特許第6372022号(P6372022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産化学工業株式会社の特許一覧

特許6372022硬化膜形成組成物、配向材および位相差材
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372022
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】硬化膜形成組成物、配向材および位相差材
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20180806BHJP
   C08K 5/04 20060101ALI20180806BHJP
   C08K 5/23 20060101ALI20180806BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20180806BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20180806BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20180806BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C08L101/02
   C08K5/04
   C08K5/23
   C08L33/00
   G02B5/30
   G02F1/13363
   G02F1/1337 520
【請求項の数】5
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-554603(P2014-554603)
(86)(22)【出願日】2013年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2013085165
(87)【国際公開番号】WO2014104320
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年12月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-285647(P2012-285647)
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-97877(P2013-97877)
(32)【優先日】2013年5月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯川 昇志郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 智久
(72)【発明者】
【氏名】畑中 真
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/126021(WO,A1)
【文献】 特開2007−121721(JP,A)
【文献】 特開2007−256744(JP,A)
【文献】 特開2014−012823(JP,A)
【文献】 特許第6274441(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 −101/16
C08K 5/04 −5/138
C08K 5/23
G02B 5/30
G02F 1/13363−1/1337
C09D 101/00 −201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光配向性基とヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびアルコキシシリル基のうちのいずれかから選ばれる少なくとも一種の置換基とを有する下記式[A−11]〜[A−15]で表される化合物、及び
(B)自己架橋反応を起こすことができ且つ(A)成分と熱反応可能な置換基であって、アルコキシメチルアミド基、ヒドロキシメチルアミド基、及びトリアルコキシシリル基からなる群から選択される架橋性置換基を有するポリマー
を含有することを特徴とする、硬化膜形成組成物。
【化1】
(前記式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基を表す。
とAはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
11は単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、アミノ結合又はそれらの組み合わせから選ばれる1種又は2種以上の結合、或いは該1種又は2種以上の結合を介して、炭素原子数1乃至18のアルキレン、フェニレン、ビフェニレン又はそれらの組み合わせから選ばれる1乃至3の置換基が結合してなる構造であって、前記置換基は前記結合を介してそれぞれ複数個が連結してなる構造であってもよい。
12は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基又はシクロヘキシル基を表し、前記炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基及びシクロヘキシル基は、共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又は尿素結合を介して2種以上の基が結合してもよい。
13はヒドロキシ基、メルカプト基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、炭素原子数1乃至10のアルキルチオ基、フェノキシ基、ビフェニルオキシ基又はフェニル基を表す。
14は単結合、炭素原子数1乃至20のアルキレン基、2価の芳香族環基、又は、2価の脂肪族環基を表し、前記炭素原子数1乃至20のアルキレン基は分岐状でも直鎖状でもよい。
15はヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基又はアルコキシシリル基を表す。
16は単結合、酸素原子又は硫黄原子を表す。
但し上記X11乃至X14において、これら基においてベンゼン環が含まれる場合、当該ベンゼン環は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基及びシアノ基から選ばれる同一又は相異なる1又は複数の置換基によって置換されていてもよい。)
【請求項2】
(C)架橋触媒をさらに含有する、請求項に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項3】
(B)成分のポリマーは重量平均分子量が1,000〜100,000である、請求項1又は請求項2に記載の硬化膜形成組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の硬化膜形成組成物を用いて得られる配向材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の硬化膜形成組成物から得られる硬化膜を使用して形成される位相差材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化膜形成組成物、配向材および位相差材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルを用いたテレビ等のディスプレイの分野においては、高性能化に向けた取り組みとして、3D画像を楽しむことができる3Dディスプレイの開発が進められている。3Dディスプレイでは、例えば、観察者の右目に右目用画像を視認させ、観察者の左目に左目用画像を視認させることにより、立体感のある画像を表示させることができる。
【0003】
3D画像を表示する3Dディスプレイの方式には多様なものがあり、専用のメガネを必要としない方式としては、レンチキュラレンズ方式およびパララックスバリア方式等が知られている。
そして、観察者がメガネを着用して3D画像を観察するディスプレイの方式の1つとしては、円偏光メガネ方式等が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
円偏光メガネ方式の3Dディスプレイの場合、液晶パネル等の画像を形成する表示素子の上に位相差材が配置されるのが通常である。この位相差材は、位相差特性の異なる2種類の位相差領域がそれぞれ複数、規則的に配置されており、パターニングされた位相差材を構成している。尚、以下、本明細書においては、このような位相差特性の異なる複数の位相差領域を配置するようにパターン化された位相差材をパターン化位相差材と称する。
【0005】
