【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。しかし、本発明の実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
実施例および比較例において、各成分の定量分析は、以下のようにして実施した。
(エラグ酸、プニカラジン)
エラグ酸およびプニカラジンの定量分析は、非特許文献1(J.Agric.Food Chem.,Vol.55 No.23,9559-9570,2007)に記載された方法を参照して実施した。
【0055】
(エピ体カテキン類、非エピ体カテキン類)
エピ体カテキン類(エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート)、および非エピ体カテキン類(カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート)の定量分析は、非特許文献2(Biosci.Biotechnol.Biochem.,Vol.64 No.12,2581-2587, 2000)に記載された方法を参照して実施した。
【0056】
(プロシアニジン類)
プロシアニジン類(カテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1、シンナムタンニンA2)の定量分析は、非特許文献3(J.Agric.Food Chem.,Vol.45 No.12,4624-4628,1997)を参照して実施した。
【0057】
実施例および比較例で使用したカカオポリフェノールは、以下のようにして調製した
(カカオポリフェノールの調製方法)
産地で乾燥を終えたカカオ豆を磨砕し、さらに圧搾によって脱脂した後、20倍量の50%エタノール水溶液を加えて、50℃で30分間攪拌した。次いで、不要成分を遠心分離で除去することにより、カカオ粗抽出液を得た。
次に、予め水素イオン置換処理を施した陽イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR−120B)を充填したカラムに、上記カカオ粗抽出液をSV=5の流速で通液した。続いて、カラムに25℃の脱イオン水を通液して、溶出液を分取した。上記溶出液を凍結乾燥することによってカカオポリフェノール(プロシアニジン類含量約16重量%)を得た。
【0058】
(実施例1)
各種植物抽出物によるポリフェノール安定化効果(殺菌前後)
【0059】
(i)飲料の調製
上記方法に従って得られたカカオポリフェノール625mg(プロシアニジン類含量100mg)と、表1に示した植物抽出物(または試薬)350mgに、水を加えて350mlの溶液を調製した。上記溶液を、0.1M塩酸または0.1M水酸化ナトリウムを用いてpH5.5に調整して飲料とした。
【0060】
【表1】
【0061】
(ii)殺菌
上記飲料を密閉容器に封入した後、オートクレーブで121℃、10分間加熱殺菌した。
【0062】
(iii)ポリフェノール分析
上記(i)で得た加熱殺菌前の飲料、および上記(ii)で得た加熱殺菌後の各飲料について、上記定量方法に従ってプロシアニジン類をそれぞれ定量した。
【0063】
(iv)プロシアニジン類低減抑制効果の評価
プロシアニジン類残存率を、上記(iii)で得たプロシアニジン類の各成分量を用いて、以下のように算出した。
【0064】
プロシアニジン類残存率(%)=(加熱殺菌後の飲料中のプロシアニジン類成分量の総和/加熱殺菌前の飲料中のプロシアニジン類成分量の総和)*100
【0065】
上記残存率の数値が高いほど、加熱殺菌後の飲料中のプロシアニジン類が安定に保存されていることを示す。すなわち、プロシアニジン類低減抑制効果が高いことを示す。結果を
図1に示す。
【0066】
図1に見られるように、ザクロ抽出物(1)、ザクロ抽出物(2)、アムラ抽出物、およびマンゴスチン抽出物は、加熱殺菌後において80%以上という高いプロシアニジン類残存率を示すことが分かる。特に、2種類のザクロ抽出物(エラグ酸40%〜90%含有)は、著しく高いプロシアニジン類低減抑制効果を有するポリフェノール安定化剤であることが示された。
【0067】
(v)エピマー化抑制効果の評価
エピマー比率を、上記(iii)で定量したプロシアニジン類のうち、エピカテキン、カテキンの数値を用いて、以下のように算出した。
【0068】
エピマー比率(%)=(各飲料中のエピカテキン量/各飲料中のエピカテキン量+カテキン量)*100
