(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分(A)が、上記一般式(1)で表される加水分解性オルガノポリシロキサンを5〜70質量%含有してなるものである請求項1又は2記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
式(1)で表される加水分解性オルガノポリシロキサンが、片末端3官能の加水分解性オルガノポリシロキサンである請求項5記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
熱伝導性無機充填剤(B)が、金属系粉末、金属酸化物系粉末、金属水酸化物系粉末及び金属窒化物系粉末の中から選択される少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
熱伝導性無機充填剤(B)が、銀粉末、アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ホウ素粉末及び水酸化アルミニウム粉末から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、1種又は2種以上のオルガノポリシロキサン(A)、及び熱伝導性無機充填剤(B)を含有してなるものである。
【0013】
〔成分(A)〕
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物を構成する成分(A)のオルガノポリシロキサンは、その1種を単独で、又は2種以上の混合物として使用できるが、いずれの場合もB型回転粘度計(ロータNo.4/10rpm)による25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・s、特に100〜100,000mPa・sの液状であることが好ましい。25℃における粘度が10mPa・sより小さいと、得られる熱伝導性シリコーングリース組成物の保管時の分離などが発生し、安定性に乏しくなる場合があり、1,000,000mPa・sより大きいと、成分(B)との混合が困難となる場合がある。
【0014】
成分(A)は、下記一般式(1)で表される加水分解性オルガノポリシロキサンを含有することが好ましい。
【化4】
[式中、R
1は同一又は異種の一価炭化水素基であり、Xは同一もしくは異種の一価炭化水素基又は−R
2−SiR
1a(OR
3)
(3-a)(式中、R
1は前記と同じであり、R
2は酸素原子又はアルキレン基であり、R
3はアルキル基であり、aは0〜2の整数である。)で表される基で、少なくとも1個が−R
2−SiR
1a(OR
3)
(3-a)で表される基である。m及びnはそれぞれ1≦m≦1,000の整数、及び0≦n≦1,000の整数である。]
【0015】
ここで、上記式(1)中、R
1は同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜4の非置換又は置換一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;2−フェニルエチル基、2−メチル−2−フェニルエチル基等のアラルキル基などの一価炭化水素基;3,3,3−トリフロロプロピル基、2−(パーフロロブチル)エチル基、2−(パーフロロオクチル)エチル基、p−クロロフェニル基等のハロゲン置換一価炭化水素基などが挙げられる。合成のし易さ及びコストの面から、R
1の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0016】
Xは同一もしくは異種の、好ましくは炭素数1〜9、より好ましくは炭素数1〜6の非置換もしくは置換一価炭化水素基、又は−R
2−SiR
1a(OR
3)
(3-a)で表される基である。一価炭化水素基としては、上記R
1で例示したものと同様のものが挙げられる。また、−R
2−SiR
1a(OR
3)
(3-a)で表される基において、R
1は上記R
1と同じであり、R
2は酸素原子又は好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基であり、酸素原子であることが好ましい。R
3は好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3の、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基であり、合成のし易さ及び経済面から特にメチル基であることが好ましい。aは0〜2の整数、好ましくは0である。Xとして、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、−R
2−SiR
1a(OR
3)
(3-a)で表される基である。なお、Xの少なくとも1個、好ましくは1〜3個は−R
2−SiR
1a(OR
3)
(3-a)で表される基であり、特にa=0である3官能の加水分解性基を持つオルガノポリシロキサンが好ましく、この場合、両末端に3官能の加水分解性基を持つオルガノポリシロキサンであっても、片末端が3官能の加水分解性基で、他方の末端がトリオルガノシリル基であるオルガノポリシロキサンであってもよいが、片末端に3官能の加水分解性基を有し、他方の末端がトリオルガノシリル基であるオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0017】
mは1≦m≦1,000、好ましくは5≦m≦200の整数であり、nは0≦n≦1,000、好ましくは0≦n≦100の整数であり、m+nは1≦m+n≦1,000、好ましくは5≦m+n≦200の整数である。