パターン化位相差材は、例えば、特許文献2に開示されるように、重合性液晶からなる位相差材料を光学パターニングすることで作製することができる。重合性液晶からなる位相差材料の光学パターニングは、液晶パネルの配向材形成で知られた光配向技術を利用する。すなわち、基板上に光配向性の材料からなる塗膜を設け、これに偏光方向が異なる2種類の偏光を照射する。そして、液晶の配向制御方向の異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材として光配向膜を得る。この光配向膜の上に重合性液晶を含む溶液状の位相差材料を塗布し、重合性液晶の配向を実現する。その後、配向された重合性液晶を硬化してパターン化位相差材を形成する。
【0006】
液晶パネルの光配向技術を用いた配向材形成では、利用可能な光配向性の材料として、側鎖にシンナモイル基およびカルコン基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂やポリイミド樹脂等が知られている。これらの樹脂は、偏光UV照射することにより、液晶の配向を制御する性能(以下、液晶配向性とも言う。)を示すことが報告されている(特許文献3〜特許文献5を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−232365号公報
【特許文献2】特開2005−49865号公報
【特許文献3】特許第3611342号公報
【特許文献4】特開2009−058584号公報
【特許文献5】特表2001−517719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者の検討によれば、側鎖にシンナモイル基やカルコン基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂は、位相差材の形成に適用した場合に、例えば液晶配向性や耐溶剤性などにおいて充分な特性が得られないことが判っている。特に、これらの樹脂に偏光UVを照射して配向材を形成し、その配向材を用いて重合性液晶からなる位相差材料の光学パターニングをするためには、大きな偏光UV露光量が必要となる。その偏光UV露光量は、通常の液晶パネル用の液晶を配向させるのに十分な偏光UV露光量(例えば、50mJ/cm程度)より格段に多くなる。
【0009】
上述の偏光UV露光量が多くなる理由として、位相差材形成の場合、液晶パネル用の液晶と異なり、重合性液晶が溶液の状態で用いられ、配向材の上に塗布されることが挙げられている。
【0010】
詳細には、側鎖にシンナモイル基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂等を用いて配向材を形成し、重合性液晶を配向させようとする場合、まずそのアクリル樹脂等において光二量化反応による光架橋が進行する。さらに重合性液晶溶液に対する耐性(溶剤耐性)が発現するように偏光照射を行う必要がある。
通常、液晶パネルの液晶を配向させるためには、光配向性の配向材の表面のみを二量化反応させればよい。しかし、上述のアクリル樹脂等の従来材料を用いて形成する配向材に溶剤耐性を発現させようとすると、配向材の内部にまで反応を進行させる必要がある。そのためにより多くの偏光露光量が必要となる、すなわち、従来の材料を用いた配向材の配向感度は非常に小さくなるという問題があった。
【0011】
また、上述の従来材料である樹脂にこのような溶剤耐性を発現させるため、架橋剤を添加する技術が知られている。しかし、架橋剤による熱硬化反応を行うと、形成された塗膜の内部において3次元架橋構造が形成されてしまい、上述したような置換基の光反応性(光反応効率)が低下することが知られている。これは配向感度が大きく低下することを意味し、このように従来材料に架橋剤を添加して使用しても、所望とする光配向性における効果を得ることができない。
【0012】
以上より、配向材の配向感度を向上させ、偏光UV露光量を低減できる光配向技術と、その配向材の形成に用いられる硬化膜形成組成物が求められている。そして、高効率にパターン化位相差材を提供することができる技術が求められている。
【0013】
本発明は、以上の知見や検討結果に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、優れた光反応効率を有するとともに耐溶剤性を備え、高感度で重合性液晶を配向させることができる配向材を提供するための硬化膜形成組成物を提供することである。
【0014】
そして、本発明の別の目的は、その硬化膜形成組成物から得られ、優れた光反応効率を有するとともに耐溶剤性を備え、高感度で重合性液晶を配向させることができる配向材とその配向材を用いて形成された位相差材を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、
(A)光配向性基とヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびアルコキシシリル基のうちのいずれかから選ばれる少なくとも一種の置換基とを有する化合物、及び
(B)(A)成分と熱反応可能な置換基を有し且つ自己架橋可能なポリマー
を含有することを特徴とする、硬化膜形成組成物に関する。
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基が光二量化または光異性化する構造の官能基であることが好ましい。
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基がシンナモイル基であることが好ましい。
本発明の第1の態様において、(A)成分の光配向性基がアゾベンゼン構造の基であることが好ましい。
本発明の第1の態様において、(A)成分と(B)成分のほかに(C)架橋触媒をさらに含有することが好ましい。
本発明の第1の態様において、(B)成分のポリマーは重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましい。
特に好適な第1の態様において、本発明の硬化膜形成組成物は、(A)光配向性基とヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびアルコキシシリル基のうちのいずれかから選ばれる少なくとも一種の置換基とを有する下記式[A−11]〜[A−15]で表される化合物、及び
(B)自己架橋反応を起こすことができ且つ(A)成分と熱反応可能な置換基であって、アルコキシメチルアミド基、ヒドロキシメチルアミド基、及びトリアルコキシシリル基からなる群から選択される架橋性置換基を有するポリマー
を含有することを特徴とする、硬化膜形成組成物である。
【化12】
(前記式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基を表す。
とAはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
11は単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、アミノ結合又はそれらの組み合わせから選ばれる1種又は2種以上の結合、或いは該1種又は2種以上の結合を介して、炭素原子数1乃至18のアルキレン、フェニレン、ビフェニレン又はそれらの組み合わせから選ばれる1乃至3の置換基が結合してなる構造であって、前記置換基は前記結合を介してそれぞれ複数個が連結してなる構造であってもよい。
12は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基又はシクロヘキシル基を表し、前記炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基及びシクロヘキシル基は、共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又は尿素結合を介して2種以上の基が結合してもよい。
13はヒドロキシ基、メルカプト基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、炭素原子数1乃至10のアルキルチオ基、フェノキシ基、ビフェニルオキシ基又はフェニル基を表す。
14は単結合、炭素原子数1乃至20のアルキレン基、2価の芳香族環基、又は、2価の脂肪族環基を表し、前記炭素原子数1乃至20のアルキレン基は分岐状でも直鎖状でもよい。
15はヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基又はアルコキシシリル基を表す。
16は単結合、酸素原子又は硫黄原子を表す。
但し上記X11乃至X14において、これら基においてベンゼン環が含まれる場合、当該ベンゼン環は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基及びシアノ基から選ばれる同一又は相異なる1又は複数の置換基によって置換されていてもよい。)
【0017】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の熱硬化膜形成組成物を用いて得られる配向材に関する。