【0069】
加熱殺菌後の各飲料のエピマー比率の数値が、加熱殺菌前の飲料のエピマー比率に近い数値、すなわち、高い数値であるほど、加熱殺菌後の飲料中のエピカテキンがエピマー化してカテキンとなることなく、エピカテキンとして安定に保存されていることを示す。結果を
図2に示す。
【0070】
図2に見られるように、ザクロ抽出物(1)、ザクロ抽出物(2)は、加熱殺菌後において70%以上の高いエピマー比率を示すことが分かる。すなわち、2種類のザクロ抽出物(エラグ酸40%〜90%含有)は、エピマー化抑制効果が著しく高いポリフェノール安定化剤であることが示された。
【0071】
(実施例2)
各種植物抽出物によるポリフェノール安定化効果(加温保存)
【0072】
実施例1で調製した殺菌後の飲料を37℃で2週間保存した。保存後の各飲料について、実施例1(iii)〜(v)と同様の方法に従ってプロシアニジン類残存率とエピマー比率を算出した。添加なし、ザクロ抽出物(1)、ザクロ抽出物(2)、アムラ抽出物の結果を、
図3および
図4に示す。
【0073】
図3および
図4に見られるように、アムラ抽出物およびザクロ抽出物を添加した飲料は、加熱殺菌を経て37℃で2週間保存した後において、植物抽出物無添加の飲料よりも高いプロシアニジン類残存率およびエピマー比率を有することが分かる。特に、2種類のザクロ抽出物(エラグ酸40%〜90%含有)は、加温保存条件下においてもプロシアニジン類低減抑制効果およびエピマー化抑制効果が高いポリフェノール安定化剤であることが示された。
【0074】
(実施例3)
ザクロ抽出物(エラグ酸含量90%)によるポリフェノール安定化効果
【0075】
(i)飲料の調製
実施例1のザクロ抽出物(1)(バイオアクティブズジャパン製、エラグ酸含量90%)を用いて、実施例1(i)〜(ii)と同様の方法に従って飲料を調製した。ただし、上記抽出物の配合量については、飲料350ml中にそれぞれ、0mg、1.75mg(5ppm)、3.5mg(10ppm)、8.75mg(25ppm)、17.5mg(50ppm)、35mg(100ppm)、87.5mg(250ppm)、175mg(500ppm)、350mg(1000ppm)とした。
【0076】
上記(i)で調製された飲料は、実施例1(ii)と同様にして加熱殺菌した。加熱殺菌前後の飲料について、実施例1(iii)〜(v)と同様の方法に従ってポリフェノールを分析し、プロシアニジン類残存率およびエピマー比率を算出した。結果を
図5および
図6に示す。
【0077】
図5および
図6に見られるように、上記ザクロ抽出物を飲料中に5〜1000ppm添加することにより、濃度依存的にプロシアニジン類残存率およびエピマー比率が増加することが分かる。
【0078】
すなわち、プロシアニジン類100mgを含有する飲料中に、エラグ酸90%含有ザクロ抽出物を5ppm以上(エラグ酸として1.575mg以上)配合することにより、プロシアニジン類の低減抑制、および、エピ体カテキン類のエピマー化抑制が可能であることが示された。
【0079】
さらに、本実施例で調製した殺菌後の飲料を、37℃で2週間保存した。保存後の飲料について、実施例1(iii)〜(v)と同様の方法で各飲料のポリフェノールを分析して、プロシアニジン類残存率およびエピマー比率を算出した。結果を
図7および
図8に示す。
【0080】
図7および
図8に見られるように、エラグ酸を90%含有するザクロ抽出物を添加した飲料は、加熱殺菌を経て37℃で2週間保存した後において、安定化剤無添加の飲料よりも高いプロシアニジン類残存率およびエピマー比率を有することが分かる。
【0081】
(実施例4)
各種ザクロ抽出物(エラグ酸含量15〜40%、プニカラジン含量30%)によるポリフェノール安定化効果
【0082】
(i)飲料の調製
実施例1のザクロ抽出物(2)(ナチュレックス製、エラグ酸含量40%)、ザクロ抽出物(3)(アルジュナ製、加水分解後のエラグ酸として15%含有)、ザクロ抽出物(4)(オムニカ製、プニカラジン含量30%)を用いて、実施例1(i)〜(ii)に記載の方法に従って飲料を調製した。ただし、上記抽出物の配合量については、ザクロ抽出物(2)は飲料中に250〜1000ppm、ザクロ抽出物(3)およびザクロ抽出物(4)は50〜500ppmとした。
【0083】
上記(i)で調製された飲料は、実施例1(ii)と同様にして加熱殺菌した。加熱殺菌前後の飲料について、実施例1(iii)〜(v)と同様の方法に従ってポリフェノールを分析し、プロシアニジン類残存率およびエピマー比率を算出した。結果を
