【実施例】
【0020】
以下、本発明の一実施例に係るウェハ研磨装置1について説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0021】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0022】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0023】
なお、本実施例において、「上」、「下」の語は、垂直方向における上方、下方に対応するものとする。
【0024】
図1は、ウェハ研磨装置1を示す斜視図である。ウェハ研磨装置1は、CMP研磨装置であり、ウェハWを平坦に研磨する。ウェハ研磨装置1は、プラテン2と研磨ヘッド10とを備えている。
【0025】
プラテン2は、円盤状に形成されており、プラテン2の下方に配置された回転軸3に連結されている。回転軸3がモータ4の駆動によって回転することにより、プラテン2は
図1中の矢印Aの方向に回転する。プラテン2の上面には、研磨パッド5が貼付されており、研磨パッド5上に図示しないノズルから研磨剤と化学薬品との混合物であるCMPスラリーが供給される。
【0026】
研磨ヘッド10は、プラテン2よりも小径の円盤状に形成されており、研磨ヘッド10の上方に配置された回転軸10aに連結されている。回転軸10aが図示しないモータの駆動によって回転することにより、研磨ヘッド10は、
図1中の矢印Bの方向に回転する。研磨ヘッド10は、図示しない昇降装置によって垂直方向Vに昇降自在である。研磨ヘッド10は、ウェハWを後述するテンプレートに嵌合させる際に上昇され、ウェハWを研磨する際に下降して研磨パッド5に押圧される。
【0027】
ウェハ研磨装置1の動作は、図示しない制御手段によって制御される。制御手段は、ウェハ研磨装置を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御手段は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御手段の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0028】
図2は、
図1に示す研磨ヘッド10の要部断面拡大図である。
図3は、研磨ヘッド10の下端部の拡大断面図である。研磨ヘッド10は、キャリア20と、ホルダ30と、テンプレート40と、弾性基材50と、弾性体としての弾性接着剤60と、を備えている。
【0029】
キャリア20の下端周縁には、エアシール部21が凸設されている。キャリア20の下面20aと弾性基材50の上面50aとエアシール部21とで囲まれた空間にエア室Aが形成されている。エア室Aには、エアフロートライン22が連通されている。エアフロートライン22は、図示しないエア供給源に接続されている。また、エア室Aには、図示しない真空源に接続されたバキュームラインが連通されている。エアフロートライン22を介した圧縮空気の供給とバキュームラインを介した真空引きとは、任意に切換可能である。キャリア20は、ステンレス製である。
【0030】
ホルダ30は、円筒状に形成されており、キャリア20に外嵌されている。ホルダ30の内周下端部には、ザグリ31が形成されている。ザグリ31の深さは、テンプレート40、弾性基材50及び弾性接着剤60の厚みの総和よりも浅く設定されている。ホルダ30は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)製である。
【0031】
テンプレート40は、ザグリ31に嵌合されている。テンプレート40は、円板状に形成されている。テンプレート40の中央には、ウェハWの外径と略同径に形成された凹部41が設けられている。凹部41の深さは、凹部41にウェハWを収容した状態で、ウェハWの被研磨面とテンプレート40の下面とが略面一になるように設定される。テンプレート40は、ガラスエポキシ製、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂(PEEK)製又はPPS製の薄板である。PEEKは、耐摩耗性に優れており、不純物を含有しない。また、PPSは、PEEKに比べて安価であり、入手し易く、耐摩耗性に優れており、不純物を含有しない。
【0032】
弾性基材50は、テンプレート40の上面を被覆している。弾性基材50は、両面テープ等でテンプレート40に貼着されている。弾性基材50とウェハWとの間には、発泡ウレタン製のバッキングフィルム70が介在している。弾性基材50とバッキングフィルム70には、図示しない吸着孔が開穿されており、エア室Aと凹部41とが吸着孔を介して連通している。ウェハWを真空吸着する際には、吸着孔を介して真空引きする。弾性基材50は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製、フッ素樹脂(PFA)製又はPPS製のフィルムである。特に、PFAは、吸水率が低く、適度に柔軟性があって伸びや変形に強い。PPSは、吸水率が低く、伸びや変形に強い上、PFAに比べて安価である。