【0018】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様の硬化膜形成組成物から得られる硬化膜を使用して形成される位相差材に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様によれば、優れた光反応効率と耐溶剤性を備え、高感度で重合性液晶を配向させることができる配向材を提供するための硬化膜形成組成物を提供することができる。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、優れた光反応効率と耐溶剤性を備え、高感度で重合性液晶を配向させることができる配向材を提供することができる。
【0021】
本発明の第3の態様によれば、高い効率にて光学パターニングが可能な位相差材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<硬化膜形成組成物>
本発明の硬化膜形成組成物は、(A)光配向性基とヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびアルコキシシリル基のうちのいずれかから選ばれる少なくとも一種の置換基を有する化合物、(B)(A)成分と熱反応可能な置換基を有し且つ自己架橋可能なポリマーとを含有する。本発明の硬化膜形成組成物は、(A)成分、(B)成分に加えて、さらに、(C)成分として架橋触媒を含有することができる。そして、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
【0023】
以下、各成分の詳細を説明する。
【0024】
<(A)成分>
本発明の硬化膜形成組成物において、(A)成分は光配向性基、並びに、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびアルコキシシリル基のうちのいずれかから選ばれる少なくとも一種の基を有する化合物とすることができる(以下、(A)成分を“(低分子)光配向成分”とも称する。)。
尚、本発明において、光配向性基とは、一般に光照射によって配向する性質を発揮する官能基を指し、代表的には光二量化または光異性化する構造部位の官能基を言う。その他の光配向性基としては、たとえば光フリース転位反応を起こす官能基(例示化合物:安息香酸エステル化合物など)、光分解反応を起こす基(例示化合物;シクロブタン環など)などが挙げられる。
【0025】
(A)成分の化合物が光配向性基として有することのできる光二量化する構造部位とは、光照射により二量体を形成する部位であり、その具体例としては、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基等が挙げられる。これらのうち可視光領域での透明性の高さ、光二量化反応性の高さからシンナモイル基が好ましい。
【0026】
また、(A)成分の化合物が光配向性基として有することのできる光異性化する構造部位とは、光照射によりシス体とトランス体とに変わる構造部位を指し、その具体例としてはアゾベンゼン構造、スチルベン構造等からなる部位が挙げられる。これらのうち反応性の高さからアゾベンゼン構造が好ましい。
【0027】
光配向性基、並びに、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびアルコキシシリル基のうちのいずれかから選ばれる少なくとも一種の置換基を有する化合物は、例えば、下記式[A−11]〜[A−15]で表される化合物である。
【0028】
【化1】
【0029】
前記式中、AとAはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
11は単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、アミノ結合又はそれらの組み合わせから選ばれる1種又は2種以上の結合、或いは該1種又は2種以上の結合を介して、炭素原子数1乃至18のアルキレン、フェニレン、ビフェニレン又はそれらの組み合わせから選ばれる1乃至3の置換基が結合してなる構造であって、前記置換基は前記結合を介してそれぞれ複数個が連結してなる構造であってもよい。
12は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基又はシクロヘキシル基を表す。その際、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基及びシクロヘキシル基は、共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又は尿素結合を介して2種以上の基が結合してもよい。
13はヒドロキシ基、メルカプト基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、炭素原子数1乃至10のアルキルチオ基、フェノキシ基、ビフェニルオキシ基又はフェニル基を表す。
14は単結合、炭素原子数1乃至20のアルキレン基、2価の芳香族環基、又は、2価の脂肪族環基を表す。ここで炭素原子数1乃至20のアルキレン基は分岐状でも直鎖状でもよい。
15はヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基又はアルコキシシリル基を表す。
16は単結合、酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0030】
なお、これらの置換基においてベンゼン環が含まれる場合、当該ベンゼン環は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基及びシアノ基から選ばれる同一又は相異なる1又は複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0031】
上記式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基を表す。
【0032】
(A)成分である光配向性基及びヒドロキシ基を有する化合物の具体例として、例えば上記式[A11]〜[A15]で表される化合物並びに該式以外の化合物としては、例えば、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル、3−メトキシ−4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−ヒドロキシメチルオキシけい皮酸メチルエステル、4−ヒドロキシけい皮酸メチルエステル、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−ヒドロキシメチルオキシけい皮酸エチルエステル、4−ヒドロキシけい皮酸エチルエステル、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−ヒドロキシメチルオキシけい皮酸フェニルエステル、4−ヒドロキシけい皮酸フェニルエステル、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−ヒドロキシメチルオキシけい皮酸ビフェニルエステル、4−ヒドロキシけい皮酸ビフェニルエステル、けい皮酸8−ヒドロキオクチルエステル、けい皮酸6−ヒドロキシヘキシルエステル、けい皮酸4−ヒドロキシブチルエステル、けい皮酸3−ヒドロキシプロピルエステル、けい皮酸2−ヒドロキシエチルエステル、けい皮酸ヒドロキシメチルエステル、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)アゾベンゼン、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)アゾベンゼン、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)アゾベンゼン、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)アゾベンゼン、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)アゾベンゼン、4−ヒドロキシメチルオキシアゾベンゼン、4−ヒドロキシアゾベンゼン、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)カルコン、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)カルコン、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)カルコン、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)カルコン、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)カルコン、4−ヒドロキシメチルオキシカルコン、4−ヒドロキシカルコン、4’−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)カルコン、4’−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)カルコン、4’−(4−ヒドロキシブチルオキシ)カルコン、4’−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)カルコン、4’−(2−ヒドロキシエチルオキシ)カルコン、4’−ヒドロキシメチルオキシカルコン、4’−ヒドロキシカルコン、7−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)クマリン、7−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)クマリン、7−(4−ヒドロキシブチルオキシ)クマリン、7−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)クマリン、7−(2−ヒドロキシエチルオキシ)クマリン、7−ヒドロキシメチルオキシクマリン、7−ヒドロキシクマリン、6−ヒドロキシオクチルオキシクマリン、6−ヒドロキシヘキシルオキシクマリン、6−(4−ヒドロキシブチルオキシ)クマリン、6−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)クマリン、6−(2−ヒドロキシエチルオキシ)クマリン、6−ヒドロキシメチルオキシクマリン、6−ヒドロキシクマリン、4−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−ヒドロキシベンゾイル]けい皮酸メチルエステル、4−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−ヒドロキシベンゾイル]けい皮酸エチルエステル、4−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル、4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル、4−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル、4−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル、4−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル、4−[4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル、4−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−ヒドロキシベンゾイル]けい皮酸フェニルエステル、4−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−[4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−[4−ヒドロキシベンゾイル]けい皮酸ビフェニルエステル、4−ベンゾイルけい皮酸8−ヒドロキオクチルエステル、4−ベンゾイルけい皮酸6−ヒドロキシヘキシルエステル、4−ベンゾイルけい皮酸4−ヒドロキシブチルエステル、4−ベンゾイルけい皮酸3−ヒドロキシプロピルエステル、4−ベンゾイルけい皮酸2−ヒドロキシエチルエステル、4−ベンゾイルけい皮酸ヒドロキシメチルエステル、4−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4−(4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル)カルコン、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)カルコン、4’−[4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4’−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4’−[4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4’−[4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4’−[4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)ベンゾイル]カルコン、4’−(4−ヒドロキシメチルオキシベンゾイル)カルコン、4’−(4−ヒドロキシベンゾイル)カルコン等が挙げられる。
【0033】
(A)成分である、光配向性基及びカルボキシル基を有する化合物の具体例としては、けい皮酸、フェルラ酸、4−メトキシけい皮酸、3,4−ジメトキシけい皮酸、クマリン−3−カルボン酸、4−(N,N−ジメチルアミノ)けい皮酸等が挙げられる。
【0034】
(A)成分である、光配向性基及びアミノ基を有する化合物の具体例としては、4−アミノけい皮酸メチルエステル、4−アミノけい皮酸エチルエステル、3−アミノけい皮酸メチルエステル、3−アミノけい皮酸エチルエステル等が挙げられる。
【0035】
(A)成分である、光配向性基とアルコキシシリル基とを有する化合物の具体例としては、4−(3−トリメトキシシリルプロピルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(3−トリエトキシシリルプロピルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(3−トリメトキシシリルプロピルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(3−トリエトキシシリルプロピルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(3−トリメトキシシリルヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(3−トリエトキシシリルヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(3−トリメトキシシリルヘキシルオキシ)けい皮酸エチルエステル及び4−(3−トリエトキシシリルヘキシルオキシ)けい皮酸エチルエステル等が挙げられる。
【0036】
(A)成分である低分子量の光配向成分は、以上の具体例を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
中でも、(A)成分である低分子光配向成分は、光配向性基およびヒドロキシ基を有する化合物であることが特に好ましい。光配向性基およびヒドロキシ基を有する化合物は、本発明の硬化膜形成組成物を用いた硬化膜に光配向性を付与するとともに、配向材として用いられた場合に重合性液晶の層との密着性の向上において、特に有効となる。
【0038】
また、(A)成分である低分子光配向成分が、光配向性基およびヒドロキシ基を有する化合物である場合、(A)成分として、分子内に、光配向性基を2個以上および/またはヒドロキシ基を2個以上有する化合物を用いることが可能である。具体的には、(A)成分として、分子内に1個のヒドロキシ基とともに2個以上の光配向性基を有する化合物や、分子内に1個の光配向性基とともに2個以上のヒドロキシ基を有する化合物や、分子内に光配向性基とヒドロキシ基をそれぞれ2個以上有する化合物を用いることが可能である。例えば、分子内に光配向性基とヒドロキシ基をそれぞれ2個以上有する化合物については、下記式で表される化合物を例示することができる。
【0039】
【化2】
【0040】
このような化合物を適宜選択することにより、(A)成分である低分子光配向成分の分子量を所望範囲の値に制御することが可能となる。すなわち本発明の硬化膜形成組成物を用い、本発明の硬化膜を形成するためには、加熱硬化が必要となるが、その加熱を行う際に、(A)成分である低分子光配向成分が昇華するのを抑制することができる。
【0041】
尚、本発明の硬化膜形成組成物における(A)成分の化合物としては、光配向性基とヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびアルコキシシリル基のうちのいずれかから選ばれる少なくとも一種の置換基とを有する、複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0042】
<(B)成分>
本発明の硬化膜形成組成物において、(B)成分は(A)成分と熱反応可能な置換基を有し且つ自己架橋可能なポリマー(以下特定(共)重合体ともいう)である。
