(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブロック化されたイソシアネート基を有する重合体が、ポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類の重合体と、ブロック化されたイソシアネート基を有する化合物と、の反応により、液晶配向膜の形成時に形成される請求項1に記載の液晶配向剤。
ポリイミド前駆体及びそれをイミド化して得られるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1つの重合体と、ブロック化されたイソシアネート基を有する化合物と、分子内にアミノ基を有する化合物と、を含有する請求項3に記載の液晶配向剤。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ブロック化されたイソシアネート基を有する重合体>
本発明において、液晶配向剤中に含有される、ブロック化されたイソシアネート基を有する重合体は、予めブロック化されたイソシアネート基を有する重合体が液晶配向剤中に含有されている場合(A)であってもよく、又は液晶配向膜を得る段階において、ブロック化されたイソシアネート基を有する重合体が形成される場合(B)のいずれであってもよい。以下、これらについて説明する。
【0018】
なお、本発明において、ブロック化されたイソシアネート基とは、例えば、下記の式(2)で表される基であり、イソシアネート基(−NCO)が適当な保護基(R
2)によりブロックされたブロックイソシアネート基である。本発明では、ブロック化されたイソシアネート基は、液晶配向膜の形成時の加熱焼成により、保護基(ブロック部分)が熱解離して外れて、反応性のイソシアネート基が生じる。生じたイソシアネート基は、液晶配向膜を構成する重合体との間で架橋反応が進行、もしくは、分子内にアミノ基およびヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物と反応するものである。
【化4】
(式(2)中、R
2は、ブロック部の有機基を表す。)
【0019】
(A)ブロック化されたイソシアネート基を有する重合体が液晶配向剤に含有される場合
この場合における本発明の液晶配向剤は、ブロック化されたイソシアネート基を有する重合体及び分子内にアミノ基、ヒドロキシル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物(以下、機能性モノマーともいう。)を含有する。
【0020】
ブロック化されたイソシアネート基を有する重合体は、ブロック化されたイソシアネート基を含有する各種の重合体の原料を用いて重合体を製造することによって得ることができる。例えば、ポリイミド前駆体及びそれをイミド化して得られるポリイミドを重合体として用いる場合は、その原料であるテトラカルボン酸二無水物及びジアミンのいずれか又は両方に、ブロック化されたイソシアネート基を含有させたものを用いてポリイミド前駆体を重合し、それをイミド化することによって得ることが出来る。この場合、ブロック化されたイソシアネートを導入することの容易性から、ブロック化されたイソシアネート基を含有するジアミンを用いることが好ましい。
【0021】
また、(メタ)アクリルポリマーやポリシロキサン等の、他の重合体の場合も同様であり、例えば、下記のアクリルポリマーが挙げられる。
【化5】
【0022】
<機能性モノマー>
本発明における機能性モノマーとは、ブロック化されたイソシアネート基を介して重合体の骨格に導入される化合物であり、そのために、イソシアネート基と反応する部位(官能基)である、アミノ基及び/又はヒドロキシル基を有する化合物である。
本発明の機能性モノマーは、分子内にアミノ基及びヒドロキシル基から選ばれる基を少なくとも1つ有し、下記式で表わされる。
【化6】
(式中、Rはアミノ基またはヒドロキシル基を表し、Yはn価の有機基を表す。)
【0023】
上記式において、nが2の場合のYの具体例としては、下記の式(Y−1)〜(Y−120)で表される2価の有機基などが挙げられる。なかでも、良好な液晶配向性を得るためには、直線性の高いジアミン化合物を原料とする構造であることが好ましい。このようなYとしては、(Y−7)、(Y−10)、(Y−11)、(Y−12)、(Y−13)、(Y−21)、(Y−22)、(Y−23)、(Y−25)、(Y−26)、(Y−27)、(Y−41)、(Y−42)、(Y−43)、(Y−44)、(Y−45)、(Y−46)、(Y−48)、(Y−61)、(Y−63)、(Y−64)、(Y−65)、(Y−66)、(Y−67)、(Y−68)、(Y−69)、(Y−70)、(Y−71)、(Y−78)、(Y−79)、(Y−80)、(Y−81)、(Y−82)、(Y−109)などが挙げられる。
【0024】
また、液晶のプレチルト角を高くするための液晶配向膜とする場合は、側鎖に長鎖アルキル基(例えば炭素数10以上のアルキル基)、芳香族環、脂肪族環、ステロイド骨格、又はこれらを組み合わせた構造を有するジアミン化合物を原料とする構造であることが好ましい。このようなYとしては、(Y−83)、(Y−84)、(Y−85)、(Y−86)、(Y−87)、(Y−88)、(Y−89)、(Y−90)、(Y−91)、(Y−92)、(Y−93)、(Y−94)、(Y−95)、(Y−96)、(Y−97)、(Y−98)、(Y−99)、(Y−100)、(Y−101)、(Y−102)、(Y−103)、(Y−104)、(Y−105)、(Y−106)、(Y−107)、又は(Y−108)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
また、液晶表示素子の電気特性を向上させたい場合は、(Y−31)、(Y−40)、(Y−64)、(Y−65)、(Y−66)、(Y−67)、(Y−109)、(Y−110)などが挙げられる。また、液晶配向膜に光反応性を付与させたい場合は、(Y−17)、(Y−18)、(Y−111)、(Y−112)、(Y−113)、(Y−114) 、(Y−115)、(Y−116)、(Y−117)、(Y−118)、(Y−119)などが挙げられる。
【0041】
上記式で表される化合物において、nが1の場合のYの具体例としては、下記式で表される1価の有機基や、[Y−1]〜[Y−120]の一つの結合手が水素原子と結合した構造などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0043】
また、上記式で表される化合物において、nが3以上の場合のYの具体例としては、下記式で表される3価以上の有機基や、[Y−1]〜[Y−120]の水素原子が脱離した構造などが挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、本明細書において、Meはメチル基である。
