特許第6372204号(P6372204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6372204
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】金属錯体およびそれを用いた発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20180806BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180806BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C07F15/00 ECSP
   H05B33/14 B
   C09K11/06 660
【請求項の数】8
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2014-140238(P2014-140238)
(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公開番号】特開2015-86215(P2015-86215A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2017年5月22日
(31)【優先権主張番号】特願2013-197918(P2013-197918)
(32)【優先日】2013年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡村 玲
(72)【発明者】
【氏名】浅田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】石井 佑典
(72)【発明者】
【氏名】大内 一栄
【審査官】 水野 浩之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−036388(JP,A)
【文献】 特開2012−131995(JP,A)
【文献】 特開2008−179617(JP,A)
【文献】 特表2013−512227(JP,A)
【文献】 特表2005−521210(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/073440(WO,A1)
【文献】 特許第5867650(JP,B2)
【文献】 HOHENLEUTNER, Andress, et al.,Advanced Functional Materials,2012年,22(16),pp. 3406-3413
【文献】 LIANG, Bo, et al.,Advanced Functional Materials,2007年,17(17),pp. 3580-3589
【文献】 PU, Yong-Jin, et al.,Organic Electronics,2011年,12(12),pp. 2103-2110
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される金属錯体。
【化1】
[式(1)中、
は、1、2または3を表す。
−G−Aは、アニオン性の2座配位子を表す。AおよびAは、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子または窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。Gは、単結合、または、AおよびAとともに2座配位子を構成する原子団を表す。A−G−Aが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
およびmは、それぞれ独立に、0または1を表す。
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R、R、R、R、RおよびRが複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。RとRとが結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく、RとRとが結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく、RとRとが結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
ArおよびArは、それぞれ独立に、フェニル基を表し、当該基は置換基を有していてもよい。ArおよびArが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
ArおよびArは、それぞれ独立に、フェニル基を表し、当該基は置換基を有していてもよい。ArおよびArが複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
およびArは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。AおよびArが複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar、ArおよびArが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
下記式(1a)で表される、請求項1に記載の金属錯体。
【化2】
[式(1a)中、
、R、R、R、R、R、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、A、A、G、m、mおよびn1は、前記と同じ意味を表す。]
【請求項3】
前記R、R、R、R、RおよびRが、水素原子である、請求項1または2に記載の金属錯体。
【請求項4】
前記mが、0または1であり、前記mが、0である、請求項3に記載の金属錯体。
【請求項5】
前記nが、3である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属錯体と、
下記式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物とを含有する組成物。
【化3】
[式(Y)中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属錯体と、
正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料、酸化防止剤および溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料とを含有する組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属錯体を用いて得られる発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体、該金属錯体を含有する組成物および該金属錯体を用いて得られる発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の発光層に用いる発光材料として、三重項励起状態からの発光を示す燐光発光性化合物が種々検討されている。このような燐光発光性化合物としては、中心金属がイリジウム原子である金属錯体が数多く検討されている。発光素子の用途としては、ディスプレイおよび照明が挙げられ、青色発光を示す燐光発光性化合物、緑色発光を示す燐光発光性化合物、および、赤色発光を示す燐光発光性化合物のそれぞれについて、研究開発が盛んに行われている。赤色発光を示す燐光発光性化合物としては、例えば、特許文献1および2では、トリアジンを有する配位子を有する金属錯体(例えば、下記式で表される赤色燐光発光性化合物)が提案されている。
【0003】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−179617号公報
【特許文献2】特開2011−105701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の金属錯体を用いて製造される発光素子は、駆動初期の輝度寿命が必ずしも十分ではなかった。
【0006】
そこで本発明は、駆動初期の輝度寿命に優れる発光素子の製造に有用な金属錯体を提供することを目的とする。本発明はまた、該金属錯体を含有する組成物および該金属錯体を用いて得られる発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第一に、下記式(1)で表される金属錯体を提供する。
【0008】
【化2】
[式(1)中、
は、1、2または3を表す。
−G−Aは、アニオン性の2座配位子を表す。AおよびAは、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子または窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。Gは、単結合、または、AおよびAとともに2座配位子を構成する原子団を表す。A−G−Aが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
およびmは、それぞれ独立に、0または1を表す。
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R、R、R、R、RおよびRが複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。RとRとが結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく、RとRとが結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく、RとRとが結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
ArおよびArは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArおよびArが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
Ar、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar、Ar、ArおよびArが複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar、ArおよびArが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0009】
本発明は、第二に、上記の金属錯体と、下記式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物とを含有する組成物を提供する。
【0010】
【化3】
[式(Y)中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0011】
本発明は、第三に、上記の金属錯体と、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料、酸化防止剤および溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料とを含有する組成物を提供する。
【0012】
本発明は、第四に、上記の金属錯体を用いて得られる発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動初期の輝度寿命に優れる発光素子の製造に有用な金属錯体を提供することができる。そして、本発明の好ましい実施形態によれば、赤色発光の色純度に優れる発光素子の製造に有用な金属錯体を提供することができる。また、本発明によれば、該金属錯体を含有する組成物および該金属錯体を用いて得られる発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
<共通する用語の説明>
以下、本明細書で共通して用いられる用語は、特記しない限り、以下の意味である。
【0016】
Meはメチル基、Etはエチル基、i-Prはイソプロピル基、n-Buはn-ブチル基、t-Buはtert-ブチル基を表す。
【0017】
本明細書において、水素原子は重水素原子であってもよい。
【0018】
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が、1×103〜1×108である重合体を意味する。高分子化合物に含まれる構成単位は、合計100モル%である。
【0019】
高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよい。
【0020】
高分子化合物の末端基は、重合活性基がそのまま残っていると、高分子化合物を発光素子の作製に用いた場合に発光特性や輝度寿命が低下する可能性があるので、好ましくは安定な基である。この末端基としては、主鎖と共役結合している基が好ましく、炭素−炭素結合を介してアリール基または1価の複素環基と結合している基が挙げられる。
【0021】
「低分子化合物」とは、分子量分布を有さず、分子量が1×104以下の化合物を意味する。
【0022】
「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。
【0023】
「アルキル基」は、直鎖、分岐および環状のいずれでもよい。直鎖のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜50であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは4〜20である。分岐および環状のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3〜50であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは4〜20である。
アルキル基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-n-プロピルヘプチル基、n-デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-n-ヘキシルデシル基、n-ドデシル基等の非置換アルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-n-ヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基等の置換アルキル基が挙げられる。
【0024】
「アリール基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60であり、好ましくは6〜20であり、より好ましくは6〜10である。
アリール基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基、および、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
【0025】
「アルコキシ基」は、直鎖、分岐および環状のいずれでもよい。直鎖のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜40であり、好ましくは4〜10である。分岐および環状のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3〜40であり、好ましくは4〜10である。
アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基
、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基が挙げられる。
【0026】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60であり、好ましくは7〜48である。
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、および、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
【0027】
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表す。)とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。p価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団である「p価の芳香族複素環基」が好ましい。