詳細には、(B)成分は特定架橋性置換基、より具体的には自己架橋反応を起こすことが可能であって、そして(A)成分の昇華温度より低温で(A)成分と熱反応する架橋性置換基を有するポリマーである。こうしたポリマーを(B)成分として採用することにより、(B)成分は自己架橋反応を起こすとともに、(A)成分の昇華温度より低温で(A)成分と反応(熱反応)し、(A)成分が昇華するのを抑制することができる。そして、本発明の硬化膜形成組成物は、硬化膜として、上述したように、置換基の光反応効率の高い配向材を形成することができる。
【0043】
(B)成分のポリマーが含有する好ましい特定架橋性置換基としては、(C1−10アルコキシ)−CH−NH−C(=O)−基等のアルコキシメチルアミド基、ヒドロキシメチルアミド基、(C1−5アルコキシ)Si−X−基(ここで、XはC1−10アルキレンまたはフェニレン等のスペーサーを表す)等のトリアルコキシシリル基等が挙げられる。かかる特定架橋性置換基の含有量は、(B)成分のポリマーにおける繰り返し単位1単位あたり、0.2〜1個であることが好ましく、配向材の耐溶剤性という観点から、0.4〜1個であることがさらに好ましい。
【0044】
(B)成分のポリマーに特定架橋性置換基を導入するには、前述の特定架橋性置換基を有するモノマーを(共)重合させればよい。そのような特定架橋性置換基を有するモノマーとしては、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドや、(メタ)アクリル酸の(C1−5アルコキシ)Si−X−エステル(ここでXは前述と同じ意味を表す)が挙げられる。N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドを用いて得られるポリマーとしては、例えば、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物またはメタクリルアミド化合物を使用し、所望によりさらに該モノマーと共重合可能なモノマー(後述参照)を使用して製造されるポリマーを用いることができる。なお(メタ)アクリルアミドとはメタクリルアミドとアクリルアミドの双方を意味する。
【0045】
そのようなポリマーとしては、例えば、ポリ(N−ブトキシメチルアクリルアミド)、N−ブトキシメチルアクリルアミドとスチレンとの共重合体、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミドとメチルメタクリレートとの共重合体、N−エトキシメチルメタクリルアミドとベンジルメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0046】
また、(B)成分のポリマーとしては、トリアルコキシシリル基を有する化合物、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシシラン等の、(メタ)アクリル酸の(C1−5アルコキシ)Si−X−エステル(ここでXは前述と同じ意味を表す)を特定架橋性置換基を有するモノマーとして使用し、そして所望によりさらに該モノマーと共重合可能なモノマー(後述参照)を使用して製造されるポリマーも用いることができる。
そのようなポリマーとしては、例えば、ポリ(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとスチレンとの共重合体、ポリ(3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランとメチルメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0047】
本発明の硬化膜形成組成物に用いる(B)成分のポリマー(特定(共)重合体)において、前述したとおり、特定架橋性置換基を有するモノマーと共重合可能なモノマー(以下非架橋性置換基を有するモノマーともいう)を併用することができる。
【0048】
前記非架橋性置換基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、メタクリルアミド化合物、アクリロニトリル、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
以下、上記モノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0049】
上述したアクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、グリシジルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、および、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0050】
上述したメタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、γ−ブチロラクトンメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、および、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0051】
上述したビニル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、及び、3−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等が挙げられる。
【0052】
上述したスチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、および、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0053】
上述したマレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、および、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
上述したアクリルアミド化合物としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、及びN,N−ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
上述したメタクリルアミド化合物としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、及びN,N−ジメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
なお、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる置換基を有するモノマーも、本発明の効果を損なわない限り(B)成分の共重合可能なモノマーとして併用することができるが、(A)成分との熱反応を効率的に行う観点からは、むしろそのようなモノマー由来の繰り返し単位は(B)成分に含まれない方が好ましく、含まれていたとしても、(B)成分のポリマーにおける繰り返し単位1単位あたり0.1単位未満であることが好ましい。
【0054】
本発明の硬化膜形成組成物に用いる(B)成分のポリマー:特定(共)重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、前述の特定架橋性置換基を有するモノマー、所望により非架橋性置換基を有するモノマーおよび重合開始剤等を共存させた溶剤中において、50℃〜110℃の温度下で重合反応させて得られる。その際、用いられる溶剤は、特定架橋性置換基を有するモノマー、所望により用いられる非架橋性置換基を有するモノマーおよび重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する溶剤に記載する溶剤が挙げられる。
このようにして得られ(B)成分のポリマーである特定(共)重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態であり、本発明において(B)成分の溶液としてそのまま使用することができる。
【0055】
また、上記のようにして得られた(B)成分のポリマーである特定(共)重合体の溶液を、ジエチルエーテルや水等の撹拌下に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後、常圧又は減圧下で、常温あるいは加熱乾燥することで、特定(共)重合体の粉体とすることができる。このような操作により、特定(共)重合体と共存する重合開始剤や未反応モノマーを除去することができ、その結果、精製した特定(共)重合体の粉体が得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解して、上記の操作を繰り返し行えばよい。
【0056】
