【実施例】
【0043】
[例1:GeTe膜の堆積]
堆積は、Quros reactor製のALD反応器において実施し、当該ALD反応器は、ロードロックを有するシャワーヘッドタイプのPEALDチャンバーを備え、それは1つの4インチウェハーを扱うことができる。サンプル及び膜の相転移特性は、エネルギー分散X線分析により特徴づけた。
【0044】
次の方法によりGeTe膜を得た。HGeCl
3のキャニスタ温度は約1℃であり、(Me
3Si)
2Teのキャニスタ温度は40℃であった。通常のウェハー温度は70℃であり、通常のArガスの流量は500sccmであり、反応器の圧力は3Torrに制御する。ウェハーを反応器内の加熱したサセプタ上に装填し、数分間Arガスを反応器内に流し込んだ後に、次の方法において膜を堆積させた。
a)Ge前駆体パルス工程;ベーパードロー法を使用して、HGeCl
3蒸気を反応器内に通常は0.1秒間導入する。ここで使用するベーパードロー法は、キャリヤガスのいかなる支援もなしに前駆体の蒸気がキャニスタから入ることを意味し、それゆえ単にキャニスタの出口弁がパルス工程で開くのみである。
b)Ar(Ge)パージ工程;Arガスを数秒間反応器内に流し込んで全ての未反応のGe種及び反応副生成物を除去する。
c)Te前駆体パルス工程;(Me
3Si)
2Te蒸気を、Teキャニスタを通って流れるArキャリヤガス(50sccm)により数秒間反応器内に導入する。
d)Ar(Te)パージ工程;Arガスを数秒間反応器内に流し込んで全ての未反応のTe種及び反応副生成物を除去する。
工程a)〜d)を100回繰り返して所望の膜厚を得た。
【0045】
上記の手順、基材として酸化ケイ素及び窒化チタンの両方、Ge前駆体としてトリクロロゲルマン、並びにTe前駆体としてビス(トリメチルシリル)テルルを使用して、GeTe膜を堆積し、各サイクルにおける次のシーケンス、すなわち、(1)数秒間のGeパルス;(2)30秒間のArパージ;(3)4秒間のTeパルス;及び(4)40秒間のArパージで試験した。XRFは、1:1のGe/Te原子比を示した。
図1は、SiO
2及びTiN基材上に堆積されたGeTe膜についての、Geパルス時間(秒)に対するGeTeのXRFを提供する。Ge前駆体パルス工程の代わりに最初にTe前駆体パルス工程を適用することができる場合、同一の結果を得ることができる。
【0046】
[例2 ALD飽和曲線:GeTe堆積速度に対するTe前駆体パルス時間]
例1に記載した手順と類似の手順、基材として酸化ケイ素及び窒化チタン、Ge前駆体としてトリクロロゲルマン、並びにTe前駆体としてビス(トリメチルシリル)テルルを使用して、ALDによりGeTe膜を堆積させた。各サイクルにおける次のシーケンス、すなわち、(1)0.1秒間のGeパルス;(2)20秒間のArパージ;(3)数秒間のTeパルス;及び(4)20秒間のArパージによる100回のALDサイクルを試験した。XRFは、1:1のGe/Te原子比を示した。
図2は、SiO
2及びTiN基材上に堆積されたGeTe膜についての、Teパルス時間(秒)に対するGeTeのXRFを提供する。
【0047】
[例3 ALD飽和曲線:GeSb堆積速度に対するGe前駆体パルス時間]
例1に記載した手順と類似の手順、基材として酸化ケイ素及び窒化チタン、Ge前駆体としてトリクロロゲルマン、並びにTe前駆体ではなくSb前駆体としてビス(トリメチルシリル)アンチモンを使用して、ALDによりGS膜を堆積させた。各サイクルにおける次のシーケンス、すなわち、(1)数秒間のGe前駆体パルス;(2)30秒間のArパージ;(3)3秒間のSb前駆体パルス;及び(4)30秒間のArパージによる100回のALDサイクルを試験した。XRFは、1:1のGe/Sb原子比を示した。
図3は、SiO
2及びTiN基材上に堆積されたGeSb膜についての、Sb前駆体パルス時間(秒)に対するGeSbのXRFを提供する。
【0048】
[例4 ALD飽和曲線:GeSb堆積速度に対するSb前駆体パルス時間]