【0045】
(B)液晶配向膜を得る段階で、ブロック化されたイソシアネート基を有する重合体が形成される場合
この場合における本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜を形成する重合体、ブロック化されたイソシアネート基を有する化合物(以下、単に、ブロック化イソシアネート化合物とも言う。)、及び上述した機能性モノマーを含有する。
ここで、液晶配向膜を形成する重合体とは、ポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体をイミド化させて得られるポリイミドのほか、(メタ)アクリル系ポリマー、シロキサンポリマー等が例示される。なかでも、イソシアネート基と反応する部位を導入することの容易性、液晶配向膜の特性等から、ポリイミド前駆体及びそれをイミド化させて得られるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体が好ましく用いられる。
【0046】
ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸誘導体成分とジアミン成分とを反応させて得られるポリアミック酸であり、ポリイミドは、該ポリアミック酸をイミド化して得られる。
次に、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ブロックイソシアネート基を有する化合物について説明をする。
【0047】
<ポリイミド前駆体>
本発明の液晶配向剤に含有するポリイミド前駆体は、ポリアミック酸および/又はポリアミック酸エステルを指し、下記式(1)で表される構造単位を有する。
【化24】
【0048】
上記式(1)において、R
1は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、A
1〜A
2はそれぞれ独立して水素原子、または置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基である。
式(1)において、R
1は、水素原子または炭素数1〜5、好ましくは1〜2のアルキル基である。ポリアミック酸エステルは、アルキル基における炭素数が増えるに従ってイミド化が進行する温度が高くなる。そのため、R
1は、熱によるイミド化のしやすさの観点から、メチル基が特に好ましい。
【0049】
式(1)において、A
1およびA
2は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有してもよい、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基、または炭素数1〜12の脂肪族環基である。上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基が挙げられる。上記アルケニル基としては、上記のアルキル基に存在する1つ以上のCH−CH構造を、C=C構造に置き換えたものが挙げられ、より具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。上記アルキニル基としては、前記のアルキル基に存在する1つ以上のCH
2−CH
2構造をC≡C構造に置き換えたものが挙げられ、より具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基等が挙げられる。上記脂肪族環基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0050】
上記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、全体として炭素数が1〜10であれば置換基を有していてもよく、さらには置換基によって環構造を形成してもよい。尚、置換基によって環構造を形成するとは、置換基同士または置換基と母骨格の一部とが結合して環構造となることを意味する。
この置換基の例としては、ハロゲン基、水酸基、チオール基、ニトロ基、アリール基、オルガノオキシ基、オルガノチオ基、オルガノシリル基、アシル基、エステル基、チオエステル基、リン酸エステル基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を挙げることができる。
【0051】
置換基であるハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換基であるアリール基としては、フェニル基が挙げられる。このアリール基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。置換基であるオルガノオキシ基としては、O−Rで表される構造を示すことができる。置換基であるオルガノチオ基としては、−S−Rで表される構造を示すことができる。置換基であるオルガノシリル基としては、−Si−(R)
3で表される構造を示すことができる。置換基であるアシル基としては、−C(O)−Rで表される構造を示すことができる。置換基であるエステル基としては、−C(O)O−R、または−OC(O)−Rで表される構造を示すことができる。置換基であるチオエステル基としては、−C(S)O−R、または−OC(S)−Rで表される構造を示すことができる。
【0052】
置換基であるリン酸エステル基としては、−OP(O)−(OR)
2で表される構造を示すことができる。置換基であるアミド基としては、−C(O)NH
2、または、−C(O)NHR、−NHC(O)R、−C(O)N(R)
2、−NRC(O)Rで表される構造を示すことができる。これらのRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0053】
オルガノオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
オルガノチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等が挙げられる。
【0054】
オルガノシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基等が挙げられる。
アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0055】
置換基であるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基としては、それぞれ、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基と同じものを挙げることができる。これらのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0056】