本発明の硬化膜形成組成物においては、(B)成分のポリマーである上記特定(共)重合体の粉体をそのまま用いてもよく、あるいはその粉体を、たとえば後述する溶剤に再溶解して溶液の状態として用いてもよい。
【0057】
また、本発明において、(B)成分のポリマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができ、すなわち複数種の特定(共)重合体の混合物で使用することができる。
【0058】
このような(B)成分のポリマーの重量平均分子量は、1,000〜500,000であり、好ましくは、1,000〜200,000であり、より好ましくは1,000〜100,000であり、さらに好ましくは2,000〜50,000である。
【0059】
<C成分>
本発明の硬化膜形成組成物は、上述した(A)成分、(B)成分およびに加え、所望により(C)成分として架橋触媒を含有することができる。
【0060】
(C)成分の架橋触媒としては、例えば、酸または熱酸発生剤が挙げられる。この(C)成分である架橋触媒は、本発明の硬化膜形成組成物を用いた硬化膜の形成において、熱硬化反応の促進に有効となる。
【0061】
(C)成分として酸または熱酸発生剤を用いる場合、(C)成分は、スルホン酸基含有化合物、塩酸またはその塩、プリベークまたはポストベーク時に熱分解して酸を発生する化合物、すなわち温度80℃〜250℃で熱分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。
【0062】
そのような化合物としては、例えば、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、m−キシレン−2−スルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロ(2−エトキシエタン)スルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタン−1−スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸またはその水和物や塩等が挙げられる。
【0063】
また、熱により酸を発生する化合物としては、例えば、ビス(トシルオキシ)エタン、ビス(トシルオキシ)プロパン、ビス(トシルオキシ)ブタン、p−ニトロベンジルトシレート、o−ニトロベンジルトシレート、1,2,3−フェニレントリス(メチルスルホネート)、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p−トルエンスルホン酸モルフォニウム塩、p−トルエンスルホン酸エチルエステル、p−トルエンスルホン酸プロピルエステル、p−トルエンスルホン酸ブチルエステル、p−トルエンスルホン酸イソブチルエステル、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸フェネチルエステル、シアノメチルp−トルエンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエチルp−トルエンスルホネート、2−ヒドロキシブチルp−トシレート、N−エチル−4−トルエンスルホンアミド、および下記式[PAG−1]〜式[PAG−41]で表される化合物等を挙げることができる。
【0064】
【化3】
【0065】
【化4】
【0066】
【化5】
【0067】
【化6】
【0068】
【化7】
【0069】
【化8】
【0070】
【化9】
【0071】
本発明の硬化膜形成組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分である光配向性基とヒドロキシ基等とを有する化合物と(B)成分のポリマーとの合計量の100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜10質量部、より好ましくは0.05質量部〜8質量部、さらに好ましくは0.1質量部〜6質量部である。(C)成分である架橋触媒の含有量を0.01質量部以上とすることで、充分な熱硬化性と溶剤耐性を付与することができ、露光に対する高い感度をも付与することができる。また、10質量部以下とすることで、硬化膜形成組成物の保存安定性を良好にすることができる。
【0072】
<溶剤>
本発明の硬化膜形成組成物は、主として溶剤に溶解した溶液状態で用いられ得る。その際に使用する溶剤は、(A)成分および(B)成分、そのほか必要に応じて(C)成分および後述するその他添加剤を溶解できればよく、その種類および構造などは特に限定されるものでない。
【0073】
溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ブタノン、3−メチル−2−ペンタノン、2−ペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、およびN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0074】
これらの溶剤は、1種単独でまたは2種以上の組合せで使用することができる。
【0075】
<その他添加剤>
さらに、本発明の硬化膜形成組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、増感剤、シランカップリング剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0076】
例えば、増感剤は、本発明の硬化膜形成組成物を用いて熱硬化膜を形成した後、光反応を促進することにおいて有効である。
【0077】
その他添加剤の一例であるの増感剤としては、ベンゾフェノン、アントラセン、アントラキノン、チオキサントン等およびその誘導体、並びにニトロフェニル化合物等が挙げられる。これらのうち、ベンゾフェノン誘導体およびニトロフェニル化合物が好ましい。好ましい化合物の具体例としてN,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ニトロフルオレン、2−ニトロフルオレノン、5−ニトロアセナフテン、4−ニトロビフェニル、4−ニトロけい皮酸、4−ニトロスチルベン、4−ニトロベンゾフェノン、5−ニトロインドール等が挙げられる。特に、ベンゾフェノンの誘導体であるN,N−ジエチルアミノベンゾフェノンが好ましい。
【0078】
これらの増感剤は上記のものに限定されるものではない。また、増感剤は単独でまたは2種以上の化合物を組み合わせて併用することが可能である。
【0079】
本発明の硬化膜形成組成物における増感剤の使用割合は、(A)成分の光配向性基とヒドロキシ基等とを有する化合物と(B)成分のポリマーである特定(共)重合体との合計質量の100質量部に対して0.1質量部〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部〜10質量部である。この割合が過小である場合には、増感剤としての効果を充分に得られない場合があり、過大である場合には透過率の低下および塗膜の荒れが生じることがある。
【0080】
<硬化膜形成組成物の調製>
本発明の硬化膜形成組成物は、(A)成分である低分子光配向成分と、(B)成分である(A)成分と熱反応可能な置換基を有し且つ自己架橋可能なポリマーとが溶媒に溶解したものである。さらに、本発明の硬化膜形成組成物は、(C)成分として架橋触媒を含有することができる。そして、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
【0081】
(A)成分と(B)成分の配合比(含有比)は、質量比で5:95〜60:40が好ましい。(B)成分の含有量が過大の場合は液晶配向性が低下し易く、過小の場合は溶剤耐性が低下することにより配向性が低下し易い。
【0082】
本発明の硬化膜形成組成物の好ましい例は、以下のとおりである。
[1]:(A)成分と(B)成分の配合比が質量比で5:95〜60:40であり、(A)成分と(B)成分の他に溶剤を含有する硬化膜形成組成物。
[2]:(A)成分と(B)成分の配合比が質量比で5:95〜60:40であり、(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、0.01質量部〜10質量部の(C)成分、溶剤を含有する硬化膜形成組成物。
【0083】
本発明の硬化膜形成組成物を溶液として用いる場合の配合割合、調製方法等を以下に詳述する。
本発明の硬化膜形成組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り、特に限定されるものではないが、1質量%〜80質量%であり、好ましくは3質量%〜60質量%であり、より好ましくは5質量%〜40質量%である。ここで、固形分とは、硬化膜形成組成物の全成分から溶剤を除いたものをいう。
【0084】