「芳香族複素環式化合物」は、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ジベンゾホスホール等の複素環自体が芳香族性を示す化合物、および、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピラン等の複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環されている化合物を意味する。
【0028】
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2〜60であり、好ましくは4〜20である。
1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、および、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルコキシ基等で置換された基が挙げられる。
【0029】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。
【0030】
「アミノ基」は、置換基を有していてもよく、置換アミノ基が好ましい。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、アリール基または1価の複素環基が好ましい。
置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基およびジアリールアミノ基が挙げられる。
アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基が挙げられる。
【0031】
「アルケニル基」は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよい。直鎖のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2〜30であり、好ましくは3〜20である。分岐および環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3〜30であり、好ましくは4〜20である。
アルケニル基は、置換基を有していてもよく、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、および、これらの基が置換基を有する基が挙げられる。
【0032】
「アルキニル基」は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよい。アルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常2〜20であり、好ましくは3〜20である。分岐および環状のアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常4〜30であり、好ましくは4〜20である。
アルキニル基は、置換基を有していてもよく、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、および、これらの基が置換基を有する基が挙げられる。
【0033】
「アリーレン基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団を意味する。アリーレン基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、6〜60であり、好ましくは6〜30であり、より好ましくは6〜18である。
アリーレン基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、ナフタセンジイル基、フルオレンジイル基、ピレンジイル基、ペリレンジイル基、クリセンジイル基、および、これらの基が置換基を有する基が挙げられ、好ましくは、式(A-1)〜式(A-20)で表される基である。アリーレン基は、これらの基が複数結合した基を含
む。
【0034】
【化4】
【0035】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
【化7】
[式中、RおよびRaは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表す。複数存在するRおよびRaは、各々、同一でも異なっていてもよく、Ra同士は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。]
【0038】
2価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2〜60であり、好ましくは、3〜20であり、より好ましくは、4〜15である。
2価の複素環基は、置換基を有していてもよく、例えば、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾシロール、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジン、ジヒドロアクリジン、フラン、チオフェン、アゾール、ジアゾール、トリアゾールから、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基が挙げられ、好ましくは、式(A-21)〜式(A-54)で表される基である。2価の複素環基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
[式中、RおよびRaは、前記と同じ意味を表す。]
【0046】
「架橋基」とは、加熱処理、紫外線照射処理、ラジカル反応等に供することにより、新たな結合を生成する事が可能な基であり、好ましくは、式(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、(B-6)、(B-7)、(B-8)、(B-9)、(B-10)、(B-11)、(B-12)、(B-13)、(B-14)、(B-15)、(B-16)または(B-17)で表される基である。
【0047】
【化15】
[式中、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0048】
「置換基」とは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。置換基は架橋基であってもよい。
【0049】
「デンドロン」とは、原子または環を分岐点とする規則的な樹枝状分岐構造(デンドリマー構造)を有する基である。なお、デンドロンを部分構造として有する化合物(デンドリマーと呼ぶ場合がある。)としては、例えば、WO02/067343、特開2003−231692、WO2003/079736、WO2006/097717等の文献に記載の構造が挙げられる。
【0050】
デンドロンとしては、好ましくは、式(D-A)または(D-B)で表される基である。
【0051】
【化16】
[式中、
DA1、mDA2およびmDA3は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
DA1は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArDA1、ArDA2およびArDA3は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArDA1、ArDA2およびArDA3が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
DA2およびTDA3は、それぞれ独立に、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0052】
【化17】
[式中、
DA1、mDA2、mDA3、mDA4、mDA5、mDA6およびmDA7は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
DA1、GDA2およびGDA3は、それぞれ独立に、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArDA1、ArDA2、ArDA3、ArDA4、ArDA5、ArDA6およびArDA7は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArDA1、ArDA2、ArDA3、ArDA4、ArDA5、ArDA6およびArDA7が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
DA4、TDA5、TDA6およびTDA7は、それぞれ独立に、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0053】
DA1、mDA2、mDA3、mDA4、mDA5、mDA6およびmDA7は、通常10以下の整数であり、5以下の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。また、mDA1、mDA2、mDA3、mDA4、mDA5、mDA6およびmDA7は、同一の整数であることが好ましい。
【0054】
DA1は、好ましくは式(GDA-11)〜(GDA-15)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0055】
【化18】
[式中、
*1、*2および*3は、各々、ArDA1、ArDA2およびArDA3との結合を表す。
DAは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は更に置換基を有していてもよい。RDAが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0056】
DA2は、好ましくは式(GDA-21)〜(GDA-25)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。GDA3は、好ましくは式(GDA-31)〜(GDA-35)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0057】
【化19】
[式中、
*2、*4および*5は、各々、ArDA2、ArDA4およびArDA5との結合を表す。
DAは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は更に置換基を有していてもよい。RDAが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0058】
【化20】
[式中、
*3、*6および*7は、各々、ArDA3、ArDA6およびArDA7との結合を表す。
DAは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は更に置換基を有していてもよい。RDAが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0059】
DAは、好ましくは水素原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子またはアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0060】
ArDA1、ArDA2、ArDA3、ArDA4、ArDA5、ArDA6およびArDA7は、好ましくは式(ArDA-1)〜(ArDA-3)で表される基である。
【0061】
【化21】
[式中、
DAは前記と同じ意味を表す。
DBは、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RDBが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0062】
DBは、好ましくはアルキル基、アリール基または1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基または1価の複素環基であり、更に好ましくはアリール基である。
【0063】
DA2、TDA3、TDA4、TDA5、TDA6およびTDA7は、好ましくは式(TDA-1)〜(TDA-3)で表される基である。
【0064】
【化22】
[式中、RDAおよびRDBは前記と同じ意味を表す。]
【0065】
式(D-A)で表される基は、好ましくは式(D-A1)〜(D-A3)で表される基である。
【0066】
【化23】
[式中、
p1、Rp2およびRp3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す。Rp1およびRp2が複数ある場合、それらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
np1は、0〜5の整数を表し、np2は0〜3の整数を表し、np3は0または1を表す。複数あるnp1は、同一でも異なっていてもよい。]
【0067】
式(D-B)で表される基は、好ましくは式(D-B1)〜(D-B3)で表される基である。
【0068】
【化24】
[式中、
p1、Rp2およびRp3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す。Rp1およびRp2が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
np1は0〜5の整数を表し、np2は0〜3の整数を表し、np3は0または1を表す。np1およびnp2が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0069】
np1は、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。np2は、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。np3は好ましくは0である。
【0070】
p1、Rp2およびRp3は、好ましくはアルキル基である。
【0071】
<金属錯体>
次に、本発明の金属錯体について説明する。本発明の金属錯体は、式(1)で表される。
【0072】
式(1)で表される金属錯体は、イリジウム原子と、添え字nでその数を規定されている配位子と、添え字(3−n)でその数を規定されている配位子とから構成されている。
【0073】
式(1)中、nは、2または3であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0074】
式(1)中、A−G−Aで表されるアニオン性の2座配位子としては、例えば、下記で表される配位子が挙げられる。
【0075】
【化25】
【0076】
【化26】
[式中、*は、イリジウム原子と結合する部位を示す。]
【0077】
式(1)中、A−G−Aで表されるアニオン性の2座配位子は、下記で表される配位子であってもよい。ただし、A−G−Aで表されるアニオン性の2座配位子は、添え字nでその数を定義されている配位子とは異なる。
【0078】
【化27】
[式中、
*は、イリジウム原子と結合する部位を表す。
L1は、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRL1は、同一でも異なっていてもよい。
L2は、アルキル基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0079】
L1およびRL2で表されるアリール基としては、アルキル基またはアリール基を置換基として有するアリール基であることが好ましく、アリール基を置換基として有するアリール基であることがより好ましい。
【0080】
L1およびRL2で表される1価の複素環基としては、1,3,5−トリアジニル基であることが好ましく、2位および4位にアリール基を置換基として有する1,3,5−トリアジニル基であることがより好ましい。
【0081】
L1およびRL2で表されるアリール基および1価の複素環基としては、デンドロンであることが好ましい。
【0082】
式(1)中、R〜Rは、本発明の金属錯体の溶媒に対する溶解性および成膜性が優れるので、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基またはハロゲン原子であることが好ましく、水素原子、アルキル基またはアリール基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0083】
式(1)中、mおよびmは、本発明の金属錯体の溶液中での発光量子収率が優れるので、0≦m+m≦1を満たすことが好ましく、mが0または1であり、mが0であることがより好ましい。
【0084】
式(1)中、ArおよびArは、本発明の金属錯体の溶液中での発光量子収率が優れるので、アリール基または1価の複素環基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましい。アリール基または1価の複素環基としては、無置換のものであるか、または、アルキル基およびアルコキシ基から選ばれる基を置換基として有するものであることが好ましく、アルキル基を置換基として有するものであることがより好ましい。