一般に、嵩高い構造を導入すると、アミノ基の反応性や液晶配向性を低下させる可能性があるため、A
1およびA
2としては、水素原子、または置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
上記式(1)において、X
1は、4価の有機基であれば、その構造は特に限定されるものではなく、2種類以上が混在していてもよい。X
1の具体例を示すならば、以下に示すX−1〜X−46が挙げられる。なかでも、モノマーの入手性から、X
1は、X−1、X−2、X−3、X−4、X−5、X−6、X−8、X−16、X−19、X−21、X−25、X−26、X−27、X−28、またはX−32が好ましい。
【0061】
上記式中、Y
1は、2価の有機基であり、2種類以上が混在していてもよい。Y
1の具体的な構造の例を示すならば、以下に示すY−1〜Y−106が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ジアミンの反応性、ポリマーの溶解性の観点から、Y−7、Y−8、Y−13、Y−18、Y−19、Y−42,Y−43、Y−45、Y−55、Y−59、Y−74、Y−78、Y−79、Y−80、Y−81、Y−82の構造のジアミンを用いることがより好ましい。
【0076】
本発明の液晶配向剤に使用されるポリイミド前駆体は、なかでも、ブロックイソシアネート基を有する化合物との間で架橋反応が進行するのに好適な構造のポリイミド前駆体が好ましい。具体的には、アミノ基及びヒドロキシル基の少なくとも一方を有するポリイミド前駆体が好ましい。また、ポリイミド前駆体はポリマー中にカルボン酸基を有していることが多く、本発明のブロックイソシアネート基を有する化合物との反応性に富むため、本発明の1形態として好ましい。
なお、本発明の液晶配向剤が含有するポリイミドにおいて、アミド酸基の脱水閉環率(イミド化率)は、必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
【0077】
<ポリイミドの製造方法>
ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を用いてポリイミドを得る場合において、ポリアミド酸をイミド化させる方法は、ポリアミド酸の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、ポリアミド酸の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
ポリアミド酸を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100℃〜400℃、好ましくは120℃〜250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0078】
ポリアミド酸の触媒イミド化は、ポリアミド酸の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20℃〜250℃、好ましくは0℃〜180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5モル倍〜30モル倍、好ましくは2モル倍〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1モル倍〜50モル倍、好ましくは3モル倍〜30モル倍である。
上述の触媒イミド化に用いる塩基性触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。
【0079】
上述の触媒イミド化に用いる酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができる。中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0080】
<ブロックイソシアネート化合物>
本発明におけるブロックイソシアネート化合物は、上記したブロックイソシアネート基を有する化合物であればよく、その種類及び構造について特に限定されるものでない。ブロックイソシアネート化合物は、例えば、分子中にイソシアネート基を有する化合物に対して適当なブロック剤を作用せしめることにより得ることができる。
【0081】
ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−エトキシヘキサノール、2−N,N−ジメチルアミノエタノール、2−エトキシエタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、フェノール、o−ニトロフェノール、p−クロロフェノール、o−、m−又はp−クレゾール等のフェノール類、ε−カプロラクタム等のラクタム類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、などのピラゾール類、ドデカンチオール、ベンゼンチオール等のチオール類が挙げられる。
【0082】
ブロックイソシアネート化合物は、液晶配向膜の形成時の加熱焼成の温度のような高温の状態では、ブロック部分の熱解離が生じてイソシアネート基を介して架橋反応が進行するものであるが、液晶配向剤を保存する低温の状態では、イソシアネート基による架橋が進行しないものであることが好ましい。そのような熱反応性を実現するために、ブロックイソシアネート化合物は、ブロック部分の熱解離の温度が液晶配向剤の保存時よりも相当に高いもの、例えば、50℃〜230℃であるものが好ましく、100℃〜180℃であるものがより好ましい。
【0083】
ブロックイソシアネート化合物は、特に、1分子中、ブロックイソシアネート基を3つ以上の有するブロックイソシアネート化合物が好ましい。かかる化合物は、例えば、1分子中3個以上のイソシアネート基を有する化合物に対して、上述したような適当なブロック剤を作用せしめることにより、得ることができる。
かかる1分子中にブロックイソシアネート基を3つ以上の有する化合物としては、例えば、次の式(Z−1)〜式(Z−4)で表される化合物等の具体例が挙げられる。
【0084】
【化43】
(式(Z−1)〜式(Z−4)中、R
2は、ブロック部の有機基を表す。
式(Z−3)中、B
1〜B
3のいずれか1つはメチル基を表し、それ以外の2つは水素を表す。B
4〜B
6、及び、B
7〜B
9においても、B
1〜B
3と同様に、いずれか1つはメチル基を表し、それ以外の二つは水素を表す。)
【0085】
本発明の液晶配向剤にブロックイソシアネート化合物を含有させる場合、ブロックイソシアネート化合物は1種単独で用いてもよく、また2種以上を組合せて用いてもよい。
また、ブロックイソシアネート化合物は、ポリイミド前駆体及びポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体に対して、0.5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%の割合で液晶配向剤に含有される。
