特許第6372007号(P6372007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6372007-マスクブランク用ガラス基板 図000002
  • 特許6372007-マスクブランク用ガラス基板 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372007
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】マスクブランク用ガラス基板
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/60 20120101AFI20180806BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20180806BHJP
   C03C 17/40 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   G03F1/60
   C03C19/00 Z
   C03C17/40
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-19255(P2015-19255)
(22)【出願日】2015年2月3日
(65)【公開番号】特開2016-143791(P2016-143791A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100121393
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中西 博志
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/050831(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/022428(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/129378(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/104276(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/146990(WO,A1)
【文献】 特開2009−012164(JP,A)
【文献】 特開2014−033221(JP,A)
【文献】 特開2014−186333(JP,A)
【文献】 特開2014−150124(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0209924(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
C03C 17/40
C03C 19/00
G03F 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の主表面における二乗平方根表面粗さ(RMS)が0.15nm以下であり、かつ、該主表面の表面形状を、原子間力顕微鏡を用いて、100nm×100nmの測定範囲について、0.2nm以下の測定間隔で測定することにより求まる表面性状のアスペクト比Str(s=0.2)(ISO 25178−2)が0.30以上であることを特徴とするマスクブランク用ガラス基板。
【請求項2】
請求項1に記載のマスクブランク用ガラス基板の前記RMSが0.15nm以下、かつ、Strが0.30以上となる主表面上に、反射層として、低屈折率層と高屈折率層とを交互に複数回積層させてなる多層反射膜を形成してなるEUVリソグラフィ(EUVL)用反射層付基板。
【請求項3】
ガラス基板上に、反射層として、低屈折率層と高屈折率層とを交互に複数回積層させてなる多層反射膜が形成されたEUVリソグラフィ(EUVL)用反射層付基板であって、前記多層反射膜表面における二乗平方根表面粗さ(RMS)が0.15nm以下であり、かつ、該多層反射膜表面の表面形状を、原子間力顕微鏡を用いて、100nm×100nmの測定範囲について、0.2nm以下の測定間隔で測定することにより求まる表面性状のアスペクト比Str(s=0.2)(ISO 25178−2)が0.30以上であることを特徴とする、EUVL用反射層付基板。
【請求項4】
請求項2または3に記載のEUVL用反射層付基板の多層反射膜上に吸収層を形成してなるEUVL用反射型マスクブランク。
