(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
パンの基本は食パンである。この食パンとは、小麦粉、イースト、塩、水を主原料として、必要に応じ副原料(糖、油脂、乳や乳製品、卵製品、添加物等)、その他を加えて、醗酵させた生地を焼型に詰めて焼成したパンのことであり、ホワイトブレッド(白食パン)と、バラエティブレッドに区分される。
【0003】
ここで、ホワイトブレッド(白食パン)とは、山型食パン、角型食パン(プルマンブレッド)、ワンローフ等の主食用のパンであり、主原料の風味が生かされていることが特徴である。
一方、バラエティブレッドとは、特徴のある副原料を配合した食パンであり、副原料の風味が生かされていることが特徴である。このバラエティブレッドには、グラハムブレッドのように小麦粉を特殊挽きしたものを使用したパン、マルチシリアルブレッドのように小麦以外の穀物(ライ麦、米、とうもろこし等)を使用したパン、ブリオッシュブレッドのように糖類、乳製品、卵製品、油脂等、その他の製パン原料の特性が生かされるまで充分に配合したパン、或いは、レーズンブレッドのように果実、野菜粒、ナッツ、チョコ等の固形物を分散させたパン、更には、デニッシュブレッドのように食パン以外の生地を食パン用の型に詰めて焼成したパン等がある。
【0004】
これらのバラエティブレッドには、一般的なホワイトブレッドとは違った問題がある。
先ず、これらのバラエティブレッドは、各種副原料によって小麦粉が薄められるため、グルテンが脆弱なものとなったり、乾燥果実等の固形物によりグルテンの形成が妨げられたり、その固型物の重さにより、焼成後に腰折れを生じやすいという問題や体積がやや小さくなるという問題がある。
また、バラエティブレッドに使用される各種副原料は乾燥素材であるため、ミキシング終了時からホイロ終了時までの間にパン生地の水分を吸うため、焼き上がりがぱさついた食感になり、しとり感が不足し、更に焼成後の保管期間中にも徐々にクラム部分の水分を吸収し、しとり感の不足が更に増大するという問題がある。
また更に、クラム部分の水分減はパンの老化を促進させてしまうという問題もある。
【0005】
ここで、個々の問題、例えば腰折れや体積の問題については、アスコルビン酸等の酸化剤を増加させる等グルテンを強化する改良成分の添加、しとり感の問題については糖類の増配合や水分含量の増量、老化の問題については酵素剤や糖類の増配合で解決対処することが一般に行われている。
そして更にバラエティブレッド用の総合的な改良方法として、例えば、アスコルビン酸、グリセリン脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸有機酸エステルを併用する方法(例えば、特許文献1参照)や、ガム質、澱粉類、蛋白質を併用する方法(例えば、特許文献2参照)、乳清ミネラルを使用する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。しかし、特許文献1及び2に記載の方法では、体積や老化耐性については一定の改良効果が見られるものの、しとり感の改善効果は見られないという問題、特に特許文献2の方法ではソフトな食感が失われるという問題があった。また、特許文献3に記載の方法では、体積の改善と色相や風味の改善が主であり、食感については大きな改善効果が見られないという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
先ず、本発明のバラエティブレッド用油脂組成物について述べる。尚、本発明において、25℃における基準SFCとは、油相を60℃で融解した後、0℃で30分、25℃で30分保持後のSFC(固体脂含量)をいう。
本発明のバラエティブレッド用油脂組成物は、60℃で融解した後、25℃で100分保持したときのSFC(固体脂含量)が、25℃における基準SFCの80%以下、好ましくは75%以下である油相を含有する。60℃で融解した後、25℃で100分保持したときのSFCが、25℃における基準SFCの80%超であると、本発明の効果が得られない。尚、下限については一般的には10%である。
【0013】
上記のような油相は、上記条件を満たすように、食用油脂、及び/又は油溶性原料を混合、溶解することによって得ることができる。
具体的には、食用油脂に対して結晶化調整剤を添加する方法、及び/又は相溶性の低い食用油脂を組み合わせて配合する方法によって得ることができる。
【0014】
先ず、食用油脂に対して結晶化調整剤を添加する方法(以下、第1の方法という)について述べる。
【0015】