例1に記載した手順と類似の手順、基材として酸化ケイ素及び窒化チタンの両方、Ge前駆体としてトリクロロゲルマン、並びにTe前駆体ではなくSb前駆体としてビス(トリメチルシリル)アンチモンを使用して、ALDによりGeSb膜を堆積させた。各サイクルにおける次のシーケンス、すなわち、(1)0.1秒間のGe前駆体パルス;(2)20秒間のArパージ;(3)数秒間のSb前駆体パルス;及び(4)20秒間のArパージによる100回のALDサイクルを試験した。XRFは、1:1のGe/Sb原子比を示した。
図4は、SiO
2及びTiN基材上に堆積されたGeSb膜についての、Sbパルス時間(秒)に対するGeSbのXRFを提供する。
【0049】
[例5 基材温度に対するGeTe堆積速度]
上記の手順、基材として酸化ケイ素及び窒化チタン、Ge前駆体としてトリクロロゲルマン、並びにTe前駆体としてビス(トリメチルシリル)テルルを使用する。各サイクルにおける次の手順、すなわち、(1)0.1秒間のGe前駆体パルス;(2)30秒間のArパージ;(3)4秒間のTe前駆体パルス;及び(4)40秒間のArパージによる100回のALDサイクルを試験した。得られたデータは、50℃〜110℃の温度範囲において温度が増加するにつれてGeTe堆積速度が減少することを示す。
図5は、SiO
2及びTiN基材上に堆積されたGeTe膜についての、基材温度(℃)に対するGeTeのXRFを提供する。
【0050】
上の例は、上記のALD堆積条件の下で、GeTe膜は1:1の組成を表したことを示す。これらの前駆体により飽和状態である場合、70℃におけるGeTe堆積速度は1.16Å/サイクルであった。基材温度が増加するにつれ、堆積速度が徐々に低減した。XPSの結果は、GeTe膜中の非常に低い不純物Cl及びCを示した。
【0051】
[例6 GeSbTe三成分膜の堆積]
Ge−Sb−Te三成分膜を、6インチウェハースケール(CN−1、Atomic−premium)を有するシャワーヘッドタイプのALD反応器中で50℃〜120℃の範囲の温度で、Ge前駆体としてHGeCl
3、Sb前駆体としてSb(OEt)
3、Te前駆体としてTe(SiMe
3)
2を使用して堆積させた。HGeCl
3のキャニスタ温度は約1℃であり、Sb(OEt)
3のキャニスタ温度は40℃であり、Te(SiMe
3)
2のキャニスタ温度は40℃であった。膜の組成はXRFにより測定した。
【0052】
アンチモン前駆体を最初に導入する点を除いて例1に記載した手順と類似の手順、基材として酸化ケイ素及び窒化チタン、Te前駆体としてビス(トリメチルシリル)テルル、並びにGe前駆体ではなくSb前駆体としてアンチモンエトキシドを使用して、ALDによりSbTe膜を堆積させた。SbTe堆積手順及びGeTe堆積手順(例1から)を組み合わせることで、Sb/Te又はGe/Te前駆体を使用した手順(それぞれGeTeシーケンス及びSbTeシーケンスと呼ぶ)においてa)〜d)工程を繰り返すことによりGeSbTe膜を堆積させることができる。
図6a及び6bは、1GeTeシーケンス及び1SbTeシーケンスから成るALDサイクルを50回使用した、それぞれ酸化ケイ素基材上及び窒化チタン基材上のGeSbTeのXRFを提供する。SiO
2基材上の全層密度は4.31μgcm
-2で、TiO基材上では4.84μgcm
-2であった。1つのALDサイクルにおけるそれぞれのシーケンスの回数を修正して膜の組成を変更することができる。
【0053】
[例7 サイクルに対するGeSbTe三成分膜の成長]
例6に記載した手順と類似の手順、基材として酸化ケイ素及び窒化チタン、Ge前駆体としてトリクロロゲルマン、Sb前駆体としてアンチモンエトキシド、並びにTe前駆体としてビス(トリメチルシリル)テルルを使用して、GeSbTe三成分膜を堆積させた。各サイクルにおいて、次のシーケンス、すなわち、(a)3秒間のSb前駆体パルス;(b)15秒間のArパージ;(c)1秒間のTe前駆体パルス;(d)15秒間のArパージ;(e)5秒間のGe前駆体パルス;(f)15秒間のArパージ;(g)1秒間のTe前駆体パルス;及び(h)15秒間のArパージによる数回のALDサイクルを試験した:。