【0086】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、樹脂被膜である液晶配向膜を形成するための樹脂成分と、この樹脂成分を溶解させる有機溶媒とを含有する。
本発明の液晶配向剤は、上記樹脂成分として、上記のブロック化されたイソシアネート基を有する重合体(以下、本発明の重合体ともいう)を含有する。
上記樹脂成分は、全てが本発明の重合体であってもよく、また、本発明の重合体以外の他の重合体が混合されていてもよい。液晶配向剤中における本発明の重合体の含有量は5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上である。
本発明の重合体以外の他の重合体としては、上記式(1)で表されるポリイミド前駆体及び/叉はポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドなどが挙げられる。
【0087】
液晶配向剤に含有される樹脂成分を溶解させる有機溶媒は特に限定されない。具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、樹脂の溶解性が高い良溶媒となる。
【0088】
また、上記の良溶媒に加えて、液晶配向剤の塗布均一性を高くするため、重合体の溶解性が低い貧溶媒を使用することは好ましい。本発明において、好ましい貧溶媒としては、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノへキシルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルが挙げられる。
この貧溶媒は、樹脂の溶解性が低い貧溶媒となる。これらの溶媒は、液晶配向処理剤に含有される有機溶媒の5〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量%である。
【0089】
本発明の液晶配向剤における樹脂成分の濃度は、得ようとする液晶配向膜の膜厚、及び液晶配向処理剤の塗布に使用する装置などにあわせて、適宜調整することができる。液晶配向剤の一般的な樹脂濃度としては1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%を例示することができる。
本発明の液晶配向剤には、上記以外の成分を含有してもよい。その例としては、液晶配向膜と基板との密着性を向上させるための官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物、塗膜の平坦化性を高めるためのフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。
【0090】
官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物を含有させる場合、その量はいずれも樹脂成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部であり、特に好ましくは1〜10質量部である。
界面活性剤を含有させる場合、その量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0091】
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤は、基板上に塗布、焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして、又は一部の垂直配向用途などでは配向処理無しで液晶配向膜とすることができる。
本発明の液晶配向剤の塗布方法は特に限定されないが、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェットなどによって行う方法が一般的である。その他、塗布液を用いる方法としては、ディップ、ロールコーター、スリットコーター、スピンナーなどがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。これらの方法により基板上に塗布した後、ホットプレートなどの加熱手段により溶媒を蒸発させて、塗膜を形成させることができる。
【0092】
液晶配向剤を塗布した後の焼成は、100〜300℃の任意の温度で行うことができるが、好ましくは150℃〜250℃である。この焼成はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などで行うことができる。
ラビング処理には、レーヨン布、ナイロン布、コットン布などを使用することができる。垂直配向用の液晶配向膜は、ラビング処理によって均一な配向状態を得ることが難しいので、垂直配向用液晶配向剤として用いる場合には、ラビングせずに用いることが好ましい。
【0093】
本発明の液晶セルは通常の方法により作製することができ、その作製方法は特に限定されるものではない。一般的には、少なくとも一方の基板上に液晶配向膜が形成されたガラス基板にシール剤を塗布し、一定のギャップが保持できるようにスペーサーを分散し、その後、2枚の基板を貼り合わせシール剤を硬化させて空セルを作製し、その後に真空下、液晶注入口から液晶を注入し、注入口を封止して液晶セルを作製する方法;或いは、スペーサーを分散した基板上に液晶を滴下し、その後に2枚の基板を貼り合わせて液晶セルを作製する方法などを用いることができる。液晶としては、用途に応じて正や負の誘電率異方性を有するフッ素系液晶やシアノ系液晶などを用いることができる。
上記のようにして本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、液晶に大きなプレチルト角を与えることができ、各種用途の液晶配向膜として使用できる。
【実施例】
【0094】
以下に本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されないことはもちろんである。
[実施例]
実施例で使用する略号は以下のとおりである。
(メタクリルモノマー)
【化44】
MOI−BM:メタクリル酸 2−(0−[1‘−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(昭和電工社製、カレンズMOI−BM)
【0095】
(テトラカルボン酸二無水物)
CBDA:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
(ジアミン)
DBA:3, 5−ジアミノ安息香酸
【0096】
(アミノ基を有する化合物)
【化45】
【0097】
(ヒドロキシル基を有する化合物)
【化46】