【0018】
式(1)で表される3官能の加水分解性オルガノポリシロキサンとしては、下記に示すものが挙げられる。
【化5】
(式中、xは2〜100、特に5〜50の整数であり、yは5〜200、特に5〜100の整数である。)
【0019】
成分(A)中における上記一般式(1)で表される加水分解性オルガノポリシロキサンの含有量は、5〜70質量%であることが好ましい。上記含有量が70質量%より多いと耐ズレ性が悪くなる場合があり、5質量%未満では熱伝導性シリコーングリース組成物の粘度が高い場合がある。本発明において、上記含有量は特に10〜60質量%であることが好ましい。
【0020】
成分(A)のオルガノポリシロキサンにおいて、上記一般式(1)で表される加水分解性オルガノポリシロキサン以外のオルガノポリシロキサンとしては、
(I)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、又は該アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、下記一般式(2)
【化6】
(式中、R
4は独立に水素原子又は炭素数1〜20の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R
5は炭素数1〜20の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基であり、k及びlはそれぞれ1≦k≦1,000の整数、及び0≦l≦1,000の整数で、R
4が一価炭化水素基の場合、kは2以上である。)
で表される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを、白金単体、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体等の白金系触媒の存在下に反応させて得られるオルガノポリシロキサン(高分子化したオルガノポリシロキサン、又はゲル状オルガノポリシロキサン)、
(II)1分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合したヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサン、
(III)直鎖シリコーンオイル
等が挙げられる。
なお、上記(I)〜(III)のオルガノポリシロキサンは、これらの1種又は2種以上を、上述した式(1)で表される加水分解性オルガノポリシロキサンと共に、均一に混合して用いることもできる。
【0021】
上記(I)において、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜20個有するものであれば、直鎖状でも分岐状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。
【0022】
上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基等の炭素数2〜8、特に2〜6のものが例示され、合成のし易さ及びコストの面からビニル基であることが好ましい。
【0023】
ケイ素原子に結合するアルケニル基は、オルガノポリシロキサンの分子鎖末端又は途中のいずれに存在していてもよい。柔軟性の面からは、両末端にのみ存在することが好ましいが、部分的に片末端のみに存在するものがあってもよい。
【0024】
また、ケイ素原子に結合するアルケニル基以外の他の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基などの炭素数1〜20、特に1〜12の一価炭化水素基が例示される他、クロロメチル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基も例として挙げられる。これらのうち、メチル基及びフェニル基が好ましく、合成のし易さ及びコストの面から、90モル%以上の有機基がメチル基であることが好ましい。
【0025】
上記(I)において、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、B型回転粘度計(ロータNo.4/10rpm)により測定した25℃における粘度が0.05〜5,000mPa・s、特に0.5〜2,000mPa・sであることが好ましい。
【0026】
1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
(I)において、下記式(2)で表される1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜50個のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、上記1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化付加反応するものである。
【化7】
(式中、R
4は独立に水素原子又は炭素数1〜20の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R
5は炭素数1〜20の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基であり、k及びlはそれぞれ1≦k≦1,000の整数、及び0≦l≦1,000の整数で、R
4が一価炭化水素基の場合、kは2以上である。)
【0028】
上記式(2)中、R
4は独立に水素原子又は炭素数1〜20、特に1〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R
