得られた化合物について、FD−MSを以下に示す。
FDMS、calcd for C58353、found m/z=773(M+)
【0214】
合成例(9−1)[化合物9の合成]
【化76】
【0215】
化合物1の合成において、中間体5の代わりに2−クロロ−4,6−ジフェニルピリミジンを用いて同様の方法で合成した。
得られた化合物について、FD−MSを以下に示す。
FDMS、calcd for C52335、found m/z=727(M+)
【0216】
実施例1
25mm×75mm×厚さ1.1mmのITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行った。ITO透明電極の厚さは100nmであった。
洗浄後のITO透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まずITO透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして下記化合物(HA1)を蒸着して膜厚10nmのHA1膜を成膜し、正孔注入層を形成した。
次に、この正孔注入層上に前記透明電極を覆うようにして第1正孔輸送材料として下記化合物HT1を蒸着し、膜厚40nmの第1正孔輸送層を成膜した。第1正孔輸送層の成膜に続けて、第2正孔輸送材料として下記化合物HT2を蒸着し、膜厚10nmの第2正孔輸送層を成膜した。
さらに、この第2正孔輸送層上に、ホスト材料として前記化合物1と、燐光発光材料として下記化合物YD1とを共蒸着し、膜厚20nmの燐光発光層を成膜した。発光層内におけるYD1の濃度は12質量%であった。この共蒸着膜は発光層として機能する。
そして、この発光層成膜に続けて下記化合物ET1を膜厚45nmで成膜した。この化合物ET1膜は第1電子輸送層として機能する。
次に、LiFを電子注入性電極(陰極)として成膜速度0.1Å/secで成膜し、膜厚を1nmとした。このLiF膜上に金属Alを蒸着させ、金属陰極を膜厚80nmで形成し有機EL素子を作製した。
以下に、実施例及び比較例で使用した化合物を示す。
【0217】
【化77】
【0218】
上述のようにして得られた有機EL素子について、下記のようにして寿命を測定した。
初期輝度10000cd/m2における80%寿命(低電流駆動で、輝度が初期輝度の80%まで低下するまでの時間)を求めた。
【0219】
実施例2〜3
実施例1において、燐光発光層のホスト材料として、化合物1の代わりに上記化合物2、化合物3を用いた以外は同様にして有機EL素子を製造した。実施例1と同様に、評価した結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、燐光発光層のホスト材料として、化合物1の代わりに下記比較化合物1を用いた以外は同様にして有機EL素子を製造した。実施例1と同様に、評価した結果を表1に示す。
【0220】
【化78】
【0221】
実施例4
実施例1において、発光層を形成する際、ホスト材料として上記化合物1と下記PG1を用い、燐光発光材料として下記化合物YD1とを共蒸着し、膜厚20nmの燐光発光層を成膜した以外は同様にして有機EL素子を作製した。実施例1と同様に、評価した結果を表1に示す。
発光層内におけるPG1の濃度は44質量%、YD1の濃度は12質量%であった。
【0222】
【化79】
【0223】
実施例5
実施例4において、燐光発光層のホスト材料として、上記化合物1の代わりに上記化合物2を用いた以外は同様にして有機EL素子を製造した。実施例1と同様に、評価した結果を表1に示す。
比較例2
実施例4において、燐光発光層のホスト材料として、化合物1の代わりに上記比較化合物1を用いた以外は同様にして有機EL素子を製造した。実施例1と同様に、評価した結果を表1に示す。
【0224】
実施例6
実施例1において、第1正孔輸送層を形成する際、膜厚が20nmとなるように成膜し、発光層を形成する際、ホスト材料として上記化合物6を用い、燐光発光材料として下記化合物RD1とを共蒸着して膜厚が40nmとなるように燐光発光層を成膜し(発光層内におけるRD1の濃度は5質量%)、第1電子輸送層を形成する際、膜厚が40nmとなるように成膜した以外は同様にして有機EL素子を製造した。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0225】
【化80】
【0226】
実施例7
実施例6において、燐光発光層のホスト材料として、上記化合物6の代わりに上記化合物7を用いた以外は同様にして有機EL素子を製造した。実施例1と同様に、評価した結果を表1に示す。
【0227】
実施例8
実施例6において、燐光発光層のホスト材料として、上記化合物8を用い、燐光発光材料として、上記化合物RD2を用いた以外は同様にして有機EL素子を製造した。実施例1と同様に、評価した結果を表1に示す。
【0228】
比較例3
実施例6において、燐光発光層のホスト材料として、上記化合物6の代わりに上記比較化合物1を用いた以外は同様にして有機EL素子を製造した。実施例1と同様に、評価した結果を表1に示す。
【0229】
比較例4
実施例8において、燐光発光層のホスト材料として、上記化合物8の代わりに上記比較化合物1を用いた以外は同様にして有機EL素子を製造した。実施例1と同様に、評価した結果を表1に示す。
【0230】
【表1】
【0231】
実施例1〜5と比較例1〜2、実施例6〜8と比較例3〜4の対比より、本発明の一実施態様のカルバゾール誘導体を用いた有機EL素子について、比較化合物1を用いた有機EL素子に対して寿命が長いことが確認できる。
【符号の説明】
【0232】
1 有機EL素子
2 基板
3 陽極
4 陰極
5 発光層
6 陽極側有機薄膜層
7 陰極側有機薄膜層
10 発光ユニット
図1