上記食用油脂としては、特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0016】
ここで、上記結晶化調整剤とは、食用油脂に少量添加することで食用油脂の結晶性を遅延させる効果を有する添加物であり、その例としては、HLBが7以上、好ましくはHLBが10以上であるシュガーエステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル、エタノール、グリセリン、ジグリセリド、植物ステロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0017】
上記食用油脂に対する上記結晶化調整剤の添加量は、食用油脂100質量部に対し、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部、更に好ましくは2〜5質量%である。
【0018】
次に、相溶性の低い食用油脂を組み合わせて配合する方法(以下、第2の方法という)について述べる。
【0019】
ここで、相溶性の低い食用油脂の組み合わせ方としては、例えば以下の(1)〜(3)の組み合わせが挙げられる。
(1)パーム系油脂と、ラウリン系油脂
(2)パーム系油脂と、豚脂系油脂及び/又は牛脂系油脂
(3)パーム系油脂と、ランダムエステル交換油脂
【0020】
先ず(1)のパーム系油脂と、ラウリン系油脂の組み合わせた場合の詳細について述べる。
【0021】
上記のパーム系油脂としては、パーム油、パーム分別油を挙げることができる。
【0022】
上記のパーム分別油としては、例えば1段分別油であるパームオレイン及びパームステアリン;パームオレインの2段分別油であるパームオレイン(パームスーパーオレイン)及びパームミッドフラクション;パームステアリンの2段分別油であるパームオレイン(ソフトパーム)及びパームステアリン(ハードステアリン)等を用いることができる。
パーム油を分別する方法には特に制限はなく、溶剤分別、乾式分別、乳化分別の何れの方法を用いてもよい。本発明では上記のパーム系油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
また、上記のパーム系油脂としては、食品への練り込み適性の観点から、ヨウ素価が30〜70であるものが好ましく、ヨウ素価が30〜65であるものが更に好ましく、ヨウ素価が30〜54であるものが最も好ましい。
【0024】
一方、上記のラウリン系油脂としては、ヤシ油、パーム核油、ババス油等のラウリン酸を多量に含む油脂や、これらを分別して得られた分別油を挙げることができ、これらのラウリン系油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明ではラウリン系油脂として、ヤシ油及び/又はパーム核油を用いることが好ましい。
【0025】
上記(1)の組み合わせにおいて、油相中のパーム系油脂の含有量は好ましくは40〜
85質量%、更に好ましくは48〜85質量%、最も好ましくは51〜80質量%である。
また、油相中のラウリン系油脂の含有量は好ましくは4〜30質量%、更に好ましくは8〜30質量%、最も好ましくは8〜20質量%である。
【0026】
またパーム系油脂とラウリン系油脂の含有量は、油相中のSMSで表されるトリグリセリド(1,3位がS、2位がMであるトリグリセリド。但し、S=炭素数16〜24の飽和脂肪酸、M=炭素数16〜24のモノ不飽和脂肪酸)の含有量が、油相基準で好ましくは10〜25質量%、より好ましくは10〜20質量%、更に好ましくは12〜19質量%となる量であり、且つ、構成脂肪酸組成においてラウリン酸が好ましくは2〜12質量%、より好ましくは4〜12質量%、更に好ましくは4〜10質量%となる量である。
尚、油相中のSMSで表されるトリグリセリドの含有量と構成脂肪酸組成におけるラウリン酸の含有量の質量比率は、該SMSで表されるトリグリセリドの含有量を1としたときに、該ラウリン酸の含有量が好ましくは0.2〜1.2、更に好ましくは0.3〜1.0、最も好ましくは0.3〜0.5とする。
【0027】
次に(2)のパーム系油脂と、豚脂系油脂及び/又は牛脂系油脂の組み合わせの場合の詳細について述べる。
【0028】
上記のパーム系油脂としては、上記(1)の組み合わせで説明したパーム系油脂を使用することができる。
【0029】
上記の豚脂系油脂及び/又は牛脂系油脂としては、具体的には豚脂、牛脂並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂を挙げることができる。