【0085】
式(1)中、Ar〜Arは、本発明の金属錯体の溶液中での発光量子収率が優れるので、アリール基または1価の複素環基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましい。アリール基または1価の複素環基としては、無置換のものであるか、または、アルキル基およびアルコキシ基から選ばれる基を置換基として有するものであることが好ましく、アルキル基を置換基として有するものがより好ましい。
【0086】
式(1)中、ArおよびArは、本発明の金属錯体の溶液中での発光量子収率が優れるので、アリーレン基であることが好ましく、前記式(A−1)〜(A−10)で表される基であることがより好ましく、前記式(A−1)で表される基であることが更に好ましく、無置換の1,4−フェニレン基であることが特に好ましい。
【0087】
式(1)中、R、R、R、R、R、R、Ar、Ar、Ar、Ar、ArおよびArがアルキル基である場合、該アルキル基の炭素原子数は1〜10であることが好ましい。また、式(1)中、R、R、R、R、R、RAr、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、ArおよびArがアルキル基を置換基として有する基の場合、該アルキル基の炭素原子数は1〜10であることが好ましい。
【0088】
式(1)中、Arは、本発明の金属錯体の溶液中での発光量子収率が優れるので、アリーレン基であることが好ましく、前記式(A−1)〜(A−10)で表される基であることがより好ましく、前記式(A−1)で表される基であることが更に好ましく、無置換の1,4−フェニレン基であることが特に好ましい。
【0089】
式(1)で表される金属錯体は、本発明の金属錯体の合成が容易となるため、下記式(1a)で表される金属錯体であることが好ましい。
【0090】
【化28】
[式(1a)中、
、R、R、R、R、R、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、A、A、G、m、mおよびn1は、前記と同じ意味を表す。]
【0091】
式(1)で表される金属錯体としては、例えば、下記式(Ir−1)〜(Ir−30)で表される金属錯体が挙げられ、本発明の金属錯体を用いて得られる発光素子の駆動初期の輝度寿命がより優れるため、式(Ir−1)、(Ir−4)、(Ir−5)、(Ir−8)、(Ir−11)、(Ir−16)、(Ir−17)、(Ir−20)または(Ir−24)で表される金属錯体が好ましく、式(Ir−1)、(Ir−5)、(Ir−8)または(Ir−11)で表される金属錯体がより好ましく、式(Ir−1)で表される金属錯体が更に好ましい。
【0092】
【化29】
【0093】
【化30】
【0094】
【化31】
【0095】
【化32】
【0096】
【化33】
【0097】
【化34】
[式(Ir−1)〜(Ir−30)中、
ArおよびArは、前記と同じ意味を表す。
は、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、2位および4位にアリール基を置換基として有する1,3,5−トリアジニル基、または、デンドロンから選ばれる基である。Lが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
は、下記式(1Z1)で表される基を表す。Zが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0098】
【化35】

[式(1Z1)中、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、mおよびmは、前記と同じ意味を表す。]
【0099】
なお、式(1Z1)で表される基は、式(1)で表される金属錯体の部分構造である。
【0100】
式(Ir−1)〜(Ir−30)中、
ArおよびArは、下記群Iの式(I−01)〜式(I−14)から選ばれる基であることが好ましい。
は、下記群IIの式(II−01)〜式(II−21)から選ばれる基であることが好ましい。
は、下記群IIIの式(III−01)〜式(III−17)から選ばれる基であることが好ましい。
【0101】
<群I>
【0102】
【化36】
【0103】
<群II>
【0104】
【化37】
【0105】
【化38】
【0106】
【化39】
【0107】
<群III>
【0108】
【化40】
【0109】
【化41】
【0110】
【化42】
【0111】
【化43】
【0112】
式(Ir−1)〜(Ir−30)中、ArおよびArとしては、式(I−03)〜式(I−05)から選ばれる基であることが好ましい。
【0113】
式(Ir−1)〜(Ir−30)中、Lとしては、式(II−16)〜式(II−19)から選ばれる基であることが好ましい。
【0114】
式(Ir−1)〜式(Ir−30)中、Zとしては、式(III−01)または(III−09)で表される基であることが好ましい。
【0115】
本発明の金属錯体を用いて得られる発光素子には、本発明の金属錯体を1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0116】
式(1)で表される金属錯体(式(1−a)で表される金属錯体であってもよい。)には、複数の幾何異性体が考えられ、いずれの幾何異性体であってもよいが、本発明の金属錯体を用いて得られる発光素子の駆動初期の輝度寿命がより優れるため、facial体が金属錯体全体に対して80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更に好ましく、100モル%(すなわち、他の幾何異性体を含まないこと)が特に好ましい。
【0117】
式(1)で表される金属錯体としては、下記式(Ir−101)〜(Ir−118)で表される金属錯体であることが特に好ましく、本発明の金属錯体を用いて得られる発光素子の駆動初期の輝度寿命がより優れるため、下記式(Ir−101)〜(Ir−114)で表される金属錯体であることがとりわけ好ましい。
【0118】
【化44】
【0119】
【化45】
【0120】
【化46】
【0121】
【化47】
【0122】
<金属錯体の製造方法>
本発明の金属錯体は、如何なる方法で製造してもよいが、例えば、配位子となる化合物と金属化合物とを反応させる方法により製造することができる。また、必要に応じて、金属錯体の配位子部分を修飾する反応を行ってもよい。
【0123】
配位子となる化合物と金属化合物との反応の方法の例としては、イリジウム原子を有する金属錯体の場合、例えば、J.Am.Chem.Soc.,1984,106,6647に記載の方法が挙げられる。
【0124】
金属化合物としては、例えば、塩化イリジウム・三水和物(IrCl・3HO)、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)(Ir(acac))、クロロ(シクロオクタジエン)イリジウム(I)ダイマー([Ir(COD)Cl])、酢酸イリジウム(III)(Ir(OAc))が挙げられる。
【0125】
配位子となる化合物と金属化合物との反応は、必要に応じて、反応系中に有機溶媒、塩基、塩化銀化合物等が存在していてもよい。
【0126】
有機溶媒としては、配位子となる化合物と金属化合物との反応が円滑に進行するため、極性溶媒であることが好ましい。極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、N,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。有機溶媒は、極性溶媒と水との混合溶媒であってもよい。混合溶媒の例としては、例えば、水と2−エトキシエタノールとの混合溶媒が挙げられる。極性溶媒と水との混合比は任意の割合で用いることができるが、配位子となる化合物を高温で溶解できるので、10/1〜1/1の範囲であることが好ましい。
【0127】
配位子となる化合物と金属化合物との反応温度は、通常、反応系に存在する有機溶媒の常圧における融点から有機溶媒の常圧における沸点の間で設定すればよいが、−78℃から常圧における有機溶媒の沸点の間で設定するのが好ましく、50℃〜200℃の範囲で設定するのがより好ましい。配位子となる化合物と金属化合物との反応において、密閉した反応器を用いる場合、例えば、マイクロウェーブ反応装置を使用する場合は、有機溶媒の沸点以上で反応させることができる。
【0128】
配位子となる化合物と金属化合物との反応時間は、通常、30分間〜150時間である。マイクロウェーブ反応装置を使用する場合、反応時間は、通常、数分〜数時間である。
【0129】
配位子となる化合物の合成、および、金属錯体の配位子部分の修飾に用いる反応としては、例えば、芳香族化合物誘導体、芳香族複素環式化合物誘導体等を原料とするSuzukiカップリング、Grignardカップリング、Stilleカップリング等のカップリング反応が挙げられる。その一例を挙げると、2−フェニルピリジン誘導体と芳香族複素環式化合物とを有機溶媒に溶解させ、塩基および触媒を用いて、有機溶媒の融点以上沸点以下の温度で反応させることにより、配位子となる化合物を合成することができる。
【0130】
カップリング反応に用いる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、1,2−ジメトキシエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、エタノール、テトラヒドロフランが挙げられ、カップリング反応の種類に応じて適宜選択することができる。
【0131】
カップリング反応に用いる触媒としては、例えば、パラジウム、ニッケル等の遷移金属触媒が挙げられる。具体的には、酢酸
パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)が挙げられる。
触媒は、カップリング反応時に触媒の配位子として作用するリン化合物等と併用してもよく、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等のリン化合物が挙げられる。
【0132】
カップリング反応に用いる塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩基が挙げられ、カップリング反応の種類に応じて適宜選択することができる。
【0133】
製造された金属錯体の同定および分析は、例えば、元素分析、核磁気共鳴(NMR)分析、質量分析(MS)および赤外吸収(IR)分析により行うことができる。
【0134】
本発明の金属錯体の製造方法の一例について、具体的に説明する。
【0135】
式(1)で表される金属錯体は、下記式(3)で表される金属錯体と、下記式(4)で表される化合物とをカップリング反応させる工程を含む方法により製造することができる。式(3)で表される金属錯体は、下記式(2)で表される金属錯体をハロゲン化反応により修飾することにより製造することができる。式(3)で表される金属錯体と、式(4)で表される化合物とのカップリング反応は、前記配位子となる化合物の合成、および、金属錯体の配位子部分の修飾に用いる反応として述べたのと同じ方法で行うことができる。
【0136】
【化48】
[式(2)、(3)および(4)中、
、R、R、R、R、R、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、A、A、G、m、mおよびn1は、前記と同じ意味を表す。
は、−B(ORW1で表される基(RW1は、水素原子、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRW1は、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する酸素原子とともに環構造を形成していてもよい。)を表し、Wは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。]
【0137】
−B(ORW1で表される基としては、例えば、下記式(W−1)〜(W−10)で表される基が挙げられる。
【0138】
【化49】
【0139】
式(3)中、Wとしては、式(3)で表される金属錯体と式(4)で表される化合物とのカップリング反応が容易に進行するので、臭素原子またはヨウ素原子が好ましく、式(3)で表される金属錯体の合成が容易であるため、臭素原子であることがより好ましい。
【0140】
式(4)中、Wとしては、式(4)で表される化合物の合成が容易であるため、式(W−7)で表される基であることが好ましい。
【0141】
<組成物>
本発明の組成物は、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料(本発明の金属錯体とは異なる。)、酸化防止剤および溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料と、本発明の金属錯体とを含有する。
【0142】
本発明の組成物において、本発明の金属錯体は、1種単独で含有されていても、2種以上含有されていてもよい。
【0143】
[ホスト材料]
本発明の金属錯体は、正孔注入性、正孔輸送性、電子注入性および電子輸送性から選ばれる少なくとも1つの機能を有するホスト材料との組成物とすることにより、本発明の金属錯体を用いて得られる発光素子の駆動初期の輝度寿命はより優れたものとなる。本発明の組成物において、ホスト材料は、1種単独で含有されていても、2種以上含有されていてもよい。
【0144】
本発明の金属錯体と、ホスト材料とを含有する組成物において、本発明の金属錯体の含有量は、本発明の金属錯体とホスト材料との合計を100重量部とした場合、通常、0.05〜80重量部であり、好ましくは0.1〜50重量部であり、より好ましくは0.5〜40重量部である。
【0145】
ホスト材料の有する最低励起三重項状態(T)は、本発明の組成物を用いて得られる発光素子の外部量子効率が優れるため、本発明の金属錯体の有する最低励起三重項状態(T)と同等のエネルギー準位、または、より高いエネルギー準位であることが好ましい。
【0146】
ホスト材料としては、本発明の組成物を用いて得られる発光素子を溶液塗布プロセスにて作製する観点から、本発明の金属錯体を溶解することが可能な溶媒に対して溶解性を示すものであることが好ましい。
【0147】
ホスト材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。
【0148】
ホスト材料に用いられる低分子化合物としては、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)および1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(mcP)等のカルバゾール骨格を有する化合物;1,1−ビス[4−[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、4,4’−ビス[N−(m−トリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)およびN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N'−ジフェニルベンジジン(NPB)等のトリアリールアミン骨格を有する化合物;2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等のフェナントロリン骨格を有する化合物;トリフェニルトリアジン等のトリアリールトリアジン骨格を有する化合物;p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)および4,4’−ビス(トリフェニルシリル)ビフェニル(BSB)等の有機ケイ素化合物;1,3,5−トリス(N−フェニルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBI)、3−(ビフェニル−4−イル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾール(t−Bu−TAZ)および2−(ビフェニル−4−イル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)等のアゾール骨格を有する化合物;並びに、それらの骨格を組み合わせた化合物が挙げられる。該骨格を組み合わせた化合物としては,例えば、4,4',4''−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)等のカルバゾール骨格およびトリアリールアミン骨格を有する化合物が挙げられる。