【請求項5】
請求項1に記載のマスクブランク用ガラス基板の前記RMSが0.15nm以下、かつ、Strが0.30以上となる主表面上に、多層反射膜、および、吸収層をこの順に形成してなるEUVリソグラフィ用反射型マスクブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種リソグラフィの際に使用されるマスクブランク用ガラス基板、および、その製造方法に関する。本発明は、EUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外)光を用いたリソグラフィ(以下、「EUVL」と略する)に使用されるマスクブランク用ガラス基板(以下、「EUVLマスクブランク用ガラス基板」と略する。)に好適である。
本発明は、従来の透過型光学系を用いたリソグラフィに使用されるマスクブランク用ガラス基板、例えば、ArFエキシマレーザやKrFエキシマレーザを用いたリソグラフィ用マスクブランク用ガラス基板にも好適である。
【背景技術】
【0002】
近年における超LSIデバイスの高密度化や高精度化に伴い、各種リソグラフィに使用されるマスクブランク用ガラス基板の主表面に要求される仕様は年々厳しくなる状況にある。特に、露光光源の波長が短くなるにしたがって、主表面の形状精度(表面粗さ)や欠陥(パーティクル、スクラッチ、ピット等)に対する要求が厳しくなっており、きわめて表面粗さが小さく、かつ、微小欠陥がないガラス基板が求められている。
【0003】
例えば、露光光源としてArFエキシマレーザを用いたリソグラフィに使用されるマスクブランク用ガラス基板の場合、主表面の二乗平方根表面粗さ(RMS)で0.15nm以下であり、ポリスチレンラテックス粒子径換算サイズが50nm以上の欠陥の個数が5個以下であることが要求される。
【0004】
このため、マスクブランク用ガラス基板の主表面は、所望の表面粗さとなるように、コロイダルシリカや酸化セリウム、ジルコニア、アルミナといった微粒子状の研磨剤を用いて化学機械研磨される。
【0005】
研磨剤を用いて、マスクブランク用ガラス基板の主表面等の研磨対象物を研磨した場合、微粒子状の研磨剤が研磨後の研磨対象物の表面に付着して研磨対象物上に残留することがある。そのため、研磨対象物上に残留する研磨剤を除去する目的で、研磨後の研磨対象物の湿式洗浄が一般に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
湿式洗浄を実施した場合でも、研磨対象物であるマスクブランク用ガラス基板の主表面上に研磨剤が残留する場合がある。湿式洗浄実施後にもマスクブランク用ガラス基板の主表面上に残留する研磨剤は、ファンデルワールス力により、該表面と強く結合しており、除去が困難である。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、主表面に存在する異物の除去が容易なマスクブランク用ガラス基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、この問題について、鋭意検討した結果、主表面の表面粗さが同程度であっても、表面粗さの原因となる凹凸の分布のしかたにより、主表面に存在する異物の除去しにくさが異なることを見出した。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものであり、少なくとも一方の主表面における二乗平方根表面粗さ(RMS)が0.15nm以下であり、かつ、該主表面の表面形状を、原子間力顕微鏡を用いて、100nm×100nmの測定範囲について、0.2nm以下の測定間隔で測定することにより求まる表面性状のアスペクト比Str(s=0.2)(ISO 25178−2)が0.30以上であることを特徴とするマスクブランク用ガラス基板を提供する。
【0009】
また、本発明は、本発明のマスクブランク用ガラス基板の前記RMSが0.15nm以下、かつ、Strが0.30以上となる主表面上に、反射層として、低屈折率層と高屈折率層とを交互に複数回積層させてなる多層反射膜を形成してなるEUVリソグラフィ(EUVL)用反射層付基板を提供する。
【0010】
また、本発明は、ガラス基板上に、反射層として、低屈折率層と高屈折率層とを交互に複数回積層させてなる多層反射膜が形成されたEUVリソグラフィ(EUVL)用反射層付基板であって、前記多層反射膜表面における二乗平方根表面粗さ(RMS)が0.15nm以下であり、かつ、該多層反射膜表面の表面形状を、原子間力顕微鏡を用いて、100nm×100nmの測定範囲について、0.2nm以下の測定間隔で測定することにより求まる表面性状のアスペクト比Str(s=0.2)(ISO 25178−2)が0.30以上であることを特徴とする、EUVL用反射層付基板を提供する。
