特許第6371277号(P6371277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6371277-環状カーボネート合成用触媒の製造方法 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6371277
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】環状カーボネート合成用触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/26 20060101AFI20180730BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20180730BHJP
   C07D 317/36 20060101ALI20180730BHJP
   C07D 317/38 20060101ALI20180730BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B01J31/26 Z
   B01J37/02 101Z
   C07D317/36
   C07D317/38
   C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-513769(P2015-513769)
(86)(22)【出願日】2014年4月22日
(86)【国際出願番号】JP2014061279
(87)【国際公開番号】WO2014175263
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-90239(P2013-90239)
(32)【優先日】2013年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000157603
【氏名又は名称】丸善石油化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 益男
(72)【発明者】
【氏名】何木 隆史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利和
(72)【発明者】
【氏名】安田 弘之
(72)【発明者】
【氏名】山本 昭治
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−296066(JP,A)
【文献】 特開2007−209926(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/084801(WO,A1)
【文献】 特開2012−24765(JP,A)
【文献】 T. Takahashi et al.,Synergistic hybrid catalyst for cyclic carbonate synthesis: Remarkable acceleration caused by immobilization of homogeneous catalyst on silica,Chem. Commun.,2006年,page.1664-1666
【文献】 T. Sakai et al.,Highly active and robust organic-inorganic hybrid catalyst for the synthesis of cyclic carbonates from carbon dioxide and epoxides,Green Chemistry,2008年,Vol.10,page.337-341
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07B 61/00
C07D 317/36
C07D 317/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシドと二酸化炭素とを反応させて環状カーボネートを合成するために使用される触媒の製造方法であって、下記工程(a)及び(b)を含む製造方法。
(a)ハロアルキル基又はハロアリール基を有するシラン化合物とシリカゲルとをキシレン存在下で反応させて、ハロアルキル基又はハロアリール基を有する触媒前駆体を得る工程
(b)工程(a)で得られた触媒前駆体と3級ホスフィンとを反応させて環状カーボネート合成用触媒を得る工程
【請求項2】
ハロアルキル基又はハロアリール基を有するシラン化合物の使用量が、シリカゲル1モルに対し、0.01〜0.1モルである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程(a)の反応時間が1〜30時間である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(a)の反応温度が50〜160℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
工程(b)を炭化水素溶媒存在下で行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
炭化水素溶媒がキシレンである請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
工程(a)で用いるシリカゲルの吸着水分量が1質量%以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で触媒を製造し、当該製造方法で得られた触媒の存在下で、エポキシドと二酸化炭素とを反応させる環状カーボネートの合成方法。
【請求項9】
エポキシドがエチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選ばれる1種以上である請求項に記載の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環状カーボネート合成用触媒の製造方法、該製造方法で得られた触媒、該触媒を用いる環状カーボネートの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状カーボネートは、有機溶剤、合成繊維加工剤、医薬品原料、化粧品添加剤、リチウム電池用電解液溶媒として、更にはアルキレングリコール及びジアルキルカーボネート合成の中間体として広い用途に使用される重要な化合物の一つである。
【0003】
従来、この環状カーボネートは、エポキシドと二酸化炭素を均一系触媒の存在下、適当な加圧条件のもとで反応させることで合成されていた。このような均一系触媒としては、アルカリ金属等のハロゲン化物(特許文献1)や第4級アンモニウム塩等のオニウム塩(特許文献2)が古くから知られており、工業的にも用いられている。
しかしながら、このような均一系触媒を使用する場合、通常、反応混合物と触媒との蒸留等による分離操作が必要となり、製造工程が複雑となるばかりでなく、分離工程中の触媒の分解や副生成物の生成といった問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63−17072号公報
【特許文献2】特開昭55−145623号公報
【特許文献3】国際公開第2005/084801号
【特許文献4】特開2008−296066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、触媒分離プロセスの簡素化を目的として、ハロゲン化物イオンを対イオンとする4級ホスホニウム基をシリカゲル等の担体に固定化した不均一系触媒が提案されている(特許文献3)。この触媒は、ハロアルキル鎖がシリカゲルに共有結合で固定された市販の担体をトリアルキルホスフィンと反応させて4級ホスホニウム化することにより製造される。
しかしながら、特許文献3に記載の製造方法は長期間高温で4級ホスホニウム化反応を行うことが必要であり、また、長期間反応させてもかなりの量のハロアルキル鎖が上記ホスフィンと反応しないまま残存する。
【0006】
また、ハロアルキル鎖やハロアリール鎖が共有結合で固定されたシリカゲルは、市販品を用いずとも、例えば、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン等のシラン化合物とシリカゲルを、トルエン中、還流条件下で反応させることにより得られるが、この反応は、一般的に、シラン化合物の濃度が低くなると反応速度が遅くなる。そのため、十分量のハロアルキル鎖を導入させるためシリカゲルに対して数倍〜数十倍量の大過剰量のシラン化合物を使用する、或いは反応液を蒸留しシラン化合物の濃度を上げる操作を繰り返す等の手法がとられる。
しかしながら、上記シラン化合物を多量に使用した場合は、シラン化合物同士の縮合物が生成しやすくなり触媒活性が低下する場合があるだけでなく、触媒製造工程における廃棄物が増え触媒の製造効率が低下する。また、溶媒を留去しながら反応を進行させる方法は、反応装置が複雑となり工程数も多くなる。
【0007】
また、特許文献3に記載のようなハロゲン化物イオンを対イオンとする4級ホスホニウムを固定化した触媒を簡便に製造する方法として、3−ブロモプロピルトリエトキシシランをあらかじめジフェニルモノアルキルホスフィンと反応させて4級ホスホニウム化し、これを触媒架橋剤として担体表面を修飾する方法が提案されている(特許文献4)。