5は炭素数1〜20、特に1〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基である。R
4、R
5における一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;2−フェニルエチル基、2−メチル−2−フェニルエチル基等のアラルキル基などの脂肪族不飽和結合を含有しない一価炭化水素基;3,3,3−トリフロロプロピル基、2−(パーフロロブチル)エチル基、2−(パーフロロオクチル)エチル基、p−クロロフェニル基等のハロゲン置換一価炭化水素基などが挙げられる。合成のし易さ及びコストの面から、R
4、R
5の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0029】
kは1≦k≦1,000、好ましくは2≦k≦200の整数であり、lは0≦l≦1,000、好ましくは0≦l≦200の整数であり、k+lは2≦k+l≦300、好ましくは2≦k+l≦200の整数である。なお、R
4が一価炭化水素基の場合、kは2以上である。
【0030】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
(I)において、上記式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、上記ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン中のアルケニル基1モルに対してオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基が0.1〜5モル、特に0.5〜2モルとなる量であることが好ましい。上記SiH基量が少なすぎると十分な網状構造を得ることができず、硬化後に必要とされる硬さが得られない場合があり、多すぎると硬化物の物性の経時変化が大きくなり、保存安定性が悪化する場合がある。
【0032】
また、(I)において、白金単体、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体等の白金系触媒は、上記アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン中のアルケニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進させるものであり、その含有量は触媒量とすることができるが、通常、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンに対して0.1〜500ppm程度とすることが好ましい。
【0033】
なお、上記(I)において、ゲル状オルガノポリシロキサンは、上述した1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、上記式(2)で表される1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを、上記白金系触媒により付加反応させて得られるものである。
【0034】
(I)は、上記各成分の所定量を10〜200℃、特に60〜150℃にて5〜180分間、特に30〜120分間均一に混合することにより調製することができる。
【0035】
成分(A)において、(I)を配合する場合の配合量は、成分(A)中10〜90質量%、特に20〜80質量%であることが好ましい。(I)が多すぎると熱伝導性シリコーングリース組成物よりブリードアウトする場合があり、少なすぎると熱伝導性シリコーングリース組成物が増粘して塗布し難い場合がある。
【0036】
上記(II)において、ヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合したヒドロキシル基を1分子中に少なくとも1個、特には1〜4個有するものであれば、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0037】
ケイ素原子に結合したヒドロキシル基は、オルガノポリシロキサンの分子鎖末端又は途中のいずれに存在してもよい。熱伝導性シリコーングリース組成物は低硬度であることが好ましいことから、両末端にのみ存在することが好ましい。
【0038】
ケイ素原子に結合したヒドロキシル基以外の他の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基などの炭素数1〜20、特に1〜12の一価炭化水素基が例示される他、クロロメチル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基も例として挙げられる。これらのうち、合成のし易さ及びコストの面から、90モル%以上の有機基がメチル基であることが好ましい。
【0039】
上記(II)において、ヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサンは、B型回転粘度計(ロータNo.4/10rpm)により測定した25℃における粘度が100〜50,000mPa・s、特に200〜30,000mPa・sであることが好ましい。
【0040】
ヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサンは、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