図7a及び7bは、それぞれ酸化ケイ素基材及び窒化チタン基材上に堆積されたGeSbTe膜についてのサイクル数に対するGeSbTeのXRFを提供する。この手順により、15:35:50のGe:Sb:Teの膜が堆積された。
本発明の実施態様の一部を以下の項目〈1〉−〈20〉に記載する。
〈1〉
基材の少なくとも一部に多成分膜を堆積させるための方法であって、以下の工程、すなわち、
a)該基材をHGeCl
3を含むGe前駆体に接触させて該基材と反応させ、Geを含む第1の被覆層を提供する工程、
b)パージガスを導入して全ての未反応の該Ge前駆体を除去する工程、
c)Geを含む該第1の被覆層をTe前駆体を含むTe前駆体に接触させる工程であって、該Te前駆体の少なくとも一部をそれに含まれるGeと反応させてGe及びTeを含む第2の被覆層を提供する工程、
d)パージガスを導入して全ての未反応の該Te前駆体を除去する工程、
e)Ge及びTeを含む該第2の被覆層をSb前駆体に接触させる工程であって、該Sb前駆体の少なくとも一部をそれに含まれるGe及びTeの少なくとも一部と反応させてGe、Te及びSbを含む第3の被覆層を提供する工程、及び
f)パージガスを導入して全ての未反応の該Sb前駆体を除去する工程
を含み、工程(a)〜(f)を繰り返して複数の被覆層を形成し、膜を提供する、方法。
〈2〉
前記Te前駆体が、一般式(R
1R
2R
3Si)
2Teを有するジシリルテルル、一般式(R
1R
2R
3Si)TeR
4を有するアルキルシリルテルル、及びこれらの混合物から成る群より選択されるシリルテルルを含み、式中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して水素、鎖状、分岐又は不飽和のC
1-10アルキル基、C
4-10環式アルキル基、及びC
4-12芳香基から成る群より選択される、項目1に記載の方法。
〈3〉
前記Te前駆体が、次の式、すなわち、(R
3Si)
2Teを有するジシリルテルルを含む、項目2に記載の方法。
〈4〉
前記Te前駆体がビス(トリメチルシリル)テルルを含む、項目3に記載の方法。
〈5〉
前記Sb前駆体が、一般構造(RO)
3Sbを有する化合物、一般構造(R
1R
2R
3Si)
2Sbを有する化合物、及び一般構造(R
1R
2R
3Si)R
4Sbを有する化合物から成る群より選択された化合物を含み、式中、置換基R、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して水素、鎖状、分岐又は不飽和のC
1-10アルキル基、C
4-10環式アルキル基、及びC
4-12芳香基である、項目1に記載の方法。
〈6〉
前記Sb前駆体が次の式、すなわち、MX
nを有する化合物を含み、式中、MはSbであり、XはOR(アルコキシ)、F(フッ素)、Cl(塩素)、Br(臭素)、NR
2(アミノ)、CN(シアノ)、OCN(シアネート)、SCN(チオシアネート)、ジケトネート、カルボキシル基及びこれらの2種以上から成る群より選択される求核基であり、nは金属の酸化状態に等しい、項目1に記載の方法。
〈7〉
前記Sb前駆体がトリス(トリメチルシリル)アンチモンを含む、項目5に記載の方法。
〈8〉
基材の少なくとも一部に多成分膜を堆積させる方法であって、以下の工程、すなわち、
a)HGeCl
3を含むGe前駆体を該基材に接触させて該基材と反応させ、Geを含む第1の被覆層を提供する工程、
b)パージガスを導入して全ての未反応の該Ge前駆体を除去する工程、
c)Geを含む該第1の被覆層をTe前駆体に接触させる工程であって、該Te前駆体の少なくとも一部をそれに含まれるGeと反応させてGe及びTeを含む第2の被覆層を提供する工程、及び
d)パージガスを導入して全ての未反応の該Te前駆体を除去する工程
を含み、工程a)〜d)を繰り返して複数の被覆層を形成し、膜を提供する、方法。