しかしながら、ジフェニルモノアルキルホスフィンと反応させて4級ホスホニウム化したシラン化合物を触媒架橋剤として用いた場合、立体障害によりシリカゲル表面と結合するシラン化合物の量が制限されるため、十分な量のハロゲンやリンを担持できるとはいい難い。また、シリカゲルの存在下では、4級ホスホニウム塩とシラン化合物とが反応して副生成物を生成するため、4級ホスホニウム塩とシラン化合物の使用量に見合った活性を示す触媒の製造が難しい。
【0008】
したがって、本発明は、エポキシドと二酸化炭素とを反応させて環状カーボネートを合成するために使用される優れた触媒活性を有する不均一系触媒を、簡便にかつ低コストで製造する方法、該製造方法で得られた触媒、該触媒を用いる環状カーボネートの合成方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ハロアルキル基又はハロアリール基を有するシラン化合物とシリカゲルとをキシレン存在下で反応させて、ハロアルキル基又はハロアリール基を有する触媒前駆体を得、次いで該触媒前駆体と3級ホスフィンとを反応させることで、上記シラン化合物の使用量が少量である場合や反応時間が短い場合であったとしても、簡便に且つ低コストで環状カーボネート合成用触媒を製造でき、且つ該触媒が優れた触媒活性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、エポキシドと二酸化炭素とを反応させて環状カーボネートを合成するために使用される触媒の製造方法であって、下記工程(a)及び(b)を含む製造方法を提供するものである。
(a)ハロアルキル基又はハロアリール基を有するシラン化合物とシリカゲルとをキシレン存在下で反応させて、ハロアルキル基又はハロアリール基を有する触媒前駆体を得る工程
(b)工程(a)で得られた触媒前駆体と3級ホスフィンとを反応させて環状カーボネート合成用触媒を得る工程
【0011】
また、本発明は、上記製造方法で得られた、エポキシドと二酸化炭素とを反応させて環状カーボネートを合成するために使用される触媒を提供するものである。
【0012】
更に、本発明は、上記触媒の存在下で、エポキシドと二酸化炭素とを反応させる環状カーボネートの合成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、高転化率及び高収率で環状カーボネートを合成でき優れた触媒活性を示す不均一系触媒を、シラン化合物の使用量が少量である場合や反応時間が短い場合であったとしても簡便にかつ低コストで製造できる。
したがって、本発明の触媒は、エポキシドと二酸化炭素とを反応させて環状カーボネートを合成するために使用する触媒として有用である。また、本発明の環状カーボネートの合成方法によれば、高転化率及び高収率で環状カーボネートを合成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の環状カーボネートの合成方法に用いる装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<環状カーボネート合成用触媒の製造方法>
本発明のエポキシドと二酸化炭素とを反応させて環状カーボネートを合成するために使用される触媒の製造方法は、上記工程(a)及び(b)を含むものである。
〔工程(a)〕
工程(a)は、ハロアルキル基又はハロアリール基を有するシラン化合物とシリカゲルとをキシレン存在下で反応させて(シラン化反応)、ハロアルキル基又はハロアリール基を有する触媒前駆体を得る工程である。
工程(a)で溶媒としてキシレンを使用することにより、十分なハロゲン含有量の触媒前駆体を得ることができる。なお、シリカゲルのシラン化反応は、シラン化合物の濃度が低くなると反応が遅くなるため、所望の担持量に対して数倍〜数十倍量の大過剰量のシラン化合物の存在下で反応を行う、或いは反応液を適宜蒸留して溶媒を一部留去し、シラン化合物の濃度を上げることを繰り返して反応を進行させる等の手法がとられるが、本発明の方法によれば、シラン化合物の使用量が少量である場合や反応時間が短い場合であっても、上記のような手法をとらずに十分なハロゲン含有量の触媒前駆体を得ることができる。
【0016】
上記キシレンは、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレンのいずれでもよい。なお、キシレンはエチルベンゼン等の他の溶媒と組み合わせて用いてもよい。
【0017】
上記キシレンの使用量は特に限定されないが、シリカゲル100質量部に対し、通常100〜1000質量部であるが、好ましくは100〜750質量部であり、より好ましくは100〜500質量部であり、更に好ましくは200〜300質量部である。
【0018】
また、上記工程(a)で用いるシリカゲルの平均細孔径としては、触媒活性及び環状カーボネート合成における副生成物抑制の観点から、3.5〜50nmの範囲が好ましく、3.5〜25nmの範囲が好ましく、5〜20nmの範囲がより好ましく、6〜15nmの範囲が特に好ましい。斯様な範囲の平均細孔径のシリカゲルを用いることで、触媒のシリカゲル含有量、リン含有量を制御しやすくなる。また、平均細孔径が3.5nm以上とすることにより、細孔内に3級ホスフィンを導入しやすくなり、表面での凝集、細孔の閉塞等を抑えることができる。
また、上記シリカゲルの比表面積は、好ましくは80〜2000m2/gの範囲、より好ましくは100〜1000m2/gの範囲であり、更に好ましくは150〜750m2/gの範囲である。
【0019】
また、上記シリカゲルは、分離回収等のハンドリング性の点から、粒子の形態を成していることが好ましい。粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば、破砕状、粒状、ビーズ状、錠剤状、ペレット状、円筒状、粉体状が挙げられ、不規則な形状でもよい。シリカゲルがビーズ状である場合、その粒子径は、好ましくは0.1〜10mmの範囲、より好ましくは0.2〜8mmの範囲、更に好ましくは0.5〜5.0mmの範囲である。また、粉体状である場合、その粒度は、好ましくは30〜5000メッシュであり、より好ましくは100〜1000メッシュである。
なお、上記シリカゲルの平均細孔径、比表面積、粒子径は比表面積/細孔分布測定装置等により測定可能である。
【0020】
また、シリカゲルはあらかじめ乾燥しておいたものが好ましく、吸着水分量が1質量%以下のもの(シリカゲルに対する吸着水分量が1質量%以下に調整されたもの)がより好ましい。吸着水分量を1質量%以下とすることにより表面シラノールが抑制され、ハロアルキル基やハロアリール基の過剰な担持を抑えられ、触媒活性が向上する。
ここで、吸着水分量とは、シリカゲル細孔内に存在する水分量のことをいい、熱重量測定装置等により測定可能である。
上記シリカゲルの乾燥方法は特に限定されないが、例えば、減圧下又は乾燥空気(又は不活性ガス)流通下で加熱する方法、ディーンスタークトラップを用いた還流処理等の方法が挙げられる。該還流処理に用いられる溶媒は、共沸により水を除去することが可能なものであれば特に限定されないが、溶媒の置換による水分の持ち込みを抑える観点から、該溶媒をそのまま工程(a)で用いる溶媒とするのが好ましい。
更に、シリカゲルは上記乾燥に先立ち塩酸等で酸処理されていてもよい。
【0021】
また、工程(a)で用いるハロアルキル基又はハロアリール基を含有するシラン化合物としては、下記式(1)で表されるものが好ましい。該シラン化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
【化1】
【0023】
〔式(1)中、R1は炭素数2〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、アリーレン基、アルカリーレン基、アリーレンアルキレン基又はアルキレンアリーレン基を示し、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。〕
【0024】
上記式(1)中、R1で示される炭素数2〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。
また、R1で示されるアリーレン基は好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基であり、例えばフェニレン基、トリレン基等が挙げられる。
また、R1で示されるアルカリーレン基は好ましくは炭素数8〜10のアルカリーレン基であり、例えばキシリレン基等が挙げられる。
また、R1で示されるアリーレンアルキレン基は好ましくは炭素数6〜10のアリーレンアルキレン基であり、例えばフェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基等が挙げられる。
また、R1で示されるアルキレンアリーレン基は好ましくは炭素数6〜10のアルキレンアリーレン基であり、例えばメチレンフェニレン基、エチレンフェニレン基等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数2〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、トリメチレン基が特に好ましい。