【0149】
ホスト材料に用いられる高分子化合物としては、例えば、後述の正孔輸送材料である高分子化合物、後述の電子輸送材料である高分子化合物が挙げられる。
【0150】
[高分子ホスト]
ホスト化合物として好ましい高分子化合物(以下、「高分子ホスト」ともいう。)に関して説明する。
【0151】
高分子ホストとしては、式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
【0152】
【化50】
[式中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0153】
ArY1で表されるアリーレン基としては、特に好ましくは式(A-1)、式(A-2)、式(A-6)〜式(A-10)、式(A-19)または式(A-20)で表される基であり、とりわけ好ましくは式(A-1)、式(A-2)、式(A-7)、式(A-9)または式(A-19)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0154】
ArY1で表される2価の複素環基としては、特に好ましくは式(A-21)〜式(A-24)、式(A-30)〜式(A-35)、式(A-38)〜式(A-41)、式(A-53)または式(A-54)で表される基であり、と
りわけ好ましくは式(A-24)、式(A-30)、式(A-32)、式(A-34)または式(A-53)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0155】
ArY1で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基における、アリーレン基および2価の複素環基の特に好ましい範囲、とりわけ好ましい範囲は、それぞれ、前述のArY1で表されるアリーレン基および2価の複素環基の特に好ましい範囲、とりわけ好ましい範囲と同様である。
【0156】
「少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基」としては、例えば、下記式で表される基が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
【0157】
【化51】
[式中、RXXは、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0158】
XXは、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0159】
ArY1で表される基が有してもよい置換基としては、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0160】
式(Y)で表される構成単位としては、例えば、式(Y-1)〜(Y-13)で表される構成単位が挙げられ、高分子ホストと本発明の金属錯体との組成物を用いた発光素子の駆動初期の輝度寿命がより優れるため、好ましくは式(Y-1)、(Y-2)または(Y-3)で表される構成単位であり、電子輸送性の観点からは、好ましくは式(Y-4)〜(Y-7)で表される構成単位であり、正孔輸送性の観点からは、好ましくは式(Y-8)〜(Y-10)で表される構成単位である。
【0161】
【化52】
[式中、RY1は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY1は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRY1同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0162】
Y1は、好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0163】
式(Y-1)で表される構成単位は、式(Y-1')で表される構成単位であってもよい。
【0164】
【化53】
[式中、RY11は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY1は、同一でも異なっていてもよい。]
【0165】
Y11は、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、より好ましくはアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0166】
【化54】
[式中、RY1は前記と同じ意味を表す。XY1は、−C(RY2)2−、−C(RY2)=C(RY2)−またはC(RY2)2−C(RY2)2−で表される基を表す。RY2は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY2は、同一でも異なっていてもよく、RY2同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0167】
Y2は、好ましくはアルキル基、アリール基または1価の複素環基であり、より好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0168】
Y1において、−C(RY2)2−で表される基中の2個のRY2の組み合わせは、好ましくは双方がアルキル基、双方がアリール基、双方が1価の複素環基、または、一方がアルキル基で他方がアリール基若しくは1価の複素環基であり、より好ましくは一方がアルキル基で他方がアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。2個存在するRY2は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよく、RY2が環を形成する場合、−C(RY2)2−で表される基としては、好ましくは式(Y-A1)〜(Y-A5)で表される基であり、より好ましくは式(Y-A4)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0169】
【化55】
【0170】
Y1において、−C(RY2)=C(RY2)−で表される基中の2個のRY2の組み合わせは、好ましくは双方がアルキル基、または、一方がアルキル基で他方がアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0171】
Y1において、−C(RY2)2−C(RY2)2−で表される基中の4個のRY2は、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基である。複数あるRY2は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよく、RY2が環を形成する場合、−C(RY2)2−C(RY2)2−で表される基は、好ましくは式(Y-B1)〜(Y-B5)で表される基であり、より好ましくは式(Y-B3)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0172】
【化56】
[式中、RY2は前記と同じ意味を表す。]
【0173】
式(Y-2)で表される構成単位は、式(Y-2')で表される構成単位であってもよい。
【0174】
【化57】
[式中、RY1およびXY1は前記と同じ意味を表す。]
【0175】
【化58】
[式中、RY1およびXY1は前記と同じ意味を表す。]
【0176】
式(Y-3)で表される構成単位は、式(Y-3')で表される構成単位であってもよい。
【0177】
【化59】
[式中、RY11およびXY1は前記と同じ意味を表す。]
【0178】
【化60】
【0179】
【化61】
[式中、RY1は前記と同じ意味を表す。RY3は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0180】
Y3は、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0181】
式(Y-4)で表される構成単位は、式(Y-4')で表される構成単位であってもよく、式(Y-6)で表される構成単位は、式(Y-6')で表される構成単位であってもよい。
【0182】
【化62】
[式中、RY1およびRY3は前記と同じ意味を表す。]
【0183】
【化63】
[式中、RY1は前記を同じ意味を表す。RY4は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0184】
Y4は、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0185】
式(Y)で表される構成単位としては、例えば、式(Y-101)〜(Y-130)で表されるアリーレン基からなる構成単位、式(Y-201)〜(Y-207)で表される2価の複素環基からなる構成単位、式(Y-301)〜(Y-308)で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基からなる構成単位が挙げられる。
【0186】
【化64】
【0187】
【化65】
【0188】
【化66】
【0189】
【化67】
【0190】
【化68】
【0191】
【化69】
【0192】
【化70】
【0193】
【化71】
【0194】
【化72】
【0195】
【化73】
【0196】
【化74】
【0197】
【化75】
【0198】
【化76】
【0199】
式(Y)で表される構成単位であって、ArY1がアリーレン基である構成単位は、高分子ホストと本発明の金属錯体との組成物を用いた発光素子の駆動初期の輝度寿命がより優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは10〜95モル%であり、より好ましくは30〜90モル%である。
【0200】
式(Y)で表される構成単位であって、ArY1が2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基である構成単位は、高分子ホストと本発明の金属錯体との組成物を用いた発光素子の電荷輸送性が優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.5〜30モル%であり、より好ましくは3〜20モル%である。
【0201】
式(Y)で表される構成単位は、高分子ホスト中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0202】
高分子ホストは、正孔輸送性が優れるので、更に、下記式(X)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0203】
【化77】
[式中、aX1およびaX2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。ArX1およびArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArX2およびArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RX1、RX2およびRX3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0204】
X1は、高分子ホストと本発明の金属錯体との組成物を用いた発光素子の駆動初期の輝度寿命がより優れるので、好ましくは2以下であり、より好ましくは1である。
【0205】
X2は、高分子ホストと本発明の金属錯体との組成物を用いた発光素子の駆動初期の輝度寿命がより優れるので、好ましくは2以下であり、より好ましくは0である。
【0206】
X1、RX2およびRX3は、好ましくはアルキル基、アリール基または1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0207】
ArX1およびArX3で表されるアリーレン基としては、特に好ましくは式(A-1)または式(A-9)で表される基であり、とりわけ好ましくは式(A-1)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0208】
ArX1およびArX3で表される2価の複素環基としては、特に好ましくは式(A-21)、式(A-22)または式(A-27)〜式(A-46)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0209】
ArX1およびArX3は、好ましくは置換基を有していてもよいアリーレン基である。
【0210】
ArX2およびArX4で表されるアリーレン基としては、特に好ましくは式(A-1)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-9)〜式(A-11)または式(A-19)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0211】
ArX2およびArX4で表される2価の複素環基の特に好ましい範囲は、ArX1およびArX3で表される2価の複素環基の特に好ましい範囲と同じである。
【0212】
ArX2およびArX4で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基における、アリーレン基および2価の複素環基の特に好ましい範囲、とりわけ好ましい範囲は、それぞれ、ArX1およびArX3で表されるアリーレン基および2価の複素環基の特に好ましい範囲、とりわけ好ましい範囲と同様である。
【0213】
ArX2およびArX4で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基としては、式(Y)のArY1で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基と同様のものが挙げられる。
【0214】
ArX2およびArX4は、好ましくは置換基を有していてもよいアリーレン基である。
【0215】
ArX1〜ArX4およびRX1〜RX3で表される基が有してもよい置換基としては、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0216】
式(X)で表される構成単位としては、好ましくは式(X-1)〜(X-7)で表される構成単位であり、より好ましくは式(X-1)〜(X-6)で表される構成単位であり、更に好ましくは式(X-3)〜(X-6)で表される構成単位である。
【0217】
【化78】
【0218】
【化79】
【0219】
【化80】
【0220】
【化81】
[式中、RX4およびRX5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、1価の複素環基またはシアノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRX4は、同一でも異なっていてもよい。複数存在するRX5は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRX5同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0221】
式(X)で表される構成単位は、正孔輸送性が優れるので、高分子ホストに含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.1〜50モル%であり、より好ましくは1〜40モル%であり、更に好ましくは5〜30モル%である。
【0222】
式(X)で表される構成単位としては、例えば、式(X1-1)〜(X1-19)で表される構成単位が挙げられ、好ましくは式(X1-1)〜(X1-14)で表される構成単位である。
【0223】
【化82】
【0224】
【化83】
【0225】
【化84】
【0226】
【化85】
【0227】
【化86】
【0228】
【化87】
【0229】
【化88】
【0230】
【化89】
【0231】
高分子ホストにおいて、式(X)で表される構成単位は、1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもよい。
【0232】
高分子ホストとしては、例えば、下記表1の高分子化合物P−1〜P−6が挙げられる。ここで、「その他」の構成単位とは、式(Y)で表される構成単位、式(X)で表される構成単位以外の構成単位を意味する。
【0233】
【表1】
[表中、p、q、r、sおよびtは、各構成単位のモル比率を示す。p+q+r+s+t=100であり、かつ、100≧p+q+r+s≧70である。その他の構成単位とは、式(Y)で表される構成単位、式(X)で表される構成単位以外の構成単位を意味する。
【0234】