【0011】
また、本発明は、本発明のEUVL用反射層付基板の多層反射膜上に吸収層を形成してなるEUVL用反射型マスクブランクを提供する。
【0012】
また、本発明は、本発明のマスクブランク用ガラス基板の前記RMSが0.15nm以下、かつ、Strが0.30以上となる主表面上に、多層反射膜、および、吸収層をこの順に形成してなるEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマスクブランク用ガラス基板は、主表面に存在する異物の除去が容易である。そのため、研磨等により基板表面に付着した異物を、湿式洗浄等により容易に除去することができ、ポリスチレンラテックス粒子径換算サイズが50nm以上の欠陥の個数を5個以下とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a),(b)は、凸部が存在するガラス基板の主表面を示した模式図である。図1(a)は凸部による表面性状の均一性が高い場合を示しており、図1(b)は凸部による表面性状の均一性が低い場合を示している。
図2図2は、実施例における、表面性状のアスペクト比Str(100mm□)と、ポリスチレンラテックス粒子径換算サイズが50nm以上の大きさの欠陥数と、の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明のマスクブランク用ガラス基板について説明する。
【0016】
上述したように、本願出願人は、主表面の表面粗さが同程度であっても、表面粗さの原因となる凹凸の分布のしかたにより、主表面に存在する異物の除去しにくさが異なるという知見を見出した。
図1(a),(b)は、凸部が存在するガラス基板の主表面を示した模式図である。図1(a),(b)に示すガラス基板10は、主表面における凸部11の分布のしかたが互いに異なる。図1(a)に示すガラス基板10では、凸部11が主表面上に方向性を持たず均一に分布している。そのため、凸部11に起因する表面性状の均一性が高い。一方、図1(b)ガラス基板10では、凸部11が主表面上に、図中横方向に整列して存在しており、その分布は不均一である。そのため、凸部11に起因する表面性状の均一性が低い。
凸部11に起因する表面性状の均一性が高い図1(a)に示すガラス基板10では、その主表面上に異物20が存在する場合、主表面10に存在する凸部11と、異物20と、の接触が点接触になり、両者の接触面積が小さい。微粒子状の研磨剤等の異物20は、ファンデルワールス力によって、ガラス基板10の主表面に付着しているが、このファンデルワールス力は接触面積に比例するため、図1(a)に示すガラス基板10の場合、ガラス基板10の主表面に対する異物20の付着力が弱く、湿式洗浄等により、主表面10から容易に除去できる。
一方、凸部11に起因する表面粗さが異方性を示す図1(b)に示すガラス基板10では、その主表面上に異物20が存在する場合、主表面10に存在する凸部11と、異物20との接触が線接触となり、両者の接触面積が大きい。そのため、ガラス基板10の主表面に対する異物20の付着力が強く、主表面10からの除去が困難である。
上記では、ガラス基板の主表面に凸部が存在する場合について、凸部に起因する表面性状の均一性と、ガラス基板の主表面に存在する異物の除去しやすさと、の関係を示したが、ガラス基板の主表面に凹部が存在する場合における、凹部に起因する表面性状の均一性と、ガラス基板の主表面に存在する異物の除去しやすさと、の関係も同様の関係となる。すなわち、凹部に起因する表面性状の均一性が高い場合は、ガラス基板の主表面に存在する異物の除去が容易であるのに対して、凹部に起因する表面性状の均一性が低い場合は、ガラス基板の主表面に存在する異物の除去が困難である。
そのため、凹凸に起因する表面性状の均一性を高めることにより、ガラス基板の主表面に存在する異物の除去が容易になる。
【0017】
本発明では、凹凸に起因する表面性状の均一性の指標として、ISO 25178−2で規定される表面性状のアスペクト比Strを用いる。表面性状のアスペクト比Strは、表面性状の均一性を表す尺度であり、ISO 25178−2で規定される自己相関関数が最も早く特定の値sへ減衰する方向の水平距離(最少自己相関長さSal)を最も遅くsへ減衰する方向の水平距離で割ったものである。特定の値sのデフォルト値は、0.2であり、本発明においても、s=0.2とする。