【0025】
また、式(1)において、R2で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基であり、より好ましくはメチル基である。
式(1)において、Xで示されるハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは臭素原子である。
【0026】
式(1)で表されるシラン化合物のうちハロアルキル基を含有するものの具体例としては、ハロC2−8アルキルトリメトキシシラン、ハロC2−8アルキルトリエトキシシラン、ハロC2−8アルキルトリプロポキシシラン、ハロアルキルアリールトリメトキシシラン、ハロアルキルアリールトリエトキシシラン、ハロアルキルアリールトリプロポキシシラン、ハロアルキルアラルキルトリメトキシシラン、ハロアルキルアラルキルトリエトキシシラン、ハロアルキルアラルキルトリプロポキシシラン等が挙げられる。
【0027】
上記ハロC2−8アルキルトリメトキシシランとしては、例えば、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−ブロモエチルトリメトキシシラン、2−ヨードエチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、4−クロロブチルトリメトキシシラン、4−ブロモブチルトリメトキシシラン、4−ヨードブチルトリメトキシシラン、5−クロロペンチルトリメトキシシラン、5−ブロモペンチルトリメトキシシラン、5−ヨードペンチルトリメトキシシラン、6−クロロへキシルトリメトキシシラン、6−ブロモへキシルトリメトキシシラン、6−ヨードへキシルトリメトキシシラン、7−クロロヘプチルトリメトキシシラン、7−ブロモヘプチルトリメトキシシラン、7−ヨードヘプチルトリメトキシシラン、8−クロロオクチルトリメトキシシラン、8−ブロモオクチルトリメトキシシラン、8−ヨードオクチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0028】
また、上記ハロC2−8アルキルトリエトキシシランとしては、例えば、2−クロロエチルトリエトキシシラン、2−ブロモエチルトリエトキシシラン、2−ヨードエチルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−ヨードプロピルトリエトキシシラン、4−クロロブチルトリエトキシシラン、4−ブロモブチルトリエトキシシラン、4−ヨードブチルトリエトキシシラン、5−クロロペンチルトリエトキシシラン、5−ブロモペンチルトリエトキシシラン、5−ヨードペンチルトリエトキシシラン、6−クロロへキシルトリエトキシシラン、6−ブロモへキシルトリエトキシシラン、6−ヨードへキシルトリエトキシシラン、7−クロロヘプチルトリエトキシシラン、7−ブロモヘプチルトリエトキシシラン、7−ヨードヘプチルトリエトキシシラン、8−クロロオクチルトリエトキシシラン、8−ブロモオクチルトリエトキシシラン、8−ヨードオクチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0029】
また、上記ハロC2−8アルキルトリプロポキシシランとしては、例えば、2−クロロエチルトリプロポキシシラン、2−ブロモエチルトリプロポキシシラン、2−ヨードエチルトリプロポキシシラン、3−クロロプロピルトリプロポキシシラン、3−ブロモプロピルトリプロポキシシラン、3−ヨードプロピルトリプロポキシシラン、4−クロロブチルトリプロポキシシラン、4−ブロモブチルトリプロポキシシラン、4−ヨードブチルトリプロポキシシラン、5−クロロペンチルトリプロポキシシラン、5−ブロモペンチルトリプロポキシシラン、5−ヨードペンチルトリプロポキシシラン、6−クロロへキシルトリプロポキシシラン、6−ブロモへキシルトリプロポキシシラン、6−ヨードへキシルトリプロポキシシラン、7−クロロヘプチルトリプロポキシシラン、7−ブロモヘプチルトリプロポキシシラン、7−ヨードヘプチルトリプロポキシシラン、8−クロロオクチルトリプロポキシシラン、8−ブロモオクチルトリプロポキシシラン、8−ヨードオクチルトリプロポキシシランが挙げられる。
【0030】
また、上記ハロアルキルアリールトリメトキシシランとしては、例えば、p−クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、p−(2−クロロエチル)フェニルトリメトキシシラン、p−ブロモメチルフェニルトリメトキシシラン、p−(2−ブロモエチル)フェニルトリメトキシシラン、p−ヨードメチルフェニルトリメトキシシラン、p−(2−ヨードエチル)フェニルトリメトキシシランが挙げられる。
また、上記ハロアルキルアリールトリエトキシシランとしては、例えば、p−クロロメチルフェニルトリエトキシシラン、p−(2−クロロエチル)フェニルトリエトキシシラン、p−ブロモメチルフェニルトリエトキシシラン、p−(2−ブロモエチル)フェニルトリエトキシシラン、p−ヨードメチルフェニルトリエトキシシラン、p−(2−ヨードエチル)フェニルトリエトキシシランが挙げられる。
また、上記ハロアルキルアリールトリプロポキシシランとしては、例えば、p−クロロメチルフェニルトリプロポキシシラン、p−(2−クロロエチル)フェニルトリプロポキシシラン、p−ブロモメチルフェニルトリプロポキシシラン、p−(2−ブロモエチル)フェニルトリプロポキシシラン、p−ヨードメチルフェニルトリプロポキシシラン、p−(2−ヨードエチル)フェニルトリプロポキシシランが挙げられる。
【0031】
また、上記ハロアルキルアラルキルトリメトキシシランとしては、例えば、p−クロロメチルベンジルトリメトキシシラン、p−ブロモメチルベンジルトリメトキシシラン、p−ヨードメチルベンジルトリメトキシシランが挙げられる。
また、上記ハロアルキルアラルキルトリエトキシシランとしては、p−クロロメチルベンジルトリエトキシシラン、p−ブロモメチルベンジルトリエトキシシラン、p−ヨードメチルベンジルトリエトキシシランが挙げられる。
また、上記ハロアルキルアラルキルトリプロポキシシランとしては、p−クロロメチルベンジルトリプロポキシシラン、p−ブロモメチルベンジルトリプロポキシシラン、p−ヨードメチルベンジルトリプロポキシシランが挙げられる。
【0032】
また、式(1)で表されるシラン化合物のうちハロアリール基を含有するものの具体例としては、ハロアリールトリアルコキシシラン、ハロアラルキルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
上記ハロアリールトリアルコキシシランとしては、p−クロロフェニルトリメトキシシラン、p−ブロモフェニルトリメトキシシラン、p−クロロフェニルトリエトキシシラン、p−ブロモフェニルトリエトキシシラン、p−クロロフェニルトリプロポキシシラン、p−ブロモフェニルトリプロポキシシランが挙げられる。
また、上記ハロアラルキルトリアルコキシシランとしては、p−クロロベンジルトリメトキシシラン、p−ブロモベンジルトリメトシキシシラン、p−ヨードベンジルトリメトシキシシラン、p−クロロベンジルトリエトキシシラン、p−ブロモベンジルトリエトシキシシラン、p−ヨードベンジルトリエトシキシシラン、p−クロロベンジルトリプロポキシシラン、p−ブロモベンジルトリプロポキシシラン、p−ヨードベンジルトリプロポキシシラン等が挙げられる。
【0033】
上記シラン化合物の使用量は、触媒活性及び安価に触媒を製造する観点から、シリカゲル1モルに対し、0.001〜0.5モルが好ましく、0.01〜0.1モルがより好ましく、0.02〜0.08モルが更に好ましく、0.025〜0.06モルが特に好ましい。
【0034】
工程(a)の反応温度は特に限定されないが、好ましくは50〜160℃、より好ましくは80〜150℃、更に好ましくは100〜140℃であり、更に好ましくは110〜140℃であり、更に好ましくは125〜140℃の範囲である。反応温度を160℃以下とすることにより担持されたシラン化合物の分解が抑制でき、一方、50℃以上とすることにより反応速度を速めることができる。
工程(a)の反応時間は特に限定されないが、好ましくは1〜30時間、より好ましくは3〜28時間、特に好ましくは5〜26時間である。なお、本工程(a)によれば、反応時間が5〜10時間であっても十分なハロゲン含有量の触媒前駆体を得ることができる。
【0035】
また、工程(a)で得られるハロアルキル基又はハロアリール基を有する触媒前駆体におけるハロゲンの含有量としては、触媒活性の観点から、触媒前駆体1gあたり1.0mmol以下が好ましく、0.1〜1.0mmolがより好ましく、0.2〜0.95mmolが更に好ましく、0.3〜0.9mmolが更に好ましく、0.3〜0.75mmolが更に好ましく、0.3〜0.5mmolが特に好ましい。
ハロアルキル基又はハロアリール基を有するシラン化合物の使用量の調整し工程(a)をキシレン存在下で行うことにより、上記範囲のハロゲン含有量の触媒前駆体が得られる。また、上記吸着水分量1質量%以下に調製されたシリカゲルの使用により、ハロゲン含有量が更に制御しやすくなる。