(ブロック化されたイソシアネ―トを有する化合物)
タケネートB−882N(三井化学社製)
【0098】
(有機溶媒)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
DMF:N,N’−ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
(重合開始剤)
AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル
【0099】
<ポリマー分子量測定>
合成例におけるポリマーの分子量はセンシュー科学社製 常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(SSC−7200、Shodex社製カラム(KD−803、KD−805)を用い以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:DMF(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H
2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、THFが10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量約9000,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量 約12,000、4,000、1,000)。
【0100】
<合成例1>
MOI−BM(15.56g、30.0mmol)をNMP(142.3g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで6分間脱気を行なった後、AIBNを(0.246g、2.0mmol)を加え再び6分間脱気を行なった。この後60℃で30時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液にBC(105.4g)を加え6質量%に希釈し、室温で5時間攪拌することにより液晶配向剤(A)を得た。このポリマーの数平均分子量は14000、重量平均分子量は55000であった。
【0101】
<合成例2>
CBDA(3.88g、20.0mmol)、DBA(3.04g、20.0mmol)をNMP(27.7g)中で混合し、室温で20時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液にNMP(45.0g)、BCS(34.6g)を加え6質量%に希釈し、室温で5時間攪拌することにより液晶配向剤(B)を得た。このポリアミック酸の数平均分子量は15000、重量平均分子量は34000であった。
【0102】
<実施例1>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)10.0gに対してDA−1を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A1)を調製した。
また下記の条件で液晶セルを作製後、チルト角の測定及び、液晶配向性の評価を行なった。
【0103】
[液晶セル(VAモード)の作製]
実施例1で得られた液晶配向剤(A1)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板のITO面にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
上記の基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜上に6μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤(協立化学製、XN−1500T)を印刷した。次いで、2枚の基板の液晶配向面を対向させ圧着し、150℃で105分かけてシール剤を熱硬化させた。この空セルにネガ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を減圧注入法によって注入し、液晶セルを作製した。
【0104】
[プレチルト角の評価]
液晶セルのプレチルト角の測定はAxo Metrix社製の「AxoScan」を用いてミューラーマトリックス法により測定した。
「液晶セル配向性の評価」
液晶セル作製後、偏光顕微鏡にてセル観察を行い、流動配向や光抜けなどの配向不良が無い場合を配向性良好とした。
【0105】
<実施例2>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)10.0gに対してDA−2を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A2)を調製した。実施例1と同様に液晶セルを作製後チルト角の測定と配向性の評価を行なった。
【0106】
<実施例3>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)10.0gに対してDA−3を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A3)を調製した。実施例1と同様に液晶セルを作製後チルト角の測定と配向性の評価を行なった。
【0107】
<実施例4>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)10.0gに対してDA−4を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A4)を調製した。下記に示すように液晶セルを作製後チルト角の測定と配向性の評価を行なった。
【0108】
[液晶セル(光配向VAモード)の作製]
実施例4で得られた液晶配向剤(A4)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板のITO面にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
この基板に対して、照射強度11.0mW/cm
2の313nmの直線偏光UVを0〜100mJ照射した。入射光線の方向は基板法線方向に対して40°傾斜していた。直線偏光UVは高圧水銀ランプの紫外光に313nmのバンドパスフィルターを通した後、313nmの偏光板を通すことで調製した。
【0109】
上記の基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜上に6μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤(協立化学製、XN−1500T)を印刷した。次いで、2枚の基板の液晶配向面を対向させ、各基板への直線偏光UVの光軸の投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で105分かけてシール剤を熱硬化させた。この空セルにポジ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を減圧注入法によって注入し、液晶セルを作製した。