【0018】
本発明のマスクブランク用ガラス基板は、少なくとも1つの主表面の表面形状を、原子間力顕微鏡を用いて、100nm×100nmの測定範囲について、0.2nm以下の測定間隔で測定することにより求まる表面性状のアスペクト比Str(s=0.2)が0.30以上である。
ここで、少なくとも1つの主表面とするのは、マスクブランク用ガラス基板の場合、その主表面の表面性状が優れていること、すなわち、表面粗さが小さく、欠陥が少ないことが求められるのは、リソグラフィ実施時において露光面となる側の主表面だからである。但し、露光面に対して裏面側についても、その表面性状が優れていることが好ましい。
また、測定範囲を100nm×100nm、かつ、測定間隔を0.2nm以下とする理由は以下の通りである。
測定範囲を100nm×100nm、かつ、測定間隔を0.2nm以下とする理由
マスクブランク用基板の表面粗さは、化学機械研磨時に使用する研磨剤の粒径によって決まる。研磨剤の粒径に相当する周期のスジ状の表面粗さが基板表面に転写されるためである。RMSが0.15nm以下の基板表面を得るためには、平均粒径5〜50nmのコロイダルシリカを研磨剤として用いた化学機械研磨をおこなうことが一般的である。そのため、基板表面には5〜50nmの空間波長の表面粗さが存在している。また、5〜50nmの空間波長の表面粗さは、ポリスチレンラテックス粒子換算サイズが50nm以上の異物付着に最も影響する。以上の理由から、5〜50nmの空間波長の表面粗さを検出するために最も適した条件として、測定範囲を100nm×100nm、かつ、測定間隔を0.2nm以下の測定条件とした。
【0019】
上記で定義する表面性状のアスペクト比Strが0.30以上であれば、凹凸に起因する表面性状の均一性が十分に高いため、ガラス基板の主表面に存在する異物を湿式洗浄等により容易に除去でき、ポリスチレンラテックス粒子径換算サイズが50nm以上の欠陥の個数を5個以下とすることができる。
上記で定義する表面性状のアスペクト比Strは、0.35以上であることが好ましい。
なお、上記で定義する表面性状のアスペクト比Strの上限は理論上1.0であるが、マスクブランク用ガラス基板の主表面、原子間力顕微鏡を用いて実測することにより得られる表面性状のアスペクト比Strの上限は0.7程度である。
【0020】
また、本発明のマスクブランク用ガラス基板は、その主表面が、表面性状のアスペクト比Strが0.30以上であることに加えて、表面粗さが小さいことが求められる。具体的には、その主表面の二乗平方根表面粗さ(RMS)が0.15nm以下であり、好ましくは0.12以下であり、より好ましくは0.10以下である。
なお、本明細書における表面粗さは、JIS−B0601に基づく二乗平均平方根粗さRq(旧RMS)を指す。
【0021】
以下、本発明の特にEUV光を用いたリソグラフィに使用されるマスクブランク用ガラス基板についてさらに記載する。
本発明のマスクブランク用ガラス基板を構成するガラスは、熱膨張係数が小さくかつそのばらつきの小さいことが好ましい。具体的には20℃における熱膨張係数の絶対値が600ppb/℃の低熱膨張ガラスが好ましく、20℃における熱膨張係数が400ppb/℃の超低熱膨張ガラスがより好ましく、20℃における熱膨張係数が100ppb/℃の超低熱膨張ガラスがさらに好ましく、30ppb/℃が特に好ましい。
上記低熱膨張ガラスおよび超低熱膨張ガラスとしては、SiO2を主成分とするガラス、典型的には合成石英ガラスが使用できる。具体的には、例えば合成石英ガラス、AQシリーズ(旭硝子株式会社製合成石英ガラス)や、SiO2を主成分とし1〜12質量%のTiO2を含有する合成石英ガラス、AZ(旭硝子株式会社製ゼロ膨張ガラス)が挙げられる。
【0022】
マスクブランク用ガラス基板の大きさや厚さなどはマスクの設計値等により適宜決定される。後で示す実施例では、外形6インチ(152mm)角で、厚さ0.25インチ(6.35mm)の合成石英ガラスを用いた。
【0023】
上述したように、マスクブランク用ガラス基板の製造時には、その主表面が所望の表面粗さとなるように、コロイダルシリカや酸化セリウム、ジルコニア、アルミナといった微粒子状の研磨剤を用いて化学機械研磨される。
ここで、上記で定義する表面性状のアスペクト比Strを0.30以上とするには、化学機械研磨に関する以下の条件の制御が有効である。