上記ハロゲン含有量は、後記実施例と同様にして測定すればよい。
【0036】
〔工程(b)〕
工程(b)は、工程(a)で得られた触媒前駆体と3級ホスフィンとを反応させて環状カーボネート合成用触媒を得る工程である。触媒前駆体と3級ホスフィンとを反応させることにより、触媒前駆体のハロアルキル基又はハロアリール基が、ハロゲン化物アニオンを対イオンとする4級ホスホニウム基に変換される。したがって、環状カーボネート合成用触媒は、ハロゲン化物アニオンを対イオンとする4級ホスホニウム基を有する。
【0037】
工程(b)で用いる3級ホスフィンとしては、下記式(2)で表されるものが好ましい。該3級ホスフィンは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
【化2】
【0039】
〔式(2)中、R3〜R5はそれぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシを置換基として有するアリール基、又はこれら基に含まれる水素原子の1個以上がヘテロ原子を含む基で置換されたものを示す。〕
【0040】
式(2)中、R3〜R5で示される炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。
また、R3〜R5で示されるアリール基は好ましくは炭素数6〜10のアリール基であり、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、R3〜R5で示されるアラルキル基は好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基であり、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
また、R3〜R5で示されるアルコキシアルキル基は好ましくは炭素数2〜8のアルコキシアルキル基であり、例えばメトキシエチル基等が挙げられる。
また、R3〜R5で示されるアルコキシを置換基として有するアリール基は好ましくは炭素数7〜14のアルコキシアリール基であり、例えばメトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基等が挙げられる。また、アリール基が有するアルコキシ基の個数及び位置は任意であるが、好ましいアルコキシ基の個数は1〜4個であり、より好ましくは1又は2個である。
【0041】
なお、上記炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシを置換基として有するアリール基は、これら基に含まれる水素原子の1個以上がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。ヘテロ原子としては、窒素、酸素、リン、イオウ、ハロゲン原子(フッ素原子等)等が挙げられる。
上記ヘテロ原子を含む基としては、アミノ基、ヒドラジノ基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミジノ基等の窒素含有基;アルカノイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基等の酸素含有基;ホスファニル基、ホスホノ基、ホスフィニル基等のリン含有基;スルホ基、スルファニル基、アルキルスルファニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルアミノスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アルキルアミノスルフィニル基、アルキルスルフィニルアミノ基、チオカルボキシ基等のイオウ含有基等が挙げられる。
【0042】
上述のようなR3〜R5の中でも、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、ブチル基が特に好ましい。
【0043】
上記式(2)で表される化合物の具体例としては、トリC1−8アルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、ジアリールC1−8アルキルホスフィン、アリールジC1−8アルキルホスフィン、トリアラルキルホスフィン、ジアラルキルC1−8アルキルホスフィン、ジアラルキルアリールホスフィン、アラルキルジC1−8アルキルホスフィン、アラルキルジアリールホスフィン、トリス(アルコキシアリール)ホスフィン、ビス(アルコキシアリール)C1−8アルキルホスフィン、ビス(アルコキシアリール)アリールホスフィン、ビス(アルコキシアリール)アラルキルホスフィン、(アルコキシアリール)ジC1−8アルキルホスフィン、(ジアルコキシアリール)ジC1−8アルキルホスフィン、アルコキシアリールジアリールホスフィン、(ジアルコキシアリール)ジアリールホスフィン、アルコキシアリールジアラルキルホスフィン、(ジアルコキシアリール)ジアラルキルホスフィンが挙げられる。
【0044】
上記トリC1−8アルキルホスフィンとしては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリへキシルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリシクロへキシルホスフィン、ジメチルエチルホスフィン、ジメチルプロピルホスフィン、ジメチルイソプロピルホスフィン、ジメチルn−ブチルホスフィン、ジメチルイソブチルホスフィン、ジメチルペンチルホスフィン、ジメチルへキシルホスフィン、ジメチルヘプチルホスフィン、ジメチルオクチルホスフィン、ジメチルシクロへキシルホスフィン、ジエチルメチルホスフィン、ジエチルプロピルホスフィン、ジエチルイソプロピルホスフィン、ジエチルn−ブチルホスフィン、ジエチルイソブチルホスフィン、ジエチルペンチルホスフィン、ジエチルへキシルホスフィン、ジエチルヘプチルホスフィン、ジエチルオクチルホスフィン、ジエチルシクロへキシルホスフィン、
【0045】
ジプロピルメチルホスフィン、ジプロピルエチルホスフィン、ジプロピルイソプロピルホスフィン、ジプロピルn−ブチルホスフィン、ジプロピルイソブチルホスフィン、ジプロピルペンチルホスフィン、ジプロピルへキシルホスフィン、ジプロピルヘプチルホスフィン、ジプロピルオクチルホスフィン、ジプロピルシクロへキシルホスフィン、ジイソプロピルメチルホスフィン、ジイソプロピルエチルホスフィン、ジイソプロピルプロピルホスフィン、ジイソプロピルn−ブチルホスフィン、ジイソプロピルイソブチルホスフィン、ジイソプロピルペンチルホスフィン、ジイソプロピルへキシルホスフィン、ジイソプロピルヘプチルホスフィン、ジイソプロピルオクチルホスフィン、ジイソプロピルシクロへキシルホスフィン、ジn−ブチルメチルホスフィン、ジn−ブチルエチルホスフィン、ジn−ブチルプロピルホスフィン、ジn−ブチルイソプロピルホスフィン、ジn−ブチルイソブチルホスフィン、ジn−ブチルペンチルホスフィン、ジn−ブチルへキシルホスフィン、ジn−ブチルヘプチルホスフィン、ジn−ブチルオクチルホスフィン、ジn−ブチルシクロへキシルホスフィン、
【0046】
ジイソブチルメチルホスフィン、ジイソブチルエチルホスフィン、ジイソブチルプロピルホスフィン、ジイソブチルイソプロピルホスフィン、ジイソブチルn−ブチルホスフィン、ジイソブチルペンチルホスフィン、ジイソブチルへキシルホスフィン、ジイソブチルヘプチルホスフィン、ジイソブチルオクチルホスフィン、ジイソブチルシクロへキシルホスフィン、ジペンチルメチルホスフィン、ジペンチルエチルホスフィン、ジペンチルプロピルホスフィン、ジペンチルイソプロピルホスフィン、ジペンチルn−ブチルホスフィン、ジペンチルイソブチルホスフィン、ジペンチルへキシルホスフィン、ジペンチルヘプチルホスフィン、ジペンチルオクチルホスフィン、ジペンチルシクロへキシルホスフィン、ジへキシルメチルホスフィン、ジへキシルエチルホスフィン、ジへキシルプロピルホスフィン、ジへキシルイソプロピルホスフィン、ジへキシルn−ブチルホスフィン、ジへキシルイソブチルホスフィン、ジへキシルペンチルホスフィン、ジへキシルヘプチルホスフィン、ジへキシルオクチルホスフィン、ジへキシルシクロへキシルホスフィン、
【0047】
ジヘプチルメチルホスフィン、ジヘプチルエチルホスフィン、ジヘプチルプロピルホスフィン、ジヘプチルイソプロピルホスフィン、ジヘプチルn−ブチルホスフィン、ジヘプチルイソブチルホスフィン、ジヘプチルペンチルホスフィン、ジヘプチルへキシルホスフィン、ジヘプチルオクチルホスフィン、ジヘプチルシクロへキシルホスフィン、ジオクチルメチルホスフィン、ジオクチルエチルホスフィン、ジオクチルプロピルホスフィン、ジオクチルイソプロピルホスフィン、ジオクチルn−ブチルホスフィン、ジオクチルイソブチルホスフィン、ジオクチルペンチルホスフィン、ジオクチルへキシルホスフィン、ジオクチルヘプチルホスフィン、ジオクチルシクロへキシルホスフィン、ジシクロへキシルメチルホスフィン、ジシクロへキシルエチルホスフィン、ジシクロへキシルプロピルホスフィン、ジシクロへキシルイソプロピルホスフィン、ジシクロへキシルn−ブチルホスフィン、ジシクロへキシルイソブチルホスフィン、ジシクロへキシルペンチルホスフィン、ジシクロへキシルへキシルホスフィン、ジシクロへキシルヘプチルホスフィン、ジシクロへキシルオクチルホスフィンが挙げられる。