高分子ホストは、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよいが、上記観点から、複数種の原料モノマーを共重合してなる共重合体であることが好ましい。
【0235】
<高分子ホストの製造方法>
次に、高分子ホストの製造方法について説明する。
【0236】
高分子ホストは、例えば、式(M-Y1)で表される化合物、式(M-Y2)で表される化合物および式(M-X)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を縮合重合させることにより製造することができる。本明細書において、高分子ホストの製造に使用される化合物を総称して、「原料モノマー」ということがある。
【0237】
【化90】
[式中、ArY1、ArX1〜ArX4、RX1、RX2、RX3、aX1およびaX2は、前記と同じ意味を表し、ZC1〜ZC6は、それぞれ独立に、置換基A群および置換基B群からなる群から選ばれる基を示す。]
【0238】
例えば、ZC1、ZC2、ZC5およびZC6が置換基A群から選ばれる基である場合、ZC3およびZC4は、置換基B群から選ばれる基を選択する。
例えば、ZC1、ZC2、ZC5およびZC6が置換基B群から選ばれる基である場合、ZC3およびZC4は、置換基A群から選ばれる基を選択する。
【0239】
<置換基A群>
塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−O−S(=O)2C1で表される基。
(式中、RC1は、アルキル基またはアリール基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
<置換基B群>
−B(ORC2)2(式中、RC2は、水素原子、アルキル基またはアリール基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRC2は同一でも異なっていてもよく、互いに連結して、それぞれが結合する酸素原子とともに環構造を形成していてもよい。)で表される基;
−BF3Q'(式中、Q'は、Li、Na、K、RbまたはCsを示す。)で表される基;
−MgY'(式中、Y'は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)で表される基;
−ZnY''(式中、Y''は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)で表される基;、および、
−Sn(RC3)3(式中、RC3は、水素原子、アルキル基またはアリール基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRC3は同一でも異なっていてもよく、互いに連結して、それぞれが結合するスズ原子とともに環構造を形成していてもよい。)で表される基。
【0240】
−B(ORC2)2で表される基としては、下記式で表される基が例示される。
【0241】
【化91】
【0242】
置換基A群から選ばれる基を有する化合物と置換基B群から選ばれる基を有する化合物とは、公知のカップリング反応により縮合重合して、置換基A群から選ばれる基および置換基B群から選ばれる基と結合する炭素原子同士が結合する。そのため、置換基A群から選ばれる基を2個有する化合物と、置換基B群から選ばれる基を2個有する化合物を公知のカップリング反応に供すれば、縮合重合により、これらの化合物の縮合重合体を得ることができる。
【0243】
縮合重合は、通常、触媒、塩基および溶媒の存在下で行われ、必要に応じて、相間移動触媒を共存させて行ってもよい。
【0244】
触媒としては、例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(トリス−o−メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム等のパラジウム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)ニッケル(II)ジクロリド、ビス(1,4-シクロ
オクタジエン)ニッケル(0)等のニッケル錯体等の遷移金属錯体;これらの遷移金属錯体が、更にトリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、 トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、ビピリジル等の配位子を有する錯体が挙げられる。触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0245】
触媒の使用量は、原料モノマーのモル数の合計に対する遷移金属の量として、通常、0.00001〜3モル当量である。
【0246】
塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リン酸三カリウム等の無機塩基;フッ化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の有機塩基が挙げられる。塩基は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0247】
相間移動触媒としては、例えば、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。相間移動触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0248】
塩基の使用量は、原料モノマーの合計モル数に対して、通常0.001〜100モル当量である。
【0249】
相関移動触媒の使用量は、原料モノマーの合計モル数に対して、通常0.001〜100モル当量である。
【0250】
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の有機溶媒、水が挙げられる。溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0251】
溶媒の使用量は、通常、原料モノマーの合計100重量部に対して、10〜100000重量部である。
【0252】
縮合重合の反応温度は、通常-100〜200℃である。縮合重合の反応時間は、通常1時間以上である。
【0253】
重合反応の後処理は、公知の方法、例えば、分液により水溶性不純物を除去する方法、メタノール等の低級アルコールに重合反応後の反応液を加えて、析出させた沈殿を濾過した後、乾燥させる方法等を単独または組み合わせて行う。高分子ホストの純度が低い場合、例えば、再結晶、再沈殿、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製することができる。
【0254】
本発明の金属錯体および溶媒を含有する組成物(以下、「インク」ということがある。
)は、インクジェットプリント法、ノズルプリント法等の印刷法を用いた発光素子の作製に好適である。
【0255】
インクの粘度は、印刷法の種類によって調整すればよいが、インクジェットプリント法等の溶液が吐出装置を経由する印刷法に適用する場合には、吐出時の目づまりと飛行曲がりを防止するために、好ましくは25℃において1〜20mPa・sである。
【0256】
インクに含まれる溶媒は、該インク中の固形分を溶解または均一に分散できる溶媒が好ましい。溶媒としては、例えば、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、4-メチルアニソール等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、n-ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-へプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ドデカン、ビシクロヘキシル等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル系溶媒;エチレングリコール、グリセリン、1,2-ヘキサンジオール等の多価アルコール系溶媒;イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0257】
インクにおいて、溶媒の配合量は、本発明の金属錯体100重量部に対して、通常、1000〜100000重量部であり、好ましくは2000〜20000重量部である。
【0258】
[正孔輸送材料]
正孔輸送材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類され、高分子化合物が好ましく、架橋基を有する高分子化合物がより好ましい。
【0259】
高分子化合物としては、例えば、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体;側鎖または主鎖に芳香族アミン構造を有するポリアリーレンおよびその誘導体が挙げられる。高分子化合物は、電子受容性部位が結合された化合物でもよい。電子受容性部位としては、例えば、フラーレン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、トリニトロフルオレノン等が挙げられ、好ましくはフラーレンである。
【0260】
本発明の組成物において、正孔輸送材料の配合量は、本発明の金属錯体100重量部に対して、通常、1〜400重量部であり、好ましくは5〜150重量部である。
【0261】
正孔輸送材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0262】
[電子輸送材料]
電子輸送材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。電子輸送材料は、架橋基を有していてもよい。
【0263】
低分子化合物としては、例えば、8-ヒドロキシキノリンを配位子とする金属錯体、オキサジアゾール、アントラキノジメタン、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、テトラシアノアントラキノジメタン、フルオレノン、ジフェニルジシアノエチレンおよびジフェノキノン、並びに、これらの誘導体が挙げられる。
【0264】
高分子化合物としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフルオレン、および、これらの誘導体が挙げられる。高分子化合物は、金属でドープされていてもよい。
【0265】
本発明の組成物において、電子輸送材料の配合量は、本発明の金属錯体100重量部に対して、通常、1〜400重量部であり、好ましくは5〜150重量部である。
【0266】
電子輸送材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0267】
[正孔注入材料および電子注入材料]
正孔注入材料および電子注入材料は、各々、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。正孔注入材料および電子注入材料は、架橋基を有していてもよい。
【0268】
低分子化合物としては、例えば、銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン;カーボン;モリブデン、タングステン等の金属酸化物;フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム等の金属フッ化物が挙げられる。
【0269】
高分子化合物としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリキノリンおよびポリキノキサリン、並びに、これらの誘導体;式(X)で表される基を主鎖または側鎖に含む重合体等の導電性高分子が挙げられる。
【0270】
本発明の組成物において、正孔注入材料および電子注入材料の配合量は、各々、本発明の金属錯体100重量部に対して、通常、1〜400重量部であり、好ましくは5〜150重量部である。
【0271】
正孔注入材料および電子注入材料は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0272】
[イオンドープ]
正孔注入材料または電子注入材料が導電性高分子を含む場合、導電性高分子の電気伝導度は、好ましくは、1×10-5S/cm〜1×103S/cmである。導電性高分子の電気伝導度をかかる範囲とするために、導電性高分子に適量のイオンをドープすることができる。
【0273】
ドープするイオンの種類は、正孔注入材料であればアニオン、電子注入材料であればカチオンである。アニオンとしては、例えば、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンが挙げられる。カチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンが挙げられる。
【0274】
ドープするイオンは、一種のみでも二種以上でもよい。
【0275】
[発光材料]
発光材料(本発明の金属錯体とは異なる。)は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。発光材料は、架橋基を有していてもよい。
【0276】
低分子化合物としては、例えば、ナフタレンおよびその誘導体、アントラセンおよびその誘導体、ペリレンおよびその誘導体、並びに、イリジウム、白金またはユーロピウムを中心金属とする三重項発光錯体が挙げられる。
【0277】
高分子化合物としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フルオレンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、式(X)で表される基、カルバゾールジイル基、フェノキサジンジイル基、フェノチアジンジイル基、ピレンジイル基等を含む高分子化合物が挙げられる。
【0278】
発光材料は、低分子化合物および高分子化合物を含んでいてもよく、好ましくは、三重項発光錯体および高分子化合物を含む。
【0279】
三重項発光錯体としては、例えば、以下に示す金属錯体が挙げられる。
【0280】
【化92】
【0281】
【化93】
【0282】
本発明の組成物において、発光材料の含有量は、本発明の金属錯体100重量部に対して、通常、0.1〜400重量部である。
【0283】
[酸化防止剤]
酸化防止剤は、本発明の金属錯体と同じ溶媒に可溶であり、発光および電荷輸送を阻害しない化合物であればよく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
【0284】
本発明の組成物において、酸化防止剤の配合量は、本発明の金属錯体100重量部に対して、通常、0.001〜10重量部である。
【0285】
酸化防止剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0286】
<膜>
膜は、本発明の金属錯体を含有する。
【0287】
膜には、本発明の金属錯体を架橋により溶媒に対して不溶化させた、不溶化膜も含まれる。不溶化膜は、本発明の金属錯体を加熱、光照射等の外部刺激により架橋させて得られる膜である。不溶化膜は、溶媒に実質的に不溶であるため、発光素子の積層化に好適に使用することができる。
【0288】
膜を架橋させるための加熱の温度は、通常、25〜300℃であり、外部量子効率が良好になるので、好ましくは50〜250℃であり、より好ましくは150〜200℃である。
【0289】
膜を架橋させるための光照射に用いられる光の種類は、例えば、紫外光、近紫外光、可視光である。
【0290】
膜は、発光素子における正孔輸送層、正孔注入層または発光層として好適であり、発光層としてより好適である。
【0291】
膜は、インクを用いて、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、キャピラリ−コート法、ノズルコート法により作製することができる。
【0292】
膜の厚さは、通常、1nm〜10μmである。
【0293】
<発光素子>
本発明の発光素子は、本発明の金属錯体を用いて得られる発光素子であり、本発明の金属錯体が分子内または分子間で架橋されたものであってもよく、本発明の金属錯体が分子内および分子間で架橋されたものであってもよい。
本発明の発光素子の構成としては、例えば、陽極および陰極からなる電極と、該電極間に設けられた本発明の金属錯体を用いて得られる層とを有する。
【0294】
[層構成]
本発明の金属錯体を用いて得られる層は、通常、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層の1種以上の層であり、好ましくは、発光層である。これらの層は、各々、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料を含む。