本発明の硬化膜形成組成物の調製方法は、特に限定されない。調製法としては、例えば、溶剤に溶解した(B)成分の溶液に(A)成分、さらには所望により(C)成分を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法、或いは、この調製法の適当な段階において、必要に応じてその他添加剤をさらに添加して混合する方法が挙げられる。
【0085】
本発明の硬化膜形成組成物の調製においては、前述したように、溶剤中の重合反応によって得られる特定(共)重合体((B)成分)の溶液をそのまま使用することができる。この場合、例えば、N−ブトキシメチルアクリルアミドを重合させて得られる(B)成分の溶液に、前記と同様に(A)成分および(C)成分を入れて均一な溶液とする。この際に、濃度調整を目的としてさらに溶剤を追加投入してもよい。このとき、(B)成分の製造過程で用いられる溶剤と、硬化膜形成組成物の濃度調整に用いられる溶剤とは同一であってもよく、また異なってもよい。
【0086】
また、調製された硬化膜形成組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0087】
<硬化膜、配向材および位相差材>
本発明の硬化膜形成組成物は、その溶液を基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属、例えば、アルミニウム、モリブデン、クロムなどが被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)やフィルム(例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム等の樹脂フィルム)等の上に、バーコート、回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布、印刷などによって塗布して塗膜を形成し、その後、ホットプレートまたはオーブン等で加熱乾燥することにより、硬化膜を形成することができる。
【0088】
加熱乾燥の条件としては、液晶配向材として硬化膜を使用する際、該硬化膜(配向材)の成分が、その上に塗布される重合性液晶溶液に溶出しない程度に、自己架橋等の架橋反応が進行すればよく、例えば、温度60℃〜200℃、時間0.4分間〜60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度および加熱時間が採用される。加熱温度および加熱時間は、好ましくは70℃〜160℃、0.5分間〜10分間である。
【0089】
本発明の硬化膜形成組成物を用いて形成される硬化膜の膜厚は、例えば、0.05μm〜5μmであり、使用する基板の段差や光学的、電気的性質を考慮し適宜選択することができる。
【0090】
このようにして作製された硬化膜は、偏光UV照射を行うことで配向材、すなわち、重合性液晶等の液晶性を有する化合物を配向させる部材として機能させることができる。
【0091】
偏光UVの照射方法としては、通常150nm〜450nmの波長の紫外光〜可視光が用いられ、室温または加熱した状態で、垂直または斜め方向から直線偏光を照射することによって行われる。
【0092】
本発明の硬化膜組成物から形成された配向材は耐溶剤性および耐熱性を有しているため、この配向材上に、重合性液晶溶液からなる位相差材料を塗布した後、その液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とし、配向材上で配向させる。そして、配向状態となった位相差材料をそのまま硬化させ、光学異方性を有する層として位相差材を形成することができる。
【0093】
位相差材料としては、例えば、重合性基を有する液晶モノマーおよびそれを含有する組成物等が用いられる。そして、配向材を形成する基板がフィルムである場合には、本発明の位相差材を有するフィルムは、位相差フィルムとして有用である。このような位相差材を形成する位相差材料は、液晶状態となって、配向材上で、水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向状態をとるものがあり、それぞれ必要とされる位相差特性に応じて使い分けることが出来る。
【0094】
また、3Dディスプレイに用いられるパターン化位相差材を製造する場合には、本発明の硬化膜組成物から上記の方法で形成された硬化膜に、ラインアンドスペースパターンのマスクを介して所定の基準から、例えば、+45度の向きで偏光UV露光し、次いで、マスクを外してから−45度の向きで偏光UVを露光し、液晶の配向制御方向の異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材を得る。その後、重合性液晶溶液からなる位相差材料を塗布した後、液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とする。液晶状態となった重合性液晶は、2種類の液晶配向領域が形成された配向材上で配向し、各液晶配向領域にそれぞれ対応する配向状態を形成する。そして、そのような配向状態が実現してなる位相差材料をそのまま硬化させ、上述の配向状態を固定化し、位相差特性の異なる2種類の位相差領域がそれぞれ複数、規則的に配置された、パターン化位相差材を得ることができる。
【0095】
また、上記のようにして形成された、本発明の配向材を有する2枚の基板を用い、スペーサを介して両基板上の配向材が互いに向かい合うように張り合わせた後、それらの基板の間に液晶を注入して、液晶が配向した液晶表示素子とすることもできる。
そのため、本発明の硬化膜形成組成物は、各種位相差材(位相差フィルム)や液晶表示素子等の製造に好適に用いることができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
略号
[実施例で用いる略記号]
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
<光配向性基およびヒドロキシ基を有する化合物>
CIN1:4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル
CIN2:3−メトキシ−4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル
CIN11:4−[4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ベンゾイル]けい皮酸ターシャリーブチルエステル
<特定(共)重合体(アクリル(共)重合体) 原料>
BMAA:N−ブトキシメチルアクリルアミド
MPTS:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
MAA:メタクリル酸
MMA:メタクリル酸メチル
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
AAM:アクリルアミド
CIN: 4−(6−メタクリルオキシヘキシル−1−オキシ)けい皮酸メチルエステル
AIBN:α,α’−アゾビスイソブチロニトリル
<架橋触媒>
PTSA:p−トルエンスルホン酸一水和物
<架橋剤>
HMM:ヘキサメトキシメチルメラミン
<溶剤>
PM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CHN:シクロヘキサノン
【0097】
以下の合成例に従い得られたアクリル共重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、日本分光(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)カラムKF803LおよびKF804L)を用い、溶出溶媒テトラヒドロフランを流量1mL/分でカラム中に(カラム温度40℃)流して溶離させるという条件で測定した。尚、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)および重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表した。
【0098】
<合成例1>
BMAA100.0g、重合触媒としてAIBN 4.2gをPM 193.5gに溶解し、90℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度35質量%)(P1)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは2,672、Mwは3,895であった。
【0099】
<合成例2>
BMAA100.0g、重合触媒としてAIBN 2.1gをPM 408.4gに溶解し、90℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P2)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは10,311、Mwは25,245であった。
【0100】