【0110】
[プレチルト角の評価]
実施例1と同様にしてプレチルト角を測定した。
「液晶セル配向性の確認」
液晶セル作製後、交流電圧AC=8Vp−pで液晶を駆動しながら偏光顕微鏡にてセル観察を行い、流動配向や光抜けなどの配向不良が無く一軸配向性を示している場合を配向性良好とした。
【0111】
<実施例5>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)10.0gに対してDA−5を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A5)を調製した。
実施例4と同様に液晶セルを作製後チルト角の測定と配向性の評価を行なった。
【0112】
<実施例6>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)10.0gに対してDA−6を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A6)を調製した。
実施例4と同様に液晶セルを作製後チルト角の測定と配向性の評価を行なった。
【0113】
<実施例7>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)10.0gに対してDA−7を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A7)を調製した実施例4と同様に液晶セルを作製後チルト角の測定と配向性の評価を行なった。
【0114】
<実施例8>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)10.0gに対してDA−8を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A8)を調製した。実施例4と同様に液晶セルを作製後チルト角の測定と配向性の評価を行なった。
【0115】
<実施例9>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)10.0gに対してDA−9を60mg(固形分に対して30質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A9)を調製した。
また下記の条件で液晶セルを作製後、チルト角の測定及び、液晶配向性の評価を行なった。
【0116】
[液晶セル(IPSモード)の作製]
実施例9で得られた液晶配向剤(A9)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板のITO面にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
この基板に対して、照射強度11.0mW/cm
−2の313nmの直線偏光UVを0〜1000mJ照射した。入射光線の方向は基板法線方向であった。直線偏光UVは高圧水銀ランプの紫外光に313nmのバンドパスフィルターを通した後、313nmの偏光板を通すことで調製した。
【0117】
上記の基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜上に6μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤(協立化学製、XN−1500T)を印刷した。次いで、2枚の基板の液晶配向面を対向させ、各基板への直線偏光UVの光軸の投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で105分かけてシール剤を熱硬化させた。この空セルにポジ型液晶(メルク社製、MLC−2041)を減圧注入法によって注入し、液晶セルを作製した。
【0118】
[プレチルト角の評価]
実施例1と同様にしてプレチルト角を測定した。
[液晶セル配向性の評価]
実施例1と同様にして配向性を評価した。
【0119】
<実施例10>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)10.0gに対してMA−1を60mg(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A10)を調製した。実施例4と同様に液晶セルを作製後チルト角の測定と配向性の評価を行なった。
【0120】
<実施例11>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)10.0gに対してHM−1を60mg(固形分に対して30質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A11)を調製した。実施例9と同様に液晶セルを作製後チルト角の測定と配向性の評価を行なった。
【0121】
<実施例12>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)10.0gに対してHM−2を60mg(固形分に対して30質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(A12)を調製した。
実施例9と同様に液晶セルを作製後チルト角の測定と配向性の評価を行なった。
【0122】
<比較例1>
合成例1で得られた液晶配向剤(A)を用いて実施例1と同様に液晶セルの作製を行ない配向性の評価を行なった。
【0123】
<実施例13>
合成例2で得られた液晶配向剤(B)10.0gに対してDA−4を120mg(固形分に対して20質量%)、タケネートB−882Nを180mg(固形分に対して30質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤(B1)を調製した。実施例4と同様に液晶セルを作製後チルト角の測定と配向性の評価を行なった。
【0124】
<比較例2>
合成例2で得られた液晶配向剤(B)を用いて実施例1と同様に液晶セルの作製を行ない配向性の評価を行なった。
【0125】
【表1】
【0126】
実施例1〜3に記載されるように、ブロックイソシアネートを有するポリマーに垂直配向能を有するアミン化合物を添加することで垂直配向剤として使用できることが確認された。
また、実施例4−8、10にあるように光反応性と垂直配向能を有するアミン化合物を添加することでVAモード用の光配向膜として使用できることが確認された。
さらに、実施例9、11、12にあるように光配向能を示す光反応性基を添加することで水平配向用の光配向膜として使用できることも確認された。