図9および
図10に示す。
【0084】
さらに、本実施例で調製した殺菌後の飲料を、37℃で2週間保存した。ザクロ抽出物(3)およびザクロ抽出物(4)については、37℃で2ヶ月間保存した。保存後の飲料について、実施例1(iii)〜(v)と同様の方法で各飲料のポリフェノールを分析して、プロシアニジン類残存率およびエピマー比率を算出した。ザクロ抽出物(2)の結果を
図11および
図12に示す。また、ザクロ抽出物(3)の結果を
図13および
図14に示す。ザクロ抽出物(4)の結果を
図15および
図16に示す。
【0085】
図9および
図10に見られるように、上記ザクロ抽出物(2)〜(4)を飲料中に50〜1000ppm添加することによって、濃度依存的にプロシアニジン類残存率およびエピマー比率が増加することが分かる。また、
図11〜
図16に見られるように、エラグ酸を15〜40%またはプニカラジンを30%含有するザクロ抽出物を添加した飲料は、加熱殺菌を経て37℃で保存した後において、安定化剤無添加の飲料よりも高いプロシアニジン類残存率およびエピマー比率を有することが分かる。
【0086】
すなわち、プロシアニジン類100mgを含有する飲料中に、プニカラジン30%含有ザクロ抽出物を50ppm以上(プニカラジンとして5.25mg以上)配合することにより、プロシアニジン類の低減抑制、および、エピ体カテキン類のエピマー化抑制が可能であることが示された。
【0087】
(実施例5)
エラグ酸精製品、プニカラジン精製品によるポリフェノール安定化効果
【0088】
(i)飲料の調製
エラグ酸(和光純薬工業製、エラグ酸二水和物99.0%以上)およびプニカラジン(シグマ社製)を用いて、実施例1(i)〜(ii)と同様の方法に従って飲料を調製した。ただし、上記抽出物の配合量については、エラグ酸は飲料350ml中に0mg〜350mg(1000ppm)、プニカラジンは35mg(100ppm)とした。
【0089】
上記(i)で調製された飲料は、実施例1(ii)と同様にして加熱殺菌した。加熱殺菌前後の飲料について、実施例1(iii)〜(v)と同様の方法に従ってポリフェノールを分析し、プロシアニジン類残存率およびエピマー比率を算出した。結果を
図17および
図18に示す。
【0090】
図17および
図18に見られるように、エラグ酸を飲料中に5〜1000ppm添加することによって、濃度依存的にプロシアニジン類残存率およびエピマー比率が増加することが分かる。すなわち、プロシアニジン類を100mg含有する飲料中にエラグ酸を5ppm(1.75mg)以上またはプニカラジンを100ppm(35mg)配合することにより、飲料中のプロシアニジン類の低減抑制、および、飲料中のエピ体カテキン類のエピマー化抑制が可能であることが示された。
【0091】
さらに、本実施例で調製した殺菌後の飲料を、37℃で2ヶ月間保存した。保存後の飲料について、実施例1(iii)〜(v)と同様の方法に従って各飲料のポリフェノールを分析して、プロシアニジン類残存率およびエピマー比率を算出した。エラグ酸配合飲料の結果を
図19および
図20に示す。
【0092】
図19および
図20に見られるように、エラグ酸を5〜1000ppm添加した飲料は、加熱殺菌を経て37℃で2ヶ月保存した後において、安定化剤無添加の飲料よりも高いプロシアニジン類残存率およびエピマー比率を有することが分かる。
【0093】
さらに、上記試験飲料を37℃で3ヶ月保存した後、試験飲料(エラグ酸100ppm配合)中のエラグ酸含有量を測定したところ、配合量の理論値に対して、101%の残存率であった。
【0094】
(実施例6)
エラグ酸精製品によるポリフェノール(カテキン類)安定化効果
【0095】
(i)飲料の調製
茶ポリフェノール(和光純薬工業製、製品名:カテキン混合物、緑茶由来)625mgと、エラグ酸(和光純薬工業製、エラグ酸二水和物99.0%以上)を0mg、35mg(100ppm)に対して、水を加えて350mlの溶液を調製した。上記溶液を、0.1M塩酸または0.1M水酸化ナトリウムを用いてpH6.5に調整して飲料とした。
【0096】
(ii)殺菌
上記飲料を密閉容器に封入した後、オートクレーブで121℃、10分間加熱殺菌した。
【0097】
(iii)ポリフェノール分析
上記(i)で得られた加熱殺菌前の飲料、および上記(ii)で得られた加熱殺菌後の各飲料について、上記定量方法に従ってエピ体カテキン類および非エピ体カテキン類計8成分をそれぞれ定量した。なお、8成分の略表記は以下のとおりとする。