これらの層は、各々、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料を、上述した溶媒に溶解させ、インクを調製して用い、上述した膜の作製と同じ方法を用いて形成することができる。
【0295】
発光素子は、陽極と陰極の間に発光層を有する。本発明の発光素子は、正孔注入性および正孔輸送性の観点からは、陽極と発光層との間に、正孔注入層および正孔輸送層の少なくとも1層を有することが好ましく、電子注入性および電子輸送性の観点からは、陰極と発光層の間に、電子注入層および電子輸送層の少なくとも1層を有することが好ましい。
【0296】
正孔輸送層、電子輸送層、発光層、正孔注入層および電子注入層の材料としては、本発明の金属錯体の他、各々、上述した正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、正孔注入材料および電子注入材料が挙げられる。
【0297】
正孔輸送層の材料、電子輸送層の材料および発光層の材料は、発光素子の作製において、各々、正孔輸送層、電子輸送層および発光層に隣接する層の形成時に使用される溶媒に溶解する場合、該溶媒に該材料が溶解することを回避するために、該材料が架橋基を有することが好ましい。架橋基を有する材料を用いて各層を形成した後、該架橋基を架橋させることにより、該層を不溶化させることができる。
【0298】
本発明の発光素子において、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層等の各層の形成方法としては、低分子化合物を用いる場合、例えば、粉末からの真空蒸着法、溶液または溶融状態からの成膜による方法が挙げられ、高分子化合物を用いる場合、例えば、溶液または溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。
【0299】
積層する層の順番、数および厚さは、外部量子効率および素子寿命を勘案して調整すればよい。
【0300】
[基板/電極]
発光素子における基板は、電極を形成することができ、かつ、有機層を形成する際に化学的に変化しない基板であればよく、例えば、ガラス、プラスチック、シリコン等の材料からなる基板である。不透明な基板の場合には、基板から最も遠くにある電極が透明または半透明であることが好ましい。
【0301】
陽極の材料としては、例えば、導電性の金属酸化物、半透明の金属が挙げられ、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ;インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等の導電性化合物;銀とパラジウムと銅との複合体(APC);NESA、金、白金、銀、銅である。
【0302】
陰極の材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム等の金属;それらのうち2種以上の合金;それらのうち1種以上と、銀、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1種以上との合金;並びに、グラファイトおよびグラファイト層間化合物が挙げられる。合金としては、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
陽極および陰極は、各々、2層以上の積層構造としてもよい。
【0303】
[用途]
発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。パターン状の発光を得るためには、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部にしたい層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極もしくは陰極、または、両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字、文字等を表示できるセグメントタイプの表示装置が得られる。ドットマトリックス表示装置とするためには、陽極と陰極を共にストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子化合物を塗り分ける方法、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス表示装置は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動も可能である。これらの表示装置は、コンピュータ、テレビ、携帯端末等のディスプレイに用いることができる。面状の発光素子は、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、または、面状の照明用光源として好適に用いることができる。フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源および表示装置としても使用できる。
【実施例】
【0304】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0305】
本実施例において、高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)およびポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)(島津製作所製、商品名:LC−10Avp)により求めた。なお、SECの測定条件は、以下のとおりである。
【0306】
[測定条件]
測定する高分子化合物を約0.05重量%の濃度でテトラヒドロフランに溶解させ、SECに10μL注入した。SECの移動相としてテトラヒドロフランを用い、2.0mL/分の流量で流した。カラムとして、PLgel MIXED−B(ポリマーラボラトリーズ製)を用いた。検出器にはUV−VIS検出器(島津製作所製、商品名:SPD−10Avp)を用いた。
【0307】
LC−MSの測定は、下記の方法で行った。
測定試料を約2mg/mLの濃度になるようにクロロホルムまたはテトラヒドロフランに溶解させ、LC−MS(アジレント テクノロジー製、商品名:1100LCMSD)に約1μL注入した。LC−MSの移動相には、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランの比率を変化させながら用い、0.2mL/分の流量で流した。カラムは、L−column 2 ODS(3μm)(化学物質評価研究機構製、内径:2.1mm、長さ:100mm、粒径3μm)を用いた。
【0308】
MALDI−TOF/MSの測定は、下記の方法で行った。
1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン約4mgを、400μLのテトラヒドロフランに溶解させて、マトリックス溶液を調製した。測定試料約0.1mgを、200μLのテトラヒドロフランに溶解させて、試料溶液を調製した。マトリックス溶液50μLと試料溶液10μLとを混合し、これをMALDIプレートに塗布して、MALDI−TOFMSの測定を行った。測定は、MALDI−TOFMS装置:REFLEX III(Bruker社製)を用いて、測定モード:リフレクトロンモード、加速電圧:27.5kV、レーザー:N(337nm)で行った。
【0309】
NMRの測定は、下記の方法で行った。
5〜10mgの測定試料を約0.5mLの重クロロホルム(CDCl)、重テトラヒドロフラン(THF−d)または重塩化メチレン(CDCl)に溶解させ、NMR装置(バリアン(Varian,Inc.)製、商品名 MERCURY 300)を用いて測定した。
【0310】
化合物の純度の指標として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)面積百分率の値を用いた。この値は、特に記載がない限り、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、島津製作所製、商品名:LC−20A)での254nmにおける値とする。この際、測定する化合物は、0.01〜0.2重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランまたはクロロホルムに溶解させ、HPLCに、濃度に応じて1〜10μL注入した。HPLCの移動相には、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランを用い、1mL/分の流速で、アセトニトリル/テトラヒドロフラン=100/0〜0/100(容積比)のグラジエント分析で流した。カラムは、Kaseisorb LC ODS 2000(東京化成工業製)または同等の性能を有するODSカラムを用いた。検出器には、フォトダイオードアレイ検出器(島津製作所製、商品名:SPD−M20A)を用いた。
【0311】
<合成例1> 金属錯体MC2の合成
【0312】
【化94】
【0313】
金属錯体MC1は、特開2008−179617号公報に記載の方法に従って合成した。
遮光した反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、金属錯体MC1(38g、22.6mmol)、N−ブロモスクシンイミド(12.1g、68mmol)およびクロロホルム(1800mL)を加え、室温で24時間攪拌した。得られた反応混合物を、シリカゲルを敷いたろ過器に通液することにより、固形分を取り除いた。得られたろ液を減圧濃縮することにより溶媒を留去し固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン=1/3)により精製し、目的物を含むフラクションを得た。得られたフラクションを濃縮し、再結晶(ジクロロメタンおよびヘキサンの混合溶媒)を3回行うことにより精製し、50℃にて一晩減圧乾燥を行うことで、目的物である金属錯体MC2(22.1g)を赤色固体として得た。収率は51%であった。得られた金属錯体MC2のHPLC面積百分率値(検出波長UV254nm)は99.4%を示した。
【0314】
LC/MS(APCI−posi):m/z=1920[M+H]
1H−NMR(300MHz/CD2Cl2):δ(ppm=)9.31(d,3H),9.26(dd,3H),8.38(d,12H),8.22(d,3H),7.96(d,3H),7.43(d,12H),7.00(dd,3H),6.82(d,3H),1.23(s,54H).
【0315】
<実施例1> 金属錯体(Ir−101)の合成
【0316】
【化95】
【0317】
<stage1>
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミン(98.5g、350mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(3.21g、3.5mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィンテトラフルオロボレート塩(4.06g、14mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(67.3g、700mmol)およびトルエン(665mL)を加え、攪拌しながら80℃に加熱した。その後、そこへ、トルエン(55ml)に溶解させたブロモベンゼン(57.1g、366mmol)を滴下し、85℃で4時間攪拌した。得られた反応混合物を、トルエン(680ml)で希釈した後、熱時ろ過することにより固体を除去した。得られたろ液に、活性白土(35g)および活性アルミナ(35g)を加え、90℃で1.5時間攪拌した後、熱時ろ過することにより固体を除去した。得られたろ液を減圧濃縮することにより溶媒を除去し、固体を得た。得られた固体を、再結晶(ヘキサンおよびエタノールの混合溶媒)を2回行うことにより精製し、50℃で一晩減圧乾燥を行うことで、目的物である化合物S1a(99g)を固体として得た。収率は79%であった。得られた化合物S1aのHPLC面積百分率値(検出波長UV254nm)は99.9%以上を示した。
【0318】
<stage2>
遮光した反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、化合物S1a(71.5g、200mmol)、N−ヨードスクシンイミド(49.5g、220mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド(800mL)を加え、攪拌しながら30℃に加熱した。その後、そこへ、トリフルオロ酢酸(11.4g、100mmol)を滴下し、50℃で4時間攪拌した。その後、氷浴を用いて冷却し、イオン交換水(800mL)および10%塩化ナトリウム水溶液(200mL)を滴下したところ、固体が得られた。得られた固体をトルエン(1L)に溶解させた後、イオン交換水(800mL)を用いて2回洗浄し、有機層を得た。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮することにより溶媒を留去し、固体を得た。得られた固体を50℃で一晩減圧乾燥した後、再結晶(クロロホルムおよびメタノールの混合溶媒)を行うことにより精製し、50℃にて一晩減圧乾燥を行うことで、目的物である化合物S1b(84g)を固体として得た。収率は87%であった。得られた化合物S1bのHPLC面積百分率値(検出波長UV254nm)は99.4%を示した。
【0319】
<stage3>
遮光した反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物S1b(7.5g、15mmol)およびテトラヒドロフラン(80mL)を加えた。その後、そこへ、テトラヒドロフランに溶解させたイソプロピルマグネシウムクロリド(2mol/L、15mL)を滴下し、室温で1時間撹拌した。その後、氷浴を用いて冷却し、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(6.4mL)を加え、5分間撹拌した。その後、氷浴を取り除き、室温までゆっくりと昇温しながら3時間撹拌した。
その後、氷浴を用いて再び冷却した後、酢酸エチル(90mL)およびトルエン(30mL)の混合溶媒を用いて抽出し、得られた有機層を15重量%の食塩水(50mL)で2回洗浄し、有機層を得た。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮することにより溶媒を留去し、固体を得た。得られた固体を、再結晶(クロロホルムおよびメタノールの混合溶媒)を2回行うことにより精製し、50℃で一晩減圧乾燥を行うことで、目的物である化合物S1c(5.5g)を白色固体として得た。収率は74%であった。得られた化合物S1cのHPLC面積百分率値(検出波長UV254nm)は99.5%以上を示した。
【0320】
TLC/MS(DART positive):m/z=484[M+H]
【0321】
<stage4>
遮光した反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、金属錯体MC2(5.0g、2.6mmol)、化合物S1c(4.4g、9.1mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(360mg、0.31mmol)、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20mL)およびテトラヒドロフラン(210ml)を加え、加熱還流下で24時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、トルエン(400mL)およびイオン交換水(400mL)を加え、抽出し、有機層を得た。得られた有機層を、イオン交換水で2回、5重量%食塩水で1回洗浄し、有機層を得た。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮することにより溶媒を留去し、固体を得た。得られた固体を、再結晶(トルエンおよびイソプロパノールの混合溶媒)を行うことにより精製し、50℃で一晩減圧乾燥を行うことで、目的物である金属錯体(Ir−101)(3.9g)を赤色固体として得た。収率は55%であった。得られた金属錯体(Ir−101)のHPLC面積百分率値(検出波長UV254nm)は99.5%以上を示した。
【0322】
H−NMR(300MHz/CDCl):δ(ppm)=9.41(d,3H),9.21(dd,3H),8.39(d,12H),8.26(d,3H)、7.96(s,3H),7.45〜7.38(m,18H),7.27(dd,12H),7.23〜7.16(m,6H),6.96(d,18H),1.30(s,54H),1.22(s,54H).