本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では特に豚脂を用いることが好ましい。
【0030】
上記(2)の組み合わせにおいて、油相中のパーム系油脂の含有量は好ましくは12〜80質量%、更に好ましくは15〜50質量%、最も好ましくは15〜30質量%である。
また、豚脂系油脂及び/又は牛脂系油脂の含有量は好ましくは20〜85質量%、更に好ましくは40〜80質量%、最も好ましくは51〜80質量%である。
【0031】
またパーム系油脂と、豚脂系油脂及び/又は牛脂系油脂の含有量は、油相中のSMSで表されるトリグリセリド(1,3位がS、2位がMであるトリグリセリド。但し、S=炭素数16〜24の飽和脂肪酸、M=炭素数16〜24のモノ不飽和脂肪酸)の含有量が、油相基準で好ましくは10〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%、更に好ましくは10〜20質量%となる量であり、且つ、MSMで表されるトリグリセリド(1,3位がM、2位がSであるトリグリセリド。但し、S=炭素数16〜24の飽和脂肪酸、M=炭素数16〜24のモノ不飽和脂肪酸)の含有量が、油相基準で好ましくは10〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%、更に好ましくは10〜20質量%となる量である。
【0032】
次に(3)のパーム系油脂と、ランダムエステル交換油脂の組み合わせの場合の詳細について述べる。
【0033】
上記のパーム系油脂としては、上記(1)の組み合わせで説明したパーム系油脂を使用することができる。
【0034】
上記のランダムエステル交換油脂としては、具体的にはパーム油、パーム核油、ヤシ油、ハバス油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、ハイエルシン菜種油、魚油、鯨油等の各種動植物油脂、並びにこれらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添加及び/又は分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、及び脂肪酸低級アルコールエステルから選択される1種又は2種以上を用いて製造したランダムエステル交換油脂を使用することができる。
【0035】
上記(3)の組み合わせにおいて、油相中のパーム系油脂の含有量は好ましくは20〜70質量%、更に好ましくは30〜60質量%、最も好ましくは40〜60質量%である。
また油相中のランダムエステル交換油脂の含有量は好ましくは25〜75質量%、より好ましくは40〜70質量%、更に好ましくは40〜60質量%、最も好ましくは40〜50質量%である。
【0036】
本発明では上記ランダムエステル交換油脂として、上記ランダムエステル交換油脂の一部又は全部に、ヨウ素価52〜70のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をランダムエステル交換したランダムエステル交換油脂を使用することが好ましい。
【0037】
上記ヨウ素価52〜70のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をランダムエステル交換したランダムエステル交換油脂の油相中の含有量は、好ましくは15〜50質量%、より好ましくは20〜30質量%である。
【0038】
上記ヨウ素価52〜70のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をランダムエステル交換したランダムエステル交換油脂に必要に応じ加配するその他のランダムエステル交換油脂としては、融点が36℃以下であるランダムエステル交換油脂が好ましく、より好ましくは融点が33℃以下であるランダムエステル交換油脂を使用する。
【0039】
上記その他のランダムエステル交換油脂の好ましい例としては、構成脂肪酸組成において炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が30〜70質量%であり炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が20〜60質量%である油脂配合物を、ランダムエステル交換してなるランダムエステル交換油脂が挙げられる。
【0040】