なお、上記(II)は、上記ヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサンと、硬化剤としてイソプロペノキシ化合物と、触媒としてグアニジン化合物とを混合して、ゲルになるようにしてもよい。
【0042】
(II)において、硬化剤であるイソプロペノキシ化合物の配合量は、上記ヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.5〜30質量部、特に1〜20質量部であることが好ましい。
また、(II)において、触媒であるグアニジン化合物の配合量は、上記ヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部、特に0.5〜5質量部であることが好ましい。
【0043】
(II)において、ゲルとするには、上記各成分を10〜40℃、特に20〜30℃にて10〜180分間、特に30〜120分間均一に混合することにより調製することができる。
【0044】
成分(A)において、(II)を配合する場合の配合量は、成分(A)中20〜80質量%、特に30〜70質量%であることが好ましい。(II)が多すぎると熱伝導性シリコーングリース組成物が増粘して塗布不可能となる場合があり、少なすぎると熱伝導性シリコーングリース組成物よりブリードアウトする場合がある。
【0045】
上記(III)において、直鎖シリコーンオイルとしては、下記一般式(3)で表されるオルガノポリシロキサンが例示できる。
【化8】
(式中、R
6は同一又は異種の炭素数1〜6の脂肪族不飽和結合を含有しない一価炭化水素基であり、pは5≦p≦2,000の整数である。)
【0046】
上記式(3)中、R
6は独立に炭素数1〜6、特に1〜3の脂肪族不飽和結合を含有しない一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基などの脂肪族不飽和結合を含有しない一価炭化水素基;3,3,3−トリフロロプロピル基、2−(パーフロロブチル)エチル基、2−(パーフロロオクチル)エチル基、p−クロロフェニル基等のハロゲン置換一価炭化水素基などが挙げられる。合成のし易さ及びコストの面から、メチル基であることが好ましい。
また、pは5≦p≦2,000、特に10≦p≦1,000の整数である。
【0047】
このような直鎖シリコーンオイルとして、具体的には、反応基を持たないジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、もしくは環状体モノマーから生成した共重合体等が例示でき、これらの中でもジメチルポリシロキサンが好ましい。
直鎖シリコーンオイルは、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
成分(A)において、(III)を配合する場合の配合量は、成分(A)中0.1〜90質量%、特に10〜80質量%であることが好ましい。(III)が多すぎると熱伝導性シリコーングリース組成物よりオイルブリードする場合があり、少なすぎると熱伝導性シリコーングリース組成物の塗布性が乏しくなる場合がある。
【0049】
〔成分(B)〕
成分(B)の熱伝導性無機充填剤は、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物に熱伝導性を付与する充填剤である。
【0050】
本発明で使用する成分(B)は、平均粒径が0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、特に好ましくは1〜30μmであることが必要である。平均粒径が0.1μmより小さくても100μmより大きくても、グリースが不均一になり、耐ズレ性が悪くなる。なお、平均粒径は、日機装株式会社製の粒度分析計であるマイクロトラックMT3300EXにより測定した、体積基準の累積平均径である。
【0051】
成分(B)の熱伝導性無機充填剤としては、金属系粉末、金属酸化物系粉末、金属水酸化物系粉末及び金属窒化物系粉末の中から選択される少なくとも1種であることが好ましく、具体的には、アルミニウム粉末、銀粉末、銅粉末、ニッケル粉末、酸化亜鉛粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化ケイ素粉末、酸化マグネシウム粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ホウ素粉末、窒化ケイ素粉末、炭化ケイ素粉末、ダイヤモンド粉末、グラファイト粉末、カーボンナノチューブ粉末、金属ケイ素粉末、カーボンファイバー粉末、フラーレン粉末が挙げられ、特には、銀粉末、アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ホウ素粉末、水酸化アルミニウム粉末であることが好ましい。
熱伝導性無機充填剤は1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
成分(B)である熱伝導性無機充填剤の配合量は、成分(A)100質量部に対して200〜2,000質量部、好ましくは500〜2,000質量部、より好ましくは700〜1,500質量部の範囲であることが必要である。200質量部より少ないと十分な熱伝導率が得られないだけでなく、グリースとしての強度が保てないため、ズレ易くなる。また、2,000質量部より多いとグリース状を保つことができない。
【0053】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物には、更に劣化を防ぐために酸化防止剤を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0054】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物を製造する場合には、成分(A)、(B)及び必要によりその他成分を加えて、トリミックス、ツウィンミックス、プラネタリミキサー(いずれも井上製作所(株)製混合機の登録商標)、ウルトラミキサー(みずほ工業(株)製混合機の登録商標)、ハイビスディスパーミックス(特殊機化工業(株)製混合機の登録商標)等の混合機を用いて混合する。必要であれば50〜170℃にて1〜5時間加熱してもよい。
【0055】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、25℃における粘度が100〜1,000Pa・sであり、好ましくは150〜900Pa・sであり、より好ましくは200〜800Pa・sである。粘度が低すぎると印刷物の形状維持が困難であり、版の下へのにじみ出しが発生し、高すぎると印刷そのものが困難である。ここで、上記粘度は、株式会社マルコム製の型番PC−1TL(回転数10rpm)を用いて測定したものである。なお、粘度を上記範囲とするには、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物において、前述の成分比にコントロールすることにより達成できる。
【0056】
また、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、下記レオメータ測定における特定周波数(4.642Hz)の下記ピーク高さが0.05以下、好ましくは0〜0.04、より好ましくは0〜0.03を示すものである。ピーク高さが0.05を超えると印刷最高速度が低下して生産性が低下する。
レオメータ測定:
測定機 HAAKE RS6000
測定冶具 コーン・プレート C20/20°TiL
測定ギャップ 0.105mm(液量:0.08ml)
前処理条件 7.5(1/S)等速回転 5分間
測定モード 固定変形量−周波数依存性測定
変形条件 CD−Auto Strain 4π/100±π/100
測定周波数 0.1〜100Hz
測定温度 23℃±2℃
上記条件で、η’の周波数依存性を測定する。
ピーク高さ:前記レオメータピーク測定のη’の周波数依存性を測定結果より、周波数4.642Hzのη’を“η’実測”とし、周波数2.415Hzと6.813Hzを結ぶ直線上の周波数4.642Hzのη’を“η’仮想”とした場合に、ピーク高さ=log(η’実測/η’仮想)とする。
なお、ピーク高さを上記範囲とするためには、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物を、前述の成分比率にコントロールすることにより達成できる。
【0057】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、熱伝導性に優れるだけでなく、耐ズレ性と印刷性が良好であるので、使用中に熱が発生する電気・電子部品からの除熱に好適である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を調製例、実施例
、参考例及び比較例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。本発明の優位性をより明確にするために行った実施例及び比較例に係る試験は、次のようにして行った。
【0059】
〔グリース粘度〕
熱伝導性シリコーングリース組成物の粘度の測定は、株式会社マルコム製の型番PC−1TL(回転数1rpm、10rpm)を用いて行った。
【0060】
〔熱伝導率〕
熱伝導率は、京都電子工業株式会社製のTPA−501を用いて、25℃において測定した。
【0061】
〔印刷最高速度〕
熱伝導性シリコーングリース組成物の印刷最高速度は、下記のスクリーンと装置を使って印刷して目視により観察した。直径0.5mm以上の非印刷部分があった場合に不合格とした。合格となる最高速度を印刷最高速度とした。
印刷装置: ミノグループ製 エクレアEA1515
マスク: スクリーン 280メッシュ
マスク開口部: 41mm×28mm
基材: アルミニウム板
待ち時間: 0.5秒
過走距離: 30mm
基材との距離: 1.6mm
【0062】
〔ピーク高さ〕
熱伝導性シリコーングリース組成物の下記レオメータ測定におけるピーク高さを固定変形量でη’の周波数依存性を測定することにより算出した。
レオメータ測定:
測定機 HAAKE RS6000
測定冶具 コーン・プレート C20/20°TiL
測定ギャップ 0.105mm(液量:0.08ml)
前処理条件 7.5(1/S)等速回転 5分間
測定モード 固定変形量−周波数依存性測定
変形条件 CD−Auto Strain 4π/100±π/100
測定周波数 0.1〜100Hz
測定温度 23℃±2℃
ピーク高さ:前記レオメータピーク測定のη’の周波数依存性を測定結果より、周波数4.642Hzのη’を“η’実測”とし、周波数2.415Hzと6.813Hzを結ぶ直線上の周波数4.642Hzのη’を“η’仮想”とした場合に、ピーク高さ=log(η’実測/η’仮想)とする。
【0063】
〔ズレ性〕
熱伝導性シリコーングリース組成物のズレ性は、次の工程に従って測定した数値で評価した。
(1)0.5mmのスペーサーを設け、アルミニウム板とスライドガラスの間に、直径1.5cmの円状になるように熱伝導性シリコーングリース組成物を挟みこむ。
(2)次に、この試験片を地面に対して鉛直にセットし、−45℃と150℃(各30分)を交互に繰り返すヒートサイクル試験を行うように、エスペック株式会社製の熱衝撃試験機(型番:TSE−11−A)の中に配置し、1,000サイクル試験を行う。