【0048】
上記トリアリールホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリキシリルホスフィンが挙げられる。
【0049】
上記ジアリールC1−8アルキルホスフィンとしては、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン、ジフェニルプロピルホスフィン、ジフェニルイソプロピルホスフィン、ジフェニルn−ブチルホスフィン、ジフェニルイソブチルホスフィン、ジフェニルペンチルホスフィン、ジフェニルへキシルホスフィン、ジフェニルヘプチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、ジフェニルシクロへキシルホスフィン、ジトリルメチルホスフィン、ジトリルエチルホスフィン、ジトリルプロピルホスフィン、ジトリルイソプロピルホスフィン、ジトリルn−ブチルホスフィン、ジトリルイソブチルホスフィン、ジトリルペンチルホスフィン、ジトリルへキシルホスフィン、ジトリルヘプチルホスフィン、ジトリルオクチルホスフィン、ジトリルシクロへキシルホスフィン、ジキシリルメチルホスフィン、ジキシリルエチルホスフィン、ジキシリルプロピルホスフィン、ジキシリルイソプロピルホスフィン、ジキシリルn−ブチルホスフィン、ジキシリルイソブチルホスフィン、ジキシリルペンチルホスフィン、ジキシリルへキシルホスフィン、ジキシリルヘプチルホスフィン、ジキシリルオクチルホスフィン、ジキシリルシクロへキシルホスフィンが挙げられる。
【0050】
上記アリールジC1−8アルキルホスフィンとしては、フェニルジメチルホスフィン、フェニルジエチルホスフィン、フェニルジプロピルホスフィン、フェニルジイソプロピルホスフィン、フェニルジn−ブチルホスフィン、フェニルジイソブチルホスフィン、フェニルジペンチルホスフィン、フェニルジへキシルホスフィン、フェニルジヘプチルホスフィン、フェニルジオクチルホスフィン、フェニルジシクロへキシルホスフィン、トリルジメチルホスフィン、トリルジエチルホスフィン、トリルジプロピルホスフィン、トリルジイソプロピルホスフィン、トリルジn−ブチルホスフィン、トリルジイソブチルホスフィン、トリルジペンチルホスフィン、トリルジへキシルホスフィン、トリルジヘプチルホスフィン、トリルジオクチルホスフィン、トリルジシクロへキシルホスフィン、キシリルジメチルホスフィン、キシリルジエチルホスフィン、キシリルジプロピルホスフィン、キシリルジイソプロピルホスフィン、キシリルジn−ブチルホスフィン、キシリルジイソブチルホスフィン、キシリルジペンチルホスフィン、キシリルジへキシルホスフィン、キシリルジヘプチルホスフィン、キシリルジオクチルホスフィン、キシリルジシクロへキシルホスフィンが挙げられる。
【0051】
上記トリアラルキルホスフィンとしては、トリベンジルホスフィンが挙げられる。
また、上記ジアラルキルC1−8アルキルホスフィンとしては、ジベンジルメチルホスフィン、ジベンジルエチルホスフィン、ジベンジルプロピルホスフィン、ジベンジルイソプロピルホスフィン、ジベンジルn−ブチルホスフィン、ジベンジルイソブチルホスフィン、ジベンジルペンチルホスフィン、ジベンジルへキシルホスフィン、ジベンジルヘプチルホスフィン、ジベンジルオクチルホスフィン、ジベンジルシクロへキシルホスフィンが挙げられる。
【0052】
上記ジアラルキルアリールホスフィンとしては、ジベンジルフェニルホスフィン、ジベンジルトリルホスフィン、ジベンジルキシリルホスフィンが挙げられる。
【0053】
上記アラルキルジC1−8アルキルホスフィンとしては、ベンジルジメチルホスフィン、ベンジルジエチルホスフィン、ベンジルジプロピルホスフィン、ベンジルジイソプロピルホスフィン、ベンジルジn−ブチルホスフィン、ベンジルジイソブチルホスフィン、ベンジルジペンチルホスフィン、ベンジルジへキシルホスフィン、ベンジルジヘプチルホスフィン、ベンジルジオクチルホスフィン、ベンジルジシクロへキシルホスフィンが挙げられる。
【0054】
上記アラルキルジアリールホスフィンとしては、ベンジルジフェニルホスフィン、ベンジルジトリルホスフィン、ベンジルジキシリルホスフィンが挙げられる。
【0055】
上記トリス(アルコキシアリール)ホスフィンとしては、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリ−o−メトキシフェニルホスフィン、トリ−p−メトキシフェニルホスフィンが挙げられる。
【0056】
上記ビス(アルコキシアリール)C1−8アルキルホスフィンとしては、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)メチルホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)エチルホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)プロピルホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)イソプロピルホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)n−ブチルホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)イソブチルホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ペンチルホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)へキシルホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ヘプチルホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)オクチルホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)シクロへキシルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルメチルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルエチルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルプロピルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルイソプロピルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルn−ブチルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルイソブチルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルペンチルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルへキシルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルヘプチルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルオクチルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルシクロへキシルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルメチルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルエチルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルメチルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルエチルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルプロピルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルイソプロピルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルn−ブチルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルイソブチルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルペンチルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルへキシルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルヘプチルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルオクチルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルシクロへキシルホスフィンが挙げられる。