〈9〉
項目8に記載の方法であって、
a)Ge及びTeを含む前記第2の被覆層をSb前駆体に接触させる工程であって、該Sb前駆体の少なくとも一部をそれに含まれる該Ge及びTeの少なくとも一部と反応させてGe、Te及びSbを含む第3の被覆層を提供する、工程、及び
b)パージガスを導入して全ての未反応の該Sb前駆体を除去する工程
をさらに含み、工程a)〜b)を繰り返して複数の被覆層を形成し、膜を提供する、方法。
〈10〉
基材の少なくとも一部にゲルマニウム含有膜を堆積させるための方法であって、以下の工程、すなわち、
該基材を反応器内に提供する工程、
HGeCl
3を含むGe前駆体を、該基材と反応させて該膜を提供するのに十分な堆積条件の下で該反応器内に導入する工程
を含む、方法。
〈11〉
方法が、酸素源を反応器内に導入して前記Ge前駆体と反応させ、ゲルマニウム酸化物膜を提供する工程をさらに含む、項目10に記載の方法。
〈12〉
前記酸素源が、酸素(O
2)、酸素プラズマ、オゾン(O
3)、過酸化水素、空気、亜酸化窒素、水プラズマ、及び水から成る群より選択された少なくとも1種を含む、項目11に記載の方法。
〈13〉
方法が、窒素源を反応器内に導入して前記Ge前駆体と反応させ、ゲルマニウム窒化物膜を提供する工程をさらに含む、項目10に記載の方法。
〈14〉
前記窒素源が、アンモニア、アンモニアプラズマ、窒素/水素プラズマ、及び窒素プラズマから成る群より選択された少なくとも1種を含む、項目11に記載の方法。
〈15〉
方法が、水素プラズマを反応器内に導入して前記Ge前駆体と反応させ、ゲルマニウム膜を提供する工程をさらに含む、項目10に記載の方法。
〈16〉
基材の少なくとも一部に多成分膜を堆積させる方法であって、以下の工程、すなわち、
a)Sb前駆体を導入して、該基材の表面上にアミノアンチモンを含むSb層を形成する工程、
b)不活性ガスでパージして全ての反応副生成物を除去する工程、
c)Te前駆体を導入してアミノアンチモン層と反応させ、シリル基を含むTe層とともにSb−Teを形成する工程、
d)不活性ガスでパージして全ての反応副生成物を除去する工程、
e)HGeCl
3を含むGe前駆体を導入してテルル層の残りのシリル基と反応させ、Ge−Cl基を含むGe層とともにTe−Ge結合を形成する工程、
f)不活性ガスでパージする工程、
g)Te前駆体を導入して該アミノアンチモン層と反応させ、シリル基を含むTe層とともにSb−Teを形成する工程、及び、
h)不活性ガスでパージして全ての反応副生成物を除去する工程
を含み、工程a)〜h)を繰り返して複数の被覆層を形成し、GST膜を提供する、方法。
〈17〉
前記Te前駆体が、一般式(R
1R
2R
3Si)
2Teを有するジシリルテルル、一般式(R
1R
2R
3Si)TeR
4を有するアルキルシリルテルル、及びこれらの混合物から成る群より選択されるシリルテルルを含み、式中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して水素、鎖状、分岐又は不飽和のC
1-10アルキル基、C
4-10環式アルキル基、及びC
4-12芳香基から成る群より選択される、項目16に記載の方法。
〈18〉
前記Te前駆体が、次の式、すなわち、(R
3Si)
2Teを有するジシリルテルルを含む、項目17に記載の方法。
〈19〉
前記Te前駆体がビス(トリメチルシリル)テルルを含む、項目18に記載の方法。
〈20〉
前記Sb前駆体が、一般構造(RO)
3Sbを有する化合物、一般構造(R
1R
2R
3Si
)3Sbを有する化合物、及び一般構造(R
1R
2R
3Si)
2R
4Sbを有する化合物から成る群より選択された化合物を含み、式中、置換基R、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して水素、鎖状、分岐又は不飽和のC
1-10アルキル基、C
4-10環式アルキル基、及びC
4-12芳香基である、項目16に記載の方法。