(3)1,000サイクル試験の後、熱伝導性シリコーングリース組成物が元の場所からどのくらいズレたかを測定する。
【0064】
[調製例1]成分(A)のオルガノポリシロキサンA−1の合成
攪拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を設けた内容積2,000mlのフラスコに、両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、主鎖の5モル%がフェニル基で残りの95モル%がメチル基である、25℃におけるB型回転粘度計による粘度がロータNo.4/10rpmで1,100mPa・sのオルガノポリシロキサン600gと、下記式(4)
【化9】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン10gと、下記式(5)
【化10】
で示される加水分解性オルガノポリシロキサン390gとを入れた。更に、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のジメチルビニルシリル末端封鎖のジメチルポリシロキサン溶液(白金原子を1質量%含有する白金触媒)を0.25g投入した後、120℃で1時間混合撹拌してビニル基を含有する(ビニル基量0.0024mol/100g)オルガノポリシロキサンA−1を得た。
得られたオルガノポリシロキサンA−1中に含有される加水分解性オルガノポリシロキサン量は39質量%に相当する量であった。また、オルガノポリシロキサンA−1の25℃におけるB型回転粘度計による粘度はロータNo.4/10rpmで8,500mPa・sであった。
【0065】
[調製例2]成分(A)のオルガノポリシロキサンA−2の合成
調製例1で使用した式(5)で示される加水分解性オルガノポリシロキサンの仕込み量を140gとしたこと以外は、全て調製例1と同様にしてビニル基を含有する(ビニル基量0.0032mol/100g)オルガノポリシロキサンA−2を得た。
得られたオルガノポリシロキサンA−2中に含有される加水分解性オルガノポリシロキサン量は19質量%に相当する量であった。また、オルガノポリシロキサンA−2の25℃におけるB型回転粘度計による粘度はロータNo.4/10rpmで15,000mPa・sであった。
【0066】
[調製例3]成分(A)のオルガノポリシロキサンA−3の合成
調製例1で使用した式(4)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの仕込み量を12gとしたこと以外は、全て調製例1と同様にしてビニル基を含有する(ビニル基量0.0014mol/100g)オルガノポリシロキサンA−3を得た。
得られたオルガノポリシロキサンA−3中に含有される加水分解性オルガノポリシロキサン量は39質量%に相当する量であった。また、オルガノポリシロキサンA−3の25℃におけるB型回転粘度計による粘度はロータNo.4/10rpmで12,000mPa・sであった。
【0067】
[調製例4]成分(A)のオルガノポリシロキサンA−4の合成
調製例1で使用した式(4)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの仕込み量を15gとしたこと以外は、全て調製例1と同様にしてSiH基を含有する(SiH基量0.0001mol/100g)オルガノポリシロキサンA−4を得た。
得られたオルガノポリシロキサンA−4中に含有される加水分解性オルガノポリシロキサン量は39質量%に相当する量であった。また、オルガノポリシロキサンA−4の25℃におけるB型回転粘度計による粘度はロータNo.4/10rpmで16,000mPa・sであった。
【0068】
[調製例5]成分(A)のオルガノポリシロキサンA−5の合成
調製例1で使用した式(4)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン10gに代えて、下記式(6)
【化11】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン20g、及び下記式(7)
【化12】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン20gを用いた以外は、全て調製例1と同様にしてビニル基を含有する(ビニル基量0.0017mol/100g)オルガノポリシロキサンA−5を得た。
得られたオルガノポリシロキサンA−5中に含有される加水分解性オルガノポリシロキサン量は38質量%に相当する量であった。また、オルガノポリシロキサンA−5の25℃におけるB型回転粘度計による粘度はロータNo.4/10rpmで11,000mPa・sであった。
【0069】
[調製例6]成分(A)のオルガノポリシロキサンA−6の合成
調製例1で使用した式(4)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン10gに代えて、上記式(6)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン35g、及び上記式(7)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5gを用いた以外は、全て調製例1と同様にしてSiH基を含有する(SiH基量0.0005mol/100g)オルガノポリシロキサンA−6を得た。