エピカテキン:EC
カテキン:C
エピガロカテキン:EGC
ガロカテキン:GC
エピカテキンガレート:ECG
カテキンガレート:CG
エピガロカテキンガレート:EGCG
ガロカテキンガレート:GCG
【0098】
(iv)エピマー化抑制効果の評価
エピマー比率は、上記(iii)で定量した8成分の数値を用いて、以下のように算出した。
【0099】
(a)エピマー比率(%)=(各飲料中のEC含量/各飲料中のEC含量+C含量)*100
【0100】
(b)エピマー比率(%)=(各飲料中のEGC含量/各飲料中のEGC含量+GC含量)*100
【0101】
(c)エピマー比率(%)=(各飲料中のECG含量/各飲料中のECG含量+CG含量)*100
【0102】
(d)エピマー比率(%)=(各飲料中のEGCG含量/各飲料中のEGCG含量+GCG含量)*100
【0103】
(e)エピマー比率(%)=(各飲料中のエピ体カテキン類含量の総和/各飲料中のエピ体カテキン類と非エピ体カテキン類の総和)*100
【0104】
加熱殺菌後の各飲料のエピマー比率の数値が、加熱殺菌前の飲料のエピマー比率に近い数値、すなわち、高い数値であるほど、加熱殺菌後の飲料中のエピ体カテキン類がエピマー化して非エピ体カテキン類となることなく、エピ体カテキン類として安定に保存されていることを示す。結果を
図21に示す。
【0105】
図21に見られるように、安定化剤無添加の飲料においては、加熱殺菌によって、茶カテキン類のエピ体カテキン類が非エピ体カテキン類にエピマー化するため、いずれの成分のエピマー比率についても殺菌後に低下した。一方、エラグ酸を飲料中に100ppm添加することにより、殺菌後の茶ポリフェノールのエピマー比率は無添加の飲料よりも高い値を示した。すなわち、エラグ酸は、茶飲料中のエピ体カテキン類のエピマー化を抑制するポリフェノール安定化剤として有用であることが分かる。
【0106】
(実施例7)
各種濃度のエラグ酸によるポリフェノール(カテキン類)安定化効果
【0107】
(i)飲料の調製
エラグ酸(和光純薬工業製、エラグ酸二水和物99.0%以上)を0mg、3.5mg(10ppm)、8.75mg(25ppm)、17.5mg(50ppm)、35mg(100ppm)に対して、それぞれに茶ポリフェノール(和光純薬工業製、製品名:カテキン混合物、緑茶由来)625mgと、水を加えて350mlの溶液を調製した。上記溶液を、0.1M塩酸または0.1M水酸化ナトリウムを用いてpH6.5に調整して飲料とした。
【0108】
(ii)殺菌
上記飲料を密閉容器に封入した後、オートクレーブで121℃、10分間加熱殺菌した。
【0109】
実施例6と同様にして、各試験区のエピ体カテキン類および非エピ体カテキン類を定量して、エピマー比率を算出した。(e)エピマー比率(全エピ体カテキン類)の結果を
図22に示す。
【0110】
図22に見られるように、飲料中にエラグ酸を10〜100ppm添加することによって、殺菌後の茶ポリフェノールのエピマー比率は濃度依存的に高い値を示すことが分かる。
図22には示していないが、各エピ体カテキン類成分のエピマー比率(a)〜(d)についても、同様にエラグ酸濃度依存的に高い値を示した。
【0111】
さらに、本実施例で調製した殺菌後の飲料を、37℃で2ヶ月間保存した。保存後の飲料について、実施例6(iii)〜(iv)と同様の方法に従って各飲料のポリフェノールを分析して、各試験区のエピ体カテキン類および非エピ体カテキン類を定量して、エピマー比率を算出した。(e)エピマー比率(全エピ体カテキン類)の結果を
図23に示す。
【0112】
図23に見られるように、エラグ酸を10〜100ppm添加した飲料は、加熱殺菌を経て37℃で2ヶ月保存した後において、安定化剤無添加の飲料よりも高いエピマー比率を有することが分かる。
図23には示していないが、各エピ体カテキン類成分のエピマー比率(a)〜(d)についても、同様にエラグ酸濃度依存的に高い値を示した。
【0113】
(実施例8)
カカオポリフェノール含有飲料(pH6.5)におけるポリフェノール安定化効果
【0114】
(i)飲料の調製
上記方法に従って得られたカカオポリフェノール625mg(プロシアニジン類含量100mg)と、エラグ酸(試薬)またはザクロ抽出物(4)(プニカラジン30%含有)35mg(100ppm)に、水を加えて350mlの溶液を調製した。上記溶液を、0.1M塩酸または0.1M水酸化ナトリウムを用いてpH6.5に調整して飲料とした。