上記(3)の組み合わせにおいて、パーム系油脂と、ランダムエステル交換油の配合量は、油相中のSMSで表されるトリグリセリド(1,3位がS、2位がMであるトリグリセリド。但し、S=炭素数16〜24の飽和脂肪酸、M=炭素数16〜24のモノ不飽和脂肪酸)含量が、油相基準で好ましくは15〜60質量%、より好ましくは20〜34質量%、更に好ましくは20〜30質量%となる量であり、且つ、MSMで表されるトリグリセリド(1,3位がM、2位がSであるトリグリセリド。但し、S=炭素数16〜24の飽和脂肪酸、M=炭素数16〜24のモノ不飽和脂肪酸)含量が、油相基準で好ましくは5質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下となる量であることが好ましい。
【0041】
第2の方法において、本発明の油脂組成物は、極度硬化油脂を油相基準で0.3〜9質量%、好ましくは0.3〜7質量%、更に好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.3〜3質量%含有することが好ましい。
【0042】
上記の極度硬化油脂としては、ナタネ極度硬化油、ハイエルシン酸ナタネ極度硬化油、大豆極度硬化油、パーム極度硬化油等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明ではハイエルシン酸ナタネ極度硬化油、パーム極度硬化油、大豆極度硬化油の中から選ばれた1種又は2種以上を用いるのが好ましい。
【0043】
第2の方法において、本発明の油脂組成物は、必要に応じ、本発明の効果を妨げない範囲において、上記の(1)〜(3)にそれぞれに記載の油脂、及び、上記極度硬化油脂以外の「その他の油脂」を含有させることができる。
【0044】
上記の「その他の油脂」としては、食用に適する油脂であればよく、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油、ハイオレイックべに花油、ハイオレイックひまわり油、各種食用油脂の分別軟部油等の常温で液体の油脂や、乳脂等が挙げられるが特に限定されない。
【0045】
第2の方法において、本発明の油脂組成物は、油相基準で「その他の油脂」を好ましくは30質量%以下含有させることができる。尚、上記(2)及び(3)の組み合わせの場合は、「その他の油脂」の含有量を、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下とすることが好ましい。
【0046】
本発明の油脂組成物は、油脂結晶が粗大化するような不安定な油脂である方が好ましいため、トランス酸を実質的に含有しないことが好ましい。トランス酸を含有すると油脂組成物は融点が低い場合であっても硬い物性になり、また、固化速度が速く、更には油脂結晶が微細化してしまう特徴があるためである。ここでいう「トランス酸を実質的に含有しない」とは、トランス酸含量が、本発明の油脂組成物に含まれている油脂の全構成脂肪酸中、好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%未満、最も好ましくは2質量%未満であることを意味する。
【0047】
本発明の油脂組成物において、油相の含有量は、好ましくは40〜100質量%、更に好ましくは60〜100質量%、最も好ましくは80〜100質量%である。本発明の油脂組成物において、油相の含有量が、40質量%よりも少ないと本発明の効果が得られにくい。
尚、上記油相とは、油脂組成物の油分として測定される部分であり、ジエチルエーテルで抽出される部分である。
【0048】
本発明の油脂組成物は、必要に応じ、本発明の効果を妨げない範囲において、「その他の成分」を含有することができる。「その他の成分」としては、水、乳製品、糖類、甘味料、増粘安定剤、酵素、食塩、塩化カリウム、着色料、酸味料、調味料、酸化防止剤、着香料、アルコール、酒、各種リキュール、アミノ酸、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、コーヒー、紅茶、緑茶、穀類、豆類、卵類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物等をあげることができる。
【0049】
本発明の油脂組成物において、上記の「その他の成分」の含有量は合計で、好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、最も好ましくは40質量%以下である。
【0050】
本発明の油脂組成物の好ましい水分含有量は、本発明の油脂組成物中、好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは20質量%以下である。
【0051】