<合成例3>
MPTS 100.0g、重合触媒としてAIBN 3.0gをPM 193.5gに溶解し、90℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度20質量%)(P3)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは4,061、Mwは5,721であった。
【0101】
<合成例4>
CIN 42.0g、HEMA 18.0g、重合触媒としてAIBN1.3gをCHN 166.8gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度27質量%)を得た(P4)。得られたアクリル共重合体のMnは8,500、Mwは16,500であった。
【0102】
<合成例5>
MAA 3.5g、MMA 7.0g、HEMA 7.0g、重合触媒としてAIBN 0.5gをPM 53.9gに溶解し、70℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度25質量%)(P5)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは10,300、Mwは24,600であった。
【0103】
<合成例6>
BMAA 60.0g、AAM 40.0g、重合触媒としてAIBN 4.8gをPM 313.9gに溶解し、85℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度25質量%)(P6)を得た。得られたアクリル共重合体のMnは3,560、Mwは4,820であった。
【0104】
<合成例7> CIN11の合成
(合成例7−1)CIN11の前駆体CIN11−1の合成
【化10】
1L四口フラスコに、4−ブロモ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンを80.0g、N,N−ジメチルアセトアミドを500mL、アクリル酸tert―ブチルを55.4g、トリブチルアミンを160.2g、酢酸パラジウムを1.29g、トリ(o−トリル)ホスフィンを3.50g加えて、100℃に加熱しながら撹拌した。反応終了後、2Lの酢酸エチルに反応系を注ぎ、1N−塩酸水溶液、飽和食塩水を用いて抽出を行った。抽出した有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、無水硫酸マグネシウムを濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去し、109.4gの目的物CIN11−1(赤褐色粘体)を得た。得られたCIN11−1は精製せずに次の反応に用いた。
【0105】
(合成例7−2)CIN11の合成
【化11】
2L四口フラスコに、CIN11−1を93.4g、N,N−ジメチルホルムアミドを1L、6−クロロ−1−ヘキサノールを39.3g、炭酸カリウムを119.4g、ヨウ化カリウムを4.8g加えて、100℃に加熱しながら撹拌した。反応終了後、5Lの水に反応系を注ぎ、1N−塩酸水溶液で中和を行い、酢酸エチルを用いて抽出を行った。抽出した有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、無水硫酸マグネシウムを濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去を行った。残渣をイソプロパノール/ヘキサン=1/10を用いて再結晶を行い、CIN11(黄土色固体)を113.8g得た。目的物のH−NMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた固体が、目的のCIN11であることを確認した。
1H NMR (400 MHz,[D6]-DMSO):δ7.86-7.88 (d,2H), 7.73-7.75 (d,2H), 7.69-7.71 (d,2H), 7.62-7.66 (d,1H), 7.08-7.10 (d,2H), 6.65-6.69 (d,1H), 4.35-4.37 (t,1H), 4.06-4.09 (t,2H), 3.37-3.42 (q,2H), 1.73-1.77 (m,2H), 1.50 (s,9H), 1.37-1.46 (m,6H)
【0106】
<実施例1〜7>
表1に示す組成にて実施例1〜7の各硬化膜形成組成物を調製し、それぞれについて、配向感度、パターン形成性、透過率の評価を行った。
【0107】
【表1】
【0108】
<比較例1〜3>
(B)成分として(A)成分と熱反応可能な置換基を有し且つ自己架橋可能なポリマーの代わりに、アクリル共重合体P4、P5又はHMMを使用し、表2に示す組成にて比較例1〜3の各硬化膜形成組成物を調製し、それぞれについて、配向感度、パターン形成性、透過率の評価を行った。
【0109】
【表2】
【0110】
[配向感度の評価]
実施例1〜7および比較例1〜3の各硬化膜形成組成物を、無アルカリガラス上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度140℃で120秒間、ホットプレート上で加熱乾燥を行い、硬化膜を形成した。この硬化膜に313nmの直線偏光を垂直に照射した。露光後の基板上に、メルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。このフィルムを300mJ/cmで露光し、位相差材を作製した。
作製した基板上の位相差材を一対の偏光板で挟み込み、位相差材における位相差特性の発現状況を観察し、配向材が液晶配向性を示すために必要な偏光UVの露光量(mJ/cm)を配向感度として評価した(最大偏光UV露光量:50mJ/cmにて実施)。
【0111】
[パターン形成性の評価]
実施例1〜7および比較例1〜3の各硬化膜形成組成物を、無アルカリガラス上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度140℃で120秒間、ホットプレート上で加熱乾燥を行い、硬化膜を形成した。この硬化膜に100μmのラインアンドスペースマスクを介し、313nmの直線偏光を40mJ/cm垂直に照射した。マスクを取り外し、基板を90度回転させた後、313nmの直線偏光を20mJ/cm垂直に照射することにより、液晶の配向制御方向が90度異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材を得た。
この基板上の配向材の上に、メルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。この基板上の塗膜を300mJ/cmで露光し、パターン化位相差材を作製した。
作製した基板上のパターン化位相差材を、偏光顕微鏡を用いて観察し、配向欠陥なく位相差パターンが形成されているものを○、配向欠陥が見られるものを×として評価した。
【0112】
[光透過率(透明性)の評価]
実施例1〜7の各硬化膜形成組成物を、石英基板上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回塗布した後、温度180℃で120秒間ホットプレート上において加熱乾燥ベークを行い、膜厚300nmの硬化膜を形成した。膜厚はFILMETRICS社製 F20を用いて測定した。この硬化膜を紫外線可視分光光度計((株)島津製作所製SHIMADZU UV−2550型番)を用いて波長400nmの光に対する透過率を測定した。
【0113】
[評価の結果]
以上の評価を行った結果を表3に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
実施例1〜7は、いずれも10〜20mJ/cmという少ない露光量で液晶配向性を示し、すなわち高い配向感度を有し、そして光学パターニングを行うことができた。さらに、高い透明性を示した。
一方、特定架橋性置換基を有する化合物を使用していない比較例1、2および特定架橋性置換基を有するが低分子化合物である比較例3は、いずれも露光量50mJ/cmでは液晶配向性を示さず、すなわち配向感度が非常に低く、光学パターニングを行うことは困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明による硬化膜形成組成物は、液晶表示素子の液晶配向膜や、液晶表示素子に内部や外部に設けられる光学異方性フィルムを形成するための配向材として非常に有用であり、特に、3Dディスプレイのパターン化位相差材の形成材料として好適である。さらに、薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子や有機EL素子などの各種ディスプレイにおける保護膜、平坦化膜および絶縁膜などの硬化膜を形成する材料、特に、TFT型液晶素子の層間絶縁膜、カラーフィルタの保護膜または有機EL素子の絶縁膜などを形成する材料としても好適である。