得られたオルガノポリシロキサンA−6中に含有される加水分解性オルガノポリシロキサン量は38質量%に相当する量であった。また、オルガノポリシロキサンA−6の25℃におけるB型回転粘度計による粘度はロータNo.4/10rpmで15,000mPa・sであった。
【0070】
[調製例7]成分(A)のオルガノポリシロキサンA−7の合成
調製例1で使用した式(5)で示される加水分解性オルガノポリシロキサン390gに代えて、下記式(8)
【化13】
で示される加水分解性オルガノポリシロキサン390gを用いた以外は、全て調製例1と同様にしてビニル基を含有する(ビニル基量0.0024mol/100g)オルガノポリシロキサンA−7を得た。
得られたオルガノポリシロキサンA−7中に含有される加水分解性オルガノポリシロキサン量は39質量%に相当する量であった。また、オルガノポリシロキサンA−7の25℃におけるB型回転粘度計による粘度はロータNo.4/10rpmで9,500mPa・sであった。
【0071】
[調製例8]成分(A)のオルガノポリシロキサンA−8
攪拌機を設けた内容積2,000mlのフラスコに、下記式(9)
【化14】
で示される25℃におけるB型回転粘度計による粘度がロータNo.4/10rpmで10,000mPa・sのジメチルポリシロキサン600gと、下記式(5)
【化15】
で示される加水分解性オルガノポリシロキサン400gとを入れ、室温(25℃)で60分間混合撹拌してオルガノポリシロキサンA−8を得た。
得られたオルガノポリシロキサンA−8中に含有される、加水分解性オルガノポリシロキサン量は40質量%に相当する量であった。また、オルガノポリシロキサンA−8の25℃におけるB型回転粘度計による粘度はロータNo.4/10rpmで6,000mPa・sであった。
【0072】
[調製例9]成分(A)のオルガノポリシロキサンA−9の調製
攪拌機を設けた内容積2,000mlのフラスコに、両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、主鎖の5モル%がフェニル基で残りの95モル%がメチル基である、25℃におけるB型回転粘度計による粘度がロータNo.4/10rpmで1,100mPa・sのオルガノポリシロキサン600gと、調製例1で使用した式(4)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン12gと、調製例1で使用した式(5)で示される加水分解性オルガノポリシロキサン390gとを入れた。更に、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のジメチルビニルシリル末端封鎖のジメチルポリシロキサン溶液(白金原子を1質量%含有する白金触媒)を0.25g投入した後、室温(25℃)で60分間混合撹拌してオルガノポリシロキサンA−9を得た。
得られたオルガノポリシロキサンA−9中に含有される、加水分解性オルガノポリシロキサン量は39質量%に相当する量であった。また、オルガノポリシロキサンA−9の25℃におけるB型回転粘度計による粘度はロータNo.4/10rpmで800mPa・sであった。
【0073】
[調製例10]成分(A)のオルガノポリシロキサンA−10の調製
攪拌機を設けた内容積2,000mlのフラスコに、両末端がヒドロキシル基で封鎖され、主鎖の100モル%がメチル基である、25℃におけるB型回転粘度計による粘度がロータNo.4/10rpmで20,000mPa・sのオルガノポリシロキサン400gと、調製例1で使用した式(5)で示される加水分解性オルガノポリシロキサン600gとを入れて、オルガノポリシロキサンA−10を得た。
得られたオルガノポリシロキサンA−10中に含有される加水分解性オルガノポリシロキサン量は60質量%であった。また、オルガノポリシロキサンA−10の25℃におけるB型回転粘度計による粘度はロータNo.4/10rpmで12,000mPa・sであった。
これに、下記式(10)
【化16】
で示されるグアニジン化合物10g、及び下記式(11)
【化17】
で示されるシラン化合物50gを投入した後、室温(25℃)で30分間混合撹拌した。
【0074】
[実施例1〜
9、参考例1、2、比較例1〜8]
熱伝導性シリコーングリース組成物の製造
調製例1〜10で得られたオルガノポリシロキサンA−1〜A−10、及び下記に示す成分(B)を用いて、表1及び2に示した成分組成で配合し、プラネタリミキサー(井上製作所(株)製)を用いて120℃で1時間混合し、実施例1〜
9、参考例1、2及び比較例1〜8の熱伝導性シリコーングリース組成物を得た。なお、比較例4〜8に関しては、120℃で1時間混合後に、175℃で96時間放置した後の熱伝導性シリコーングリース組成物を用いた。得られた熱伝導性シリコーングリース組成物を用いて、上述した各種試験を行った。その結果を表1及び2に併記した。また、
図1に実施例1と比較例1のレオメータ測定結果を示す。
【0075】
成分(B):
B−1:アルミナ粉末(平均粒径10.3μm)
B−2:アルミナ粉末(平均粒径1.1μm)
B−3:アルミナ粉末(平均粒径30μm)
B−4:酸化亜鉛粉末(平均粒径1.1μm)
ここで、平均粒径は、日機装株式会社製の粒度分析計であるマイクロトラックMT3300EXにより測定した、体積基準の累積平均径である。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1及び2の結果は、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物が、熱伝導性とズレ性に優れるだけでなく、印刷速度が高いために生産性にも優れていることを実証するものである。