本発明の油脂組成物は、例えば、ショートニング・マーガリン・バター等の可塑性油脂組成物や、サラダ油・流動ショートニング・溶かしバター等の流動状油脂組成物、また、粉末油脂等の何れの形態であってもよく、油脂組成物が乳化物である場合、その乳化形態は、油中水型、水中油型、及び二重乳化型の何れでも構わないが、大きな体積の焼き落ちのないバラエティブレッドが得られる点、及び、生地への分散性が良好でバラエティブレッド生地を安定して製造可能な点で、可塑性油脂組成物であることが好ましい。
【0052】
次に、本発明の油脂組成物の好ましい製造方法について述べる。
本発明の油脂組成物は、一般的な油脂組成物の製造方法と同様にして得ることができる。即ち、上記油相を溶解し、冷却し、結晶化させることにより製造することができる。
詳しくは、先ず油相を融点以上、好ましくは50〜70℃に加熱して溶解する。次に、油相に、必要により水相を混合乳化する。そして、次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌処理の方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。続いて、冷却し、結晶化する。冷却条件は好ましくは−0.5℃/分以上、更に好ましくは−5℃/分以上である。冷却に用いる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等の油脂組成物製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等も挙げられる。
また、本発明の油脂組成物を製造する際の何れかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、させなくても構わない。
【0053】
次に、本発明のバラエティブレッド生地について説明する。
本発明のバラエティブレッド生地は、上記本発明のバラエティブレッド用油脂組成物を、バラエティブレッド生地に使用する油脂の一部又は全部に使用したものである。
【0054】
「バラエティブレッド」とは、上述のとおり、副原料の風味が生かされている食パンであることから、本発明でいう「バラエティブレッド生地」とは、小麦粉等の穀物粉、イースト、塩、水等の主原料に、特徴のある副原料を配合するか、又は、副原料の特性が生かされるまで充分に配合したパン生地のことを言う。このバラエティブレッド生地の例としては、グラハムブレッド生地のように小麦粉を特殊挽きしたものを使用したパン生地、マルチシリアルブレッド生地のように小麦以外の穀物(ライ麦、米、とうもろこし等)を使用したパン生地、ブリオッシュブレッド生地のように、糖類、乳製品、卵製品、油脂、添加物等の副原料の特性が生かされるまで充分に配合したパン生地、或いは、レーズンブレッド生地のように乾燥果実等の固形物を分散させたパン生地等が挙げられ、更には、食パン生地以外であっても、デニッシュブレッド生地のように、食パン用の焼型に詰めて焼成するためのパン生地をも含む。本発明では、これらの中でも、本発明の効果が特に高い点で、固形物を分散させたパン生地であることが好ましい。
【0055】
本発明のバラエティブレッド生地が固形物を分散させたパン生地である場合、そのベースとなるベーカリー用生地は食パン生地、菓子パン生地、硬焼きパン生地、デニッシュ生地、イーストドーナツ生地、イーストパイ生地、ロールパン生地、スイートロール生地、ブリオッシュ生地等、様々なパン生地を使用することができる。
【0056】
また本発明のバラエティブレッド生地が固形物を分散させたパン生地である場合、その固形物としては、上記の乾燥果実をはじめ、野菜、ナッツ、チョコレートチップやダイスチーズ、ヨーグルトチップ、マヨネーズチップ、チップ状ジャム、そぼろ、フラワーペースト、茶葉、ゼリー、ぐみ、豆腐、黄な粉、肉類、魚介類、生果実等が挙げられる。
【0057】
上記乾燥果実や生果実としては、例えば、キウイフルーツ、パパイヤ、マンゴー、パイナップル、イチジク、オレンジ、レモン、アップル、アプリコット、チェリー、ブドウ、ラズベリー、ストロベリー、ブルーベリー、クランベリー、パッションフルーツ、プラム、日向夏、金柑、ぽんかん、たんかん、不知火、伊予柑、ヘベス、すだち等の乾燥品や生果実が挙げられる。
【0058】
また、上記野菜としては、例えば、ケール、大麦、セロリ、パセリ、ニンジン、クワの葉、アロエ、アスパラガス、ネギ、タマネギ、ホウレン草、ニガウリ、胡瓜、シソ、シュンギク、レタス、ニワトコ、ハコベ、ヨモギ、ショウガ、トマト、ピーマン、トウガラシ、キャベツ、ブロコッリー、カブ、白菜、芽キャベツ、大根、大根の葉、カリフラワー、クレソン、センブリ、大豆、グリーンピース、そら豆、明日葉等が挙げられる。