【0057】
上記ビス(アルコキシアリール)アリールホスフィンとしては、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)フェニルホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)トリルホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)キシリルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルフェニルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルトリルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルキシリルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルフェニルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルトリルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルキシリルホスフィンが挙げられる。
【0058】
上記ビス(アルコキシアリール)アラルキルホスフィンとしては、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ベンジルホスフィン、ジ−o−メトキシフェニルベンジルホスフィン、ジ−p−メトキシフェニルベンジルホスフィンが挙げられる。
【0059】
上記(アルコキシアリール)ジC1−8アルキルホスフィンとしては、o−メトキシフェニルジメチルホスフィン、o−メトキシフェニルジエチルホスフィン、o−メトキシフェニルジプロピルホスフィン、o−メトキシフェニルジイソプロピルホスフィン、o−メトキシフェニルジn−ブチルホスフィン、o−メトキシフェニルジイソブチルホスフィン、o−メトキシフェニルジペンチルホスフィン、o−メトキシフェニルジへキシルホスフィン、o−メトキシフェニルジヘプチルホスフィン、o−メトキシフェニルジオクチルホスフィン、o−メトキシフェニルジシクロへキシルホスフィン、p−メトキシフェニルジメチルホスフィン、p−メトキシフェニルジエチルホスフィン、p−メトキシフェニルジプロピルホスフィン、p−メトキシフェニルジイソプロピルホスフィン、p−メトキシフェニルジn−ブチルホスフィン、p−メトキシフェニルジイソブチルホスフィン、p−メトキシフェニルジペンチルホスフィン、p−メトキシフェニルジへキシルホスフィン、p−メトキシフェニルジヘプチルホスフィン、p−メトキシフェニルジオクチルホスフィン、p−メトキシフェニルジシクロへキシルホスフィンが挙げられる。
【0060】
上記(ジアルコキシアリール)ジC1−8アルキルホスフィンとしては、2,6−ジメトキシフェニルジメチルホスフィン、2,6−ジメトキシフェニルジエチルホスフィン、2,6−ジメトキシフェニルジプロピルホスフィン、2,6−ジメトキシフェニルジイソプロピルホスフィン、2,6−ジメトキシフェニルジn−ブチルホスフィン、2,6−ジメトキシフェニルジイソブチルホスフィン、2,6−ジメトキシフェニルジペンチルホスフィン、2,6−ジメトキシフェニルジへキシルホスフィン、2,6−ジメトキシフェニルジヘプチルホスフィン、2,6−ジメトキシフェニルジオクチルホスフィン、2,6−ジメトキシフェニルジシクロへキシルホスフィンが挙げられる。
【0061】
上記アルコキシアリールジアリールホスフィンとしては、o−メトキシフェニルジフェニルホスフィン、o−メトキシフェニルジトリルホスフィン、o−メトキシフェニルジキシリルホスフィン、p−メトキシフェニルジフェニルホスフィン、p−メトキシフェニルジトリルホスフィン、p−メトキシフェニルジキシリルホスフィンが挙げられる。
【0062】
上記(ジアルコキシアリール)ジアリールホスフィンとしては、2,6−ジメトキシフェニルジフェニルホスフィン、2,6−ジメトキシフェニルジトリルホスフィン、2,6−ジメトキシフェニルジキシリルホスフィンが挙げられる。
【0063】
上記アルコキシアリールジアラルキルホスフィンとしては、o−メトキシフェニルジベンジルホスフィン、p−メトキシフェニルジベンジルホスフィンが挙げられる。
上記(ジアルコキシアリール)ジアラルキルホスフィンとしては、2,6−ジメトキシフェニルジベンジルホスフィンが挙げられる。
【0064】
3級ホスフィンの使用量は、工程(a)で使用するシリカゲル1モルに対し、0.001〜0.5モルが好ましく、0.01〜0.1モルがより好ましく、0.02〜0.08モルが更に好ましく、0.025〜0.06モルが特に好ましい。
また、工程(a)で用いるハロアルキル基又はハロアリール基を有するシラン化合物と、上記3級ホスフィンとの使用量のモル比〔シラン化合物/3級ホスフィン〕としては、触媒活性の観点から、0.1〜15が好ましく、0.1〜7.5がより好ましく、0.1〜1.2が更に好ましく、0.2〜1.0が更に好ましく、0.3〜0.9が更に好ましく、0.4〜0.9が更に好ましく、0.4〜0.8が特に好ましい。
【0065】
また、工程(b)は、溶媒存在下で行うのが好ましく、該溶媒としては炭化水素溶媒が好ましい。
上記炭化水素溶媒としては、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、脂環式炭化水素溶媒が挙げられる。なお、脂肪族炭化水素溶媒は、n−ドデカン等のノルマルパラフィン系溶媒、イソドデカン等のイソパラフィン系溶媒のいずれであってもよい。これら溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これら炭化水素溶媒の中でも、環状カーボネート合成における副反応の抑制及び反応速度の観点から、芳香族炭化水素溶媒が好ましい。該芳香族炭化水素溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられ、キシレンがより好ましい。キシレンは、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレンのいずれでもよく、エチルベンゼンを含むものでもよい。
なお、前記工程(a)で用いた溶媒をそのまま工程(b)の溶媒とすることもでき、これによって溶媒の除去や乾燥等の手順が不要となり、より簡便に優れた触媒活性を示す触媒を得ることができる。
上記溶媒の使用量は特に限定されないが、3級ホスフィン100質量部に対し、通常100〜2000質量部であるが、好ましくは100〜1750質量部であり、より好ましくは500〜1500質量部である。
【0066】
また、工程(b)の反応温度は特に限定されないが、熱による触媒劣化の抑制及び反応効率の観点から、好ましくは60〜160℃、より好ましくは100〜150℃、更に好ましくは110〜140℃の範囲である。
【0067】
また、工程(b)の反応時間は特に限定されないが、リン含有量を十分なものとし且つハロゲンの脱離量を抑える観点から、好ましくは10〜100時間、より好ましくは15〜50時間である。
【0068】
なお、上記各工程において、触媒前駆体及び触媒の単離は、必要に応じて、ろ過、洗浄、乾燥等の通常の手段を適宜組み合わせて行えばよい。
【0069】
また、工程(b)で得られる環状カーボネート合成用触媒中のハロゲン含有量とリン含有量とのモル比〔ハロゲン/リン〕としては、触媒活性及び環状カーボネート合成における副生成物抑制の観点から、0.8〜1.6が好ましく、1.0〜1.6がより好ましい。
上記モル比〔ハロゲン/リン〕は、工程(a)でキシレンを使用することにより調整しやすくなる。また、ハロアルキル基又はハロアリール基を有するシラン化合物や3級ホスフィンの使用量やシリカゲルの平均細孔径等により更に制御しやすくなる。
【0070】
また、環状カーボネート合成用触媒におけるハロゲン含有量としては、触媒活性及び環状カーボネート合成における副生成物抑制の観点から、触媒1gあたり0.25〜0.8mmolが好ましく、0.3〜0.8mmolがより好ましい。
上記ハロゲン含有量は、工程(a)でキシレンを使用することにより調整しやすくなる。また、ハロアルキル基又はハロアリール基を有するシラン化合物の使用量やシリカゲルの平均細孔径の調整、或いは上記吸着水分量1質量%以下に調製されたシリカゲルの使用により更に制御しやすくなる。
【0071】
また、環状カーボネート合成用触媒におけるリン含有量としては、触媒活性の観点から、触媒1gあたり0.25〜0.6mmolが好ましく、0.3〜0.6mmolがより好ましい。
上記リン含有量は、工程(a)でキシレンを使用することにより調整しやすくなる。また、3級ホスフィンの使用量の調整やシリカゲルの平均細孔径を3.5〜25nmの範囲とすることにより更に制御しやすくなる。
【0072】
また、環状カーボネート合成用触媒は、不均一系触媒(固体触媒)であり、細孔を有する。その平均細孔径としては、触媒活性の観点から、1nm〜50nmの範囲が好ましく、3〜20nmの範囲がより好ましく、3.5〜15nmの範囲が更に好ましく、5〜15nmの範囲が更に好ましく、6〜15nmの範囲が更に好ましい。