LC/MS(APCI positive):m/z=2751[M+H]
【0323】
<実施例2> 金属錯体(Ir−114)の合成
【0324】
【化96】
【0325】
<stage1>
金属錯体MC3および金属錯体MC4は、特開2011−105701号公報に記載の方法に従って合成した。
【0326】
<stage2>
遮光した反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、金属錯体MC4(381mg、0.20mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(157mg、0.62mmol)、[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(PdCl(dppf)・CHCl、20mg、0.024mmol)、酢酸カリウム(118mg、1.2mmol)およびテトラヒドロフラン(13mL)を加え、加熱還流下で11時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、トルエン(10mL)を加えてから減圧濃縮することにより溶媒を留去し、固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン)により精製し、目的物を含むフラクションを得た。得られたフラクションを濃縮し、得られた固体をメタノールで洗浄した後、50℃にて一晩減圧乾燥を行うことで、目的物である金属錯体MC5(187mg)を赤色固体として得た。収率は47%であった。得られた金属錯体MC5のHPLC面積百分率値(検出波長UV254nm)は99.9%以上を示した。
【0327】
MALDI−TOF/MS(positive):m/z=1984[M]
【0328】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=9.25(s,1H),9.09(m,3H),8.89(d,1H),8.53(s,1H),8.36(m,5H),8.27(m,7H),7.86(m,1H),7.81(d,1H),7.76(s,2H),7.64(m,7H),7.42(m,13H),7.14−7.30(m,4H),7.07(t,2H),1.38(s,18H),1.35(s,30H),1.31(s,12H),1.24(s,18H).
【0329】
<stage3>
遮光した反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、金属錯体MC5(140mg、0.070mol)、4−ブロモトリフェニルアミン(51mg、0.154mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5.6mg、0.004mmol)、テトラヒドロフラン(9mL)および20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(258mg、0.343mmol)を加え、加熱還流下で8時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、トルエン(10mL)を加えてから減圧濃縮することにより溶媒を留去し、固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン)により精製し、目的物を含むフラクションを得た。得られたフラクションを濃縮し、得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム)により再度精製し、目的物を含むフラクションを得た。得られたフラクションを濃縮し、得られた固体をメタノールで洗浄した後、50℃にて一晩減圧乾燥を行うことで、目的物である金属錯体(Ir−114)(130mg)を赤色固体として得た。収率は84%であった。得られた金属錯体(Ir−114)のHPLC面積百分率値(検出波長UV254nm)は99.0%以上を示した。
【0330】
MALDI−TOF/MS(positive):m/z=2219[M]
H−NMR(600MHz,THF−d):δ(ppm)=9.49(s,1H),9.33(s,1H),9.26(d,1H),9.23(m,1H),9.03(d,1H),8.70(s,1H),8.60(d,1H),8.56(d,1H),8.43(d,4H),8.39(d,4H),8.22(s,1H),8.19(s,1H),8.08(m,1H),8.07(d,1H),7.85(s,2H),7.73(m,3H),7.69(d,1H),7.66(d,4H),7.60(d,2H),7.58(d,2H),7.51(m,8H),7.47(d,4H),7.32(d,1H),7.24(m,10H),7.15(m,3H),7.09(m,12H),6.98(m,4H),1.42(s,18H),1.36(s,18H),1.27(s,18H).
【0331】
<合成例2> 高分子化合物IP1の合成
(工程1)反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、国際公開第2011/013723号に記載の方法に従って合成した単量体CM1(185g)、国際公開第2002/045184号に記載の方法に従って合成した単量体CM2(35.9g)、特開2008−106241号公報に記載の方法に従って合成した単量体CM3(20.1g)、特開2003−226744号公報に記載の方法に従って合成した単量体CM4(104g)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(177mg)およびトルエン(4.3kg)を加え、100℃に加熱した。
【0332】
【化97】
【0333】
(工程2)その後、そこへ、20重量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(873g)を滴下し、100℃で5時間攪拌した。
【0334】
(工程3)その後、そこへ、フェニルボロン酸(3.08g)およびトルエン(120g)を加え、100℃で14時間攪拌した。
【0335】
(工程4)得られた反応液から水層を除いた後、そこに、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液およびトルエンを加え、40℃で3時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、水層を除去することにより有機層を得た。得られた有機層を、10重量%塩酸で2回、3重量%アンモニア水溶液で2回、水で2回洗浄した。洗浄した有機層を、アルミナカラム、シリカゲルカラムの順番で通すことにより精製した。得られた精製液をメタノールに滴下し、撹拌したところ、沈殿物が生じた。得られた沈殿物をろ取し、乾燥させることにより、高分子化合物IP1を204g得た。高分子化合物IP1のMnは6.7×10であり、Mwは2.3×10であった。
【0336】
高分子化合物IP1は、仕込み原料の量から求めた理論値では、単量体CM1から誘導される構成単位と、単量体CM2から誘導される構成単位と、単量体CM3から誘導される構成単位と、単量体CM4から誘導される構成単位とが、50:12.5:7.5:30のモル比で構成されてなる共重合体である。
【0337】
<合成例3>高分子化合物H1の合成
高分子化合物H1は、単量体CM2と、国際公開第2012/086671に記載の方法に従って合成した単量体CM5と、特開2004−143419号公報に記載の方法に従って合成した単量体CM6とを用いて、特開2012−216815号公報に記載の方法に従って合成した。
【0338】
【化98】
【0339】
高分子化合物H1は、仕込み原料の量から求めた理論値では、単量体CM2から誘導される構成単位と、単量体CM5から誘導される構成単位と、単量体CM6から誘導される構成単位とが、45:50:5のモル比で構成されてなる共重合体である。
【0340】
<合成例4>単量体CM7の合成
【0341】
【化99】
【0342】
化合物CM7aは、国際公報第2012/086671号に記載の方法に従って合成した。
【0343】
<Step1>
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、4−ブロモ−n−オクチルベンゼン(250g)およびテトラヒドロフラン(脱水品、2.5L)を加え、−70℃以下に冷却した。その後、そこへ、2.5mol/L濃度のn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(355mL)を滴下し、−70℃以下にて3時間攪拌した。その後、そこへ、テトラヒドロフラン(脱水品、400mL)に化合物CM7a(148g)を溶解させた溶液を滴下した後、室温まで昇温し、室温にて一晩攪拌した。得られた反応混合物を0℃に冷却した後、水(150mL)を加えて攪拌した。得られた反応混合物を減圧濃縮し、有機溶媒を除去した。得られた反応混合物に、ヘキサン(1L)および水(200mL)を加え、分液操作によって水層を除去した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。得られた混合物をろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することで、化合物CM7b(330g)を黄色油状物として得た。
【0344】
<Step2>
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物CM7b(330g)およびジクロロメタン(900mL)を加え、5℃以下に冷却した。その後、そこへ、2.0mol/L濃度の三フッ素化ホウ素ジエチルエーテル錯体(245mL)を滴下した。その後、室温まで昇温し、室温にて一晩攪拌した。得られた反応混合物を、氷水(2L)の入った容器に加え、30分間攪拌した後、水層を除去した。得られた有機層を、10重量%濃度のリン酸カリウム水溶液(1L)で1回、水(1L)で2回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた混合物をろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することで油状物を得た。得られた油状物をトルエン(200mL)に溶解させた後、シリカゲルを敷いたろ過器に通液することでトルエン溶液1を得た。トルエン溶液1を得た後、シリカゲルを敷いたろ過器に更にトルエン(約3L)を通液することでトルエン溶液2を得た。トルエン溶液1とトルエン溶液2を合一した後、減圧濃縮することで油状物を得た。得られた油状物にメタノール(500mL)を加え、攪拌した。得られた反応混合物をろ過することで固体を得た。得られた固体に、酢酸ブチルおよびメタノールの混合溶媒を加え、再結晶を繰り返すことにより、単量体CM7c(151g)を白色固体として得た。得られた単量体CM7cのHPLC面積百分率値(検出波長UV280nm)は99.0%以上を示した。
【0345】
H−NMR(400MHz/CDCl):δ(ppm)=7.56(d,2H),7.49(d,2H),7.46(dd, 2H),7.06〜7.01(m,8H),2.55(t,4H),1.61〜1.54(m,4H),1.30〜1.26(m,20H),0.87(t,6H).