【0115】
上記(i)で調製された飲料は、実施例1(ii)と同様にして加熱殺菌した。加熱殺菌前後、および37℃2週間保存した飲料について、実施例1(iii)〜(v)と同様の方法に従ってポリフェノールを分析し、プロシアニジン類残存率およびエピマー比率を算出した。結果を
図24および
図25に示す。
【0116】
図24および
図25に見られるように、pH6.5のカカオポリフェノール含有飲料に対しても、エラグ酸またはプニカラジンを含有する安定化剤を飲料中に100ppm添加することによって、プロシアニジン類残存率およびエピマー比率が増加することが分かる。
【0117】
(比較例1)
没食子酸のポリフェノール安定化への影響
【0118】
(i)飲料の調製
上記方法に従って得られたカカオポリフェノール625mg(プロシアニジン類含量100mg)と、エラグ酸(試薬)または没食子酸(試薬)それぞれ35mg(100ppmm)に、水を加えて350mlの溶液を調製した。上記溶液を、0.1M塩酸または0.1M水酸化ナトリウムを用いてpH5.5に調整して飲料とした。
【0119】
上記(i)で調製された飲料は、実施例1(ii)と同様にして加熱殺菌した。加熱殺菌前後のそれぞれの飲料について、実施例1(iii)〜(v)と同様の方法に従ってポリフェノールを分析し、プロシアニジン類残存率およびエピマー比率を算出した。結果を
図26および
図27に示す。
【0120】
図26および
図27から分かるように、没食子酸についてはポリフェノール安定化効果が確認できなかった。
【0121】
(参考例1)
各種植物抽出物の抗酸化活性と総ポリフェノール量
【0122】
実施例1で使用した植物抽出物(ショウガ抽出物、アスコルビン酸、ザクロ抽出物(2)を除く)について、抗酸化活性(DPPHラジカル消去能)および総ポリフェノール量を測定した。
【0123】
(DPPHラジカル消去能)
DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル;1,1-Dyphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカル消去能は、非特許文献4に記載された方法に従って測定した。測定方法の概略は以下のとおりである。
【0124】
各植物抽出物を80重量%メタノール水溶液で溶解して、濃度1000ppmより段階的に希釈した溶液を調製した。上記溶液100μlに対して0.1mM DPPH溶液2mlを加えて、30分間室温で静置した後、520nmの吸光度を測定した。DPPH溶液をブランクとして、その吸光度の値を阻害率100%として、各試料溶液の阻害率を算出した。上記阻害率が50%になる試料濃度(IC50)を内挿法により求めた。IC50の値が低いほど、DPPHラジカル消去能(抗酸化活性)が高いことを示す。得られた抗酸化活性の結果と、実施例1により得られたプロシアニジン類残存率の相関を
図28に示す。
【0125】
図28から分かるように、実施例1で用いた各植物抽出物の抗酸化活性とプロシアニジン類残存率との間には有意な相関がみられなかった。
【0126】
(総ポリフェノール量)
総ポリフェノール量は、非特許文献5に記載された方法を参照し、市販の没食子酸を標準品として、各試料の定量分析を行うことによって得た値である。測定方法の概略は以下のとおりである。
【0127】
各植物抽出物を80重量%メタノール水溶液を用いて抽出し、試験溶液とした。次いで、蒸留水50mlに各試験溶液100μlを添加し、攪拌しながら0.1M硫酸鉄(III)アンモニウム−0.1M塩酸溶液3mlを加え、その20分後に8mM ヘキサシアノ鉄(III)カリウム水溶液3mlを加え、さらに20分後に720nmの吸光度を測定した。さらに、蒸留水50mlに各サンプル液の溶媒(80重量%メタノール)100μlを加えたもの、および没食子酸(シグマ社製)80重量%メタノール溶液を用い、同様の処理を行って検量線を作成し、各試験溶液中の総ポリフェノール量を算出した。得られた総ポリフェノール量の結果と、実施例1により得られたプロシアニジン類残存率の相関を
図29に示す。
【0128】
図29から分かるように、実施例1で用いた各植物抽出物の総ポリフェノール量とプロシアニジン類残存率との間には有意な相関がみられなかった。
【0129】
本発明により見出されたエラグ酸およびプニカラジンによるポリフェノール安定化効果は、抗酸化活性および総ポリフェノール量によるものではないと推測された。