【0059】
上記副原料の含有量はバラエティブレッド生地に使用する小麦粉100質量部に対し好ましくは合計で45質量部以下、より好ましくは20質量部以下とする。
【0060】
本発明のバラエティブレッド生地は、本発明のバラエティブレッド用油脂組成物を少なくとも含有するものであるが、その含有量は、バラエティブレッド生地に含まれる小麦粉100質量部に対し、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは20〜80質量部、更に好ましくは25〜75質量部となる量である。
【0061】
次に、本発明のバラエティブレッド生地の製造方法について説明する。
本発明のバラエティブレッド生地は、本発明のバラエティブレッド用油脂組成物を生地に練り込み、及び/又は、折り込むことにより、製造することができる。練り込み方法や折り込み方法は特に限定されず、通常のパン製造方法と同様に行うことができる。
本発明のバラエティブレッド生地は、中種法でも、直捏法でも、液種法でも製造することができる。
また、得られた本発明のバラエティブレッド生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
【0062】
続いて、本発明のバラエティブレッドについて説明する。
本発明のバラエティブレッドは、本発明のバラエティブレッド生地を焼型に入れて焼成することにより得られる。また、得られた本発明のバラエティブレッドを、冷蔵、冷凍保存したり、冷凍保存後に電子レンジ加熱したりすることも可能である。焼型の種類、容積、形状はとくに制限されず、またその材質もとくに制限されないが、プルマン型、ワンローフ型、イギリスパン型やパウンド型が好適に使用される。
【0063】
最後に、本発明のバラエティブレッドの改良方法について述べる。
本発明のバラエティブレッドの改良方法は、バラエティブレッドの製造の際に、60℃で融解した後、25℃で100分保持後のSFCが、25℃における基準SFCの80%以下である油相を含有する油脂組成物、即ち、本発明のバラエティブレッド用油脂組成物を使用することにより、バラエティブレッドに使用する、全粒粉、小麦粉以外の穀粉、ナッツ、乾燥果実、野菜等の副原料に起因する、体積減少、しとり感の減少、老化が促進される、といった諸問題を全て改善し、体積が大きく、ソフトであり、しとり感が長く持続し、老化が抑制された優れた品質のバラエティブレッドとするものである。
その際の、上記油脂組成物の使用量、使用方法については上述のとおりである。
【実施例】
【0064】
本発明の内容を以下の製造例、実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例、実施例及び比較例に何ら限定されるものではない。尚、特に説明しない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
【0065】
製造例1及び2は、本発明の油脂組成物の原料として使用するエステル交換油脂の製造例であり、実施例1〜3並びに比較例1及び2は、本発明及び比較用のバラエティブレッド用油脂組成物、該油脂組成物を用いたバラエティブレッド生地及びバラエティブレッドの製造例並びに評価例である。尚、実施例1〜3のバラエティブレッド用油脂組成物は、上記第2の方法において、それぞれ上記(1)、(2)及び(3)の油脂の組み合わせを採用したものである。
【0066】
<エステル交換油脂の製造>
〔製造例1〕
炭素数14(以下、「C14」と表す)以下の飽和脂肪酸含量が68%、炭素数16(以下、「C16」と表す)以上の飽和脂肪酸含量が11%であるパーム核油75%に、C14以下の飽和脂肪酸含量が0%、C16以上の飽和脂肪酸含量が99%であるパーム極度硬化油25%を配合し、C14以下の飽和脂肪酸含量が51%、C16以上の飽和脂肪酸含量が33%である油脂配合物を得た。この油脂配合物100部に対し、触媒として0.1部のナトリウムメチラートを添加し、80℃で30分間ランダムエステル交換反応を行い、常法により精製して、融点が32℃であるエステル交換油脂Aを得た。
【0067】
〔製造例2〕
ヨウ素価60のパーム軟部油100%からなる油脂配合物100部に対し、触媒として0.1部のナトリウムメチラートを添加し、80℃で30分間ランダムエステル交換反応を行い、常法により精製して、融点が34℃であるエステル交換油脂Bを得た。
【0068】
<油脂組成物の製造>
〔実施例1〕