【0033】
弾性接着剤60は、ホルダ30とテンプレート40との間に介装されており、具体的には、ザグリ31の底面31aと弾性基材50の上面50aとに接触して、これらを接着している。
【0034】
位置決めピン80は、ホルダ30に形成された第1の位置決め縦孔32、テンプレート40に形成された第2の位置決め縦孔42、及び弾性基材50に形成された第3の位置決め縦孔51に挿通されている。具体的には、位置決めピン80の大径部81は、第1の位置決め32に螺着されており、位置決めピン80の小径部82は、第2の位置決め縦孔42及び第3の位置決め縦孔51に挿通されている。第1の位置決め32、第2の位置決め42、及び第3の位置決め51は、同軸上に形成されている。位置決めピン80は、位置決め精度を向上させるために、複数本設けられるのが好ましい。
【0035】
ホルダ30、テンプレート40及び弾性基材50は、同一材質から成るのが好ましい。これにより、ホルダ30、テンプレート40及び弾性基材50の材質特性が統一され、研磨中の外力に起因する変形、摩擦熱に起因する熱変形、水分に起因する膨潤等がホルダ30、テンプレート40及び弾性基材50に同様に生じるため、研磨精度を向上させることができる。
【0036】
また、ホルダ30、テンプレート40及び弾性基材50は、PPS製であるのが更に好ましい。これにより、弾性基材50の吸水率を下げて弾性基材50の膨潤を抑制すると共に弾性基材50の耐変形性を向上させ、また、テンプレート40の摩耗性を向上させると共にテンプレート40を単一材料で形成可能なため、研磨精度を更に向上させることができる。
【0037】
次に、ウェハ研磨装置1を用いてウェハWを平坦化する研磨加工について図面に基づいて説明する。
図4は、ウェハ研磨装置1に圧縮空気を供給した状態を示す模式図である。
図5(a)は、ウェハWが凹部41内でスライドすることなく研磨されている様子を示す模式である。
図5(b)は、ウェハWが水平方向Hにスライドした状態を示す模式図である。
図5(c)は、スライドしたウェハWがテンプレート40を変形させている状態を示す模式図である。
【0038】
まず、ウェハ研磨装置1は、ウェハW全面を研磨パッド5に均一に押圧する。具体的には、
図4に示すように、圧縮空気が、エア供給源からエアフロート吐出口23を介してエア室Aに供給される。エアシール部21が、圧縮空気の外部漏出を抑制するため、圧縮空気はキャリア20と弾性基材50との間のエア室Aに滞留し、弾性基材50の全面に亘って圧力エア層が形成される。この圧力エア層が、ウェハWの全面を均一に押圧する。
【0039】
次に、プラテン2と研磨ヘッド10とを回転させることにより、ウェハWを平坦に研磨する。通常の研磨は、
図5(a)に示すように、ウェハWは凹部41内でスライドすることなく研磨される。しかしながら、ウェハWの被研磨面Waに作用する摩擦力は、研磨パッド5の材質、CMPスラリーの質又は研磨ヘッド10の押圧力等の条件によって増減する。ウェハWに作用する摩擦力が過度に達する高負荷研磨時には、
図5(b)に示すように、ウェハWが凹部41内を水平方向Hに移動することがある。このような場合、ウェハWがテンプレート40を押圧力F1で押圧するが、テンプレート40はザグリ31に水平方向Hへの移動を規制されるため、テンプレート40が水平方向Hに位置ズレすることが抑制される。また、位置決めピン80がホルダ30とテンプレート40とを一体に連結しているため、テンプレート40が水平方向Hに位置ズレすることが更に抑制される。なお、位置決めピン80を複数設けると共に複数の位置決めピン80を等間隔で配置することにより、テンプレート40の移動をバランス良く規制することができる。
【0040】
また、
図5(c)に示すように、高負荷研磨時にウェハWがテンプレート40を水平方向Hに押圧してテンプレート40を座屈変形させる場合であっても、テンプレート40の上方に配置された弾性接着剤60がテンプレート40の座屈変形に応じて変形し、その弾性力F2でテンプレート40を平坦な形状に速やかに復帰させる。
【0041】
このようにして、上述したウェハ研磨装置1は、高負荷研磨時のウェハWのスライドに起因したテンプレート40の位置ズレや座屈変形を抑制することにより、研磨パッド2と研磨ヘッド10との摩擦状態が安定するため、安定して研磨を行うことができる。また、弾性接着剤60がテンプレート40の移動に追従して弾性変形するため、テンプレート40がホルダ30から脱落することを抑制できる。
【0042】
また、ホルダ30、テンプレート40及び弾性基材50がPPS製であることにより、各部材の材質特性が統一されることにより、ホルダ30、テンプレート40及び弾性基材50が同様に熱変形等するため、研磨精度を向上させることができる。
【0043】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。