(1)使用する研磨剤の粒径が小さいほど、化学機械研磨後の表面性状の均一性が向上する。そのため、上記で定義する表面性状のアスペクト比Strを0.30以上とするためには、使用する研磨剤の粒径が小さいほど好ましい。具体的には、研磨剤の平均粒径が20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましい。
(2)化学機械研磨に使用する研磨パッドは、目立ての目的でパッド表面をドレス処理される。このドレス処理には、表面にダイヤモンド微粒子を接着したドレス板が使用される。このドレス処理に粒径が小さいダイヤモンド微粒子を接着したドレス板を使用するほど、研磨パッドの表面性状が向上し、化学機械研磨後のマスクブランク用ガラス基板の主表面の均一性が向上する。そのため、上記で定義する表面性状のアスペクト比Strを0.30以上とするためには、研磨パッドのドレス処理に番手が細かいドレス板(粒径が小さいダイヤモンド微粒子を接着したドレス板)を使用するほど好ましい。具体的には、平均粒径が30μm以下のダイヤモンド微粒子を接着したドレス板を使用することが好ましい。
【0024】
上述した本発明のマスクブランク用ガラス基板のRMSが0.15nm以下、かつ、Strが0.30以上となる主表面上に、所定の光学膜を形成することにより、リソグラフィ用マスクブランクが得られる。EUVL用マスクブランクの場合、マスクブランク用ガラス基板のRMSが0.15nm以下、かつ、Strが0.30以上となる主表面上に、EUV光を反射する反射層を形成し、該反射層上にEUV光を吸収する吸収層を形成する。ここで、反射層としては、EUV光に対して低屈折率となる層である低屈折率層と、EUV光に対して高屈折率となる層である高屈折率層とを交互に複数回積層させた多層反射膜が広く用いられる。本発明においても、反射層として多層反射膜をマスクブランク用ガラス基板の主表面上に形成する。なお、多層反射膜をマスクブランク用ガラス基板の主表面上に形成する本発明において、EUVL用反射型マスクブランクの吸収層を形成する前の状態、すなわち、マスクブランク用ガラス基板の主表面上に多層反射膜を形成したものが本発明のEUVL用反射層付基板である。上記したマスクブランク用ガラス基板の主表面の表面性状は、マスクブランク用ガラス基板の主表面上に形成された多層反射膜の表面性状にも反映される。したがって、マスクブランク用ガラス基板の主表面上に形成された多層反射膜は表面粗さが小さく、表面性状の均一性が高い。具体的には、多層反射膜表面の二乗平方根表面粗さ(RMS)は0.15nm以下である。
【実施例】
【0025】
本実施例では、化学機械研磨後のマスクブランク用ガラス基板(外形6インチ(152mm)角で、厚さ0.25インチ(6.35mm)の合成石英ガラス基板)について、化学機械研磨後の主表面を物理力および化学力による精密洗浄をした後、原子間力顕微鏡を用いて、一方の主表面の100nm×100nm(100mm□)の範囲について、0.2nm以下の測定間隔でその表面形状を測定して、ISO 25178−2に規定されたアスペクト比Strをs=0.2として求めた。また、該主表面の二乗平方根表面粗さ(RMS)を求めた。
結果は以下の通り。
例1:Str 0.20 RMS 0.10nm
例2:Str 0.28 RMS 0.09nm
例3:Str 0.37 RMS 0.09nm
例1〜3について、マスクブランク用ガラス基板について、化学機械研磨後の主表面を物理力および化学力による精密洗浄をした後、欠陥検査機M7360、レーザーテック社を用いてポリスチレンラテックス粒子径換算サイズが50nm以上の欠陥の個数を測定した。結果を図2に示す。
図2から明らかなように、アスペクト比Strが0.30より小さい例1、2では、ポリスチレンラテックス粒子径換算サイズが50nm以上の欠陥の個数が要求値である5個以下を満たさなかったのに対して、アスペクト比Strが0.30より大きい例3では、この要求値を満たしていた。
また、上記の手順で測定したStrが0.25であるマスクブランク用ガラス基板の主表面に、EUVL用マスクブランクの多層反射膜として、最も一般的なMo/Si多層反射膜((Mo層(2.3nm)+Si層(4.5nm))×50=340nm)を形成した後、該最も一般的なMo/Si多層反射膜表面について、上記の手順でStrを測定したところ、Strは0.28であり、Mo/Si多層反射膜の形成前後でほとんど変化しないことが確認された。
【符号の説明】
【0026】
10:ガラス基板
11:凸部
20:異物
図1
図2