ヨウ素価51のパーム油60%、ヤシ油10.3%、ナタネ液状油29%、及びハイエルシンナタネ極度硬化油0.7%からなる油相を、溶解、混合及び急冷可塑化して、トランス酸の含有量は2%未満であり、乳化剤を含有しない本発明のバラエティブレッド用油脂組成物1を得た。
得られたバラエティブレッド用油脂組成物1において、油相中のSMSで表されるトリグリセリド(1,3位がS、2位がMであるトリグリセリド。但し、S=炭素数16〜24の飽和脂肪酸、M=炭素数16〜24のモノ不飽和脂肪酸)(以後SMSという)の含有量(油相基準)は15.0%、構成脂肪酸組成におけるラウリン酸の含有量は5.3%、トランス酸の含有量は1.2%、該SMSの含有量を1としたときの該ラウリン酸の含有量(油相基準)は0.35であった。
また得られたバラエティブレッド用油脂組成物1の油相を60℃で融解した後、0℃で30分、25℃で30分保持後のSFC(25℃における基準SFC)は10%であるのに対し、60℃で融解した後、25℃で100分保持後のSFCは7.4%であり、25℃における基準SFCの74%であった。
【0069】
〔実施例2〕
ヨウ素価51のパーム油43%、豚脂55%、及びハイエルシンナタネ極度硬化油2%からなる油相を、溶解、混合及び急冷可塑化して、トランス酸の含有量が1%未満であり、乳化剤を含有しない本発明のバラエティブレッド用油脂組成物2を得た。
得られたバラエティブレッド用油脂組成物2において、SMSの含有量(油相基準)は13%、MSMで表されるトリグリセリド(1,3位がM、2位がSであるトリグリセリド。但し、S=炭素数16〜24の飽和脂肪酸、M=炭素数16〜24のモノ不飽和脂肪酸)(以後MSMという)の含有量は13%であり、構成脂肪酸組成におけるトランス酸の含有量は1.5%であった。
また得られたバラエティブレッド用油脂組成物2の油相を60℃で融解した後、0℃で30分、25℃で30分保持後のSFC(25℃における基準SFC)は14.5%であるのに対し、60℃で融解した後、25℃で100分保持後のSFCは9.5%であり、25℃における基準SFCの66%であった。
【0070】
〔実施例3〕
ヨウ素価51のパーム油35%、ヨウ素価35のパーム中融点部20%、エステル交換油脂A18%、エステル交換油脂B25%、及び大豆極度硬化油2%からなる油相を、溶解、混合、急冷可塑化して、トランス脂肪酸含量は1%未満である、乳化剤を含有しない本発明のバラエティブレッド用油脂組成物3を得た。
得られたバラエティブレッド用油脂組成物3において、SMSの含有量(油相基準)は24%、MSMで表されるトリグリセリドの含有量は2.9%であり、構成脂肪酸組成におけるトランス酸の含有量は0.8%であった。
得られたバラエティブレッド用油脂組成物3の油相を60℃で融解した後、0℃で30分、25℃で30分保持後のSFC(25℃における基準SFC)は27.8%であるのに対し、60℃で融解した後、25℃で100分保持後のSFCは19.5%であり、25℃における基準SFCの70%であった。
【0071】
〔比較例1〕
パームステアリン15質量%、及びエステル交換油脂A85質量%からなる油相を、溶解、混合、急冷可塑化して、トランス脂肪酸含量は1%未満である、乳化剤を含有しない比較例のバラエティブレッド用油脂組成物4を得た。
得られたバラエティブレッド用油脂組成物4の油相を60℃で融解した後、0℃で30分、25℃で30分保持後のSFC(25℃における基準SFC)は41.5%であるのに対し、60℃で融解した後、25℃で100分保持後のSFCは35.7%であり、25℃における基準SFCの86%であった。
【0072】
〔比較例2〕
パームステアリン15質量%、及びエステル交換油脂B85質量%からなる油相を、溶解、混合、急冷可塑化して、トランス脂肪酸含量は1%未満である、乳化剤を含有しない比較例のバラエティブレッド用油脂組成物5を得た。
得られたバラエティブレッド用油脂組成物5の油相を60℃で融解した後、0℃で30分、25℃で30分保持後のSFC(25℃における基準SFC)は17.4%であるのに対し、60℃で融解した後、25℃で100分保持後のSFCは14.8%であり、25℃における基準SFCの85%であった。
【0073】
<ベーカリー試験1:ブリオッシュ生地>
上記バラエティブレッド用油脂組成物1〜5を練り込み油脂として使用し、下記の配合及び製法によりブリオッシュ生地及びブリオッシュブレッドを得た。得られたブリオッシュブレッドは下記の評価方法及び評価基準に従い、体積、及び食感(ソフト性及びしとり感)を評価した。
【0074】
(配合及び製法)