【0346】
<Step3>
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、単量体CM7c(100g)およびテトラヒドロフラン(脱水品、1000mL)を加え、−70℃以下に冷却した。その後、そこへ、2.5mol/L濃度のn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(126mL)を滴下し、−70℃以下にて5時間攪拌した。その後、そこへ、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(81mL)を滴下した。その後、室温まで昇温し、室温にて一晩攪拌した。得られた反応混合物を−30℃に冷却し、2.0mol/Lの塩酸−ジエチルエーテル溶液(143mL)を滴下した。その後、室温まで昇温し、減圧濃縮することにより固体を得た。得られた固体にトルエン(1.2L)を加え、室温にて1時間攪拌した後、シリカゲルを敷いたろ過器に通液することによりろ液を得た。得られたろ液を減圧濃縮することにより固体を得た。得られた固体にメタノールを加えて攪拌した後、ろ過することにより固体を得た。得られた固体に対して、イソプロピルアルコールを用いた再結晶を繰り返すことにより精製した後、50℃にて一晩減圧乾燥することにより、単量体CM7(72g)を白色固体として得た。得られた単量体CM7のHPLC面積百分率値(検出波長UV280nm)は99.0%以上を示した。
【0347】
H−NMR(400MHz/CDCl):δ(ppm)=7.82(d,2H),7.81(s,2H),7.76(d,2H),7.11(d,4H)、7.00(d,4H),2.52(t,4H),1.59〜1.54(m,4H),1.36〜1.26(m,20H),1.31(s,24H),0.87(t,6H).
【0348】
<合成例5>高分子化合物H2の合成
【0349】
(工程1)反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、単量体CM7(4.7686g)、国際公報第2012/086671号に記載の方法に従って合成した単量体CM8(0.7734g)、単量体CM2(1.9744g)、国際公報第2009/131255号に記載の方法に従って合成した単量体CM9(0.3308g)、単量体CM6(0.4432g)およびトルエン(67mL)を加えて、105℃に加熱しながら攪拌した。
【0350】
【化100】
【0351】
(工程2)その後、これに、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(4.2mg)を加え、次いで、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20mL)を滴下した後、還流下で3時間攪拌した。
【0352】
(工程3)その後、これに、フェニルボロン酸(0.077g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(4.2mg)、トルエン(60mL)および20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20mL)を加え、還流下で24時間攪拌した。
【0353】
(工程4)有機層を水層と分離した後、得られた有機層に、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(3.33g)およびイオン交換水(67mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、得られた有機層を、イオン交換水(78mL)で2回、3重量%酢酸水溶液(78mL)で2回、イオン交換水(78mL)で2回の順番で洗浄した。有機層を水層と分離した後、得られた有機層をメタノールに滴下することで固体を沈殿させ、ろ取、乾燥させることにより、固体を得た。得られた固体をトルエンに溶解させ、予めトルエンを通液したシリカゲルカラムおよびアルミナカラムに通液させた。得られた溶液をメタノールに滴下することで固体を沈殿させ、ろ取、乾燥させることにより、高分子化合物H2(4.95g)を得た。高分子化合物H2のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、Mn=1.4×10、Mw=4.1×10であった。
【0354】
高分子化合物H2は、仕込み原料の量から求めた理論値では、単量体CM7から誘導される構成単位と、単量体CM8から誘導される構成単位と、単量体CM2から誘導される構成単位と、単量体CM9から誘導される構成単位と、単量体CM6から誘導される構成単位とが、50:10:30:5:5のモル比で構成されてなる共重合体である。
【0355】
<比較例CE1> 発光素子CE1の作製および評価
【0356】
(発光素子CE1の作製)
(陽極および正孔注入層の形成)
ガラス基板にスパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けることにより陽極を形成した。該陽極上に、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ−1200(Plextronics社製)をスピンコート法により65nmの厚さで成膜し、大気雰囲気下において、ホットプレート上で170℃、15分間加熱することにより正孔注入層を形成した。
【0357】
(正孔輸送層の形成)
キシレンに高分子化合物IP1を0.70重量%の濃度で溶解させた。得られたキシレン溶液を用いて、正孔注入層の上にスピンコート法により20nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、ホットプレート上で180℃、60分間加熱させることにより正孔輸送層を形成した。
【0358】
(発光層の形成)
キシレンに、高分子化合物H1および金属錯体MC1(高分子化合物H1/金属錯体MC1=92.5重量%/7.5重量%)を1.7重量%の濃度で溶解させた。得られたキシレン溶液を用いて、正孔輸送層の上にスピンコート法により90nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、150℃、10分間加熱させることにより発光層とした形成した。
【0359】
(陰極の形成)
発光層の形成した基板を蒸着機内において、1.0×10-4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、発光層の上にフッ化ナトリウムを約4nm、次いで、フッ化ナトリウム層の上にアルミニウムを約80nm蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止することにより、発光素子CE1を作製した。
【0360】
(発光素子CE1の評価)
発光素子CE1に電圧を印加することによりEL発光が観測された。1000cd/mにおける発光スペクトルピーク最大波長600nmであり、CIE色度座標(x、y)は(0.615、0.380)であった。また、初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、発光輝度が初期輝度の95%となるときのまでの所要時間を測定したところ、16.2時間であった。この初期輝度の95%となるまでに要した時間を駆動初期の輝度寿命(以下、LT95と表す。)とし、これらの結果を下記表2に示す。
【0361】
<比較例CE2> 発光素子CE2の作製および評価
比較例CE1における、高分子化合物H1および金属錯体MC1に代えて、高分子化合物H1および金属錯体MC3を用いた以外は比較例CE1と同様にして、発光素子CE2を作製した。
発光素子CE2に電圧を印加することによりEL発光が観測された。1000cd/mにおける発光スペクトル最大ピーク波長615nmであり、CIE色度座標(x、y)は(0.642、0.353)であった。また、初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させた際のLT95は28.4時間であった。これらの結果を下記表2に示す。
【0362】
<実施例E1> 発光素子E1の作製および評価
比較例CE1における、高分子化合物H1および金属錯体MC1に代えて、高分子化合物H1および金属錯体(Ir−101)を用いた以外は比較例CE1と同様にして、発光素子E1を作製した。
発光素子E1に電圧を印加することによりEL発光が観測された。1000cd/mにおける発光スペクトル最大ピーク波長625nmであり、CIE色度座標(x、y)は(0.655、0.333)であった。また、初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させた際のLT95は55.0時間であった。これらの結果を下記表2に示す。
【0363】
<実施例E2> 発光素子E2の作製および評価
比較例CE1における、高分子化合物H1および金属錯体MC1に代えて、高分子化合物H1および金属錯体(Ir−114)を用いた以外は比較例CE1と同様にして、発光素子E2を作製した。
発光素子E2に電圧を印加することによりEL発光が観測された。1000cd/mにおける発光スペクトル最大ピーク波長620nmであり、CIE色度座標(x、y)は(0.654、0.338)であった。また、初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させた際のLT95は47.4時間であった。これらの結果を下記表2に示す。
【0364】
<比較例CE3> 発光素子CE3の作製および評価
比較例CE1における、高分子化合物H1および金属錯体MC1に代えて、高分子化合物H2および金属錯体MC1を用いた以外は比較例CE1と同様にして、発光素子CE3を作製した。
発光素子CE3に電圧を印加することによりEL発光が観測された。1000cd/mにおける発光スペクトル最大ピーク波長600nmであり、CIE色度座標(x、y)は(0.616、0.381)であった。また、初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させた際のLT95は11.0時間であった。これらの結果を下記表2に示す。
【0365】
<比較例CE4> 発光素子CE4の作製および評価
比較例CE1における、高分子化合物H1および金属錯体MC1に代えて、高分子化合物H2および金属錯体MC3を用いた以外は比較例CE1と同様にして、発光素子CE4を作製した。
発光素子CE4に電圧を印加することによりEL発光が観測された。1000cd/mにおける発光スペクトル最大ピーク波長615nmであり、CIE色度座標(x、y)は(0.646、0.351)であった。また、初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させた際のLT95は14.5時間であった。これらの結果を下記表2に示す。
【0366】
<実施例E3> 発光素子E3の作製および評価
比較例CE1における、高分子化合物H1および金属錯体MC1に代えて、高分子化合物H2および金属錯体(Ir−101)を用いた以外は比較例CE1と同様にして、発光素子E3を作製した。
発光素子E3に電圧を印加することによりEL発光が観測された。1000cd/mにおける発光スペクトル最大ピーク波長620nmであり、CIE色度座標(x、y)は(0.658、0.337)であった。また、初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させた際のLT95は21.1時間であった。これらの結果を下記表2に示す。
【0367】
<実施例E4> 発光素子E4の作製および評価
比較例CE1における、高分子化合物H1および金属錯体MC1に代えて、高分子化合物H2および金属錯体(Ir−114)を用いた以外は比較例CE1と同様にして、発光素子E4を作製した。
発光素子E4に電圧を印加することによりEL発光が観測された。1000cd/mにおける発光スペクトル最大ピーク波長620nmであり、CIE色度座標(x、y)は(0.657、0.340)であった。また、初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させた際のLT95は18.7時間であった。これらの結果を下記表2に示す。
【0368】
【表2】
【0369】
これらの結果から、本発明の金属錯体(Ir−101)および(Ir−114)を用いて得られる発光素子は、金属錯体MC1およびMC3を用いて得られる発光素子と比較して、駆動初期の輝度寿命に優れることがわかる。また、本発明の金属錯体(Ir−101)および(Ir−114)を用いて得られる発光素子は、NTSC(National Television System Committee)規格に定められる赤色(0.67、0.33)と近い色度を示すことから、赤色発光として色純度に優れることがわかる。