また、環状カーボネート合成用触媒の比表面積としては、80〜2000m2/gの範囲が好ましく、100〜1000m2/gの範囲がより好ましい。
【0073】
上記ハロゲンやリンの含有量、平均細孔径、比表面積は、後記実施例と同様にして測定すればよい。
【0074】
そして、本発明の製造方法によれば、高転化率、高選択率かつ高収率で環状カーボネートを合成でき優れた触媒活性を示す不均一系触媒を、シラン化合物の使用量が少量である場合や反応時間が短い場合であったとしても簡便にかつ低コストで製造できる。また、斯かる製造方法で得られる触媒を用いて環状カーボネートを合成した場合、ブロモプロパノールやブロモエタノールのような副生成物の生成も少ない。
本発明の触媒は、エポキシドと二酸化炭素とを反応させて環状カーボネートを合成するために使用する触媒として有用である。
【0075】
<環状カーボネートの合成方法>
本発明の環状カーボネートの合成方法は、上記製造方法で得られた触媒の存在下で、エポキシドと二酸化炭素とを反応させるものである。該合成方法は、上記触媒を用いる以外は常法に従い行えばよい。
上記触媒の使用量は適宜調整すればよいが、エポキシド100質量部に対し、通常0.01〜106質量部であり、好ましくは0.1〜105質量部、より好ましくは1〜104質量部である。
【0076】
また、上記エポキシドとしては、エポキシ環(炭素原子2つと酸素原子1つからなる3員環)を構造式中に少なくとも1つ含む化合物であれば特に限定されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、ビニルエチレンオキシド、トリフルオロメチルエチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、ブタジエンジオキシド、2−メチル−3−フェニルブテンオキシド、ピネンオキシド、テトラシアノエチレンオキシド等が挙げられる。
斯様なエポキシドの中でも、下記式(3)で表されるものが好ましい。
【0077】
【化3】
【0078】
〔式(3)中、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、又は炭素数2〜6のハロアルケニル基を示す。〕
上記R6及びR7で示されるアルキル基、ハロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。該アルキル基としては例えば、上記R2と同様のものが挙げられる。ハロアルキル基におけるハロゲン原子は上記Xと同様のものが挙げられる。
斯様な式(3)で表されるものの中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。
【0079】
本発明の環状カーボネートの合成方法は、溶媒存在下及び非存在下のいずれでも行うことができる。溶媒を使用する場合、目的化合物である環状カーボネートの他、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル等のエステル類;トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリダジン、N,N’−ジメチルピリダジノン等の第3級アミン類;ジブチルスルフィド等のスルフィド類;トリブチルホスフィン等のホスフィン類等を用いればよく、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
また、本発明の環状カーボネートの合成方法の反応温度は、反応効率の観点から、好ましくは20〜160℃、より好ましくは50〜150℃、更に好ましくは80〜140℃の範囲である。
また、反応圧力は特に限定されないが、好ましくは0.1〜100MPa、より好ましくは0.5〜50MPa、更に好ましくは1.0〜25MPaの範囲である。
また、反応時間は特に限定されないが、通常0.1〜10時間であり、好ましくは0.5〜5時間である。
【0081】
また、本発明の環状カーボネートの合成方法は、反応様式として、撹拌式や固定床式等の一般に用いられる手法を採用することができ、また、バッチ式、セミバッチ式、連続流通式の何れの方法でもよい。
【0082】
バッチ式は、例えば、次のようにして行われる。撹拌装置を具備したオートクレーブに、エポキシドおよび触媒を仕込んだ後、二酸化炭素を充填し密封する。その後、オートクレーブ内を撹拌しながら所定温度まで加熱し、二酸化炭素をさらに充填することにより内圧を所定圧に調製し、所定時間反応させた後、生成する環状カーボネートを所望の手段で分離する。
【0083】
連続流通式は、例えば図1に示すような、高圧流体送液ポンプ(A、B)、流体混合器(C)、反応管(D)、圧力制御装置(E)、温度制御装置(F)等を結合した流通反応装置(図1)を用い、エポキシドと二酸化炭素とを混合した後、触媒を充填した反応管内(D)で加熱し、連続的に反応させればよい。また原料となるエポキシドと二酸化炭素以外の溶媒となる物質を共存させて流通させてもよい。
【0084】
なお、触媒の前処理は特に必要としないが、反応前に20〜140℃、好ましくは50〜120℃で真空排気、もしくはヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素等の不活性ガス気流中で処理することにより、環状カーボネートの収率を向上させることができる。
【0085】
また、本発明の環状カーボネートの合成方法によれば、上記エポキシドのエポキシ環がカーボネート環(O−CO−O結合を有する5員環)に変換された環状カーボネートを合成することができる。このような環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、イソブチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、シクロヘキセンカーボネート、スチレンカーボネート、ブタジエンモノカーボネート、ブタジエンジカーボネート、クロロメチルカーボネート、ピネンカーボネート、テトラシアノエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0086】
そして、これら本発明の環状カーボネートの合成方法によれば、高転化率、高選択率かつ高収率で環状カーボネートを合成できる。また、該合成方法はブロモプロパノールや2−ブロモエタノールのような副生成物の生成も少ない。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、シリカゲルの平均細孔径、比表面積および粒径(又は粒度)はメーカー公称値である。
【0088】
また、各実施例及び比較例において用いた分析方法は以下のとおりである。
(1)触媒の製造において、臭素及びリン修飾量の測定には蛍光X線分析を用いた(装置:製品名「System3270」(理学電機工業社製)、測定条件:Rh管球、管電圧50kV、管電流50mV、真空雰囲気、検出器:SC、F−PC)。
(2)環状カーボネートの合成において、反応液の組成分析にはガスクロマトグラフィーを用いた。分析条件は以下のとおりである。
装置:製品名「GC−2010Plus」(島津製作所社製)
検出器:FID
INJ温度:150℃
DET温度:260℃
サンプル量:0.3μL
スプリット比:5
カラム:DB−624(60m、0.32mmID、1.8μm、Agilent社製)
カラム温度:70℃、3分−5℃/分−120℃−10℃/分−250℃、5分(計31分)
【0089】
製造例1−1:触媒前駆体X−1の製造
ビーズ状シリカゲル(富士シリシア化学製CARiACT Q−10(平均細孔径10nm、粒子径1.2〜2.4mm、比表面積300m2/g))10gとキシレン25mLとをディーンスタークトラップを備えた50mLフラスコに仕込み、140℃還流下、2時間キシレン−水の共沸脱水を行いシリカゲル中の水分を除去した。次いで、50mLフラスコからディーンスタークトラップを取り外し、フラスコ内を窒素で置換した後、3−ブロモプロピルトリメトキシシランを1.1g(4.5mmol、シリカゲル1gに対し0.45mmol)滴下した。これをそのまま、135℃で7時間加熱還流することにより、シラン化反応を行った。
次いで得られた反応物をろ過により分離し、アセトンで十分に洗浄を行った。なお、洗浄後の液体に含まれる3−ブロモプロピルトリメトキシシランが50ppm未満であることをガスクロマトグラフ分析により確認した。得られた反応物を50mLフラスコに入れ、120℃で2時間減圧乾燥を行い、触媒前駆体X−1(ブロモプロピル化シリカゲル)を得た。分析結果を表1に示す。
【0090】
製造例1−2:触媒前駆体X−2の製造
加熱時間を7時間から26時間に変更した以外は製造例1−1と同様の手順で触媒前駆体X−2を製造した。分析結果を表1に示す。
【0091】
製造例1−3:触媒前駆体X−3の製造
加熱温度を135℃から110℃に、加熱時間を7時間から8時間にそれぞれ変更した以外は製造例1−1と同様の手順で触媒前駆体X−3を製造した。分析結果を表1に示す。
【0092】
製造例1−4:触媒前駆体X−4の製造