強力粉100質量部、生イースト4質量部、上白糖13質量部、食塩2質量部、全卵(正味)20質量部、卵黄20質量部、及び牛乳30質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で5分混合し、バラエティブレッド用油脂組成物30質量部を投入し、低速で3分、中速で5分混合、更にバラエティブレッド用油脂組成物30質量部を投入し、低速3分、中速10分ミキシングを行ない、ブリオッシュ生地を得た。
【0075】
次いで、得られたブリオッシュ生地に、ラム酒漬けしたレーズン20質量部を添加し、更に低速で1分混合し、バラエティブレッド生地を得た。なお、しあげ温度は24℃とした。
ここで、フロアタイムを20分とった後、5℃の冷蔵庫で12時間リタードした後、50gに分割・丸目を行ない、次いでベンチタイムを20分とった後、パウンド型に3個並べて入れ、34℃、相対湿度75%で60分ホイロをとった後、表面に塗り卵をし、上火195℃、下火205℃に設定した固定窯に入れ、18分焼成して、レーズンブリオッシュブレッドであるバラエティブレッドを得た。
【0076】
(評価方法及び評価基準)
焼成後1時間25℃で放冷したバラエティブレッドの体積、及び食感(ソフト性及びしとり感)について、それぞれ下記の4段階の評価を行い、結果を〔表1〕に記載した。
放冷1時間後のバラエティブレッドの一部をポリエチレンの袋に密封し、3日後に開封し、同様の評価を行ない、その結果を併せて〔表1〕に記載した。
【0077】
体積の評価基準:
◎:焼き落ちや腰折れが全く見られず、良好な体積である。
○:側面に若干の筋が入っているが良好な体積である。
△:明らかな腰折れが見られ、体積が不良である。
×:激しい焼き落ち又は激しい腰折れが発生し、体積が極めて不良である。
食感(ソフト性)の評価基準:
◎:極めて良好。
○:良好。
△:やや不良である。
×:不良である。
食感(しとり感)の評価基準:
◎:ジューシー感があり、極めて良好である。
○:しとりが感じられ、良好である。
△:ぱさつき感が感じられ、やや不良である。
×:ぱさつき感があり、不良である。
【0078】
【表1】
【0079】
<ベーカリー試験2:デニッシュブレッド生地>
上記バラエティブレッド用油脂組成物1〜5を折り込み油脂及び練り込み油脂として使用し、下記の配合及び製法によりデニッシュ生地及びデニッシュブレッドを得た。得られたデニッシュブレッドは下記の評価方法及び評価基準に従い、体積、及び食感(ソフト性及びしとり感)を評価した。
【0080】
(配合及び製法)
強力粉100質量部、生イースト4質量部、上白糖18質量部、食塩2質量部、脱脂粉乳4質量部、全卵(正味)4質量部、及び水55質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で4分混合し、バラエティブレッド用油脂組成物10質量部を投入し、低速で3分、中速で4分ミキシングを行ない、デニッシュ用生地を得た。
ここで、フロアタイムを20分とった後、5℃の冷蔵庫で12時間リタードした後、リバースシーターを用いて圧延し、あらかじめ厚さ10mmのシート状に成形しておいたバラエティブレッド用油脂組成物50質量部(対生地27質量%)を積置し、包み込み、3つ折り2回後、ここにレーズン25質量部を散布し、更に3つ折り1回行ない、バラエティブレッド生地を得た。5℃の冷蔵庫で1時間リタード後、リバースシーターを用いて15mm厚まで圧延し、35×250mmにカットし、ツイスト後、パウンド型に入れ、34℃、相対湿度75%で70分ホイロをとった後、190℃に設定した固定窯に入れ、18分焼成して、レーズンデニッシュブレッドであるバラエティブレッドを得た。
【0081】
(評価方法及び評価基準)
焼成後1時間25℃で放冷したバラエティブレッドの体積、及び食感(ソフト性及びしとり感)について、それぞれ下記の4段階の評価を行い、結果を〔表2〕に記載した。
放冷1時間後のバラエティブレッドの一部をポリエチレンの袋に密封し、3日後に開封し、同様の評価を行ない、その結果を併せて〔表2〕に記載した。
【0082】
体積の評価基準:
◎:焼き落ちや腰折れが全く見られず、良好な体積である。
○:側面に若干の筋が入っているが良好な体積である。
△:明らかな腰折れが見られ、体積が不良である。
×:激しい焼き落ち又は激しい腰折れが発生し、体積が極めて不良である。
食感(ソフト性)の評価基準:
◎:極めて良好。
○:良好。
△:やや不良である。
×:不良である。
食感(しとり感)の評価基準:
◎:ジューシー感があり、極めて良好である。
○:しとりが感じられ、良好である。
△:ぱさつき感が感じられ、やや不良である。
×:ぱさつき感があり、不良である。
【0083】
【表2】