加熱時間を8時間から26時間に変更した以外は製造例1−3と同様の手順で触媒前駆体X−4を製造した。分析結果を表1に示す。
【0093】
製造例2−1:触媒前駆体T−1の製造
反応溶媒をキシレンからトルエンに、加熱温度を135℃から110℃(還流)に、加熱時間を7時間から8時間に、それぞれ変更した以外は製造例1−1と同様の手順で触媒前駆体T−1を製造した。分析結果を表1に示す。
【0094】
製造例2−2:触媒前駆体T−2の製造
加熱時間を8時間から26時間に変更した以外は製造例2−1と同様の手順で触媒前駆体T−2を製造した。分析結果を表1に示す。
【0095】
製造例2−3:触媒前駆体T−3の製造
加熱時間を8時間から49時間に変更した以外は製造例2−1と同様の手順で触媒前駆体T−3を製造した。分析結果を表1に示す。
【0096】
製造例2−4:触媒前駆体T−4の製造
3−ブロモプロピルトリメトキシシランの滴下量を2.4g(9.9mmol、シリカゲル1gに対し0.99mmol)に変更した以外は製造例2−1と同様の手順で触媒前駆体T−4を製造した。分析結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示すように、シラン化反応の溶媒としてキシレンを用いることにより、ハロアルキル基又はハロアリール基含有シラン化合物の使用量が少量であり且つ反応時間が短時間であっても、充分な量のハロゲンを担持させることができた。シラン化反応の溶媒としてトルエンを用いた場合、少量のシラン化合物で充分な量のハロゲンを担持させるためには、長時間の反応が必要であり(製造例2−3)、また、短時間で充分な量のハロゲンを担持させるためには、実際に担持されるハロゲンの量よりも大過剰のハロアルキル基又はハロアリール基含有シラン化合物を使用する必要がある(製造例2−4)。
【0099】
実施例1:触媒XX−1の製造
製造例1−1で得られた触媒前駆体X−1を9gとキシレン30mLとを50mLフラスコに仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、トリ−n−ブチルホスフィン1.8gを滴下した。これをそのまま135℃で24時間加熱還流することにより、4級ホスホニウム化反応を行った。反応後、ろ過により反応物を分離し、アセトンで十分に洗浄した。なお、洗浄後の液体に含まれるトリ−n−ブチルホスフィンが50ppm未満であることをガスクロマトグラフ分析により確認した。得られた反応物を50mLフラスコに入れ、120℃で2時間減圧乾燥を行い、目的とする触媒XX−1(トリブチルホスホニウムブロミド表面修飾シリカゲル)を得た。分析結果を表2に示す。
【0100】
実施例2:XX−2の製造
触媒前駆体X−1を触媒前駆体X−2に変更した以外は実施例1と同様の手順で触媒XX−2を製造した。分析結果を表2に示す。
【0101】
比較例1及び2:触媒TX−1、TX−3の製造
触媒前駆体X−1を触媒前駆体T−1、T−3にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様の手順で触媒TX−1、TX−3を製造した。分析結果を表2に示す。
【0102】
実施例3:プロピレンカーボネートの合成
以下のバッチ式方法によりプロピレンカーボネートの合成を行い、触媒活性を評価した。
攪拌子を入れた50mLのオートクレーブに、実施例1で調製した触媒XX−1を800mg仕込み、120℃で1時間減圧乾燥を行った。オートクレーブを窒素にて大気圧、室温に戻した後、プロピレンオキシド3.5g(60mmol)を仕込んだ。次いで、二酸化炭素を1.5MPaまで仮充填し、その後、オートクレーブ内を回転子により1000rpmで撹拌しつつ100℃まで加熱し、二酸化炭素をさらに充填することにより、内圧を3MPaに調整し、1時間反応させた。冷却後、残存する二酸化炭素を放出し、オートクレーブ内を脱圧した。得られる反応液をガスクロマトグラフにより分析した。結果を表2に示す。
なお、反応不純物として、プロピレングリコール、2−ブロモプロパノール及び1−ブロモ−2−プロパノールが検出された。表2にはこれらブロモプロパノールの検出量も併せて示した。
【0103】
実施例4:プロピレンカーボネートの合成
触媒XX−1を触媒XX−2に変更した以外は実施例3と同様の手順でバッチ式反応によりプロピレンカーボネートを合成し触媒活性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0104】
比較例3及び4:プロピレンカーボネートの合成
触媒XX−1を触媒TX−1、TX−3に変更した以外は実施例3と同様の手順でバッチ式反応によりプロピレンカーボネートを合成し触媒活性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
実施例5:触媒XX−5の製造
(触媒前駆体の製造)
ビーズ状シリカゲル(富士シリシア化学製CARiACT Q−10(平均細孔径10nm、粒子径1.2〜2.4mm、比表面積300m2/g))2000gとキシレン5000mLとを、ディーンスタークトラップを備えた10L撹拌羽つき三口フラスコに仕込み、140℃還流下、2時間キシレン−水の共沸脱水を行い、シリカゲル中の水分を除去した。なお、このときのキシレン溶媒中の水分量は、14ppmであった。次いで、ディーンスタークトラップを取り外し、フラスコ内を窒素で置換した後、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン219g(0.846mol)を滴下した。これをそのまま、135℃で7時間加熱還流することにより、シラン化反応を行った。
【0107】
次いで得られた反応物をろ過により分離し、キシレンで2回洗浄を行い、キシレンを含む触媒前駆体X−5(ブロモプロピル化シリカゲル)3810gを得た。
なお、2回洗浄後の液体に含まれる3−ブロモプロピルトリメトキシシランが50ppm未満であることをガスクロマトグラフ分析により確認した。得られた触媒前駆体の蛍光X線分析によるBr修飾量測定結果は、0.38mmol/gであった。また、キシレンの含有率は57質量%であり、得られた前駆体はおよそ2170gであることが見積もられた。
【0108】
(触媒の製造)
得られた触媒前駆体X−5とキシレン5000mLとを10L撹拌羽つき三口フラスコに仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、トリ−n−ブチルホスフィン453gを滴下した。これをそのまま120℃で25時間加熱することにより、4級ホスホニウム化反応を行った。反応後、ろ過により反応物を分離し、アセトンで6回洗浄を行った。なお、6回洗浄後の洗体に含まれるトリ−n−ブチルホスフィンが50ppm未満であることをガスクロマトグラフ分析により確認した。得られた反応物を、窒素気流下、120℃で5時間減圧乾燥を行い、目的とする触媒XX−5(トリブチルホスホニウムブロミド表面修飾シリカゲル)2328gを得た。触媒の分析結果を表3に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
実施例6:エチレンカーボネートの合成
以下のバッチ式方法によりエチレンカーボネートの合成を行い、触媒XX−5の触媒活性を評価した。
攪拌子を入れた50mLのオートクレーブに、実施例5で調製した触媒XX−5を800mg仕込み、120℃で1時間減圧乾燥を行った。次いで、オートクレーブを窒素にて大気圧、室温に戻し、エチレンオキシド2.8g(60mmol)を仕込んだ。二酸化炭素を1.5MPaまで仮充填し、その後、オートクレーブ内を回転子により1000rpmで撹拌しつつ100℃まで加熱し、二酸化炭素をさらに充填することにより、内圧を5.0MPaに調整し、1時間反応させた。冷却後、残存する二酸化炭素を放出し、オートクレーブ内を脱圧した。得られたエチレンカーボネートは融点36℃であるため、オートクレーブにアセトニトリル溶媒を4g加え、反応液を溶解させた。得られた反応液をガスクロマトグラフにより分析し、エチレンオキシド転化率、エチレンカーボネート選択率、収率及び見かけの一次反応速度係数kを求めた。結果を表4に示す。
なお、見かけの一次反応速度係数kは下記式により求められる。
k=−ln(1−X/100)/t
式中、Xは転化率(%)、tは反応時間(hr)である。
【0111】
なお、ガスクロマトグラフでは、反応不純物としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、2−ブロモエタノールが検出された。表4には2−ブロモエタノールの検出量も併せて示した。
【0112】
実施例7:エチレンカーボネートの合成
触媒XX−5を乳鉢で粉砕し、得られた粉末をふるいにかけて粒子径が200−400meshのものを回収してから使用した以外は実施例6と同様の手順で、バッチ式反応によりエチレンカーボネートを合成し触媒活性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0113】
【表4】
【0114】
上記実施例に示されるように、本発明の製造方法により得られた触媒を用いれば高い転化率及び収率で環状カーボネートを合成することができ、また、ブロモプロパノールや2−ブロモエタノール等の不純物の生成を抑制することができる。
図1